説明

スピーカ用振動体及びスピーカ装置

【課題】薄型化が可能な振動体と、その振動体を備えた薄型のスピーカ装置を提供する。
【解決手段】音波を放射させる振動板10の外周縁部に、へ字状の稜線部KHとへ字状の谷線部KL、境界稜線部KB1、境界谷線部KB2等が多数形成されて、縦断面形状が折れ曲がり状となっている可動部12cを有するエッジ12を連設し、エッジ12をフレーム6に固定する。磁気回路との電磁誘導の法則によってボイスコイル2が振動し、振動板10が振動する際、可動部12cが変形するため、エッジ12のエッジ高さを小さくすることができ、薄型化が可能な振動体と、その振動体を備えた薄型のスピーカ装置を実現することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用スピーカシステム等や、携帯電話、携帯ラジオ、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯用電子機器に用いられる薄型のスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車載用スピーカシステムや携帯用電子機器等の分野では、それら電子機器の性質上、所定の音響特性を有し薄型の構造を有するスピーカ装置が望まれている。
【0003】
従来の薄型スピーカ装置では、音響放射部を中央に有するダイヤフラム形振動板の外周に、基本的にコルゲーションから成るタンジェンタルエッジと称されるエッジを形成し、そのタンジェンタルエッジを介してダイヤフラム形振動板を筐体等に装着した構造のものが知られている(例えば、特許文献1の図3参照)。
【0004】
【特許文献1】実公平6−35598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のスピーカ装置では、タンジェンタルエッジを構成する三角面の接合する稜線上の角部を欠落させることで稜線部分を平面部にしたり、稜線上の角部を曲面部にして形成することによって、高音域での共振周波数のピークやディップを低減し、刺激音の発生を無くすようにしている。
【0006】
ところが、振動板の直径方向に沿ってタンジェンタルエッジの縦断面形状を見ると、タンジェンタルエッジは、基本的に、音響放射方向に凸状となっており、複数の直線部と頂部とを有し、前記直線部との間に形成される前記頂部の形状が円孤状である構造となっている(特許文献1の図3参照)。
【0007】
このため、磁石とヨーク等による磁気回路内のボイスコイルに誘起される電磁力によって音響放射方向に振動する振動板の低音域での最低共振周波数を調整し、特に最低共振周波数を小さくする場合には、図1(a)に例示するように、タンジェンタルエッジのエッジ幅を大きくしたり、また、エッジ高(音響放射方向の高さ)を大きくし、タンジェンタルエッジが音響放射方向に大きく変形できるようにする必要がある。つまり、図1(b)に例示するように、振動板とその外周縁部に連設されたタンジェンタルエッジとから成る振動体を低周波数で振動させるためには、タンジェンタルエッジの音響放射方向における変形量H1を大きくする必要がある。
【0008】
そして、エッジ幅やエッジ高を大きくして、音響放射方向に大きく変形することとなるタンジェンタルエッジを形成すると、タンジェンタルエッジに当たらないようにタンジェンタルエッジを収容するための筐体やフレーム等の音響放射方向における厚みも大きくせざるを得なくなり、より薄型のスピーカ装置を実現することに限界があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決することを課題の一例とするものであり、新規な構造を有し、より薄型化を可能にするスピーカ用振動体とスピーカ装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、薄型化による音響特性等の低下を招来することなく、音響特性等の調整を図ることが可能な新規な構造を有するスピーカ用振動体とスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、スピーカ用振動体であって、振動板と、前記振動板の外周縁部に連設されたエッジとを備え、前記エッジは前記音波の放射に際して、音波の放射方向に変形する可動部を有すること、を特徴とする。
【0012】
かかる構造を有するスピーカ用振動体によると、振動板の振動に伴って可動部が変形するため、エッジの高さ(エッジ高)を小さくすることができ、スピーカ装置の薄型化を実現することができる。また、可動部の剛性を調整することで、音響特性等の調整を図ることができる。
【0013】
請求項12に記載の発明は、スピーカ装置であって、フレームと、前記フレームに支持されるスピーカ用振動体と、磁気回路とを備え、前記スピーカ用振動体は、振動板と、前記振動板と前記フレームとの間に配置されるエッジと、前記磁気回路により前記振動板を振動させるボイスコイルとを有し、前記エッジは、音波の放射方向に変形する可動部を有すること、
を特徴とする。
【0014】
かかる構造を有するスピーカ装置によると、振動板の振動に伴って可動部が変形するため、エッジの高さ(エッジ高)を小さくすることができ、スピーカ装置の薄型化を実現することができる。また、可動部の剛性を調整することで、音響特性等の調整を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
本発明の好適な実施の形態1について、図2、図3、図4、図5、図6を参照して説明する。図2(a)は、実施の形態1に係るスピーカ装置の構造を示す縦断面図、図2(b)は、スピーカ装置に設けられている振動体の構造を示す平面図、図2(c)は、図2(b)の一点鎖線(仮想線)X−Xに沿って破断した振動体の縦断面形状を示す縦断面図、図2(d)は、エッジの一部形状を拡大して模式的に示した斜視図である。
【0016】
図2(a)(b)(c)において、このスピーカ装置は、振動板10と振動板10の外周縁部に設けられたエッジ12とを有するスピーカ用振動体(以下、振動体と称する)1と、ボイスコイル2、ヨーク3、磁石4、プレート5、フレーム6、振動体1を保護する保護部としての保護フレーム7とを備えて構成されており、一点鎖線(仮想線)CTの軸が振動体1の中心軸となっている。以下、一点鎖線CTを仮想線CTと呼称する。
【0017】
ヨーク3とプレート5は、鉄等の磁性材料にて形成され、断面がコ字状のヨーク3と平板状のプレート5との間に、磁石(永久磁石)4が挟持されている。また、ヨーク3と磁石4及びプレート5は、それぞれ仮想線CTを振動体1の中心位置として水平面において略対称な形状に形成され、振動体1に対向するように配置されている。
【0018】
更に、ヨーク3の外周縁部3aとプレート5の外周縁部5aとが、所定幅の隙間から成る磁気ギャップGpを介して対向し、ヨーク3と磁石4及びプレート5による磁気回路が構成されている。そして、振動体1に取り付けられたボイスコイル2が磁気ギャップGp内に挿入されており、ボイスコイル2に音声信号が供給されると、磁気回路内に生じる電磁誘導の法則によってボイスコイル2に電磁気力(ローレンツ力)が作用し、ボイスコイル2の振動によって振動体1を振動させ、音波を放射させるようになっている。
【0019】
フレーム6はスピーカ筐体となっており、ヨーク3の外周縁部3aを固定するヨーク固定部6aと、ヨーク固定部6aから外側に延在するフランジ状の延在部6bと、延在部6bからスピーカ前面側に向けて所定高さHで突出する突出部6cとを有し、例えばアルミニウムなどの非磁性材料やABS等の樹脂の材料などで一体成形されている。
【0020】
保護フレーム7は、振動体1の振動により生じる音波を外部へ放射するための矩形状の開口OPNを有し、例えばアルミニウム等の非磁性材料やABS等の樹脂の材料などで成形された薄板部材である。開口OPNが振動体1の仮想線CTに沿って位置合わせされ、保護フレーム7の外周縁部7aが接着剤等によってフレーム6の突出部6c上に固着されている。そして、開口OPNを除く保護フレーム7の側面が、プレート5の一部分と磁気回路及びフレーム6の延在部6b側に所定間隔(別言すると高さH)の空隙8をおいて対向し、振動体1に設けられているエッジ12等がその空隙8内に配設されている。
【0021】
振動体1は、薄い平板状且つ矩形状である平面形状を有する振動板10と、振動板10の外周縁部に形成されたボイスコイル収容部11及びエッジ12とを有して構成されている。
【0022】
エッジ12は、振動板10の外周縁部を取り囲むように形成され、振動板10の高さに比して、略同一又は小さいエッジ高さに形成されている。更に、エッジ12は、第1,第2の平板状部12a,12b間に可動部12cが形成された構造を有し、第1の平板状部12aが振動板10に連設され、第2の平板状部12bがフレーム6の突出部6cに固定されることで、振動体1全体がフレーム6にて支持されている。
【0023】
また、振動板10とボイスコイル収容部11及びエッジ12は、紙や、例えばポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂、マグネシウム等の金属等の、所定の剛性を有する軽量素材を用いてプレス加工等によって一体成形されている。
【0024】
振動板10の板面には、図2(b)(c)に示すように、断面コ字状の複数の突起状の部分(以下、突起状部と称する)10a,10bが、仮想線CTを中心とする周方向に沿って閉回路状に設けられている。更に、突起状部10a,10bは、振動板10の中心位置CTを中心として長手方向と短手方向における幅が異ならして形成されている。これらの突起状部10a,10bが形成されることで、振動板10の変形等を抑止すること、強度や剛性を大きくすること、振動板10を軽量にすること等を可能にし、音響特性の向上を図ることを可能にしている。例えば、振動板10の異なる部位での分割振動や分割共振等の発生を抑制して、出力音圧周波数特性を低音域から高音域にかけて平坦にすることができる。
【0025】
ボイスコイル収容部11は、上述のプレス加工等によってスピーカ背面側(図2(a)では下側)に凹状となるボイスコイル2の収容室として形成されており、その収容室内にボイスコイル2が収容されている。そして、上述したように振動体1全体がエッジ12を介してフレーム6にて支持されることで、ボイスコイル2がボイスコイル収容部11内に収容されたまま磁気回路の磁気ギャップGp内に挿入されており、音声信号が供給されると磁気回路内に生じる電磁誘導の法則によって電磁気力(ローレンツ力)が作用することでボイスコイル2が振動し、ボイスコイル2の振動が振動体1に伝達されて、振動体1が振動し、開口OPNを介してスピーカ前面側(図2(a)では上側)へ音波が放射される。
【0026】
エッジ12は、図2(d)に模式的に示すように、振動板10の周方向に沿って多数の山脈状の起伏が形成されている。
【0027】
更に、エッジ12の構造、特に断面が折れ曲がり状に形成されている可動部12cの構造を図3、図4、図5を参照して詳細に説明する。
なお、図3(a)と図4(a)は、エッジ12の一部分(例えば図2(b)に示す仮想円AR内の部分)を拡大して示す平面図である。図3(b)〜(e)は、図3(a)中に示す一点鎖線(仮想線)A,B,C,Dに沿ってエッジ12を破断した場合の縦断面図であり、横軸がエッジ幅の方向、縦軸がエッジ12のエッジ高の方向を示している。更に、後述する第1,第2の平板状部12a,12bの高さを基準0とし、縦軸の+方向がスピーカ前面側(音波が放射される側)における高さ、縦軸の−方向がスピーカ背面側における高さを示している。図4(b)〜(f)は、図4(a)中に示す一点鎖線(仮想線)E,F,G,H,Iに沿ってエッジ12を破断した場合の縦断面図であり、第1,第2の平板状部12a,12bの高さを基準0とし、横軸の+方向がスピーカ前面側における高さ、横軸の−方向がスピーカ背面側における高さ、縦軸が周方向であるとして示している。図5は、可動部12cに形成されている個々の山部の形状を模式的に示した斜視図である。
【0028】
図3(a)及び図4(a)において、エッジ12は、振動板10の外周縁部に延在する第1の平板状部12aと、突出部6cに固定される第2の平板状部12bと、第1,第2の平板状部12a,12b間に連なる所定幅Wの可動部12cとを有し、例えば金型による曲げ加工等によって一体成形されている。可動部12cの両側の部分が、曲げ加工等が施された第1,第2の屈曲部12ca,12cbとを介して第1,第2の平板状部12a,12bに連設され、第1,第2の屈曲部12ca,12cb間の幅が可動部12cの幅Wとなっている。
【0029】
可動部12cは、断面形状が折れ曲がり状に形成されている。つまり、所定の角度αでへ字状に折れ曲がっている稜線部KH及び谷部(以下、谷線部と称する)KLとが、周方向に沿って所定間隔で、交互に多数形成され、更に、谷線部KLの谷底部分(へ字状の折れ曲がり部分)PLと稜線部KHの頂上部分(へ字状の折れ曲がり部分)PHとを結び、谷線部KLの谷底部分PLから稜線部KHの頂上部分PHに向かってスピーカ前面側に凸となるような、突出状の境界稜線部KB1と、稜線部KHの頂上部分PHと谷線部KLの谷底部分PLとを結び、稜線部KHの頂上部分PHから谷線部KLの谷底部分PLに向かってスピーカ背面側に凹となっている傾斜状の境界谷線部KB2とが、周方向に沿って交互に形成されている。更に、谷線部KLに繋がった弧状の谷線部KLa,KLbとが、周方向に沿って形成されている。
【0030】
更に、へ字状の稜線部KHは、頂上部分PHを頂点として全体的にスピーカの前面側へ突出し、頂上部分PHから弧状の谷線部KLa,KLbにいくに従って次第にスピーカの背面側へ直線状に傾斜(降下)している。へ字状の谷線部KLは、谷底部分PLを頂点として全体的にヘ字状の稜線部KHに対しスピーカの背面側へ凹んでおり、谷底部分PLから弧状の谷線部KLa,KLbにいくに従って次第にスピーカの前面側へ直線状に傾斜(降下)している。
【0031】
更に、稜線部KHと境界稜線部KB1と谷線部KL,KLaにより囲まれた部分は、稜線部KHと境界稜線部KB1から谷線部KL,KLaに向かって傾斜し、縦断面が直線状となっている平面状傾斜部12daとなっており、稜線部KHと境界稜線部KB1と谷線部KL,KLbにより囲まれた部分は、稜線部KHと境界稜線部KB1から谷線部KL,KLbに向かって傾斜し、縦断面が直線状となっている平面状傾斜部12dbとなっている。稜線部KHと境界谷線部KB2と谷線部KL,KLaにより囲まれた部分は、稜線部KHから境界谷線部KB2と谷線部KL,KLaに向かって傾斜し、縦断面が直線状となっている平面状傾斜部12eaとなっており、稜線部KHと境界谷線部KB2と谷線部KL,KLbにより囲まれた部分は、稜線部KHから境界谷線部KB2と谷線部KL,KLbに向かって傾斜し、縦断面が直線状となっている平面状傾斜部12debとなっている。
【0032】
更に、第1の屈曲部12caと谷線部KLa間の部分は、第1の屈曲部12caから谷線部KLaに向かって傾斜し、縦断面が弧状に凹んでいる支持部としての曲面状傾斜部12faとなっており、第2の屈曲部12cbと谷線部KLb間の部分は、第2の屈曲部12cbから谷線部KLbに向かって傾斜し、縦断面が弧状に凹んでいる支持部としての曲面状傾斜部12fbとなっている。そして、曲面状傾斜部12faと12fbが、可動部12c全体を支持する支持部となっており、曲面状傾斜部12faと12fbとが第1,第2の平板状部12a,12bにて支持されている。
【0033】
そして、可動部12を外観すると、第1,第2の屈曲部12ca,12cbの間に、図5に示すような頂上部分PHを頂点とするハート形の山が周方向に沿って多数形成され、山脈状の起伏を呈しているように見える。
【0034】
更に、図3(a)中に示す、頂上部分PHと平面状傾斜部12da,12db等を通る仮想線Aに沿った断面形状が図3(b)、境界稜線部KB1と境界谷線部KB2等を通る仮想線Bに沿った断面形状が図3(c)、谷底部分PLと平面状傾斜部12ea,12eb等を通る仮想線Cに沿った断面形状が図3(d)、境界稜線部KB1と谷線部KLa,KLb等を通る仮想線Dに沿った断面形状が図3(e)のようになっている。
【0035】
更に、図4(a)中に示す、頂上部分PHと谷底部分PLとを通る周方向の仮想線Gに沿った断面形状が図4(d)、仮想線Gの両側の稜線部KH等を通る仮想線E,Iに沿った断面形状が図4(b)及び図4(f)、仮想線E,G間の稜線部KHと谷線部KL等を通る仮想線Fに沿った断面形状が図4(c)、仮想線G,I間の稜線部KHと谷線部KL等を通る仮想線Hに沿った断面形状が図4(e)のようになっている。
【0036】
次に、かかる構造を有するスピーカ装置を駆動させた際の振動体1の動作について、図6を参照して説明する。図6(a)〜(d)は、図3(b)〜(e)に示したエッジ12の断面形状の一例を示し、振動体1が振動する際の可動部12cの動作を示している。
【0037】
このスピーカ装置が携帯電話等の電子機器に設けられる場合、図2(a)に例示するように、その電子機器の筐体20内に取り付けられる。
【0038】
ボイスコイル2から延在する錦糸線(図示略)に音声信号を供給すると、磁気回路との電磁誘導の法則により、音声信号のレベルと周波数に応じてボイスコイル2とボイスコイル収容部11とが一体となって振動し、その振動が振動板10に伝達され、振動板10が振動する。
【0039】
ここで、図6(a)に示す振動体1の部分では、振動板10と共に第1の平板状部12aがスピーカ前面側へ振動する際、第1の平板状部12a側の谷部(曲面状傾斜部12faと平面状傾斜部12daとによる谷部)において、曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12daを内側(エッジ12の内周縁に向かう方向)へ移動させるように動き、第2の平板状部12b側の谷部(曲面状傾斜部12fbと平面状傾斜部12dbとによる谷部)において、曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12dbを内側へ移動させるように動く。この時、平面状傾斜部12da,12dbが、平面状傾斜部12da,12dbとの成す頂上部分PHにおける角度θ1を大きくするように、振舞う。
【0040】
そして、第1の平板状部12aがピーカ前面側へ振動する際には、上述したように頂上部分PHにおける角度θ1が大きくなるため、エッジ12は、スピーカ前面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図1(b)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0041】
一方、振動板10と共に第1の平板状部12aがスピーカ背面側へ振動する際には、第1の平板状部12a側の谷部(曲面状傾斜部12faと平面状傾斜部12daとによる谷部)において、曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12daを内側(エッジ12の内周縁に向かう方向)へ移動させるように動き、第2の平板状部12b側の谷部(曲面状傾斜部12fbと平面状傾斜部12dbとによる谷部)において、曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12dbを内側へ移動させるように動く。この時、平面状傾斜部12da,12dbが、平面状傾斜部12da,12dbとの成す頂上部分PHにおける角度θ1を小さくするように、振舞う。
【0042】
そして、第1の平板状部12aがスピーカ背面側へ振動する際には、上述したように頂上部分PHにおける角度θ1が小さくなるため、エッジ12は、スピーカ背面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図1(b)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0043】
また、図6(b)に示す振動体1の部分では、振動板10がスピーカ前面側へ振動する際、第1の平板状部12a側の谷部(曲面状傾斜部12faと平面状傾斜部12daとによる谷部)において、曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12daを内側へ移動させるように動き、更に平面状傾斜部12daの移動に伴って平面状傾斜部12eaも内側へ移動し、第2の平板状部12b側の谷部(曲面状傾斜部12fbと平面状傾斜部12dbとによる谷部)において、曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12dbを内側へ移動させるように動き、更に平面状傾斜部12dbの移動に伴って平面状傾斜部12ebも内側へ移動する。この時、平面状傾斜部12db,12ebが、平面状傾斜部12db,12ebとの成す境界谷線部KB2における角度θ2を大きくするように、振る舞う。そして、上述したように境界谷線部KB2における角度θ2が大きくなるため、エッジ12は、スピーカ前面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図1(b)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0044】
一方、振動板10がスピーカ背面側へ振動する際には、第1の平板状部12a側の曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12daを外側へ移動させるように動き、更に平面状傾斜部12daの移動に伴って平面状傾斜部12eaも外側へ移動し、第2の平板状部12b側の曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12dbを外側へ移動させるように動き、更に平面状傾斜部12dbの移動に伴って平面状傾斜部12ebも外側へ移動する。この時、平面状傾斜部12db,12ebが、平面状傾斜部12db,12ebとの成す境界谷線部KB2における角度θ2を小さくするように、振る舞う。そして、上述したように境界谷線部KB2における角度θ2が小さくなるため、エッジ12は、スピーカ背面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図6(e)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0045】
また、図6(c)に示す振動体1の部分では、振動板10がスピーカ前面側へ振動する際、第1の平板状部12a側の曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12eaを内側へ移動させるように動き、第2の平板状部12b側の曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12ebを内側へ移動させるように動く。この時、平面状傾斜部12ea,12ebが、平面状傾斜部12ea,12ebとの成す谷底部PLにおける角度θ3を大きくするように、振る舞う。そして、上述したように、谷底部PLにおける角度θ3が大きくなるため、エッジ12は、スピーカ前面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図6(e)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0046】
一方、振動板10がスピーカ背面側へ振動する際には、第1の平板状部12a側の曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12eaを外側へ移動させるように動き、第2の平板状部12b側の曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12ebを外側へ移動させるように動く。この時、平面状傾斜部12ea,12ebが、平面状傾斜部12ea,12ebとの成す谷底部PLにおける角度θ3を小さくするように、振る舞う。そして、上述したように、谷底部PLにおける角度θ3が小さくなるため、エッジ12は、スピーカ背面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図1(b)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0047】
また、図6(d)に示す振動体1の部分では、振動板10がスピーカ前面側へ振動する際、第1の平板状部12a側の谷部(曲面状傾斜部12faと平面状傾斜部12ea,12daとによる谷部)において、曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12ea,12daを内側へ移動させるように動き、第2の平板状部12b側の谷部(曲面状傾斜部12fbと平面状傾斜部12eb,12dbとによる谷部)において、曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12eb,12dbを内側へ移動させるように動く。この時、平面状傾斜部12ea,12ebが、平面状傾斜部12da,12dbとの成す境界稜線部KB1における角度θ4を大きくするように、振舞う。そして、上述したように、境界稜線部KB1における角度θ4が大きくなるため、エッジ12は、スピーカ前面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図1(b)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0048】
一方、振動板10がスピーカ背面側へ振動する際には、第1の平板状部12a側の曲面状傾斜部12faが平面状傾斜部12ea,12daを外側へ移動させるように動き、第2の平板状部12b側の曲面状傾斜部12fbが平面状傾斜部12eb,12dbを外側へ移動させるように動く。この時、平面状傾斜部12ea,12ebが、平面状傾斜部12da,12dbとの成す境界稜線部KB1における角度θ4を小さくするように、振舞う。そして、上述したように、境界稜線部KB1における角度θ4が小さくなるため、エッジ12は、スピーカ背面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、図1(b)に示す従来のようなエッジに見られるような大きい変形を伴わない。
【0049】
以上、図6(a)〜(d)を参照して説明したように、エッジ12の可動部12cの断面形状が折れ曲がり状に形成されているため、第1の平板状部12aがスピーカ前面側へ振動する際においても、スピーカ背面側へ振動する際においても、エッジ12は、大きく変形をすることがない。このため、エッジ12の形状によれば図2(a)に示した隙間8の高さ(エッジ高)Hを従来のエッジに対し、より小さくすることが可能となり、スピーカ装置を薄くすることができる。
【0050】
つまり、第1の平板状部12aが振動すると、周方向に沿って可動部12cに形成されている境界稜線部KB1と境界谷線部KB2を境にして、第1の平板状部12a側の稜線部KHと谷線部KL,KLa及び谷状の部分と、第2の平板状部2b側の稜線部KHと谷線部KL,KLb及び谷状の部分とが変形し、更に第1の平板状部12aがスピーカ前面側へ振動する際には、図6(a)(d)に示したスピーカ背面側に向いている頂上部分PHにおける角度θ1と境界稜線部KB1における角度θ4が大きくなり、且つ、図6(b)(c)に示したスピーカ前面側に向いている境界谷線部KB2における角度θ2と谷底部分PLにおける角度θ3が大きくなるため、エッジ12は、スピーカ前面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、第1の平板状部12aがスピーカ背面側へ振動する際には、図6(a)(d)に示したスピーカ背面側に向いている頂上部分PHにおける角度θ1と境界稜線部KB1における角度θ4が小さくなり、且つ、図6(b)(c)に示したスピーカ前面側に向いている境界谷線部KB2における角度θ2と谷底部分PLにおける角度θ3が小さくさくなるため、エッジ12は、スピーカ背面側へ大きく突出するような変形をすることがない。
【0051】
したがって、エッジ12全体を外観するように見れば、エッジ12がスピーカ前面側へ振動する時とスピーカ背面側へ振動する時との総和の変形量は、図1(b)に示した従来のエッジがスピーカ前面側へ最も突出して変形する時とスピーカ背面側へ最も突出して変形する時との総和の変形量H1よりも小さくなることから、エッジ12の形状によれば図2(a)に示した隙間8の高さ(エッジ高)Hを従来のエッジに対し、より小さくすることが可能となり、スピーカ装置を薄くすることができる。
【0052】
また、可動部12cの形状を、基本的に図3、図4、図5にて示した形状に維持しておいて、第1の屈曲部12caと谷線部KLaと間の曲面状傾斜部12faの横幅(エッジ幅Wの方向の幅)と、第2の屈曲部12cbと谷線部KLbと間の曲面状傾斜部12fbの横幅を調整したり、稜線部KHや谷線部KLの長さを調整することで平面状傾斜部12da,12db,12ea,12ebの横幅を調整したり、図3(b)(d)に示した頂上部分PHにおける角度θ1や谷底部分PLにおける角度θ3を調整すると、可動部12cの高さ、ひいてはエッジ12のエッジ高Hを大きくすることなく、エッジ12の剛性を調整することができる。このため、上述のように可動部12cの形状を調整すると、エッジ12の剛性を調整することができて、エッジ12の最低共振周波数を調整することが可能となり、ひいてはスピーカ装置の低音域における再生帯域を調整することができる。例えば、図3(b)に示した縦断面が弧状となっている曲面状傾斜部12fa,12fbの各々の横幅を、縦断面が直線状となっている平面状傾斜部12da,12dbの各々の横幅よりも小さくし、平面状傾斜部12da,12dbの成す頂上部分PHにおける角度(折り返し部分の角度)θ1をより大きくすると、エッジ12の剛性が大きくなり、最低共振周波数を小さくすることが可能となる。そして、この例示の構造にしても、エッジ12のエッジ高を大きくすることなく、エッジ12の剛性を大きくすることが可能である。
【0053】
また、図3(a)と図4(a)にて示した稜線部KHと谷線部KLとの周方向における間隔を調整したり、稜線部KHの長さや谷線部KLの長さを調整したり、稜線部KHの頂上部分PHにおける角度αや角度θ1を調整したり、谷線部KLの谷底部分PLにおける角度αや角度θ3を調整すると、エッジ12の機械抵抗(ダンピング特性)を調整することができて、最低共振周波数における共振鋭度(Q値)を調整することができる。例えば、エッジ12の機械抵抗を大きくするほど、最低共振周波数における共振鋭度を小さくすることができる。
【0054】
また、振動板10が振動する際、第1,第2の平板状部12a,12bが振動板10の周方向に偏倚又は変形したり、又は、可動部12cの稜線部KHや谷線部KL、境界稜線部KB1、境界谷線部KB2、曲面状傾斜部12fa,12fb、平面状傾斜部12da,12db,12ea,12eb等の何れかの部分が周方向に偏倚又は変形して、振動板10を周方向に偏倚させないように維持することができる。このため、振動板10の不要な振動(例えば、ローリング現象)等の発生を抑制することができる。
【0055】
なお、以上に説明した実施の形態1では、図3(b)〜(e)、図4(b)〜(f)等にて示したように、稜線部KHと谷線部KL,KLa,KLb、境界稜線部KB1、境界谷線部KB2、第1,第2の屈曲部12ca,12cbが鋭角に折り曲げ加工等されているが、変形例として、それら鋭角となって尖った部分を、湾曲させて形成してもよい。
【0056】
また、実施の形態1では、図3と図4等に示したように、エッジ12の周方向に沿って交互に形成されているへ字状の稜線部KHと谷線部KLとの長さが異なっているが、他の変形例として、稜線部KHと谷線部KLを同じ長さにしてよい。
【0057】
また、実施の形態1では、図3(a)に示したように、稜線部KHの頂上部分PHにおける角度(へ字状の曲げ角度)αと、谷線部KLの谷底部分PLにおける角度(へ字状の曲げ角度)αとが同角度となっているが、更に他の変形例として、頂上部分PHにおける角度と谷底部分PLにおける角度とを異なる角度にしてもよい。
【0058】
また、実施の形態1では、図4(d)等にて示したように、第1,第2の平板状部12a,12bを基準0とする、稜線部KHの頂上部分PHの高さと谷線部KLの谷底部分PLの高さが異なっているが、これに限定されることはなく、異なった高さにしてもよい。
【0059】
また、実施の形態1では、図6(a)〜(d)に示したように、可動部12cにおいて、谷状の部分を構成することとなる曲面状傾斜部12fa,12fbと平面状傾斜部12da,12db,12ea,12ebが、振動板10の振動に際して変形することができる剛性となっているが、それら曲面状傾斜部12fa,12fbと平面状傾斜部12da,12db,12ea,12ebは振動板10の振動に際して変形しない剛性に形成し、第1,第2の屈曲部12ca,12cbと、稜線部KH、谷線部KL,KLa,KLb、境界稜線部KB1、境界谷線部KB2は、振動板10の振動に際して、その振動に追従して揺動するように変形することができる剛性にしてもよい。かかる構造の変形例であっても、エッジ12のエッジ高を小さくすることが可能である。
【0060】
また、図2(a)、図3(b)〜(e)等に示したように、第1,第2の平板状部12a,12bに、断面が弧状の支持部としての曲面状傾斜部12fa,12fbが形成されているが、これに代えて平板状(縦断面が直線状)の傾斜面に形成してもよい。つまり、曲面状傾斜部12fa,12fbの縦断面を直線状にし、平板状の傾斜面で形成してもよい。かかる変形例の構造においても、可動部12c、つまりエッジ12の剛性を調整すると、最低共振周波数を調整することが可能となる。
【0061】
また、実施の形態1では、図2(a)、図3(b)〜(e)等に示したように、断面が弧状の曲面状傾斜部12fa,12fbが、第1,第2の平板状部12a,12bから第1,第2の屈曲部12caを介して谷線部KL,KLa,KLbに向かって傾斜して形成されているが、曲面状傾斜部12fa,12fbを、第1,第2の平板状部12a,12bと共に平坦状の板部にしてもよい。つまり、第1,第2の屈曲部12caを曲げ加工することなく、図2(a)、図3(b)〜(e)等に示されている第1,第2の屈曲部12caと谷線部KLa,KLbの間の部分を、第1,第2の平板状部12a,12bと共に平坦状の板部にし、谷線部KLa,KLbをその平坦状の板部と同じ高さにしてもよい。かかる構造の変形例であっても、エッジ12のエッジ高を小さくすることが可能である。また、振動板10が振動する際にその平坦状の板部を含めて第1,第2の平板状部12a,12bが変形しないようにを大きい剛性の材料で形成してもよい。
【0062】
また、実施の形態1では、図2(a)の平面図と図3(b)〜(e)の断面図に示されいるように、平面状傾斜部12da,12dbは、スピーカ前面側に凸となっている稜線部KHと境界稜線KB1から、スピーカ背面側に凹となっている谷線部KLに向かって次第に降下するように傾斜しており、更に、平面状傾斜部12ea,12ebは、稜線部KHから、谷線部KLと谷線部境界谷線部KB2に向かって次第に降下するように傾斜しているが、更に他の変形例として、谷線部KLをスピーカ前面側に凸となる短いへ字状の稜線部にし、境界谷線部KB2を稜線部KHの頂上部分PHからその短いへ字状の稜線部の頂上部分に繋がる尾根状の境界稜線部にして形成し、それら短いへ字状の稜線部と稜線部KHとの間を繋ぐようにして、平面状傾斜部12da,12dbと12ea,12ebを形成してもよい。なお、この変形例の構造とすると、上述の短いへ字状の稜線部の頂上部分は、尾根状の境界稜線部において低い部分となるため、厳密には頂上ではなく、尾根状(別言すれば、鞍状)の低い部分となる。かかる変形例の構造においても、可動部12c、つまりエッジ12の剛性を調整すると、最低共振周波数を調整することが可能となり、更に、エッジ12のエッジ高を小さくすることが可能である。
【0063】
実施の形態2.
次に、本発明の好適な実施の形態2について、図7を参照して説明する。
【0064】
図7(a)は、実施の形態2に係るスピーカ装置の構造を示す縦断面図、図7(b)は、スピーカ装置に設けられている振動体の構造を示す平面図、図7(c)は、図7(b)の一点鎖線(仮想線)X−Xに沿って破断した振動体の縦断面形状を示す縦断面図、図7(d)は、エッジの一部形状を拡大して模式的に示した斜視図である。なお、図7(a)〜(d)において、図2(a)〜(d)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
【0065】
図7(a)〜(d)において、このスピーカ装置は、半球状、ドーム状の円形振動板10とその外周縁部に連設された環状のエッジ12とから成る振動体1を有し、エッジ12の外周縁部がフレーム6の突出部6cに固定されている。
【0066】
ヨーク3と磁石4及びプレート5は、仮想線CTで示す振動体1の中心とし水平面において略対称な形状に成形され、振動体1に対して対向配置されている。
【0067】
更に、ヨーク3の外周縁部3aとプレート5の外周縁部5aとが所定幅の磁気ギャップGpを介して対向し、ヨーク3と磁石4及びプレート5による磁気回路が構成されている。更に、振動板10の外周縁部に形成されているボイスコイル収容部11内にボイスコイル2が固定して収容され、ボイスコイル収容部11とボイスコイル2が共に磁気ギャップGp内に挿入されている。
【0068】
フレーム6は、ヨーク3の外周縁部3aを固定するヨーク固定部6aと、ヨーク固定部6aから外側に延在するフランジ状の延在部6bと、延在部6bからスピーカ前面側に向けて所定高さHで突出する突出部6cとを有し、保護フレーム7は、振動体1の振動により生じる音波を外部へ放射するための円形状の開口OPNを有し、開口OPNが振動体1の仮想線CTに沿って位置合わせされ、保護フレーム7の外周縁部7aが接着剤等によってフレーム6の突出部6c上に固着されている。そして、開口OPNを除く保護フレーム7の板面が、プレート5の一部分と磁気回路及びフレーム6の延在部6b側に所定間隔(別言すると高さH)の空隙8をおいて対向し、振動体1に設けられているエッジ12等がその空隙8内に配設されている。
【0069】
エッジ12は、図7(b)(d)に示すように、第1,第2の平板状部12a,12bと可動部12cとを有する円環状の構造となっており、可動部12cには、振動板10の周方向に沿って多数の山脈状の起伏が形成されている。
【0070】
つまり、図7(b)(d)に示す可動部12cの構造を図3、図4、図5を参照して述べると、この可動部12cにも、振動板10の周方向に沿って、へ字状の稜線部KHと谷線部KLが所定間隔で交互に多数形成され、稜線部KHの頂上部分PHと谷線部KLの谷底部分PLとを結ぶ境界稜線部KB1と境界谷線部KB2とが形成され、更に、谷線部KLに繋がった弧状の谷線部KLa,KLbとが形成されている。更に、稜線部KHと境界稜線部KB1と谷線部KL,KLaにより囲まれた部分は、平面状傾斜部12da、稜線部KHと境界稜線部KB1と谷線部KL,KLbにより囲まれた部分は平面状傾斜部12dbとなっている。稜線部KHと境界谷線部KB2と谷線部KL,KLaにより囲まれた部分は平面状傾斜部12eaとなっており、稜線部KHと境界谷線部KB2と谷線部KL,KLbにより囲まれた部分は平面状傾斜部12debとなっている。更に、第1の屈曲部12caと谷線部KLa間の部分は曲面状傾斜部12faとなっており、第2の屈曲部12cbと谷線部KLb間の部分は曲面状傾斜部12fbとなっている。
【0071】
かかる構造を有する実施の形態2のスピーカ装置において、図7(a)に示すボイスコイル2から延在する錦糸線(図示略)に音声信号を供給すると、磁気回路との電磁誘導の法則により、音声信号のレベルと周波数に応じてボイスコイル2とボイスコイル収容部11とが一体となって振動し、ボイスコイル2の振動が振動板10に伝達されて、振動板10が振動する。
【0072】
ここで、エッジ12の可動部12cは、振動板10が振動する際、図6(a)〜(d)に示したのと同様の動作をする。つまり、図6(a)〜(d)を参照して動作を説明すると、振動板10と共に第1の平板状部12aが振動すると、周方向に沿って可動部12cに形成されている境界稜線部KB1と境界谷線部KB2を境にして、第1の平板状部12a側の稜線部KHと谷線部KL,KLa及び谷状の部分と、第2の平板状部2b側の稜線部KHと谷線部KL,KLb及び谷状の部分とが変形し、更に第1の平板状部12aがスピーカ前面側へ振動する際には、図6(a)(d)に示したスピーカ背面側に向いている頂上部分PHにおける角度θ1と境界稜線部KB1における角度θ4が大きくなり、且つ、図6(b)(c)に示したスピーカ前面側に向いている境界谷線部KB2における角度θ2と谷底部分PLにおける角度θ3が大きくなるため、エッジ12は、スピーカ前面側へ大きく突出するような変形をすることがなく、第1の平板状部12aがスピーカ背面側へ振動する際には、図6(a)(d)に示したスピーカ背面側に向いている頂上部分PHにおける角度θ1と境界稜線部KB1における角度θ4が小さくなり、且つ、図6(b)(c)に示したスピーカ前面側に向いている境界谷線部KB2における角度θ2と谷底部分PLにおける角度θ3が小さくなるため、エッジ12は、スピーカ背面側へ大きく突出するような変形をすることがない。
【0073】
したがって、エッジ12全体を外観するように見れば、エッジ12がスピーカ前面側へ振動する時とスピーカ背面側へ振動する時との総和の変形量は、図1(b)に示した従来のエッジがスピーカ前面側へ最も突出して変形する時とスピーカ背面側へ最も突出して変形する時との総和の変形量H1よりも小さくなることから、エッジ12の形状によれば図2(a)に示した隙間8の高さ(エッジ高)Hを従来のエッジに対し、より小さくすることが可能となり、スピーカ装置を薄くすることができる。
【0074】
更に、実施の形態2のスピーカ装置においても、エッジ12の剛性を調整すると、最低共振周波数を調整することが可能である。
【0075】
実施形態3.
次に、本発明の好適な実施の形態3について、図8(a)を参照して説明する。なお、図8(a)は本実施の形態3における振動体1の形状を示す平面図であり、この振動体1が、図2(b)に示した振動体に代えてスピーカ装置に取り付けられている。また、図8(a)において、図2(b)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
【0076】
図8(a)において、この振動体1は、矩形状の振動板10の外周縁部にエッジ12が連設され、図2(a)に示したのと同様に、エッジ12の外周縁部がフレーム6の突起部6cに固定されている。
【0077】
図8(a)に示す振動体1と図2(b)に示した振動体との相違点を述べると、図2(b)に示した振動体では、エッジの可動部に形成されている山脈状の起伏が周方向に沿って同じ向きとなっているのに対し、本実施の形態3の振動体1では、周方向においてエッジ12の可動部12cが複数領域に等分割され(図8(a)では4つの領域に等分割している)、隣り合う領域毎に、山脈状の起伏が周方向に沿って逆向きになっている。つまり、図8(a)に示す可動部12cの第1の領域R1と第3の領域R3は、図2(b)に示したのと同じ向きの可動部が形成されており、可動部12cの第2の領域R2と第4の領域R4は、図2(b)に示したのと逆向きの可動部が形成されている。
【0078】
かかる構造の振動体1を有するスピーカ装置によれば、仮想線CTを中心とする水平面において対象な形状となっている振動板10に連設されているエッジ12は、第1,第2の領域とが線対称、第3,第4の領域とが線対称、第1,第4の領域とが線対称、第2,第3の領域とが線対称の形状となっているため、振動板10が振動する際、各々の領域において第1,第2の平板状部12a,12b又は、可動部12cの稜線部、谷線部、境界稜線部、境界谷線部等のいずれかが周方向に偏倚又は変形して、夫々の偏倚又は変形を相殺し合うように動くため、振動板10を周方向に偏倚させないように維持する機能を発揮する。このため、振動板10の不要な振動(例えば、ローリング現象)等の発生を抑制することができる。
【0079】
また、実施の形態1で説明したのと同様に、エッジ12のアップロールする時とダウンロールする時との変形量が、従来のコルゲーション形エッジの変形量より小さくなることから、薄型のスピーカ装置を実現することができる。
【0080】
実施形態4.
次に、本発明の好適な実施の形態4について、図8(b)を参照して説明する。なお、図8(b)は本実施の形態4における振動体1の形状を示す平面図であり、この振動体1が、図7(b)に示した振動体に代えてスピーカ装置に取り付けられている。また、図8(b)において、図6と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
【0081】
図8(b)において、この振動体1は、ドーム状の円形振動板10の外周縁部にエッジ12が連設されると共に、図6(a)に示したのと同様に、エッジ12の外周縁部がフレーム6の突起部6cに固定されている。
【0082】
図8(b)に示す振動体1と図6(b)に示した振動体との相違点を述べると、図6(b)に示したエッジの可動部には、多数のへ字状の稜線部及び谷線部と境界稜線部と境界谷線部が、振動板の周方向に沿って形成されているのに対し、本実施の形態4の振動体1では、多数のへ字状の稜線部及び谷線部と境界稜線部と境界谷線部が、振動板10の周方向と径方向に対して広がるように網目状に形成され、更に、周方向において反時計回り方向と時計回り方向にそれらのへ字状の稜線部及び谷線部と境界稜線部と境界谷線部がほぼ同数ずつ形成されている。
【0083】
かかる構造の振動体1を有するスピーカ装置によれば、中心位置CTを中心とする水平面において対象な形状となっている円形状の振動板10に連設されているエッジ12は、指向性の無い網目状に形成された稜線部と谷線部を有しているため、振動板10が振動する際、第1,第2の平板状部12a,12b又は、稜線部、谷線部、境界稜線部、境界谷線部等のいずれかが周方向に偏倚又は変形して、夫々の偏倚又は変形を相殺し合うように動くため、振動板10を周方向に偏倚させないように維持する機能を発揮する。このため、振動板10の不要な振動(例えば、ローリング現象)等の発生を抑制することができる。
【0084】
また、実施の形態2で説明したのと同様に、エッジ12のアップロールする時とダウンロールする時との変形量が、従来のコルゲーション形エッジの変形量より小さくなることから、薄型のスピーカ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】従来のスピーカ装置と振動体の構造を説明するための断面図である。
【図2】図2(a)は、実施の形態1に係るスピーカ装置の構造を示す縦断面図、図2(b)は、スピーカ装置に設けられている振動体の構造を示す平面図、図2(c)は、図2(b)の一点鎖線(仮想線)X−Xに沿って破断した振動体の縦断面形状を示す縦断面図、図2(d)は、エッジの一部分を拡大して模式的に示した斜視図である。
【図3】図3(a)は、図2(b)に示したエッジの一部分を拡大して示す平面図、図3(b)〜(e)は、図3(a)の一点鎖線A〜Dに沿ってエッジを破断した場合の縦断面図である。
【図4】図4(a)は、図2(b)に示したエッジの一部分を拡大して示す平面図、図4(b)〜(f)は、図4(a)の一点鎖線E〜Iに沿ってエッジを破断した場合の縦断面図である。
【図5】図3(a)に示す可動部に形成されている個々の山部の形状を模式的に示した斜視図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、図2(b)に示したエッジの動作を説明するための説明図である。
【図7】図7(a)は、実施の形態2に係るスピーカ装置の構造を示す縦断面図、図7(b)は、スピーカ装置に設けられている振動体の構造を示す平面図、図7(c)は、図7(b)の一点鎖線X−Xに沿って破断した振動体の縦断面形状を示す縦断面図、図7(d)は、エッジの一部形状を拡大して模式的に示した斜視図である。
【図8】図8(a)は、実施の形態3に係るスピーカ装置に設けられた振動体の構造を示す平面図、図8(b)は、実施の形態4に係るスピーカ装置に設けられた振動体の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0086】
1…振動体
2…ボイスコイル
7…保護フレーム
10…振動板
10a,10b…突起状部
12…エッジ
12c…可動部
12fa,12fb…曲面状傾斜部
20…電子機器の筐体
KH…稜線部
KL…谷線部
KB1…境界稜線部
KB2…境界谷線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板の外周縁部に連設されたエッジとを備え、
前記エッジは前記音波の放射に際して、音波の放射方向に変形する可動部を有すること、
を特徴とするスピーカ用振動体。
【請求項2】
前記可動部の断面形状は、折れ曲がり状であること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項3】
前記エッジは、前記可動部を支持する、断面が弧状の支持部を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項4】
前記エッジは、前記可動部を支持する、断面が直線状の支持部を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項5】
前記可動部は、平面形状が略へ字状である稜線部が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項6】
前記振動板には、突起状部が周状に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項7】
前記振動板には、突起状部が周状に複数形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項8】
前記振動板は、その平面形状が矩形状で、且つ平板状であり、
前記振動板には、前記振動板の中心位置を中心として長手方向と短手方向における幅が異なる突起状部が周状に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項9】
前記振動板又は前記エッジは、前記音波の放射面において、線対称に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項10】
前記振動板は、その平面形状が矩形状で、且つ平板状であり、
前記振動板の外周縁部に、前記エッジが取り囲んで形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項11】
前記振動板と前記エッジとが一体成形されていること、
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用振動体。
【請求項12】
フレームと、前記フレームに支持されるスピーカ用振動体と、磁気回路とを備え、
前記スピーカ用振動体は、振動板と、前記振動板と前記フレームとの間に配置されるエッジと、前記磁気回路により前記振動板を振動させるボイスコイルとを有し、
前記エッジは、音波の放射方向に変形する可動部を有すること、
を特徴とするスピーカ装置。
【請求項13】
前記振動板は、略平板状、又は曲面状の形状を備えること、
を特徴とする請求項12に記載のスピーカ装置。
【請求項14】
前記エッジは、前記音波の放射方向における前記振動板の高さに比して、略同一又は小さいエッジ高さを有すること、
を特徴とする請求項12に記載のスピーカ装置。
【請求項15】
少なくとも前記エッジに対向するように配置される保護部を備え、
前記保護部が、前記フレームに支持されていること、
を特徴とする請求項12に記載のスピーカ装置。
【請求項16】
少なくとも前記エッジに対向するように配置される保護部を備え、
前記保護部は、前記フレームに支持されており、前記保護部と前記フレームとが、電子機器の筐体に配設されること、
を特徴とする請求項12に記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−124227(P2009−124227A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293046(P2007−293046)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】