説明

スライド処理装置ならびにその使用方法

スライドを処理するための装置(20)は、キャビティ(24a)を有したベース(21)を備えており、ヒータ(30)が、キャビティの1つの面上に設置されている。タンク(25)は、スライド処理溶液内にスライドが浸漬されているスライドラック(27)を支持するものであって、その1つの面をヒータに対して隣接させた状態で、キャビティ内に配置される。温度センサ(58)が、ベースに取り付けられていて、タンク内の液体の温度を表すフィードバック信号を提供するように機能する。カバー(22)は、タンクを閉塞し得るよう、ベースに対して着脱可能に取り付けられる。制御システム(50)は、ヒータと温度センサとに接続されていて、液体の設定温度とサイクル時間とを選択し得るように機能するユーザー入出力デバイスを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、スライド処理装置および方法に関するものであり、より詳細には、生物学的試料を付帯したスライドを、加熱された液体中で処理するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組織学的研究のための大多数の試料は、固定されたパラフィン包埋組織である。パラフィン包埋組織から採取された部分に対して、染色処理や、あるいは、試験や分析のための他の処理を施すに際しては、パラフィンを、その部分から除去しなければならない。パラフィンを除去するための初期の手法においては、パラフィンを除去するに際して、可燃性であり、揮発性であり、有毒であるような、有機溶媒を使用していた。例えば、キシレンを使用していた。しかしながら、より安全な、非有機系のパラフィン除去剤が、現在市販されている。さらに、引用文献1には、140℃〜250℃という沸点を有した無極性炭化水素と、極性有機溶媒と、界面活性剤と、からなるパラフィン除去溶媒が開示されている。不燃性かつ不揮発性の溶媒は、典型的には、およそ50〜57℃というパラフィンの融点にまであるいはそれ以上の温度にまで加熱することと関連して使用される。例えば、組織部分のパラフィン除去は、抵抗発熱部材を備えたオーブン内にあるいはマイクロ波オーブン内にあるいは圧力調理器内にあるいはスチーマー内にあるいはウォータバス内にあるいは他の加熱プラットホーム内に、組織を載せたスライドを配置することにより、行うことができる。
【0003】
パラフィン除去時においてもあるいはパラフィン除去後においても、ある種の免疫組織化学(IHC)手順を意図したような、ホルマリンおよび/または他の定着剤で処理された試料は、抗原(エピトープ)回収と称されるような、抗原サイトに対して露出させるための追加的な処理からの利益を享受する。ホルマリンは、組織抵抗物質を分解させるタンパク質を架橋することにより、効果的な定着剤である。しかしながら、架橋は、エピトープを遮蔽し得るものであって、IHC手順で使用される抗体試薬によるこれらサイトの認知を防止してしまう。よって、抗原回収プロセスの目的は、通常は半破壊的な方法によって、隠れたエピトープを露出させることである。
【0004】
抗原を露出させる初期の方法においては、組織部分を部分的に消化するようなタンパク質分解酵素を利用する。酵素による消化の場合の主要な欠点は、試料が、十分な抗原の回収のために必要とされる時間の関数として、変性してしまう傾向があるということである。それでも、マイルドな露出であると、組織のモルフォロジーを破壊したり、または、スライドから組織を損失させたり、することができ、一般に、抗体試薬との非特異的背景相互作用を増大させる。
【0005】
マイクロ波加熱が、固定された組織部分内において抗原を露出するに際し、酵素消化の代替となってきた、あるいは、補助となってきた。しかしながら、マイクロ波加熱は、理想的でない。マイクロ波オーブンの場合には、一般に、加熱隔室内の全体にわたって一様な加熱分布を得ることができない。そのため、いくつかのスライドが加熱不足となったり、他のスライドが加熱され過ぎとなったりする、というリスクが増大してしまう。マイクロ波加熱は、活発な沸騰をもたらす。これにより、スライドと接触している液体抗原回収試薬の蒸発をもたらす。そのため、典型的には、この方法では、スライドを保持している容器に対して処理溶液を途中で補充することにより、マイクロ波露出を何回にもわたって行う必要がある。また、マイクロ波加熱が、制御し難しものであることのために、処理時に組織を損傷させてしまったりおよび/または損失してしまったりすることがある。
【0006】
パラフィン除去と抗原回収と染色とを含む前処理プロトコルを実施するようないくつかの自動化装置が、市販されている。しかしながら、これら装置は、様々な染色操作や様々なIHC操作を同時に実行し得るものではあるけれども、パラフィン除去操作および/または抗原回収操作に関しては、他の操作と同時に行うことができない。BioGenex(San Ramon, CA )社によって製造販売されている“i1000(登録商標)”という自動化抗原回収システムは例外であって、パラフィン除去操作および抗原回収操作を同時に実行することができる。しかしながら、このシステムは、マイクロ波加熱を使用するものである。
【0007】
そのようなスライド処理装置は、多くの場合、良好に動作するものではあるけれども、それら装置は、いくつかの欠点を有している。例えば、公知のスライド処理装置は、ロボット部材および他の可動部材を備えている。そのため、購入コストが嵩むとともに、メンテナンスの必要性を増大させる。さらに、公知のスライド処理装置は、パラフィン除去溶液の沸騰を防止するようなまたは使用されている他の液体の沸騰を防止するような動作モードを備えていない。このため、沸騰によって溶液が枯渇したり、および/または、資料が損傷を受けたり、してしまう。加えて、公知のスライド処理装置においては、装置内における溶液の液面高さ位置を観測することができない。そのため、液面高さ位置がスライドよりも下方となってしまい、スライド処理プロセスに悪影響を与えてしまう。
【0008】
よって、コスト的に有利であるとともに、メンテナンスが容易であり、さらに、公知のスライド処理装置の欠点を克服し得るように能力が改良されているような、スライド処理装置が要望されている。
【特許文献1】米国特許第6,632,598号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの見地においては、本発明によるスライド処理モジュールは、互いに独立な2つ以上の制御可能な処理タンクを備えている。そのため、様々なスライド処理プロセスを、同時に実行することができる。他の見地においては、本発明によるスライド処理モジュールは、また、処理溶液の沸騰を防止することができる。これにより、使用される溶液の量を実質的に低減することができる。これにより、スライド処理プロセスに要するコストを低減させることができる。さらに他の見地においては、本発明によるスライド処理モジュールは、また、各処理タンク内の溶液の液面高さを連続的に観測することができ、溶液の液面高さが、プロセスに悪影響を与え得るところまで低下した場合には、ユーザーに警告することができる。本発明によるスライド処理モジュールは、免疫染色を行う前に、固定されたパラフィン包埋組織部分上におけるパラフィン除去と熱誘起エピトープ回収とを同時に実行するための前処理モジュールとして、特に効果的である。
【0010】
本発明の原理によれば、そして、説明する実施形態によれば、本発明は、スライドを処理するための装置を提供する。1つの実施形態においては、装置は、キャビティを有したベースと、キャビティの1つの面上にあるいは1つの面内に配置されたヒータと、を備えている。タンクは、スライド処理溶液内にスライドが含浸されているスライドラックを支持するものであって、その1つの面をヒータに対して隣接させた状態で、キャビティ内に配置される。温度センサが、ベースに取り付けられていて、タンク内の液体の温度を表すフィードバック信号を提供するように機能する。カバーは、タンクを閉塞し得るよう、ベースに対して着脱可能に取り付けられる。制御システムは、ヒータと温度センサとに接続されていて、液体の設定温度とサイクル時間とを選択し得るように機能するユーザー入出力デバイスを備えている。
【0011】
本発明の他の実施形態においては、装置は、複数のキャビティを備えており、各キャビティは、それぞれ対応するタンクを内部に受領することができる。各キャビティは、ヒータと温度センサとを有している。制御システムは、複数のヒータと複数の温度センサとに接続されていて、各タンク内における様々なスライド処理プロセスを互いに独立に制御することができる。
【0012】
本発明のさらなる実施形態においては、タンクは、液体液面高さセンサを有している。制御システムは、溶液の液面高さが低下したことを検出した際には、ユーザーに対して信号を送出することができる。さらに他の実施形態においては、制御システムは、スライド処理プロセスの開始時には、タンク上においてカバーを自動的にロックし、その後、液体が最終温度にまで冷却された際には、カバーのロックを自動的に解除する。
【0013】
本発明のさらなる実施形態においては、スライド処理方法が、予熱モードおよび/または沸騰無しモードを備えている。予熱モードにおいては、まず最初に、液体を開始温度にまで引き上げる。沸騰無しモードにおいては、スライド処理プロセス時に、液体の温度を、その液体の沸点よりもわずかに低い温度に維持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の上記のおよび他の目的や利点は、添付図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0015】
図1は、本発明の原理に基づくスライド処理モジュールの一実施形態を示す斜視図であって、カバーを閉じた状態で図示されている。
【0016】
図2は、図1のスライド処理モジュールを示す斜視図であって、カバーを開けた状態で、さらに、スライド処理モジュールの内部へと、複数のタンクおよび複数のスライドラックを導入した状態で、図示されている。
【0017】
図3は、図1のスライド処理モジュールを示す斜視図であって、カバーを開けた状態で、さらに、スライド処理モジュールの内部から、タンクおよびスライドラックを取り出した状態で、図示されている。
【0018】
図4は、図1における4−4線に沿ってスライド処理モジュールを示す矢視断面図である。
【0019】
図5は、図1における5−5線に沿ってスライド処理モジュールを示す長手方向の矢視断面図であって、カバー位置センサを図示している。
【0020】
図6は、図1のスライド処理モジュールを動作させるための制御システムを示す概略的なブロック図である。
【0021】
図7は、図1のスライド処理モジュールの動作サイクルを示す概略的なフロー図である。
【0022】
図1〜図3の実施形態に示すように、スライド処理モジュール20は、ベース21と、ヒンジ23を介してこのベースに対して取付可能とされた着脱可能なカバー22と、を備えている。ベース21は、2つのキャビティ24a,24bを備えている。これらキャビティ24a,24bは、それぞれ対応するタンク25a,25bを受領して支持し得るようなサイズとされている。これに代えて、ベース21は、3つ以上のキャビティ24を備えることができる。タンク25は、スライド処理溶液または液体29によって充填される。そして、この溶液内へと、複数のスライド28を保持しているスライドラック27が、浸漬される。カバー22は、シール41a,41bを備えている。これらシール41a,41bは、カバー22が閉じられて手動ラッチ39によってロックされた時には、それぞれ対応するタンク25a,25bを取り囲む。
【0023】
図3〜図5の実施形態に示すように、タンク25a,25bの各々は、タンクの両端に位置した端部壁のところに設置された支持ブロック44,45を備えている。各対をなす支持ブロック44,45は、それぞれ対応するタンク25a,25b内の溶液29の中で処理されるスライド28を保持しているスライドラック27の支持タブ40を受領する。タンク25a,25bの各々は、2つあるいはそれ以上のスライドラックを支持し得るように構成されている。スライドラックは、例えば、Lab Vision社(Fremont,CA)によって製造されたすべての染色機において使用し得るものとされる。よって、処理後には、スライドラック27は、さらなる取扱いを行う必要なく、染色機へと直接的に搬送することができる。キャビティ24a,24bの各々は、キャビティ24a,24bの1つまたは複数の表面上にあるいは表面内に、例えばキャビティ24a,24bの底面上にあるいは底面内に、それぞれ対応するヒータ30a,30bを備えている。各キャビティ24a,24bの端部壁には、冷却ファン31a,31bが設置されている。キャビティ24a,24bの各々は、それぞれ対応する排液管32a,32bと、それぞれ対応する通風口33a,33bと、を備えている。ベース絶縁体34が、3つの面上においてキャビティ24a,24bを取り囲んでいる。カバー22が閉じられた際には、カバー絶縁体35が、キャビティ24の上方に配置される。支持ブロック44,45の各々は、内部に設置された液面高さ検出ネジ46,47を備えている。液面高さ検出ネジ46,47は、それぞれ対応するタンク25a,25bの内方へと、下向きに延出されている。
【0024】
図4〜図6に示す実施形態においては、制御システム50は、ベース21に設置された電源モジュール52と、カバー22に設置された制御モジュール37と、を備えている。制御モジュール37は、コントローラ54と、ユーザーに対しての入出力デバイスをなすタッチスクリーン38と、を備えている。タッチスクリーン38およびコントローラ54は、互いに協働することにより、ユーザーに対して、一連をなす複数のスクリーンを提供するように機能する。これらスクリーンにより、ユーザーは、各タンク25a,25bに関する溶液の設定温度と、各タンク25a,25bにおけるスライド処理プロセスに関するサイクル時間と、をコントローラ54内に入力して格納することができる。他の実施形態においては、それらスクリーンにより、ユーザーは、各タンク25a,25bのそれぞれに関し、予熱サイクルおよび/または沸騰無しモードを許可するかあるいは禁止するかを、コントローラ54内に入力して格納することができる。電源モジュール52と、プログラム可能なコントローラ54と、タッチスクリーン38とは、データバス56を介して、互いに動作可能に接続される。
【0025】
コントローラ54の動作により、さらに、各タンク25a,25bの両端に配置された一対をなす検出ネジ46,47の間の導通性を検出することによって、タンク内の溶液の液面高さを検出することができる。溶液が沸騰して蒸発し、そして、ネジ46,47の底端の高さ位置よりも下方へと液面が下がった場合には、ネジ46,47の間の導通性は、失われる。その際、コントローラ54は、タッチスクリーン38上においてエラー表示を行う、および/または、可聴アラームを鳴らす。さらに、カバーが閉じられている状態で液面の高さが低いことをコントローラ54が確認した場合には、エラー表示が行われる。そして、スライド処理サイクルの実行が、禁止される。キャビティ25a,25bは、さらに、それぞれ対応する温度センサ58a,58bを備えている。温度センサ58a,58bにより、コントローラ54は、各キャビティ内における溶液の温度を検出することができる。コントローラ54は、さらに、図5および図6に示すカバー位置センサ64の状態を観測することによって、カバーがいつ開閉されたかを検出することができる。例えば、カバーが閉じられる際には、カバー22上のタブ65(図3)が、ベース21に配置されたカバー位置センサ64を駆動する。カバー位置センサ64は、例えば、リミットスイッチとされる。加えて、カバーが閉じられたことをコントローラ54が確認した時には、コントローラ54は、カバー22上のカバーロックソレノイド66(図3および図6)を駆動し、これにより、ピン67を、ベース21の穴68内へと挿通させる。これにより、ユーザーによってカバー22が開けられることを防止する。
【0026】
使用時には、ユーザーは、まず最初に、タンク25bをキャビティ24b内に挿入する。タンク25bは、ヒータ30b上にあるいはヒータ30bの近傍に配置される。ユーザーは、その後、タンク25bを、所望のバッファ溶液またはスライド処理溶液によって充填する。この時、溶液の液面が、液面高さ位置検出ネジ46,47の底端よりも上方にあるものとする。次に、複数のスライド28を保持している1つまたは複数のスライドラック27を、溶液が充填されているタンク25b内へと配置し、これにより、複数のスライドを、溶液内へと浸漬させる。代替可能なプロセスにおいては、タンク25bを配置する前に、タンクを、所望のスライド処理溶液によって充填することができ、タンクの内部にスライドを配置することができる。その後、カバー22を閉じて、手動ラッチ39によってロックする。カバー22を閉じた際には、スプリングコンタクト42が、液面高さ位置検出ネジ46,47の上部48を押圧する。これにより、液面高さ位置検出ネジ46,47間の電気的導通性が、コントローラ54に対して提供される。
【0027】
ユーザーは、その後、タッチスクリーン38を利用することにより、各タンク25a,25b内のスライド処理プロセスに関する設定温度とサイクル時間とを入力することができ、付加的には、各タンク25a,25bに関する予熱モードおよび/または沸騰無しモードを可能とすることができる。与えられた任意のスライド処理サイクルに関し、タンク25a,25bの動作は、互いに実質的に同一である。したがって、以下においては、タンク25bに関するスライド処理サイクルについてのみ、説明することとする。
【0028】
図7の実施形態に示すように、タッチスクリーン38を介してユーザーから実行命令を受領することによって予熱モードが禁止された場合には、コントローラ54は、まず最初に、カバーセンサ64の状態を観測する。カバー22が閉じられていないならば、コントローラ54は、サイクルを停止させて、タッチスクリーン38上にエラー表示を行う。カバー22が閉じられているならば、コントローラ54は、カバーロックソレノイド66を駆動して、ベース21上へとカバー22をロックする。これにより、スライド処理サイクル時にユーザーがカバーを開けてしまうことを防止する。次に、コントローラ54は、電源モジュール52に対してバス56を介して命令を伝達し、ヒータ30bを起動させる。同時に、電源モジュール52は、温度センサ58bを観測し、コントローラ54に対して、タンク25b内の溶液の温度を表すフィードバック信号を提供する。コントローラ54は、電源モジュール52に対して命令を出すことによって、ウォームアップモードを開始する。すなわち、ヒータ30bを、公知の態様によって、例えばPIDループを使用したような態様によって、動作させる。この加熱操作は、温度センサ58bが、ユーザーによって入力された設定温度と溶液温度とが互いに実質的に同じ温度となったことを検出するまで、行う。その時点で、コントローラ54は、内蔵タイマー60を起動させ、スライド処理サイクルの時間を計り始める。そして、コントローラ54は、ヒータ30bの動作を継続させ、これにより、溶液を設定温度に維持する。タイマー60によって、スライド処理サイクルの経過時間が、ユーザーによって入力されたサイクル時間と実質的に一致したことを、コントローラ54が確認した時点で、コントローラ54は、電源モジュール52に対して命令を出すことにより、ヒータ30bを停止させるとともに、冷却ファン31bを起動させる。コントローラ54は、第1温度センサ58bの観測を継続する。この観測は、第1温度センサ58bが、コントローラ54によって予設定された例えば60℃といったような最終温度となったことを検出するまで、行う。その時点で、コントローラ54は、カバーロックソレノイド66の駆動を停止させる。これにより、ユーザーが手動ラッチ39を利用してカバー22を開けることを、可能とする。
【0029】
ユーザーからの実行命令によってユーザーが予熱モードを可能とした場合には、コントローラ54は、電源モジュール52に対して命令を出して、ヒータ30bを起動させる。ヒータの動作は、タンク25b内の溶液温度が例えば60℃といったような開始温度となったことをコントローラが検出するまで、行う。その後、コントローラ54は、カバーロックソレノイド66を起動し、スライド処理サイクルを、上述のようにして行う。
【0030】
図7に示す実施形態においては、設定操作時には、ユーザーは、タッチスクリーン38を使用することにより、ウォームアップサイクル時に沸騰無し機能を実行することを、選択することができる。沸騰無しモードが選択された場合には、ユーザーは、さらに、設定温度として、例えば112℃といったような、溶液の沸点以上であることが既知である温度を、または、プログラム可能な最大温度を、入力する。動作としては、ウォームアップモードにおいては、コントローラ54は、温度センサ58を観測する。溶液温度がおよそ90℃となったことを検出した時点で、コントローラ54は、温度上昇速度(dT/dt)を観測することによって、沸騰無し機能を実行する。温度上昇速度は、一対をなす平均化フィルタによって、すなわち、比較的短い時定数(τ1)を有した第1フィルタ61(図6)と、比較的長い時定数(τ2)を有した第2フィルタ62と、によって、複数のセンサ読取値をすなわち複数のサンプル値を平滑化することにより、検出される。電力入力が一定であれば、2つのフィルタからの出力の差は、流体温度が沸点よりも十分に低い場合には、実質的に一定である。しかしながら、沸点に近づくにつれて、2つのフィルタからの出力が収束し始める。沸点に到達した時点では、溶液の温度上昇は、停止する。この時、2つのフィルタの出力は、実質的に同じとなる。この定常状態に到達する直前に、フィルタ間の出力の差は、所定の収束しきい値にまで低減する。理論的な収束しきい値は、以下の式に示すようにして、2つのフィルタ時定数に対して関連している。
(Tthres) < k×(dT/dt)×(τ2−τ1);ここで、0<k<1
【0031】
よって、このシステム構成においては、kに関して、2つのフィルタの時定数に関して、収束しきい値温度に関して、および、設定温度の低減化に関して、初期設定値を選択しておく必要がある。様々な初期設定値に関する最適の組は、タンクの容積と、印加される電力と、溶液およびスライドによって決まる熱負荷と、に依存することとなる。適切であれば、様々な変数は、多くの場合、実験的に決定される。およそ350ワットという印加電力であって、なおかつ、タンクの流体容量が1.5リットルである場合には、温度の変化速度dT/dtは、およそ0.04℃/秒と決定される。例えばk=0.31といったような、定数kに関しての1つの値は、一方においては十分に高い流体温度と、他方においては、より少ない蒸気発生と、より短い収束時間と、偽のセンサ読取値に対する耐性と、の間にわたっての構成的妥協の結果である。上記妥協を満たし得ると経験的に予想される他の初期設定値は、Tthres =0.5℃、τ2=50秒、τ1=10秒である。しかしながら、理解されるように、τ1は、およそ5〜10秒とすることができ、τ2は、およそ25〜50秒とすることができる。しかしながら、それら変数に対して他の値を使用することもできる。
【0032】
コントローラ54は、収束しきい値温度を観測する。これにより、溶液がいつ沸点に到達したかを決定することができる。1つの実施形態においては、Tthres =1.0℃という収束しきい値温度を検出した際には、コントローラ54は、プログラムされた設定温度を、サイクルの残りに関して維持される新たなより低い設定温度へと、低減する。新たなより低い設定温度は、短い時定数のフィルタの出力温度をおよそ1.0℃だけ低減することによって、計算される。新たな、より低い設定温度は、タッチスクリーン38上に表示されない。その後、コントローラ54が、Tthres =0.5℃という収束しきい値温度を検出した際には、コントローラ54は、タッチスクリーン38上において『沸騰(BOIL)』表示を行う。その場合には、コントローラ54は、ヒータ30bを動作させ、これにより、タンク25b内の溶液を、新たなより低い設定温度に維持する。以降の処理サイクルは、沸点以下において行われる。これにより、試料を、処理液体内において、保温状態に維持することができる。
【0033】
理解されるように、上記システムは、他の多くの異なる手法で実施することができる。例えば、設定手順では、ユーザーが沸騰無しモードを選択した際には、コントローラ54は、初期設定温度を、例えば112℃といったようなプログラム可能な最大設定温度へと、自動的に設定することができる。これにより、沸騰無しモードのプログラミングを単純化することができる。さらに、いくつかの実施形態においては、収束しきい値温度は、ゼロよりも大きな任意の値にセットすることができ、これにより、液体温度を、沸点以下に維持しようとすることができる。他の実施形態においては、収束しきい値温度は、ゼロにセットすることができ、これにより、液体温度を、沸点に到達させることができる。すべてのそのような実施形態は、初期的にプログラムされた設定温度が沸点を超えている場合には、液体を、沸点にまであるいは沸点をわずかに下回る温度にまで、自動的に加熱し、その後、液体を、沸点よりも低温の保温温度に維持するような、システムを提供する。保温は、沸騰とは対照的に、組織損傷および/または組織損失というリスクを大幅に低減し、処理溶液の急速な蒸発を防止する。このため、処理に際して、より少ない溶液量で済む。沸騰無しモードにおいては、ユーザーが沸点を知っている必要がない。よって、モジュール20の動作を、公知の装置と比較して、より単純化することができる。
【0034】
コントローラ54は、また、スライド処理モジュール20のタンク25b内における動作サイクルをユーザーが中断させたりあるいは一時停止させたりすることを、許容する。ユーザーがタッチスクリーン38を介して中断命令を入力した際には、コントローラ54は、ヒータ30bを停止し、動作中であればカウントダウンタイマー60を停止し、カバー22のロックを解除する。このような一時停止により、処理サイクル実施形態であっても、ユーザーは、スライドに対してアクセスすることができる。沸騰無しモードの場合に一時停止命令によってヒータを停止させた際に、液体温度が90℃を超えているときには、沸騰無しアルゴリズムの上記操作が中断される。さらに、動作の一時停止の長さは、2つのフィルタによって提供される液体温度の移動平均値に影響を与える。一時停止後に2つのフィルタからの出力値を安定させ得るよう、コントローラ54は、液体温度が90℃を超えることを必要とする。そのため、コントローラは、収束しきい値温度を検出するために2つのフィルタの出力を再度観測する前に、所定時間にわたって、ヒータを再駆動する。電源が再供給された後に2つのフィルタが有効な軌跡を確立し得るような最小の時間が適切である。例えば、最小の時間は、長い方の時定数τ2と実質的に同じとすることができる。
【0035】
よって、スライド処理モジュール20は、様々な自動化スライド処理サイクルを提供する。これにより、広範囲にわたるスライド処理応用を提供することができる。自動化操作は、より少ない試行回数およびより少ないエラーでもって、より一定した繰返し可能なプロセスを、容易にもたらす。これにより、熟練していないユーザーであっても、モジュールを操作することができる。互いに独立とされた2つ以上の制御可能なタンク25a,25bを備えていることにより、スライド処理モジュール20においては、互いに異なる2つ以上のスライド処理プロセスを同時に実行することができる。これにより、モジュールのスループットを増大させることができる。さらに、沸騰無しモードは、沸騰による溶液の消費を防止する。これにより、使用される溶液の量を減らすことができる。これにより、スライド処理プロセスのコストを低減することができる。スライド処理モジュール20は、また、各処理タンクのそれぞれの溶液液面高さを連続的に観測する。そして、溶液の液面高さがプロセスに悪影響を与え得るレベルに落ちた場合には、ユーザーに対して警告を発する。
【0036】
スライド処理モジュール20は、免疫染色を行う前に、固定されたパラフィン包埋組織部分上におけるパラフィン除去と熱誘起エピトープ回収とを同時に実行するための前処理モジュールとして使用し得るけれども、溶液内における加熱を使用した他の用途における使用を想定することもできる。
【0037】
本発明についていくつかの実施形態を参照して図示して説明したけれども、また、それら実施形態に関してかなりの細部にわたって説明したけれども、特許請求の範囲は、それら細部には何ら限定されるものではない。当業者には、さらなる利点およびさらなる修正が、自明であろう。例えば、例示として説明した実施形態においては、沸騰無しモードでは、新たなより低い設定温度は、より短い時定数のフィルタの出力温度から決定される。代替可能な実施形態においては、新たなより低い設定温度は、収束しきい値の所定値に応じた一定の温度インクリメント値の分だけ温度センサの読取値を低減することによって、決定することができる。さらに代替可能な実施形態においては、設定(セットアップ)操作時に、コントローラ54が、ユーザーに対して、例えば0.5℃や1.0℃や1.5℃や2.0℃といったような温度低減の選択肢を、あるいはより多くの選択肢を、提供する。そして、ユーザーによって選択された温度低減値を使用することにより、新たなより低い設定温度を計算することができる。
【0038】
上記において説明した様々な実施形態においては、ユーザーは、タッチスクリーン38を操作することにより、タンク25a,25bのそれぞれに対して、単一の設定温度および単一のサイクル時間を入力する。しかしながら、スライド処理モジュール20の他の用途および実施形態においては、コントローラ54をプログラミングすることにより、複数の設定時間に関して複数の設定温度を使用したスライド処理プロセスを実行することができる。さらに、それら複数の設定温度および複数の設定時間は、タッチスクリーン38を使用して、ユーザーによって選択可能なものとすることができる。加えて、コントローラ54は、加熱時の温度上昇速度を、および、冷却時の温度降下速度を、制御することができる。コントローラ54は、さらに、リアルタイムで処理条件を取得することができる。これにより、リアルタイムの処理条件をタッチスクリーン38上に表示することができる、あるいは、その後の品質管理分析を行うことができる、あるいは、他の処理を行うことができる。
【0039】
説明した上記様々な実施形態においては、データバス56は、電源モジュール52と、コントローラ54と、タッチスクリーン38と、の間にわたっての通信を提供する。しかしながら、代替可能な実施形態においては、データバス56は、ローカルエリアネットワークや、ワイドエリアネットワークや、あるいは、インターネットに対して、接続することができる。これにより、スライド処理モジュール20の動作を、遠隔場所から観測することができる。これにより、遠隔場所であっても、リアルタイムでの処理条件を取得して格納することができる。これにより、品質管理分析を行ったり、および/または、処理対象となっている材料の履歴の一部として格納したり、することができる。加えて、そのようなネットワーク接続により、また、スライド処理モジュール20を、遠隔場所からでも、プログラムすることができる。
【0040】
説明した実施形態においては、コントローラ54は、例えば液面高さが低いといったようなエラー状況を検出した場合には、そのエラー状況をタッチスクリーン38上に表示する。他の実施形態においては、エラー状況を、ユーザーに対して、光や、音や、あるいは他の感覚的に認識可能な警報やインジケータによって、信号として送出することができる。
【0041】
さらに、説明した実施形態においては、カバー22は、ユーザーが沸騰した液体に曝されることを防止するとともに、わずかに圧力変化を付与することによってより高い温度を可能とし、さらに、絶縁体として機能することによってより正確な温度制御をもたらす。しかしながら、代替可能な実施形態においては、それほど正確でない温度制御が許容可能とされた用途であれば、カバー22を、モジュール20において省略することができる。
【0042】
説明した実施形態においては、温度センサ58は、キャビティ24の底壁に設置される。代替可能な実施形態においては、溶液温度を、例えば温度プローブを溶液内に浸漬することといったような手法によって、直接的に検出することができる。あるいは、例えば赤外線センサまたは他の遠隔的温度測定デバイスといったような手法によって、間接的に検出することができる。
【0043】
したがって、本発明は、本発明の最も広い見地においては、図示されて上述されたような細部にまで限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲から逸脱することなく、それら細部を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の原理に基づくスライド処理モジュールの一実施形態を示す斜視図であって、カバーを閉じた状態で図示されている。
【図2】図1のスライド処理モジュールを示す斜視図であって、カバーを開けた状態で、さらに、スライド処理モジュールの内部へと、複数のタンクおよび複数のスライドラックを導入した状態で、図示されている。
【図3】図1のスライド処理モジュールを示す斜視図であって、カバーを開けた状態で、さらに、スライド処理モジュールの内部から、タンクおよびスライドラックを取り出した状態で、図示されている。
【図4】図1における4−4線に沿ってスライド処理モジュールを示す矢視断面図である。
【図5】図1における5−5線に沿ってスライド処理モジュールを示す長手方向の矢視断面図であって、カバー位置センサを図示している。
【図6】図1のスライド処理モジュールを動作させるための制御システムを示す概略的なブロック図である。
【図7】図1のスライド処理モジュールの動作サイクルを示す概略的なフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
20 スライド処理モジュール
21 ベース
22 カバー
24a キャビティ
24b キャビティ
25a タンク
25b タンク
27 スライドラック
28 スライド
29 液体
37 制御モジュール
38 タッチスクリーン
50 制御システム
52 電源モジュール
54 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドラック内のスライドを処理するための装置であって、
底面を有したキャビティを備えて構成されたベースと;
前記キャビティの前記底面に配置されたヒータと;
前記キャビティ内へと着脱可能に配置され得るものとされたタンクであるとともに、前記キャビティ内に配置された際には前記ヒータに対して隣接配置されるタンク面を備え、さらに、液体を受領し得るよう構成され、さらに、前記液体内にスライドが浸漬されているスライドラックを受領し得るよう構成された、タンクと;
前記ベースに取り付けられていて、前記タンク内の前記液体の温度を表すフィードバック信号を提供するように動作する、温度センサと;
前記ベースに対して着脱可能に取り付けられ得るものとされ、前記ベースに対して取り付けられた際には前記タンクを閉塞するカバーと;
前記ヒータおよび前記温度センサに対して電気的に接続されているとともに、液体の設定温度およびサイクル時間を選択し得るように機能するユーザー入出力デバイスを備えている、制御システムと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記カバーが、前記制御システムによって、前記ベースに対して自動的にロックされ得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
さらに、前記タンク内に設置されていて、前記タンク内における前記液体の液面高さを検出するよう機能する液体液面高さセンサを具備していることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記ヒータが、抵抗ヒータを備えていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
前記ヒータが、シリコーンによって支持された抵抗ヒータを備えていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、
前記制御システムが、
前記ヒータおよび前記温度センサに対して接続された電源モジュールと;
この電源モジュールおよび前記ユーザー入出力デバイスに対して接続されたプログラム可能なコントローラと;
を備えていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1記載の装置において、
前記制御システムが、前記電源モジュールと前記プログラム可能なコントローラと前記ユーザー入出力デバイスとに対して電気通信可能なものとされたデータリンクを備えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
複数のスライドラック内のスライドを処理するための装置であって、
複数のキャビティを備えたベースと;
それぞれ対応するキャビティの一表面に対して各々が隣接配置された複数のヒータと;
それぞれ対応する前記キャビティ内へと各々が着脱可能に配置され得るものとされた複数のタンクであるとともに、それぞれ対応する前記キャビティ内に配置された際にはそれぞれ対応する前記ヒータに対して隣接配置されるタンク面を各々が備え、さらに、それぞれ対応する液体を受領し得るよう各々が構成され、さらに、前記液体内にスライドが浸漬されているそれぞれ対応するスライドラックを各々が受領し得るよう構成された、複数のタンクと;
各々が前記ベースに取り付けられていて、それぞれ対応する前記タンク内のそれぞれ対応する前記液体の温度を表すフィードバック信号を提供するように動作する、複数の温度センサと;
前記ベースに対して着脱可能に取り付けられ得るものとされ、前記ベースに対して取り付けられた際には前記複数のタンクを閉塞するカバーと;
前記複数のヒータおよび前記複数の温度センサに対して電気的に接続されているとともに、各タンクに対して液体の設定温度およびサイクル時間を選択し得るように機能するユーザー入出力デバイスを備えている、制御システムと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
さらに、各々が、それぞれ対応する前記タンク内に設置されていて、それぞれ対応する前記タンク内におけるそれぞれ対応する前記液体の液面高さを検出するよう機能する複数の液体液面高さセンサを具備していることを特徴とする装置。
【請求項10】
スライドラック内のスライドを処理するための装置であって、
内部にキャビティを備えて構成されたベースと;
前記キャビティの1つの面に隣接して配置されたヒータと;
前記キャビティ内へと着脱可能に配置され得るものとされたタンクであるとともに、前記キャビティ内に配置された際には前記ヒータに対して隣接配置されるタンク面を備え、さらに、液体を受領し得るよう構成され、さらに、前記液体内にスライドが浸漬されているスライドラックを受領し得るよう構成された、タンクと;
前記ベースに取り付けられていて、前記タンク内の前記液体の温度を表すフィードバック信号を提供するように動作する、温度センサと;
前記ヒータおよび前記温度センサに対して電気的に接続されているとともに、前記液体を加熱しさらに液体温度が液体の沸点に到達したことを判定しさらに所定時間にわたって前記沸点以下に液体温度を維持するという動作モードを選択し得るように機能するユーザー入出力デバイスを備えている、制御システムと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
さらに、前記ベースに対して着脱可能に取り付けられ得るものとされ、前記ベースに対して取り付けられた際には前記タンクを閉塞するカバーを具備していることを特徴とする装置。
【請求項12】
スライドラック内のスライドを処理するための装置であって、
内部にキャビティを備えて構成されたベースと;
前記キャビティの1つの面に隣接して配置されたヒータと;
前記キャビティ内へと着脱可能に配置され得るものとされたタンクであるとともに、前記キャビティ内に配置された際には前記ヒータに対して隣接配置されるタンク面を備え、さらに、液体を受領し得るよう構成され、さらに、前記液体内にスライドが浸漬されているスライドラックを受領し得るよう構成された、タンクと;
前記ベースに取り付けられていて、前記タンク内の前記液体の温度を表すフィードバック信号を提供するように動作する、温度センサと;
前記ヒータおよび前記温度センサに対して電気的に接続された制御システムと;
を具備し、
前記制御システムが、
前記液体の加熱に関する動作モードを選択し得るように機能するユーザー入出力デバイスと、
液体温度に関する複数のデータに基づき第1平均温度値を生成するための、より長い時定数を有したフィルタと、
液体温度に関する複数のデータに基づき第2平均温度値を生成するための、より短い時定数を有したフィルタと、
を備え、
前記制御システムは、前記第1平均温度値と前記第2平均温度値との間の差が所定値となった際には、液体温度が液体の沸点に到達したものと判定することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記ユーザー入出力デバイスが、前記液体の沸点を上回る設定温度を提供し得るよう機能することを特徴とする装置。
【請求項14】
複数のスライドラック内のスライドを処理するための装置であって、
複数のキャビティを備えて構成されたベースと;
それぞれ対応する前記キャビティの1つの面に隣接して各々が配置された複数のヒータと;
各々がそれぞれ対応する前記キャビティ内へと着脱可能に配置され得るものとされた複数のタンクであるとともに、それぞれ対応する前記キャビティ内に配置された際にはそれぞれ対応する前記ヒータに対して隣接配置されるタンク面を各々が備え、さらに、それぞれ対応する液体を各々が受領し得るよう構成され、さらに、それぞれ対応する前記液体内にスライドが浸漬されているそれぞれ対応するスライドラックを各々が受領し得るよう構成された、複数のタンクと;
前記ベースに取り付けられていて、それぞれ対応する前記タンク内のそれぞれ対応する前記液体の温度を表すフィードバック信号を各々が提供するように動作する、複数の温度センサと;
前記複数のヒータおよび前記複数の温度センサに対して電気的に接続されているとともに、各タンクのそれぞれに関して前記液体を加熱しさらに液体温度が液体の沸点に到達したことを判定しさらに所定時間にわたって前記沸点以下に液体温度を維持するという動作モードを選択し得るように機能するユーザー入出力デバイスを備えている、制御システムと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置において、
さらに、前記ベースに対して着脱可能に取り付けられ得るものとされ、前記ベースに対して取り付けられた際には前記タンクを閉塞するカバーを具備していることを特徴とする装置。
【請求項16】
スライドを処理するための方法であって、
液体を保持するための、および、前記液体内にスライドが浸漬されているスライドラックを保持するための、タンクを準備し;
このタンク内において前記液体を加熱し;
前記液体の沸点を自動的に検出し;
その後、所定時間にわたって、前記タンク内における前記液体の温度をその沸点以下に自動的に維持する;
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、
前記液体の沸点を自動的に検出するに際しては、
所定時間にわたって、液体温度に関する複数のデータを収集し;
液体温度に関する前記複数のデータを、より長い時定数を有したフィルタによってフィルタリングすることにより、第1平均温度値を生成し;
液体温度に関する前記複数のデータを、より短い時定数を有したフィルタによってフィルタリングすることにより、第2平均温度値を生成し;
前記第1平均温度値と前記第2平均温度値との間の差が所定値となったことを検出する;
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、
前記沸点を上回る初期設定温度を提供することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、
前記差が前記所定値となったことを検出した時点で、前記初期設定温度よりも低い温度を、なおかつ、前記沸点よりも低い温度を、新たな設定温度として確立することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法において、
前記所定値を、0.5℃とすることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17記載の方法において、
さらに、
前記第1平均温度値と前記第2平均温度値との間の第2の差が、第2所定値となったことを検出し;
この第2所定値となったことを検出した時点で、前記初期設定温度よりも低い温度を、なおかつ、前記沸点よりも低い温度を、新たな設定温度として確立することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、
前記第2所定値を、1℃とすることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、
新たな設定温度の確立に際しては、温度インクリメント値の分だけ、前記第2平均温度値を低減することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、
前記温度インクリメント値を、1℃とすることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、
前記温度インクリメント値を、ユーザーによって選択可能な温度値とすることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22記載の方法において、
新たな設定温度の確立に際しては、
前記タンク内における前記液体の温度を検出し;
前記タンク内において検出された液体温度値を、温度インクリメント値の分だけ低減する;
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項16記載の方法において、
さらに、
ユーザーによって実行命令が出された際には、前記タンク上においてカバーを自動的にロックし;
ユーザーが指定したサイクル時間の終了時には、前記カバーのロックを自動的に解除する;
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
スライドを処理するための方法であって、
それぞれ対応する液体を各々が保持するための、および、それぞれ対応する前記液体内にスライドが浸漬されているそれぞれ対応するスライドラックを各々が保持するための、複数のタンクを準備し;
これら複数のタンク内において前記各液体を加熱し;
前記複数のタンクの各々に関して液体の沸点を自動的に検出し;
その後、それぞれ対応する所定時間にわたって、前記複数のタンクの各々内における前記液体の温度を沸点以下に自動的に維持する;
ことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法において、
さらに、
ユーザーによって実行命令が出された際には、前記複数のタンク上においてカバーを自動的にロックし;
ユーザーが指定したサイクル時間の終了時には、前記カバーのロックを自動的に解除する;
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28記載の方法において、
さらに、
前記複数のタンク内においてそれぞれの液面高さを検出し;
前記複数のタンクのうちのいずれかにおいて、液面高さが低減したことを検出した際には、ユーザーが認識可能な警報を発する;
ことを特徴とする方法。
【請求項31】
スライドを処理するための方法であって、
液体を保持しておりさらに前記液体内にスライドが浸漬されているスライドラックを保持しているタンクを支持するためのキャビティを備えて構成されたベースを準備し;
所望の液体温度を表している設定温度と、所望の処理サイクル時間を表しているサイクル時間と、実行命令と、を格納するようにして、制御システムを機能させ;
前記タンクをカバーするようにして前記ベース上にカバーをロックし;
前記タンク内において液体の温度を検出し;
前記実行命令が出された際には、前記制御システムによって、ヒータを駆動させ、液体温度を上昇させて、液体温度を前記設定温度とし、さらにその後、前記サイクル時間にわたって液体温度を前記設定温度に維持し;
前記設定温度よりも低い最終温度にまで前記液体を冷却し;
液体温度が前記最終温度となった時点で、カバーのロックを解除する;
ことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、
さらに、液体が沸騰しないように、前記ヒータの駆動を自動的に制御することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31記載の方法において、
前記制御システムとの間にわたってデータの転送を行うことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−522192(P2008−522192A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544431(P2007−544431)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/043105
【国際公開番号】WO2006/060379
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507181844)エルエービー・ビジョン・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】