説明

スメクチック液晶ポリマーの製造方法

【課題】 高分子量のスメクチック液晶ポリマーをより短時間で製造する方法を提供する。
【解決手段】 固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子を、不活性雰囲気下および/または減圧下で加熱して、T以上T未満もしくはT以上T未満の温度で1〜20時間保持することを特徴とする、高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
(Tは昇温過程において、固相からスメクチック液晶相への転移点、Tはスメクチック液晶相から等方相への転移点、Tはスメクチック液晶相からネマチック液晶相への転移点を示す。)
前記の固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子の平均粒子径は3mm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スメクチック液晶ポリマーの製造方法に関する。さらに詳しくは、より短時間で高分子量のスメクチック液晶ポリマーを得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用プラスチックスやエンジニアリングプラスチックスの製造方法としては、ポリマーを溶融状態で重合せしめる「溶融重合法」を始め、種々の手法が一般的に知られているが、比較的単純な設備で高分子量化できるという利点があるので、結晶化状態にある低分子量ポリマーを固相状態のまま昇温、重合せしめる「固相重合法」を採用したプロセスが増加傾向にある。
【0003】
液晶ポリマーとは、ポリマーが加熱された際に、ある温度から液晶相を示すものの総称である。従来より研究報告例の多い液晶ポリマーの高分子量化方法において、対象とされている液晶ポリマーは、液晶の状態がネマチック液晶となるポリマーであった。ネマチック液晶は、構成分子が配向秩序を持つが、三次元的な位置秩序をもたない。このような液晶ポリマーの高分子量化方法としては特許文献1または2のように、一般に融点といわれる固相から液晶相への転移点未満の温度で加熱処理し、すなわち固相にて高分子量化する方法が採られている。これはポリマーの液晶相転移点以上に加熱した場合、ポリマー粒子同士が融着または接着することで、高分子量化に長時間要してしまうためである。
【0004】
一方スメクチック液晶ポリマーの固相重合の例としては特許文献3の中で、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸と1,6−ヘキサンジオールからなるポリエステルについて実施されている。しかし、ここでも液晶相転移点未満の温度で、すなわち固相にて加熱処理することで高分子量化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−225021号公報
【特許文献2】特開2000−248056号公報
【特許文献3】特表平4−502481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高分子量のスメクチック液晶ポリマーをより短時間で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、スメクチック液晶ポリマーを高分子量化する際に、固相ではなく、スメクチック液晶相にて処理しても、意外なことにポリマー粒子同士の融着や接着がおこらず、かつ液晶相転移点未満の温度で固相重合するよりも高分子量化がより短時間で達成されることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記1)〜7)である。
【0008】
1)固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子を、不活性雰囲気下および/または減圧下で加熱して、T以上T未満もしくはT以上T未満の温度で1〜20時間保持することを特徴とする、高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
(Tは昇温過程において、固相からスメクチック液晶相への転移点、Tはスメクチック液晶相から等方相への転移点、Tはスメクチック液晶相からネマチック液晶相への転移点を示す。)
2)前記の固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子の平均粒子径が3mm以下である、1)に記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
3)前記の固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子の数平均分子量が5000以上である、1)または2)に記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
4)減圧下で加熱することを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
5)前記の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーが主として下記一般式(1)または(2)で示される単位の繰り返しからなる、1)〜4)のいずれかに記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
−A−x−A−OCO(CHCOO− ...(1)
−A−x−A−COO(CHOCO− ...(2)
(式中、AおよびAは、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは、各々独立して直接結合、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。mは2〜20の整数を示す。)
6)−A−x−A−が下記一般式(3)であることを特徴とする、5)に記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは2〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
7)前記の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーのmが、4〜14の偶数から選ばれることを特徴とする、5)または6)のいずれかに記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
高分子量のスメクチック液晶ポリマーがより短時間で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子を、不活性雰囲気下および/または減圧下で加熱して、T以上T未満もしくはT以上T未満の温度で1〜20時間保持することを特徴とする。
本発明のスメクチック液晶ポリマーとは、液晶ポリマーの中でも液晶相の状態がスメクチック液晶となりうるポリマーの総称である。またスメクチック液晶は、分子の並び方が分子軸に概ね並行に連なり、更に並行に連なった部分の重心が同一平面上にあって、分子軸に対して概ね直角に層状態を持って連なるという層構造を有する。スメクチック液晶は直交偏光下の顕微鏡観察では短棒状(batonets)組織、モザイク組織、扇状組織等の特有のパターンを示すことが知られている。
【0013】
スメクチック液晶ポリマーの熱物性としては、一般的に昇温過程において、固相からスメクチック液晶相への転移点(以下T)とスメクチック液晶相から等方相への転移点(以下T)を示す。ポリマーによってはTより低い温度にてスメクチック液晶相からネマチック液晶相への転移点(以下T)を示す場合もある。これらの相転移点はDSC測定の昇温過程において吸熱ピークのピークトップとして確認できる。従って本発明のポリマーをT以上T未満もしくはT以上T未満の温度領域で加熱処理することはスメクチック液晶相にて加熱処理することを意味し、好ましくはスメクチック液晶相を維持する範囲でT+30℃、より好ましくはT+20℃の温度領域であることが、ポリマー粒子同士の融着を起こしづらいという点で好ましい。
【0014】
また、スメクチック液晶相となる温度でポリマーを保持する時間は、通常、1〜20時間であるが、2〜18時間であることが好ましく、4〜16時間であることがより好ましい。1時間よりも短いと、高分子量化が不十分となることが多い。20時間よりも長いとポリマーが劣化する場合がある。
【0015】
本発明のスメクチック液晶ポリマー粒子の平均粒子径は3mm以下にすることが好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。平均粒子径が3mmより大きくなると、高分子量化により発生するガス状又は低沸点の反応副生成物の粒子表面からの除去効率が悪くなり、高分子量化に長時間要する場合がある。
【0016】
本発明の数平均分子量とは、ポリスチレンを標準とし、p−クロロフェノールとトルエンの体積比3:8混合溶媒に2.5重量%濃度となるように溶解して調製した溶液を用いて高温GPC(Viscotek:350 HT−GPC System)にてカラム温度80℃、検出器を示差屈折計(RI)として測定した値である。
【0017】
本発明のスメクチック液晶ポリマー粒子の数平均分子量は5000以上であることが好ましく、8000以上であることがより好ましく、10000以上であることがさらに好ましい。数平均分子量が5000未満である場合、ポリマー粒子同士の融着を起こす場合がある。
【0018】
本発明の高分子量化は不活性雰囲気下でも減圧下でも行うことができる。不活性雰囲気下の場合は窒素、アルゴン等を使用できるが、安価であることから窒素が好ましい。ここで本発明における不活性雰囲気とは、窒素、アルゴン等の不活性ガスを、全気体中の90モル%以上、好ましくは98モル%以上含む状態をいう。また不活性気体は一定の流速で流しながら高分子量化を行うことが好ましい。これは高分子量化により発生するガス状又は低沸点の反応副生成物の粒子表面からの除去を助け、更に該反応副生成物のミスト化を防止し、液晶ポリマーからの分離に効果的であるためである。
【0019】
高分子量化は、より短時間で行えるという点で減圧下にて行うことがより好ましい。減圧下で高分子量化をおこなう場合、反応系の圧力は100トル以下であることが好ましく、50トル以下であることがより好ましく、10トル以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明の製造方法は主として下記一般式(1)または(2)で示される単位の繰り返しからなるスメクチック液晶ポリマーに対し、好適に採用できる。
−A−x−A−OCO(CHCOO− ...(1)
−A−x−A−COO(CHOCO− ...(2)
(式中、AおよびAは、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは、各々独立して直接結合、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。mは2〜20の整数を示す。)
【0021】
加熱時にスメクチック液晶相をとるポリマーは同一分子中に棒状で剛直なメソゲン基と柔軟性基を持ち、ここでは−A−x−A−がメソゲン基に相当し、−(CH−が柔軟性基に相当する。
【0022】
ここで主としてとは、分子鎖の主鎖中に含まれる一般式(1)または(2)で示される単位の量について、全構成単位に対して50mol%以上であり、好ましくは70mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上であり、最も好ましくは実質的に100mol%である。50mol%未満の場合は、スメクチック液晶相を示さない場合がある。
ここでA、Aは各々独立して、炭素数6〜12のベンゼン環を有する炭化水素基、炭素数10〜20のナフタレン環を有する炭化水素基、炭素数12〜24のビフェニル構造を有する炭化水素基、炭素数12〜36のベンゼン環を3個以上有する炭化水素基、炭素数12〜36の縮合芳香族基を有する炭化水素基、炭素数4〜36の脂環式複素環基から選択されるものであることが好ましい。
【0023】
、Aの具体例としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、シクロヘキシル、ピリジル、ピリミジル、チオフェニレン等が挙げられる。また、これらは無置換であっても良く、脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などの置換基を有する誘導体であっても良い。xは結合子であり、直接結合、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。これらのうち、結合子に相当するxの主鎖の原子数が偶数であるものが好ましい。すなわち直接結合、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基が好ましい。xの主鎖の原子数が奇数の場合、メソゲン基の分子幅の増加と、結合回転の自由度の増加による屈曲性のため、スメクチック液晶相を示さない場合がある。
【0024】
このような好ましいメソゲン基の具体例として、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、スチルベン、ジフェニルエーテル、1,2−ジフェニルエチレン、ジフェニルアセチレン、フェニルベンゾエート、フェニルベンズアミド、アゾベンゼン、2−ナフトエート、フェニル−2−ナフトエート、およびこれらの誘導体等から水素を2個除去した構造を持つ2価の基が挙げられるがこれらに限るものではない。
【0025】
スメクチック液晶ポリマーの−A−x−A−が下記一般式(3)であることが好ましい。これらメソゲン基はその構造ゆえに剛直で配向性が高く、さらには入手または合成が容易である。
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは2〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
【0028】
一般式(1)および(2)中のmはスメクチック液晶相を示しやすいことから4〜14の偶数であることが好ましく、6〜12の偶数であることがより好ましい。
本発明に関わる液晶ポリマーは、事前の重合工程において公知のいかなる方法で製造されても構わない。構造の制御が簡便であるという観点から、メソゲン基の両末端に水酸基を有する化合物と柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物、またはメソゲン基の両末端にカルボキシル基またはエステル基を有する化合物と柔軟性基の両末端に水酸基を有する化合物を反応させる製造方法が好ましい。
【0029】
メソゲン基の両末端に水酸基を有する化合物と柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物からなる液晶ポリマーの製造方法の一例としては、両末端に水酸基を有するメソゲン基を無水酢酸等の低級脂肪酸を用いてそれぞれ個別に、または一括して酢酸エステルとした後、別の反応槽または同一の反応槽で、柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物と脱酢酸重縮合反応させる方法が挙げられる。重合反応は、実質的に溶媒の存在しない状態で、通常230〜350℃好ましくは250〜330℃の温度で、窒素等の不活性ガスの存在下、常圧または減圧下に、0.5〜5時間行われる。反応温度が230℃より低いと反応の進行は遅く、350℃より高い場合は分解等の副反応が起こりやすい。減圧下で反応させる場合は段階的に減圧度を高くすることが好ましい。急激に高真空度まで減圧した場合モノマーが揮発する場合がある。到達真空度は100トル以下が好ましく、50トル以下がより好ましく、10トル以下が特に好ましい。真空度が100トル以上の場合、重合反応に長時間を要する場合がある。多段階の反応温度を採用してもかまわないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したらすぐに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。
【0030】
重合工程にて用いられる低級脂肪酸の酸無水物としては,炭素数2〜5個の低級脂肪酸の酸無水物,たとえば無水酢酸,無水プロピオン酸、無水モノクロル酢酸,無水ジクロル酢酸,無水トリクロル酢酸,無水モノブロム酢酸,無水ジブロム酢酸,無水トリブロム酢酸,無水モノフルオロ酢酸,無水ジフルオロ酢酸,無水トリフルオロ酢酸,無水酪酸,無水イソ酪酸,無水吉草酸,無水ピバル酸等が挙げられるが,無水酢酸,無水プロピオン酸,無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。低級脂肪酸の酸無水物の使用量は,用いるメソゲン基が有する水酸基の合計に対し1.01〜1.50倍当量,好ましくは1.02〜1.20倍当量である。
【0031】
メソゲン基の両末端にカルボキシル基またはエステル基を有する化合物と柔軟性基の両末端に水酸基を有する化合物からなる液晶ポリマーの製造方法としては、適当な触媒の存在下で溶融混練してエステル交換反応を行う方法が挙げられる。
【0032】
触媒としては、例えば酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、シュウ酸第一スズ、酢酸第一スズ、アルキルスズ酸化物、ジアリールスズ酸化物等のスズ化合物、二酸化チタン、チタンアルコオキシド類、アルコオキシチタンケイ酸塩のようなチタン化合物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸第一鉄のような有機酸の金属塩、BF、AlClのようなルイス酸類、アミン類、アミド類、塩酸、硫酸等の無機酸等を挙げられる。
【0033】
本発明に関わる液晶ポリマーは、本発明の効果を発揮しうる程度に他のモノマーを共重合して構わない。例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸またはカプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂環族ジカルボン酸、および脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールが挙げられる。
【0034】
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2―ヒドロキシ―7―ナフトエ酸、2―ヒドロキシ―3―ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0035】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、1,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジカルボキシビフェニル、3,4’―ジカルボキシビフェニル、4,4’’―ジカルボキシターフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテルおよびビス(3−カルボキシフェニル)エタン等、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0036】
芳香族ジオールの具体例としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノールエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび2,2’−ジヒドロキシビナフチル等、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0037】
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’−ジアミノビナフチルおよびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0038】
芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノビフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸および7−アミノ−2−ナフトエ酸およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0039】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0040】
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミンなどが挙げられる。
【0041】
脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジオールおよび脂環族ジオールの具体例としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコールなどの直鎖状または分鎖状脂肪族ジオールなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
【0042】
芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールの具体例としては、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフトエ酸、2−メルカプト−7−ナフトエ酸、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、7−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレンなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下にあげる各試薬は特に特記しない限り和光純薬工業(株)製の試薬を用いた。
【0044】
[評価方法]
数平均分子量:サンプルをp−クロロフェノール(東京化成工業)とトルエンの体積比3:8混合溶媒に2.5重量%濃度となるように溶解して試料を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。高温GPC(Viscotek社製、350 HT−GPC System)にてカラム温度:80℃、流速1.00mL/min、の条件で測定した。検出器としては、示差屈折計(RI)を使用した。
【0045】
なお高分子量化処理後のサンプルは、一度T以上の温度に加熱し等方相状態としたのちに、室温まで10℃/min以上の速度で冷却したサンプルを評価した。
【0046】
熱物性:高分子量化する液晶ポリマーを約8mg秤量し、示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC−50 ASSY)を用いて25℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、次いで25℃まで降温し、再び300℃まで20℃/分の速度で昇温し、吸熱サーモグラムを測定した。相転移点は、昇温2度目の吸熱ピーク値から求めた。
【0047】
平均粒子径:平均粒子径が1mm未満の粉体は粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いた。平均粒子径が1mm以上の粒子はJIS K−0069に準拠して粒子径分布を測定し、この粒子径分布に基づいて算出した。
【0048】
[製造例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、ドデカン二酸、無水酢酸をモル比でそれぞれ1:1:2.1の割合で仕込み、酢酸ナトリウムを触媒とし、常圧、窒素雰囲気下で145℃にて反応させ均一な溶液を得た後、酢酸を留去しながら2℃/minで260℃まで昇温し、260℃で1時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約40分かけて10Torrまで減圧した後、減圧状態を維持した。減圧開始から2時間後、窒素ガスで常圧に戻し、生成したポリマーを取り出した。数平均分子量は23000であった。分子構造および相転移点を表1に示す。得られたポリマーはスメクチック液晶ポリマーであり、180℃で固相であり、220℃ではスメクチック液晶相となった。
【0049】
[実施例1]
製造例1のポリマーを粉砕機にて平均粒子径0.2mmに粉砕した。減圧下、スメクチック液晶相を示す220℃にて8時間維持し、窒素ガスで常圧に戻してポリマーを取り出した。この間ポリマー粒子の融着は全くなかった。数平均分子量は44000であった。
【0050】
[実施例2]
実施例1を減圧下から窒素雰囲気下にした以外は同様にしてポリマーを得た。数平均分子量は36000であった。
【0051】
[実施例3]
実施例1の平均粒子径を4mmにした以外は同様にしてポリマーを得た。数平均分子量は38000であった。
【0052】
[比較例1]
実施例1の処理温度を、ポリマーが固相状態である180℃にした以外は同様にしてポリマーを得た。数平均分子量は32000であった。
【0053】
[比較例2]
実施例1の処理温度を、ポリマーが固相状態である180℃にし、処理時間を16時間にした以外は同様にしてポリマーを得た。数平均分子量は37000であった。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明によれば工業的にも簡便に、スメクチック液晶ポリマーをより短時間で高分子量化できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子を、不活性雰囲気下および/または減圧下で加熱して、T以上T未満もしくはT以上T未満の温度で1〜20時間保持することを特徴とする、高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
(Tは昇温過程において、固相からスメクチック液晶相への転移点、Tはスメクチック液晶相から等方相への転移点、Tはスメクチック液晶相からネマチック液晶相への転移点を示す。)
【請求項2】
前記の固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子の平均粒子径が3mm以下である、請求項1に記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記の固相状態のスメクチック液晶ポリマー粒子の数平均分子量が5000以上である、請求項1または2に記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
【請求項4】
減圧下で加熱することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーが主として下記一般式(1)または(2)で示される単位の繰り返しからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
−A−x−A−OCO(CHCOO− ...(1)
−A−x−A−COO(CHOCO− ...(2)
(式中、AおよびAは、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは、各々独立して直接結合、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。mは2〜20の整数を示す。)
【請求項6】
−A−x−A−が下記一般式(3)であることを特徴とする、請求項5に記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。
【化1】


(式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは2〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
【請求項7】
前記の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーのmが、4〜14の偶数から選ばれることを特徴とする、請求項5または6のいずれかに記載の高分子量化されたスメクチック液晶ポリマーの製造方法。


【公開番号】特開2012−172018(P2012−172018A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33658(P2011−33658)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】