説明

スライド開閉式養生シート

【課題】設置した養生シートの取り外し作業、取り付け作業が面倒であり非常に長い時間が掛かるため、必要のない場所でも全体の作業中は養生シートが開放されにくい課題があった。
【解決手段】レール長手方向にわたって設けられるスライド用長溝10を有するスライド用レール1と、スライド用レール1のスライド用長溝10に移動可能に係合するランナー2と、ランナー2に上下両端辺を結合し折り畳み可能なスライド養生シート3とを有し、スライド養生シート3を、その上下辺部分に設けたランナー連結部31によって連結されるランナー2を介して上下のスライド用レール1に取り付けて構成されるスライド養生シート層を、上下多重層に設け、各層のスライド養生シート毎に開閉可能であるスライド開閉式養生シートによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中高層の建造物、特にマンション、団地等の中高層の集合住宅の壁面のリニューアル工事等に使用されるスライド開閉式養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
マンション、団地等の4階乃至10階程度の中高層の集合住宅は、建築後10年〜10数年前後で壁面の補修工事を行うことが多い。このような壁面リニューアル工事では、壁面周囲に枠組み足場又はくさび式足場などの本足場(以下本足場とのみ記す)を組み、主に塗装作業に伴う塗装剤の吹き付け時の飛散防止のため、本足場の外側を養生シートで覆うことが必要とされている。
【0003】
一般的な養生シートは、1シートが約1.8m×約5.1m程度の長方形のメッシュシートからなり、各1シート(スパン)毎にシートの周囲適宜位置に設けられている結束用ロープによって本足場の外側(反建造物側)の建地(ポール等)に結びつけて設けられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の団地等のリニューアル工事の場合、塗装剤などが飛散しないように1棟毎の壁面周囲を全て養生シートによって覆うことが必要とされていた。そして養生シートは、本足場の外側の建地(ポール等)に紐、ロープによって固定されて取り付けられるため容易かつ短時間に開閉ができなかった。そのため、塗装作業等の作業が行われている数ヶ月の期間、養生シートが外されないため部屋の窓から日差しが入らないなど日常生活に非常な不便が強いられていた。
【0005】
実際には、団地一戸の付近のリニューアル工事は、数日で終了する。しかも塗装作業中の壁面から遠い場所、例えば北壁面を作業中の場合、南壁面等にある各部屋では、養生シートが無くても作業には支障がない場合があった。しかしながら、そのような状態であっても、設置した養生シートを取り外し作業、取り付け作業に作業者人数と作業時間が係ることがあって、そのまま養生シートを取り付けたままの状態で作業が行われていた。そのため、養生シートが必要のない家庭の窓の外も養生シートによって覆われたままであり、居住者には無駄な閉塞感が数ヶ月というような長期間続く問題点があった。
【0006】
また、作業がない休日の場合に養生シートを取り外し、また取り付ける作業の場合や、台風や低気圧の接近による等の原因により養生シートを一時的に撤去する場合は、結束用ロープを一つ一つ解く作業によって行われるため非常に長い時間が掛かり、かつ再度養生シートを同様の作業で取り付ける作業があり、作業時間が長く掛かる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、レール長手方向にわたって設けられるスライド用長溝を有するスライド用レールと、スライド用レールのスライド用長溝に移動可能に係合するランナーと、ランナーに上下両端辺部分を連結するとともにシート折り畳み開放可能なスライド養生シートとを有し、スライド養生シートを、その上下辺部分に設けたランナー連結部によって連結されるランナーを介して上下のスライド用レールに取り付けて構成されるスライド養生シート層を、上下多重層に設け、各層のスライド養生シート毎に開閉可能であることを特徴とするスライド開閉式養生シートを提案する。
【0008】
また、レールの上下それぞれの面に長手方向にわたって設けられるスライド用長溝を有し枠組足場、くさび式足場等の本足場の外側に水平方向に取り付けられるスライド用レールと、スライド用レールのスライド用長溝に移動可能に係合するランナーと、ランナーに上下両端辺部分を連結するとともにシート折り畳み開放可能なスライド養生シートとを有し、スライド養生シートを、その上下辺部分に設けたランナー連結部によって連結されるランナーを介して上下のスライド用レールに取り付けて構成されるスライド養生シート層を本足場の外側に上下多重層に設け、各層のスライド養生シート毎に開閉可能であることを特徴とするスライド開閉式養生シートを提案する。
【0009】
また、スライド用レールが、横断面長方形状の直方柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成したスライド用レールである0007欄又は0008欄に記載のスライド開閉式養生シートを提案する。
【0010】
また、スライド用レールが、横断面長方形状の直方柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成するとともに、上下面に開口する2つのスライド用長溝の間に長手方向に中間空隙部を設け、
スライド用レールの中間空隙部の両側面には複数の孔を設け、スライド用レールの両端部の孔はスライド用レール同士を長手方向に連結する連結部材の連結孔と係合可能な連結孔であり、中間部分の孔はスライド用レールを枠組足場、くさび式足場等の本足場に固定する取付部材と係合可能な取付孔である0007欄又は0008欄又は0009欄に記載のスライド開閉式養生シートを記載する。
【0011】
更に、スライド用レールが、横断面円形状の円柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成したスライド用レールである0007欄又は0008欄に記載のスライド開閉式養生シートを提案する。
【0012】
また、スライド用レールが、横断面円形状の円柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成するとともに、連結溝を長手方向の左右横面にそれぞれ開口して形成し、連結溝はスライド用レール同士を長手方向に連結する連結部材及び枠組足場、くさび式足場等の本足場に取り付ける取付部材と係合可能としたスライド用レールである0007欄又は0008欄又は0011欄に記載のスライド開閉式養生シートを提案する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、スライド用レールによって折り畳むことのできるシートの作用により、従来の団地等のリニューアル工事において、塗装剤などが飛散しないように設けられる養生シートが、非常に容易かつ短時間に開閉可能になった。そのため塗装作業場所から離れた壁面や、方向に異なる壁面を覆う養生シートを少ない人数で、かつ短時間に容易に開閉作業が行われる。
【0014】
そのため、従来の集合住宅のリニューアル工事等において、養生シートが必要とされる作業の場所だけ閉鎖して塗装剤の飛散などを防止することができ、それによって養生シートで窓などのある壁面を覆う期間を最小期間にすることができる。
【0015】
また、作業の無い日曜日等の休日では、全ての養生シートを短時間かつ容易に開放することができ、また作業を行うときに短時間かつ容易に閉鎖して作業状態に入ることが可能になった。
【0016】
更に、台風等の強い低気圧が急に接近し養生シートを設置したままでは危険な場合であっても、養生シートを一時的に撤去する作業が、非常に短時間かつ容易に開放作業ができ、養生シートや本足場が強風によって倒壊することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の実施形態であるスライド開閉式養生シートについて、スライド用レールが第1実施形態であるスライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場の外側に設けられた状態の一部正面を示す図1、同じくスライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場の外側に設けられた状態の一部側面を示す図2、第1実施形態のスライド用レールの横断面図である図3、同じく図3のスライド用レールに車輪ランナーを付設した状態を示す横断面図である図4、同じく図3のスライド用レールにスライドランナーを付設した状態を示す横断面図である図5、同じく固定部材によって図3のスライド用レールを枠組足場のクランプに固定する取付部材を設けた状態を示す横断面図である図6、同じく一層の連続したスライド用レールの両端部にランナー落下防止部材を付設した状態を示す横断面図である図7、同じく2つのスライド用レールを連結する連結部材のジョイントプレートを示す正面図である図8(a)、同じく連結部材のジョイントプレートを使って2つのスライド用レールを連結した状態の部分正面図である図8(b)、図8(b)のAA線断面図である図9、スライドランナーの正面図である図10、同じくスライドランナーの側面図である図11に基づいて説明する。
【0018】
また、スライド用レールが第2実施形態であるスライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場の外側に設けられた状態の一部正面を示す図12、同じくスライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場の外側に設けられた状態の一部側面を示す図13、車輪ランナーの正面図である図14、車輪ランナーの側面図である図15、第2実施形態のスライド用レールの横断面図である図16、図16のスライド用レールに車輪ランナーを付設した状態を示す横断面図である図17、図16のスライド用レールに取付部材である四角頭部ボルトを付設した状態を示す横断面図である図18、取付部材である四角頭部ボルトの斜視図である図19、同じく取付部材である四角頭部ボルトを中間部材を介して単クランプに取り付けた状態を示す説明図である図20、図16のスライド用レールを2つ連結部材によって長手方向へ連結した状態を示す横断面図である図21、同じく図16のスライド用レール2つを連結部材によって長手方向へ連結しようとする状態を示す部分正面図である図22、図21及び図22に使用される連結部材の斜視図である図23、車輪ランナーにシートを取り付けた状態でのスライド用レールの横断面を示す図24に基づいて説明する。図25は、スライド用レールの第3実施形態を示す。
【0019】
この発明の実施形態であるスライド開閉式養生シートは、レールの上下それぞれの面に長手方向にわたって設けられるスライド用長溝10を有し、枠組足場Wの工事対象の住宅とは逆の外側に水平方向に取り付けられるスライド用レール1と、スライド用レール1のスライド用長溝10に移動可能に係合するランナー2と、ランナー2に上下両端辺を結合し折り畳み可能なスライド養生シート3とを有し、スライド養生シート3の上下辺のそれぞれをランナー2を介してスライド用レール1に取り付けてなるスライド開閉式シート層を枠組足場Wの外側に上下多重層に設け、各層のスライド養生シート3毎にスライドして開閉可能である(図1、図2、図12、図13参照)。
【0020】
枠組足場Wは、リニューアル工事等を施工するマンション、団地等の中高層建造物Hの周囲に設けられ、その建造物の高さに合わせて数段に組み上げられる。図示されるこの発明の実施形態ではスライド開閉式養生シートは、住宅の外側に構築される枠組足場W(本足場)に設けられるが、同様に構築されるくさび式足場(本足場)においても同様である。
【0021】
スライド用レール1(1a、1b、1c)は、角柱体、円柱体等の棒状体の上下それぞれの面に長手方向にわたって設けられるスライド用長溝10を有する構成であればよく、枠組足場Wの水平部材に複数のクランプ及び/又は取付ボルト等からなる取付部材4により水平方向に上下複数設けられる。枠組足場Wの最上層及び最下層に使用するスライド用レール1は、それぞれ下面又は上面のスライド用長溝10のみを使用する。第1実施形態のスライドレール1a及び第3実施形態のスライドレール1cは角柱体であり、第2実施形態のスライドレール1bは円柱体である。
【0022】
スライド用レール1の長さは、数種類のスパンがあり、工事現場の寸法に合わせて適宜水平方向に連結部材5によって連結して1層の長さを調節する。
【0023】
ランナー2は、車輪ランナー2a及びスライドランナー2bの2種類のランナーがある。車輪ランナー2aは、図14及び図15に示されるようにランナー本体20と、ランナー本体20に取り付けられスライド用レール1のスライド用長溝10に係合し走行車輪21と、スライド養生シート3のランナー連結部30と連結する連結輪22とを有する。走行車輪21の素材は、走行時に音がなるべく発生しないゴム等の柔軟性のある素材からなる。
【0024】
スライドランナー2bは、図10及び図11に示すようにスライド用レール1のスライド用長溝10に係合しスライドする円板面を有するスライド部23と、スライド養生シート3のランナー連結部30と連結する連結輪24と、スライド部23と連結輪24とを繋ぐ繋ぎ部25とからなり、硬質合成樹脂材によって一体に形成されている。
【0025】
この発明の好ましい実施形態であるスライド開閉式養生シートでは、1層を連結されて形成されるスライドレール1に備えられるランナー2は、両端上下の2箇所のみを車輪ランナー2aとし、中間の全てをスライドランナー2bとして、開閉の作動の先頭となるランナー2を車輪ランナー2aとして初期動を良好にするとともに、移動のときの騒音が小さいスライドランナー2bを中間に多く設けている。他の実施形態としてランナー2(2a、2b)の組み合わせは、適宜変更してもよい。
【0026】
ランナー2(2a、2b)は、スライド用レール1の上下のスライド用長溝10、10に両端部から各々適宜数挿入してスライド用レール1に移動可能に設けられる。適宜数ランナー2が、1層の連結されたスライド用レール1のスライド用長溝10に設けられた後、1層の連結されたスライド用レール1の両端部には図7に示すような端部ランナー落下防止用部材6を設けている。この実施形態では端部ランナー落下防止用部材6は、ボルト60及びナット61からなり、スライド用レール1の上方のスライド開口部11から下方のスライド開口部11までボルト60を貫通させ下方からナット61を螺合させる。スライド用レール1の両端部の中間空隙部15の上下の面にはボルト孔62、62を設けている。
【0027】
スライド養生シート3は、約9m(5間)×約5.4m(3間)程度の長方形のメッシュシートからなり、200mm程度の間隔を置いて設ける縦方向の折線部30を設け、上辺及び下辺のそれぞれの辺近傍に多数のランナー連結部31を設けている。この実施形態ではランナー連結部31は、連結用ロープ31からなる。スライド養生シート3は、上下の辺近傍に設けられている連結用ロープ31によってランナー2の連結輪22に結束される。このときスライド養生シート3の下辺においては連結用ロープ31より下方にある下辺部分3aが、スライド用レール1の枠組足場W側に垂らされてスライド用レール1の枠組足場W側半面を覆う(図24参照)。このスライド養生シート3の下辺部分3によってスライド用レール1の作業側である枠組足場W面を覆うことができるためスライド用長溝10や連結溝13などに塗装剤やゴミなどが入ることを防ぐ作用効果がある。
【0028】
スライド養生シート3は、上下の多数の連結用ロープ31によってスライド用レール1に走行移動可能に係合されている多数のランナー2(2a、2b)に連結され、上下のスライド用レール1に取り付けられて1つの階層を構成している。図示しないがスライド養生シート3の左右の端辺は、結束用ロープ等を有しており閉鎖時には左右の枠組足場Wの垂直杆等に縛る等によって固定する。この発明のスライド開閉式養生シートは、この階層を上下多重層に構成しており、各階層のスライド養生シート3毎にスライドすることができ、スライド養生シート3を開放する場合は、折り線部30があるので折り畳みやすく開放作業が容易である。
【0029】
スライド用レール1が第1実施形態であるスライド開閉式養生シートについて図1乃至図11に基づいて説明する。第1実施形態であるスライド用レール1aは、図3乃至図9に示されるように横断面が略長方形状の中空の直方柱体からなり、スライド開口部11a、11aを有する内部空間からなりランナー2a、2bが係合し移動可能なスライド用長溝10a、10aを長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成するとともに、上下の2つのスライド用長溝10a、10aの間に長手方向の空隙部である中間空隙部15を設けている。
【0030】
スライド用レール1aの横断面は、略長方形状であるが上下のスライド用長溝10の幅が中間空隙部15の幅よりやや広く、中間空隙部15の外側面が、上下のスライド用長溝10a、10aの外側面から1mm程度凹んだ外形となる。1つの実施例としてスライド用レール1aの長方形の大きさを示すと、全高71mm、中間空隙部15の外側面の高さ22.3mm、上下のスライド用長溝10の幅33.6mm、中間空隙部15の幅31.6mmであり、スライド開口部11aの幅は9.5mmである。
【0031】
スライド用レール1aの中間空隙部15には、ほぼ等間隔に複数のボルト孔16を長手方向に設ける。ボルト孔16の数はスライド用レール1aの長さによって異なるが6孔〜8孔程度で、両側端部に設けられるボルト孔16は連結部材5aと連結するためのボルト孔であり、中間のボルト孔16は取付部材4aと連結するためのボルト孔である。
【0032】
第1実施形態の取付部材4aは、枠組足場Wにスライド用レール1aを取り付ける部材であり、この実施形態では図6に示すように単クランプ40からなる。単クランプ40は、本体40aに固定されて突出するボルト部40bと、ボルト部40bに螺合するナット40cと、本体40aに回動軸40dを中心に開閉可能なクランプ部40eと、クランプ部40eと本体40aとを締め付ける締付ボルト40fとを有する。
【0033】
第1実施形態の取付部材4aである単クランプ40によってスライド用レール1aを枠組足場Wに取り付ける場合は、ボルト部40bをスライド用レール1aの適宜ボルト孔16に水平に挿入して枠組足場外側方向からナット40cを挿入して締め付けて固定する。次に単クランプ40のクランプ部40eを回動軸40dを中心に開放して枠組足場Wの水平杆W1にクランプさせ閉鎖後に締付ボルト40fによって締め付ける。この作業によってスライド用レール1aは、枠組足場Wの水平杆W1又は垂直杆に取り付けられる。図示しないが別の実施形態の取付部材4aは、一般的に市販されているクランプを使用してスライド用レール1aを枠組足場Wの外側に水平に固定して取り付けてもよい。
【0034】
第1実施形態の連結部材5aは、幅が22mm程度、長さが190mm程度、厚さ1mm程度の長方形のジョイントプレート50と連結ボルト51からなり、スライド用レール1aの中間空隙部15の高さと同じかやや狭い形状である。ジョイントプレート50は、図8(a)に示すように複数の連結孔又は/及び取付孔であるボルト孔52を有しており、それぞれ隣接するスライド用レール1aの端部のボルト孔16と合わせ互いに連結ボルト51を挿入しボルト部51aにナット51bを締め付け連結される。連結部材5aは、スライド用レール1aを連結する場合は、2枚の連結部材5aをスライド用レール1aの両側に接して連結する。
【0035】
次に、スライド用レール1が第2実施形態であるスライド開閉式養生シートについて図12乃至図24に基づいて説明する。第2実施形態のスライド用レール1bは、図16に示すように横断面形状が直径50mm程度の横断面円形状の円柱状体、又は円管体からなる。その円柱状体の上下面長手方向にわたって周面にそれぞれ開口しているスライド開口部11b、11bを有する内部空間からなるスライド用長溝10b、10bを設ける。それぞれのスライド用長溝10b、10bは、それぞれのスライド開口部11b、11bの開口幅より広く車輪ランナー2aの走行車輪21又はスライドランナー2bのスライド部23が走行可能な奥行きを有する内部空間を長手方向にわたって有しており、スライド開口部11b、11bの左右裏面を車輪ランナー2aの走行車輪21が係合し走行移動可能な走行面12、12として形成する(図17参照)。
【0036】
第2実施形態のスライド用レール1bは、円柱体の上下面長手方向にわたってそれぞれ開口しているスライド開口部11b、11bの周面で90度角異なる両方向である左右横面にレール長手方向にわたって開口する連結開口部14、14を有する連結溝13、13を設ける。それぞれの連結溝13、13は、それぞれの連結開口部14、14の開口幅より幅広く連結溝13、13と摺動可能な取付部材4bの四角頭部ボルト41の頭部41aと形状が対応する空間形状であり、図16乃至図18に示すように横断面T字形となる。
【0037】
第2実施形態の取付部材4bは、枠組足場Wにスライド用レール1bを取り付ける部材であり、第2実施形態の第1実施例を図18に示す。第2実施形態の第1実施例の取付部材4bは、四角頭部ボルト41と単クランプ42とからなる。四角頭部ボルト41は、図19に示すようにほぼ四角形(正方形)の頭部41aとボルト部41bとからなる。四角頭部ボルト41は、ボルト部41bをナット41cによって単クランプ42に取り付け、単クランプ42によって枠組足場Wの水平杆W1に取り付けられる。単クランプ42は、雌ねじ孔(図示せず)を設けた本体42aと、本体42aに回動軸42bを中心に開閉可能なクランプ部42cと、クランプ部42cと本体42aとを締め付ける締付ボルト42dとを有する。
【0038】
第2実施形態の第2実施例である取付部材4cを図20に示す。第2実施例の取付部材4cは、四角頭部ボルト41と、第1実施形態の取付部材4aと同じ単クランプ40と、この2つの部材を繋ぐ繋ぎ部材43からなる。繋ぎ部材43は、図20に示されるように角筒体の左右側面に水平方向に開口した孔を有し、その孔に四角頭部ボルト41のボルト部41bと、単クランプ40のボルト部40bとを挿入してそれぞれナット41cと40cを螺合させ繋ぎ部材43を介して連結させ、これによってスライド用レール1bを枠組足場Wに取り付ける。更に図示しないが別の実施形態の取付部材4は、一般的に市販されているクランプを使用してスライド用レール1bを枠組足場Wの外側に水平に固定して取り付けてもよい。
【0039】
第2実施形態の連結部材5bは、図21乃至図23に示すようにボルト付きジョイントプレート53と、ナット54及びワッシャー55からなる。ボルト付きジョイントプレート53は、長方形の板状体53aの長手方向に間隔をあけて2つ以上の取付ボルト53bを突設している。スライド用レール1bを長手方向に連結する場合は、図22に示すようにジョイントプレート53の取付孔53aに四角頭部ボルト52のボルトを挿入した後、四角頭部ボルト52の頭部をスライド用レール1bの連結溝13に長手方向端部から入れワッシャー55、ナット54を嵌合して取り付ける。
【0040】
スライド用レール1の第3実施形態であるスライド用レール1cを図25に示す。スライド用レール1cは、2つの角柱体を上下開口溝の無い背面同士を結合させて上下それぞれの面に長手方向にわたって設けられスライド開口部11c、11cを有する内部空間からなるスライド用長溝10c、10cを設けている。スライド用レール1cは、枠組足場Wの水平部材に複数のクランプ又は取付ボルト等からなる取付部材4により水平方向に上下複数設けられる。枠組足場Wの最上層及び最下層に使用するスライド用レール1cは、それぞれ下面又は上面のスライド用長溝10cのみを有する1つの角柱体で構成することもできる。
【0041】
この発明のスライド開閉式養生シートは、上記のように構成されているため、非常に容易にスライド養生シート3を各階層毎に開閉できる。そのため養生シートの不要な場所においては常に開放しておくことができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、マンション、団地等の中高層の集合住宅の壁面のリニューアル工事等に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の第1実施形態であるスライド用レールを使用したスライド開閉式養生シートについて、スライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場(本足場)の外側に設けられた状態の一部正面図
【図2】同じく第1実施形態であるスライド用レールを使用したスライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場(本足場)の外側に設けられた状態の一部側面図
【図3】この発明の第1実施形態のスライド用レールの横断面図
【図4】図3のスライド用レールに車輪ランナーを付設した状態を示す横断面図
【図5】図3のスライド用レールにスライドランナーを付設した状態を示す横断面図
【図6】図3のスライド用レールに取付部材を付設した状態を示す横断面図
【図7】一層の連続したスライド用レールの両端部にランナー落下防止部材を付設した状態を示す横断面図
【図8】(a)同じく2つのスライド用レールを連結する連結部材のジョイントプレートを示す正面図、(b)同じく連結部材のジョイントプレートを使って2つのスライド用レールを連結した状態の部分正面図
【図9】図8(b)のAA線断面図
【図10】スライドランナーの正面図
【図11】スライドランナーの側面図
【図12】この発明の第2実施形態であるスライド用レールを使用したスライド開閉式養生シートについて、スライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場(本足場)の外側に設けられた状態の一部正面図
【図13】同じく第2実施形態であるスライド用レールを使用したスライド開閉式養生シートが中高層建造物の周囲に仮設される枠組足場(本足場)の外側に設けられた状態の一部側面図
【図14】この発明の実施形態に使用される車輪ランナーの正面図
【図15】同じく車輪ランナーの側面図
【図16】この発明の第2実施形態のスライド用レールの横断面図
【図17】図16のスライド用レールにランナーを付設した状態を示す横断面図
【図18】図16のスライド用レールに第2実施形態の第1実施例の取付部材を付設した状態を示す横断面図
【図19】この発明の第2実施形態の取付部材の四角頭部ボルトの斜視図
【図20】図16のスライド用レールに第2実施形態の第2実施例の取付部材を付設した状態を示す横断面図であり、四角頭部ボルトと単クランプとの間に繋ぎ部材を介して取り付けた状態を示す説明図
【図21】図16のスライド用レールを2つ連結部材によって長手方向へ連結した状態を示す横断面図
【図22】同じく図16のスライド用レール2つを連結部材によって長手方向へ連結しようとする状態を示す部分正面図
【図23】図21及び図22に使用される連結部材の斜視図
【図24】ランナーにスライド養生シートを取り付けた状態でのスライド用レールの横断説明面
【図25】この発明のスライド用レールの第3実施形態を示す横断面図
【符号の説明】
【0044】
1 スライド用レール
1a スライド用レール(第1実施形態)
10a スライド用長溝
11a スライド開口部
15 中間空隙部
16 ボルト孔
2 ランナー
2a 車輪ランナー
20 ランナー本体
21 走行車輪
22 連結輪
2b スライドランナー
23 スライド部
24 連結輪
25 繋ぎ部
3 スライド養生シート
30 折れ線部
31 ランナー連結部(連結用ロープ)
4a 取付部材(第1実施形態)
40 単クランプ
40a 本体
40b ボルト部
40c ナット
40d 回動軸
40e クランプ部
40f 締付ボルト
5a 連結部材
50 ジョイントプレート
51 連結ボルト
52 ボルト孔
1b スライド用レール(第2実施形態)
10b スライド用長溝
11b スライド開口部
12 走行面
13 連結開口部
14 連結溝
4b 取付部材(第2実施形態第1実施例)
41 四角頭部ボルト
41a 頭部
41b ボルト部
41c ナット
42 単クランプ
42a 本体
42b 回動軸
42c クランプ部
42d 締付ボルト
4c 取付部材(第2実施形態第2実施例)
43 繋ぎ部材
5b 連結部材
53 ボルト付きジョイントプレート
53a 板状体
53b ボルト
54 ナット
55 ワッシャー
1c スライド用レール(第3実施形態)
10c スライド用長溝
11c スライド開口部
W 枠組足場(又はくさび式足場等の本足場)
H 集合住宅等の建造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール長手方向にわたって設けられるスライド用長溝を有するスライド用レールと、スライド用レールのスライド用長溝に移動可能に係合するランナーと、ランナーに上下両端辺部分を連結するとともにシート折り畳み開放可能なスライド養生シートとを有し、スライド養生シートをその上下辺部分に設けたランナー連結部によって連結されるランナーを介して上下のスライド用レールに取り付けて構成されるスライド養生シート層を、上下多重層に設け、各層のスライド養生シート毎に開閉可能であることを特徴とするスライド開閉式養生シート。
【請求項2】
レールの上下それぞれの面に長手方向にわたって設けられるスライド用長溝を有し枠組足場、くさび式足場等の本足場の外側に水平方向に取り付けられるスライド用レールと、スライド用レールのスライド用長溝に移動可能に係合するランナーと、ランナーに上下両端辺部分を連結するとともにシート折り畳み開放可能なスライド養生シートとを有し、スライド養生シートをその上下辺部分に設けたランナー連結部によって連結されるランナーを介して上下のスライド用レールに取り付けて構成されるスライド養生シート層を本足場の外側に上下多重層に設け、各層のスライド養生シート毎に開閉可能であることを特徴とするスライド開閉式養生シート。
【請求項3】
スライド用レールが、横断面長方形状の直方柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成したスライド用レールである請求項1又は請求項2に記載のスライド開閉式養生シート。
【請求項4】
スライド用レールが、横断面長方形状の直方柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成するとともに、上下面に開口する2つのスライド用長溝の間に長手方向に中間空隙部を設け、
スライド用レールの中間空隙部の両側面には複数の孔を設け、スライド用レールの両端部の孔はスライド用レール同士を長手方向に連結する連結部材の連結孔と係合可能な連結孔であり、中間部分の孔はスライド用レールを枠組足場、くさび式足場等の本足場に固定する取付部材と係合可能な取付孔である請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のスライド開閉式養生シート。
【請求項5】
スライド用レールが、横断面円形状の円柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成したスライド用レールである請求項1又は請求項2に記載のスライド開閉式養生シート。
【請求項6】
スライド用レールが、横断面円形状の円柱体からなり、ランナーが係合し移動可能なスライド用長溝を長手方向の上下面にそれぞれ開口して形成するとともに、連結溝を長手方向の左右横面にそれぞれ開口して形成し、連結溝はスライド用レール同士を長手方向に連結する連結部材及び枠組足場、くさび式足場等の本足場に取り付ける取付部材と係合可能としたスライド用レールである請求項1又は請求項2又は請求項5に記載のスライド開閉式養生シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−90617(P2010−90617A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261791(P2008−261791)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000210883)中央ビルト工業株式会社 (9)
【出願人】(507093226)明治テック株式会社 (4)
【出願人】(500410846)岡田装飾金物株式会社 (12)
【出願人】(506187821)株式会社シミズ・ビルライフケア (1)