説明

スポット溶接ガン

【課題】 アームの交換が容易であって、簡易な構造を採用して電極チップを互いに対向する位置に正確に配置し且つ固定することができるスポット溶接ガンを提供する。
【解決手段】 互いに対向する第1電極チップ及び第2電極チップと、第1電極チップを第2電極チップに対して当接離間可能に保持する駆動手段を備えたガン本体と、ガン本体に設けられたアームホルダに回動可能且つ着脱可能に固定されるアームとを備えるスポット溶接ガンにおいて、アームは一端を軸支する貫通孔と、他端に設置される第2電極チップとを備え、位置規制機構は貫通孔を有するベース部と、アーム内部に設置され弾性部材の弾性力に抗して頭部がアーム端面から突出するピンとを備え、軸部に挿通されるアームを狭持してベース部を軸部に固着し、アームを回動可能とし、ピンがベース部の貫通孔と嵌合した状態で、両電極チップが互いに対向することを特徴とするスポット溶接ガン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に電極を備えたアームをガン本体に取り付けたスポット溶接ガンに係るものであって、特に回動アームを備えたスポット溶接ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の組立ラインにおける溶接作業や事故車両等の板金修理等において、手動操作によって被溶接物を溶接するポータブル型のスポット溶接ガンが多用されている。
例えば、アームの交換が容易であって、電極チップを互いに対向する位置に正確に配置できるもので、互いに対向する第1の電極チップ及び第2の電極チップと、第1の電極チップを第2の電極チップに対して当接離間可能に保持する駆動手段を備えたガン本体と、ガン本体に設けられたアームホルダに回動可能かつ着脱可能に固定されるアームとを備える抵抗溶接ガンであって、アームホルダは、アームの端部を回動可能に軸支する軸孔と、軸孔の内周面に、アーム側の開口面から所要間隔離間して、回動軸方向と直交する方向に形成された始端と終端を有する第1の溝と、同じく軸孔の内周面に形成され、アーム側の開口面と第1の溝とを連通する第2の溝とを有して構成され、アームは、一端側に第2の電極チップを保持するアーム部と、アーム部の他端側に設けられた回動軸部と、この回動軸部の外周面に設けられ、第1の溝の始端または終端と当接させたときに、第1及び第2の電極チップが互いに対向するようにアームを位置決めする突起体とから構成されるスポット溶接ガンが公知である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004―314131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る構造では、電極チップを保持するアームを片側90度のみ回動させることができるものであるので、被溶接物によっては操作上において不都合が生じ、作業効率に影響を及ぼす虞があった。また、アームホルダに挿通される軸部の突起体を溝に当接させることで、位置決めを容易とするものであるが、当該状態にて締付レバーによる締付工程を行わなければ、互いの電極チップの位置を正確に対向させた状態で固定することができない構造である為、作業者には突起体が溝に当接した状態で締め付けが確実に行われているか否かの確認作業が必須となり、締付工程が煩雑となり、作業者への負担が増大する虞があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、アームの交換が容易であって、簡易な構造を採用して電極チップを互いに対向する位置に正確に配置し且つ固定することができるスポット溶接ガンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明のスポット溶接ガンは、互いに対向する第1電極チップ及び第2電極チップと、前記第1電極チップを前記第2電極チップに対して当接離間可能に保持する駆動手段を備えたガン本体と、ガン本体に設けられたアームホルダに回動可能且つ着脱可能に固定されるアームとを備えるスポット溶接ガンにおいて、アームは、アームの一端を軸支する貫通孔と、他端に設置される第2電極チップとを備え、位置規制機構は、貫通孔を有するベース部と当該貫通孔に摺動可能に設置されるスイッチと、前記アーム内部に設置され弾性部材の弾性力に抗して頭部がアーム端面から突出するピンとを備え、アームホルダの軸部に挿通されるアームを狭持するようベース部を前記軸部に固着し、アームを回動可能とし、ピンの頭部がベース部の前記貫通孔と嵌合した状態で、前記第1及び第2電極チップが互いに対向することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の発明のスポット溶接ガンは、請求項1に記載のスポット溶接ガンにおいて、ベース部における貫通孔及びピンにおける頭部に夫々対応するテーパ部を備えるものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の発明のスポット溶接ガンは、請求項1又は請求項2に記載のスポット溶接ガンにおいて、アーム回動状態にて、ピンにおける頭部と当接するベース部の側面から底面にかけ前記貫通孔を確保するようにして案内ガイド溝を設けるものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の発明のスポット溶接ガンは、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスポット溶接ガンにおいて、アームの長手方向に沿って、端面から一端を軸支する貫通孔にかけてスリットを設け、当該スリットと直交するねじ孔に締付レバーを備えるものである。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の発明のスポット溶接ガンは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスポット溶接ガンにおいて、第1電極チップの進退方向と平行して設置されるロッド部と駆動手段を連結し、駆動手段をガン本体に対して回動させた状態で固定する回動規制部材を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載のスポット溶接ガンでは、スイッチを押圧し下方へ可動させることで、弾性部材の弾性力に抗してピンを下方へ可動させ、貫通孔との嵌合を解除することができる。これにより、アームの一端部が軸部に軸支されていることから、アームを時計回り及び反時計回り方向のいずれにも回動させることができるので、被溶接部の形状等によって、アームの取換工程を要することなく、作業効率を向上することができる。また、回動状態においては、ピンの頭部をベース部の貫通孔に嵌合させることで、第1及び第2電極チップを互いに対向する位置に正確に配置し且つ固定することができるので、従来のような締付工程を削除することができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載のスポット溶接ガンでは、ベース部における貫通孔及びピンにおける頭部に夫々対応するテーパ部を備えたことから、嵌合におけるがたつきを排除することができ、第1及び第2電極チップの対向する位置をより確実なものとすることができる。
【0013】
本発明の請求項3に記載のスポット溶接ガンでは、アーム回動状態にて、ピンにおける頭部と当接するベース部の側面から底面にかけ前記貫通孔を確保するようにして案内ガイド溝を設けたことから、アームを回動させることで、ピンは案内ガイド溝に沿って摺動し、押圧され弾性部材の弾性力に抗して下方へ可動するので、半自動的にピンを前記貫通孔へ嵌合させることができ、第1及び第2電極チップを互いに対向する位置に正確に配置し且つ固定することができるので、作業者への負担を解消することができる。
【0014】
本発明の請求項4に記載のスポット溶接ガンでは、アームの長手方向に沿って、端面から一端を軸支する貫通孔にかけてスリットを設け、当該スリットと直交するねじ孔に締付レバーを備えるので、ピンの頭部とベース部の貫通孔の嵌合により、第1及び第2電極チップを互いに対向する位置に正確に配置し且つ固定した上で、締付レバーによりスリットの幅を狭めることで、更に確実にアームを軸部に固着することができる。
【0015】
本発明の請求項5に記載のスポット溶接ガンでは、第1電極チップの進退方向と平行して設置されるロッド部と駆動手段を連結し、駆動手段をガン本体に対して回動させた状態で固定する回動規制部材を備えるので、互いの電極チップを対向させた状態で確実にピストンロッドを進退させることができる。これにより、溶接箇所によっては屈曲した電極チップを使用することができる。すなわち、被溶接物の形状に適した電極チップを選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るスポット溶接ガンの正面図である。
【図2】本発明に係るスポット溶接ガンの一部省略平面図である。
【図3】本発明に係るスポット溶接ガンの(a)位置規制機構を分解した斜視図、(b)当該P−P断面図である。
【図4】本発明に係るスポット溶接ガンの(a)一部省略拡大平面図、(b)当該Q−Q断面図である。
【図5】本発明に係る別実施形態のスポット溶接ガンの正面図である。
【図6】回動規制部材を設置した本発明に係るスポット溶接ガンの正面図である。
【図7】回動規制部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態におけるスポット溶接ガンを図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
本発明に係るスポット溶接ガン1は、図1及び図2に示すように、主に、エアシリンダ2a及び第1電極チップ3を備えるガン本体2、アームホルダ5をガン本体2に固着するブラケット4、アームホルダ5に軸支される第2電極チップ10を備えるアーム7によって構成される。
【0019】
ガン本体2は、図1に示すように、第1電極チップ3を可動させ被溶接物を加圧する駆動手段となるエアシリンダ2a及びピストンロッド2bと、アーム7をガン本体2に回動可能且つ着脱可能に固定するアームホルダ5と、アームホルダ5をガン本体2に連結するブラケット4と、スポット溶接ガン1をスポット溶接装置に取り付ける為の吊り下げ金具18とから構成される。
【0020】
エアシリンダ2aは、内部にピストンロッド2bを備え、エアの圧力によってピストンロッド2bを進退自在に可動させるものである。エアシリンダ2aにはエアバルブ(図示しない)を介してエアホース(図示しない)が接続されている。
【0021】
ピストンロッド2bは先端部に第1電極チップ3を備えてなり、ピストンロッド2bがエアシリンダ2aによるエア圧力で可動すると、第1電極チップ3が被溶接物を押圧するようになっている。ピストンロッド2bには、第1ケーブルジョイント(図示しない)を介して第1電源ケーブルE1が接続されており、第1電極チップ3へと電気を供給している。
【0022】
ブラケット4は、主にガン本体2の上方に設置され、アームホルダ5に結合された第2ケーブルジョイント(図示しない)を保持し、アームホルダ5をエアシリンダ2aと連結している。当該第2ケーブルジョイントは別途の第2電源ケーブル(図示しない)に接続されている。
【0023】
アームホルダ5は、略L字状に屈曲した円柱から形成されている。図1及び図3に示すように、鉛直方向に屈曲された端部には段部を介して外形よりも小径の軸部6を有してなる。当該軸部6の端面6aには、ベース部12を取り付ける為の取付孔6bが端面6aと直交するように設けられている。当該軸部6にアーム7を軸支することで、図2に示すように、ガン本体2に対して回動可能且つ着脱可能となる。
【0024】
アーム7は、回動アーム8及び保持アーム9からなり、略L字状に連結されている。図1及び図3に示すように、回動アーム8には一端に軸部6を挿通させる為の貫通孔8aが形成されている。また、当該貫通孔8aから所定間隔を有した他端側にはピン14を挿通させる為の取付孔8bが形成されている。また、貫通孔8aを有する側の一端には、回動アーム8の長手方向に沿って端面から当該貫通孔8aにかけてスリット8cが形成され、回動アームの幅方向であって、当該スリット8cと直交するようにして、締付レバー11を取り付ける為のねじ孔8dが形成されている。
【0025】
保持アーム9は、一端部が別途の第3電源ケーブルE2に接続され、他端部に第2電極チップ10を備えてなる。図2に示すようにして、スリット8cと直交するねじ孔8dに締付レバー11を設け、これにより当該スリット8cの幅を狭めることで、軸部6に軸支されたアーム7における回動アーム8を軸部6に固着できる。また、後述する位置規制機構17によって、アーム7は軸部6に確実に固定される為、締付レバー11は補助的に使用されるものであり、回動アーム8の幅方向におけるいずれの端面にも設置することができる。
【0026】
第2電極10チップを第1電極チップ3に対向する位置に保持する位置規制機構17は、図1、図3及び図4に示すように、ベース部12、スイッチ13、ピン14、弾性部材15及び係止ピン16とから構成される。
【0027】
ピン14は略円柱形状からなり、先端部には外形より小径となるテーパ頭部14aを有し、側面には貫通長孔14bを有してなる。当該ピン14はバネ等の弾性部材15を下方に設置し、回動アーム8の取付孔8bに挿通され、回動アーム8の側面に形成される貫通孔(図示しない)及び貫通長孔14bに係止ピン16が挿通されることで設置される。当該状態において、弾性部材15の弾性力に抗しテーパ頭部14aはアーム端面から突出し、貫通長孔14bの範囲内にて可動可能とされる。当該貫通長孔14bは、テーパ頭部14aがアーム端面より下方へ可動できる範囲で形成される。
【0028】
ベース部12は、略長方形状の1枚の鋼板から形成される。一端部にはアームホルダ5における軸部6の端面6aに形成される取付孔6bと対応する複数の貫通孔12dが形成され、他端部にはスイッチ13を取り付ける為の貫通孔が形成されている。当該貫通孔はスイッチ13を挿通させる為の挿通部12bとピン14を嵌合させる為のテーパ部12cとから形成され、当該テーパ部12cは下方に向けて挿通部12bより径が拡大する形状とされる。挿通部12bとテーパ部12cとの境界には、挿通孔12bより大径の平坦部が形成される。また、ベース部12の側面から底面にかけては案内ガイド溝12aが形成されている。当該案内ガイド溝12aは前記貫通孔を確保するようにして形成することが望ましいが、少なくともピン14を嵌合させる為のテーパ部12cの一部が確保できればよい趣旨である。案内ガイド溝12aの形成位置については後述する。
【0029】
スイッチ13は、例えば略円柱形状の頭部13a、下方に延設される基体部13b及び脚部13cから形成される。ベース部12の挿通部12bには当該基体部13bが挿通され、頭部13aはベース部12の上面から突出し、脚部13cが挿通部12bとテーパ部12cとの境界における平坦部と当接することで抜け止め防止となり、ベース部12に摺動自在に取り付けられる。
【0030】
スイッチ13を備えたベース部12は、図1及び図4に示すようにして、軸部6に軸支された回動アーム8を下方のアームホルダ5とで狭持するようにして、上方から軸部6に取り付けられる。当該軸部6のみにて固定する為、アーム7は回動可能となる。回動アーム8におけるピン14がベース部12における貫通孔に嵌合することで、保持アーム9の先端部に設置される第2電極チップ10は第1電極チップ3に対向する位置に保持される。
【0031】
このようにして構成されるスポット溶接ガン1は、第1電極チップ3と第2電極チップ10との間隙に被溶接物を挟み込むことでスポット溶接が行われる。詳細には、アーム7が位置決めされた状態で、スポット溶接ガン1を作動させると、ガン本体2におけるエアシリンダ2aに圧縮空気が流入される。この圧縮空気により、ピストンロッド2bがエアシリンダ2aから押し出される。当該ピストンロッド2bが押し出されるのに伴い、先端部に保持された第1電極チップ3が被溶接物に当接される。当該被溶接物は、その反対側を第2電極チップ10に押圧されており、これら第1電極チップ3及び第2電極チップ10に狭持され加圧される。その後、加圧力が所定値に達したときに、第1電極チップ3及び第2電極チップ10に通電することにより、スポット溶接が行われる。
【0032】
また、被溶接物の形状等により、第2電極チップ10を第1電極チップ3に対向する位置に保持した状態にて被溶接物を挟み込むことができない場合には、図2に示すようにして、アーム7を回動させる。詳細には、図4(b)に示すように、弾性部材15の弾性力によりテーパ頭部14aがアーム端面から突出し、ベース部12における貫通孔、すなわち対応するテーパ部12cと嵌合した第1電極チップ3及び第2電極チップ10が対向した状態において、スイッチ13を上方より押圧する。これにより、テーパ部14aと当接する脚部13cを介して、弾性部材15の弾性力に抗してピン14は押し下げされる。そして、テーパ頭部14aが下方へ可動し、当該嵌合が解除されることで、軸部6を中心としてアーム7を回動させることができる。これにより、第2電極チップ10とガン本体2との間隙は、第1電極チップ3と第2電極チップ10とが対向しているときの間隙よりも広がるので、被溶接物の形状がある程度の大きさを有する場合であっても、第2電極チップ10とガン本体2との間の間隙を通過させることができる。
【0033】
被溶接物を配置させた後は、アーム7を回動させ第2電極チップ10を第1電極チップ3に対向する位置に保持させる。詳細には、第2電極10が第1電極3と対向する方向へアーム7を回動させる。これにより、軸部6を回動中心とするピン14の軌跡上であって、ベース部12に形成される案内ガイド溝12aに当接する。そして、ピン14は案内ガイド溝12aに沿って摺動し、テーパ頭部14aは押圧され下方へ可動し、ベース部12における貫通孔、すなわち対応するテーパ部12cと嵌合することで、両者はがたつくことがなく、第2電極チップ10を第1電極チップ3に対向する位置に保持することができる。当該位置規制機構17により、第1電極チップ3及び第2電極チップ10を互いに対向する位置に正確に配置し且つ固定することができる。後に、締付レバー11によって、補助的にアーム7を軸部6に固定する。これにより、より確実に固着することができる。
【0034】
以上、説明した本発明の実施例に係るスポット溶接ガン1によれば、アーム7の一端部を軸部6で軸支したことから、被溶接部の形状等によって、アーム7を時計回り及び反時計回り方向のいずれにも回動させることができるので、作業効率を向上することができる。また、回動状態においては、アーム7を回動させるだけで、位置規制機構17にて半自動的に第1電極チップ3及び第2電極チップ10を互いに対向する位置に正確に配置し且つ固定することができるので、作業者への負担を解消することができる。
【0035】
本実施例では、アーム7は回動アーム8と保持アーム9から構成されているが、1本のアームから形成されているものでもよく、第2電極チップ10を第1電極チップ3に対向する位置に保持できるものであれば、略U字状等、その他の形状であってよい趣旨である。これらは、ベース部12を取り外すことで着脱可能とされる。
【0036】
また、ベース部12における貫通孔は、挿通部12b及びテーパ部12cとから形成されるものであったが、挿通孔12b又はテーパ部12cのいずれか一方のみによって形成されていてもよいものである。係る際には、ピン14における頭部はそれぞれに対応する形状であればよい趣旨である。更に、案内ガイド溝12aにおいては、ピン14の頭部と嵌合し得る部分が確保されていればよい。
【0037】
更に、本実施例においては、いわゆるC型のスポット溶接ガン1に関するものであったが、図5に示すように、いわゆるX型のスポット溶接ガン1aに位置規制機構17を採用することもできる。
【0038】
一方で、ガン本体2に取り付けられる電極棒(図示しない)の設置位置によっては、ピストンロッド2bを回動させる場合がある。当該回動は、ピストンロッド2bの進退方向を回動軸として回動される。また、被溶接物の形状によっては、先端部が屈曲した電極チップを使用する場合がある。
【0039】
このようにピストンロッド2bを回動させ、屈曲した電極チップを使用する場合においては、屈曲した電極チップが対向する電極チップに対して正確に配置されないこともある。
【0040】
そこで図6に示すように、回動させたピストンロッド2bを固定したスポット溶接ガン1bとすることもできる。スポット溶接ガン1bは、ピストンロッド2bが回動した状態で、回動規制部材19によって当該回動が固定される。スポット溶接ガン1bが位置規制機構17を備えることは勿論である。
【0041】
回動規制部材19は絶縁部材から形成されることが望ましく、例えばジュラコンから形成される。図7に示すように、回動規制部材19は、一端部にガイド部20を挿通する挿通部19aが形成されている。挿通部19aは、貫通孔、切欠き、その他ガイド部20のロッド部20aに対して摺動可能とされる形状であればよい。
【0042】
一方、他端部にはピストンロッド2bが挿通される貫通孔19bが形成されている。また、貫通孔19bを有する側の一端には、端部から当該貫通孔19bにかけてスリット19cが形成される。スリット19cと直交するようにして、締付レバー11aを取り付ける為のねじ孔19dが形成されている。
【0043】
ガイド部20は、回動規制部材19と連結される部材である。ガイド部20は、例えば棒状に形成されるロッド部20aを有してなる。ガイド部20は、ロッド部20aがピストンロッド2bの進退方向と平行して配置された状態で、アームホルダ5に設置される。
【0044】
回動規制部材19は、ピストンロッド2bをエアシリンダ2aに対して回動させた状態で設置される。詳細には、挿通部19aにガイド20のロッド部20aを挿通させ、貫通孔19bにピストンロッド2bを挿通させて、締付レバー11aにてピストンロッド2bに固着される。これにより、ピストンロッド2bはエアシリンダ2aに対して回動した状態で、当該回動が規制され固定される。
【0045】
回動規制部材19は、ピストンロッド2bとともに可動するので、挿通部19aの形状は、ロッド部20aの外径と略同等であることが望ましい。スポット溶接ガン1bのガイド部20は、少なくとも回動規制部材19が設置される部分のロッド部20aがピストンロッド2bの進退方向と平行して配置されるものであれば、回動アーム8等に設置することもできるものである。
【0046】
このようにして構成されるスポット溶接ガン1bにおいては、エアシリンダ2aに対するピストンロッド2bの回動が固定されるので、互いの電極チップを対向させた状態で確実にピストンロッド2bを進退させることができる。これにより、溶接箇所によっては屈曲した第1電極チップ3aを使用することができる。また、対応する電極チップにおいても、屈曲した第2電極チップとすることができる。結果として、被溶接物の形状に適した電極チップを選定することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、1a、1b スポット溶接ガン
2 ガン本体
2a エアシリンダ
2b ピストンロッド
3、3a 第1電極チップ
4 ブラケット
5 アームホルダ
6 軸部
6a 端面
6b 取付孔
7 アーム
8 回動アーム
8a 貫通孔
8b 取付孔
8c スリット
8d ねじ孔
9 保持アーム
10 第2電極チップ
11、11a 締付レバー
12 ベース部
12a 案内ガイド溝
12b 挿通部
12c テーパ部
12d 貫通孔
13 スイッチ
13a 頭部
13b 基体部
13c 脚部
14 ピン
14a テーパ頭部
14b 貫通長孔
15 弾性部材
16 係止ピン
17 位置規制機構
18 吊り下げ金具
19 回動規制部材
19a 挿通部
19b 貫通孔
19c スリット
19d ねじ孔
20 ガイド部
20a ロッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1電極チップ及び第2電極チップと、
前記第1電極チップを前記第2電極チップに対して当接離間可能に保持する駆動手段を備えたガン本体と、
ガン本体に設けられたアームホルダに回動可能且つ着脱可能に固定されるアームとを備えるスポット溶接ガンにおいて、
アームは、アームの一端を軸支する貫通孔と、
他端に設置される第2電極チップとを備え、
位置規制機構は、貫通孔を有するベース部と当該貫通孔に摺動可能に設置されるスイッチと、前記アーム内部に設置され弾性部材の弾性力に抗して頭部がアーム端面から突出するピンとを備え、
アームホルダの軸部に挿通されるアームを狭持するようベース部を前記軸部に固着し、アームを回動可能とし、
ピンの頭部がベース部の前記貫通孔と嵌合した状態で、前記第1及び第2電極チップが互いに対向することを特徴とするスポット溶接ガン。
【請求項2】
ベース部における貫通孔及びピンにおける頭部に夫々対応するテーパ部を備える請求項1に記載のスポット溶接ガン。
【請求項3】
アーム回動状態にて、ピンにおける頭部と当接するベース部の側面から底面にかけ前記貫通孔を確保するようにして案内ガイド溝を設ける請求項1又は請求項2に記載のスポット溶接ガン。
【請求項4】
アームの長手方向に沿って、端面から一端を軸支する貫通孔にかけてスリットを設け、当該スリットと直交するねじ孔に締付レバーを備える請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスポット溶接ガン。
【請求項5】
第1電極チップの進退方向と平行して設置されるロッド部と駆動手段を連結し、駆動手段をガン本体に対して回動させた状態で固定する回動規制部材を備える請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスポット溶接ガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183454(P2011−183454A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160656(P2010−160656)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000109772)デンゲン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】