説明

スピーカアクチュエータ

形状記憶金属部品に結合され且つ携帯電子装置の内部に設けられたスピーカ要素と、形状記憶金属部品に電力を供給するように構成された電源ユニットとを使用し、形状記憶金属部品に電力が供給された場合、スピーカ要素を駆動するためにスピーカ要素に力を加えるように形状記憶金属部品が構成されるスピーカシステム、並びにスピーカを駆動する方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるスピーカに関するものであり、特に、スピーカの動作及びそれを実現するための手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ラップトップ、MP3プレーヤなどの音楽再生装置をはじめとする携帯電子装置では、音声を出力するためにスピーカが使用される。スピーカを駆動又は動作させるために用いられる最も一般的な手段は、コイル及び磁石である。コイル及び磁石は、電力が供給されると、出力する音声に類似する信号に応じて相対的に移動する。そして、その移動が、円錐形状の振動板/膜に伝達されることで、信号に応じて空気が前後に振動することとなる。別の種類のスピーカとして、平坦な平面形状の振動板を有するスピーカ、いわゆるフラットパネルスピーカがあり、その振動板は、例えばコイル及び磁石により駆動されるほか、圧電励振器又は電気プラズマアークにより駆動される。あるいはデジタル式に駆動される(デジタルスピーカ)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの従来のスピーカには欠点がある。例えば、コイル及び磁石はかさばって重いため、駆動時に多くの電力が必要となるうえ、関連する装置に組み込む場合に広いスペースが必要となり、また、装置の重量も増加する。圧電アクチュエータの場合、脆化特性が低く、衝撃耐性も低い。また、圧電アクチュエータが供給する電力は低周波数でスピーカを起動させるのには低すぎる。プラズマの場合、最小限の質量で済むため、駆動手段として電気プラズマを使用するプラズマアークスピーカは軽量となるが、保守及び信頼性の点で問題がある。また、例えば定期的な補充を必要とするヘリウムのタンクからプラズマが発生するという理由により、プラズマアークスピーカは大量販売には全く適していない。更に、デジタルスピーカは大型の振動板を必要とするため、広いスペースを必要とする。これらの欠点があるため、従来のスピーカは取り扱いが難しく、重く、かさばり、多くの場合に高価であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、形状変化金属、すなわち形状記憶金属から形成されるいわゆるマッスルワイヤに結合される機械式結合部と、このマッスルワイヤを駆動する手段とを有するスピーカを提供することにより、従来のスピーカの欠点を解決する。
【0005】
本発明の1つの面によれば、少なくとも1つの形状記憶金属部品に機械的に結合され且つ携帯電子装置の内部に設けられた少なくとも1つのフラットスピーカ要素と、少なくとも1つの形状記憶金属部品に電力を供給する少なくとも1つの電源ユニットとを備え、少なくとも1つの形状記憶金属部品に電力が供給された場合に、少なくとも1つの形状記憶金属部品がフラットスピーカ要素に力を加えることで、スピーカ要素の往復動作を実現するスピーカシステムを提供する。
【0006】
別の面によれば、ほぼ逆方向に交互に制御可能であり、かつスピーカ要素の往復動作を実現する2つの形状記憶金属部品を備えるスピーカシステムを提供する。
【0007】
更に別の面によれば、第1の形状記憶金属部品及び第2の形状記憶金属部品を備え、第1の形状記憶金属部品が、第1の方向へのスピーカ要素の動作を実現し、第2の形状記憶金属部品が、第1の方向とはほぼ逆の第2の方向へのスピーカ要素の動作を第1の方向へのスピーカ要素の動作と交互に実現するスピーカシステムを提供する。スピーカシステムは、第1の方向へのスピーカ要素の動作を実現する1つの形状記憶金属部品と、第1の方向とはほぼ逆の第2の方向へのスピーカ要素の動作を実現するばねとを更に備える。
【0008】
更に別の面によれば、スピーカ要素と各形状記憶金属部品との間の機械式結合部はリンク機構である。リンク機構は第1の部材及び第2の部材を備え、それらの部材は細長い形状を有しており且つ互いに端部で回動自在に結合されており、各形状記憶金属部品の第1の端部は、リンク機構の部材の端部に装着され且つ第2の端部は携帯電子装置に装着されている。
【0009】
更に本発明は、フラットスピーカ要素の駆動方法に関するものであり、当該方法は、フラットスピーカ要素により生成される音声に対応する信号を受信する工程と、信号の受信に応じて、フラットスピーカ要素に機械的に結合された少なくとも1つの形状記憶金属部品に電力を供給する工程と、少なくとも1つの形状記憶金属部品に供給された電力に応答して少なくとも1つの形状記憶金属部品がフラットスピーカ要素に力を加えることによってフラットスピーカ要素を駆動し、対応する音声を生成するためにスピーカ要素の往復動作を実現する工程とを備える。
【0010】
1つの面によれば、フラットスピーカ要素の駆動方法は、2つの形状記憶金属部品を交互にほぼ逆の方向に動作させることで、スピーカ要素の往復動作を実現する工程を含む。当該方法は、信号を2つの部分に分割することにより各形状記憶金属部品に電力を供給する工程と、それぞれの信号部分に応答して各形状記憶金属部品を収縮させる工程とを含む。これは、信号の1つの部分に応答して1つの形状記憶金属部品を収縮させ且つ信号の別の部分に応答して別の形状記憶金属部品を収縮させることにより実現される。
【0011】
別の面によれば、装置は、少なくとも1つのフラットスピーカ要素を駆動する手段を備え、当該駆動する手段は、フラットスピーカ要素に機械的に結合された、少なくとも1つの形状記憶金属部品を含む。
【0012】
別の面によれば、フラットスピーカ要素を駆動する装置は、ほぼ逆の方向に制御可能な2つの形状記憶金属部品を備え、それらの部品はスピーカ要素の往復動作を実現する。
【0013】
更に別の面によれば、フラットスピーカ要素を駆動する装置は、それぞれがマッスルワイヤである形状記憶金属部品を備える。
【0014】
マッスルワイヤはストロークが大きいため、機械的衝撃に強く且つ低周波数で高い出力応答を示すので、より多くの空気を振動させる。これは、マッスルワイヤが強力であること、すなわち、電力が供給され収縮した場合に大きな力を加えることができることに起因する。つまり、電力をスピーカ要素を駆動する力に変換する場合のマッスルワイヤの効率は高く、それゆえに、音声を生成するためにマッスルワイヤを使用することにより、携帯電子装置は軽量化され、更に、音声を生成するために必要とされる構成要素の数も少なくて済み、装置の価格を安くすることが可能となる。更に、本発明は、移動装置において実現された場合に非常に薄型で平坦な形状のアクチュエータを提供し、そのような装置において限られたスペースを最適に利用することができる。
【0015】
本明細書中で使用される場合の用語「備える」は、記載される特徴、数字、ステップ又は構成要素の存在を特定するものとして解釈されるが、1つ以上の他の特徴、要素、数字、ステップ、構成要素又はそれらの集合の存在又は追加を除外するものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係るスピーカシステムを装備した携帯電子装置を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るマッスルワイヤに結合されたフラットスピーカパネルを示す図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に係る2つのマッスルワイヤに結合されたフラットスピーカパネルを示す図である。
【図4】図4は、本発明の更に別の実施形態に係る2つのマッスルワイヤに結合されたフラットスピーカパネルを示す図である。
【図5】図5は、本発明の更に別の実施形態に係る2つのマッスルワイヤに結合されたフラットスピーカパネルを示す図である。
【図6】図6は、マッスルワイヤによってフラットスピーカパネルを駆動する方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
典型的なスピーカは、アクチュエータ手段により駆動される振動板から構成され、アクチュエータ手段は、アナログ/デジタル信号に変換された音波に応答し、制御装置又はプロセッサにより制御/給電される。これは周知の技術であるので、ここでは更なる詳細な説明は省略する。
【0018】
更に、本明細書において、マッスルワイヤという用語は、例えばニッケル−チタン(Ni−Ti)合金などの形状変化形状記憶金属から成る細長い物体を示すために使用されるものとする。例えばNitinol(登録商標)及びFlexinol(登録商標)を参照されたい。当然、本発明に係るマッスルワイヤは、形状が変化する場合にロール状(コイル状)に巻き上がるか又は広がる帯状又はリボン状の形状、ロッド又はバー状の形状、あるいはワイヤ/コード/ケーブル状の形状等であってもよく、また、例えば円形、三角形、正方形、星形などの種々の横断面形状、又は任意の適切な横断面形状を有していてもよい。なお、形状記憶金属部品又はワイヤの機能及び性能は、本明細書中で後に更に詳細に説明するものとする。
【0019】
図1は、携帯電子装置120(図3にはディスプレイ121及びキーパッド122と共に示される)に設けられたパネル110に示す形態の、1つのフラットスピーカ要素を有するスピーカシステム100の第1の実施形態を示している。図1及び図2に示されるように、フラットスピーカ要素100は、携帯電子装置120のLCDディスプレイ121の背後及び/又は上方に装着されている。
【0020】
図2の実施形態において、スピーカパネル110は、1つの制御電源ユニット150に接続された少なくとも1つの形状記憶金属部品、すなわち形状記憶金属又はマッスルワイヤ140に結合された機械式結合部130を有している。制御電源ユニット150は、生成される音声に対応する受信信号151に応答してワイヤ140を制御し且つワイヤ140に電力を供給するように構成されている。機械式結合部130は、形状記憶金属部品140を収縮させるばね131にも結合されている。ワイヤ140は、電力が供給されると、スピーカパネルの往復動作を実現するためにスピーカパネル110に力を加えるよう構成されている。具体的には、ばね131はワイヤ140を一方向に引っ張っているが、供給された電力によりワイヤ140が加熱されると、ワイヤ140はほぼ逆の方向に収縮する。従って、ワイヤへの電力供給が遮断されると、ワイヤ140は冷却され、ばね131は、ワイヤの収縮方向とは逆の方向にワイヤを引っ張り、ワイヤを伸長する。マッスルワイヤ140が、スピーカパネルを一方向に引っ張った後に冷却され、収縮することでスピーカパネルが元の形状に戻る場合、スピーカパネル110自体もばねとして作用する。このため、ばね131は省略されてもよい。この方法はブザー、ハンマー及び/又はハウラー等のサウンド、あるいは他の任意の同様のサウンドとして利用されてもよい。
【0021】
図3に示されるように、第2の実施形態では、2つのマッスルワイヤ140及び141が、スピーカパネル110に機械的に結合されている。2つのワイヤは、信号151によって各ワイヤ140、141を制御し且つ各ワイヤに電力を供給する制御電源ユニット150に接続されている。信号151は、分周器154により正の半周期152及び負の半周期152に分割され、各信号152及び153は、関連するマッスルワイヤ140、141に送信される前に増幅器155により増幅される。マッスルワイヤ140、141への電力供給を制御するこれらの手段は、図2〜図5に示される本発明の各実施形態において使用されるものとする。図3の本実施形態では、ばね131の代わりに第2の形状記憶金属部品141が使用されている。各ワイヤ140、141に電力が供給されると、各ワイヤはスピーカパネルの往復動作を実現するためにフラットスピーカパネル110に力を加える。スピーカパネル110の往復動作を実現するために、2つの形状記憶金属ワイヤ140、141はほぼ逆の方向に交互に制御される。第1の形状記憶金属ワイヤ140及び第2の形状記憶金属ワイヤ141を有する本実施形態のスピーカシステム100において、右側の第1のワイヤ140は、第1の方向へのスピーカパネル110の動作を実現するよう構成され、左側の第2のワイヤ141は、第1の方向とはほぼ逆の第2の方向へのスピーカパネルの動作を交互に実現するように構成されている。これは、供給された電力により加熱された場合に第1のワイヤ140が一方向(図2において右方向)に収縮し、第2のワイヤ141はほぼ逆の方向(図2において左方向)に収縮するように構成されることによって実現される。従って、第1のワイヤ140への電力供給が遮断され、第1のワイヤ140が冷却された際に、第2のワイヤ141に電力が供給されることで、第2のワイヤ141が加熱されて収縮し、第1のワイヤ140を、第1のワイヤ140の収縮方向とは逆の方向に引っ張ることにより伸張する。このような交互のワイヤ収縮の制御により、フラットスピーカパネル110の往復動作が実現され、その結果、音声が生成される。
【0022】
図2及び図3に示される実施形態において、スピーカパネル110と各マッスルワイヤ140、141との間の機械式結合部130は、リンク機構である。リンク機構は第1の部材132及び第2の部材133を備え、それらの部材は細長い形状を有しており且つ動作可能であり、本実施形態において互いに端部で回動自在に結合されている。また、各形状記憶金属ワイヤ140、141は、一方の端部においてリンク機構の部材132、133の結合された端部に装着されており、他方の端部において携帯電子装置120に装着されている。
【0023】
別の実施形態において、各マッスルワイヤ140、141は、双方のワイヤに共通するリンク機構の代わりに、それぞれ1つのリンク機構を有していてもよい。その場合、リンク機構130は長さの異なる部材132、133を有していてもよく、それらの部材は異なる位置に、例えばスピーカパネル110の中央部に更に近接する位置に配置されていてもよい。更に、図2〜図5におけるスピーカパネル110の端部からリンク機構130の結合部までの距離Xは、スピーカパネル110が動作した場合に所望の音波を発生させる、パネルの適切な形状を実現するために、0からL(スピーカパネル110の全長L)の範囲、例えば3/4L、2/3L、L/2、L/3、L/4又は他の任意の適切な値となっているものとする(図2〜図5には破線により1つの対称形状のみが示されるが、例えば非対称形状などの他の任意の形状が可能である)。
【0024】
図2〜図5に示すように、各マッスルワイヤ140、141は、携帯電子装置に結合された端部において位置120で接地され、リンク機構の部材132、133の端部の共通結合部に結合された端部において電気的に絶縁されている。各マッスルワイヤは両端部で電気的に絶縁されていてもよいが、その場合、増幅器155への電流の適切な戻り経路が設けられていなければならない。図2〜図5に示されるように、各増幅器155も下部/角部で接地される。
【0025】
図4には、交差する2つのマッスルワイヤ140、141を有する別の実施形態が示されている。2つのマッスルワイヤ140、141は、互いに離間した異なる平面に配置されているため、すなわち互いに側方に離間して配置されているため、互いに交差はしてはいるが、互いに物理的には接触していない。本実施形態では、各ワイヤを2つの支持体の間にゆるみなく張った状態のワイヤとして構成し、リンク機構の2つの部材132、133の結合箇所又は継手、すなわち共通の端結合部をワイヤのほぼ中央部でワイヤに接触させることにより、力の伝達を実現している。ワイヤとの接触場所を他の位置、例えばワイヤの長さの3分の1又は4分の1の位置とすることも可能であり、弓の弦と矢との関係のように、形状記憶金属ワイヤからの力、すなわちマッスルワイヤの増加された張力を結合箇所に伝達し、更にはスピーカパネル110へと伝達する。この場合、ワイヤはスピーカパネル110の平面とほぼ平行に延在することとなるが、例えば図4に破線で示されるように、他の実施形態において、ワイヤを、異なる角度からスピーカパネル110への結合継手に作用又は影響を与えるように構成してもよい。すなわち、ワイヤは、スピーカパネル110の平面と角度を成す状態で延在していてもよい。図4のこの角度αは、一実施形態(図示せず)において5°〜90°であり、10°〜80°、好ましくは20°〜60°、更に好ましくは40°〜50°、最も好ましくは図4に示されるような約45°である。
【0026】
図5に示される別の実施形態では、各形状記憶金属ワイヤ140、141がスピーカパネル110に直接結合されている。本実施形態におけるスピーカパネル110のストロークは、各マッスルワイヤ140、141の長さによって大きく異なり、ワイヤが長いほど、ストロークは大きくなる。携帯電子装置120に結合されたプーリに各ワイヤを巻き付けることにより、各マッスルワイヤの種々の長さを実現してもよい。ワイヤの伸長及び/又は短縮を実現できるように、それらのプーリは、それぞれ異なる態様で且つ/又は異なる位置に配置されることとなる。例えば、異なる長さを有するワイヤ140又は長さを調整可能なワイヤが使用される。
【0027】
図2〜図6の実施形態において、スピーカ要素により生成される音声に対応する信号151を受信し、信号の受信に応じて各形状記憶金属ワイヤ140、141に電力を供給し、ワイヤに供給される電力に応答してフラットスピーカパネル110を駆動することにより、スピーカパネル110の駆動方法が実行される。音声を生成するためのスピーカパネルの駆動及び動作は、適切に変化する電圧をマッスルワイヤに供給し、ワイヤ140、141を加熱させ且つワイヤを流れる電流の加熱効果に対応してワイヤを収縮させることにより制御される。音声周波数を発生させるためにワイヤに供給される電流は、所望の周波数に対応して交互にオン周期及びオフ周期を有する電流である。スピーカパネルの1回の引っ張りは、単一のパルスにより引き起こされる。
【0028】
図3の第2の実施形態において、2つのワイヤ140、141は交互に加熱されることで、ほぼ逆方向に交互に収縮する。ワイヤ140、141の交互加熱は、信号151を2つの部分152、153に分割し、ワイヤに電力を供給することによって実現される。この場合、ワイヤは、それぞれの信号部分152、153に応答して交互に収縮する。一実施形態において、一方のワイヤ140は信号151の一方の部分152に応答して収縮し、他方のワイヤ141は信号の他方の部分153に応答して収縮するが、別の実施形態においては、一方のマッスルワイヤ140は信号151の正の部分152に応答して収縮し、他方のワイヤ141は信号の負の反転部分153に応答して収縮する。
【0029】
図1は、本発明に係るスピーカシステム100を有する例示的な携帯電子装置又は移動端末120を示す概略図である。本明細書において使用される場合の用語「携帯電子装置」又は「移動端末」は、図3のような携帯無線電話120を含むが、例えば携帯無線電話をデータ処理機能、ファクシミリ機能及びデータ通信機能と組み合わせたパーソナル通信システム(PCS)端末;無線電話、ページャ、インターネット/イントラネットアクセス、ウェブブラウザ、オーガナイザ、カレンダー及び/又は全地球測位システム(GPS)受信機を含むことができるパーソナルデジタルアシスタント(PDA);並びに無線電話トランシーバを含む従来のラップトップ受信機及び/又はパームトップ受信機又は他の機器であってもよい。移動端末は「パーベイシブコンピューティング」デバイスと呼ばれるものであってもよく、更に、カメラを含んでいてもよい。また、スピーカを含む他の装置又はシステム、あるいは無線通信機能性を持たない装置に接続された独立型スピーカ、例えばホームシネマスピーカにおいて本発明が実現されてもよいことは理解されよう。
【0030】
マッスルワイヤ140、141は、特定の温度を超えて加熱された場合に形状又は大きさを変える材料から構成される。形状/大きさを変化させるために必要とされる特定の温度は、特定の材料によって異なる。一実施形態において、マッスルワイヤ140、141は、ワイヤ140、141が閾値温度を超えて加熱された場合に収縮する(すなわち、一定の長さが短くなる)ように設計された合金から構成される。更に、合金は低い導電率を有するように(例えば抵抗特性を有するように)構成される。従って、ワイヤ140、141に電力が印加された場合、閾値温度を超えて加熱されることにより、ワイヤ140、141は収縮する。
【0031】
本発明に係るワイヤ140、141は、閾値温度を超えて加熱された場合に約3%〜5%収縮する。例示的な一実施形態において、閾値温度は約88℃〜98℃の範囲にある。更に、本発明に係るワイヤ140、141は約62℃〜72℃の範囲の温度で弛緩してもよい(すなわち加熱前の状態に戻ってもよい)。将来、他の物理的特性によって、より低い温度及び/又はより高い温度で上記の範囲より大きく又は小さく収縮し且つ/又は復元するマッスルワイヤ140、141が開発されてもよい。
【0032】
以下の表は、本発明に係る実現例において使用されるワイヤ140、141の例示的な特性を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
典型的な用途において、マッスルワイヤ140、141に供給される電気エネルギーは、70msの間に5Vの振幅、300mAの電流を有するパルスである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの形状記憶金属部品に機械的に結合され且つ携帯電子装置の内部に設けられた少なくとも1つのフラットスピーカ要素と、
生成される音声に対応する電力を前記少なくとも1つの形状記憶金属部品に供給するように構成された少なくとも1つの電源ユニットと、を備え、
前記少なくとも1つの形状記憶金属部品は、電力が供給された場合に、前記フラットスピーカ要素が対応する音声を生成するように、前記フラットスピーカ要素に力を加えることで前記スピーカ要素の往復動作を実現することを特徴とするスピーカシステム。
【請求項2】
ほぼ逆の方向に交互に動作するよう制御可能な2つの形状記憶金属部品を備え、前記形状記憶金属部品は、前記スピーカ要素の前記往復動作を実現するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項3】
第1の形状記憶金属部品及び第2の形状記憶金属部品を備え、前記第1の形状記憶金属部品は、第1の方向への前記スピーカ要素の動作を実現するよう構成され、前記第2の形状記憶金属部品は、前記第1の方向とはほぼ逆の第2の方向への前記スピーカ要素の動作を交互に実現するよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカシステム。
【請求項4】
第1の方向への前記スピーカ要素の動作を実現するよう構成された1つの形状記憶金属部品と、前記第1の方向とはほぼ逆の第2の方向への前記スピーカ要素の動作を実現するよう構成されたばねとを備えることを特徴とする請求項2に記載のスピーカシステム。
【請求項5】
前記スピーカ要素と各形状記憶金属部品との機械的結合部はリンク機構であることを特徴とする請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項6】
各形状記憶金属部品は前記スピーカ要素に直接結合されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカシステム。
【請求項7】
前記スピーカ要素の動作は、前記携帯電子装置に結合された2つの支持体の間にゆるみなく張った状態のワイヤとして各形状記憶金属部品を構成し且つ前記2つの支持体の間で前記形状記憶金属部品に接触する継手に前記形状記憶金属部品から前記スピーカ要素へ力を伝達させることにより実現されることを特徴とする請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項8】
前記リンク機構は第1の部材及び第2の部材を備え、前記第1の部材及び前記第2の部材は細長い形状を有しており且つ互いに端部で回動自在に結合され、各形状記憶金属部品は、第1の端部において前記リンク機構の部材の端部に装着され且つ第2の端部において前記携帯電子装置に装着されていることを特徴とする請求項5に記載のスピーカシステム。
【請求項9】
前記リンク機構の前記第1の部材は、第1の端部において前記スピーカ要素に回動自在に結合され且つ第2の端部によって前記リンク機構の前記第2の部材の第1の端部に回動自在に結合されており、前記リンク機構の前記第2の部材は、第2の端部において前記携帯電子装置に回動自在に結合されており、前記リンク機構の前記第1の部材と前記第2の部材との間の共通する継手は、各形状記憶金属部品の第1の端部にそれぞれ結合されていることを特徴とする請求項8に記載のスピーカシステム。
【請求項10】
フラットスピーカ要素の駆動方法であって、
前記フラットスピーカ要素により生成される音声に対応する信号を受信する工程と、
前記信号の受信に応じて、前記フラットスピーカ要素に機械的に結合された少なくとも1つの形状記憶金属部品に電力を供給する工程と、
前記少なくとも1つの形状記憶金属部品に供給された電力に応答して前記形状記憶金属部品が前記スピーカ要素に力を加えることによって前記スピーカ要素を駆動し、前記フラットスピーカ要素の往復動作を実現することで前記対応する音声を生成する工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記スピーカ要素の前記往復動作が実現されるように、2つの形状記憶金属部品を交互にほぼ逆方向に動作させる工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の形状記憶金属部品が第1の方向への前記スピーカ要素の動作を実現し且つ第2の形状記憶金属部品が前記第1の方向とはほぼ逆の第2の方向への前記スピーカ要素の動作を交互に実現するように、前記第1の形状記憶金属部品及び前記第2の形状記憶金属部品を交互に動作させる工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記信号を2つの部分に分割することにより、各形状記憶金属部品に電力を供給する工程と、
それぞれの信号部分に応答して各形状記憶金属部品を収縮させる工程と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記信号の1つの部分に応答して1つの形状記憶金属部品を収縮させる工程と、
前記信号の別の部分に応答して別の形状記憶金属部品を収縮させる工程と、を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記信号の正の部分に応答して1つの形状記憶金属部品を収縮させる工程と、
前記信号の負の反転部分に応答して別の形状記憶金属部品を収縮させる工程と、を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのフラットスピーカ要素に機械的に結合された少なくとも1つの形状記憶金属部品を含み且つ前記少なくとも1つのフラットスピーカ要素を駆動する手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
ほぼ逆の方向に制御されるように構成された2つの形状記憶金属部品を備え、前記形状記憶金属部品は、前記スピーカ要素の往復動作を実現するように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記スピーカ要素と各形状記憶金属部品との前記機械的結合部はリンク機構であることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
各形状記憶金属部品は前記スピーカ要素に直接結合されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記スピーカ要素の動作は、前記携帯電子装置に結合された2つの支持体の間にゆるみなく張った状態のワイヤとして各形状記憶金属部品を構成し且つ前記2つの支持体の間で前記形状記憶金属部品に接触する継手に前記形状記憶金属部品から前記スピーカ要素へ力を伝達させることにより実現されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項21】
各リンク機構は第1の細長い部材及び第2の細長い部材を備え、前記第1の部材及び前記第2の部材は、端部において互いに回動自在に結合され、各形状記憶金属部品は、第1の端部において前記リンク機構の前記部材の結合された端部に装着され且つ第2の端部において前記携帯電子装置に装着されていることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記リンク機構の前記第1の部材は、第1の端部において前記スピーカ要素に回動自在に結合され且つ第2の端部によって前記リンク機構の前記第2の部材の第1の端部に回動自在に結合されており、前記リンク機構の前記第2の部材は、第2の端部において前記携帯電子装置に回動自在に結合されており、且つ前記リンク機構の前記第1の部材と前記第2の部材との間の共通する継手は、各形状記憶金属部品の第1の端部にそれぞれ結合されていることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項23】
各形状記憶金属部品はマッスルワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−517346(P2010−517346A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545837(P2009−545837)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057178
【国際公開番号】WO2008/089853
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】