説明

スポーツ障害抑制剤及び機能性食品

【課題】スポーツ障害を未然に防止できるスポーツ障害抑制剤を提供する。
【解決手段】本発明に係るスポーツ障害抑制剤は、卵殻膜を有効成分として含有する。スポーツ障害を未然に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ障害抑制剤に関するとともに、スポーツ障害抑制剤の薬効を得ることのできる機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏卵などの鳥類の卵の卵殻の内側に存在する卵殻膜は、強靭な繊維性のタンパク質からなり、オポケラチン及びオポムシンを主成分としている。この卵殻膜は皮膚の老化や肌荒れ防止作用、皮膚の疾病の早期治癒作用、育毛・発毛促進作用、脱毛防止作用及び生体内に生成した活性酸素の低減ないし消去作用等の優れた薬効作用を有することが知られている。そして、このような自然(天然)の卵殻膜に由来する安全性に優れた薬剤を経口摂取しやすいようにした卵殻膜含有錠剤も提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この提案に係る卵殻膜含有錠剤は、直径が約7〜10mm程度の円形ないし楕円形の錠剤で、錠剤1個の重さが約350〜400mg程度であり、その錠剤1個中に卵殻膜が約35〜40mgの量で含まれている。そして、成人が錠剤を1日当たり2〜3個摂取すると(1日当たり卵殻膜を合計で70〜120mg摂取すると)、皮膚におけるコラーゲン、特に3型コラーゲン(コラーゲン3型とよばれることもあるが、ここでは3型コラーゲンとして説明する。なお、数字の3は、通常ギリシャ数字で表されるが、ここでは便宜上アラビア数字を用いている。)の生成が促進されて、皮膚の老化や肌荒れが防止され、皮膚を滑らかで、柔らかく、シットリとした状態にすることができ、湿疹、炎症、ヤケドなどの皮膚疾患の予防や治癒が促進され、育毛、発毛促進、脱毛の防止、白髪の減少等がなされ、生体内に生成した活性酸素が消去又は低減されて種々の疾病の予防や回復を促進することができるという特長を有している。
【0004】
また、卵殻膜は上述のように皮膚損傷部の再生促進作用に優れているので、不織布、織布、編布、紙あるいはプラスチックフィルム等のフィルムからなる支持体に加水分解卵殻膜を含有する創傷被覆層を設けた絆創膏も提案されている(特許文献2参照)。この提案に係る絆創膏は、加水分解卵殻膜が損傷を受けた皮膚の再生を促進する作用に優れているので、皮膚の治癒の促進を図ることができる特長を有しているとともに、自然の卵殻膜に由来するので安全性に優れた絆創膏とすることができる。
【0005】
さらに、卵殻膜は、上述のように育毛・発毛促進作用及び脱毛防止作用に優れているので、水又は水とエチルアルコールとの混合液等の水性媒体中に加水分解卵殻膜を0.001〜5質量%の割合で含有させた育毛・発毛促進剤も提案されている(特許文献3参照)。この提案に係る育毛・発毛促進剤は、育毛促進、発毛促進、脱毛防止及び白髪の減少効果に優れており、毎日所定の量を継続して頭部に付与することによって、薄毛の解消、発毛、育毛、毛髪への張り・腰の付与、白髪の解消などの効果を発現させることができる。しかも、この育毛・発毛促進剤は、自然に由来する卵殻膜の成分を用いているために、安全性においても優れている。
【0006】
さらにまた、卵殻膜の微細粉末と紙に加工して(抄紙して)調湿紙や吸油紙等の機能を有する機能紙も提案されている(特許文献4参照)。この提案に係る機能紙は環境中の湿気の吸収と放出により湿度調整を行うことができ、被処理物の油分の吸収除去を行うことができ、また、被処理物中の貴金属、重金属等の金属を吸収することができる優れた機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−146895号公報
【特許文献2】特開2003−225298号公報
【特許文献3】特開2004−189688号公報
【特許文献4】特開平9−176998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、卵殻膜には各種の薬効が有り、また、各種の有用な機能を有し、しかも、自然に由来する安全な物質であることに着目し、本発明者らは、さらに研究を重ねた結果、卵殻膜には長距離選手等の持久性トレーニングを行う者の足関節痛等のスポーツ障害発生を抑制できる知見を得ることができた。すなわち、本発明者らは、卵殻膜は3型コラーゲンを増加させることの知見を得ており、しかもこの3型コラーゲンを増すことにより、細胞の防御システムが形成されることから、スポーツ選手の筋、腱及び靭帯等に発現するスポーツ障害を未然に防止できる知見を得た。
【0009】
そこで、本発明の目的は、スポーツ障害を未然に防止できるスポーツ障害抑制剤を提供することにある。同時に、このスポーツ障害抑制機能を有する機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスポーツ障害抑制剤は、上記目的を達成するために、卵殻膜を有効成分として含有することを特徴とし(請求項1)、その卵殻膜は微粉砕処理されていることを特徴としている(請求項2)。また、本発明に係る機能性食品は、卵殻膜を有効成分としてスポーツ障害を抑制する機能を有することを特徴とし(請求項3)、その卵殻膜が微粉砕処理されていることを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1及び請求項2に係るスポーツ障害抑制剤は、卵殻膜、特に好ましくは微粉砕処理された卵殻膜からなるので、自然に由来した安全な原料でスポーツ選手の怪我を未然に防止することができる。
本発明の請求項3及び請求項4に係る機能性食品は、卵殻膜、特に好ましくは微粉砕処理された卵殻膜からなるので、自然に由来した安全な原料でスポーツ選手の怪我を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】調査方法で使用した調査票である。
【図2】長距離選手の障害発生部位を示すグラフである。
【図3】卵殻膜摂取前及び摂取後の主な障害発生部位毎の障害者数の変化を示すグラフである。
【図4】卵殻膜摂取前及び摂取後の詳細な障害発生部位毎の障害者数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、卵殻膜は3型コラーゲンを増加させるとの知見を得ている。しかも、この3型コラーゲンを増すことにより、細胞の防御システムが形成されることを考慮して、スポーツ選手の筋、腱及び靭帯等に発現するスポーツ障害について鋭意研究して本発明をするに至った。以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
(1)対象者
本実験の対象者は東海大学陸上競技部長距離ブロックの学生50名である。これら対象者の身体的特徴及び治療期間は表2に示すとおりである。また、これらの学生は全員合宿所に居住しているため、毎日のトレーニングメニュー並びに朝夕の食事メニューは同条件下にある。
【0015】
【表1】

【0016】
(2)調査方法
調査方法は記入式で、図1に示した質問項目について、各自で記入し、これらを集計することとした。項目は部位、病名、詳細部位について、腰部、膝、下腿、足関節に分類し、発生時、治療期間について調査した。
【0017】
(3)卵殻膜の摂取
使用した卵殻膜は、本出願人(株式会社アルマード)製のアルマードTO.2(実際の数字はギリシャ数字)の卵殻加工食品を用いた。この卵殻加工食品は、上記特許文献1に記載されているように、卵殻膜を微粉砕処理(パウダー処理)し、これを化工澱粉等の賦形剤を用いて錠剤としたもので、1粒に卵殻膜が2.7mg含まれる。この卵殻加工食品を朝夕食後それぞれ2粒とし、1〜4ケ月摂取した。1ケ月摂取と4ケ月摂取に分け、その効果について検討した。
【0018】
実験結果
(1)長距離選手の障害発生
50名の東海大学長距離選手について在学中のトレーニングに伴う障害発生の状況を調査すると、50名中37名がトレーニング中の障害発生を経験し、74%の対象者に障害が発生していることになり、この率がいかに高いかが明らかである。
【0019】
(2)長距離選手の障害発生部位の特徴
図2は、50名の長距離選手の障害部位についてまとめられている。この図から明らかなように、障害部位は全て下肢に集中し、足首(16名)、前脛骨筋(11名)、足底(2名)、足甲(3名)、踵(4名)、アキレス腱(9名)、母指球(1名)で84名の障害者数に対し、46名の下腿中心の訴えとなり、54.7%は下腿に発生していた。
【0020】
(3)障害の治療期間
長距離選手の障害では軽いもので1週間ぐらいであるが、一般に治療期間が著しく長く、長いものでは発生後、6ケ月に及ぶ場合もあり、このような連続で、最終的には完治しないまま3年を越す例もある。そして、その平均治療期間は、上記表2に示されるように、7.83±8.20(週)であり、個人差や障害部位、あるいはその程度により治療期間にバラツキが多いことが分かる。このようなスポーツ障害、特に長距離選手の障害は発生すると著しく長い治療期間を要している特徴があり、脱トレーニング期間が長びき、これまでのトレーニング効果が失われる例がほとんどである。
【0021】
(4)卵殻膜摂取の影響
(a)各部位の障害者数
図3は、腰部、下肢についての各部分の障害者数の変化について示されている。この図から明らかなように、膝部の障害については大きな変化はなかったが、腰部、大腿部、足部については卵殻膜摂取により明らかな低下が認められた。したがって、卵殻膜摂取によって確かに長距離選手のトレーニングに伴う障害発生を抑える効果があることが分かる。 (b)詳細部位による変化
図4には障害部位による障害者数の変化が示されている。この図から明らかなように、足底、母指球、ヒラメ筋、腓骨筋では卵殻膜摂取によるスポーツ障害抑制効果が認められなかったが、その他の部位では全て障害者数が減少していて、スポーツ障害抑制効果が認められた。したがって、常時負荷の加わる腓骨筋、母指球、ヒラメ筋、足底については障害抑制効果は弱いが、これらの結果は立位、歩行という利用の頻度が高く、その意味で障害を回復しにくい部位と考えられる。しかし、その他の部位では明らかに障害者数が減少し、卵殻膜摂取の効果が認められた。
【0022】
上述のように、卵殻膜を摂取することにより、確実に長距離選手の障害発生を予防する効果があることが分かる。したがって、この卵殻膜を有効成分とする薬剤を投与することによりスポーツ障害を未然に防止できるとともに、この卵殻膜を食品として、例えば所定の食品に添加物として添加して摂取したとき、あるいは食品補助剤として摂取したときは、スポーツ障害を未然に防止することができる。この機能性食品は、従来の一般的な機能性食品と同様に、錠剤、カプセル、顆粒、液状等の形態で供給される。
【0023】
上記請求項1〜請求項3に係る発明の説明においては、スポーツ選手を対象に説明したが、一般人であっても同様の効果を得ることが可能である。したがって、本発明でスポーツ選手というときは一般人も含み、また、スポーツ障害というときは運動障害を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵殻膜を有効成分として含有することを特徴とするスポーツ障害抑制剤。
【請求項2】
請求項1に記載のスポーツ障害抑制剤において、卵殻膜は微粉砕処理されていることを特徴とするスポーツ障害抑制剤。
【請求項3】
卵殻膜を有効成分としてスポーツ障害を抑制する機能を有することを特徴とする機能性食品。
【請求項4】
請求項3に記載の機能性食品において、卵殻膜は微粉砕処理されていることを特徴とする機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−120617(P2009−120617A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49301(P2009−49301)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【分割の表示】特願2004−367050(P2004−367050)の分割
【原出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(501303046)株式会社 アルマード (8)
【Fターム(参考)】