説明

スポーツ技能上達装置

【課題】被験者のスポーツ技能を早期に上達させることが可能なスポーツ技能上達装置を提供する。
【解決手段】CPU30は、ロードセル11からの被験者左荷重および被験者右荷重と参考荷重記憶部31に記憶されている参考荷重との荷重差を算出する。参考荷重は、参考対象の主に左足に対応する左参考荷重および参考対象の主に右足に対応する右参考荷重を含む。CPU30は、左参考荷重と被験者左荷重との対比および右参考荷重と被験者右荷重との対比を行うことによって、それぞれ左荷重差および右荷重差を算出する。発音装置4は、左荷重差および右荷重差の一方または両方に基づいて音を変化させて発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者がゴルフ等の各種スポーツの技能上達を目的として使用するスポーツ技能上達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者がゴルフスイングの技能の上達を目的として使用するゴルフスイングチェックシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のゴルフスイングチェックシステムにおいては、被験者のスイング動作中の体重移動状態を示すデータを記憶する際に、インパクト検出手段により検出されたインパクト時をマーキングさせておく。そして、複数回のスイング動作に基づくデータの蓄積が終了した後、個々のデータのインパクト時を一致させて重ね合わせて表示する。これにより、インパクト時を中心としてその前後を観察することで、スイング動作全体を捉えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−343866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、従来では、被験者はスイングの練習後に、当該被験者のスイング動作の各データにおけるインパクト時をそれぞれ一致させて表示されたものを観察し、スイング動作全体を捉えることは可能であるが、このようにすることが被験者のスイング動作の上達を早めるものであるかどうかについては疑問であるところが多い。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑み、被験者のスポーツ技能を早期に上達させることが可能なスポーツ技能上達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るスポーツ技能上達装置は、被験者の参考対象の重心に基づいて経時的に変化する荷重を、参考荷重として予め記憶する参考荷重記憶部と、被験者の重心に基づいて経時的に変化する被験者荷重を検出する荷重検出部と、参考荷重と被験者荷重とを対比することによって、荷重差を算出する荷重差算出部と、荷重検出部が被験者荷重を検出している間、荷重差に基づいて音を変化させて発する発音装置と、を備えるものである。
【0008】
本発明に係るスポーツ技能上達装置においては、被験者の参考対象の重心に基づいて経時的に変化する荷重が参考荷重として参考荷重記憶部に予め記憶される。また、被験者の重心に基づいて経時的に変化する被験者荷重が荷重検出部により検出される。さらに、参考荷重と被験者荷重とを対比することによって、荷重差が荷重差算出部により算出される。そして、荷重検出部が被験者荷重を検出している間、荷重差に基づいて発音装置により音が変化されて発せられる。
【0009】
このような構成により、荷重検出部が被験者荷重を検出している間、すなわち、被験者が動作をしている間、被験者は変化された音をリアルタイムで認識することが可能となる。それにより、被験者はリアルタイムで自身の動作を修正する必要があることを認識できるとともに、動作修正を直ちに実行することが可能となる。したがって、本発明に係るスポーツ技能上達装置によれば、従来に比べ、被験者のスポーツ技能を早期に上達させることが可能となる。
【0010】
(2)スポーツ技能上達装置は、荷重差の許容範囲を、予め設定することができる許容範囲設定部を備え、発音装置は、荷重差が許容範囲を超えた場合に、音を変化させて発してもよい。
【0011】
この場合、荷重差が許容範囲を超えない場合、すなわち、被験者荷重と参考荷重とが大きく異ならない場合に音を発しないようにすることによって、被験者が望むスポーツ技能上達のレベルを調整することが可能となる。したがって、スポーツ技能を高く上達することを望む被験者は上記許容範囲を狭く設定することができ、これに対して、スポーツ技能の上達を高くない程度で望む被験者は許容範囲を広く設定することができる。
【0012】
(3)参考荷重は、参考対象の左足に対応する左参考荷重、および参考対象の右足に対応する右参考荷重を含み、荷重検出部は、被験者の左足による被験者左荷重を検出する第1荷重検出部および被験者の右足による被験者右荷重を検出する第2荷重検出部を含み、荷重差算出部は、左参考荷重と被験者左荷重との対比および右参考荷重と被験者右荷重との対比を行うことによって、それぞれ左荷重差および右荷重差を算出し、発音装置は、左荷重差および右荷重差の一方または両方に基づいて音を変化させて発してもよい。
【0013】
この場合、被験者の左足による被験者左荷重が第1荷重検出部により検出され、被験者の右足による被験者右荷重が第2荷重検出部により検出される。また、左参考荷重と被験者左荷重との対比および右参考荷重と被験者右荷重との対比が荷重差算出部により行われることによって、それぞれ左荷重差および右荷重差が算出される。
【0014】
そして、左荷重差および右荷重差の一方または両方に基づいて発音装置によって音が変化されて発せられる。このような構成により、被験者は自身の体重移動が左側寄りであるのか右側寄りであるのかについてリアルタイムで認識することができ、動作修正を直ちに実行することが可能となる。
(4)発音装置によって左荷重差に基づいて変化されて発せられる音と右荷重差に基づいて変化されて発せられる音とは、互いに異なる音質であってもよい。
【0015】
この場合、左荷重差に基づいて変化されて発せられる音と右荷重差に基づいて変化されて発せられる音とが互いに異なる音質であることによって、被験者は自身の体重移動が左側寄りであるのか右側寄りであるのかについて明確に認識することができる。
【0016】
(5)スポーツ技能上達装置は、左荷重差および右荷重差に基づいて、被験者の左右方向の重心のずれおよび当該左右方向に交差する上下方向の重心のずれを検出する重心ずれ検出部を備え、発音装置は、左右方向の重心のずれおよび上下方向の重心のずれの一方または両方に基づいて音を変化させて発してもよい。
【0017】
この場合、左荷重差および右荷重差に基づいて、被験者の左右方向の重心のずれおよび当該左右方向に交差する上下方向の重心のずれが重心ずれ検出部により検出される。そして、左右方向の重心のずれおよび上下方向の重心のずれの一方または両方に基づいて発音装置によって音が変化されて発せられる。これにより、被験者は自身の動作における重心のずれを認識することができ、当該認識に基づいて動作修正を直ちに実行することが可能となる。
【0018】
(6)スポーツ技能上達装置は、参考対象がクラブヘッドを有するゴルフクラブによってゴルフボールを打つ場合に、クラブヘッドがゴルフボールに当たる瞬間である参考インパクトポイントを予め記憶するインパクトポイント記憶部と、被験者がクラブヘッドを有するゴルフクラブによってゴルフボールを打つ場合に、クラブヘッドがゴルフボールに当たる瞬間である被験者インパクトポイントを検出するインパクトポイント検出装置とを備え、発音装置は、参考インパクトポイントと被験者インパクトポイントとに基づいて音を変化させて発してもよい。
【0019】
この場合、参考インパクトポイントがインパクトポイント記憶部に予め記憶される。また、被験者インパクトポイントがインパクトポイント検出装置により検出される。そして、参考インパクトポイントと被験者インパクトポイントとに基づいて発音装置により音が変化されて発せられる。このような構成により、被験者は参考インパクトポイントとの違いをリアルタイムで認識することができ、自身のインパクトポイントに関する動作修正を直ちに実行することが可能となる。
【0020】
(7)インパクトポイント検出装置は、一対の投光器および受光器からなってもよい。この場合、被験者のインパクトポイントが一対の投光器および受光器によって検出されるので、被験者のインパクトポイントを確実に取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスポーツ技能上達装置によれば、被験者のスポーツ技能を早期に上達させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るゴルフスイング上達装置の概略的構成を示す平面模式図である。
【図2】処理装置のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【図3】CPUにより算出された荷重差について説明するための模式図である。
【図4】参考対象のスイング動作における重心位置の軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係るスポーツ技能上達装置について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態では、スポーツ技能上達装置として、ゴルフスイングの上達を目的として使用されるゴルフスイング上達装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るゴルフスイング上達装置100の概略的構成を示す平面模式図である。
【0024】
図1に示すように、ゴルフスイング上達装置100は、被験者がゴルフクラブを持って位置する荷重測定ベース1、ティースタンド2、処理装置3、発音装置4および通信装置5を主として備える。
【0025】
荷重測定ベース1は、4つのロードセル11(これらを11a、11b、11c、11dと図示し識別する)を備える。ロードセル11a、11bは、被験者のおよそ左側の体重移動に基づく荷重(以下、被験者左荷重と呼ぶ)を測定し、ロードセル11c、11dは、被験者のおよそ右側の体重移動に基づく荷重(以下、被験者右荷重と呼ぶ)を測定する。
【0026】
ティースタンド2は、荷重測定ベース1の近傍に設けられている。このティースタンド2には、インパクトポイントを検出するインパクトポイント検出装置20がセットされたゴルフボールの位置に設けられる。
【0027】
インパクトポイント検出装置20は、対向配置された一対の投光器20aおよび受光器20bによって構成される。なお、インパクトポイントとは、ゴルフクラブのクラブヘッドがゴルフボールに当たる瞬間(時間)をいう。
【0028】
処理装置3は、詳細は後述するが、予め記憶された参考荷重と4つのロードセル11によって得られた、被験者の体重移動に基づく荷重(以下、被験者荷重と呼ぶ)とを経時的に対比することによって荷重差を算出する。
【0029】
すなわち、処理装置3は、被験者がスイング動作を行う際における当該被験者の体重移動による荷重の経時的変化と参考対象の同荷重の経時的変化とを比較することによって、参考対象に対して被験者のスイング時における体重移動のずれを取得する。参考対象とは、被験者が自身のスイング動作を修正するための手本とする、例えばプロゴルファーやこれに準ずるスイングロボット等を意味する。
【0030】
発音装置4は、処理装置3の制御に基づいて所定の音を変化させて発する。被験者は、この変化される音によって自身のスイング動作のずれを認識することができる。
【0031】
通信装置5は、無線端末(例えば、携帯端末やBlue tooth通信機能等のワイヤレス通信機能を備えるゲーム機)との間で通信を行う。具体的には、通信装置5は処理装置3により得られた処理結果を無線端末に送信する。被験者は、スイング練習の終了後等に自身の無線端末により処理結果を確認することもできる。
図2は処理装置3のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【0032】
図2に示すように、処理装置3は、CPU(中央演算処理装置)30、参考荷重記憶部31、インパクトポイント記憶部32、および許容範囲設定部33によって構成される。参考荷重記憶部31およびインパクトポイント記憶部32はメモリまたはハードディスクからなる。
【0033】
CPU30は、ロードセル11からの被験者荷重と参考荷重記憶部31に記憶されている参考対象の参考荷重との荷重差を算出する。参考荷重記憶部31に記憶されている参考荷重は、参考対象の左足に主に対応する左参考荷重および参考対象の右足に主に対応する右参考荷重を含む。
【0034】
CPU30は、左参考荷重と被験者左荷重との対比および右参考荷重と被験者右荷重との対比を行うことによって、それぞれ左荷重差および右荷重差を算出する。
【0035】
ここで、被験者はスイングの練習を行う前に、許容範囲設定部33によって上記の左荷重差および右荷重差の許容範囲(参考荷重を基準)を設定することができる。例えば、被験者は左荷重差および右荷重差の許容範囲を±20%に設定することができる。
【0036】
被験者により許容範囲が±20%に設定された場合には、CPU30は、上述したように左荷重差および右荷重差を算出した後、左荷重差が左参考荷重に対して±20%である場合および右荷重差が右参考荷重に対して±20%である場合のうち一方または両方を満たせば、発音装置4による発音が行われるよう制御する。
【0037】
左荷重差に基づいて発せられる音の音質と右荷重差に基づいて発せられる音の音質とは、被験者の聴覚によって違いを明確に認識できるような程度で互いに異なる。
【0038】
本実施形態では、左荷重差に基づいて発せられる音を和音とし、右荷重差に基づいて発せられる音を自然音とする。また、発音装置4は、左荷重差および右荷重差に比例して音の高低を変えて発音する。それにより、被験者は、スイングの際における自身の体重移動が左寄りであるのか右寄りであるのかについて明確に認識することができる。
一方、左荷重差および右荷重差が設定された許容範囲に入る場合には、CPU30は発音装置4に対して発音の指令を与えない。
【0039】
このような構成により、被験者は自身が望むスイング技能上達のレベルを調整することができる。したがって、スイング技能を高く上達することを望む被験者は許容範囲を狭く設定することができ、これに対して、スイング技能の上達を高くない程度で望む被験者は許容範囲を広く設定することができる。
【0040】
インパクトポイント検出装置20は、被験者のスイング動作におけるインパクトポイントを検出する。この場合、ゴルフボールがセットされている場合には、投光器20aからの光は受光器20bにより受光されないが、被験者によってゴルフボールが放たれた場合には、投光器20aからの光が受光器20bにより受光される。このような原理により、被験者のインパクトポイントがインパクトポイント検出装置20により検出される。
【0041】
インパクトポイント記憶部32は、参考対象のインパクトポイント(以下、参考インパクトポイントと呼ぶ)および当該参考インパクトポイントにおける参考荷重を予め記憶する。
【0042】
このようなインパクトポイント検出装置20により検出された被験者のインパクトポイントおよびインパクトポイント記憶部32に記憶されている参考インパクトポイント等に基づいて、CPU30は次の処理をも行うことが可能である。
CPU30は、インパクトポイント検出装置20により検出されたインパクトポイントにおける被験者荷重をロードセル11から取得する。
【0043】
そして、CPU30は、参考インパクトポイントにおける参考荷重と、被験者のインパクトポイントにおける被験者荷重と対比することによって、これらの差である荷重差を算出する。CPU30は、算出した荷重差が許容範囲を超えた場合には、発音装置4による発音が行われるよう制御する。本実施形態では、インパクトポイントのみにおける発音の実施、インパクトポイントを含む全スイング動作中における発音の実施、およびアドレス時(打球前の構え時)の発音の実施のうち、被験者が望む方法を選択することができる。
また、本実施形態では、CPU30は次の処理をも行うことが可能である。
【0044】
CPU30は、参考荷重記憶部31に記憶されている左参考荷重および右参考荷重から参考対象の重心を経時的に取得するとともに、ロードセル11からの被験者左荷重および被験者右荷重に基づいて所定の算出式により被験者の重心を経時的に取得する。
【0045】
そして、CPU30は、取得した参考対象の重心と被験者の重心との差である重心ずれを取得する。この場合、被験者の左右方向の重心ずれおよび当該左右方向に交差する上下方向の重心ずれが取得される。
【0046】
CPU30は、取得した2つの重心ずれの程度によって、左右方向の重心ずれおよび上下方向の重心ずれの一方または両方を被験者に対して知らせるために、発音装置4による発音動作の制御を行う。
次いで、参考荷重、被験者荷重および参考荷重と被験者荷重との荷重差について図面を用いて説明する。
図3は、CPU30により算出された荷重差について説明するための模式図である。
【0047】
X軸を時間軸とし、Y軸を荷重を示す軸とした場合に、左参考荷重SLKの軌跡、右参考荷重SRKの軌跡、および全体の参考荷重SZKの軌跡、ならびに、被験者左荷重HLKの軌跡、被験者右荷重HRKの軌跡、および全体の被験者荷重HZKの軌跡の一例は、図3に示すようになる。
【0048】
図3に示すように、時間tにおいて、左参考荷重SLKと被験者左荷重HLKとの差が左荷重差LGとなり、右参考荷重SRKと被験者右荷重HRKとの差が右荷重差RGとなり、全体の参考荷重SZKと全体の被験者荷重HZKとの差が荷重差ZGとなる。
【0049】
したがって、左荷重差LG、右荷重差RGおよび荷重差ZGが小さいほど、被験者のスイングが参考対象のスイングに近いものとなる。図3において、左参考荷重SLKの軌跡と右参考荷重SRKの軌跡とが交差する時間IPが上述した参考インパクトポイントとなる。なお、上記交差する近傍の時間を参考インパクトポイントIPとしてもよい。
【0050】
被験者によって許容範囲が±20%に設定された場合、ある時間において被験者左荷重HLKと左参考荷重SLKとの左荷重差LGが上記許容範囲を超える(上限を上回るまたは下限を下回る)ときに、発音装置4によって音が変化され発せられる。この場合、左荷重差LGの大きさに比例して音の高低が異なるように発音される。
【0051】
例えば、左荷重差LGが+20%を少し超えた場合には、高い音が発せられ、大きく超えた場合には、さらに高い音が発せられ、左荷重差LGが−20%を少し下がった場合には、低い音が発せられ、大きく下がった場合には、さらに低い音が発せられる。なお、右荷重差RGおよび全体の荷重差ZGについても同様な方法で発音される。
【0052】
なお、上記の実施形態においては、音の高低で許容範囲からどの程度ずれているかを説明したが、これに限定されず、音の音量、または間欠的に音を発生させるタイミングを変化させて、許容範囲からどの程度ずれているかあらわしてもよい。
【0053】
図4は、参考対象のスイング動作における重心位置の軌跡を示す図である。
【0054】
X軸を参考対象の左右方向の位置を示す軸とし、Y軸を参考対象の上下方向の位置を示す軸とした場合に、参考対象における重心位置ZPKの軌跡の一例は、図4のようになる。
【0055】
図4に示すように、スイング動作における参考対象の最初の重心位置をSPとした場合、重心位置は参考対象の左側(左足の方向)に移動した後、右側(右足の方向)に移動していることが確認できる。なお、図4のIPPは参考インパクトポイントにおける重心位置を示している。
【0056】
本実施形態では、被験者のスイング時における重心位置に関しても許容範囲を設定することができる。CPU30により算出された参考対象の重心位置と被験者の重心位置との重心ずれ(左右方向の重心ずれまたは上下方向の重心ずれ)が、ある時間において許容範囲を超えるときに、発音装置4によって音が変化され発せられる。この場合、重心ずれの大きさに比例して音の高低が異なるように発音される。
【0057】
例えば、左右方向の重心ずれが+20%を少し超えた場合には、高い音が発せられ、大きく超えた場合には、さらに高い音が発せられ、左右方向の重心ずれが−20%を少し下がった場合には、低い音が発せられ、大きく下がった場合には、さらに低い音が発せられる。これと同時に、上下方向の重心ずれが+20%を少し超えた場合には、間隔の長い音が発せられ、大きく超えた場合には、間隔の長いさらに高い音が発せられ、上下方向の重心ずれが−20%を少し下がった場合には、間隔の長い低い音が発せられ、大きく下がった場合には、間隔の長いさらに低い音が発せられる。なお、左右方向の重心ずれに関する発音と上下方向の重心ずれに関する発音とで、上記音の間隔の長さを入れ替えてもよい。
【0058】
<本実施形態における効果>
本実施形態では、ロードセル11が被験者左荷重HLKおよび被験者右荷重HRKを検出している間、すなわち、被験者がスイング動作をしている間、被験者は変化された音をリアルタイムで認識することが可能となる。それにより、従来のようにスイング練習の終了後に映像等を見てスイングの動作修正を行うのではなく、被験者はリアルタイムで自身のスイング動作を修正する必要があることを認識でき、動作修正を直ちに実行することが可能となる。
したがって、本実施形態に係るゴルフスイング上達装置100によれば、従来に比べ、被験者のゴルフスイング技能を早期に上達させることが可能となる。
【0059】
また、CPU30によって左荷重差LGおよび右荷重差RGが算出され、これらに基づいて発音装置4により発音されるので、被験者はスイング時における自身の体重移動が左側寄りであるのか右側寄りであるのかについてリアルタイムで認識することが可能となる。それにより、被験者は動作修正を直ちに実行することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、被験者は許容範囲設定部33によって許容範囲を設定することができる。それにより、被験者は、自身が望むスイング技能上達のレベルを調整することができる。したがって、スイング技能を高く上達することを望む被験者は許容範囲を狭く設定することができ、これに対して、スイング技能の上達を高くない程度で望む被験者は許容範囲を広く設定することができる。
【0061】
また、本実施形態では、インパクトポイント検出装置20により被験者のインパクトポイントが検出される。これにより、インパクトポイントにおける左荷重差LG、右荷重差RG、全体の荷重差ZGが算出されるので、被験者は自身のインパクトポイントにおけるスイング動作の修正の必要性をリアルタイムで認識することができる。したがって、被験者は、スイング動作において重要なインパクトポイントにおけるスイング動作を早期に上達させることが可能となる。
【0062】
さらに、本実施形態では、上述のように、インパクトポイントのみにおける発音の実施、またはインパクトポイントを含む全スイング動作中における発音の実施のうち、被験者が望む発音方法を選択することができる。これにより、被験者はスイング全体の動作修正を実行することができるし、スイングの部分的な動作修正を実行することもできる。
【0063】
<請求項の各構成要素と本実施形態の各部との対応関係>
なお、本実施の形態においては、参考荷重SZKが参考荷重に相当し、参考荷重記憶部31が参考荷重記憶部に相当し、被験者荷重HZKが被験者荷重に相当し、ロードセル11、11a、11b、11c、11dが荷重検出部に相当し、荷重差ZGが荷重差に相当し、CPU30が荷重差算出部および重心ずれ検出部に相当し、発音装置4が発音装置に相当し、許容範囲設定部33が許容範囲設定部に相当する。
【0064】
また、本実施の形態においては、左参考荷重SLKが左参考荷重に相当し、右参考荷重SRKが右参考荷重に相当し、被験者左荷重HLKが被験者左荷重に相当し、被験者右荷重HRKが被験者右荷重に相当し、ロードセル11a、11bが第1荷重検出部に相当し、ロードセル11c、11dが第2荷重検出部に相当し、左荷重差LGが左荷重差に相当し、右荷重差RGが右荷重差に相当し、インパクトポイント記憶部32がインパクトポイント記憶部に相当し、インパクトポイント検出装置20がインパクトポイント検出装置に相当し、投光器20aが投光器に相当し、受光器20bが受光器に相当する。
【0065】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態では、参考荷重記憶部31とインパクトポイント記憶部32とを別個独立に設けることとしたが、これに限定されるものではなく、これらを一体的に構成してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、参考荷重と被験者荷重との荷重差として左荷重差および右荷重差を算出し、これらに基づいて発音装置4による発音を行うこととしたが、これに限定されるものではなく、参考対象の全体の参考荷重と被験者の全体荷重とから算出される一つの荷重差に基づいて発音を行ってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、インパクトポイント検出装置20として一対の投光器20aおよび受光器20bを採用することとしたが、これに限定されるものではなく、モバイルカメラ等の撮像装置を採用してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、参考荷重記憶部31に記憶されている左参考荷重および右参考荷重からCPU30により参考対象の重心を経時的に算出することとしたが、これに限定されるものではなく、当該参考対象の重心を参考荷重記憶部31に予め記憶させておき、これを経時的に取得してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、4つのロードセル11a、11b、11c、11dを設けたが、これに限定されるものでなく、ロードセル11の数を例えば2つまたは6つ等、他の任意の個数にしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、発音装置4によって左荷重差LGおよび右荷重差RGの一方または両方に基づいて発音することとしたが、これに限定されるものではなく、複数の発音装置を設けてもよい。この場合、例えば2つの発音装置を設ける場合には、一方の発音装置により左荷重差LGに基づいて発音させ、他方の発音装置により右荷重差RGに基づいて発音させることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、スポーツ技能上達装置としてゴルフスイングの上達を目的として使用されるゴルフスイング上達装置100について説明したが、この他にも、例えばテニス、バドミントン、卓球、ゲートボール、弓道、射撃、バスケットボール等の他のスポーツにも本発明に係るスポーツ技能上達装置を適用することが可能である。
【0072】
さらに、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0073】
1 荷重測定ベース
2 ティースタンド
3 処理装置
4 発音装置
5 通信装置
11、11a、11b、11c、11d ロードセル
20 インパクトポイント検出装置
20a 投光器
20b 受光器
30 CPU
31 参考荷重記憶部
32 インパクトポイント記憶部
33 許容範囲設定部
100 ゴルフスイング上達装置
HLK 被験者左荷重
HRK 被験者右荷重
HZK 被験者荷重
IP 参考インパクトポイント
LG 左荷重差
RG 右荷重差
SLK 左参考荷重
SRK 右参考荷重
SZK 参考荷重
ZG 荷重差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参考対象の重心に基づいて経時的に変化する前記参考対象の荷重を、参考荷重として予め記憶する参考荷重記憶部と、
被験者の重心に基づいて経時的に変化する被験者荷重を検出する荷重検出部と、
前記参考荷重と前記被験者荷重との荷重差を算出する荷重差算出部と、
前記荷重検出部が前記被験者荷重を検出している間、前記荷重差に基づいて音を変化させて発する発音装置と、を備えることを特徴とするスポーツ技能上達装置。
【請求項2】
前記荷重差の許容範囲を、予め設定することができる許容範囲設定部を備え、
前記発音装置は、前記荷重差が前記許容範囲を超えた場合に、音を変化させて発することを特徴とする請求項1記載のスポーツ技能上達装置。
【請求項3】
前記参考荷重は、前記参考対象の左足に対応する左参考荷重、および前記参考対象の右足に対応する右参考荷重を含み、
前記荷重検出部は、前記被験者の左足による被験者左荷重を検出する第1荷重検出部および被験者の右足による被験者右荷重を検出する第2荷重検出部を含み、
前記荷重差算出部は、前記左参考荷重と前記被験者左荷重との対比および前記右参考荷重と前記被験者右荷重との対比を行うことによって、それぞれ左荷重差および右荷重差を算出し、
前記発音装置は、前記左荷重差および前記右荷重差の一方または両方に基づいて音を変化させて発することを特徴とする請求項1または2記載のスポーツ技能上達装置。
【請求項4】
前記発音装置によって前記左荷重差に基づいて変化されて発せられる音と前記右荷重差に基づいて変化されて発せられる音とは、互いに異なる音質であることを特徴とする請求項3記載のスポーツ技能上達装置。
【請求項5】
前記左荷重差および前記右荷重差に基づいて、被験者の左右方向の重心のずれおよび当該左右方向に交差する上下方向の重心のずれを検出する重心ずれ検出部を備え、
前記発音装置は、前記左右方向の重心のずれおよび前記上下方向の重心のずれの一方または両方に基づいて音を変化させて発することを特徴する請求項3または4記載のスポーツ技能上達装置。
【請求項6】
前記参考対象がクラブヘッドを有するゴルフクラブによってゴルフボールを打つ場合に、クラブヘッドがゴルフボールに当たる瞬間である参考インパクトポイントを予め記憶するインパクトポイント記憶部と、
被験者がクラブヘッドを有するゴルフクラブによってゴルフボールを打つ場合に、クラブヘッドがゴルフボールに当たる瞬間である被験者インパクトポイントを検出するインパクトポイント検出装置とを備え、
前記発音装置は、前記参考インパクトポイントと前記被験者インパクトポイントとに基づいて音を変化させて発することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスポーツ技能上達装置。
【請求項7】
前記インパクトポイント検出装置は、一対の投光器および受光器からなることを特徴とする請求項6記載のスポーツ技能上達装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−19793(P2011−19793A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168541(P2009−168541)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)