説明

スピーカ装置及びスピーカ装置の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカ装置及びスピーカ装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気信号を音響エネルギーに変換するためのスピーカ装置の一例として、いわゆる動電タイプのコーン型スピーカユニットが知られている。
図11はその一例であり、同図に示すように、コーン型スピーカユニットは、例えば略円錐形状の一部で形成された振動板(コーン)101の中心部には、ボイスコイル102が巻回された円筒状のボイスコイルボビン103が、振動板101と一体に設けられている。
【0003】
また、振動板101及びボイスコイルボビン103は、適度なコンプライアンスと剛性を兼ね備えたリング形状のエッジ108及びダンパ109の一端に固定され、さらに、エッジ108及びダンパ109の他方端は、磁気回路107と一体に形成されるフレーム112に固定されて、上記振動板101及びボイスコイルボビン103を弾性支持している。
【0004】
これにより、エッジ108及びダンパ109は、ボイスコイル102及びボイスコイルボビン103を、マグネット104、プレート105、ポールヨーク106等で構成される磁気回路107の磁気ギャップ内において磁気回路に接触することなく所定位置に配置すると共に、振動板101が所定方向に所定の振幅範囲内でピストン振動可能に弾性支持する。
【0005】
また、ボイスコイル102の両端はそれぞれ導電性を有する一対のリード線111の片端に接続され、さらに一対のリード線111のそれぞれ他方端は、フレーム112に設けられた一対の端子110に接続されている。
【0006】
このため、端子110から導電性を有するリード線111を経てボイスコイル102に供給される音声電流に応じて、ボイスコイル102が磁気回路107の磁気ギャップ内において振動板101のピストン振動方向に沿って駆動されることにより、振動板101が、ボイスコイル102及びボイスコイルボビン103と一体に振動して電気信号を音響エネルギーに変換して音波を放射する。
【0007】
また、センターキャップ113は、振動板101の中央部に設けられた中心孔を塞ぐ様に振動板101上に固着され、振動板101と一体に設けられることで、振動板101及びボイスコイル102の構造強度を補強し、振動板101及びボイスコイル102の分割振動を極力抑えている。
【0008】
また、センターキャップ113は、振動板101と一体に振動するので、音響放射パワーの一部(主として高音域)を担う場合や振動板101の形状に起因した音波の干渉を位相補正して音響特性を可変する役割を有し、振動板101の中央部に設けられた中心孔に起因した音響特性の影響を、必要に応じて補正している。
【0009】
従来の動電タイプのコーン型スピーカユニットはこのように構成され、例えば以下の図12R>2及び図13に示す製造方法により形成される。
図13(a)〜(d)は、図11に示すコーン型スピーカユニットの製造方法を工程順に示した図であり、図12は図13の前工程を示す図である。
以下工程順に説明する。
【0010】
先ず、前工程を図12により説明する。図12は、コイルゲージ114の構造をコイルゲージ114が予め磁気回路107にフレーム112が取り付けられて形成されたフレームASSYに予め組み入れられる前工程と共に示した断面構造図である。
【0011】
図12(a)は、コイルゲージ114の構造であり、コイルゲージ114は、例えば金属等からなる本体部114aの円筒側面に所定の厚さを有する樹脂フィルム等からなる円筒形状のコイル保持部114bが固着されている。
【0012】
本体部114aの円筒側面外径(即ちコイル保持部114bの内径)D1 は、ポールヨーク106の中央部分に位置するセンターポール径と略等しく、且つ、コイル保持部114bが、図12(c)に示すように、センターポールによって離脱嵌合可能に保持できるように寸法設定される。
【0013】
また、保持部114bの外径D2 は、図12(b)に示すように、ボイスコイルボビン103の内径D3 と略等しく、且つ、コイル保持部114bが、ボイスコイルボビン103を離脱嵌合可能に保持できるように寸法設定される。
【0014】
コイルゲージ114はこのような構造を有し、予め、図12(b)に示すようにボイスコイル102が巻回されたボイスコイルボビン103を嵌合装着させて、次に、図12(c)に示すように、磁気回路107のセンターポールに嵌合装着することにより、ボイスコイルボビン103を保持する前工程がなされる。
【0015】
これにより、ボイスコイルボビン103及びボイスコイル102は、磁気回路107の磁気ギャップ内においてポールヨーク106のセンターポール及びプレート105に当接すること無く保持されると共に、ポールヨーク106及びプレート105に対する位置決めがなされる。
【0016】
次に、図13に示す各工程を説明する。
先ず、図13(a)に示すように、上述したフレームASSYの所定位置に、ダンパ109を載置し、次に先に示した前工程によって、ボイスコイルボビン103、ボイスコイル102が嵌合装着したコイルゲージ114を、ダンパ109の中心孔に挿通させた後、ポールヨーク106のセンターポールに嵌合装着させる。
【0017】
次に、ダンパ109の内周側、外周側を接着剤等により、それぞれボイスコイルボビン103、フレームASSYに固着させる。
なお、このとき、ボイスコイル102の両端側はダンパ109の上面側に長めに引き出しておく。
【0018】
次に、図13(b)に示すように、予めエッジ108が取り付けられた振動板101を、フレームASSYの上方から載置してボイスコイル102に対する位置決めを行い、その後接着剤等を用いて、エッジ108の外周部分をフレームASSYに取り付けて固定すると共に振動板101の内周部分をボイスコイルボビン103に取り付けて固定する。
【0019】
このとき、ボイスコイルボビン103は、コイルゲージ114により移動規制されているので、振動板101の固定作業中に、ボイスコイル102と振動板101の位置ずれは生じない。
【0020】
次に、図13(c)に示すように、ボイスコイル102の両端を振動板101に予め設けられたハトメ等に半田づけ処理した後、コイルゲージ114をボイスコイルボビン103から引き抜く。
【0021】
次に、図13(d)に示すように、接着剤等を用いて振動板101の中央部にセンターキャップ113を固着させ、振動板101の裏面側において、一対のリード線111を用いて、ボイスコイル102の両端と一対の端子110とをそれぞれ接続することでコーン型スピーカユニットが形成される。
【0022】
このように、コーン型スピーカユニットを製造する場合、振動板101及びダンパ109がボイスコイルボビン103に接着されて固定されるまでは、互いの相対位置を精度良く維持する必要があり、コイルゲージ114が必要である。
このため、振動板101の中央部はコイルゲージ114の最大外径よりもやや大きな直径の中心孔が設けられている。
【0023】
振動板101は、この中心孔があいているために構造強度が低下するので、これを補強するために通常センターキャップ113が用いられるが、本来は、振動板101を一定の厚さのもとで高剛性に形成するためには、振動板101全体がセンターキャップ113の形状を含めて一体成形されることが望ましい。
【0024】
つまり、振動板101は、高剛性を有すると共に、振動板の各領域から放射される音波が互いに干渉することなく極力同位相で放射されることが望ましく、これらを満足させるために、例えば高剛性を有する材料で構成された平面振動板等の一体型振動板がある。
【0025】
図14は、平面振動板を用いた平面スピーカユニットの一例をその製造工程の一部と共に示した図である。なお、図14中において、図11乃至12と同等の部分については同一の符号を付している。
【0026】
この平面スピーカユニットの製造方法は以下の工程順に行われる。
即ち、先ず、図14(a)に示すように、予め磁気回路107に平面スピーカユニット用のフレーム115が取り付けられて形成されたフレームASSYの所定位置に、ダンパ109を載置し、次に先に示した前工程によって、ボイスコイルボビン103、ボイスコイル102が嵌合装着したコイルゲージ114を、ダンパ109の中心孔に挿通させた後、ポールヨーク106のセンターポールに嵌合装着させる。
【0027】
次に、ダンパ109の内周側、外周側を接着剤等により、それぞれボイスコイルボビン103、フレームASSYに固着させる。
なお、このとき、ボイスコイル102の両端側はダンパ109の上面側に長めに引き出しておく。
【0028】
次に、図14(b)に示すように、一対のリード線111を用いて、ボイスコイル102の両端と一対の端子110とをそれぞれ接続した後、ダンパ109に固着されたボイスコイルボビン103からコイルゲージ114を抜き取る。
【0029】
次に、図14(c)に示すように、予めエッジ116が取り付けられた平面形状からなる平面振動板117をフレームASSYの上方から載置してボイスコイル102に対する位置決めを行い、その後接着剤等を用いて、エッジ116の外周部分をフレームASSYに取り付けて固定すると共に振動板117の裏面側をボイスコイルボビン103に取り付けて固定する。
【0030】
平面スピーカユニットは以上のように製造されることで、先に述べたコーン型スピーカユニットの製造方法の場合のようにセンターキャップ113によって振動板の補強を行う必要がない。
【0031】
なお、平面スピーカユニットにおけるリード線111の接続作業は、上述したように、振動板117を固定する以前に行われるが、これは、コーン型スピーカユニットの場合は、振動板101が略円錐形状の一部で形成されるので、振動板101を固定した後においても振動板101の裏面側では、リード線111の接続作業が容易に行うことのできる充分なスペースが確保されるが、平面スピーカユニットの場合には、振動板117が平面形状なので、振動板117とダンパ109の間が狭いため、リード線111の接続作業が困難であるからである。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この種のスピーカユニットは、上述したように、その製造工程において、コイルゲージ114を取り去りダンパ109で浮遊支持されただけのボイスコイルボビン103に対して振動板117を位置決めして固着されるため、ボイスコイルボビン103と振動板117の固定作業中に両者のずれがおこり、接着当初の位置決め通りに固着できない場合がある。
【0033】
その結果、スピーカユニットのボイスコイル102と磁気回路107の相対位置がずれたり、ボイスコイル102やボイスコイルボビン103が磁気回路107のギャップ内においてポールヨークに接触するので、ボイスコイル102に供給された電気信号を忠実に音響エネルギーに変換して再生することが困難となる。
【0034】
このため、従来の平面スピーカユニットにおいては、ダンパ109やエッジ116のコンプライアンスをある程度の範囲内に設定して、ボイスコイルボビン103と振動板117の固定作業に支障のない範囲において平面スピーカユニットを製造していた。
【0035】
しかし、ダンパ109やエッジ116のコンプライアンスは、平面スピーカユニットの最低共振周波数(f)を下げて低域の再生範囲を拡大する場合や、ボイスコイル102の振幅を大きくして振動板117の音圧をあげる場合にその値を大きく設定する必要があり、これにより、平面スピーカユニットの再生周波数帯域や最大音圧等の音響特性を向上させることができるのであるが、上述した製造方法を用いる限り、ダンパ109やエッジ116のコンプライアンスの設定には限界があり、スピーカユニットの音響特性を向上することが困難であった。
【0036】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、容易に製造でき、しかも良好な音響特性を有するスピーカ装置及びその製造方法を提供するものである。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明のスピーカ装置における一つの特徴は、振動板の裏面側に当該振動板の位置決めを行うための位置決め部を設けたことにある。
【0038】
また、この位置決め部は、磁気回路が有する中心孔を通じて突出する治具と嵌合することによって、振動板の当該磁気回路に対する位置決めを行うものである
【0039】
また、本発明の他の特徴は、前述のスピーカ装置において、振動板は、位置決め部と嵌合する治具によって所定位置において支持されることを特徴とする。
【0040】
また、本発明のスピーカ装置における他の特徴は、一つには、振動板の裏面側に当該振動板の位置決めを行うための位置決め部材を固定したことにある。
【0041】
また、この位置決め部材は、磁気回路が有する中心孔を通じて突出する治具と嵌合することによって振動板の当該磁気回路に対する位置決めを行う、振動板位置決め部が設けられていることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の他の特徴は、前述のスピーカ装置において、位置決め部材には、コイルと接合する接合部が設けられていることを特徴とする。
【0043】
また、前述のスピーカ装置において、コイルに電気的に接続される給電部を備えた給電ダンパを有することを特徴とする。
【0044】
また、前述のスピーカ装置において、振動板は、センターキャップが一体に形成されることを特徴とする。
【0045】
また、発明は、磁気回路とフレームを固定する工程と、磁気回路が有するセンターポールに対してコイルを位置決めすると共に、コイルとフレームとの間にダンパを接続する工程と、センターポールが有する中心孔から治具を突出させる工程と、振動板の裏面側に設けられた位置決め部と治具を嵌合させ振動板のセンターポールに対する位置決めを行う工程と、位置決めされた振動板をコイルとフレームに対して接続する工程とからなることを特徴とするスピーカ装置の製造方法からなる。
【0046】
また、本発明の特徴は、前述のスピーカ装置の製造方法において、ダンパは給電部を備えた給電ダンパからなり、給電部とコイルとを電気的に接続する工程を有する。
【0047】
また、前述のスピーカ装置の製造方法において、振動板は、センターキャップが一体に形成されることを特徴とする。また、前述のスピーカ装置の製造方法において、振動板全体が一体形成されると共に、ダンパがコイルへの給電線を含んで形成されることを特徴とする
【0048】
【作用】
本発明は以上のように構成したので、磁気回路の中心孔を通じて突出する治具が、振動板の裏面に設けられた位置決め部と嵌合することによって、位置決め部が有する位置決め部材が、振動板を磁気回路に対し所定位置において位置決めし、位置決め部に設けられた接合部にコイルを接合し、給電ダンパが備える給電部を接合部に接合することで給電部をコイルに電気的に接続するようにしたので、振動板を磁気回路に対し、確実に位置決めし且つ固定できると共に、コイルと振動板の固定作業についても、最初に位置決めしたコイルと振動板の位置関係を崩さずに固定作業を行うことができる。
従って、磁気回路に対するコイル、振動板の位置決めが良好になされたスピーカ装置を容易に製造することができ、従来の振動板全体を一体に形成したスピーカ装置に比べて良好な音響特性を有するスピーカ装置を提供することができる。
【0049】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に好適な実施形態について図面に基いて以下に説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるスピーカ装置の一例を示す動電タイプのコーン型スピーカユニットの主要部断面構造図である。同図において、振動板1は、例えば紙や樹脂の一体成形によって断面がほぼ同一の厚さを有するパラボリック形状となるように形成されている。
【0050】
したがって、振動板1は、適度なコンプライアンスと剛性を兼ね備えたリング形状のエッジ2が取り付けられた略円形の領域内では、全面に亘って閉じた曲面で構成されるので、従来のようなボイスコイルボビンを挿通するための円形の開口部分が形成されていない。
【0051】
また、振動板1の裏面側の中心付近には、例えばABS樹脂等によって形成されたホルダ3が振動板1の固着されて一体に形成されている。
【0052】
また、ホルダ3は、ボイスコイル4が巻回されて円筒状のボイスコイルボビン5に固定されて形成されたボイスコイルASSY(以下、コイルという)に嵌合し、振動板1、ボイスコイル4、ボイスコイルボビン5と一体に固着形成されている。
【0053】
また、ホルダ3及びボイスコイルボビン5は、適度なコンプライアンスと剛性を兼ね備えたリング形状のダンパ6の内周側に固定される。また、エッジ2及びダンパ6の外周側は、それぞれマグネット7、プレート8、ポールヨーク9等で構成される磁気回路10と一体に形成されるフレーム11に固定されている。
【0054】
磁気回路10が構成するポールヨーク9は、マグネット7を載置するための円形プレートの中央に略円筒状のセンターポールが立設する形状を有し、センターポールと同軸の円筒状の中心孔9aが貫通して形成されている。
【0055】
また、エッジ2及びダンパ6は、所定の振幅が得られる断面形状を有し、共に上記振動板1、ホルダ3、ボイスコイル4及びボイスコイルボビン5を弾性支持している。
【0056】
これにより、エッジ2及びダンパ6は、ボイスコイル4及びボイスコイルボビン5を、磁気回路10の磁気ギャップ内において磁気回路に接触することなく所定位置に配置すると共に、振動板1が所定方向に所定の振幅範囲内でピストン振動可能に弾性支持する。
【0057】
また、ボイスコイル4の両端は、ダンパ6に備えられた図示せぬ一対の給電線のそれぞれの一方端側に接続され、さらに、一対の給電線のそれぞれの他方端側がフレーム11に設けられた一対の端子12にそれぞれ電気的に接続されている。
【0058】
このため、ボイスコイル4が、端子12からダンパ6に備えられた給電線を経てボイスコイル4に供給される音声電流に応じて、磁気回路10の磁気ギャップ内において振動板1のピストン振動方向に沿って駆動されることにより、振動板1が、ホルダ3、ボイスコイル4及びボイスコイルボビン5と一体に振動して電気信号を音響エネルギーに変換して音波を放射する。
本発明の実施形態におけるコーン型スピーカユニットは、概略このような構造を有する。
【0059】
次に、このコーン型スピーカユニットの主要各部の詳細構造ついて説明する。先ず振動板1の詳細について述べる。図2は、振動板1の一例を示す断面詳細図であり、(a)はエッジ2が取り付けられた状態における振動板1の断面形状を示し、(b)は、(a)における矢印Aの部分の拡大図をそれぞれ示している。図2(b)に示すように、振動板1の裏面側には、リング状の突起からなるホルダ取付部1a、1bが振動板の中心軸Xに対しそれぞれ同軸に設けられている。
【0060】
次に、ホルダ3の詳細について述べる。図3は、ホルダ3の一例を示す構造図であり、(a)は上面から見た図を示し、(b)は側面から見た図を示し、(c)は底面から見た図を示し、(d)は側面側から見た断面図を示している。
【0061】
図3からわかるように、ホルダ3の底面側には、リング状の突起からなるガイド3a、3b、及び円形のガイド孔3cが中心軸Yに対しそれぞれ同軸に設けられている。ガイド3aの内面側は、コーン型スピーカユニットの後述する製造工程に用いられる治具14が離脱嵌合可能となるようにその形状寸法が設定される。
【0062】
また、ガイド3bは、内面側がボイスコイルボビン5と嵌合するようにその形状寸法が設定される。また、ガイド孔3cは、振動板1のホルダ取付部1aと嵌合するようにその形状寸法が設定される。また、ホルダ3は、ホルダ取付部1bの内側において振動板1に取り付けが可能なようにその最大外径が規制される。
【0063】
図4は振動板1及び治具14がホルダ3に嵌合する状態を表した図である。同図からわかるように、振動板1とホルダ3が互いに接する面は、ガイド孔3cがガイド3aと嵌合した場合に互いに密着するようにその寸法形状が設定されている。
【0064】
また、振動板1とホルダ3が互いに接する面は、上述したように、接着剤等によって固定されるが、この場合に、ホルダ取付部1bは、接着剤がホルダ取付部1bの外側にはみ出さないように規制して接着剤を含めた振動板1の質量バランスが中心軸Xに対し極端に非対称とならないようにする役目も有している。
【0065】
また、図4のように、振動板1とホルダ3が嵌合して固着した場合は、振動板1の中心軸X及びホルダ3の中心軸Yが一致するので、振動板1とホルダ3は互いに精度良く同軸を維持して一体となる。
【0066】
次に、ダンパ6の詳細について述べる。図5は、ダンパ6の一例を示す構造図であり、(a)は上面から見た図を示し、(b)は部分的に表した斜視図を示す。ダンパ6は、同図に示すように、例えば布に樹脂を含浸し加熱成形し同心円状の凹凸を形成したいわゆるコルゲーションダンパの表面に、銅箔等からなる導電性を有する一対の給電線6a、6bが取り付けられてリング状に形成されている。
【0067】
一対の給電線6a、6bは、布に樹脂を含浸し加熱成形した後に、同心円状の凹凸上に沿って接着剤やダンプ剤等によって放射状に配置したものであっても良いし、予め加熱成形前に布に形成し加熱成形によって凹凸形成したものであっても良い。また、ダンパ6中央部分には、コイルを挿通するための中心孔6cが設けられている。
本発明の実施形態におけるコーン型スピーカユニットは以上のように構成される。
【0068】
次に、本発明の実施形態におけるコーン型スピーカユニットの製造方法について以下に説明する。
図6及び図7は、本発明の実施形態におけるコーン型スピーカユニットの製造方法の一例を工程順に示した図であり、図6は図7の前工程である。
以下工程順に説明する。
【0069】
先ず、前工程を図6により説明する。図6は、コイルゲージ13が、予め磁気回路10にフレーム11が取り付けられて形成されたフレームASSYに予め組み入れられる前工程を、コイルゲージ13の構造と共に示した断面構造図である。
【0070】
図6(a)は、コイルゲージ13の構造であり、コイルゲージ13は、先に述べた従来のコイルゲージ114と同様、例えば金属等からなる本体部13aの円筒側面に所定の厚さを有する樹脂フィルム等からなる円筒形状のコイル保持部13bが固着されている。
【0071】
本体部13aの円筒側面外径(即ちコイル保持部13bの内径)D4 は、ポールヨーク9の中央部分に位置するセンターポールの外径と略等しく、且つ、コイル保持部13bが、図6(c)に示すように、センターポールによって離脱嵌合可能に保持できるように寸法設定される。
【0072】
また、コイル保持部13bの外径D5 は、図6(b)に示すように、ボイスコイルボビン5の内径D6 と略等しく、且つ、コイル保持部13bが、ボイスコイルボビン5を離脱嵌合可能に保持できるように寸法設定される。
【0073】
コイルゲージ13はこのような構造を有し、予め、図6(b)に示すようにボイスコイル4が巻回されたボイスコイルボビン5を嵌合装着させて、次に、図6(c)に示すように、磁気回路10のセンターポールに嵌合装着することにより、ボイスコイルボビン5を保持する前工程がなされる。
【0074】
これにより、ボイスコイルボビン5及びボイスコイル4は、磁気回路10の磁気ギャップ内においてポールヨーク9のセンターポール及びプレート8に当接すること無く保持されると共に、ポールヨーク9及びプレート8に対する位置決めがなされる。
【0075】
次に、図7に示す各工程を説明する。
先ず、図7(a)に示すように、上述したフレームASSYの所定位置に、ダンパ6を載置し、次に先に図6で示した前工程によって、前述したコイルが嵌合装着されたコイルゲージ13を、ダンパ6の中心孔6cに挿通させた後、ポールヨーク9の中心孔9aに嵌合装着させて、コイルを所定の位置に配置する。
【0076】
次に、ダンパ6の内周側、外周側を接着剤等により、それぞれボイスコイルボビン5、フレームASSYに接着する。
なお、このとき、ボイスコイル4の両端側はダンパ6の上面側に長めに引き出しておく。
【0077】
次に、ダンパ6が、ボイスコイルボビン5及びフレームASSYに固着された後、ボイスコイル4をダンパ6の中心孔6c付近において、一対の給電線6a、6bと電気的に接続処理すると共に、一対の給電線6a、6bの他方端側(即ちダンパ6の外周側)を一対の端子12にそれぞれ電気的に接続処理する。
【0078】
なおこの状態では、振動板1が未だダンパ6及びボイスコイルボビン5に固定されていないので、給電線6a、6bの各両端の接続処理は、従来のようなダンパと振動板の間における狭い空間で行う必要がなく、しかもボイスコイルボビン5をコイルゲージ13に固定した状態で行うことができるので、容易にしかも安定かつ確実に行うことができる。
給電線6a、6bがボイスコイル4及び端子12に接続された後は、コイルゲージ13をボイスコイルボビン5から引き抜いて離脱させる。
【0079】
次に、図7(b)に示すように、治具14をポールヨーク9の底面から中心孔9aに挿通させてセンターポールから突出させる。
【0080】
図8に治具14の概略断面構造図を示す。治具14は、例えばデルリン等の耐摩耗性、加工精度、加工性の優れた材料で形成され、図8に示すように、円板状の基台14aの中心に、所定の高さを有する円筒形状の直立部14bが設けられて一体に形成される。
【0081】
同図からわかるように、直立部14bは、基台14a側の根元付近の外径(D7 )がポールヨーク9の中心孔9aと離脱嵌合可能な形状寸法で形成されている。また、直立部14bの先端付近の外径(D8 )は、ホルダ3のガイド3aの内面側が離脱嵌合可能となるようにその形状寸法が設定されている。
【0082】
また、直立部14bは、基台14aに平行な面を有する段部14cを有し、図4に示すように、ホルダ3のガイド3aの内面側が直立部14bに嵌合する場合に、ガイド3aの底面と当接することで、ホルダ3を支持するように形成される。治具14は、以上のように形成される。
【0083】
また、図7(b)において、ダンパ図7(b)に示すように、治具14をポールヨーク9のセンターポールから突出させた後、ダンパ6の最内周部分及び、ダンパ6から突出したボイスコイルボビン5の側面に接着剤を全周塗布した後、ホルダ3のガイド3aを直立部14bに嵌合させて段部14cに載置する。
【0084】
このことにより、コイルが磁気回路に対し図7(a)に示す所定位置を維持したまま、段部14cによってガイド3aが支持されると共に、ガイド3bがダンパ6及びコイルに固定される。
【0085】
次に、図7(c)において、接着剤をフレームASSYのエッジ2が取り付けられる箇所及び、ホルダ3の表面の振動板1が取り付けられる箇所に塗布した後に、予めエッジ2が取り付けられている振動板1(図2参照)を上方から載置し、振動板1のホルダ取付部1aをホルダ3の中心孔3cに嵌合させて振動板1をホルダ3に固着させると共に、エッジ2の外周部分をフレームASSYに固着させる。これにより、振動板1は所定の位置に位置決めされた状態でホルダ3に固定される。次に、治具14をホルダ3から離脱させた後、中心孔9aから引き抜くと、コーン型スピーカユニットが形成される。
【0086】
なお、以上述べた実施形態においては、振動板1は、エッジ2が取り付けられた略円形の領域内では、全面に亘って閉じた曲面で構成したが、本発明はこれに限らない。即ち、スピーカ装置の製造の際に、磁気回路に対する振動板の位置決めを行うためのガイド1a、1b等が設けられた振動板であれば、開口部を有していても良い。また、必要に応じて振動板に開口部を設けて後にこれを塞ぐようにしても良い。
また、以上述べた実施形態においては、ホルダ3に対してダンパ6及びボイスコイル4を固定した後にホルダ3と振動板1の固着を行っているが、予めホルダ3と振動板1の固着を行っておきその後にホルダ3に対するダンパ6及びボイスコイル4を固定するようにしても良い。
【0087】
また、上述した実施形態においては、センターキャップを特に設けていないが、適宜必要に応じて、従来に見られるようなセンターキャップを併用するように構成しても良い。その場合、センターキャップの取り付け工程は、振動板を取り付ける工程以降の工程であればいつでも行うことができる。
【0088】
また、コーン型スピーカユニットに用いるダンパ6が有する一対の給電線6a、6bは、加熱成形された布の表面上に設けるようにしたが、これに限らず、例えば図9に示すように、一対の給電線15a、15bが布に織り込まれた状態で中心孔15cから放射状に形成されても良い。図9は、本発明に係るスピーカ装置に用いられるダンパ15のその他の例を示す構造図であり、(a)上面から見た図を示し、(b)は部分的に表した斜視図を示す。
【0089】
また、上述した実施形態においては、ホルダ3の底面側(治具14と対向する面側)はガイド3aの内面側に直立部14bが挿入されて嵌合するようにホルダ3及び治具14を形成したが、これに加えて、例えば図10に示すように、振動板1に固定するホルダ16が有する突起16aを治具17が有する凹部17aに嵌合させることにより、ホルダ16を治具17で所定位置に支持して製造するようにしても良い。
【0090】
この場合に、突起16a及び凹部17aが互いに嵌合する面積をより広く設定することができるので、治具17が、より安定した状態でホルダ16を支持することができる。なお、ホルダ16は、図10に示すように、中央部分にホルダ3のガイド孔3cの代わりに突起16aを設けた構造を有する。また、治具17は、治具14にさらに凹部17aを設けた構造を有する。
【0091】
また、ホルダ16及び治具17を用いたスピーカ装置の製造方法においては、ボイスコイルボビン5に嵌合するホルダ16のガイド(ホルダ3のガイド3bに相当する)の高さを余り高く設定しなくても確実に支持することができる。このため、スピーカ装置の振動板の放射面積を変えることなく付加質量をできるだけ小さくすることができ音響変換効率が増す。
【0092】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したため、磁気回路の中心孔を通じて突出する治具が、振動板の裏面に設けられた位置決め部と嵌合することによって、位置決め部が有する位置決め部材が、振動板を磁気回路に対し所定位置において位置決めし、位置決め部に設けられた接合部にコイルを接合し、給電ダンパが備える給電部を接合部に接合することで給電部をコイルに電気的に接続するようにしたので、振動板を磁気回路に対し、確実に位置決めし且つ固定できると共に、コイルと振動板の固定作業についても、最初に位置決めしたコイルと振動板の位置関係を崩さずに固定作業を行うことができる。
従って、磁気回路に対するコイル、振動板の位置決めが良好になされたスピーカ装置を容易に製造することができ、従来の振動板全体を一体に形成したスピーカ装置に比べて良好な音響特性を有するスピーカ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態におけるスピーカ装置の一例を示す図である。
【図2】振動板の一例を示す断面詳細図である。
【図3】ホルダの一例を示す構造図である。
【図4】振動板及び治具がホルダに嵌合する状態を表した図である。
【図5】ダンパの一例を示す構造図である。
【図6】本発明の実施形態におけるコーン型スピーカユニットの製造方法の一例を工程順に示した図である。(図7に示す工程の前工程)
【図7】本発明の実施形態におけるコーン型スピーカユニットの製造方法の一例を工程順に示した図である。
【図8】本発明の実施形態におけるコーン型スピーカユニットの製造に用いられる治具の概略断面構造図である。
【図9】本発明に係るスピーカ装置に用いられるダンパのその他の例を示す構造図である。
【図10】本発明のその他の実施形態におけるコーン型スピーカユニットのホルダが治具と嵌合する状態を表した図である。
【図11】従来における動電タイプのコーン型スピーカユニットの一例を示す図である。
【図12】従来における動電タイプのコーン型スピーカユニットの製造方法を工程順に示した図である。(図13に示す工程の前工程)
【図13】従来における動電タイプのコーン型スピーカユニットの製造方法を工程順に示した図である。
【図14】平面振動板を用いた平面スピーカユニットの一例をその製造工程の一部と共に示した図である。
【符号の説明】
1・・・・・振動板
1a・・・・ホルダ取付部
1b・・・・ホルダ取付部
2・・・・・エッジ
3・・・・・ホルダ
3a・・・・ガイド
3b・・・・ガイド
3c・・・・ガイド孔
4・・・・・ボイスコイル
5・・・・・ボイスコイルボビン
6・・・・・ダンパ
6a・・・・給電線
6b・・・・給電線
6c・・・・中心孔
7・・・・・マグネット
8・・・・・プレート
9・・・・・ポールヨーク
9a・・・・中心孔
10・・・・磁気回路
11・・・・フレーム
12・・・・端子
13・・・・コイルゲージ
13a・・・本体部
13b・・・コイル保持部
14・・・・治具
14a・・・基台
14b・・・直立部
14c・・・段部
15・・・・ダンパ
15a・・・給電線
15b・・・給電線
15c・・・中心孔
16・・・・ホルダ
16a・・・突起
17・・・・治具
17a・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板の裏面側に当該振動板の位置決めを行うための位置決め部を設け、前記位置決め部は、磁気回路が有する中心孔を通じて突出する治具と嵌合することによって、前記振動板の当該磁気回路に対する位置決めを行うことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記振動板は、前記位置決め部と嵌合する前記治具によって所定位置において支持されることを特徴とする請求項記載のスピーカ装置。
【請求項3】
振動板の裏面側に当該振動板の位置決めを行うための位置決め部材を固定し、前記位置決め部材は、磁気回路が有する中心孔を通じて突出する治具と嵌合することによって前記振動板の当該磁気回路に対する位置決めを行う、振動板位置決め部が設けられていることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項4】
前記位置決め部材には、コイルと接合する接合部が設けられていることを特徴とする請求項に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
コイルに電気的に接続される給電部を備えた給電ダンパを有する請求項1乃至4のいずれに記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記振動板は、センターキャップが一体に形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスピーカ装置。
【請求項7】
磁気回路とフレームを固定する工程と、前記磁気回路が有するセンターポールに対して前記コイルを位置決めすると共に、前記コイルと前記フレームとの間にダンパを接続する工程と、前記センターポールが有する中心孔から治具を突出させる工程と、振動板の裏面側に設けられた位置決め部と前記治具を嵌合させ前記振動板の前記センターポールに対する位置決めを行う工程と、位置決めされた前記振動板を前記コイルと前記フレームに対して接続する工程と、からなることを特徴とするスピーカ装置の製造方法。
【請求項8】
前記ダンパは給電部を備えた給電ダンパからなり、前記給電部と前記コイルとを電気的に接続する工程を有する請求項記載のスピーカ装置の製造方法。
【請求項9】
前記振動板は、センターキャップが一体に形成されることを特徴とする請求項7又は8に記載のスピーカ装置の製造方法。
【請求項10】
前記振動板全体が一体形成されると共に、ダンパがコイルへの給電線を含んで形成されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のスピーカ装置の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【特許番号】特許第3569413号(P3569413)
【登録日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【発行日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−90302
【出願日】平成9年3月25日(1997.3.25)
【公開番号】特開平10−271597
【公開日】平成10年10月9日(1998.10.9)
【審査請求日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【参考文献】
【文献】特開平08−289395(JP,A)
【文献】実開昭55−157399(JP,U)
【文献】実開昭55−009192(JP,U)
【文献】実開昭60−085498(JP,U)