説明

スポットライト

【課題】光の照射領域の形状の変更が可能で、そして電球、反射鏡及びレンズのメンテナンス性に優れるスポットライトを提供すること。
【解決手段】前後に開口する筒体(11)、筒体後端に筒体の後部を支点として開閉可能に備えられた蓋体(13)、筒体の前方側に収容されたレンズ(14)、レンズと蓋体との間に配置されている、中央に孔を持つ凹面反射鏡(15)、レンズと凹面反射鏡との間に配置された管球と、管球に接続し且つ凹面反射鏡の孔から後方側に突き出された口金とを備える電球(16)、および電球を支持するソケット(17)を含み、前記のレンズの前方側に、各々レンズの周縁の内側に突き出し可能な複数枚の遮光板(42a、42b、〜)がレンズの周縁に沿って並べて配設されており、そして前記の凹面反射鏡及びソケットが、蓋体の筒体側の壁面に筒体の前後方向に移動可能に備えられた可動支持具(18)に支持固定されていることを特徴とするスポットライト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舞台あるいは放送局のスタジオで使用されるスポットライトに関する。
【背景技術】
【0002】
演劇やコンサートが行なわれる舞台、あるいは放送局のスタジオには、多数のスポットライトが備えられている。
【0003】
特許文献1には、前後に開口する筒体(灯体)、筒体の後端に開閉可能に備えられた蓋体(ソケット保持体の後面板)、筒体の前方側に収容されているレンズ、レンズと蓋体との間に配置されている、中央に開口部を持つ凹面反射鏡(反射器)、レンズと凹面反射鏡との間に配置された管球(電球の発光部分)と、管球に接続し且つ凹面反射鏡の開口部から後方側に突き出された口金とを備える電球、および電球を口金が挿入された状態で支持するソケットを含むスポットライトが開示されている。
【0004】
このスポットライトの筒体の後方側の開口(電球取出し口)には、ソケットが固定されたソケット保持体が嵌め合わされている。同文献には、前記のソケット保持体を筒体の後方側へ引き出したのちに後方位置にて回転移動させることにより、ソケットと電球とが筒体の外部に突き出され、且つ電球がソケットと共に縦向きに配置されるため、電球の交換を容易に行なうことができると記載されている。
【0005】
特許文献2のスポットライトでは、先ず筒体の後端に備えられた蓋(後面板)を開け、次いで筒体の内部に設置された反射鏡を、その下端部を支点として傾斜移動させて筒体内部の反射鏡の上方に間隙を形成し、そして反射鏡の前方側に配置された電球を、前記間隙を通じて筒体の後方側の開口から外部に取り出すことにより電球の交換が行なわれる。
【0006】
また、スポットライトを、例えば、舞台照明に用いる場合には、スポットライトの光によって舞台に形成される光照射領域の形状を、舞台前方の観客席、あるいは舞台の袖に照射されない形状に設定することがある。
【0007】
特許文献3には、光源とレンズとの間にマスク装置を備える照明装置が開示されている。この照明装置は、マスク装置が備える四枚のマスク板(遮光板)を操作して、光源にて発生した光をマスク板で部分的に遮ることにより、照明装置の光によって照明対象物に形成される光照射領域(光輝域の輪郭)の形状を、方形、矩形、菱形、あるいは台形等に変更することが可能とされている。
【特許文献1】特開2003−151303号公報
【特許文献2】特開2000−57810号公報
【特許文献3】特開平7−6601号公報(第2頁段落番号[0002]、第11図及び第12図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、スポットライトには、前記のような電球の交換の他に、スポットライトの光量の低下を抑制するため、反射鏡の前面(凹面)に付着した汚れを拭き取ったり、レンズを取り外してレンズの表面に付着した汚れを洗浄したりするメンテナンスが必要とされる。また、スポットライトは、例えば、天井などの高所に、照射光が斜め下を向くように傾斜した状態で設置される。従って、レンズは、取り外しの作業での落下を防止するため、筒体の後方側の開口から外部に取り出すことが望ましい。
【0009】
前記の特許文献1及び特許文献2のスポットライトは、いずれも電球の交換を容易とする工夫がされている。しかしながら、特許文献1のスポットライトは、反射鏡の前面に付着した汚れを拭き取るためには、筒体から反射鏡を取り外す必要がある。また、特許文献1及び特許文献2のスポットライトは、レンズを筒体の後方側の開口から外部に取り出すためには、筒体から反射鏡を取り外す必要がある。
【0010】
そして前記の特許文献3の照明装置は、レンズを照明装置の前方側から取り外す必要があり、また電球を交換したり、あるいは反射鏡の前面に付着した汚れを拭き取ったりするためには、レンズ及びマスク装置を取り外す必要がある。
【0011】
本発明の課題は、光の照射領域の形状の変更が可能で、そして電球、反射鏡及びレンズのメンテナンス性に優れるスポットライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前後に開口する筒体、筒体の後端に筒体の後部を支点として開閉可能に備えられた蓋体、筒体の前方側に収容されているレンズ、レンズと蓋体との間に配置されている、中央に孔を持つ凹面反射鏡、レンズと凹面反射鏡との間に配置された管球と、管球に接続し且つ凹面反射鏡の孔から後方側に突き出された口金とを備える電球、および電球を口金が挿入された状態で支持するソケットを含み、前記のレンズの前方側に、各々レンズの周縁の内側に突き出し可能な複数枚の遮光板がレンズの周縁に沿って並べて配設されており、そして前記の凹面反射鏡及びソケットが、蓋体の筒体側の壁面に筒体の前後方向に移動可能に備えられた可動支持具に支持固定されていることを特徴とするスポットライトにある。
【0013】
本発明のスポットライトの好ましい態様は、次の通りである。
(1)凹面反射鏡の前端が、可動支持具を最も後方に移動させた状態で筒体の後端よりも前方側に配置され、そして筒体と蓋体とが、筒体の内壁面で、かつ前記反射鏡の前端と筒体の後端との間の位置を支点として傾斜移動が可能な接続具を介して互いに接続されている。
(2)各々の遮光板が筒体を貫通して外部に伸びる取っ手を備える。
(3)遮光板の数が2乃至8枚の範囲内にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスポットライトは、レンズの前方側に備えられた複数枚の遮光板を用いて光の照射領域の形状を変更することができ、そして遮光板や凹面反射鏡を取り外すことなく、その主要部品の全て、すなわち電球、凹面反射鏡、そしてレンズのメンテナンスを、容易に且つ短時間で行なうことができる。また、前記のメンテナンスは、遮光板を移動することなく、すなわち光照射領域を適切な形状に維持した状態で実施することができるため、メンテナンスの終了後に改めて光照射領域の形状を設定するという手間のかかる作業を必要としない。このため、本発明のスポットライトは、その主要部品(特にレンズや凹面反射鏡)のメンテナンスを頻繁に実施することができる。従って、本発明のスポットライトは、長期間に渡って安定した高い光量の光が要求され、そして光の照射領域の形状の変更が必要とされる舞台やスタジオ等で特に有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のスポットライトを添付の図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明のスポットライトの構成例を示す正面図であり、図2は、図1のスポットライト10の右側面図であり、そして図3は、図1に記入した切断線III−III線に沿って切断したスポットライト10の断面図である。また、図4は、図3に示す電球16、凹面反射鏡15、ソケット17、および可動支持具18を上から見た拡大図である。そして図5は、図1に示す遮光板42aの近傍の部位の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【0017】
スポットライト10は、前後に開口する筒体11、筒体11の後端に筒体11の後部を支点12として開閉可能に備えられた蓋体13、筒体11の前方側に収容されているレンズ14、レンズ14と蓋体13との間に配置されている、中央に孔15aを持つ凹面反射鏡15、レンズ14と凹面反射鏡15との間に配置された管球16aと、管球16aに接続し且つ凹面反射鏡15の孔15aから後方側に突き出された口金16bとを備える電球16、および電球16を口金16bが挿入された状態で支持するソケット17などから構成されている。このスポットライト10は、前記のレンズ14の前方側に、各々レンズ14の周縁の内側に突き出し可能な四枚の遮光板42a、42b、42c、42dがレンズ14の周縁に沿って並べて配設されており、そして前記の凹面反射鏡15及びソケット17が、蓋体13の筒体側の壁面に筒体11の前後方向に移動可能に備えられた可動支持具18に支持固定されていることに大きな特徴がある。
【0018】
電球16は、管球16aと口金16bとを備えている。管球16aは、通常、ガラスから形成される。口金16bとしては、例えば、バイポスト型の口金が用いられている。バイポスト型の口金16bには、ソケット17に挿入される一対の棒状の外部電極端子(図示は略する)が備えられている。バイポスト型の口金16bに代えて、ねじ込み型の口金などの公知の口金を用いることができる。
【0019】
管球16aの内部には、前記の口金16bの外部電極端子と電気的に接続された一対の棒状支持電極21a、21bと、棒状支持電極21a、21bの先端部に架設されたフィラメント16cが配設されている。
【0020】
フィラメント16cとしては、例えば、タングステンフィラメントから形成されたコイルを、更に螺旋状に巻いたもの(一般に、二重コイルと呼ばれている)が用いられている。
【0021】
管球16aの内部には、管球16aやフィラメント16cの黒化を抑制するため、ハロゲンもしくはハロゲン化合物(例、CH3Br、CH2Cl2 )のガスを封入することが好ましい。ハロゲンもしくはハロゲン化合物のガスが封入された電球は、ハロゲン電球と呼ばれている。管球16aの内部には、ハロゲンもしくはハロゲン化合物のガスの他にも、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガスなどを封入してもよい。
【0022】
ソケット17としては、電球16の口金16bに対応する公知のソケットが用いられる。ソケット17は、電球16を口金16bが挿入された状態で仮固定するロック機構を備えていることが好ましい。
【0023】
電球16は、電源(図示は略する)にて発生した電気エネルギーを、電源ケーブル22、電気配線23、ソケット17、口金16b、そして棒状支持電極21a、21bを介してフィラメント16cに付与することにより発光する。なお、電球16の発熱による筒体11の内部の温度上昇を抑制するため、筒体11には通風機39a、39bが備えられている。
【0024】
電球16が発生した光は、直接的に、あるいは反射鏡15の前面(凹面)での反射を介して間接的にレンズ14に到達し、次いでレンズ14で屈折され、例えば、舞台やスタジオなどの所定の領域に照射される。以下、スポットライトの光を照射することにより舞台やスタジオなどの照明対象物に形成される、前記の光で明るく照らされる領域を、光照射領域と云う。
【0025】
凹面反射鏡15としては、例えば、球面反射鏡が用いられている。球面反射鏡に代えて、楕円面反射鏡や放物面反射鏡などの公知の凹面反射鏡を用いることができる。
【0026】
レンズ14としては、例えば、凸レンズが用いられている。凸レンズに代えて、フレネルレンズなどの公知のレンズを用いることができる。
【0027】
このレンズ14の前方側には、各々レンズ14の周縁の内側に突き出し可能な四枚の遮光板42a、42b、42c、42dがレンズの周縁に沿って並べて配設されている。筒体11は、外筒51a、および外筒51aの前端部の内側に嵌め合わされた内筒51bから構成されている。そして前記の四枚の遮光板は、内筒51bに取り付けられている。以下、図5に示す遮光板42aを例として、遮光板の構成や動作などについて説明する。
【0028】
遮光板42aには、筒体11を貫通して外部に伸びる取っ手43が備えられている。取っ手43の前後には、各々内筒51bに固定されたL字型の支持具44a、44bが配設されている。支持具44a、44bは、ボルト45により、両者の間にスペーサ46を挟んだ状態で互いに固定されている。
【0029】
支持具44bは、幅方向の中央部に取っ手支持板47を備えている。取っ手支持板47には、その上部に曲げ加工が施され、取っ手43の側に突き出し部47aが形成されている。取っ手43は、支持具44aと前記の突き出し部47aとに挟まれて配置が固定されている。この取っ手43の先端部を手で操作することにより、例えば、遮光板42aをレンズの径方向(遮光板42aでは上下方向)に移動、あるいは傾斜移動(例えば、図5に二点鎖線で示した配置に移動)することができる。取っ手43は、レンズ14の側(下方)に移動され、その先端部に備えられたストッパ48が支持具44aに接触すると、更にはレンズの側には移動できないようにされている。なお、遮光板は、駆動装置を用いて駆動することもできる。
【0030】
遮光板42aの移動範囲は、取っ手43の長さ、取っ手43が貫通する内筒51bの孔51cのサイズ、あるいは取っ手43とスペーサ46との間隔を変更することで調節することができる。なお、前記の図1に示す遮光板42a、42bは、各々最もレンズ14の側に移動させた状態で、遮光板42c、42dは、各々最もレンズの側とは逆側に移動させた状態で記入してある。また、遮光板を最もレンズ14の側に移動させた際に、この遮光板(例、図1に示す遮光板42a)のレンズ14の側とは逆側から光が漏れないように、レンズ14の前方には遮光用のリング49が備えられている。この遮光用のリングは、遮光板42a、42b、42c、42dの前方側に備えられていてもよい。
【0031】
そして、図1に示す四枚の遮光板42a、42b、42c、42dのうちの一枚、あるいは二枚以上をレンズの側に移動して(レンズの周縁の内側に突き出させて)、レンズを透過した光を遮ることにより、スポットライトの光により照明対象物に形成される光照射領域の形状を変更することができる。例えば、スポットライト10を舞台照明に用いる場合に、遮光板42bをレンズの側に移動することにより、スポットライトにより形成される光照射領域の形状を、舞台前方の観客席には光が照射されない形状に設定することができる。また、遮光板42cあるいは遮光板42dをレンズの側に移動することにより、前記の光照射領域の形状を、舞台の袖には光が照射されない形状に設定することができる。
【0032】
各々の遮光板は、例えば、ステンレススチールから形成される。遮光板による光の反射を抑制するため、遮光板を黒色で塗装することが好ましい。遮光板の数に特に制限はないが、遮光板の数が多いとスポットライトの構成が複雑になり、また遮光板の操作に手間がかかる。このため、遮光板の数は2乃至8枚(特に、2乃至4枚)の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
図3及び図4に示すように、本発明のスポットライト10では、凹面反射鏡15とソケット17とが、蓋体13の筒体11の側の壁面に筒体の前後方向に移動可能に備えられた可動支持具18に支持固定されている。凹面反射鏡15は、後に説明する可動支持具18の支持板28に、例えば、支持材24a、24bなど(反射鏡15よりも図3の紙面に対して手前側にある支持材は図示していない)を用いて固定されている。
【0034】
可動支持具18は、蓋体13に固定されたガイド軸25a、25b、各々のガイド軸の周囲に摺動可能に嵌め合わされたブシュ26a、26b、蓋体13に回転可能に取り付けられたねじ軸27aと、ねじ軸27aに嵌め合わされたナット27bとからなる送りねじ27、そして前記のブシュ26a、26b及びナット27bに固定された支持板28から構成されている。
【0035】
支持板28は、ブシュ26a、26bが、それぞれガイド軸25a、25bに沿って摺動可能であるため、ガイド軸の長さ方向(筒体11の前後方向と一致する)に移動可能とされている。そして、前記の送りねじ27のねじ軸27aの後端部に備えられた摘み29を回すことにより、支持板28を、ナット27bと共にねじ軸27aの長さ方向(筒体11の前後方向と一致する)に沿って前後に移動させることができる。この支持板28の移動により、ソケット17に支持された電球16と凹面反射鏡15とを、筒体11の前後方向に移動させることができる。
【0036】
支持板28を筒体11の前後方向に移動させる機構に特に制限はなく、例えば、前記のブシュ26a、26bの各々としてボールブシュを用いたり、あるいは送りねじ27としてボールねじを用いたりすることもできる。また、前記のブシュ26a、26b及び送りねじ27を用いずに、支持板28を、公知の直動駆動装置を用いて移動してもよい。
【0037】
そして、可動支持具18を用いて、電球16及び凹面反射鏡15を、筒体11の前方側あるいは後方側に移動することにより、スポットライト10の光の照射領域を拡大あるいは縮小することができる。例えば、電球16及び凹面反射鏡15を、図3に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで前方側に移動させることにより、スポットライト10の光の照射領域を拡大することができる。
【0038】
また、筒体11の前端に形成された収容部52a及び/又は収容部52bに、例えば、カラーフィルタを収容することにより、スポットライト10の発光色を様々な色に設定することができる。収容部52aには、フィルタ以外にも様々な調光用の器具(例、機械駆動式の多色フィルタなど)を取り付けることができる。
【0039】
筒体11の後端には、筒体11の後部を支点12として開閉可能な蓋体13が備えられている。蓋体13には、蓋体13に備えられた軸33を支点として傾斜移動が可能な仮止め具34が備えられている。この仮止め具34の前方側に形成された突起34aと、筒体11の後端から内側に突き出された突起11aとを係合させることにより、蓋体13が不用意に開くことを防止することができる。
【0040】
また、可動支持具18を前方側に移動させた状態では、押さえ板41が仮止め具34の下端部34cの真下に配置され、これにより仮止め具34を傾斜移動させることができなくなるため、蓋体13を開けることはできない。すなわち、蓋体13は、可動支持具18が反射鏡15と共に最も後方側に配置されたときにのみ開けることができるように構成されている。反射鏡15が前方側に配置された状態で蓋体13を開けると、反射鏡15が筒体11の内壁面に接触するからである。
【0041】
そして、この仮止め具34を、その操作部34bを上方に押し上げて図3に二点鎖線で示した位置に配置すると、前記の突起34aと突起11aとの係合が解除されるため、蓋体13を取っ手35を後方側に引いて開けることができる。
【0042】
図6は、スポットライト10を蓋体13が半開した状態で示す図であり、そして図7は、スポットライト10を蓋体13が全開した状態で示す図である。
【0043】
スポットライト10は、図7に示すように蓋体13を全開させると電球16が筒体11の外部に配置されるため、電球16のメンテナンスを容易に行なうことができる。例えば、電球16の管球16aに付着した汚れ(例、埃など)の拭き取り、あるいはフィラメント16cが断線した場合の電球16の交換を容易に且つ短時間で行なうことができる。
【0044】
また、スポットライト10は、蓋体13を全開させると電球16と共に凹面反射鏡15も筒体11の外部に配置されるため、凹面反射鏡15のメンテナンスも容易に行なうことができる。例えば、凹面反射鏡15の前面(凹面)に付着した汚れを、容易に且つ短時間で拭き取ることができる。
【0045】
また、スポットライト10では、前記のように遮光板42a、42b、42c、42dがレンズ14の前方側に配置されており、そして蓋体13を全開させることにより凹面反射鏡15が筒体11の外部に取り出される。従って、蓋体13を全開すると、筒体11の内部のレンズ14の後方側に広い作業スペースが形成されるため、レンズ14のメンテナンスも容易に行なうことができる。例えば、筒体11の後方側の開口から筒体11の内部に手を入れて、レンズ14の後方側の表面に付着した汚れを簡単に且つ短時間で拭き取ることができる。また、レンズ14を固定しているボルト36を取り外したのち、レンズ14を筒体11の後方側の開口から外部に取り出して洗浄することもできる。また、このレンズのメンテナンスの作業は、遮光板や凹面反射鏡15を取り外すことなく容易に行なうことができる。
【0046】
そして前述のように、レンズ14を筒体11の前方側の開口ではなく、後方側の開口から外部に取り出すことにより、筒体11の内部に、レンズ14を筒体11の前方側の開口から外部に飛び出さないように設置することができる。例えば、スポットライト10のレンズ14は、その周囲をレンズ14の外径よりも小さな径にて開口する環状の支持具37で支持されている。このため、前記のようにボルト36を取り外す際にレンズ14が急に外れても、レンズ14は筒体11の底に落ちるだけで、筒体の前方側の開口から飛び出して落下することはない。従って、レンズ14を筒体11の外部に安全に取り出すことができる。なお、前記の環状の支持具37を用いる代わりに、筒体11の内部のレンズよりも前方側に網を張ったり、あるいは筒体11のレンズ14よりも前方側の部分の内径をレンズ14の外径よりも小さくすることにより、前記のレンズの落下を防止することもできる。
【0047】
このように、本発明のスポットライト10は、レンズの前方側に備えられた遮光板42a、42b、42c、42dを用いて光の照射領域の形状を変更することができ、そして遮光板や凹面反射鏡15を取り外すことなく、その主要部品の全て、すなわち電球16、凹面反射鏡15、そしてレンズ14のメンテナンスを、容易に且つ短時間で行なうことができる。また、前記のメンテナンスは、遮光板を移動することなく、すなわちスポットライトの光照射領域を適切な形状に維持した状態で実施することができる。このため、メンテナンスの終了後に改めて遮光板を移動して、スポットライト10の光照射領域を適切な形状に設定し直すという手間のかかる作業は必要でない。このため、本発明のスポットライト10は、その主要部品(特にレンズ14や凹面反射鏡15)のメンテナンスを頻繁に実施することができる。従って、本発明のスポットライトは、長期間に渡って安定した高い光量の光が要求され、そして光の照射領域の形状の変更が必要とされる舞台やスタジオ等で特に有利に使用することができる。
【0048】
図3に示すように、本発明のスポットライト10においては、凹面反射鏡15の前端が、可動支持具18を最も後方に移動させた状態(反射鏡15が図に実線で示す位置に配置された状態)で筒体11の後端よりも前方側に配置され、そして筒体11と蓋体13とが、筒体11の内壁面で、かつ前記反射鏡15の前端と筒体11の後端との間の位置を支点12として傾斜移動が可能な接続具19を介して互いに接続されていることが好ましい。
【0049】
図8に示すように、接続具19としては、支点12を構成する軸(12)を回転可能に支持する基板19aと、前記の軸に固定された可動アーム19bとを備える公知のヒンジが用いられている。
【0050】
図6に示すように、筒体11の内壁面で、かつ反射鏡15の前端と筒体11の後端との間の位置に支点12を配置すると、筒体11の直径を小さくする、すなわスポットライト10を小型化することが可能になる。例えば、前記の支点12を中心とする反射鏡15の頂部の回転半径(Ra)は、筒体11の後端の位置(図にX印で示した位置)を中心とする反射鏡15の頂部の回転半径(Rb)よりも小さくなる。このため、反射鏡15の前端と筒体11の後端との間の位置に支点12を配置すると、反射鏡15の頂部は図に記入した矢印38aに沿って移動するため、筒体11の直径が小さい場合であっても、反射鏡15を筒体11の後方側の開口から外部に取り出すことができる。これに対して、筒体11の後端の位置(図にX印で示した位置)に支点を配置すると、反射鏡15の頂部は矢印38bに沿って移動するため、筒体11の直径を更に大きな値に設定しない限り、反射鏡15を筒体11の後方側の開口から外部に取り出すことはできない。なお、前記の「筒体の内壁面」には、この内壁面に設置された別の部品(例えば、通風機39b)の表面も含まれる。
【0051】
図6に示すように、反射鏡15の前端と筒体11の後端との距離をLaとした場合、上記の支点12と筒体11の後端との距離Lbは、0.1La〜0.5Laの範囲内の値に設定されていることが好ましい。この距離Lbを0.1La以下の値に設定すると、反射鏡15の頂部の回転半径が大きくなる。このため、反射鏡15を筒体11の外部に取り出すためには、筒体11の直径を大きな値に設定(スポットライトのサイズを大きく)する必要がある。その一方で、距離Lbを0.5La以上の値に設定すると、反射鏡15の底部の回転半径が小さくなる。このため、筒体11の直径を大きな値に設定(スポットライトのサイズを大きく)しないと、蓋体13を開ける際に反射鏡15の底部が筒体11の内壁面に接触する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のスポットライトの構成例を示す正面図である。
【図2】図1のスポットライト10の右側面図である。
【図3】図1に記入した切断線III−III線に沿って切断したスポットライト10の断面図である。
【図4】図3に示す電球16、凹面反射鏡15、ソケット17、および可動支持具18を上から見た拡大図である。
【図5】図1に示す遮光板42aの近傍の部位の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図6】図3のスポットライトを蓋体が半開した状態で示す図である。
【図7】図3のスポットライトを蓋体が全開した状態で示す図である。
【図8】図3に示す接続具の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
10 スポットライト
11 筒体
11a 突起
12 支点
13 蓋体
14 レンズ
15 凹面反射鏡
15a 孔
16 電球
16a 管球
16b 口金
16c フィラメント
17 ソケット
18 可動支持具
19 接続具
19a 基板
19b 可動アーム
21a、21b 棒状支持電極
22 電源ケーブル
23 電気配線
24a、24b 支持材
25a、25b ガイド軸
26a、26b ブシュ
27 送りねじ
27a ねじ軸
27b ナット
28 支持板
29 摘み
33 軸
34 仮止め具
34a 突起
34b 操作部
34c 下端部
35 取っ手
36 ボルト
37 環状の支持具
38a、38b 反射鏡の頂部の移動方向を示す矢印
39a、39b 通風機
41 押さえ板
42a、42b、42c、42d 遮光板
43 取っ手
44a、44b 支持具
45 ボルト
46 スペーサ
47 取っ手支持板
47a 突き出し部
48 ストッパ
49 遮光用のリング
51a 外筒
51b 内筒
51c 孔
52a、52b 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に開口する筒体、筒体の後端に該筒体の後部を支点として開閉可能に備えられた蓋体、該筒体の前方側に収容されているレンズ、該レンズと蓋体との間に配置されている、中央に孔を持つ凹面反射鏡、レンズと凹面反射鏡との間に配置された管球と、該管球に接続し且つ凹面反射鏡の孔から後方側に突き出された口金とを備える電球、および該電球を口金が挿入された状態で支持するソケットを含み、前記のレンズの前方側に、各々レンズの周縁の内側に突き出し可能な複数枚の遮光板が該レンズの周縁に沿って並べて配設されており、そして前記の凹面反射鏡及びソケットが、蓋体の筒体側の壁面に筒体の前後方向に移動可能に備えられた可動支持具に支持固定されていることを特徴とするスポットライト。
【請求項2】
凹面反射鏡の前端が、可動支持具を最も後方に移動させた状態で筒体の後端よりも前方側に配置され、そして筒体と蓋体とが、筒体の内壁面で、かつ前記反射鏡の前端と筒体の後端との間の位置を支点として傾斜移動が可能な接続具を介して互いに接続されている請求項1に記載のスポットライト。
【請求項3】
各々の遮光板が筒体を貫通して外部に伸びる取っ手を備える請求項1に記載のスポットライト。
【請求項4】
遮光板の数が2乃至8枚の範囲内にある請求項1に記載のスポットライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−266568(P2009−266568A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114154(P2008−114154)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000168078)江東電気株式会社 (11)
【Fターム(参考)】