説明

スプレー容器

【課題】操作が容易であり、安定して内容物を噴出できるスプレー容器を提供すること。
【解決手段】弾性変形可能な外容器2と、内容物が収容される内容器3と、前記外容器2と前記内容器3との連通及びその遮断を切り替える開閉部材4と、前記内容器3に連通し、内容物を噴出させるノズル孔5を有するノズル部6と、を備え、前記開閉部材4は、前記外容器2と前記内容器3とを連通可能なシリンダ20と、前記外容器2の内圧の昇降に伴い、前記シリンダ20内を、該シリンダ20内を通して前記外容器2と前記内容器3とが連通する連通位置と、該シリンダ20内を通した前記外容器2と前記内容器3との連通が遮断される遮断位置と、の間で移動させられるピストン21と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に記載されるような、内容物が収容される弾性変形可能な容器と、前記容器に連通し、内容物を噴出させるノズル孔を有するノズル部と、を備えたスプレー容器が知られている。
このスプレー容器では、容器をしぼみ変形させ容器の内圧を上昇させることにより、ノズル孔から内容物を噴出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−78546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のスプレー容器では、内容物の噴出量を、容器を弾性変形させる加減により調整する必要があり、操作が難しかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、操作が容易であり、安定して内容物を噴出できるスプレー容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明のスプレー容器は、弾性変形可能な外容器と、内容物が収容される内容器と、前記外容器と前記内容器との連通及びその遮断を切り替える開閉部材と、前記内容器に連通し、内容物を噴出させるノズル孔を有するノズル部と、を備え、前記開閉部材は、前記外容器と前記内容器とを連通可能なシリンダと、前記外容器の内圧の昇降に伴い、前記シリンダ内を、該シリンダ内を通して前記外容器と前記内容器とが連通する連通位置と、該シリンダ内を通した前記外容器と前記内容器との連通が遮断される遮断位置と、の間で移動させられるピストンと、を有することを特徴とする。
【0007】
このスプレー容器では、外容器をしぼみ変形させて内圧を所定以上に上昇させると、開閉部材のピストンがシリンダ内を遮断位置から連通位置に向けて移動して、該シリンダ内を通して外容器と内容器とが連通する。この連通とともに内容器の内圧が高められて、ノズル孔から内容物がスプレー状に噴出される。
【0008】
本発明のスプレー容器によれば、外容器の内圧が所定以上に上昇しないうちは、ピストンがシリンダ内を遮断位置から連通位置まで移動しないので、該シリンダ内を通して外容器と内容器とが連通することはない。つまり、操作者が外容器をしぼみ変形させても、該外容器の内圧が所定以上に上昇するまでは内容物が噴出されることがない。そして、外容器の内圧が所定以上に高まったときに、ピストンが連通位置に移動して外容器と内容器との遮断状態が解除され、内容器からノズル孔を通して勢いよく内容物が噴出されるから、内容物がノズル孔から液垂れしたり被噴出箇所に届かなかったりすることが防止される。
従って、このスプレー容器は、操作が容易であり、安定して内容物を噴出することができる。
【0009】
また、本発明に係るスプレー容器において、前記ピストンには、前記外容器と前記シリンダ内とを連通させる通気孔が形成され、前記開閉部材は、前記外容器の内圧の上昇時には前記通気孔を閉塞し、前記外容器の内圧の下降時には前記通気孔を開放する逆止弁を有することとしてもよい。
【0010】
この場合、外容器の内圧の上昇時には、逆止弁は通気孔を閉塞したまま外容器からの内圧を受けて、ピストンを連通位置に移動させる。一方、ピストンがシリンダ内の連通位置にある状態から、外容器の内圧が下降すると、ピストンはシリンダ内を遮断位置に向けて移動し、外容器と内容器との連通が遮断される。この状態から外容器が復元変形しようとすると、外容器の内圧が負圧になり、逆止弁が開いてピストンの通気孔を開放する。これにより、外容器とシリンダ内とが連通するとともに、ノズル孔、内容器及びシリンダ内を通して外気が外容器内に流入し、外容器が復元変形する。そして、再び外容器をしぼみ変形させることにより、前述した作用によって内容物が安定して噴出される。
このように、本発明によれば、外容器が安定して復元変形するので、内容物の噴出が繰り返し安定して行える。
【0011】
また、本発明に係るスプレー容器において、前記ノズル部は、内容物を通す第1通路と、空気を通す第2通路と、を有し、前記第1通路及び前記第2通路は、前記ノズル孔に連通していることとしてもよい。
【0012】
この場合、内容物は第1通路を通ってノズル孔に向けて流れ、空気は第2通路を通ってノズル孔に向けて流れて、内容物と空気とが混合されつつ該ノズル孔から噴出される。これにより、噴出される液滴(内容物)の大きさが小さくなり、分散されやすくなって、噴出が広範囲に精度よく行える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るスプレー容器によれば、操作が容易であり、安定して内容物を噴出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るスプレー容器を示す縦断面図であり、ピストンがシリンダ内の遮断位置に位置する状態を示す図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】図1のスプレー容器の外容器をしぼみ変形させて、ノズル孔から内容物を噴出させる状態を示す縦断面図であり、ピストンがシリンダ内の連通位置に位置する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るスプレー容器1について、図1〜図3を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態のスプレー容器1は、弾性変形可能な有底筒状の外容器2と、液状の内容物が収容される有底筒状の内容器3と、外容器2と内容器3との連通及びその遮断を切り替える開閉部材4と、内容器3に連通し、内容物を噴出させるノズル孔5を有するノズル部6と、を備えている。以下、外容器2の横断面の中央を通る直線を容器軸O1といい、この容器軸O1方向に沿って外容器2の口部2a側を上側、外容器2の底部側を下側という。また、容器軸O1に直交する方向を径方向といい、容器軸O1を中心に周回する方向を周方向という。
また、このスプレー容器1は、外容器2の口部2aに装着され、上端部にノズル部6が配設されたキャップ筒7と、キャップ筒7の上部に着脱可能に装着されてノズル孔5を覆うオーバーキャップ8と、を備えている。
【0016】
図1において、外容器2の口部2aは、上側に位置する上筒部9と、下側に位置し上筒部9より大径の下筒部10と、を備える二段筒状に形成されている。下筒部10の外周面には、雄ネジ部11が形成されている。
【0017】
内容器3は、外容器2の口部2aの上筒部9の内側に嵌合する周壁部12と、周壁部12の下端部を閉塞するように形成された底壁部13と、底壁部13から下側へ向けて突出する二重筒部14と、を有している。
【0018】
周壁部12の上端部には、径方向外方に向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のフランジ12aが形成されている。フランジ12aは、外容器2の口部2aの上端開口縁に上側から当接している。
【0019】
底壁部13は、縦断面が周壁部12の下端部から径方向内方に向かうに従い漸次下側へ向かって傾斜するテーパ状部分13aと、テーパ状部分13aの径方向内方に位置する円板状部分13bと、を有している。また、底壁部13のテーパ状部分13aには、上側へ向けて突出する支持筒15が形成されている。支持筒15の内側には、通気パイプ16が嵌合されている。通気パイプ16の上端開口縁は、周壁部12のフランジ12aより上側に位置している。
【0020】
二重筒部14の中心軸は、底壁部13の支持筒15と同軸とされて、容器軸O1に平行に延びている。支持筒15及び二重筒部14は、開閉部材4の後述するシリンダ20と同軸とされている。以下の説明では、これら支持筒15、二重筒部14及びシリンダ20の共通軸をシリンダ軸O2という。また、シリンダ軸O2に直交する方向をシリンダ径方向といい、シリンダ軸O2を中心に周回する方向をシリンダ周方向という。
【0021】
二重筒部14は、底壁部13から垂下するように形成された内筒部17と、内筒部17のシリンダ径方向外方を囲む外筒部18と、を有している。図示の例では、内筒部17の下端開口縁と外筒部18の下端開口縁とは、シリンダ軸O2方向に沿う互いの位置が略同一となっている。また、内筒部17の上端部には、シリンダ軸O2に同軸の貫通孔17aが形成されている。内筒部17と支持筒15とは、貫通孔17aを通して互いに連通している。貫通孔17aの内径は、通気パイプ16の内径と略同一となっている。
【0022】
内筒部17の下端開口部には、該内筒部17の下端面から窪むとともにシリンダ径方向に沿って延びる溝17bが、シリンダ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。また、内筒部17の内周面における溝17bより上側には、該内周面から突出するとともにシリンダ軸O2方向に沿って延びるリブ17cが、シリンダ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。内筒部17には、リブ17cのシリンダ径方向内方に、圧縮コイルばね(弾性部材)19の上端部が嵌合されている。
また、外筒部18の下端部には、シリンダ径方向に貫通する係合孔18aが、シリンダ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。
【0023】
開閉部材4は、外容器2と内容器3とを連通可能なシリンダ20と、外容器2の内圧の昇降に伴い、シリンダ20内を、該シリンダ20内を通して外容器2と内容器3とが連通する連通位置と、該シリンダ20内を通した外容器2と内容器3との連通が遮断される遮断位置と、の間で移動させられるピストン21と、を有している。
【0024】
シリンダ20は、有底筒状をなしており、シリンダ周壁部22と、シリンダ底壁部23とを有している。シリンダ周壁部22の上端部は、二重筒部14の内筒部17と外筒部18との間に嵌合されている。また、シリンダ周壁部22の上端開口縁は、底壁部13の円板状部分13bに下側から当接している。シリンダ周壁部22の上端部には、シリンダ径方向外方に向けて突出する係合突起20aが、シリンダ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。係合突起20aは、外筒部18の係合孔18aに係合(アンダーカット嵌合)している。このとき、外筒部18の内面とシリンダ周壁部22の外面とが気密に係合している。
【0025】
また、シリンダ周壁部22の内周面のうち上側部分には、該内周面から窪むとともにシリンダ軸O2方向に沿って延びる通気溝20bが、シリンダ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。通気溝20bの上端部は、シリンダ周壁部22の上端開口縁に開口している。通気溝20bの下端部は、内筒部17の下端開口縁より下側に位置している。
【0026】
シリンダ底壁部23には、シリンダ軸O2に同軸の貫通孔23aが形成されている。また、シリンダ底壁部23の外周縁部には、上側に向けて突出するピストン受け部24が、シリンダ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。ピストン受け部24のシリンダ径方向の外方部分は、シリンダ周壁部22の内周面の下端部に連なっている。
【0027】
ピストン21は、有底筒状をなしており、ピストン周壁部25と、ピストン底壁部26とを有している。ピストン周壁部25の上端部は、縦断面が上側に向かうに従い漸次シリンダ径方向外方に向かって傾斜するテーパ状に形成されている。ピストン周壁部25の上端部は、シリンダ周壁部22にシリンダ径方向内方から摺動可能に当接しており、ピストン周壁部25の外周面のうち上端部以外の部分と、シリンダ周壁部22の内周面との間には、隙間が形成されている。
【0028】
また、ピストン周壁部25の内周面における上端部より下側には、該内周面から突出するとともにシリンダ軸O2方向に沿って延びるリブ25aが、シリンダ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。リブ25aの下側部分は、上側部分よりシリンダ径方向内方に向けて突出しており、該下側部分の下端部は、ピストン底壁部26の上面に連なっている。ピストン周壁部25には、リブ25aの上側部分のシリンダ径方向内方に、圧縮コイルばね19の下端部が嵌合されている。
【0029】
ピストン底壁部26には、シリンダ軸O2に同軸とされ、外容器2とシリンダ20内とを連通させる通気孔26aが形成されている。通気孔26aの内径は、シリンダ底壁部23の貫通孔23aの内径と略同一となっている。ピストン底壁部26の外周縁部は、シリンダ20のピストン受け部24に上側から当接している。
【0030】
また、開閉部材4は、外容器2の内圧の上昇時には通気孔26aを閉塞し、外容器2の内圧の下降時には通気孔26aを開放する逆止弁27を有している。逆止弁27は、通気孔26aより大径のフィルム状又は平板状をなしており、その外周縁部の一部が弾性変形可能とされてピストン底壁部26の下面に連結され、下側から通気孔26aを開閉可能に閉塞する、所謂一点弁である。逆止弁27の外径は、シリンダ軸O2を挟んで対向するピストン受け部24同士の間の距離より若干小さくなっている。
尚、前記逆止弁27は3点弁など、他の弁形状を採用してもよい。
【0031】
キャップ筒7は、有頂筒状をなしており、天壁部28と、天壁部28の外周縁部から下側に向けて突出する外筒29と、天壁部28から垂下され、外筒29に径方向外方を囲まれるように形成された装着筒30と、天壁部28から垂下され、装着筒30に径方向外方を囲まれるように形成された内筒31と、を有している。外筒29、装着筒30及び内筒31は、容器軸O1に同軸とされている。
【0032】
天壁部28は、縦断面が外筒29の上端部から径方向内方に向かうに従い漸次上側へ向かって傾斜するテーパ状部分28aと、テーパ状部分28aの径方向内方に位置する円環板状の中央部分28bと、を有している。中央部分28bの径方向中央には、容器軸O1方向に貫通する孔32が形成されており、中央部分28bには、孔32の開口縁部から上側に向けて延びるノズル装着筒33が形成されている。
【0033】
ノズル装着筒33の外周面には、雄ネジ部33aが形成されている。また、ノズル装着筒33の内周面には、該内周面から窪むとともに周方向に沿って延びる環状の係合溝33bが容器軸O1方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。
尚、前記係合溝33bは形成されなくてもよい。
【0034】
外筒29の外径は、外容器2の外径と略同一となっている。
装着筒30は、天壁部28のテーパ状部分28aから下側に向けて突出している。装着筒30の内周面には、雌ネジ部34が形成されており、該雌ネジ部34と外容器2の口部2aの雄ネジ部11とが螺合している。
内筒31は、天壁部28のテーパ状部分28aと中央部分28bとの連結部位から下側に向けて突出している。内筒31は、内容器3の周壁部12における上端開口部の内側に嵌合されている。
また、天壁部28において内筒31の径方向外方に位置する部分は、周壁部12のフランジ12aに上側から当接している。
【0035】
ノズル部6は、有頂筒状をなしており、ノズル周壁部35と、ノズル天壁部36とを有している。ノズル周壁部35の容器軸O1方向の中央部には、径方向外方に向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のフランジ35aが形成されている。ノズル周壁部35の外周面におけるフランジ35aより下側には、該外周面から突出するとともに周方向に沿って延びる環状の係合突起35bが、容器軸O1方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。
【0036】
ノズル周壁部35のフランジ35aより下側部分は、ノズル装着筒33の内側に嵌合されている。ノズル周壁部35の係合突起35bは、ノズル装着筒33の係合溝33bに係合している。ノズル周壁部35のフランジ35aは、ノズル装着筒33の上端開口縁に上側から当接している。
【0037】
ノズル天壁部36には、容器軸O1から径方向に偏倚した位置に配置され、斜め上方に向けて開口するノズル孔5が形成されている。ノズル孔5は、容器軸O1を挟んで通気パイプ16とは反対側に向けて開口されている。
【0038】
また、ノズル部6は、内容物を通す第1通路37と、空気を通す第2通路38と、を有している。
【0039】
図2に示される横断面において、ノズル部6の内面のうちフランジ35aより上側部分には、円孔部分39と、円孔部分39に連通し、該円孔部分39より幅狭の矩形孔部分40と、が形成されている。円孔部分39の中心は、容器軸O1を挟んで通気パイプ16とは反対側に位置している。図2において、矩形孔部分40は、容器軸O1から径方向外方に向かうように延びている。
【0040】
円孔部分39には、案内パイプ41が嵌合されている。図1において、案内パイプ41の下端開口部は、内容器3内の下端部に位置しており、該案内パイプ41の下端開口部と、底壁部13の円板状部分13bとの間には、隙間が形成されている。
【0041】
そして、ノズル部6内のうち、円孔部分39に対応する案内パイプ41内の空間が第1通路37とされ、矩形孔部分40に対応する案内パイプ41外の空間が第2通路38とされている。第1通路37及び第2通路38は、ノズル孔5に連通している。
また、ノズル部6の内面のうちフランジ35aより下側部分は、容器軸O1に同軸で円孔部分39より大径の断面円形の孔42となっている。
【0042】
オーバーキャップ8は、有頂筒状をなしており、キャップ周壁部43と、キャップ天壁部44とを有している。キャップ周壁部43は、上側に位置する上周壁部45と、下側に位置し上周壁部45より大径の下周壁部46と、を備える二段筒状に形成されている。上周壁部45は、ノズル周壁部35のフランジ35aより上側部分に外側から嵌合している。上周壁部45の下端部は、フランジ35aに上側から当接している。下周壁部46の内周面には、雌ネジ部46aが形成されており、該雌ネジ部46aとノズル装着筒33の雄ネジ部33aとが螺合している。
オーバーキャップ8がノズル部6及びノズル装着筒33に装着された状態で、ノズル部6のノズル天壁部36と、キャップ天壁部44との間には、隙間が形成されている。
【0043】
本実施形態に係るスプレー容器1から内容物を噴出させるには、まず、オーバーキャップ8を取り外し、ノズル孔5を露出させる。
そして、ノズル孔5を被噴出箇所に向けた状態から、外容器2を圧搾(スクイズ)させるなどしてしぼみ変形させて内圧を所定以上に上昇させると、開閉部材4のピストン21が圧縮コイルばね19の付勢力に抗って、シリンダ20内を遮断位置(シリンダ20内の下側部分)から連通位置(シリンダ20内の上側部分)に向けて移動して、該シリンダ20内を通して外容器2と内容器3とが連通する。この連通とともに内容器3の内圧が高められて、ノズル孔5から内容物がスプレー状に噴出される。
【0044】
詳しくは、図3に示されるように、シリンダ20内をピストン21が上昇して連通位置に配置された状態で、外容器2と、シリンダ20内のピストン21の上部空間とは、貫通孔23a、ピストン周壁部25とシリンダ周壁部22との間、通気溝20b及び溝17bを通して、互いに連通している。また、シリンダ20内のピストン21の上部空間と、内容器3とは、貫通孔17a及び通気パイプ16を通して、互いに連通している。このように、外容器2と内容器3とが連通するとともに、内容器3の内圧が高められることにより、内容物の液面が押し下げられ、内容物が案内パイプ41内(第1通路37)を上昇して、ノズル孔5から噴出される。尚、図3に示される状態において、ピストン21の上端開口縁は、二重筒部14の内筒部17の下端面に下側から当接している。
一方、外容器2から内容器3に流入した空気の一部は、ノズル部6内の案内パイプ41外(第2通路38)を通ってノズル孔5から噴出されるが、第2通路38のフランジ35aより上側部分の断面積がフランジ35aの下側部分の断面積より小さいために、ノズル孔5から噴出する空気の流速が高められている。そして、流速の高められた空気が案内パイプ41上を流れてノズル孔5から噴出されることにより、案内パイプ41内を流れる内容物が負圧により上方に吸引され、空気と十分に混合されつつスプレー状に噴霧される。
【0045】
本実施形態のスプレー容器1によれば、外容器2の内圧が所定以上に上昇しないうちは、ピストン21がシリンダ20内を遮断位置から連通位置まで移動しないので、該シリンダ20内を通して外容器2と内容器3とが連通することはない。つまり、操作者が外容器2をしぼみ変形させても、該外容器2の内圧が所定以上に上昇するまでは内容物が噴出されることがない。そして、外容器2の内圧が所定以上に高まったときに、ピストン21が連通位置に移動して外容器2と内容器3との遮断状態が解除され、内容器3からノズル孔5を通して勢いよく内容物が噴出されるから、内容物がノズル孔5から液垂れしたり被噴出箇所に届かなかったりすることが防止される。
従って、このスプレー容器1は、操作が容易であり、安定して内容物を噴出することができる。
【0046】
また、開閉部材4が逆止弁27を有しているので、外容器2の内圧の上昇時には、逆止弁27はピストン21の通気孔26aを閉塞したまま外容器2からの内圧を受けて、ピストン21を連通位置に移動させる。一方、ピストン21がシリンダ20内の連通位置にある状態から、外容器2の内圧が下降すると、ピストン21はシリンダ20内を遮断位置に向けて移動し、外容器2と内容器3との連通が遮断される。この状態から外容器2が復元変形しようとすると、外容器2の内圧が負圧になり、逆止弁27が開いてピストン21の通気孔26aを開放する。これにより、外容器2とシリンダ20内におけるピストン21の上部空間とが連通するとともに、ノズル孔5、内容器3、通気パイプ16及びシリンダ20内を通して外気が外容器2内に流入し、外容器2が復元変形する。そして、再び外容器2をしぼみ変形させることにより、前述した作用によって内容物が安定して噴出される。
このように、本実施形態によれば、外容器2が安定して復元変形するので、内容物の噴出が繰り返し安定して行える。
【0047】
また、ノズル部6が第1通路37及び第2通路38を有しているので、内容物は第1通路37を通ってノズル孔5に向けて流れ、空気は第2通路38を通ってノズル孔5に向けて流れて、内容物と空気とが混合されつつ該ノズル孔5から噴出される。これにより、噴出される液滴(内容物)の大きさが小さくなり、分散されやすくなって、噴出が広範囲に精度よく行える。
【0048】
尚、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
前述の実施形態では、シリンダ20内の遮断位置に向けてピストン21を付勢する圧縮コイルばね19が配設されているとしたが、圧縮コイルばね以外の弾性部材19を用いてもよい。また、ピストン21を遮断位置に維持する手段は、本実施形態の付勢力によるものに限定されない。
【0050】
また、容器軸O1とシリンダ軸O2とが互いに平行であるとしたが、シリンダ軸O2が容器軸O1に対して傾斜するように延びていても構わない。
【0051】
また、前述の実施形態で説明したオーバーキャップ8は、螺合によりキャップ筒7に着脱自在に装着されるねじ式キャップであるが、これに限定されるものではなく、例えば、キャップ筒7又はノズル部6にヒンジを介して一体に形成され、該ヒンジを中心に回動してキャップ筒7又はノズル部6の上端部に着脱自在とされたヒンジ式キャップ等であってもよい。また、オーバーキャップ8が設けられていなくても構わない。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 スプレー容器
2 外容器
3 内容器
4 開閉部材
5 ノズル孔
6 ノズル部
20 シリンダ
21 ピストン
26a 通気孔
27 逆止弁
37 第1通路
38 第2通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な外容器と、
内容物が収容される内容器と、
前記外容器と前記内容器との連通及びその遮断を切り替える開閉部材と、
前記内容器に連通し、内容物を噴出させるノズル孔を有するノズル部と、を備え、
前記開閉部材は、
前記外容器と前記内容器とを連通可能なシリンダと、
前記外容器の内圧の昇降に伴い、前記シリンダ内を、該シリンダ内を通して前記外容器と前記内容器とが連通する連通位置と、該シリンダ内を通した前記外容器と前記内容器との連通が遮断される遮断位置と、の間で移動させられるピストンと、を有することを特徴とするスプレー容器。
【請求項2】
請求項1に記載のスプレー容器であって、
前記ピストンには、前記外容器と前記シリンダ内とを連通させる通気孔が形成され、
前記開閉部材は、前記外容器の内圧の上昇時には前記通気孔を閉塞し、前記外容器の内圧の下降時には前記通気孔を開放する逆止弁を有することを特徴とするスプレー容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスプレー容器であって、
前記ノズル部は、
内容物を通す第1通路と、
空気を通す第2通路と、を有し、
前記第1通路及び前記第2通路は、前記ノズル孔に連通していることを特徴とするスプレー容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−224389(P2012−224389A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95983(P2011−95983)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】