説明

スライドバルブ装置及びその耐火物交換方法

【課題】本発明は、駆動装置を有する本体に設けた支持部材を介してスライドケースを回動させ、作業者を重筋作業から開放することを目的とする。
【解決手段】本発明によるスライドバルブ装置及びその耐火物交換方法は、スライドケース(4)がロッド(8)が駆動装置(9)に引き込まれた位置(P)の場合にヒンジ部(5)よりも該駆動装置(9)に対して離れた位置にある支持部材(15)を有し、スライドケース(4)を移動させることにより、スライドケース(4)が自重等により支持部材(15)に支持されながら回動することができるようにした構成及び方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドバルブ装置及びその耐火物交換方法に関し、特に、本体に設けたローラ等の支持部材を用い、駆動装置でスライドケースを送り出すことにより、スライドケースがこの支持部材に支持されながら回動し開放位置となり、スライドプレート等の耐火物(図示せず)の交換を容易に行うようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のスライドバルブ装置としては、溶融金属収納容器に取付けたスライドバルブ装置のスライドケースは、手動によって開閉するようにしていた。一方、特許文献1のようにスライドケースの駆動装置を利用してスライドケースを開閉するスライドバルブ装置も発明されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−206922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスライドバルブ装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の従来構成においては、スライドケースはヒンジを介して縦開きであり、その重量も30Kg以上あり、開く時には作業者にとっては重筋作業となり、取鍋及びタンディッシュ熱間再使用の場合は、高温の熱間作業となっていた。
また、このスライドケースは、重量があるため自重で下がるため、作業者の手が滑って手がスライドケースから離れたような場合には、急速に落下し、安全上、重大な問題となる可能性もあった。
一方、特許文献1のスライドケースの駆動装置を利用してスライドケースを開閉するスライドバルブ装置は、作動の安定性と鋳造中の安全性に問題がある。
特許文献1の開閉機構では、スライドケースのフレームに設けたコの字型の凹部にローラーを係合させてスライドケースの開閉を行うことになっている。この方式では確実に開閉させるために高い寸法精度が要求されるのに対し、スライドバルブ装置はその用法上、長期間溶鋼による加熱と冷却とを繰り返し受け続ける。そのため、膨張収縮による寸法変化を多数回繰り返すこととなり、その結果スライドバルブ装置の使用を続けるうちにアライメントが多少なりともずれる恐れがある。したがって特許文献1のスライドバルブ装置の使用初期には確実に開閉機構が作動したとしても、スライドバルブ装置の使用を続けるうちにアライメントのずれにより正常な作動が阻害される恐れがある。
また特許文献1の開閉機構では、スライドバルブ装置を溶鋼収納容器に取り付けて鋳造している最中に誤ってスライドケースを開放してしまう恐れがある。溶鋼収納容器に溶鋼を入れた状態でスライドバルブ装置のスライドケースを開放してしまうと収納容器の溶鋼が一気に流れ出し、事故になる恐れがある。特許文献1の詳細な説明の中には、駆動装置がスライドケースを開放する位置に動かなくする目的のストッパーについての記述もあるが、このストッパーの故障または操作ミスによる鋳造中の開放の恐れがある以上、上記の点は特許文献1の安全性に関する本質的な問題点といわざるを得ない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるスライドバルブ装置は、溶融金属容器の出鋼口に設けられ溶融金属の流量制御を行い、耐火物交換時には前記溶融金属容器を横転又は傾転させ、シールケースを開放し、スライドプレート耐火物を取付けたスライドケースをロッドを有する駆動装置の連結体に接続されたヒンジ部を介して回動自在としたスライドバルブ装置において、前記連結体が前記駆動装置に最接近して前記ロッドが引き込まれた位置で、前記ヒンジ部よりも前記駆動装置に対して離れた位置に支持部材を配置し、前記駆動装置により前記スライドケースを移動させ、前記ヒンジ部が前記駆動装置に対して離れた位置に移動することにより前記スライドケースが回動し、前記支持部材に支持されながら開放位置となり、前記スライドプレート耐火物の交換を行うようにした構成であり、また、前記スライドケースが開放位置に回動した場合、前記連結体とスライドケースの各中心線間のなす角度が150゜〜80゜となるような位置に前記支持部材が配設されている構成であり、また、前記支持部材は、前記スライドケースとの接触部が回転自在な部材よりなる構成であり、また、本発明によるスライドバルブ装置の耐火物交換方法は、溶融金属容器の出鋼口に設けられ溶融金属の流量制御を行い、耐火物交換時には前記溶融金属容器を横転又は傾転させ、シールケースを開放し、スライドプレート耐火物を取付けたスライドケースをロッドを有する駆動装置の連結体に接続されたヒンジ部を介して回動自在としたスライドバルブ装置を用い、前記連結体が前記駆動装置に最接近して前記ロッドが引き込まれた位置で、前記ヒンジ部よりも前記駆動装置に対して離れた位置に支持部材を配置し、前記駆動装置により前記スライドケースを移動させ、前記ヒンジ部が前記駆動装置に対して離れた位置に移動することにより前記スライドケースが回動し、前記支持部材に支持されながら開放位置となり、前記スライドプレート耐火物の交換を行う方法であり、また、前記スライドケースが開放位置に回動した場合、前記連結体とスライドケースの各中心線間のなす角度が150゜〜80゜となるような位置に前記支持部材を配設して用いる方法であり、また、前記支持部材は、前記スライドケースとの接触部が回転自在な部材を用いる方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるスライドバルブ装置及びその耐火物交換方法は、以上のように構成されていたため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、スライドバルブ装置の本体に設けられたローラ等の支持部材がロッドが駆動装置に引き込まれた位置では、ヒンジ部よりも駆動装置に対して離れた位置にあるので、駆動装置を作動させてロッドを押し出しヒンジ部を支持部材よりも駆動装置から離れるように移動させた場合(開放位置)には、スライドケースがこの支持部材に支持されながらその自重等によって回動して開放位置にくるため、従来のように、作業者が熱間重筋作業をする必要がなくなる。
また、スライドケースの回動を遠隔操作することも可能となり、耐火物交換作業時の安全性を大幅に向上させることが可能となった。
さらに、本発明の開閉機構では厳密な寸法精度を必要としないので、膨張収縮の繰り返しによるずれが生じたとしてもその作動に支障はない。
加えてシールケースを開放した後でないとスライドケースを開放できないので、スライドバルブ装置の使用中に誤ってスライドケースを開放してしまう恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、耐火物交換時のスライドバルブ装置非使用時に、溶鋼収納容器を横転または傾転させシールケースを開放した後において、駆動装置でスライドケースを送り出すことにより、スライドケースが回動しスライドバルブ装置本体に設けた支持部材に支持されて開放位置となり、スライドプレート等の耐火物の交換を容易に行えるようにし、かつ、長期間の使用にも耐え得る開閉機構を備え、また、スライドバルブ装置の使用中(即ち、鋳造中)に誤ってスライドケースを開放してしまう恐れのないスライドバルブ装置及びその耐火物交換方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0008】
以下、図面と共に本発明によるスライドバルブ装置及びその耐火物交換方法の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは取鍋又はタンディッシュ等の溶融金属を収容するための溶融金属容器であり、この溶融金属容器の出鋼口2の上ノズル3の下部には、開閉自在なスライドケース4がヒンジ部5を介して実線及び点線で示されるようにロッドが駆動装置に引き込まれた位置Pから開放位置Pまで往復回動できるように構成されたスライドバルブ装置6が取付けられている。
【0009】
前記スライドバルブ装置6の本体7は前記溶融金属容器1に固定されており、この本体7の一端側には、ロッド8を有する油圧又は電動シリンダ等よりなる直線往復型の駆動装置9が設けられている。
前記ロッド8は、本体7のガイド孔10内に摺動可能に設けられ前記スライドケース4にヒンジ部5を介して接続された連結体11に接続されている。
【0010】
前記駆動装置9を作動させてロッド8を出入させることにより、ヒンジ部5を介し、ロッド8が駆動装置9内に最大に入った状態では図5のAのようにスライドケース4は前記位置Pとなり、本体7に設けたローラ等のスライドケース4との接触部が回転自在な部材からなる支持部材15がヒンジ部5の上方位置となり、ロッド8が駆動装置9から最大に出た状態では、このスライドケース4が自重等によって回動し支持部材15に支持されながら開放位置Pとなる。すなわち、このスライドケース4は、前記連結体11とスライドケース4の各中心線O、O間のなす角度θが150゜〜80゜となるような位置に前記支持部材15が配設されている。
なお、前記支持部材15は、スライドケースが適切な開放位置に回動するようにスライドケースを支持できれば十分にその機能を果たせるので、膨張収縮の繰り返しによるずれが多少生じたとしても、開閉機構の作動に支障はない。
【0011】
また、図2及び図3は、前記スライドバルブ装置6を下からみた平面図及び図2の矢視Aと矢視Bを組合わせた断面構成図であり、スライドバルブ装置6のスライドケース4を固定するための面圧負荷部材30及びシールケース32が回動自在に設けられている。
【0012】
次に、スライドケース4を前記位置Pから開放位置Pに回動させる場合について説明する。
まず、駆動装置9の作動によって、前記位置Pに位置するスライドケース4を所定量移動させることにより、スライドケース4に取付けられているスライドプレート耐火物17を移動させ、図3の上プレート16の開口の開閉を行うことにより溶鋼の流量制御を行う。尚、図4は流量制御状態(使用状態)を示している。
【0013】
前述の状態で、所定使用回数又は時間が経過し、前記耐火物が消耗し交換を行う場合、溶融金属容器1を図5で示すように横転又は傾転させた後、面圧負荷部材30を解除し、シールケース32の開放を行った後、駆動装置9を作動させてスライドケース4を移動させることにより、ヒンジ部5が図1の移動量S分移動し、図5のA、Bに示されるように、ヒンジ部5の上方に支持部材15が位置して状態(A)からヒンジ部5が支持部材15よりも図の上方へ移動した状態(B)となると、この移動中において、スライドケース4は前記支持部材15に支持されながらその自重(30Kg以上となるものもある)によって図の左側へ回動し、スライドケース4は開放位置Pに到達する。尚、自重によらず、バネ等によって強制的に回動させることも可である。
【0014】
前述の状態で、スライドケース4に設けられている前記スライドプレート耐火物17を交換し、新しいスライドプレート耐火物17を装着した後に、前述の動作と逆に、駆動装置9を作動させてヒンジ部5を手前に戻すことにより、スライドケース4は本体7に装着された状態となる。
この状態で、前記シールケース32を閉じて面圧負荷部材30によって面圧を負荷し、その後溶融金属容器1を元の姿勢に戻すことによって再び使用可能状態となる。従って、前述のスライドプレート耐火物17の交換動作をまとめると、次の通りである。すなわち、溶融金属容器1の出鋼口2に設けられ溶融金属の流量制御を行い、耐火物交換時には前記溶融金属容器1を横転又は傾転させ、シールケース32を開放し、スライドプレート耐火物17を取付けたスライドケース4をロッド8を有する駆動装置9の連結体11に接続されたヒンジ部5を介して回動自在としたスライドバルブ装置6を用い、前記連結体11が前記駆動装置9に最接近して前記ロッド8が引き込まれた位置Pで、前記ヒンジ部5よりも前記駆動装置9に対して離れた位置に支持部材15を配置し、前記駆動装置9により前記スライドケース4を移動させ、前記ヒンジ部5が前記駆動装置9に対して離れた位置に移動することにより前記スライドケース4が自重等により回動し、前記支持部材15に支持されながら開放位置Pとなり、前記スライドプレート耐火物17の交換を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によるスライドバルブ装置は、溶融金属を収容する取鍋又はタンディッシュ等に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるスライドバルブ装置を示す構成図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2の矢視Aと矢視Bを組合わせた断面図である。
【図4】図1のスライドバルブ装置の流量制御状態(使用状態)を示す構成図である。
【図5】本発明のスライドバルブ装置の閉位置と開放位置を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 溶融金属容器
2 出鋼口
3 上ノズル
4 スライドケース
5 ヒンジ部
6 スライドバルブ装置
7 本体
8 ロッド
9 駆動装置
11 連結体
15 支持部材
16 上プレート
17 スライドプレート耐火物
18 下プレート
30 面圧負荷部材
32 シールケース
、O 中心線
位置
開放位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属容器(1)の出鋼口(2)に設けられ溶融金属の流量制御を行い、耐火物交換時には前記溶融金属容器(1)を横転又は傾転させ、シールケース(32)を開放し、スライドプレート耐火物(17)を取付けたスライドケース(4)をロッド(8)を有する駆動装置(9)の連結体(11)に接続されたヒンジ部(5)を介して回動自在としたスライドバルブ装置において、
前記連結体(11)が前記駆動装置(9)に最接近して前記ロッド(8)が引き込まれた位置(P1)で、前記ヒンジ部(5)よりも前記駆動装置(9)に対して離れた位置に支持部材(15)を配置し、
前記駆動装置(9)により前記スライドケース(4)を移動させ、前記ヒンジ部(5)が前記駆動装置(9)に対して離れた位置に移動することにより前記スライドケース(4)が回動し、前記支持部材(15)に支持されながら開放位置(P2)となり、前記スライドプレート耐火物の交換を行うことができるように構成したことを特徴とするスライドバルブ装置。
【請求項2】
前記スライドケース(4)が開放位置(P)に回動した場合、前記連結体(11)とスライドケース(4)の各中心線(0、O)間のなす角度(θ)が150゜〜80゜となるような位置に前記支持部材(15)が配設されていることを特徴とする請求項1記載のスライドバルブ装置。
【請求項3】
前記支持部材(15)は、前記スライドケース(4)との接触部が回転自在な部材よりなることを特徴とする請求項1又は2記載のスライドバルブ装置。
【請求項4】
溶融金属容器(1)の出鋼口(2)に設けられ溶融金属の流量制御を行い、耐火物交換時には前記溶融金属容器(1)を横転又は傾転させ、シールケース(32)を開放し、スライドプレート耐火物(17)を取付けたスライドケース(4)をロッド(8)を有する駆動装置(9)の連結体(11)に接続されたヒンジ部(5)を介して回動自在としたスライドバルブ装置を用い、
前記連結体(11)が前記駆動装置(9)に最接近して前記ロッド(8)が引き込まれた位置(P1)で、前記ヒンジ部(5)よりも前記駆動装置(9)に対して離れた位置に支持部材(15)を配置し、
前記駆動装置(9)により前記スライドケース(4)を移動させ、前記ヒンジ部(5)が前記駆動装置(9)に対して離れた位置に移動することにより前記スライドケース(4)が回動し前記支持部材(15)に支持されながら開放位置(P2)となり、前記スライドプレート耐火物の交換を行うことを特徴とするスライドバルブ装置の耐火物交換方法。
【請求項5】
前記スライドケース(4)が開放位置(P)に回動した場合、前記連結体(11)とスライドケース(4)の各中心線(0、O)間のなす角度(θ)が150゜〜80゜となるような位置に前記支持部材(15)を配設して用いることを特徴とする請求項4記載のスライドバルブ装置の耐火物交換方法。
【請求項6】
前記支持部材(15)は、前記スライドケース(4)との接触部が回転自在な部材を用いることを特徴とする請求項4又は5記載のスライドバルブ装置の耐火物交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−43718(P2006−43718A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225721(P2004−225721)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【Fターム(参考)】