説明

スライド式吸着接合板およびウエブ加工機

【課題】簡易な構造により機材を作業場に散乱させることなく作業性を向上させ、均一な吸着力でウエブを確実に固定、保持可能とし、作業時の必要に応じて使用でき不要時は収納でき、他の作業の邪魔になることがない、スライド式吸着接合板等を提供する。
【解決手段】両端が閉じられ内部が中空なパイプ状体であって外面長手方向平坦面に少なくとも1つの内部貫通しない直線状のスリットと複数の内部貫通する吸着孔とが形成された接合板本体と、当該パイプ状体の一端部に吸着ポンプと接続される排気手段と、当該接合板本体を先端部で支持し少なくとも一方向に摺動可能な摺動機構を備えるスライドガイドからなることを特徴とするスライド式吸着接合板などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として包装用ないし製袋用の長尺なフィルム状素材などのウエブの分野に係り、特にこの様なウエブの切断や繋ぎ合わせに用いられる接合板およびその接合板を用いたウエブ加工機を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
印刷機、コーター、貼り合せ装置、スリッター装置、巻替装置などで代表される巻き出しロールから巻き取りロールへ紙、フィルムなどの各種長尺であるウエブを順次送るウエブ加工機において、ウエブの不良部分等を切断してその前後のウエブ端部同士を繋ぎ合せる、または加工作業中のウエブの端部と新しい原反ロールから巻出したウエブの端部とを繋ぎ合わせる、繋ぎ作業が行われている。繋ぎ方としては、一方のウエブの後端と他方のウエブの先端とを、ウエブの絵柄等を合わせた状態でつきあわせ、その両面に繋ぎテープ(通常、片面に粘着材層を備えたテープ)を貼るものが多く、作業者が定規、カッター、仮止めテープ、繋ぎテープ等を用いて手作業で以下の手順で行っていた。
【0003】
1.巻き出しロール上でウエブの端部近傍を定規を用いて横一直線に切断し、繋ぎ用の端縁を形成する。なお、不良部分がある場合には、その不良部分を切断除去する。
【0004】
2.一方のウエブの端部の上に他方のウエブの端部を重ね、絵柄を合わせてウエブ端部を仮止めテープ(片面に粘着材層を備えたテープ)で仮固定する。
【0005】
3.ウエブの繋ぎ部分の表面側に繋ぎテープをウエブ全幅に渡って貼る。
【0006】
4.ウエブを裏返しにして繋ぎの余分な部分のウエブを定規を用いて切断する(これにより、両側のウエブの端縁同士がつきあわされた状態となる)。
【0007】
5.裏面側に繋ぎテープをウエブ全幅に渡って貼り、繋ぎ作業を終了する。
【0008】
従来の方法では、不安定な巻き出しロール上でのウエブの切断や貼り合わせや仮止めテープで仮固定を行っているため、作業が困難で多大なスキルを必要とし、しかも作業時間が多くかかるという問題や、裏面側に繋ぎテープを貼り付けるためウエブを多く巻出す必要があるため、ウエブがたるんで受け皿や床面に着くという衛生面での問題があった。
【0009】
これらの問題を解決の目的として、図6の様に2本の内部中空な吸着パイプ61、64を有して、これら各パイプの夫々には、長さ方向に沿った少なくとも一の平坦面が吸着面として備えられると共に、これらの各吸着面には、多数の吸着孔62がパイプ長さ方向に沿い列状に穿設されており、且つこれらの両吸着パイプは、夫々の吸着面を同一平面内へ位置させるようにして平行に保持されると共に、該両パイプ間には、吸着面側から背後へ貫通するスリット63が残存せしめられており、更にこれらの各吸着パイプは、夫々の一端で閉鎖され他端で負の空気圧源へ接続されていることを特徴とするフィルム・スプライサーが特許文献1で開示されている。
【0010】
以下に、上記先行技術特許を示す。
【特許文献1】実公平2−22239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これにより、上記問題は解決されるが、2本の内部中空な吸着パイプを用いて吸着面とスリットを形成し前記夫々の吸着パイプが負の空気圧源へ接続されるといった複雑な構造であるため、作業場が機材で散乱し作業性が悪く、前記夫々の吸着パイプから負の空気圧源へ接続されるため、前記夫々の吸着面での吸着力が異なりウエブ貼り付け位置のズレなどによる品質劣化の問題が生じている。
【0012】
本発明は、上記問題の解決を課題として、簡易的な構造により機材を作業場に散乱させることなく作業性を向上させ、均一な吸着力でウエブを確実に固定、保持可能とし、作業時の必要に応じて使用でき不要時は収納でき、他の作業の邪魔になることがない、スライド式吸着接合板等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明で、前記課題を解決するため、まず、請求項1に係る発明では、ウエブの切断やウエブ同士を繋ぎ合せる接合板において、両端が閉じられ内部が中空なパイプ状体であって外面長手方向平坦面に少なくとも1つの内部貫通しない直線状のスリットと複数の内部貫通する吸着孔とが形成された接合板本体と、当該パイプ状体の一端部に吸着ポンプと接続される排気手段と、当該接合板本体を先端部で支持し少なくとも一方向に摺動可能な摺動機構を備えるスライドガイドからなることを特徴とするスライド式吸着接合板を提供するものである。
【0014】
請求項2に係る発明では、前記摺動機構が、前記接合板本体の平坦面と異なる部分と前記スライドガイドの先端部との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスライド式吸着接合板を提供するものである。
【0015】
請求項3に係る発明では、前記直線状のスリットが、前記パイプ状体の外面長手方向平坦面に、0.5〜1.5mmの隙間を設けたパイプ状体本体と、当該パイプ状体本体の中空側から前記隙間を塞ぐように固定した幅10〜15mmの長方形状のスリット固定板からなることを特徴とする請求項1または2記載のスライド式吸着接合板を提供するものである。
【0016】
請求項4に係る発明では、前記吸着孔が、直径2〜5mmの円形状または一辺2〜5mmの矩形状からなり、前記パイプ状体の外面長手方向平坦面に30〜50mmの間隔で、前記直線状のスリットから垂直に10mm以上離れた当該平坦面に複数列穿設して設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板を提供するものである。
【0017】
請求項5に係る発明では、前記摺動機構が、前記接合板本体と前記スライドガイドの先端部との間に、当該接合板と当該スライドガイドの先端部の一方または両方の間で摺動可能な固定部を介在させ、当該接合板本体を少なくとも一方向に摺動可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板を提供するものである。
【0018】
請求項6に係る発明では、前記スライドガイドには、前記接合板本体の高さや傾きを調節可能に支持する支持固定部が少なくとも1つ設けられ、当該支持固定部が前記接合板本体の高さを調節する高さ調節機能および/または前記接合板本体の傾き角度を調節する角度調節機能を具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板を提供するものである。
【0019】
請求項7に係る発明では、巻き出しロールから巻き取りロールへウエブを順次搬送するウエブ加工機において、前記スライド式吸着接合板が当該ウエブ加工機のウエブ搬送経路
を通過するウエブ面を除いた側方の当該ウエブ面と平行位置で、当該ウエブ加工機に直接、もしくは、当該ウエブ加工機の近傍に、スライドガイド支持部により前記接合板本体が当該ウエブ面に摺動可能に設置されている請求項1乃至6のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板とからなることを特徴とするウエブ加工機を提供するものである。
【0020】
請求項8に係る発明では、前記接合板本体を前記ウエブ面と平行に支持する接合板本体受け部が、前記ウエブ面を介して前記スライドガイドと反対側で、前記ウエブ加工機に直接、もしくは、当該ウエブ加工機の近傍に、設置されていることを特徴とする請求項7記載のウエブ加工機を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明では、使用時に接合板本体を引出して使用し、不要時には格納でき、ウエブ加工装置の稼動時の邪魔になることがないことにより作業性が向上できるという効果を奏する。
【0022】
請求項2の発明では、ウエブ加工機本体の稼動時の邪魔になることがなく、接合板の使用時にはその使用に便宜な位置になる様な伸縮機構を持つことができるという効果を奏する。
【0023】
請求項3の発明では、スリットを簡易的な構造で形成することができ、一つの排気口で接合板内部を均一に吸引することが可能であるので、合理的且つ経済的であり、均一な吸着力を得ることができることにより作業性が向上できる。また、均一な吸着力によりウエブのズレを防止できミス無く品質を向上できるという効果を奏する。
【0024】
請求項4の発明では、吸着孔の形状・大きさ、穿設位置を限定したことにより、より良好な吸着力を得られ、ウエブ切断端部が曲がってしまうカール現象を防止でき、正確な作業が可能となることにより品質向上が図れるという効果を奏する。
【0025】
請求項5の発明では、ウエブ加工機本体の稼動時にはウエブ加工機本体のウエブ搬送経路上にはスライド式吸着接合板が位置せず、接合板の使用時にはウエブ搬送経路上に確実に接合板が位置させることが可能になり、これによりウエブ加工装置の稼動時の邪魔になることがなく、接合板の使用時にはその使用に便宜な位置になる様な伸縮機構を持つことができる。従って、接合板本体とスライドガイドとを強固にかつ接合板本体が使用しやすい位置に簡易に固定できることにより、作業性・品質ともに向上するという効果を奏する。
【0026】
請求項6の発明では、作業者の体格やスキルに合わせてスライド式吸着接合板の高さまたは傾きを微調整でき、作業性と品質がともに向上するという効果を奏する。
【0027】
請求項7の発明では、接合板が設けられていない加工機本体に設計変更などを最小限で可能で、もしくは加工機本体や床等に最小限の設置面積にて取り付けられるという効果を奏する。
【0028】
請求項8の発明では、スライド式吸着接合板のぐらつき等を防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するにあたって、最良の形態を説明する。
【0030】
本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では代表的ウエブ加工機に用いられ
るスライド式吸着接合板につきスライド式吸着接合板の高さや傾きの微調整を行う支持固定部を省略して説明しているが、以下の最良の形態以外でも、本願の作用効果を奏する構成であれば変形実施可能である。
【0031】
まず、スライド式吸着接合板の構造につき図1と図2を用いて説明する。この実施の形態のスライド式吸着接合板は、接合板本体11と排気手段20、固定部12、スライドガイド14からなり、前記接合板本体11は、両端が閉じられ内部が中空なパイプ状体からなる。そして、前記パイプ状体は、パイプ状にその長手方向に伸び、端部から端部まで連続する平坦面を少なくとも一面有し、その一つの当該平坦面の長手方向中心線上に端部から端部まで伸びる隙間が設けられたパイプ状体本体18と、当該パイプ状体本体18の中空側から当該隙間を塞ぐように固定されるスリット固定板19からなる。さらに前記パイプ状体本体18は隙間を設けたパイプ状の胴部材と、両端部材とからなる。
【0032】
この場合の中空な前記パイプ状体の形状は、少なくとも一方の面に平坦面を有することが必要であるが、他の面は必ずしも平坦である必要はない。その隙間が設けられている平坦面の隙間の両側の平坦面上には複数の内部貫通する吸着孔17が設けられている。その隙間の中空側からスリット固定板19が隙間を塞ぐようにパイプ状体本体18の隙間の両側で固定されており、これによりパイプ状体本体18の厚みに相当する深さと、空隙の間隔の幅を持つ直線状の内部貫通しないスリット16が形成されている。なお、この一方の端部には貫通穴が設けられ、この貫通穴から可撓性のパイプがパイプ状体の外部に伸びており、吸着ポンプに繋がって排気手段20を構成している。
【0033】
パイプ状体をなす接合板本体11は、パイプ状体本体21とスリット固定板19との接続が完全であれば完全な中空でも構わないが、接合板本体11の使用時に後述の様にスリットにカッター等のウエブ切断器具が当たり、中空である内部へスリット固定板19を押す力が加わるので、これによりスリット固定板19がパイプ状体本体21から剥がれる場合がある。これを防止するために、図2(c)の様にスリット固定板19を中空側から塞ぐように固定するためにスリット固定板支持部材23をスリット固定板の中空部分に設けるのも可能である。このスリット固定板支持部材23は、長手方向に伸び、端部から端部までの部材であると、それの部材により中空が分断され、排気手段が設けられた側の中空と排気手段20が設けられていない中空側とで内圧に差が生じ、接合板本体11の使用時に吸着不良や吸着力過多の問題を生じるため、スリット固定板支持部材23は、柱状等の間歇的に設けるのが好ましい。この様な問題が生じない場合は、図2(b)の様にスリット固定板支持部材23を省略した構造も可能である。
【0034】
その接合板本体11の背面には、固定部12との間に接合板本体の長手方向へ摺動可能な様に、レール等の摺動機構を設けている。また、この摺動機構は、接合板本体11の長手方向へのみ摺動可能で、レールから容易に外れることがない様な構成になっている。
【0035】
さらに、その固定部12も、その接合板本体11との摺動機構の背面には、スライドガイド先端部13との間に接合板本体11の長手方向へ摺動可能な様に、レール等の摺動機構を設けている。また、この摺動機構は、接合板本体11の長手方向へのみ摺動可能で、レールから容易に外れることがない様な構成になっている。
【0036】
加えて、そのスライドガイド14も、そのスライドガイド支持部で支持されたスライドガイド本体との間で摺動機構が設けられ、スライドガイド本体とスライドガイド先端部13との間に接合板本体の長手方向へ摺動可能な様に、レール等の摺動機構を設けている。また、この摺動機構は、接合板本体の長手方向へのみ摺動可能で、レールから容易に外れることがない様な構成になっている。
【0037】
この場合の前記直線状のスリット16は、長手方向に0.5〜1.5mmの隙間を設けたパイプ状体本体21と、当該パイプ状体本体21の前記隙間に幅10〜15mmの長方形状のスリット固定板19が固定されていることにより構成されていることが好ましい。これは、隙間が0.5mm以下ではカッター等の切断において位置合わせが容易でなくなる場合もあるからである。また、1.5mm以上であればこの間でウエブが撓みが生じて切断が直線でなくなる等の問題が生ずる場合もあるからである。
【0038】
スリット固定板19については、幅が10mm以下であれば十分なパイプ状体本体18への固定が十分でなく、スリット16が変形して吸着力がばらついてしまうおそれが生じる。他方、15mm以上であれば、必要以上の幅であり、中空がそれだけ狭まってしまう。また、吸着孔17は、円形状や矩形状に限らず楕円形や三角形等でも良いが、孔の面積とその孔によるウエブの歪みとの関係上、円形状や矩形状が好ましい。
【0039】
この吸着孔17の大きさは、円形状の場合は直径2〜5mm、矩形状の場合は一辺2〜5mm、他の形状はそれに相当する大きさが好ましく、この範囲より小さすぎると均一にウエブを吸着することが困難になり、この範囲より大きすぎると吸着孔の部分でウエブが歪んでしまい好ましくない。なお、ウエブの硬さなどの材質によりこの範囲外でも使用して差し支えない場合がある。
【0040】
また、この吸着孔17は、平坦面の長手方向に30〜50mmの間隔で複数列穿設されるのが好ましい。30mm以下の間隔では、吸着孔17が繋がって平坦面の強度上問題になる場合があるのと、吸着が連続に近くなりウエブを平坦面から剥がすときに容易でなくなる。他方、50mm以上の間隔では、吸着しない間隔でウエブが浮いてしまいやすく、きれいに吸着されにくくなる。
【0041】
また、吸着孔17はスリット16の両側に設ける必要があり、また、複数列に設けるのが好ましい。一列だと、その列だけで吸引することになるので、ウエブの吸着力とは剥がすときの力が同じになってしまう。対して、複数列あれば段階的に剥がすことにより、吸着力より弱い力で剥がすことができる。列数は3列程度で十分であるが、必要に応じて加減すればよい。また、その列における孔位置は、千鳥配列等の縦横に整列する配列が好ましい。千鳥配列等にすることによりより均一な吸着が実現できる。
【0042】
排気手段20は、接合板本体11がスライドするために、パイプ状体の一端部に排気穴を設け、この排気穴から吸着ポンプへ可撓性のパイプにより接続されている。排気穴を設ける端部は、接合板本体11を使用する状態でスライドガイド14がある側の端部に設けるのが好ましい。パイプが交錯するのを避けれるからである。
【0043】
この場合の吸着ポンプは常時稼動でも構わないが、経済的にはオンオフスイッチを設け、ウエブ加工機を使用している間だけ使用する、もしくは接合板本体使用時だけに使用することができる様にするのが好ましく、また、この吸着ポンプは一台のウエブ加工機ごとに設けても良いが、複数台一括して一台の吸着ポンプで吸着するものでも構わない。
【0044】
摺動機構は、本実施の形態では、接合板本体11とスライドガイド先端部13との間に位置する固定部12と、固定部12が接合板本体11とスライドガイド先端部13の両方の間でパイプ状体の長手方向に摺動可能になっているが、接合板本体がウエブ搬送経路を通過するウエブ面を除いた側方のウエブ面と平行位置に接合板本体が摺動可能であれば固定部を介さず、もしくは固定部を介した場合でも一方の間のみで摺動可能で、他方は固定接続であっても構わなく、このスライドガイド14も、そのスライドガイド先端部13が伸びる構成をとる必要がなく、固定構造であっても構わない。
【0045】
ただ、設計容易性の観点から接合板本体11と固定部12と、固定部が接合板本体11とスライドガイド先端部13の両方の間でパイプ状体の長手方向に摺動可能になっており、スライドガイド先端部13がスライドガイド14の本体と長手方向に摺動可能になっている構成の方が確実に接合板本体11がウエブ搬送経路を通過するウエブ面の位置とウエブ搬送経路を通過しないウエブ面位置とに接合板本体が摺動可能であるのが好ましい。この場合の摺動可能な仕組みについては、レール等を外れない様に噛み合わせる構成等が考えられるが、ベアリングや歯車、回転輪を用いた構成など各種構造が採り得る。
【0046】
なお、スライドガイド14には、接合板本体11をスライドガイドの摺動方向と垂直に支持する支持固定部が設けられているが、スライドガイド14は直接ウエブ加工機本体に固定されている構成でも構わない。
【0047】
本実施の形態の図1や図2では省略したが、スライドガイドには、接合板本体をスライドガイドの摺動方向と垂直に支持する支持固定部が少なくとも1つ設けられ、支持固定部が接合板本体の高さを調節する高さ調節機能と前記接合板本体の傾き角度を調節する角度調節機能の一方または両方を具備することが可能であり、接合板を利用する位置を調整する必要があるか、調整することが好ましい場合に有効であるが、調整不要な場合は設ける必要がない。
【0048】
この様なスライド式吸着接合板は、印刷機、コーター、貼り合せ装置、スリッター装置、巻替装置などで代表される原反ロール等の巻き出しロールから巻き取りロールへ紙、フィルムなどの各種長尺であるウエブを順次送るウエブ加工機に付属され、ウエブ継ぎやウエブ切れなどの場合に、一方もしくは両方のウエブの端部を整え、そのウエブ同士を片面テープや両面テープ等の各種接合部材により接合するウエブ加工機の一部を構成する。
【0049】
スライド式吸着接合板の位置は、原理的にはウエブ搬送路上どこでも良いが、経済的や作業適性等の関係上、原反ロール等の巻き出しロールの手前の位置が作業上好ましい。
【0050】
特に、図3や図4の様に、スライド式吸着接合板32、42は、ウエブ加工機のウエブ搬送経路を通過するウエブ面を除いた側方のウエブ面と平行位置で、ウエブ加工機本体41に直接、もしくは、ウエブ加工機本体31の近傍に、スライドガイド支持部34、44により接合板本体がウエブ面に摺動可能に設置されているのが代表的構成である。
【0051】
この場合のスライドガイド支持部は、図3の場合はスライドガイド支持部34が直接床から立っているのに対し、図4の場合はスライドガイド支持部44がウエブ加工機本体41に接続して支持されている。
【0052】
この場合、スライド式吸着接合板32、42を伸ばした場合に、ウエブ加工機31、41のウエブ搬送経路を通過するウエブ面上に設ける必要があるが、必ずしも巻き出しロール(原反ロール)と巻き取りロール等の間などのウエブ搬送経路のすぐ近くに設ける図7(c)や図8(d)の構成を取る必要はなく、ウエブの切断やウエブ同士の繋ぎ合せの作業が容易な様に、巻き出しロール(原反ロール)より前面に設けて、ウエブを引き出して作業を行う構造が図3や図4に該当する。
【0053】
また、スライド式吸着接合板32、42の使い勝手の関係上、平坦面は上部に面しているのが好ましいが、必ずしも完全な水平である必要はなく、各種ウエブ加工機やスライド式吸着接合板、操作する作業者等の条件により適宜変更してもよく、既に述べた様に、角度や位置を適宜調整可能であっても構わない。
【0054】
さらに、図5に示す様に、接合板本体51をウエブ面と平行に支持する接合板本体受け
部53が、ウエブ面を介してスライドガイドと反対側で、ウエブ加工機に直接、もしくは、ウエブ加工機の近傍に、設置されている構成に本実施の形態はなっているが、もし、完全に接合板本体51の位置が安定しているならば必要がない。しかし、接合板本体受け部53がない場合にはスライド式吸着接合板に高度の強度が要求され、実際的ではない場合が多い。なお、接合板本体51がスライドしすぎない様に、接合体本体51の背面部にはストッパー15が設けてあり、このストッパー15の先がスライドした場合に接合板本体受け部53の載置部上に乗る形状になっているが、スライドしすぎない構成はストッパー15によらず、スライドガイド支持部55側に設けても良い。
【0055】
次に本実施の形態のスライド式吸着接合板を用いてウエブの不良部分等を切断してその前後の端部同士を繋ぎ合せる、または加工作業中のウエブの端部と新しい原反ロールから巻出したウエブの端部とを繋ぎ合わせる、繋ぎ作業について以下図7および図8を用いて説明する。ウエブのつなぎ方は何通りかあるが、ここでは図7で示した上出し片面表面繋ぎの例と、図8で示した下出し片面裏面繋ぎの例で代表させて説明する。
【0056】
従来の上出し片面表面繋ぎの場合は、図7(a)で示す中空や原反ロール71上で作業を行わなければならなかったので、まず、原反ロール71側のウエブ端面の裏面に仮止めテープ74を幅方向にウエブ全幅に渡って貼る。この場合、予めウエブ端面が直線状になっていれば良いが、不良繋ぎの様な場合には予め定規等を用いてウエブ端面を直線に切断し、不要部分を切り離すことにより整える必要がある。
【0057】
次に、繋ぐべきウエブの端面を、貼り合わせる。なお、ウエブが印刷したものの様にウエブの絵柄の周期が合う必要がある場合は、ウエブの絵柄が合う様な位置で上から貼り合わせる。次に、繋ぐべきウエブの端面のうち、位置あわせ等によりウエブが重なった部分を折返し、定規等を用いてカッター等で仮止めテープ74上でウエブが重なり合わず、ウエブ端面どうしが突き合わされる様に、折返し部分をその根元の部分で直線に切断し、折返し部分を除去する。このうえで、表面からウエブ端面どうしが突き合わされている部分に表面から覆うようにウエブ全幅にわたり繋ぎテープ73を貼る。
【0058】
最後に、図7(b)の様に71原反ロールを巻き戻すとともにウエブ75全体を巻き戻し、原反ロールの反対側で裏面を露出させる。この様にして、露出した仮止めテープ74を除去し、さらにウエブ75を進めて本来の位置に戻して繋ぎ作業を行っていた。
【0059】
この場合、原反ロール71上でカッター等のウエブ端部の切断作業を行うため、原反ロール71の原反も傷付ける場合が少なくなかった。また、仮止めテープ除去のためにウエブを巻き戻して緩める必要があり、この場合、床面もしくは受け皿(図の場合受け皿72)にウエブ75が接触する場合が多く、ウエブ75に無用の傷や汚れを生じさせる原因ともなっていた。さらに、中空で作業を行うためにテープ、特に仮止めテープ74を端面と平行に貼る技術が要求され、失敗することが往々にした発生していた。また、切断作業も直線に行う必要があるため、定規等を当てながらカッター等の切断具を用いる必要があり、作業性が劣っていた。加えて、最終的に不要となる仮止めテープを必要とし、不経済であった。そして、仮止めテープの剥がし作業の様な不要な作業により、作業性が劣っていた。
【0060】
対して本願の場合は、図7(c)に示す様に、ウエブ加工機本体の接合板本体83がウエブ搬送経路に面する位置に摺動した上で、原反ロール81の端部を接合板本体83の平坦面上に当てて吸着させる。この上で、接合板本体83のスリットにカッター等のウエブ切断具を当てて切断する。この上で、不要となった側のウエブ75を平坦面から除去する。さらに、繋ぐべきウエブ75を平坦面上に当てて吸着させる。この上で、スリットにカッター等のウエブ切断具を当てて繋ぐべきウエブ75を切断する。この上で、不要となった側の繋ぐべきウエブを平坦面から除去する。最後に、上から繋ぎテープ84を両方のウエブの端面が突き合わされている部分を覆う様に上から貼る。
【0061】
この様に、両方のウエブともに接合板本体83に吸着されている状態で作業することが可能であるために、位置合わせが容易であり、また、スリットが定規代わりになるため、カッター等のみの使用で作業が容易であり、また、受け皿82に原則としてウエブが接触することなく、繋ぎ部分の折返しなどの作業も必要ないため、繋ぎ部分でのウエブ75のカールなどの障害が起きにくい。
【0062】
次に、従来の下出し片面裏面繋ぎの場合は、図8(a)で示す中空で作業を行わなければならなかったので、まず、ウエブ端面が直線状になっていれば良いが、不良繋ぎの様な場合には予め定規等を用いてウエブ端面を直線に切断し、図8(b)の様に不要部分を切り離すことにより整える。
【0063】
次に、繋ぐべきウエブ端面を原反ロール91の端面近くまで十分余裕を持って引き出す。そのうえで、原反ロール91側のウエブ93の切断面近くを折返し反対向きにした上でマグネットバーなどで原反ロール91の表面上に固定する。その上で、ウエブ93が印刷したものの様にウエブ93の絵柄の周期が合う必要がある場合は、ウエブ93の絵柄が合う様な位置で上から繋ぎテープ94で貼り合わせる。次に、繋ぐべきウエブの端面のうち、位置あわせ等によりウエブが重なった部分も折返し、定規等を用いてカッター等で仮止めテープ上でウエブ93が重なり合わず、ウエブ端面どうしが突き合わされる様に、折返し部分をその根元の部分で直線に切断し、折返し部分を除去する。最後に、原反ロール91を巻き戻すとともにウエブ全体を巻き戻していた。
【0064】
この場合、原反ロール91の表面上でカッター等のウエブ端部の切断作業を行うため、原反ロールの表面のウエブも傷付ける場合が少なくなかった。また、繋ぐべきウエブを巻き戻して緩める必要があり、この場合、床面もしくは受け皿(図8の場合は受け皿92)にウエブ93が接触する場合が多く、繋ぐべきウエブに無用の傷や汚れを生じさせる原因ともなっていた。さらに、中空で作業を行うために繋ぎテープ94を端面と平行に貼る技術が要求され、失敗することが往々にした発生していた。また、切断作業も直線に行う必要があるため、定規等を当てながらカッター等の切断具を用いる必要があり、作業性が劣っていた。加えて、原反ロール側のウエブの切断面近くを折返し反対向きにしなければならないので、この折返しによりカールが発生してしまい、不具合となる場合があった。また、巻き戻し作業の様な不要な作業により、作業性が劣っていた。
【0065】
対して本願の場合は、図8(d)に示す様に、ウエブ加工機本体の接合板本体103がウエブ搬送経路に面する位置に摺動した上で、原反ロール101の端部を平坦面上に当てて吸着させる。この上で、スリットにカッター等のウエブ切断具を当てて切断する。この上で、不要となった側のウエブを平坦面から除去する。さらに、繋ぐべきウエブ105を平坦面上に当てて吸着させる。この上で、スリットにカッター等のウエブ切断具を当てて繋ぐべきウエブ105を切断する。この上で、不要となった側の繋ぐべきウエブを平坦面から除去する。最後に、上から繋ぎテープを両方のウエブの端面が突き合わされている部分を覆う様に上から貼る。
【0066】
この様に、両方のウエブともに接合板本体に吸着されている状態で作業することが可能であるために、位置合わせが容易であり、また、スリットが定規代わりになるため、カッター等のみの使用で作業が容易であり、また、繋ぎ部分の折返しなどの作業が必要ないため、繋ぎ部分でのウエブのカールなどの障害が起きにくい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明にかかるスライド式吸着接合板の一実施の形態の例を示す概念斜視図である。
【図2】本発明にかかる図1のスライド式吸着接合板の一実施の形態の例の接合板本体を示す概念図であり、(a)は概念平面図、(b)はその側断面図、(c)は(b)とは異なる側断面図、(d)はスリット部分において切断した場合の拡大正面断面図である。
【図3】本発明にかかるスライド式吸着接合板を用いたウエブ加工機の一実施の形態の例を示す概念斜視図である。
【図4】本発明にかかるスライド式吸着接合板を用いた図3とは異なるウエブ加工機の一実施の形態の例を示す概念斜視図である。
【図5】本発明にかかるスライド式吸着接合板と接合板本体受け部との位置関係概念斜視図である。
【図6】従来の吸着接合板の作業の概念斜視図である。
【図7】本発明にかかるスライド式吸着接合板を用いてウエブを切断したうえで接合する上出し片側表面繋ぎの場合の作業の概念側面図であり、(a)と(b)は従来の作業の概念側面図であり、(c)は本発明の一つの実施の形態の作業の概念側面図である。
【図8】本発明にかかるスライド式吸着接合板を用いてウエブを切断したうえで接合する上出し片側表面繋ぎの場合の作業の概念側面図であり、(a)と(b)と(c)は従来の作業の概念側面図であり、(d)は本発明の一つの実施の形態の作業の概念側面図である。
【符号の説明】
【0068】
11…接合板本体
12…固定部
13…スライドガイド先端部
14…スライドガイド
15…ストッパー
16…スリット
17…吸着孔
18…パイプ状体本体
19…スリット固定板
20…排気手段
21…パイプ状体本体
22…固定板
23…スリット固定板支持部材
31…ウエブ加工機本体
32…スライド式吸着接合板
33…接合板本体受け部
34…スライドガイド支持部
41…ウエブ加工機本体
42…スライド式吸着接合板
43…接合板本体受け部
51…接合板本体
52…スライドガイド
53…接合板本体受け部
54…排気手段
55…スライドガイド支持部
61…吸着パイプ
62…吸着孔
63…スリット
64…吸着パイプ
65…カッター
66…ウエブ
71…原反ロール
72…受け皿
73…繋ぎテープ
74…仮止めテープ
75…ウエブ
81…原反ロール
82…受け皿
83…接合板本体
84…繋ぎテープ
85…ウエブ
91…原反ロール
92…受け皿
93…ウエブ
94…繋ぎテープ
101…原反ロール
102…受け皿
103…接合板本体
104…繋ぎテープ
105…ウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブの切断やウエブ同士を繋ぎ合せる接合板において、両端が閉じられ内部が中空なパイプ状体であって外面長手方向平坦面に少なくとも1つの内部貫通しない直線状のスリットと複数の内部貫通する吸着孔とが形成された接合板本体と、当該パイプ状体の一端部に吸着ポンプと接続される排気手段と、当該接合板本体を先端部で支持し少なくとも一方向に摺動可能な摺動機構を備えるスライドガイドからなることを特徴とするスライド式吸着接合板。
【請求項2】
前記摺動機構が、前記接合板本体の平坦面と異なる部分と前記スライドガイドの先端部との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスライド式吸着接合板。
【請求項3】
前記直線状のスリットが、前記パイプ状体の外面長手方向平坦面に、0.5〜1.5mmの隙間を設けたパイプ状体本体と、当該パイプ状体本体の中空側から前記隙間を塞ぐように固定した幅10〜15mmの長方形状のスリット固定板からなることを特徴とする請求項1または2記載のスライド式吸着接合板。
【請求項4】
前記吸着孔が、直径2〜5mmの円形状または一辺2〜5mmの矩形状からなり、前記パイプ状体の外面長手方向平坦面に30〜50mmの間隔で、前記直線状のスリットから垂直に10mm以上離れた当該平坦面に複数列穿設して設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板。
【請求項5】
前記摺動機構が、前記接合板本体と前記スライドガイドの先端部との間に、当該接合板と当該スライドガイドの先端部の一方または両方の間で摺動可能な固定部を介在させ、当該接合板本体を少なくとも一方向に摺動可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板。
【請求項6】
前記スライドガイドには、前記接合板本体の高さや傾きを調節可能に支持する支持固定部が少なくとも1つ設けられ、当該支持固定部が前記接合板本体の高さを調節する高さ調節機能および/または前記接合板本体の傾き角度を調節する角度調節機能を具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板。
【請求項7】
巻き出しロールから巻き取りロールへウエブを順次搬送するウエブ加工機において、前記スライド式吸着接合板が当該ウエブ加工機のウエブ搬送経路を通過するウエブ面を除いた側方の当該ウエブ面と平行位置で、当該ウエブ加工機に直接、もしくは、当該ウエブ加工機の近傍に、スライドガイド支持部により前記接合板本体が当該ウエブ面に摺動可能に設置されている請求項1乃至6のいずれか一つに記載のスライド式吸着接合板とからなることを特徴とするウエブ加工機。
【請求項8】
前記接合板本体を前記ウエブ面と平行に支持する接合板本体受け部が、前記ウエブ面を介して前記スライドガイドと反対側で、前記ウエブ加工機に直接、もしくは、当該ウエブ加工機の近傍に、設置されていることを特徴とする請求項7記載のウエブ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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