説明

スポツト溶接ガンの電動式イコライジング機構

【目的】 上側チップと下側チップのワーク挾み込み時に、ワークに振動を与えることが少ないイコライジング機構を提供する。
【構成】 サーボモータ5の軸に上側チップ移動機構4のボールスクリュー44を接続し、サーボモータ5によりボールスクリュー44を回転させ上側チップ移動機構4を上下させ、これにより上側チップ移動機構4に配設されている上側チップ3を上下させると共に、サーボモータ5によりベルト8によりボールスクリュー77を同期駆動させ、それによりイコライジング機構7を上下させ、イコライジング機構7と一体的に結合されているスポットガン1に配設されている下側チップ2を上下させるものである。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はスポット溶接ガンのイコライジング機構に関する。さらに詳しくは、イコライジングがモータによりなされるイコライジング機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の生産ラインなどではスポット溶接用ロボットが使用されている。このスポット溶接用ロボットにおいては、図2〜3に示しすような空気圧を利用したイコライジング機構を備えたスポット溶接ガンが用いられている。
かかるスポット溶接ガンにより溶接を行なうと、イコライジングが空気圧によりなされるため動作が間歇的にならざるを得ず、そのためスポット溶接時に打撃音が発生するとともにワークに振動が発生する。現状はこの打撃により発生した振動が治まるのを待って溶接を行なっているため、溶接に時間がかかっている。
【0003】
また、イコライジングの際の、エア切替に伴いエア弁から作動音が発生し、スポット溶接用ロボットが騒音源にもなっている。
【0004】
さらに、エア弁からの排気エアには油ミストが含まれているため、作業環境の汚染の原因ともなっている。
【0005】
しかるに、近年における自動車業界の競争の激化に伴い、生産ラインのスピードアップが要望されてきている。また、劣悪な作業環境では求人もままならないため、静かでクリーンな作業環境が求められている。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
本考案はかかる従来技術の問題点に鑑みなされたもので、打撃音が発生せず、それに伴ないワークに振動が発生しにくいためにスポット溶接に要する時間を短縮でき、しかも作業環境を汚染しないイコライジング機構を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案のイコライジング機構は、スポット溶接ガンのイコライジング機構であって、イコライジングがモータによりなされることを特徴としている。
【0008】
なお、本考案においては、イコライジングが上側チップを上下させるモータによりなされるのが好ましい。
【0009】
【作用】
本考案のイコライジング機構においては、イコライジングがモータによりなされるので、ワーク挾み込みの際に打撃音が発生せず、そのためワークにも振動を生ずることが少なくなる。
【0010】
【実施例】
以下、添付図面を参照しながら本考案の一実施例について説明するが、本考案はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0011】
図1は本考案の一実施例の概略図である。図において、1はスポットガン、2は下側チップ、3は上側チップ、4は上側チップ移動機構、5はサーボモータ、6はプーリ、7はイコライジング機構、8はベルト、9はロボットコントローラを示す。また、Wはワーク、Aはロボットの手首を示す。
【0012】
スポットガン1は略コの字型をしている下側部材1aとこの下側部材1aから垂直に延びる軸部材1bとからなっている。この下部材1aには従来のスポットガンと同様に下側チップ2が配設されている。この下側チップ2の上部には従来のスポットガンと同様に上側チップ3が配設されている。この上側チップ3はチップ後端に配設されている上側チップ移動機構4により上下させられる。
【0013】
この上側チップ移動機構4は、軸部材1bに保持されている案内部材41と、この案内部材41に摺動自在に嵌合されている摺動部材42と、この摺動部材42を保持している枠部材43と、先端がこの枠部材43に収納され他端がこの枠部材43の上面から突出しているボールスクリュー44と、このボールスクリュー44を回転自在に保持する枠部材43の開口部を貫通し軸部材1bに固着されている軸受部材45とからなっている。枠部材43の下面には上側チップ3が垂設されている。また、枠部材43の上面にはボールスクリュー44と螺合する雌ねじが形成されている。これにより枠部材43はボールスクリュー44の回転により上下することができる。従って、上側チップ3も枠部材43の上下動に伴って上下する。
【0014】
上側チップ移動機構4の上方には、サーボモータ5が配設されている。このサーボモータ5は軸部材1bから適宜手段により保持されている。サーボモータ5の軸の先端は、枠部材43の上面から延伸してきているボールスクリュー44の先端と結合している。またこの軸には同心円状にプーリ6が配設されている。
【0015】
サーボモータ5の反対側にはイコライジング機構7が配設されている。イコライジング機構7は、ロボットの手首Aに保持されている外側枠部材71と、軸部材1bと一体的に結合している内側枠部材72とからなっている。外側枠部材71はガイドロッド73を有している。このガイドロッド73は、内側枠部材72と摺動自在に嵌合している。また内側枠部材72は、ボールスクリュー74を有している。ボールスクリュー74の上端は、内側枠部材72の上面により軸受を介して回転自在に保持されている。ボールスクリュー74の下端は外側枠部材71の底面から突出している。ボールスクリュー74が内側枠部材72の下面を貫通する位置には、上面と同様に軸受が設けられボールスクリュー74を回転自在に保持している。ボールスクリュー74の下端には、同心円状にプーリ75が配設されている。さらにボールスクリュー74には、L字状のスライドロッド76が螺合している。スライドロッド76のL字の垂直部76aは、内側枠部材72の上面から突出している。垂直部76aの内側枠部材72の上面を貫通する部分は、内側枠部材72により摺動自在に保持されている。この垂直部76aの長さは、最も突出した状態で外側枠部材71の上面内側に配設されている緩衝部材77に当接するように調節されている。外側枠部材71の下面内側には、内側枠部材72を上方に付勢しているバネ部材78が配設されている。
【0016】
プーリ6とプーリ75とにはベルト8が張設されている。このため本実施例においては、一個のサーボモータ5で上側チップ3の上下動とイコライジング動作が行なえる。上側チップ3の移動量は、サーボモータ5に設けられた移動量検出装置5aにより測定され、ロボットコントローラ9に入力される。ロボットコントローラ9は、この測定値をもとにして移動量の調節を行なっている。
【0017】
ボールスクリュー44、74は、上側チップ3と下側チップ2とが同時に逆方向に移動するように設置されている。つまり、ボールスクリュー44とボールスクリュー74の回転方向が逆になっている。
【0018】
次に、このように構成されたイコライジング機構の動作について説明する。
【0019】
ワークWが所定位置にセットされると、ロボットコントローラ9からの指示により、サーボモータ5が回転する。それにより、ボールスクリュー44が回転して、枠部材43が降下する。従って、枠部材43の下面に垂設されている上側チップ3が降下する。一方、ボールスクリュー74も、ベルト8によりサーボモータ5の回転と同時に回転させられる。それにより、スライドロッド76が降下する。内側枠部材72は、常にバネ部材78により上方向に付勢されているので、スライドロッド76が降下すると逆に上昇する。内側枠部材72が上昇すると、これと一体的に接続されているスポットガン1も上昇する。従って、スポットガン1に配設されている下側チップ2も上昇する。上側チップ3が所定量移動すると、ロボットコントローラ9からの指示によりサーボモータ5が停止する。そして、スポット溶接が開始される。
【0020】
このように、本考案によれば上側チップ3と下側チップ2の移動がボールスクリュー44、74によりなされるので、ワークに衝撃力与えることなくワークを上側及び下側チップ3、2で挾み込むことができる。
【0021】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案によればワークに衝撃力与えることなく、ワークを上側及び下側チップで挾み込むことができるので、ワークに振動が発生しないため、挾み込みと同時にスポット溶接が開始でき溶接に要する時間を短縮でき生産性が向上する。また、エア作動でないため、エアの排気に伴う騒音も発生せず、排気エアと共にエアバルブ中の油ミストが大気中に放出されることもないので、作業環境を快適に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例の概略図である。
【図2】従来のイコライジング機構の概略図であって、スポットガンが開いた状態を示す図である。
【図3】従来のイコライジング機構の概略図であって、スポットガンが閉じた状態を示す図である。
【符号の説明】
1 スポットガン
2 下側チップ
3 上側チップ
4 上側チップ移動機構
5 サーボモータ
7 イコライジング機構

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 スポット溶接ガンのイコライジング機構であって、イコライジングがモータによりなされることを特徴とするイコライジング機構。
【請求項2】 前記イコライジングが上側チップを上下させるモータによりなされることを特徴とする請求項1記載のイコライジング機構。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】実開平5−18774
【公開日】平成5年(1993)3月9日
【考案の名称】スポツト溶接ガンの電動式イコライジング機構
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−74698
【出願日】平成3年(1991)8月24日
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)