説明

スポット溶接材

【課題】簡単な構成で、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで量産性に優れ、材料選択の自在性に優れると共に、機械的強度を大幅に向上させ、直接溶接できない金属部材同士を確実かつ強固に接合することができる接合強度の安定性と均一性、耐久性に優れたスポット溶接材の提供。
【解決手段】(a)一方の金属部材と溶接される第1接合面を有する基部と、基部の第1接合面と反対側に突出した嵌合突部と、を備えた第1部材と、(b)第1部材の嵌合突部が嵌合される嵌合孔部と、第1部材の基部と反対側で他方の金属部材と溶接される第2接合面と、を備え、第1部材に嵌着された第2部材と、を有し、第1部材が、嵌合突部の先端部を第2部材の第2接合面側で圧縮拡径して嵌合孔部の周縁に係合させた圧着部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接溶接できない金属部材同士を簡便かつ確実に溶接できるスポット溶接材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として溶接が用いられているが、例えば、鋼とアルミニウム、鋼とチタンのような異種金属同士を溶接すると、接合部には入熱により金属間化合物が形成されて脆化相を生じることがあるため、満足な溶接強度を得ることができなかった。
そこで、例えば(特許文献1)には、鋼系材とアルミニウム系材とのクラッド材を、それぞれの同種材料系材が対向するようにして、被溶接材である鋼系材とアルミニウム系材との接合界面にインサートし、アルミニウム系材はアルミニウム系材同士で、鋼系材は鋼系材同士で溶融するようにし、Al−Fe系の金属間化合物を生成すること無しに異材接合を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−55066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)などで用いるクラッド材は、2種の金属を爆着、HIP、圧着などで接合したものであるため、クラッド材自体がその界面で剥離し易く、強度が不十分で、耐久性、長寿命性に欠けると共に、界面強度のばらつきが発生し易く、接合強度の安定性、均一性に欠けるという課題を有していた。
(2)そして、クラッド材自体或いはクラッド材と接合対象金属との接合強度を高めるために、クラッド材の組成、表面処理、クラッド材自体の接合条件や接合方法、クラッド材と接合対象金属との溶接条件などについては様々な検討が行われているが、クラッド材自体の構造に着目して検討を行ったものはなかった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、簡単な構成で、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで量産性に優れ、材料選択の自在性に優れると共に、機械的強度を大幅に向上させ、直接溶接できない金属部材同士を確実かつ強固に接合することができる接合強度の安定性と均一性、耐久性に優れたスポット溶接材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のスポット溶接材、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のスポット溶接材は、材質の異なる2つの金属部材の溶接に用いられるスポット溶接材であって、(a)一方の前記金属部材と溶接される第1接合面を有する基部と、前記基部の前記第1接合面と反対側に突出した嵌合突部と、を備えた第1部材と、(b)前記第1部材の前記嵌合突部が嵌合される嵌合孔部と、前記第1部材の前記基部と反対側で他方の前記金属部材と溶接される第2接合面と、を備え、前記第1部材に嵌着された第2部材と、を有し、前記第1部材が、前記嵌合突部の先端部を前記第2部材の前記第2接合面側で圧縮拡径して前記嵌合孔部の周縁に係合させた圧着部を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)第1部材の嵌合突部が第2部材の嵌合孔部に嵌合され、第1部材が嵌合突部の先端部を第2部材の第2接合面側で圧縮拡径して嵌合孔部の周縁に係合させた圧着部を有するので、第1部材に対して第2部材を強固に嵌着することができ、第1部材から第2部材が脱落することがなく、均一で安定した機械的強度を得ることができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)第1部材の基部が一方の金属部材と溶接される第1接合面を有し、第2部材が第1部材の基部と反対側で他方の金属部材と溶接される第2接合面を有するので、直接溶接できない2つの金属部材同士を簡便かつ確実に溶接することができ、施工性に優れる。
(3)第1部材の嵌合突部を第2部材の嵌合孔部に挿通し、第1部材の嵌合突部の先端部を第2部材の第2接合面側で圧縮拡径するだけで、嵌合孔部の周縁に係合する圧着部を形成して第1部材と第2部材を一体化することができるので、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで、量産性、材料選択の自在性に優れる。
【0007】
ここで、このスポット溶接材は、直接溶接ができない異種金属で形成された部材の接合に好適に用いられる。
第1部材及び第2部材の材質は、それぞれ接合対象となる一方の金属部材及び他方の金属部材と同一の材質を適宜、選択することができる。
第1部材の基部の外形形状は、円形状や多角形状など、適宜、選択することができる。また、嵌合突部は円柱状や多角柱状などに形成することができる。
第2部材は、第1部材の嵌合突部が挿通される嵌合孔部を備えていればよく、外形形状は、円形状や多角形状など、適宜、選択することができる。また、嵌合孔部の形状は、第1部材の嵌合突部の形状に応じて、適宜、選択することができるが、嵌合突部が挿通できればよいので、必ずしも嵌合突部と同一形状である必要はない。例えば、丸孔や角孔でもよいし、長孔状でもよい。
第1部材及び第2部材の外形寸法は、適宜、選択することができるが、第1部材及び第2部材を円形に形成する場合の直径は5mm程度である。
尚、第2部材の嵌合孔部の第2接合面側の周壁部に、第2接合面に向かって拡開したテーパ部を形成した場合、第1部材の嵌合突部がテーパ部に沿って変形し易く、圧着部が嵌合孔部の周縁でテーパ部と確実に係合して固定安定性に優れる。テーパ部は直線状でもよいし、円弧などの曲線状でもよい。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスポット溶接材であって、前記第2部材が、前記第2接合面に前記第1部材の前記圧着部より突出して形設された溶接用突起を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)第2部材が、第2接合面に第1部材の圧着部より突出して形設された溶接用突起を有することにより、第2部材と他方の金属部材を溶接する際に、溶接用突起を利用して確実に溶接することができ、第1部材の圧着部が溶接の邪魔になることがなく、溶接の作業性、接合強度の安定性、接合の確実性に優れる。
【0009】
ここで、溶接用突起は、第1部材の圧着部より突出していればよく、形状は、適宜、選択することができる。具体的には、円柱状、角柱状、半球状などの複数の突起を独立させて形成してもよいし、矩形状や半円状などの断面を有する凸条に形成してもよい。また、溶接用突起の数や配置などは適宜、選択することができるが、複数の溶接用突起を等角度間隔で配置した場合、スポット溶接材の傾きが発生し難く、固定安定性に優れる。尚、溶接用突起は第2部材と一体に形設することが好ましい。溶接用突起が第2部材との界面(第2接合面)で剥離することを防止し、十分な強度を確保するためである。
【0010】
本発明の請求項3に記載のスポット溶接材は、材質の異なる2つの金属部材の溶接に用いられるスポット溶接材であって、(a)一方の前記金属部材と溶接される第1接合面を有する基部と、前記基部の前記第1接合面と反対側に突出した嵌合突部と、を備えた第1部材と、(b)前記第1部材の前記嵌合突部が嵌合される嵌合凹部と、前記第1部材の前記基部と反対側で他方の前記金属部材と溶接される第2接合面と、を備え、前記第1部材に嵌着された第2部材と、を有し、前記第1部材が、前記嵌合突部の外周面に形設された係合凹部を備え、前記第2部材が、前記嵌合凹部の周壁部の少なくとも一部を前記嵌合凹部の内側に変形させて前記第1部材の前記係合凹部に係合された嵌着部を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)第1部材の嵌合突部が第2部材の嵌合凹部に嵌合され、第1部材が嵌合突部の外周面に形設された係合凹部を備え、第2部材が嵌合凹部の周壁部の少なくとも一部を嵌合凹部の内側に変形させて第1部材の係合凹部に係合された嵌着部を有するので、第1部材に対して第2部材を強固に嵌着することができ、第1部材から第2部材が脱落することがなく、均一で安定した機械的強度を得ることができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)第1部材の基部が一方の金属部材と溶接される第1接合面を有し、第2部材が第1部材の基部と反対側で他方の金属部材と溶接される第2接合面を有するので、直接溶接できない2つの金属部材同士を簡便かつ確実に溶接することができ、施工性に優れる。
(3)第1部材の嵌合突部を第2部材の嵌合凹部に挿入し、第2部材の嵌合凹部の周壁部の少なくとも一部をかしめなどにより嵌合凹部の内側に変形させるだけで、第1部材の係合凹部に係合する嵌着部を形成して第1部材と第2部材を一体化することができるので、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで、量産性、材料選択の自在性に優れる。
【0011】
ここで、このスポット溶接材は、直接溶接ができない異種金属で形成された部材の接合に好適に用いられる。
第1部材及び第2部材の材質は、それぞれ接合対象となる一方の金属部材及び他方の金属部材と同一の材質を適宜、選択することができる。
第1部材の基部の外形形状は、円形状や多角形状など、適宜、選択することができる。また、嵌合突部は円柱状や多角柱状などに形成することができる。係合凹部は嵌合突部の外周面に形設されるが、嵌合突部の外周面に1乃至複数の凹凸部を形成してもよいし、1乃至複数の凹条部を形成してもよい。また、嵌合突部の先端部に拡径部を形成することにより、嵌合突部の拡径部以外を係合凹部とすることもできる。
第2部材は、第1部材の嵌合突部が挿入される嵌合凹部を備えていればよく、外形形状は、円形状や多角形状など、適宜、選択することができる。また、嵌合凹部の形状は、第1部材の嵌合突部の形状に応じて、適宜、選択することができるが、嵌合突部が挿入できればよいので、必ずしも嵌合突部と同一形状である必要はない。例えば、丸孔や角孔でもよいし、長孔状でもよい。また、嵌合凹部は全周が周壁部で囲まれている必要はなく、溝状(凹条)に形成してもよい。
尚、嵌着部は、第1部材の嵌合突部を第2部材の嵌合凹部に挿入した状態で、第2部材の嵌合凹部の周壁部を第1部材の嵌合突部の中心軸に向かってかしめたり、絞り加工したりして形成してもよいし、第1部材と第2部材を嵌合突部の長手方向に圧縮し、第2部材の嵌合凹部の周壁部を嵌合突部の中心軸に向かって巻き込むように変形させて形成してもよい。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のスポット溶接材であって、前記第1部材の前記嵌合突部の先端部を前記第2部材の前記嵌合凹部の内部で圧縮拡径して前記嵌着部に係合させた拡径部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)第1部材の嵌合突部の先端部を第2部材の嵌合凹部の内部で圧縮拡径して嵌着部に係合させた拡径部を有することにより、嵌着部と拡径部を確実に係合させてより強固に固定することができ、固定の安定性、確実性、耐久性に優れる。
【0013】
ここで、第1部材の嵌合突部の変形前の形状は適宜、選択することができるが、上下方向に圧縮された際に先端部が拡径し易いように、根元にくびれ状の係合凹部を有するものが好ましい。そして、第2部材の周壁部における変形前の先端部を先細り状に形成したり、予め内側に傾斜或いは湾曲(屈曲)させたりすることにより、製造時に周壁部の先端部が嵌合凹部の内側に向かって変形し、嵌着部が形成されると共に、第1部材の嵌合突部の先端が第2部材の嵌合凹部の底面で圧縮され拡径して拡径部が形成され、嵌着部が嵌合突部の係合凹部及び拡径部と確実に係合して固定される。尚、嵌合凹部は溝状(凹条)に形成することもでき、その場合、押し出し加工や引き抜き加工を行うことにより、簡便に周壁部の先端部を嵌合凹部の内側に傾斜或いは湾曲(屈曲)させた形状を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のスポット溶接材によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)第2部材の嵌合孔部に挿通された第1部材の嵌合突部の先端部に、嵌合孔部の嵌合孔部の孔径より大径で嵌合孔部の周縁に係合する圧着部が形設されたことにより、2つの金属部材の間にインサートして溶接した後も、第1部材と第2部材が一体化して分離することがなく、均一で安定した機械的強度を有し、耐久性、長寿命性に優れた接合構造を実現することができる量産性、施工性、溶接の信頼性、確実性に優れたスポット溶接材を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)第2部材に形成された第2接合面と他方の金属部材を溶接する際に、第2接合面に突設された溶接用突起を利用して確実に溶接することができ、第1部材の圧着部が溶接の邪魔になることがなく、溶接の作業性、接合強度の安定性、接合の確実性に優れたスポット溶接材を提供することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)第2部材の嵌合凹部に挿入された第1部材の嵌合突部の外周面に係合凹部が形設され、第2部材の嵌合凹部の周壁部に第1部材の係合凹部に係合する嵌着部が形設されたことにより、2つの金属部材の間にインサートして溶接した後も、第1部材と第2部材が一体化して分離することがなく、均一で安定した機械的強度を有し、耐久性、長寿命性に優れた接合構造を実現することができる量産性、施工性、溶接の信頼性、確実性に優れたスポット溶接材を提供することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)第1部材の嵌合突部の先端部が圧縮拡径されて形成された拡径部により、第2部材を確実に保持することができる固定の安定性、確実性、耐久性に優れたスポット溶接材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)実施の形態1におけるスポット溶接材を示す斜視図 (b)実施の形態1におけるスポット溶接材の要部断面模式図
【図2】実施の形態1におけるスポット溶接材の製造方法を示す要部断面模式図
【図3】(a)実施の形態2におけるスポット溶接材の示す斜視図 (b)実施の形態2におけるスポット溶接材の要部断面模式図
【図4】実施の形態2におけるスポット溶接材の製造方法を示す要部断面模式図
【図5】実施の形態2におけるスポット溶接材の製造方法の変形例を示す要部断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1におけるスポット溶接材について、以下図面を参照しながら説明する。
図1(a)は実施の形態1におけるスポット溶接材を示す斜視図であり、図1(b)は実施の形態1におけるスポット溶接材の要部断面模式図である。
図1中、1は直径が5mm程度に形成され異なる2つの金属部材の溶接に用いられる実施の形態1におけるスポット溶接材、2はチタンやアルミニウム等の金属で形成されたリベット状の第1部材、3は略円板状に形成され一方の金属部材と溶接される第1接合面3aを有する第1部材2の基部、4は基部3の第1接合面3aと反対側に突出した第1部材2の嵌合突部、4aは嵌合突部4の先端部を後述する第2部材5の第2接合面6a側で圧縮拡径して嵌合孔部6bの周縁に係合させた第1部材2の圧着部(図1(b))、5はニッケルや鉄等の金属で円環状に形成され第1部材2に嵌着されたスポット溶接材1の第2部材、6aは第1部材2の基部3と反対側で他方の金属部材と溶接される第2接合面、6bは第1部材2の嵌合突部4が嵌合される第2部材5の嵌合孔部(図1(b))、6cは嵌合孔部6bの第2接合面6a側の周壁部に第2接合面6aに向かって拡開したテーパ部(図1(b))、7は第1部材2の圧着部4aより突出するように第2接合面6aに第2部材5と一体に形設された3箇所の溶接用突起である。
【0020】
スポット溶接材1の第1部材2及び第2部材5の材質は、それぞれ接合対象となる一方の金属部材及び他方の金属部材と同一の材質を適宜、選択することができる。
第1部材2の基部3や第2部材5の外形形状は、円形状に限らず、多角形状でもよい。また、第1部材2の嵌合突部4は円柱状以外に多角柱状などに形成してもよい。
第2部材5の嵌合孔部6bの形状は、第1部材2の嵌合突部4の形状に応じて、適宜、選択することができるが、必ずしも嵌合突部4と同一形状である必要はない。丸孔の他に角孔でもよいし、長孔状でもよい。
【0021】
次に、実施の形態1におけるスポット溶接材の製造方法について説明する。
図2は実施の形態1におけるスポット溶接材の製造方法を示す要部断面模式図である。
図2中、4bは第1部材2の嵌合突部4の変形前の先端部である。
図2に示すように、第1部材2の嵌合突部4を第2部材5の嵌合孔部6bに挿通した後、第1部材2と第2部材5をプレス機等で上下方向に圧縮し、嵌合突部4の先端部4bを第2部材5の第2接合面6a側で圧縮拡径する。これにより、図1(b)に示したように、第2部材5の嵌合孔部6bの第2接合面6a側の周縁(テーパ部6c)に係合する圧着部4aが形成される。このとき、第2部材5の嵌合孔部6bの第2接合面6a側の周壁部に、第2接合面6aに向かって拡開したテーパ部6cが形成されているので、第1部材2の嵌合突部4がテーパ部6cに沿って変形し易く、圧着部4aが嵌合孔部6bの周縁でテーパ部6cと確実に係合して固定安定性に優れる。尚、本実施の形態では、テーパ部6cを円弧状(曲線状)に形成したが、テーパ部6cは直線状でもよい。
【0022】
スポット溶接材1は第1接合面3aにおいて、第1部材2の材質と同じチタンやアルミニウム等の金属と溶接され、第2接合面6aにおいて、第2部材5の材質と同じニッケルや鉄等の金属と溶接される。このとき、第2部材5の第2接合面6aに溶接用突起7が突設されていることにより、圧着部4aが第2接合面6aよりも盛り上がっている場合でも、溶接用突起7を接合対象となる他方の金属部材に確実に接触させることができ、溶接用突起7に抵抗発熱を集中させて接合(溶接)を短時間で確実に行うことができ施工性に優れる。溶接用突起7の形状、数、配置などは本実施の形態に限定されるものではなく、適宜、選択することができる。例えば、溶接用突起7の形状は、角柱状や半球状などでもよい。尚、溶接用突起7を等角度間隔で配置した場合、スポット溶接材1の傾きが発生し難く、固定安定性に優れる。
【0023】
実施の形態1のスポット溶接材は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)第1部材の嵌合突部が第2部材の嵌合孔部に嵌合され、第1部材が嵌合突部の先端部を第2部材の第2接合面側で圧縮拡径して嵌合孔部の周縁に係合させた圧着部を有するので、第1部材に対して第2部材を強固に嵌着することができ、第1部材から第2部材が脱落することがなく、均一で安定した機械的強度を得ることができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)第1部材の基部が一方の金属部材と溶接される第1接合面を有し、第2部材が第1部材の基部と反対側で他方の金属部材と溶接される第2接合面を有するので、直接溶接できない2つの金属部材同士を簡便かつ確実に溶接することができ、施工性に優れる。
(3)第1部材の嵌合突部を第2部材の嵌合孔部に挿通し、第1部材の嵌合突部の先端部を第2部材の第2接合面側で圧縮拡径するだけで、嵌合孔部の周縁に係合する圧着部を形成して第1部材と第2部材を一体化することができるので、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで、量産性、材料選択の自在性に優れる。
(4)第2部材が、第2接合面に第1部材の圧着部より突出して形設された溶接用突起を有することにより、第2部材と他方の金属部材を溶接する際に、溶接用突起を利用して確実に溶接することができ、第1部材の圧着部が溶接の邪魔になることがなく、溶接の作業性、接合強度の安定性、接合の確実性に優れる。
【0024】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2におけるスポット溶接材について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図3(a)は実施の形態2におけるスポット溶接材の示す斜視図であり、図3(b)は実施の形態2におけるスポット溶接材の要部断面模式図である。
図3において、実施の形態2におけるスポット溶接材1aが実施の形態1と異なるのは、第1部材2aが圧着部4aを有する嵌合突部4の代わりに、先端部に拡径部4cが形設され根元側に拡径部4cよりも小径の係合凹部4dが形設された嵌合突部4Aを備えている点と、第2部材5aが嵌合孔部6bの代わりにキャップ状の嵌合凹部8aを有し、溶接用突起7を備えておらず、嵌合凹部8aの周壁部8bの一部を嵌合凹部8aの内側に巻き込むように変形させて第1部材2aの係合凹部4dに係合させた嵌着部8cを備えている点である。
【0025】
次に、実施の形態2におけるスポット溶接材の製造方法について説明する。
図4は実施の形態2におけるスポット溶接材の製造方法を示す要部断面模式図である。
図4中、8dは第2部材5aの嵌合凹部8aの周壁部8bにおける変形前の先端部である。
図4に示すように、第1部材2aの嵌合突部4Aを第2部材5aの嵌合凹部8aに挿入した後、第1部材2aと第2部材5aをプレス機などで上下方向に圧縮し、周壁部8bの先端部8dを嵌合凹部8aの内側に巻き込むように変形させる。これにより、図3(b)に示したように、第1部材2aの係合凹部4dに係合する嵌着部8cが形成される。このとき、第2部材5aの周壁部8bにおける先端部8dを先細り状に形成する等して外周面を内側(中心側)に傾斜させることにより、先端部8dが嵌合凹部8aの内側に向かって変形し易く、嵌着部8cが嵌合突部4Aの係合凹部4dと確実に係合して固定安定性に優れる。
尚、実施の形態2のスポット溶接材1aの使用方法は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0026】
本実施の形態では、嵌合突部4Aの先端部に拡径部4cを形成することにより、嵌合突部4Aの拡径部4c以外を係合凹部4dとしたが、係合凹部4dはこれに限定されるものではなく、嵌合突部4Aの外周面に1乃至複数の凹凸部を形成してもよいし、1乃至複数の凹条部を形成してもよい。また、嵌着部8cの形状も係合凹部4dの形状に応じて、適宜、選択することができ、第2部材5aの嵌合凹部8aの周壁部8bを第1部材2aの嵌合突部4Aの中心軸に向かってかしめたり、絞り加工したりして形成することもできる。
尚、本実施の形態では、嵌合凹部8aをキャップ状に形成したが、嵌合凹部8aは全周が周壁部8bで囲まれている必要はなく、溝状(凹条)に形成してもよい。
【0027】
次に、実施の形態2におけるスポット溶接材の製造方法の変形例について説明する。図5は実施の形態2におけるスポット溶接材の製造方法の変形例を示す要部断面模式図である。
図5において、変形例における製造方法が実施の形態2と異なるのは、実施の形態2の第1部材2aの代わりに、略球状に形成された嵌合突部4Bを有する第1部材2bを用いている点と、第2部材5aの代わりに、周壁部8bの先端部8eが予め内側に湾曲(折曲)された第2部材5bを用いている点である。これにより、第1部材2bの嵌合突部4Bを第2部材5bの嵌合凹部8aに挿入した後、第1部材2bと第2部材5bをプレス機などで上下方向に圧縮すると、周壁部8bの先端部8eが嵌合凹部8aの内側に向かって変形し、図3(b)と同様の嵌着部8cが形成されると共に、第1部材2bの嵌合突部4Bの先端が第2部材5bの嵌合凹部8aの底面8fで圧縮されて拡径し、図3(b)と同様の拡径部4cが形成される。
尚、嵌合凹部8aは溝状(凹条)に形成することもでき、その場合、押し出し加工や引き抜き加工を行うことにより、簡便に周壁部8bの先端部8eを嵌合凹部8aの内側に傾斜或いは湾曲(屈曲)させた形状を得ることができる。
【0028】
本実施の形態では、第1部材2bの嵌合突部4Bの変形前の形状を略球状に形成したが、その形状はこれに限定されるものではなく、適宜、選択することができる。尚、上下方向に圧縮された際に先端部が拡径し易いように、根元にくびれ状の係合凹部4dを有するものが好適に用いられる。
また、第2部材5bの嵌合凹部8aは溝状(凹条)に形成することもでき、その場合、押し出し加工や引き抜き加工を行うことにより、簡便に周壁部の先端部を嵌合凹部の内側に傾斜或いは湾曲(屈曲)させた形状を得ることができる。
【0029】
実施の形態2のスポット溶接材は、以下の作用を有する。
(1)第1部材の嵌合突部が第2部材の嵌合凹部に嵌合され、第1部材が嵌合突部の外周面に形設された係合凹部を備え、第2部材が嵌合凹部の周壁部の少なくとも一部を嵌合凹部の内側に変形させて第1部材の係合凹部に係合された嵌着部を有するので、第1部材に対して第2部材を強固に嵌着することができ、第1部材から第2部材が脱落することがなく、均一で安定した機械的強度を得ることができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)第1部材の基部が一方の金属部材と溶接される第1接合面を有し、第2部材が第1部材の基部と反対側で他方の金属部材と溶接される第2接合面を有するので、直接溶接できない2つの金属部材同士を簡便かつ確実に溶接することができ、施工性に優れる。
(3)第1部材の嵌合突部を第2部材の嵌合凹部に挿入し、第2部材の嵌合凹部の周壁部の少なくとも一部をかしめなどにより嵌合凹部の内側に変形させるだけで、第1部材の係合凹部に係合する嵌着部を形成して第1部材と第2部材を一体化することができるので、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで、量産性、材料選択の自在性に優れる。
(4)第1部材の嵌合突部の先端部を第2部材の嵌合凹部の内部で圧縮拡径して嵌着部に係合させた拡径部を有することにより、嵌着部と拡径部を確実に係合させてより強固に固定することができ、固定の安定性、確実性、耐久性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、簡単な構成で、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで量産性に優れ、材料選択の自在性に優れると共に、機械的強度を大幅に向上させ、直接溶接できない金属部材同士を確実かつ強固に接合することができる接合強度の安定性と均一性、耐久性に優れたスポット溶接材の提供を行って、従来の溶接では強固に接合できなかった異種金属間の確実な接合を実現することができる。
【符号の説明】
【0031】
1,1a スポット溶接材
2,2a,2b 第1部材
3 基部
3a 第1接合面
4,4A,4B 嵌合突部
4a 圧着部
4b 先端部
4c 拡径部
4d 係合凹部
5,5a,5b 第2部材
6a 第2接合面
6b 嵌合孔部
6c テーパ部
7 溶接用突起
8a 嵌合凹部
8b 周壁部
8c 嵌着部
8d,8e 先端部
8f 底面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質の異なる2つの金属部材の溶接に用いられるスポット溶接材であって、
(a)一方の前記金属部材と溶接される第1接合面を有する基部と、前記基部の前記第1接合面と反対側に突出した嵌合突部と、を備えた第1部材と、
(b)前記第1部材の前記嵌合突部が嵌合される嵌合孔部と、前記第1部材の前記基部と反対側で他方の前記金属部材と溶接される第2接合面と、を備え、前記第1部材に嵌着された第2部材と、
を有し、
前記第1部材が、前記嵌合突部の先端部を前記第2部材の前記第2接合面側で圧縮拡径して前記嵌合孔部の周縁に係合させた圧着部を備えたことを特徴とするスポット溶接材。
【請求項2】
前記第2部材が、前記第2接合面に前記第1部材の前記圧着部より突出して形設された溶接用突起を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接材。
【請求項3】
材質の異なる2つの金属部材の溶接に用いられるスポット溶接材であって、
(a)一方の前記金属部材と溶接される第1接合面を有する基部と、前記基部の前記第1接合面と反対側に突出した嵌合突部と、を備えた第1部材と、
(b)前記第1部材の前記嵌合突部が嵌合される嵌合凹部と、前記第1部材の前記基部と反対側で他方の前記金属部材と溶接される第2接合面と、を備え、前記第1部材に嵌着された第2部材と、
を有し、
前記第1部材が、前記嵌合突部の外周面に形設された係合凹部を備え、前記第2部材が、前記嵌合凹部の周壁部の少なくとも一部を前記嵌合凹部の内側に変形させて前記第1部材の前記係合凹部に係合された嵌着部を備えたことを特徴とするスポット溶接材。
【請求項4】
前記第1部材の前記嵌合突部の先端部を前記第2部材の前記嵌合凹部の内部で圧縮拡径して前記嵌着部に係合させた拡径部を備えたことを特徴とする請求項3に記載のスポット溶接材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate