説明

スピーカ用振動板およびスピーカ

【課題】振動板中央部を薄型化しながら必要な剛性を持たせることができるスピーカ用振動板およびスピーカを提供する。
【解決手段】振動板22は、ダイナミック型のスピーカ用であって、平面状の薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状の補強用リブ26を形成し、振動板中央部23の全面を一様に補強し、しかも、補強用リブ26の密度(細かさ)を調整することによって振動板中央部23の強度を全面一様に調整し、振動板中央部23を薄型化しながら必要な剛性を持たせる。そのような振動板22をスピーカ1に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などに使用される小型で薄型のダイナミック型のスピーカに使用されるスピーカ用振動板およびスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などに使用される小型で薄型のダイナミック型のスピーカにおける振動板は、ドーム状の振動板中央部と、振動板中央部の全周を取り囲んで振動板中央部をフレームにつなぐ振動板エッジ部を有し、振動板中央部には必要な強度(剛性)を得るため補強用リブを放射状に形成する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−287418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電話などの薄型化に伴いスピーカには薄型化が求められているが、振動板中央部を薄くし、すなわち、振動板中央部の形状をドーム状から最終的に平面状に扁平化し、スピーカを薄型化しようとすると、振動板中央部は扁平化に伴い強度が低下するため、スピーカの耐入力性が低下するという問題がある。放射状の補強用リブでは、振動板中央部の全面を一様に補強できず、薄型化(扁平化)した振動板中央部に必要な剛性を持たせにくい。
【0005】
本発明の目的は、振動板中央部を薄型化しながら必要な剛性を持たせることができるスピーカ用振動板およびスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスピーカ用振動板は、ヨークとマグネットおよびポールピースを有する磁気回路と、ボイスコイルと振動板を有する振動系と、これら磁気回路と振動系を保持するフレームを備え、磁気ギャップに前記ボイスコイルを配置してなるスピーカ用であって、平面状或いはドーム状の薄膜からなる振動板中央部の全面にハニカム状の補強用リブを形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明のスピーカ用ダンパにおいては、次の(ア)〜(ウ)の構成を適宜付加することが好ましい。
(ア)前記振動板中央部の片面或いは両面に補強材としての薄膜からなる表面材を貼り付ける。
(イ)前記振動板中央部の補強用リブに補強材としての接着剤を充填する。
(ウ)前記振動板中央部を2枚反対向きに貼り合わせる。
【0008】
本発明のスピーカは、本発明のスピーカ用振動板を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスピーカ用振動板によれば、振動板中央部の全面にハニカム状の補強用リブを形成するから、振動板中央部の全面を一様に補強でき、しかも、補強用リブの密度(細かさ)を調整することによって振動板中央部の強度を全面一様に調整でき、振動板中央部を薄型化しながら必要な剛性を持たせることができる。振動板中央部を構成する薄膜に直接ハニカム状の補強用リブを形成するから、振動板中央部の補強を安価に実現できる。
【0010】
本発明のスピーカ用振動板において、(ア)(イ)(ウ)の構成を適宜単独或いは組み合わせて付加すると、振動板中央部の剛性を高めることができる。
【0011】
本発明のスピーカによれば、本発明のスピーカ用振動板を備えたから、スピーカを薄型化しながら従来と同等或いはそれ以上の耐入力性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態によるスピーカ用振動板の説明図であって、図1(a)はスピーカ用振動板の平面図、図1(b)は図1(a)のA−A’断面図、図1(c)は図1(a)のB−B’断面図である。
【図2】図1に示すスピーカ用振動板を備えたスピーカの平面図である。
【図3】図2のA−A’断面図である。
【図4】図2のB−B’断面図である。
【図5】図2の分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態によるスピーカ用振動板の変形構造の説明図であって、図6(a)は変形前のスピーカ用振動板の半断面図、図6(b)は第1の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(c)は第2の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(d)は第3の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(e)は第4の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(f)は第5の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5を参照して説明する。
【0014】
図2〜図5に示すように、スピーカ1は、主として、磁気回路10を構成するヨーク11とマグネット12とポールピース13、振動系20を構成するボイスコイル21と本発明にかかる振動板(スピーカ用振動板)22、外部回路と電気接続する一対の外部接続端子30を設ける外部接続基板31、振動板22を覆い保護するバッフル40、平面ダンパ50、磁気回路10と振動系20と外部接続基板31とダンパ50を組み付けてスピーカ1を組み立てるとともに、バッフル40とでスピーカ1の筐体を構成するフレーム60で構成される。
【0015】
フレーム60は、矩形の底板61の外周縁から外側壁62を垂直に立ち上げて、浅い有底四角筒状に形成されており、その中央部にはヨーク11が一体に形成される。すなわち、底板61の中央部内表面から長円形のヨーク外側壁11aを垂直に立ち上げ、ヨーク外側壁11aの内側にある底板61中央部をヨーク底板とし、フレーム60より浅く、かつ、フレーム60と同心な有底長円筒状のヨーク11を形成する。
【0016】
底板61には、ヨーク11の周囲にある底板61のうち、ヨーク11の一方の半円弧状端部の周囲にある底板61を一段持ち上げるための段差63が付けられており、フレーム60の長手方向(図2において上下方向)の一端部(図2において上端部)にダンパ50のリード部支持部としての上げ底部64が設けられるとともに、上げ底部64の裏側となるフレーム60の長手方向の一端部の外底面に外部接続基板取り付け部としての凹み部65が設けられる。上げ底部64の底板61の両端部には、フレーム60の外部に配置される一対の外部接続端子30とフレーム60の内部に配置される2本のボイスコイルリード線21bとの接続部としての貫通孔66が設けられる。
【0017】
底板61には、スピーカ1の組み立て時に、ボイスコイル21を長手方向の中心線上の2箇所と短手方向(図2におけて左右方向)の中心線上の2箇所の合計4箇所で保持して位置決めするための図示しない4本のボイスコイル位置決めピンをフレーム60の底側から内部へ挿入するための貫通孔67,67’が、4本のボイスコイル位置決めピンの挿入位置に対応するフレーム60の長手方向の中心線上の2箇所と短手方向の中心線上の2箇所の合計4箇所に設けられる。
【0018】
各貫通孔67,67’は、スピーカ1の使用時には、振動板22によって押されたフレーム60内の空気(音)を外部へ逃がす背面音孔として機能する。フレーム60の長手方向の中心線上の2つの貫通孔67は、ヨーク外側壁11aより内側のヨーク底板としての底板61に設けられ、主として、振動板22の振動板中央部で押された空気を逃がし、フレーム60の短手方向の中心線上の2つの貫通孔67’は、ヨーク外側壁11aの内側と外側の底板61に跨って設けられ、振動板22の振動板中央部だけでなく振動板エッジ部で押された空気も逃がす。
【0019】
ヨーク外側壁11aの短手方向の中心線上の2箇所には、ボイスコイルリード線引き出し部としての途切れ部11bが設けられる。フレーム60の短手方向の中心線上の2つの貫通孔67’は、2つの途切れ部11bでヨーク外側壁11aの内側と外側の底板61に跨る。
【0020】
外側壁62の上部内面には、振動系20の支持面としての水平な段差面68が設けられる。
【0021】
ヨーク一体型のフレーム60は、一枚の金属平板(磁性材料)のプレス加工によって形成され、短手方向の中心線を対称軸とする軸対称構造を有する。
【0022】
マグネット12は、長円柱状の永久磁石からなる。ポールピース13は長円形の金属平板(磁性材料)からなる。ヨーク11の内底面にマグネット12を接着固定し、マグネット12の上面にポールピース13を接着固定して、長円形状の内磁型の磁気回路10を構成する。磁気回路10は、ヨーク外側壁11aの上部とポールピース13間に長円形の磁気ギャップ14を形成する。
【0023】
ボイスコイル21は、プラスチックフィルムなどからなる長円筒状のボイスコイルボビン21aの外周面に銅線などが巻き付けられて長円筒状に形成される。巻き線の両端部には、それぞれ、外部接続端子30にボイスコイル21を電気接続するためのボイスコイルリード線21bが接続される。ボイスコイルリード線21bは、ボイスコイル21の下端部であって、ボイスコイル21の短手方向の中心線上の2箇所から引き出される。
【0024】
振動板22は、ボイスコイル21の上端開口を覆う長円形の振動板中央部23と、振動板中央部23の全周を取り囲み、フレーム60の外形に合わせて外形が矩形に形成される振動板エッジ部24を有する。振動板中央部23と振動板エッジ部24は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)などのプラスチックフィルムなどの薄膜からなる。
【0025】
振動板22は、振動板中央部23と振動板エッジ部24を別々に形成した後、振動板中央部23の外周縁部と振動板エッジ部24の内周縁部を接着固定して形成される。振動板エッジ部24の外周縁部の裏側には、真鍮などの金属からなる座金としての矩形状の振動板リング25が接着固定される。
【0026】
振動系20は、ボイスコイルボビン21aの上端部に振動板22の振動板中央部23と振動板エッジ部24の境界部の裏側を接着固定し、振動板22の振動板中央部23と振動板エッジ部24の境界部の裏側にボイスコイルボビン21aを介してボイスコイル21を垂下固定して構成する。
【0027】
振動系20は、その上端部が振動板エッジ部24でスピーカ1の静止部であるフレーム60につながれて保持される。すなわち、外側壁62の段差面68に振動板リング25を介して振動板エッジ部24の外周縁部を接着固定することにより、振動板22がフレーム60の上部開口を覆うようそこに設置され、ボイスコイル21が磁気ギャップ14へ上方から挿入配置される。
【0028】
外部接続基板31は、プリント回路基板であって、2つの外部接続端子30を絶縁状態で一体に設けており、フレーム60の凹み部65に取り付けられて、各貫通孔66を通して各外部接続端子30の一端側を上げ底部64の内底面の両端部に露出させる。各外部接続端子30の他端側は、外部接続基板31の裏側に略面一に露出されて、スピーカ1が装着される携帯電話などの電子機器側の外部回路(プリント回路基板)に電気接続される。
【0029】
バッフル40は、金属平板のプレス加工によって形成され、フレーム60より浅い有天四角筒状に形成され、フレーム60の上部開口に嵌合されて、振動板22を覆い保護する。バッフル40の外側壁の下端は、振動板エッジ部24の外周縁部および振動板リング25を上方から段差面68に押し付けて固定する。バッフル40の天板には、振動板中央部23と略同形状の正面音孔41が設けられる。バッフル40の外天面およびフレーム60の外底面には、そこにある正面音孔41および背面音孔(各貫通孔67,67’)を覆い、スピーカ1の音響性能を調整したり、スピーカ1内部への塵埃の侵入を防止するため図示しない通気性を有する制動布が貼着される。
【0030】
ダンパ50は、振動系20を正しい位置に保持し、振動系20の正確な振動を実現する役目を振動板エッジ部24とともに担うためにスピーカ1に備えられるが、ボイスコイルリード線21bを一表面に這わせて外部接続端子30に導くように構成される。
【0031】
ダンパ50には、ダンパ機能を発揮するダンパ本体51と、2本のボイスコイルリード線21bをそれらの接続対象となる外部接続端子30に導くための一対のリード部52が設けられる。ダンパ本体51とリード部52は、一平面内に配置される。ダンパ50は、PET、PEI、PIなどのプラスチックフィルムなど一枚のシート状体(非磁性体)の打ち抜き加工により形成されて平面構造を有する。
【0032】
ダンパ本体51は、ボイスコイルボビン21aの下端部に連結する可動部としての外輪部51aと、スピーカ1の静止部である磁気回路10のマグネット12に連結する固定部としての内輪部51bと、外輪部51aと内輪部51b間をつなぐ可撓部51cを設け、マグネット12に対して振動系20を支えるように構成される。
【0033】
外輪部51aは、ボイスコイルボビン21aの内周面に外輪部51aの外周端面を接触させる或いはボイスコイルボビン21aの下端面に外輪部51aの一表面を接触させるように、全周にわたって幅一定な長円形輪体に形成される。
【0034】
内輪部51bは、マグネット12の外周面に内輪部51bの内周端面を接触させる或いはマグネット12の外周面に上向き或いは下向きの内輪部接着部として設けられる水平な段差面70に内輪部51bの一表面を接触させるように、全周にわたって外輪部51aと略同じ幅での幅一定で、外輪部51aより小さく、かつ、外輪部51aと同心な長円形輪体に形成される。外輪部51aと内輪部51bの間隔は全周にわたって一定となる。
【0035】
マグネット12の外周面に段差面70を直接に設けると、マグネット12の製造コストが高く付くため、プラスチック(非磁性体)などからなる長円筒状のダンパリング71を設け、ダンパリング71の外周面に段差面70を設け、ダンパリング71をマグネット12に外嵌することにより、マグネット12の外周面に段差面70を設ける。
【0036】
可撓部51cは、一平面内でクランク状に曲げられて、全長にわたって外輪部51aおよび内輪部51bと略同じ幅での幅一定な撓み変形可能な複数本(図例では8本)の板バネ状体からなり、各可撓部51cの中間部が外輪部51aと内輪部51b間に描かれるこられと同心な長円形の中心線に沿って配置され、各可撓部51cの外向きの一端が外輪部51aの内周縁に連結され、各可撓部51cの内向きの他端が内輪部51bの外周縁に連結され、各可撓部51cによって外輪部51aと内輪部51b間で互いにダンパ本体51の周方向にずれた複数箇所(図例では8箇所)がつながれる。可撓部51cによる外輪部51aと内輪部51b間のつなぎパターンは、ダンパ本体51の周方向位置によってダンパ性能にアンバランスが生じないような形状にされる。すなわち、ダンパ本体51の長手方向(図2において上下方向)の中心線や短手方向(図2において左右方向)の中心線を対称軸とする軸対称形状、ダンパ本体51の中心を対称中心とする点(回転)対称形状などの対称形状にされる。図例ではダンパ本体51の長手方向の中心線および短手方向の中心線のいずれでも対称軸となる軸対称形状であって、ダンパ本体51の中心を対称中心としても180度点対称形状である。
【0037】
一対のリード部52は、それぞれ、一平面内でL字状に曲げられた細幅で撓み変形可能な板バネ状体からなり、ヨーク外側壁11aの途切れ部11b、ヨーク外側壁11aとフレーム60の外側壁62間を経由して、上げ底部64の両端部まで延出形成される。
【0038】
各リード部52の先端部には、上げ底部64の底板61aの両端部に設けられた貫通孔66を取り囲み、貫通孔66の周囲にある上げ底部64の内表面に接着固定するためのリング部52aが形成される。
【0039】
各リード部52の一表面(上面)には、ボイスコイルリード線21bを接着固定するために、リード部52の外輪部51aに連結される基端部からリード部52の先端部に形成されるリング部52aの内孔52bまで連続した線状或いは1以上の切れ目を入れた破線状の図示しない接着層が設けられる。接着層は、例えば粘着材の塗布によって形成される。
【0040】
各リード部52は、ダンパ本体51の長手方向の中心線を対称軸とする軸対称にダンパ本体50から延出形成され、ダンパ50は、全体としてダンパ本体51の長手方向の中心線を対称軸とする軸対称構造を有する。
【0041】
振動系20は、上端部が振動板エッジ部24でスピーカ1の静止部であるフレーム60につながれて保持され、下端部がさらにダンパ50でスピーカ1の静止部である磁気回路10のマグネット12につながれて保持される。すなわち、ボイスコイルボビン21aの内周面に外輪部51aの外周端面を接着固定させる或いはボイスコイルボビン21aの下端面に外輪部51aの一表面(上面)を接着固定させるとともに、マグネット12の外周面に内輪部51bの内周端面を接着固定させる或いはマグネット12の外周面にダンパリング71を介して設けられた上向き或いは下向きの段差面70に内輪部51bの一表面(上面)を接着固定させ、ボイスコイルボビン21aの下端部とマグネット12間にダンパ本体51を水平に張りわたすことにより、ダンパ本体51がダンパ機能を発揮可能になる。
【0042】
このとき、ヨーク外側壁11aの途切れ部11b、ヨーク外側壁11aとフレーム60の外側壁62間を経由して、上げ底部64の両端部に各リード部52が延出されるから、貫通孔66の周囲にある上げ底部64の内表面に、各リード部52の先端部に形成されたリング部52aを接着固定させることにより、各リード部52を、外輪部51aの外周縁における短手方向の中心線上の2箇所と上げ底部64の両端部間にダンパ本体51と同一平面内で水平に張りわたすことにより、各リード部52によって、2本のボイスコイルリード線21bをそれらの接続対象となる外部接続端子30に導くものである。
【0043】
すなわち、各リード部52の基端部の直上となるボイスコイル21の下端部であって、ボイスコイル21の短手方向の中心線上の2箇所から引き出される2本のボイスコイルリード線21bを、各リード部52の一表面(上面)に設けられた図示しない接着層に接着固定することにより、2本のボイスコイルリード線21bが、各リード部52に沿ってL字状に曲げられ、ヨーク外側壁11aの途切れ部11b、ヨーク外側壁11aとフレーム60の外側壁62間を経由して、上げ底部64の両端部に導かれる。こうして、2本のボイスコイルリード線21bの接続対象となる外部接続端子30へのフォーミングによる引き回し処理を、スピーカ1内の空中でなくダンパ本体51に設けたリード部52の一表面上で実現する。
【0044】
ボイスコイルリード線21bをリード部52の図示しない接着層に接着固定するときは、ボイスコイル21の振動を許容し、かつ、妨げないために、ボイスコイルリード線21bのボイスコイル21からの引き出し側端部と各リード部52の図示しない接着層に対する接着固定部間に十分な弛みを持たせる。
【0045】
2本のボイスコイルリード線21bは、フォーミングによる引き回し処理後、各リード部52の先端部に形成されたリング部52aの内孔52bおよび上げ底部64の底板61aの両端部に設けられた貫通孔66を通して上げ底部64の内底面の両端部に露出されている外部接続端子30の一端側に半田付け或いはスポット溶接80によって接続される。
【0046】
各リード部52は、スピーカ1の組み立て時に2本のボイスコイルリード線21bをそれらの接続対象となる外部接続端子30に導く機能だけでなく、スピーカ1の使用時には、リード部52の先端部(リング部52a)がスピーカ1の静止部であるフレーム60に連結する固定部となり、リード部52の基端部から先端部までがボイスコイルボビン21aの下端部に連結する可動部としての外輪部51aとスピーカ1の静止部であるフレーム60に連結する固定部としてのリード部52の先端部(リング部52a)をつなぐ可撓部となり、ダンパー機能を発揮する。すなわち、ダンパ本体51は、振動系20の下端部をスピーカ1の静止部である磁気回路10のマグネット12に繋いでダンパー機能を発揮するのに対して、各リード部52は、振動系20の下端部をスピーカ1の静止部であるフレーム60にいでダンパー機能を発揮する。ダンパ50は、各リード部52によってもダンパー性能が向上されている。
【0047】
ダンパ50は、ダンパ本体51から外部接続端子30まで延出形成し、ボイスコイルリード線21bを一表面に接着固定して外部接続端子30に導くためのリード部52を設け、ボイスコイルリード線21bのフォーミングによる引き回し処理を、フレーム60内の空中でなくダンパ本体51に設けたリード部52の一表面上で実現する、すなわち、リード部52の一表面へのボイスコイルリード線21bの接着固定で実現するから、ボイスコイルリード線21bのフォーミングによる引き回し処理が容易に、かつ、適正に行えるようになるとともに、ボイスコイルリード線21bのフォーミングの安定化、外部接続端子30に対するボイスコイルリード線21bの位置精度の向上も図られ、スピーカ1の生産性向上を実現する。ボイスコイルリード線21bの耐屈曲性の向上も図られ、スピーカ1の耐入力性向上も実現する。
【0048】
ダンパ本体51は、ボイスコイルボビン21aの下端部に連結する可動部51aと、スピーカ1の静止部(フレーム60や磁気回路10)に連結する固定部51bと、可動部51aと固定部51b間をつなぐ可撓部51cを設け、振動板エッジ部24との距離が最大に長くなる振動系20の下端をダンパ本体51で支えるから、高いダンパ性能が得られ、振動系20の上端と下端の2点を振動板エッジ部24とダンパ本体51で支えるから、より安定的で正確な振動系20の振動が得られ、さらなるスピーカ1の耐入力性向上が可能となる。
【0049】
ダンパ本体51は、ボイスコイルボビン21aの下端部に連結する可動部としての外輪部51aと、スピーカの静止部である磁気回路10のマグネット12に連結する固定部としての内輪部51bと、外輪部51aと内輪部51b間をつなぐ可撓部51cを設け、マグネット12に対して振動系20を支えており、外輪部51aからリード部52が延出形成され、ポールピース13とヨーク11間のスペースを有効利用して、特別にスペースを確保することなくダンパ本体51が設置できるから、さらなるスピーカ1の薄型化、さらなるスピーカ1の耐入力性向上が可能となる。
【0050】
ダンパ本体51とリード部52が一平面内に配置され、ボイスコイルリード線21aのフォーミングによる引き回し処理を、リード部52の平らな一表面へのボイスコイルリード線21aの接着固定で実現するから、ボイスコイルリード線21aのフォーミングによる引き回し処理がさらに容易に、かつ、適正に行えるようになり、さらなるスピーカ1の生産性向上、さらなるスピーカ1の薄型化、さらなるスピーカ1の耐入力性向上が可能となる。
【0051】
ダンパ50は、一枚のシート状体の打ち抜き加工により形成されて平面構造を有し、スピーカ1の生産性向上、スピーカ1の薄型化、スピーカ1の耐入力性向上が可能なダンパ50が安価に得られる。なお、ダンパ50は、ボイスコイルボビン21aの振動板22側とは反対側の端部に連結する可動部としての内輪部と、スピーカ1の静止部であるフレーム60の外側壁62に連結する固定部としての外輪部と、内輪部と外輪部間をつなぐ複数本の可撓部を有し、フレーム60に対して振動系20を支えるダンパ本体を設け、可撓部が、2本のボイスコイルリード線21bをそれらの接続対象となる外部接続端子30に導くための一対のリード部を兼ねる特定可撓部を含み、ボイスコイルリード線21bのフォーミングによる引き回し処理を、フレーム60内の空中でなくダンパ本体51の一部、すなわち、特定可撓部の一表面上で実現するようなものでもよい。この構造では、ダンパ本体は、フレーム60に対して振動系20を支えるから、磁気回路10のマグネット12を大きくし、磁気回路10を強化することにより、スピーカ1の感度を高くすることができる。
【0052】
スピーカ1は、ヨーク11とマグネット12およびポールピース13を有する磁気回路10と、ボイスコイル21と振動板22を有する振動系20と、これら磁気回路10と振動系20を保持するフレーム60とを備え、磁気ギャップ14にボイスコイル21を配置し、ダイナミック型に構成する。
【0053】
ダイナミック型のスピーカ1は、外部回路から外部接続端子30およびボイスコイルリード線21bを通じてボイスコイル21に電流が流されると、磁気ギャップ14で略水平方向に流れている磁束とボイスコイル21に流された電流との相互作用でボイスコイル21が上下にピストン運動をして振動し、その振動がボイスコイルボビン21aによって振動板22に伝えられ、振動板エッジ部24を支点に振動板中央部23が振動し、音を出す。すなわち、電気を音に変換する。
【0054】
そして、ダイナミック型のスピーカ1における振動板22で、振動板中央部23の形状をドーム状から最終的に平面状に扁平化し、スピーカ1を薄型化しようとすると、振動板中央部23は扁平化に伴い強度が低下するため、スピーカ1の耐入力性が低下するが、図1(a)(b)(c)、図2〜図4、図6(a)に示すように、振動板22は、振動板中央部23を薄型化(扁平化)しながら必要な剛性を持たせ、スピーカ1を薄型化しながら従来と同等或いはそれ以上の耐入力性を確保するために、平面状のプラスチックフィルムなどの薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状(蜂の巣状)の補強用リブ26を形成する。
【0055】
図例では振動板中央部23の上面が凹、下面が凸になる溝状の補強用リブ26を示すが、振動板中央部23の上面が凸、下面が凹になる隆起状の補強用リブであってもよい。
【0056】
以上のように、本実施形態の振動板22は、ヨーク11とマグネット12およびポールピース13を有する磁気回路10と、ボイスコイル21と振動板22を有する振動系20と、これら磁気回路10と振動系20および外部接続端子30を保持するフレーム60を備え、磁気ギャップ14にボイスコイル21を配置してなるスピーカ用であって、平面状の薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状の補強用リブ26を形成するから、振動板中央部23の全面を一様に補強でき、しかも、補強用リブ26の密度(細かさ)を調整することによって振動板中央部23の強度を全面一様に調整でき、振動板中央部23を薄型化しながら必要な剛性を持たせることができる。振動板中央部23を構成する薄膜に直接ハニカム状の補強用リブ26を形成するから、振動板中央部23の補強を安価に実現できる。
【0057】
また、本実施形態のスピーカ1は、本実施形態による振動板22を備えたから、スピーカ1を薄型化しながら従来と同等或いはそれ以上の耐入力性を確保することができる。
【0058】
次に、本発明による一実施形態によるスピーカ用振動板の変形構造を図6を参照して説明する。図6は本発明の一実施形態によるスピーカ用振動板の変形構造の説明図であって、図6(a)は変形前のスピーカ用振動板の半断面図を示し、図6(b)は第1の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(c)は第2の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(d)は第3の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(e)は第4の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図、図6(f)は第5の変形例としてのスピーカ用振動板の半断面図である。
【0059】
図6(a)に示すように、本発明の一実施形態によるスピーカ用振動板22は、平面状の薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状の補強用リブ26を形成したが、図6(b)に示す第1の変形例の振動板22aのように、平面状にまで扁平化しないまでも従来よりも扁平化したドーム状の薄膜からなる振動板中央部23aの全面にハニカム状の補強用リブ26を形成し、ドーム状のままで振動板中央部23aを薄型化しながら必要な剛性を持たせるようにしてもよい。
【0060】
図6(c)に示す第2の変形例の振動板22bは、平面状の薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状の補強用リブ26を形成し、その振動板中央部23の片面(図例では上面)に補強材としてのアルミ箔などの金属箔やPET、PEI、PIなどのプラスチックフィルムなどの薄膜からなる表面材27を貼り付け、振動板中央部23の剛性をさらに高めたものである。表面材27の振動板中央部23への貼り付けは、接合面の片面或いは両面への接着材の塗布、接合面の片面或いは両面にあらかじめ感熱性の接着層を形成しておき、熱プレスで表面材27を振動板中央部23に貼り付けることによって行える。このような表面材27によるさらなる補強は、図6(b)に示す第1の変形例の振動板22aにも適用可能である。
【0061】
図6(d)に示す第3の変形例の振動板22cは、平面状の薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状の補強用リブ26を形成し、その振動板中央部23の両面(上面と下面)に第2の変形例の振動板22bと同じ表面材27を貼り付け、振動板中央部23の剛性をさらに高めたものである。
【0062】
図6(e)に示す第4の変形例の振動板22dは、平面状の薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状の補強用リブ26を形成し、その振動板中央部23の補強用リブ26に補強材としての接着剤28を充填し、振動板中央部23の剛性をさらに高めたものである。接着剤28には例えば紫外線硬化型接着剤が用いられる。このような接着剤28による補強は、図6(b),(c),(d)に示す第1,第2,第3の変形例の振動板22a,22b,22cにも適用可能である。
【0063】
図6(f)に示す第5の変形例の振動板22eは、平面状の薄膜からなる振動板中央部23の全面にハニカム状の補強用リブ26を形成し、その振動板中央部23を2枚反対向きに貼り合わせ、すなわち、2枚の振動板中央部23の上面(正面)同士或いは下面(背面)同士(図例では下面同士)を貼り合わせ、振動板中央部23の剛性をさらに高めたものである。2枚の振動板中央部23の貼り合わせは、接合面の片面或いは両面への接着材の塗布、接合面の片面或いは両面にあらかじめ感熱性の接着層を形成しておき、熱プレスで2枚の振動板中央部23の接合面同士を貼り合わせることによって行える。なお、図6(f)に示す第5の変形例の振動板22eは、2枚の振動板中央部23の貼り合わせだけでなく、その振動板中央部23の片面或いは両面(図例では両面)への表面材27の貼り付けによって、振動板中央部23の剛性向上を図った第6の変形例の振動板22fも示す。第5、第6の変形例の振動板22e,22fにおいても、接着剤28による補強は可能である。
【0064】
本発明の一実施形態によるスピーカ用振動板22および第1〜第6の変形例のスピーカ用振動板22および22a〜22fは、振動板中央部23,23aと振動板エッジ部24を別体に形成して一体化しているが、これらは一枚のPET、PEI、PIなどのプラスチックフィルムなどの薄膜から一体に成形してもよい。
【0065】
なお、本実施形態は、本発明の一実施形態を示すものであって、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 スピーカ
10 磁気回路
11 ヨーク
12 マグネット
13 ポールピース
14 磁気ギャップ
20 振動系
21 ボイスコイル
22,22a,22b,22c,22d 振動板
23,23a 振動板中央部
26 補強用リブ
27 表面材
28 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークとマグネットおよびポールピースを有する磁気回路と、ボイスコイルと振動板を有する振動系と、これら磁気回路と振動系を保持するフレームを備え、磁気ギャップに前記ボイスコイルを配置してなるスピーカ用であって、平面状或いはドーム状の薄膜からなる振動板中央部の全面にハニカム状の補強用リブを形成したことを特徴とするスピーカ用振動板。
【請求項2】
前記振動板中央部の片面或いは両面に補強材としての薄膜からなる表面材を貼り付ける請求項1に記載のスピーカ用振動板。
【請求項3】
前記振動板中央部の補強用リブに補強材としての接着剤を充填する。
【請求項4】
前記振動板中央部を2枚反対向きに貼り合わせる。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスピーカ用振動板を備えたことを特徴するスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−71682(P2011−71682A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220171(P2009−220171)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】