説明

スポットライト用放熱体及び放熱構造を備えたスポットライト

【課題】スポットライトの放熱性を向上させる放熱構造を得る。
【解決手段】スポットライト本体3のボディ31に設けた略円筒状のリフレクタ収容部311の外周全周に対する約1/4の範囲を所定の間隔を介して被覆する対流カバー53を設けると共に,対流カバー53とリフレクタ収容部311外周間の間隔に,放熱フィン52で区画された冷却風流路55を形成し,好ましくはこの冷却風流路55を,光の照射方向の前方側である一端55a側から他端55b側に向けて徐々に断面積を狭める形状に形成する。このように構成することにより,図示の使用状態にあっては冷却風流路55内に一端55a側から他端55b側に向かう冷却風の流れが生じ,これにより放熱体5の熱交換による冷却が促進されて,スポットライト本体が好適に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポットライトの点灯時に生じる熱を効率良く放熱することができるスポットライト用放熱体及び放熱構造を備えたスポットライトに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の箇所を照らすスポットライトは,美術館や店舗等における展示物の照明等に広く使用されており,このようなスポットライトの一例として,図9,10に示すスポットライト100では,光源であるランプ132やこのランプ132が取り付けられるソケット133,ランプの光を前方に反射する碗形のリフレクタ134,その他の必要な機器をボディ131内に収容して形成したスポットライト本体130を,吊下アーム120の先端に擺動可能に取り付けると共に,吊下アーム120の上端部を天井や壁面等に取り付けたブラケット170等に回動可能に取り付けることで,スポットライト本体130による照射方向を可変とし,所望の方向に光を照射することができるように構成されている(特許文献1)。
【0003】
以上のように構成されたスポットライト100において,スポットライト本体130内に収容されたランプ132を点灯すると,このランプ132は光の他に熱を発生することから,この熱によってスポットライト本体130を構成する前述のリフレクタ134やボディ131が加熱される。
【0004】
そして,このようにして加熱されたリフレクタ134やボディ131が十分に冷却されず,ボディ131内にランプ132の熱が籠もってボディ131内の温度が過度に上昇すると,ボディ131内に収容した機器がこの熱により破損するおそれがあると共に,ランプ132自体も過加熱により破裂,破損するおそれがある。
【0005】
そのため,このようなスポットライト100において,ランプ132の点灯により発生した熱によって加熱されたリフレクタ134やボディ131の熱を放熱するための各種の構造が提案されている。
【0006】
一例として図10に示す例では,前記ボディ131にリフレクタの開口部外周部分を被覆する略円筒状のリフレクタ収容部131aと,ソケット133の外周部分を被覆するソケット収容部131cを設けると共に,前記リフレクタ収容部131aとソケット収容部131c間をリブ131dによって連結することで,リフレクタ収容部131aとソケット収容部131c間(リブ131dによる連結部分)のボディ131に,壁体によって覆われていない放熱部131bを形成し,リフレクタ134の後方外周部分に配置した放熱フィン141をこの放熱部131bにおけるボディ131内に収容することで,放熱フィン141と外気との熱交換によりリフレクタ134の冷却を行うことができるように構成したものがある(前掲の特許文献1)。
【0007】
また,このような放熱部を備えていない密閉式ボディの外周面の一部に放熱フィンを設け,ボディの放熱を行うように構成した照明器具も提案されている(特許文献2)。
【0008】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献2】特開2005− 26132号公報(図1,2)
【特許文献1】特開2003− 31025号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した従来の照明器具のうち,特許文献1として紹介したスポットライト100にあっては,ボディ131内に収容された放熱フィン141がボディ131に設けた放熱部131bを介して外部に露出していることから,放熱フィン141と外気との熱交換により,ランプ132によって加熱されたリフレクタ134を好適に冷却することができるものとなっている。
【0010】
しかし,このように構成されたスポットライト本体130のボディ131には,図9及び図10に示すように略円筒状に形成されたリフレクタ収容部131aが設けられており,このリフレクタ収容部131aによってランプ132とリフレクタ134の開口部分の外周が覆われていることから,この部分にランプ132で発生した熱が籠もりやすいものとなっている。
【0011】
特に,スポットライト100の存在を目立たなくすべくこれを小型化するために,ボディ131やリフレクタ134を小型化すれば,ランプ132を収容するための空間も狭まることとなる。
【0012】
その一方で,このようにスポットライト本体130を小型化した場合においても必要な明るさを確保するために,ランプ132としてサイズ及びワット数が可及的に大きなものを使用すれば,ランプ132の外周がリフレクタ134やボディ131(リフレクタ収容部131aの内周)に近付くこととなるために,更にリフレクタ収容部131a内にはランプ132で発生した熱が籠もり易く,また,リフレクタ134やリフレクタ収容部131aが高温となり易い。
【0013】
このようなリフレクタ収容部131aにおける放熱を行うためには,リフレクタ収容部131aの外周に放熱フィンを設ける等してその表面積を増大して放熱性を向上させることも考えられる。
【0014】
しかし,ボディ131全体に対するリフレクタ収容部131aの形成範囲は比較的狭く,その結果,放熱フィンを形成可能な面積も狭いだけでなく,放熱フィンはスポットライト本体130を擺動させた際に吊下アーム120と干渉しないように取り付ける必要があるために取り付け範囲にも制約がある。
【0015】
その結果,リフレクタ収容部131aの外周に単に放熱フィンを設けただけでは十分な放熱性の向上を得ることができず,これを補うために大型の放熱フィンを取り付ければスポットライト100全体のデザイン上のバランスが崩れて見栄えが悪くなるだけでなく,スポットライト本体130の小型化の要請にも反するものとなる。
【0016】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,スポットライト本体に取り付けるだけで,スポットライトの放熱性を大幅に向上させることができるスポットライト用放熱体,及びスポットライトの放熱性を改善し得る放熱構造を備えたスポットライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために,本発明のスポットライト用放熱体5は,ボディ31内にランプ32及びリフレクタ34を収容し,照射開口30を有するスポットライト本体3と,任意には,前記スポットライト本体3を先端部に擺動可能に取り付けた吊下アーム2を備えると共に,前記ボディ31が,前記リフレクタ34の開口部外周を被覆し,且つ前記リフレクタ34の開口部前方を開放する開放端311aを備えた略筒状のリフレクタ収容部311を含むスポットライト1の前記ボディ31に取り付けて使用する放熱体5であり,
この放熱体5は,前記リフレクタ収容部311の前記開放端311aに着脱可能に取り付けられ,前記リフレクタ収容部311を延長するよう形成された,筒状部51と,該筒状部51の外周面に取り付けられた複数の放熱フィン52,52’と,該複数の放熱フィン52,52’を介して前記筒状部51に取り付けられた対流カバー53を備え,
前記リフレクタ収容部311に対する前記筒状部51の取り付け時には,
前記対流カバー53は,前述のように,前記リフレクタ収容部311の外周面に対して所定の間隔を介して配置されて前記リフレクタ収容部311の外周の一部(図示の例にあっては外周全周に対する約1/4)の範囲を被覆すると共に,
前記放熱フィン52,52’(52a,52b)は,前記リフレクタ収容部311の外周と前記対流カバー53間の空間を,前記リフレクタ収容部311の周方向に所定の間隔で,区画し,かつ,該フィン52,52’の長手方向を前記ボディ31,従って,リフレクタ収容部311の長手方向,例えば,図1の軸線C方向に対して略平行に延長して設けられ,前記フィン52,52’間に,前記ボディ31の長手方向に略平行な複数の冷却風流路55を形成することを特徴とする(請求項1)。
【0018】
前記構成の放熱体5において,前記冷却風流路55を,筒状部51側である一端55a側から他端55b側に向けて徐々に断面積を狭める形状に形成することができる(請求項2)。
【0019】
また,放熱体5に設けた前記筒状部51の内周面には,溝を形成する等して多数の凹凸を形成するものとしても良い(請求項3)。
【0020】
更に,前記筒状部51には,ランプ32の先端部を被覆するキャップ状のグレアシールド54を着脱可能に取り付けるものとしても良く(請求項4),この場合,前記グレアシールド54の内周面に溝を形成する等して,多数の凹凸を形成した構成とすることが好ましい(請求項5)。
【0021】
また,本発明の放熱構造を備えたスポットライトは,前記同様の構成を備える前記スポットライト本体3を,先端部に擺動可能に取り付けた吊下アーム2を備えると共に,前記ボディ31が,前記リフレクタ34の開口部外周を被覆し且つ前記リフレクタの開口部前方を開放する開放端311aを備えた略筒状のリフレクタ収容部311を備えたスポットライト1において,
前記リフレクタ収容部311の外周面に対して所定の間隔を介して配置されて前記リフレクタ収容部311の外周を前記吊下アームと干渉しない位置で被覆する対流カバー53と,
前記リフレクタ収容部311の外周と前記対流カバー53間の間隔を,前記リフレクタ収容部311の周方向に仕切り,前記リフレクタ収容部311の軸線方向に対して略平行な長さ方向を有する複数の冷却風流路55を形成する複数の放熱フィン52,52’を設けたことを特徴とし(請求項6),好ましくは,前記冷却風流路55を,リフレクタ収容部311の開放端側における一端55a側から他端55b側に向けて徐々に断面積を狭める形状に形成する(請求項7)。
【0022】
更に,同様の構成のスポットライト1において,前述したいずれかの放熱体5を,前記対流カバー53が前記吊下アーム2と干渉しない位置となるように前記スポットライト本体3の前記ボディ31に取り付けることにより,放熱構造を備えたスポットライトを構成するものとしても良い。
【発明の効果】
【0023】
以上で説明した本発明の構成により,スポットライト1に上記放熱構造を設けることで,スポットライト1の冷却性能を大幅に向上させることができた。
【0024】
すなわち,前述したように対流カバー53とリフレクタ収容部311の外周間に放熱フィン52,52’によって仕切られた複数の冷却風流路55を形成したことにより,この冷却風流路55内の空気が加熱されて冷却風流路55内外に温度差が生じると,冷却風流路55内にはいずれか一方側の端部から他方側の端部に向かう空気流が生じ,これにより冷却風流路55内で加熱された空気の排出と,冷却風流路55内に対する外気の導入とが促進され,熱交換を効率良く行うことができた。
【0025】
しかも,このような熱交換は,リフレクタ収容部311のみならず,放熱フィン52,52’,対流カバー53,及び筒状部51の全ての表面において行われるために,冷却風との接触面積が大きく,この点においても冷却効率を高めることができた。
【0026】
また,このように冷却効率を高めることができた結果,吊下アーム2との干渉を避けるためにリフレクタ収容部311の周方向における一部,例えば外周全周に対する約1/4程度の範囲に対流カバー53と放熱フィン52,52’とを設けるだけで十分な放熱性の向上を得ることができた。
【0027】
前記冷却風流路55を,筒状部51乃至はリフレクタ収容部311の開放端311a側である一端55a側から他端55b側に向けて徐々に断面積を狭める形状に形成したことにより,冷却風流路55内を一端55a側から他端55b側に向かって流れる冷却風の流れの発生を促進することができ,スポットライト本体3をより一層効率的に冷却することができた。
【0028】
更に,筒状部51の内周面に,例えば多数の溝等の凹凸を形成した構成にあっては,筒状部51の表面積が増大するために更なる冷却効率の向上を図ることができた。
【0029】
また,筒状部51にグレアシールド54を着脱可能に設けた構成にあっては,用途等に応じてグレアシールド54の着脱を行うことにより,共通の放熱体5に汎用性を持たせることができた。
【0030】
このようなグレアシールド54を設ける場合,グレアシールド54の内周面に対しても溝等の形成により多数の凹凸を形成して表面積を増大することで,放熱体5全体の放熱性を更に向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の放熱構造を備えたスポットライトの斜視図。
【図2】本発明の放熱構造を備えたスポットライトの要部断面図。
【図3】放熱体の斜視図。
【図4】放熱体の(A)は正面図,(B)は背面図。
【図5】放熱体の(A)は平面図,(B)は底面図。
【図6】放熱体の(A)は右側面図,(B)は図4(A)のVI-VI線断面図。
【図7】グレアキャップを備えた放熱体の(A)は正面図,(B)は背面図。
【図8】グレアキャップを備えた放熱体の(A)は右側面図,(B)は図7(A)のVIII-VIII線断面図。
【図9】従来のスポットライトの右側面図(特許文献1の図2)。
【図10】従来のスポットライト本体の断面図(特許文献1の図1)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に,添付図面を参照しながら本発明のスポットライト用の放熱体5について説明する。
【0033】
なお,以下の説明において,説明の便宜上,特に断りのない場合スポットライト本体3による光の照射方向,照射開口30側の前方側を「前方」,これとは反対側を「後方」として説明する。
【0034】
〔スポットライト〕
図1及び図2において,符号1は本発明の放熱体5を取り付けることにより形成された放熱構造を備えたスポットライトであり,このスポットライト1は,照射開口30から光の照射を行うスポットライト本体3と,このスポットライト本体3を天井等より擺動可能に吊り下げる吊下アーム2によって構成されている。
【0035】
このスポットライト本体3は,その外殻を構成するボディ31内に,光の照射に必要な各種の構成機器を収容して形成されたものであり,図1,2に示す実施形態にあっては,このボディ31として,リフレクタ34の開口部外周を被覆する略円筒状に形成されたリフレクタ収容部311と,このリフレクタ収容部311の後方に設けられたソケット収容部313とを有すると共に,前記リフレクタ収容部311とソケット収容部313とをリブ314によって連結することで,リフレクタ収容部311とソケット収容部313間に放熱部312を形成しており,この放熱部312においてボディ31内が外部に対して開放されたものとなっている。
【0036】
このように形成されたボディ31内に,光源であるランプ32を取り付けるためのソケット33,前記ソケット33に取り付けられるランプ32,及び前記ランプ32によって発生した光を前方に向けて反射するリフレクタ34を収容してスポットライト本体3を形成している(図2参照)。
【0037】
前述のリフレクタ34は,その開口部における外周縁に設けられたフランジ34aを,ボディ31に設けたリフレクタ収容部311の内周に係止する等してボディ31内に固定されていると共に,リフレクタ34の後端に設けたランプ挿入孔34bを介してランプ32の後端をソケット収容部313内に収容されたソケット33に取り付けることで,ランプ32の発光部がリフレクタ34内の所定の位置に配置された状態で,ランプ32をボディ31内に取り付けることができるように構成されている。
【0038】
前述のソケット33は,このソケット33に取り付けられたランプ32を電源に接続するためのケーブル36に接続されており,これによりランプ32が点灯可能となっていると共に,ランプ32の点灯によって生じたボディ31内の熱の一部は,前述の放熱部312を介してボディ31外に放出することができるように構成されている。
【0039】
以上のように構成されたスポットライト本体3には,このスポットライト本体3を吊下アーム2の先端に擺動可能に保持するための構造が設けられており,本実施形態にあっては,スポットライト本体3のボディ31の幅方向における対称位置に,図1に示すように舌片状のステー315を設け,このステー315に形成したピン孔(図示せず)を介して逆コ字状に形成された吊下アーム2の先端間にスポットライト本体3を擺動可能に取り付けている。
【0040】
もっとも,スポットライト本体3の吊下アーム2先端に対する取り付けは,アーム2の先端にスポットライト本体3を回動可能に保持し得るものであれば如何なる構造によって取り付けるものとしても良くその構成は図示の実施形態に限定されない。
【0041】
また,スポットライト本体3の構成についても,光源であるランプ32によって発生した光を所定の方向に照射し得るものであれば既知の各種構造を適用可能であり,例えば,スポットライト本体3を全体として角筒状に形成する等,各種構造への変更が可能である。
【0042】
〔放熱体〕
図1,2において,符号5は本発明の放熱体5であり,図1,2に示す例では,この放熱体5をスポットライト本体3に取り付けることによりスポットライト1に放熱構造を設けている。
【0043】
この放熱体5は,図3に示すように筒状部51,複数の放熱フィン52,52’及び対流カバー53によって構成されると共に,必要に応じて着脱されるシールドキャップ54(図2参照)を備えている。
【0044】
筒状部51
放熱体5に設けられた前述の筒状部51は,放熱体5をスポットライト本体3のボディ31に取り付ける際,ボディ31に設けた前述のリフレクタ収容部311の開放端311aに取り付けられて,前述のリフレクタ収容部311を前方側に延長する。
【0045】
図1及び図2に示すように,ボディ31のリフレクタ収容部311を略円筒状に形成した実施形態の構成にあっては,放熱体5の筒状部51についても同様に円筒状に形成しているが,例えばボディ31に形成した前述のリフレクタ収容部311を角筒等のその他の形状に形成した場合には,放熱体5の筒状部51についてもこのリフレクタ収容部311の形状に対応した形状とすることがてきる。
【0046】
図示の実施形態にあっては,前述のリフレクタ収容部311に対する筒状部51の取り付けを容易とするために,リフレクタ収容部311との連結側における筒状部51の端部に,他の部分に比較して小径に形成した段部51a〔図3,図6参照〕を設け,この段部51aを前記リフレクタ収容部311の開放端311aに嵌合することで,リフレクタ収容部311に対して筒状部51を取り付けることができるように構成している。
【0047】
また,この筒状部51の前方側における開口内には,この筒状部51に対して更に必要に応じてフード6等を取り付けることができるよう,開口部内周に他の部分に対して大径に形成された嵌合部51bを形成してフード6等の端部に形成した段部を受け入れることができるようにしている。
【0048】
この筒状部51の内周面には,好ましくは多数の凹凸を形成し,この筒状部51内周面の表面積を増大して放熱性能を向上させるように構成しても良い。
【0049】
この凹凸は,筒状部51の内周面に例えば多数の溝をローレット状に形成することにより設けることができるが,筒状部51の内周面の表面積を増大し得るものであれば,溝の形成方向は特に限定されず,また,溝に限らずにその他の方法,例えば多数のディンプルの形成等により凹凸を形成するものとしても良い。
【0050】
放熱フィン52,52’
以上のように構成された筒状部51の外周面には,図6(A),(B)に示すように複数の放熱フィン52,52’の長手方向における一端52a,52a’側を取り付け,前記筒状部51の後方側に,放熱フィン52,52’の他端52b,52b’側を突設させている。
【0051】
この放熱フィン52,52’は,図示の例において円筒状に形成された筒状部51の周方向における所定の範囲,図示の実施形態にあっては全周に対する約1/4(全周360°に対して90°)の範囲〔図4(A),(B)参照〕に,周方向に略等間隔に計8本の放熱フィン52,52’が取り付けられており,前述の筒状部51をボディ31に設けたリフレクタ収容部311の開放端に取り付けた際,図2に示すように放熱フィン52の長辺が,リフレクタ収容部311の外周と接触乃至は近接した状態に配置されて,ボディ31からの熱が放熱フィン52,52’に伝達されるように構成されている。
【0052】
この放熱フィン52は,放熱性の点でその表面積は大きい程良く,図示の実施形態にあっては図2に示すように,放熱体5をスポットライト本体3のボディ31に取り付けた際,放熱フィン52がリフレクタ収容部311を越えて放熱部312の外周にまで至る長さに形成している。
【0053】
放熱フィン52,52’は,図4(A),(B)において左右の両端に設けた放熱フィン52’を除き,それぞれ前方側である一端52a側から他端52b側に向かって徐々にその厚みが増大するテーパ状に形成されており,リフレクタ収容部311の外周と後述の対流カバー53間の間隔をこの放熱フィン52によって仕切ることによって形成される冷却風流路55が,前方側における一端55aから,後方側である他端55bに向かって徐々にその幅を狭める形状に形成されている。
【0054】
なお,図示の実施形態にあっては,両端に設けた放熱フィン52’を他の放熱フィン52に比較して厚く形成することで,放熱体5全体の補強を図っているが,両端の放熱フィン52’についても,これを他の放熱フィン52と同様の形状に形成するものとしても良い。
【0055】
対流カバー53
筒状部51の外周側における放熱フィン52の長辺には,前述の対流カバー53を取り付けることで,この対流カバー53によって各放熱フィン52,52’間が相互に連結している。
【0056】
この対流カバー53は,放熱体5をスポットライト本体3のボディ31に取り付けた際,リフレクタ収容部311の外周を所定の間隔を介して被覆することができるように形成されており,リフレクタ収容部311の外周面と対流カバー53間の間隔が複数の放熱フィン52,52’によってリフレクタ収容部311の周方向に仕切られることで,複数の冷却風流路55が形成される。
【0057】
この対流カバー53は,リフレクタ収容部311の周方向においては,前述した放熱フィン52の取り付け範囲に対応して,ボディ31のリフレクタ収容部311外周方向における一部を被覆するように構成したもので,図示の実施形態にあってはリフレクタ収容部311の全周に対する約1/4の範囲でその外周を覆っている〔図1,図4(A),(B)参照〕。
【0058】
また,リフレクタ収容部311の軸線C方向においてこの対流カバー53は,リフレクタ収容部311の形成範囲の略全体を被覆するが,放熱部132の外周を覆わないようにそのサイズや形状が設定されている(図1,2)。
【0059】
このように,スポットライト本体3のボディ31に放熱部312が設けられている場合に,対流カバー53が放熱部312の外周を被覆することがないように形成することで,放熱部312を介して行われる熱放出を妨げることがないように形成している。
【0060】
この対流カバー53は,図6(B)に示す断面において,外周面が平坦な直線状に形成されていると共に,内周面が前方側の一端53a寄りに設けた所定の中間点Pmから他端53bに向けて厚みを減じる形状に形成されている。
【0061】
その結果,筒状部51の外周面と,前記対流カバー53の内周面間に形成される前述の冷却風流路55は,前方側の端部55aから前記中間点Pm置に至る迄,その高さを減じる形状に形成されていると共に,中間点Pmから後方側の端部(他端55b)に向かって略一定の高さとなるように形成されている。
【0062】
シールドキャップ54
なお,図7,8に示す放熱体5は,図3〜6を参照して説明した放熱体5の筒状部51に,更にランプ32の前端部を被覆するシールドキャップ54を取り付けたものであり,その他の構成は,図3〜6に示す放熱体5と同様である。
【0063】
このシールドキャップ54は,ランプ32からの光が直接視界に入ることにより感じる不快な眩しさを低減すると共に,ランプ32より直接照射開口30前方に照射される光を遮って,リフレクタ34による反射光のみを照明光として光のムラを無くし、光の均一性を保つもので必要に応じて放熱体5に取り付けて使用する。
【0064】
このようなシールドキャップ54の取り付けを可能とするために,シールドキャップ54の外周上部の一部より突出する連結杆56を設けると共に,この連結杆56の端部を,筒状部51の内周面に設けられた連結杆取付部57にネジ止め等することで着脱可能に取り付けている。
【0065】
このようにして,筒状部51に設けた連結杆取付部57に,シールドキャップ54に設けた連結杆56の一端を取り付けることにより,シールドキャップ54は,図7(A),(B)に示すように筒状部51の中央に配置され,このようにしてシールドキャップ54が取り付けられた放熱体5をスポットライト本体3に取り付けることで,ランプ32の先端部分をこのシールドキャップ54によって被覆することができるように構成されている。
【0066】
このシールドキャップ54の内周面には,好ましくは多数の凹凸,例えば溝図7(B)に示すようにローレット状に多数の溝を形成し,この溝の形成によってシールドキャップ54の表面積を増大させて放熱性を向上させることが好ましい。
【0067】
もっとも,シールドキャップ54の内周面の表面積を増大させることが可能であれば,凹凸の形成は溝の形成に限定されず,各種の形状によって形成することができる。
【0068】
以上のように,放熱体5の筒状部51に対してシールドキャップ54を着脱可能に取り付ける構成としたことにより,シールドキャップ54が必要な場合にはシールドキャップ54を取り付けた状態で,シールドキャップ54が不要な場合には,連結杆取付部57にネジ止め等された連結杆56を取り外すことにより,共通の放熱体5を使用して現場作業等により比較的簡単な作業によって用途等に応じた変更が可能である。
【0069】
〔使用方法及び作用〕
以上のように構成された放熱体5は,前述の筒状部51に設けた段部51aを,ボディ31に設けたリフレクタ収容部311の開口端311a内に嵌合することによりスポットライト本体3に取り付けられる。
【0070】
このスポットライト本体3に対する放熱体5の取り付けは,吊下アーム2に対する軸支位置を中心にスポットライト本体3を擺動させた際に,対流カバー53や放熱フィン52,52’が前記吊下アーム2と干渉しないように取り付け,好ましくは,図1に示す使用状態において,スポットライト本体3の上部側に前述の対流カバー53が配置されるように取り付ける。
【0071】
このようにしてスポットライト本体3に取り付けた放熱体5に対しては,図1,2に示すように筒状部51に対して更にフード6等を取り付け,筒状部51によって延長されたボディ31のリフレクタ収容部311を,必要に応じて更に前方に延長するものとしても良い。
【0072】
ここで,吊下アーム2によって天井や壁面の比較的高所に吊り下げた状態で使用されるスポットライト1では,一般に照明の対象となる展示物等はスポットライト本体3よりも低所に配置されているために,スポットライト本体3は,照射開口30からの光の照射方向前方側を下方に向けた,図1に示す姿勢で使用される。
【0073】
そして,スポットライト本体3に放熱体5を取り付けた状態でランプ32を点灯すると,ランプ32の点灯によって発生した熱は,リフレクタ34やボディ31を加熱すると共に,リフレクタ34やボディ31を介して伝わった熱は,放熱体5に伝わって放熱体5を加熱する。
【0074】
放熱体5は,前述したように筒状部51,放熱フィン52,52’及び対流カバー53によって構成され,筒状部51,放熱フィン52,52’及び対流カバー53の表面積分,空気との接触面積が増大していることから,周辺の空気との接触による熱交換に伴う放熱性の向上が得られるだけでなく,前述したようにボディ31のリフレクタ収容部311の外周と対流カバー53間の間隔を放熱フィン52,52’によって仕切ることにより複数の冷却風流路55を形成したことにより,冷却風流路55内で加熱された冷却風の排気と,冷却風流路55に対する外部の冷たい空気の導入とが促進される結果,放熱体5,従ってスポットライト本体3を効率良く冷却することができるものとなっている。
【0075】
すなわち,スポットライト本体3のボディ31や放熱体5の熱によって冷却風流路55内の空気が加熱されると,この加熱された空気は上昇移動しようとする。
【0076】
ここで,冷却風流路55の上面は,図6(B)に示すように対流カバー53によって塞がれているために,冷却風流路55内の空気の垂直上昇はこの対流カバー53によって阻まれ,対流カバー53に衝突した後は,対流カバー53に沿って高所側へ向かう流れとなる。
【0077】
その結果,一例として図1に示す姿勢で使用されているスポットライト本体3に取り付けられた放熱体5にあっては,冷却風流路55内で加熱された空気は,冷却風流路55の他端55b〔図6(B)参照〕を介して冷却風流路55外に排出される。
【0078】
このようにし,冷却風流路55内で加熱された空気が排出されると,冷却風流路55の一端55a側からは,流路外の比較的冷たい空気が導入され,このように冷却風流路55では,加熱された空気の排出と,外気の導入とが絶えず行われるために,熱交換が効率的に行われる結果,スポットライト本体3を効率的に冷却することができるものとなっている。
【0079】
特に前述したように,放熱フィン52の厚みを一端52a側から他端52b側に向かうに従い増大させた構造を採用することにより,及び/又は,対流カバー53の中間位置Pmから一端53aに至る厚みを減じるように構成することにより,冷却風流路55を一端55a側から他端55b側に向かうに従って徐々にその断面積が減少する形状に形成した場合には,このような冷却風の給排気を更に促進させることができるものとなっている。
【0080】
すなわち,前述のようにして冷却風流路55内に一端55a側から他端55b側に向かう冷却風の流れが生じた場合,冷却風の流量が一定であれば,この冷却風の流れは流路面積が狭くなるにつれて流速を増す。
【0081】
そして,流速の増加が生じると,ベルヌーイの定理より流速の増加部分における圧力は低くなることから,前述した冷却風流路55の形状を採用する場合には,冷却風流路55内に一端55a側から他端55b側に向かって相対的に低圧となる圧力勾配が生じ,その結果,冷却風流路55の一端55a側から他端55b側に向かう冷却風流の発生が更に促進され,放熱体5の放熱性能のより一層の向上が得られるものとなっている。
【0082】
一例として,図1,2に示す構造のスポットライライト1(75Wランプ使用)において,放熱体5を取り付けていない状態でのランプ封止部の発熱温度は389℃であったのに対し,放熱体5を取り付けた状態では349℃にまで低下しており,上記放熱体5によって放熱性が大幅に向上していることが判る。
【0083】
以上の説明では,スポットライト本体3のボディ31とは別個に放熱体5を形成し,この放熱体5をスポットライト本体3のボディ31に取り付けることにより,スポットライト1に放熱構造を付加するものとして説明したが,前述した放熱体5を別個に設けることなく,前記放熱体5と同様の構成をスポットライト本体3のボディ31に直接形成するものとしても良い。
【0084】
この場合には,図1〜8を参照して説明した放熱体5における筒状部51を省略し,スポットライト本体3のボディ31に設けたリフレクタ収容部311の外周に直接,前述した放熱フィン52と対流カバー53とを取り付けるものとしても良く,このように構成した場合においても,前述した放熱体5を取り付けた場合と同様,放熱性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 スポットライト
2 吊下アーム
3 スポットライト本体
30 開口
31 ボディ
311 リフレクタ収容部
312 放熱部
313 ソケット収容部
314 リブ
32 ランプ
33 ソケット
34 リフレクタ
34a フランジ
34b ランプ挿入孔
36 ケーブル
5 放熱体
51 筒状部
51a 段部
51b 嵌合部
52 放熱フィン
52a 一端
52b 他端
53 対流カバー
53a 一端
53b 他端
54 シールドキャップ
55 冷却風流路
55a 一端
55b 他端
56 連結杆
57 連結杆取付部
6 フード
100 スポットライト
120 吊下アーム
130 スポットライト本体
131 ボディ
131a リフレクタ収容部
131b 放熱部
131c ソケット収容部
131d リブ
132 ランプ
134 リフレクタ
141 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ内にランプ及びリフレクタを収容し,照射開口を有するスポットライト本体と,前記ボディが,前記リフレクタの開口部外周を被覆し,且つ前記リフレクタの開口部前方を開放する開放端を備えた略筒状のリフレクタ収容部を含むスポットライトの前記ボディに取り付けられる放熱体であって,
前記リフレクタ収容部の前記開放端に着脱可能に取り付けられる筒状部と,該筒状部の外周面に取り付けられた複数の放熱フィンと,該複数の放熱フィンを介して前記筒状部に取り付けられた対流カバーを備え,
前記対流カバーは,前記リフレクタ収容部の外周の一部を被覆すると共に,
前記放熱フィンは,前記リフレクタ収容部の周方向に所定の間隔で,かつ,該フィンの長手方向を前記ボディの長手方向に略平行に延設され,該フィン間に複数の冷却風流路を形成することを特徴とするスポットライト用放熱体。
【請求項2】
前記冷却風流路を,前記筒状部側における一端側から他端側に向けて徐々に断面積を狭める形状に形成したことを特徴とする請求項1記載のスポットライト用放熱体。
【請求項3】
前記筒状部の内周面に多数の凹凸を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のスポットライト用放熱体。
【請求項4】
前記筒状部に,前記ランプの先端部を被覆するキャップ状のグレアシールドを着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のスポットライト用放熱体。
【請求項5】
前記グレアシールドの内周面に多数の凹凸を形成したことを特徴とする請求項4記載のスポットライト用放熱体。
【請求項6】
ボディ内にランプ及びリフレクタを収容し,照射開口30を有するスポットライト本体と,前記スポットライト本体を先端部に擺動可能に取り付けた吊下アーム2を備えると共に,前記ボディが,前記リフレクタの開口部外周を被覆し且つ前記リフレクタの開口部前方を開放する開放端を備えた略筒状のリフレクタ収容部を備えたスポットライトにおいて,
前記リフレクタ収容部の外周面に対して所定の間隔を介して配置され,前記リフレクタ収容部の外周を前記吊下アームと干渉しない位置で被覆する対流カバーと,
前記リフレクタ収容部の外周と前記対流カバー間の間隔を,前記リフレクタ収容部の周方向に仕切り,前記リフレクタ収容部の軸線方向に対して略平行な長さ方向を有する複数の冷却風流路を形成する複数の放熱フィンを設けたことを特徴とする放熱機構を備えたスポットライト。
【請求項7】
前記冷却風流路を,前記リフレクタ収容部の開放端側である一端側から他端側に向けて徐々に断面積を狭める形状に形成したことを特徴とする請求項6記載の放熱構造を備えたスポットライト。
【請求項8】
ボディ内にランプ及びリフレクタを収容したスポットライト本体と,前記スポットライト本体を先端部に擺動可能に取り付けた吊下アームを備えると共に,前記ボディが,前記リフレクタの開口部外周を被覆し,且つ前記リフレクタの開口部前方を開放する開放端を備えた略筒状のリフレクタ収容部を備えたスポットライトにおいて,
請求項1〜5いずれか1項記載の放熱体を,前記対流カバーが前記吊下アームと干渉しない位置となるよう前記スポットライト本体の前記ボディに取り付けたことを特徴とする放熱機構を備えたスポットライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−251207(P2010−251207A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101278(P2009−101278)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(592064110)株式会社ウシオスペックス (16)
【Fターム(参考)】