説明

スプレー容器

【課題】液切れ性を向上させることができるスプレー容器を提供する。
【解決手段】容器本体2内とステム22内とを連通させる連通路24を有し、連通路24は、上側通路24bと下側通路24aとに分割され、上側通路24b、及び下側通路24aのうち、下側通路24aは、下方付勢された状態で、上側通路24bに向けて接近移動可能に配設され、下側通路24aは、容器本体2の内圧上昇に伴い上側通路24bに向けて移動して、上側通路24bに当接して接続されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体内に収容された内容物を噴出するスプレー容器として、容器本体内に空気を自力で供給して容器本体内を蓄圧し、蓄圧した空気によって容器本体から内容物を噴出する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、スプレー容器は、容器本体に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、ノズル部材をステムとともに押下することにより、容器本体内とステム内とが連通され、容器本体内の内容物がノズル孔から噴出される構成とされ、容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、固定部材に対して可動部材を押し込むことにより、固定部材と可動部材との間の空気が押し出され、容器本体内に空気が流入し、容器本体と固定部材との間に、固定部材側から容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れを禁止する逆止弁が設けられている。
このようなスプレー容器では、固定部材と、可動部材と、の協働によるピストン運動により、容器本体内に空気を供給し、容器本体内を蓄圧した後、ノズル部材を押下することにより、容器本体内に収容された内容物がノズル孔を通って噴出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02−70749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、容器本体の内圧が低下した状態でノズル部材を押下すると、内容物がノズル孔から勢いよく噴出されず、液垂れが生ずる虞があり、液切れ性を向上させることに対しては改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、液切れ性を向上させることができるスプレー容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るスプレー容器は、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、該ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、前記ノズル部材を前記ステムとともに押下することにより、前記容器本体内と前記ステム内とが連通され、前記容器本体内の内容物が前記ノズル孔から噴出される構成とされ、前記容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、該固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、前記固定部材に対して前記可動部材を押し込むことにより、前記固定部材と前記可動部材との間の空気が押し出され、前記容器本体内に空気が流入し、前記容器本体と前記固定部材との間に、前記固定部材側から前記容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁が設けられたスプレー容器であって、前記容器本体内と前記ステム内とを連通させる連通路を有し、前記連通路は、上側通路と下側通路とに分割され、前記上側通路、及び前記下側通路のうち、一方の通路は、他方の通路から離間する方向に付勢された状態で、前記他方の通路に向けて接近移動可能に配設され、前記一方の通路は、前記容器本体の内圧上昇に伴い前記他方の通路に向けて移動して、前記他方の通路に当接して接続されることを特徴とする。
【0008】
このような特徴により、容器本体の内圧上昇に伴って一方の通路が付勢力に抗して他方の通路に向けて移動することで、一方の通路が他方の通路に当接して接続される。これにより、ノズル部材とともにステムを押し下げると、内容物が連通路を通してステム内に供給され、ノズル孔からの噴出が許容される。
一方で、容器本体の内圧が低下すると、一方の通路が付勢力によって他方の通路から離間することで、連通路が開放される。すると、下側通路、及び上側通路内に空気が流入し、内容物が逆流して、連通路内の内容物が容器本体内に引き戻されることになる。これにより、ノズル孔からの液垂れを防止して、液切れ性を向上させることができる。この場合には、ステムへの内容物の供給が停止されているので、その後ノズル部材とともにステムを押下した場合であっても、ノズル孔からの内容物の噴出を禁止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスプレー容器によれば、液切れ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態におけるスプレー容器の断面図である。
【図2】スプレー容器の拡大断面図であって、スプレー容器の作用を説明するための説明図である。
【図3】スプレー容器の拡大断面図であって、スプレー容器の作用を説明するための説明図である。
【図4】スプレー容器の拡大断面図であって、スプレー容器の作用を説明するための説明図である。
【図5】スプレー容器の拡大断面図であって、スプレー容器の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るスプレー容器を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るスプレー容器1は、内容物が収容される容器本体2と、容器本体2の口部11に装着されたヘッド部材3と、を備えている。なお、本実施形態では、容器本体2、及びヘッド部材3の各中心軸線は、共通軸上に位置している。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向、上下方向に沿ったヘッド部材3側を上側、容器本体2側を下側という。また、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0012】
容器本体2は、上述した口部11と、口部11の下端から径方向の外側に向けて延設された肩部12と、肩部12の下端から下方に向けて延設された胴部13と、胴部13の下端開口部を閉塞する底部(不図示)と、を有している。
【0013】
ヘッド部材3は、容器本体2内に空気を供給するポンプ部材21と、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステム22と、ステム22の上端に装着され、容器本体2内の内容物を噴出するノズル孔23aを有するノズル部材23と、ステム22内、及び容器本体2内を連通させる連通路24と、を備えている。
【0014】
ポンプ部材21は、容器本体2の口部11に取り付けられた筒状の固定部材31と、固定部材31に対して上下方向に沿って摺動自在に嵌合された筒状の可動部材32と、を備えている。
固定部材31は、容器本体2内を上下方向に沿って延在する外筒33と、外筒33の径方向の内側に配置された内筒34と、を備え、これら外筒33、及び内筒34の下端部同士が全周に亘って連結されている。
【0015】
外筒33の上端部には、径方向の外側に向けて張り出す外フランジ部36が形成され、この外フランジ部36がシール部材(パッキン)30を間に挟んで口部11の開口縁上に支持されている。また、外フランジ部36は、固定キャップ37によって容器本体2に固定されている。固定キャップ37は、有頂筒状に形成され、環状の天板部38と、天板部38の外周縁から下方に向けて延設され、容器本体2の口部11に取り付けられた取付筒39と、天板部38の内周縁から下方に向けて延設され、固定部材31の内側に配置されたストッパ筒部40と、を備えている。そして、天板部38の外周側と口部11の開口縁との間で、上述したシール部材30を介して外フランジ部36が挟持されている。なお、天板部38の内側には、内筒34の上端部が配置されている。
【0016】
一方、内筒34の上端部には、径方向の内側に向けて張り出す内フランジ部41が形成されている。この内フランジ部41には、上下方向に沿って貫通する貫通孔42が周方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。また、内フランジ部41の内周縁には、上方に向けてガイド筒部43が立設されている。
【0017】
可動部材32は、上述した外筒33と内筒34との間に挿入されて外筒33と内筒34との間を上下方向に沿って移動自在な挿入筒45と、挿入筒45の下端部に装着された摺動部35と、挿入筒45の上端部に取り付けられたキャップ46と、を備えている。
【0018】
まずキャップ46は、容器本体2の胴部13とほぼ同径の有頂筒状に形成され、容器本体2の口部11、及び肩部12を上方から覆うように配置されている。キャップ46の天板部51には、径方向のうち、一方向に沿って貫通する空気供給通路53が形成されている。この空気供給通路53は、扁平状の長孔であり、キャップ46の外周面において径方向の両側に向けて開放されている。また、空気供給通路53の下面において、径方向の中央部には、上下方向に沿って貫通する貫通孔54が形成され、この貫通孔54、及び空気供給通路53を介してキャップ46の内外が連通可能に構成されている。
さらに、天板部51には、貫通孔54を囲むように下方に沿って延びる嵌合筒55が形成され、この嵌合筒55の内側に挿入筒45の上端部が嵌合されている。
【0019】
挿入筒45における上端部には、上端開口部を覆うように弾性変形可能な第1逆止弁57が連設されている。この第1逆止弁57は、上述したキャップ46の貫通孔54を下方から開閉可能に閉塞している。第1逆止弁57は、貫通孔54から挿入筒45内に空気が流入するのを許容する一方、挿入筒45内の空気が貫通孔54から空気供給通路53内に流出するのを禁止している。
【0020】
摺動部35は、外筒33と内筒34との間を上下方向に沿って摺動自在に構成されている。具体的に、摺動部35は、上部が下部より拡径された二段筒形状に形成され、上部の内側に上述した挿入筒45の下部が装着されるようになっている。また、摺動部35は、上方に移動したときに上端縁が上述したストッパ筒部40の下端縁に当接して、固定部材31から抜けないようになっている。
【0021】
摺動部35の下端部には、径方向の外側に向けて張り出すフランジ部44が形成され、その外周面が外筒33の内面に密接している。したがって、固定部材31の内側は、フランジ部44を間に挟んで外筒33側と、内筒34側と、に区画され、そのうち内筒34側の空間は、内筒34と挿入筒45との間を介して挿入筒45とノズル部材23との間の空間に連通している(以下、まとめてシリンダ空間S1という)。なお、本実施形態では、内筒34の外周面と挿入筒45の内周面との間には隙間が形成されるが、内筒34及び挿入筒45のいずれかに、上下方向の全長に亘るとともに、周方向に沿って複数の縦溝を形成し、内筒34と挿入筒45とが一部で摺接されていてもよい。
【0022】
ステム22は、有底筒状に形成され、上部が固定部材31のガイド筒部43(固定キャップ37の天板部38)よりも上方に突出した状態で、ガイド筒部43内に配設され、ガイド筒部43に対して上下移動可能に支持されている。ステム22の周壁部61は、上下方向におけるガイド筒部43よりも下側の部分に、径方向の外側に向けて突出するリブ63が形成され、このリブ63がガイド筒部43の下端縁に形成された収容部64内に収容されている。また、周壁部61におけるリブ63の下方には、周壁部61を径方向に沿って貫通する貫通孔65が周方向に沿って複数形成(本実施形態では径方向に対向して一対)されている。
【0023】
ノズル部材23は、有頂筒状に形成され、その上面における径方向の中央部には、下方に沿って延設された装着筒67が形成され、この装着筒67が上述したステム22の上端部分に外嵌されている。
ノズル部材23の側面において、周方向の一部には、径方向の外側に向けて開口する上述したノズル孔23aが形成されている。このノズル孔23aは、上述した装着筒67内を介してステム22内に連通している。なお、ノズル部材23は、上述した内フランジ部41の貫通孔42を上方から覆うように位置している。
【0024】
ステム22の下端部には、ゲート部材25がアンダーカット嵌合されている。ゲート部材25は、有底筒状の部材であり、ステム22とともに上下移動可能に構成されている。
ゲート部材25の筒部71は、ステム22の周壁部61の下端部に外嵌されるとともに、上端部が下方から上方に向かうに従い内径が拡大するテーパ状に形成されている。また、筒部71の上端部は、上述したステム22における貫通孔65を径方向の外側から覆うように配置されている。
【0025】
また、筒部71の下端縁(底部との境界部分)には、ステム22を上方付勢する付勢手段72が筒部71に一体的に形成されている。付勢手段72は、筒部71の下端縁から上下方向に沿って延びるとともに、周方向に間隔をあけて複数形成されている。そして、各付勢手段72の下端部は、後述するハウジング26に支持されている。したがって、付勢手段72は、ゲート部材25の上下移動に伴って、ゲート部材25の底部とハウジング26との間で弾性変形可能に構成されている。
【0026】
ゲート部材25の外側には、ハウジング26が配設されている。ハウジング26は、上下方向に沿って延びる筒状に形成され、ゲート部材25の筒部71を径方向の外側から囲繞する囲繞筒部75と、囲繞筒部75の内面に連設された当接筒80と、を備えている。
【0027】
囲繞筒部75は、上下方向の長さが上述した筒部71よりも長く形成されるとともに、その上端位置が筒部71の上端位置と同等の位置に配置されている。囲繞筒部75の上端縁には、下方に向けて窪んだ溝部78が周方向に間隔をあけて複数形成されている。溝部78は、囲繞筒部75における径方向の全長に亘って形成され、囲繞筒部75の内外を連通させている。また、囲繞筒部75における溝部78よりも下方には、径方向の外側に向けて張り出すフランジ部79が形成されている。フランジ部79は、上述した固定部材31の内筒34にアンダーカット嵌合されており、これによりハウジング26が固定部材31に取り付けられている。また、フランジ部79には、上下方向で貫通する貫通孔77が形成され、フランジ部79に対して上側空間、及び下側空間を連通させている。
さらに、囲繞筒部75の下部には、径方向に沿って貫通する連通孔74が形成されている。この連通孔74は、囲繞筒部75の内外を連通させるものであり、囲繞筒部75の周方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。
【0028】
当接筒80は、囲繞筒部75におけるフランジ部79、及び連通孔74の間に形成され、その内面側で上述した付勢手段72の下端部を支持している。具体的に、当接筒80は、上側が上方から下方に向かうに従い漸次先細るテーパ状に形成され、下側は下方に向けて延設されている。また、当接筒80の下端部は、上方から下方に向かうに従い内径が漸次拡大されている。
【0029】
ここで、容器本体2と固定部材31との間には、固定部材31側から容器本体2内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する第2逆止弁81が設けられている。この第2逆止弁81は、弾性変形可能なリング状の板材であり、内フランジ部41の貫通孔42を下方から覆い、容器本体2の内外を区画している。具体的に、第2逆止弁81は、その内周側が固定部材31の内フランジ部41及びステム22のリブ63と、ゲート部材25の筒部71及びハウジング26の囲繞筒部75と、の間に上下方向で挟持されている。これにより、逆止弁81の外周側は、径方向の外側に向かうに従い下方に垂れ下がった状態で保持され、外周縁が内筒34に密接している。
【0030】
ハウジング26の下端部には、内側支持部材27が装着されている。内側支持部材27は、上下方向に沿って延びる筒状に形成され、その上端部には径方向の外側に向けて張り出す外フランジ部83が、下端部には径方向の内側に向けて張り出す内フランジ部84が形成されている。そして、上述したハウジング26は、内側支持部材27の内側に配設(係合)されるとともに、下端縁が内フランジ部84に当接している。
【0031】
また、内側支持部材27の外側には、外側支持部材28が配設されている。外側支持部材28は、有底筒状に形成され、本体筒部85と、本体筒部85の下端開口部を閉塞する底壁部86と、を備えている。
本体筒部85は、上部の内径が下部に比べて大きく形成され、その上部の内側に上述した内側支持部材27が内嵌されている。この場合、本体筒部85の上端縁は、内側支持部材27における外フランジ部83に当接している。
【0032】
底壁部86における径方向の中央部には、上下方向に貫通する貫通孔87が形成されている。そして、底壁部86からは、貫通孔87を取り囲むように、上下方向に沿って嵌合筒88が延設されている。
嵌合筒88において、底壁部86よりも下側の部分には、吸上パイプ89が接続されている。吸上パイプ89は、上端部が嵌合筒88に内嵌されて外側支持部材28の内側に向けて開放される一方、下端部が容器本体2の底部に近接する位置まで延設され、内容物に浸漬されている。
【0033】
ここで、内側支持部材27と外側支持部材28との間には、上下方向に沿って移動可能な連通筒29が配置されている。具体的に、連通筒29は、ハウジング26の内側を上下方向に沿って摺動可能な可動筒部91と、可動筒部91の内側に配設されて上述した当接筒80に接離可能な接続筒92と、可動筒部91の外側に配設されたシール筒93と、を備えている。
可動筒部91は、下部が上述した嵌合筒88における底壁部86よりも上側の部分に外嵌され、上部が上述したハウジング26に内嵌されている。可動筒部91における上端部には、下方から上方に向かうに従い拡径されたシール部94が形成されており、このシール部94の上端縁がハウジング26における囲繞筒部75の内面に密接している。
【0034】
接続筒92は、上部が可動筒部91よりも上方に向けて突出するとともに、下部が可動筒部91の内側に配設されて可動筒部91に接続されている。接続筒92の上端縁は、上方に向かうに従い外径が縮小するテーパ状に形成され、上述した当接筒80の下端縁に当接可能に構成されている。
【0035】
可動筒部91の下端縁には、径方向の外側に向けて張り出す連結環95が形成され、この連結環95の外周縁に上述したシール筒93が連設されている。シール筒93は、上述した連結環95が上下方向に沿う中間部に接続されるとともに、中間部から上端部、及び下端部に向かうに従いそれぞれ漸次拡径して形成されている。そして、シール筒93における上端部、下端部のそれぞれが外側支持部材28の本体筒部85に密接している。したがって、連通筒29のシール部94、及びシール筒93と、内側支持部材27と、外側支持部材28とで囲まれた空間は、シール空間S3を構成している。
【0036】
また、連通筒29と内側支持部材27との間には、コイルスプリング等の弾性部材96が介在している。弾性部材96は、上端部が内側支持部材27の内フランジ部84に当接する一方、下端部が連通筒29の連結環95に当接して、連通筒29を下方付勢している。
【0037】
そして、本実施形態では、上述した吸上パイプ89から嵌合筒88、接続筒92、当接筒80、及び囲繞筒部75に至る部分は、上述した容器本体2内とステム22内とを連通させ、内容物を流通させる連通路24を構成している。この連通路24は、吸上パイプ89から接続筒92までを下側通路24a、囲繞筒部75を上側通路24bとして分割されており、連通筒29の上下移動(上方移動)に伴って上側通路24b、及び下側通路24aが当接して接続されるようになっている。
【0038】
次に、上述したスプレー容器1の作用について説明する。なお、図2〜5において、矢印Aは空気の流れ、矢印Bは内容物の流れ、矢印Cは空気と内容物との混合物の流れを示している。
まず、図1,2に示すように、固定部材31の外筒33と内筒34との間で可動部材32の挿入筒45を上下移動させることで、容器本体2内に空気を供給して容器本体2の内圧を高める。
具体的には、可動部材32の挿入筒45を外筒33と内筒34との間に挿入した状態で、挿入筒45を下方に向けて押し込み、固定部材31と可動部材32とで囲まれたシリンダ空間S1(摺動部35のフランジ部44よりも下側の空間、摺動部35及び挿入筒45と内筒34との間の隙間、挿入筒45とノズル部材23との間の空間)を加圧する。すると、シリンダ空間S1の圧力が第1逆止弁57に作用して貫通孔54を閉塞する。一方、シリンダ空間S1の圧力が内フランジ部41に形成された貫通孔42を通して第2逆止弁81に作用して、第2逆止弁81の外周側が下方に向けて撓み変形することで、第2逆止弁81が開弁される。これにより、貫通孔42を通して容器本体2内に空気が流入する(図2中矢印A参照)。
【0039】
具体的に、容器本体2内に流入した空気は、ハウジング26の貫通孔77を通って下方に流通した後、内筒34と囲繞筒部75、及び外側支持部材28との間の隙間を下流側(容器本体2の底部側)に向けて流通する。なお、容器本体2内に流入した空気のうち、ハウジング26の溝部78を通ってゲート部材25とハウジング26の囲繞筒部75との間に流入した空気は、ステム22よりも上流側でゲート部材25の筒部71と第2逆止弁81とにより塞き止められる。
また、容器本体2内に流入した空気の一部は、ハウジング26の連通孔74を通って、当接筒80と接続筒92との間から接続筒92内に流入する。接続筒92内に流入した空気は、嵌合筒88や吸上パイプ89を通って容器本体2の底部側に向けて流通したり、連通筒29の可動筒部91と嵌合筒88との間の隙間を通ってシール筒93と外側支持部材28との間の空間S2内に供給されたりする。
【0040】
また、可動部材32の挿入筒45を下端位置まで押し下げ、挿入筒45の押下操作を停止すると、挿入筒45(摺動部35)によるシリンダ空間S1の加圧が停止され、第2逆止弁81が復元変形することで、第2逆止弁81が閉弁される。
その後、可動部材32を引き上げると、シリンダ空間S1が負圧となり、この負圧により第1逆止弁57が開放され、空気供給通路53、及び貫通孔54を通ってシリンダ空間S1内に空気が流入し、シリンダ空間S1が大気圧まで上昇する。
そして、可動部材32の上下移動を繰り返すことで、固定部材31と、可動部材32と、の協働によるピストン運動により、容器本体2内に空気を供給し、容器本体2の内圧を高めることができる。
【0041】
ここで、図3に示すように、上述したように容器本体2の内圧が高まると、この内圧上昇に伴って容器本体2内に連通するシール筒93と外側支持部材28との間の空間S2の内圧も高まる。一方、連通筒29と内側支持部材27及び外側支持部材28とで囲まれたシール空間S3は、シール筒93、及びシール部94により閉空間となっている。そのため、空間S2の内圧(容器本体2の内圧)が弾性部材96の下方付勢力よりも大きくなると、連通筒29が弾性部材96の下方付勢力に抗して上方に向けて移動する。すると、連通筒29の接続筒92の上端縁と、当接筒80の下端縁と、が当接し、下側通路24aと上側通路24bが接続され、容器本体2内とステム22内とが連通路24により連通する。
【0042】
そして、下側通路24aと上側通路24bが接続されると、容器本体2内の内容物が連通路24内を流通する。具体的に、内容物は吸上パイプ89を通って外側支持部材28の嵌合筒88、接続筒92、及び当接筒80内を通ってハウジング26内に流入し、各付勢手段72間を通った後、ゲート部材25における筒部71とハウジング26の囲繞筒部75との間を通り、ステム22よりも上流側でゲート部材25に塞き止められる。
【0043】
次に、スプレー容器1から内容物を噴出する場合は、上述したように連通路24を連通させた状態で、まず可動部材32を引き上げて固定部材31から取り外す。なお、可動部材32を引き上げると、摺動部35の上端縁がストッパ筒部40の下端縁に突き当たり、それ以上の移動が規制されることで、摺動部35が挿入筒45から外れ、挿入筒45のみが固定部材31から引き抜かれる。
【0044】
図4に示すように、可動部材32を取り外した後、ノズル部材23を押下すると、ステム22、及びゲート部材25がノズル部材23とともに下方に向けて移動する。
このとき、ステム22のリブ63が第2逆止弁81の内周部分を押し下げることで、第2逆止弁81が撓み変形する。すると、ゲート部材25の筒部71の上端縁が第2逆止弁81から離間することで、筒部71に対して径方向の外側と内側とが、筒部71と第2逆止弁81との間を介して連通する。これにより、筒部71によって塞き止められていた内容物、及び空気が筒部71と第2逆止弁81との間を通って、ステム22の貫通孔65からステム22内に流入する(図4中矢印A,B参照)。特に空気は、溝部78を通ってステム22内に流入し、この過程で内容物と空気とが混合されている。その後、ステム22内に流入した内容物は、ノズル部材23の装着筒67内を通った後、空気とともにノズル孔23aから噴出される(図4中矢印C参照)。これにより、好適な噴霧形態で液滴が噴出される。
【0045】
ところで、本実施形態のスプレー容器1では、噴出を繰り返すことで、内容物とともに空気が容器本体2から排出され、容器本体2の内圧が低下する。
ここで、本実施形態では、容器本体2の内圧が低下すると、空間S2の内圧も低下する。そして、空間S2の内圧(容器本体2の内圧)が弾性部材96の付勢力よりも小さくなると、この付勢力によって連通筒29は外側支持部材28の内側を下方に向けて移動する。その結果、接続筒92が当接筒80から離間して、下側通路24aと上側通路24bとに分離されることで、連通路24が開放される。
【0046】
すると、図5に示すように、容器本体2内に残存する空気が、当接筒80と接続筒92との間の隙間から上側通路24b、及び下側通路24a内に流入し、上側通路24b、及び下側通路24a内が空気置換されることで、内容物が上側通路24b、及び下側通路24a内を逆流する。
【0047】
これにより、上側通路24b、及び下側通路24a内が空気で満たされるため、その後ノズル部材23を押下しても内容物は噴出されず、空気のみが噴出されるようになっている。
【0048】
また、再び内容物を噴出するためには、可動部材32を固定部材31に装着して容器本体2の内圧を所定値以上まで高めることで、上述した作用と同様の作用によって内容物を噴出することができる。
【0049】
このように、本実施形態では、連通路24を下側通路24aと上側通路24bとに分割し、容器本体2の内圧上昇に伴って下側通路24aと上側通路24bとが当接して接続される構成とした。
この構成によれば、容器本体2の内圧上昇に伴って連通筒29(下側通路24a)が付勢力に抗して上方に向けて移動することで、下側通路24aと上側通路24bとが当接して接続される。これにより、ノズル部材23とともにステム22を押し下げると、内容物が連通路24を通してステム22内に供給され、ノズル孔23aからの噴出が許容される。
一方で、容器本体2の内圧が低下すると、連通路24が開放されることで、下側通路24a、及び上側通路24b内に空気が流入し、内容物が逆流して、連通路24内の内容物が容器本体2内に引き戻されることになる。これにより、ノズル孔23aからの液垂れを防止して、液切れ性を向上させることができる。この場合には、ステム22への内容物の供給が停止されているので、ノズル部材23とともにステム22を押下した場合であっても、ノズル孔23aからの内容物の噴出を禁止することができる。
【0050】
その結果、容器本体2内の圧力に応じて噴出を許容、または停止することができるので、内容物の噴出状態を安定させることができる。すなわち、連通路24が連通したときのみ噴出が許容されるため、常に好適な噴霧形態で液滴(内容物)を噴出することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、上側通路24bを固定して連通筒29(下側通路24a)を下方付勢する構成について説明したが、これに限らず、連通筒29(下側通路24)を固定して上側通路24bを上方付勢する構成にしても構わない。
また、上述した実施形態では、ハウジング26の上端縁に溝部78を形成する場合について説明したが、これに限らず、ハウジング26の囲繞筒部75に径方向に沿って貫通する貫通孔を形成しても構わない。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…スプレー容器 2…容器本体 22…ステム 23a…ノズル孔 23…ノズル部材24…連通路 24a…下側通路(一方の通路) 24b…上側通路(他方の通路) 31…固定部材 32…可動部材 81…第2逆止弁(逆止弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、
該ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、
前記ノズル部材を前記ステムとともに押下することにより、前記容器本体内と前記ステム内とが連通され、前記容器本体内の内容物が前記ノズル孔から噴出される構成とされ、
前記容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、該固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、前記固定部材に対して前記可動部材を押し込むことにより、前記固定部材と前記可動部材との間の空気が押し出され、前記容器本体内に空気が流入し、前記容器本体と前記固定部材との間に、前記固定部材側から前記容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁が設けられたスプレー容器であって、
前記容器本体内と前記ステム内とを連通させる連通路を有し、
前記連通路は、上側通路と下側通路とに分割され、
前記上側通路、及び前記下側通路のうち、一方の通路は、他方の通路から離間する方向に付勢された状態で、前記他方の通路に向けて接近移動可能に配設され、
前記一方の通路は、前記容器本体の内圧上昇に伴い前記他方の通路に向けて移動して、前記他方の通路に当接して接続されることを特徴とするスプレー容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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