説明

スラグ排出装置及びスラグ排出方法

【課題】ガス化炉内で水砕したスラグを安定して排出すること。
【解決手段】本発明のスラグ排出装置は、固体燃料をガス化させるとともに溶融スラグを発生させるガス化部とガス化部より流下する溶融スラグを水砕する冷却水が貯留された貯留ホッパ61とを有するガス化炉1と、このガス化炉の底部と連通され貯留ホッパより排出されたスラグを貯留して排出するスラグロックホッパ9,10を備える。ここで、スラグロックホッパ9,10は、ガス化炉1から排出されるスラグが通流する複数の配管系統(3,4)の先にそれぞれ接続され、配管系統を切り換える切換手段(5,6,7,8)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグ排出装置及びスラグ排出方法に係り、特に石炭に代表される微粉固体炭素燃料や都市ごみなどの廃棄物をガス化させるガス化炉で生じた水砕スラグを連続的に系外へ排出させるためのスラグ排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭等の微粉炭燃料をガス化炉に導いて部分燃焼させるとともに、その燃焼により生じた生成ガスを抜き出してガスタービンなどの発電用として利用する石炭ガス化システムが知られている。このようなガス化システムにおいては、例えば、微粉炭燃料が酸化剤とともに炉内に供給され、1300℃以上の高温雰囲気でガス化されるため、微粉炭燃料中の灰分はその融点以上の温度に加熱されて溶融スラグを発生する。この溶融スラグは炉内を流下して、冷却水が貯留された貯留ホッパ内に導かれ、冷却固化される。冷却固化されたスラグは、貯留ホッパ内に設置されたスラグクラッシャにより細かく粉砕されて冷却水とともに一時貯留された後、ガス化炉内から冷却水とともに抜き出され、炉外のスラグ容器(スラグロックホッパともいう。)内に移送される。
【0003】
一方、スラグ容器内はガス化炉と連通されて加圧状態となっているため、スラグ容器の出入口を閉鎖して容器内の圧力を開放し脱圧を行う。次に、スラグ容器の出口側のみを開放し、脱圧されたスラグ容器内から冷却水とともにスラグを排出する。スラグ容器から排出されたスラグはスラグ分離槽に導かれ、スラグが分離回収される。このようにして回収されたスラグはコンクリートなどに混ぜて、建設用や土木用の資材として再利用される。
【0004】
このように、ガス化炉から排出されたスラグを冷却水とともにスラグ容器内に貯留し、スラグ容器内を脱圧してから、系外に排出するようにしたスラグの排出機構は広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−328069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1をはじめとする従来のスラグ排出機構では、ガス化炉から排出されたスラグをスラグ容器内に一時貯留し脱圧後に排出するスラグの排出系統が1系統になっている。このため、例えば、スラグ容器内を脱圧するときは、スラグ容器とガス化炉を連通する配管が遮断された状態となり、その際にガス化炉内の貯留ホッパに溜められた冷却水中には、ガス化炉の運転により生じたスラグが細かく粉砕されて沈澱する。この状態でスラグ容器内からスラグを排出し、遮断した配管を開放してガス化炉の底部からスラグを抜き出す場合、一時的に貯留ホッパの底部に溜まったスラグには、スラグの抜き出し時と抜き出し停止時の圧力差に伴う動圧がかかり、この動作が繰り返されることによりスラグの圧密化が進行する。そのため、例えば貯留ホッパのスラグ排出部においてスラグのブリッジングが助長され、スラグの閉塞が生じるおそれがある。
【0007】
特に、ガス化炉においてスラグの発生量が多くなったり、貯留ホッパのスラグ排出部が閉塞したりすると、冷却水のレベル計(水位計)がスラグに埋もれ、水位の検出が困難となる。この場合、スラグに同伴して排出される冷却水量が減少することによりスラグの流れが悪くなり、その結果、貯留ホッパやスラグ容器のスラグ排出部、及び貯留ホッパとスラグ容器を連通する配管内で、スラグの詰まりを生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、ガス化炉内で水砕されたスラグを安定して排出させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、固体燃料をガス化させるとともに溶融スラグを発生させるガス化部とガス化部より流下する溶融スラグを水砕する冷却水が貯留された貯留ホッパとを有するガス化炉と、ガス化炉の底部と連通され貯留ホッパより排出されたスラグを貯留して排出するスラグ容器とを備えてなるスラグ排出装置において、スラグ容器は、ガス化炉から排出されるスラグが通流する複数の配管系統の先にそれぞれ接続され、配管系統を切り換える切換手段と、スラグ容器内の圧力を開放する圧力開放手段と、スラグ容器内に貯留されたスラグを排出するスラグ排出手段とを備え、圧力開放手段とスラグ排出手段と切換手段の動作を制御する制御手段と、各スラグ容器から排出されたスラグを回収するスラグバンカと、スラグバンカに回収されたスラグの重量を連続的又は断続的に検出する重量検出手段と、スラグ容器に冷却水を供給する冷却水供給手段が設けられ、制御手段は、重量検出手段によるスラグの重量増加率が規定値未満のとき、スラグを排出するスラグ容器内に冷却水を供給するように制御することを特徴とする。
【0010】
これによれば、ガス化炉内のスラグを排出する配管系統を所定のタイミングで切り換えることにより、ガス化炉からスラグを排出する流路を遮断することなく、いずれかの配管系統を通じてスラグを排出することが可能になる。これにより、貯留ホッパへのスラグの滞留を抑制し、スラグの詰まりを防ぐことができるため、スラグを安定して排出させることが可能となり、ガス化炉の連続運転の信頼性を確保できる。
【0011】
また、すべての配管系統において、排出されたスラグをスラグ容器に導いて脱圧し、その脱圧したスラグを排出することができるため、スラグの排出を容易にすることができる。
【0012】
また、重量検出手段で検出したスラグの重量増加率が規定値未満のとき、すなわち、スラグバンカの重量増加率が低下して規定値に届かない場合、スラグ容器内やその先の配管にスラグの詰まりが生じたものと判断できるため、その際に、スラグを排出するスラグ容器に冷却水を強制的に供給することにより、スラグの詰まりを解消することができる。スラグ流下状態の監視には従来、スラグ流下管の音や振動を検出していたが、発生するスラグの量は石炭の灰分やガス化炉の負荷により変化するため、詰まりの監視では定量的手段が求められる。従って、本発明のように重量を検出することにより、前記変動に応じた詰まりの判断が明確に行える特徴がある。
【0013】
本発明は、このようなスラグ排出装置を用いたスラグ排出方法において、貯留ホッパで水砕されたスラグが連続的に排出されるように、配管系統を切り換えるようにする。すなわち、配管系統の切り換えタイミングは、常にいずれかのスラグ容器が配管系統を介して貯留ホッパと連通されているように制御する。これにより、貯留ホッパで水砕されたスラグを連続的に排出することができるため、スラグの詰まりを抑制し、安定した排出が可能となる。
【0014】
より具体的には、まず、一の配管系統のみを開放してこの配管系統に連通する貯留ホッパにスラグを貯留し、この配管系統を閉じる前に、他の配管系統を開放するように制御する。このようにすれば、常にいずれかの配管系統が開放された状態となるため、貯留ホッパへのスラグの溜まりを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガス化炉内で水砕したスラグを安定して排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用してなるスラグ排出装置の一実施形態の構成図である。
【図2】本発明を適用してなるスラグ排出装置の弁動作の一実施例を説明する図である。
【図3】本発明を適用してなるスラグ排出装置においてスラグを回収するスラグバンカの重量変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用してなるスラグ排出装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなるスラグ排出装置の構成図である。図2は、本発明を適用してなるスラグ排出装置の弁動作を説明する図である。図3は、本発明を適用してなるスラグ排出装置においてスラグを回収するスラグバンカの重量変化を示す線図である。
【0018】
本実施形態では、石炭の微粉炭燃料を固体燃料として使用する石炭ガス化設備を例として説明するが、この燃料は微粉炭燃料に限られず、例えば都市ごみなどの有機廃棄物を燃料として用いる場合にも適用することが可能である。
【0019】
石炭ガス化設備は、大きく分けて前処理設備とガス化炉より構成される。前処理設備では、石炭を粉砕して微粉炭とし、この微粉炭を常圧ホッパに導入し、例えばロックホッパシステムにより加圧した状態でガス化炉に供給する。ガス化炉に供給された微粉炭は、部分燃焼されてガス化される。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のスラグ排出装置は、ガス化炉1、スラグ容器となるスラグロックホッパ9,10、スラグ分離槽19、スラグコンベア20、スラグバンカ21、ロードセル22、制御装置37を備えて構成される。
【0021】
ガス化炉1内には、微粉炭燃料ノズル1aより噴出された微粉炭燃料を空気や酸素などの酸化剤と混合しガス化させるガス化部と、このガス化部の下方に配置され冷却水が貯留された貯留ホッパ61が設けられ、ガス化部より発生した溶融スラグが炉内を流下して貯留ホッパ61の冷却水により水砕されるようになっている。貯留ホッパ61には、スラグクラッシャ2が設置され、冷却水中で水砕されたスラグがさらに細かく粉砕(例えば、粒度2μm程度)されるようになっている。貯留ホッパ61の水面付近には、冷却水の水位を検知するレベル計36が設置されている。
【0022】
ガス化炉1には、貯留ホッパ61に冷却水を供給する給水用配管41と、この冷却水を排水する排水用配管42が接続され、レベル計36が検出した検出水位に基づいて排水用配管42に配設された流量調整弁25が調整され、貯留ホッパ61の冷却水量が調整されるようになっている。給水用配管41には冷却水供給弁27が配設され、排水用配管42には流量調整弁25の上流側と下流側にそれぞれ冷却水排水弁24,流量調整弁26が配設されている。
【0023】
ガス化炉1の底部、つまり貯留ホッパ61の底部には、スラグを排出する配管が接続されており、この配管が二股に分岐された上部配管3,4の先には、それぞれスラグロックホッパ9,10の頂部が接続されている。スラグロックホッパ9,10の底部には、それぞれスラグ排出配管34,35の一端が接続されており、スラグ排出配管34,35の他端は、スラグ分離槽19と接続されている。
【0024】
以下、本実施形態では、ガス化炉1より排出されたスラグが上部配管3、スラグロックホッパ9、スラグ排出配管34を経由してスラグ分離槽19に供給される系路をA系統とし、ガス化炉1より排出されたスラグが上部配管4、スラグロックホッパ10、スラグ排出配管35を経由してスラグ分離槽19に供給される系路をB系統として区別する。
【0025】
スラグ分離槽19には、スラグコンベア20の下端が接続されており、スラグコンベア20の上端の下方には、スラグバンカ21が設けられている。これにより、スラグ分離槽19に回収されたスラグは、冷却水と分離されてスラグコンベア20により搬送され、スラグバンカ21に落下して回収されるようになっている。スラグバンカ21にはロードセル22が設けられ、回収されたスラグを含めたスラグバンカ21の重量が連続的又は断続的に検出されるようになっている。ロードセル22により検出されたスラグバンカ21の重量は、電気信号に変換されて制御装置37に出力され、これを受けた制御装置37は各操作弁の動作を制御するようになっている。ここで、ロードセル22が検出する重量として、回収されたスラグの重量のみを検出し、その検出結果を制御装置37に出力するようにしてもよい。
【0026】
次に、A系統とB系統にかかわる配管構成について詳しく説明する。
A系統では、上部配管3において上流側から上部カット弁5,上部シール弁6が配設されるとともに、スラグ排出配管34において上流側から下部カット弁15,下部シール弁16が配設されている。一方、B系統では、上部配管4において、上流側から上部カット弁7,上部シール弁8が配設されるとともに、スラグ排出配管35において、上流側から下部カット弁17,下部シール弁18が配設されている。また各系統において、上部配管3,4の上部カット弁5,7の上流側には、給水配管43を分岐させた配管44,45がそれぞれ接続される一方、スラグロックホッパ9,10には、給水配管46を分岐させた配管47,48がそれぞれ接続されている。
【0027】
給水配管43には、冷却水供給バルブ28が配設され、配管44,45にはそれぞれ冷却水供給バルブ29,30が配設されている。配管47,48の一端は、例えば、スラグロックホッパ9,10の底部に向けて円錐状に窄ませたホッパの側面の周方向に分岐して接続されている。この配管47,48には、それぞれ冷却水供給弁11,12が配設されている。
【0028】
また、A系統における上部配管3の上部シール弁6の下流側と、B系統における上部配管4の上部シール弁8の下流側には、それぞれ脱圧用配管49,50が接続されており、これらの配管は合流して1本の配管となった後、スラグ分離槽19と接続されるようになっている。脱圧用配管49,50には、それぞれ脱圧遮断弁13,14が配設されている。
【0029】
スラグロックホッパ9,10の上部には、それぞれオーバーフロー配管51,52が接続され、これらの配管は合流して1本の配管となった後、排水用配管42の流量調整弁25,26に挟まれた位置と合流するようになっている。オーバーフロー配管51,52には、それぞれオーバーフロー水用遮断弁31,32が配設され、これらの配管が合流して1本となった配管には、遮断弁33が配設されている。なお、遮断弁33は、レベル計36が検出した検出水位に基づいて制御されるようになっている。
【0030】
次に、このようにして構成されるスラグ排出装置の動作について説明する。なお、本実施形態におけるスラグの排出は、始めにA系統を使用してスラグを排出し、その後、A系統からB系統に切り換えてスラグを排出するようにしている。
【0031】
ガス化炉1に供給された微粉炭は、ガス化部において1300℃以上で部分燃焼されることにより溶融スラグを発生する。この溶融スラグは、炉内を流下して貯留ホッパ61の冷却水に流れ込み、水砕される。その後、スラグクラッシャ2により粒度がさらに細かく粉砕される。
【0032】
ここで、スラグ搬送における弁操作について、図3を用いて説明する。まず、A系統の上部カット弁5,上部シール弁6,オーバーフロー水用遮断弁31を開、下部カット弁15,下部シール弁16を閉とし、B系統の上部カット弁7,上部シール弁8を閉とすることで、A系統のみスラグの受け入れ状態とする。これにより、貯留ホッパ61で細かく粉砕されたスラグは、冷却水に同伴されて、上部配管3を流れ、スラグロックホッパ9に貯留される。スラグロックホッパ9にスラグが一定量貯留された後は、上部カット弁5,上部シール弁6を閉じる。このとき、オーバーフロー水用遮断弁31も閉じる。
【0033】
ここで、A系統の上部カット弁5及び上部シール弁6を閉じる前に、B系統の上部カット弁7,上部シール弁8を開き、一定時間はスラグロックホッパ9及びスラグロックホッパ10にてスラグを受け入れるようにする。これにより、連続的に貯留ホッパ61からスラグが排出される。その後、A系統からB系統へのスラグ受け入れの切り替えを行う。
【0034】
各系統においてスラグを受け入れる前には、冷却水供給弁11,12を開き、配管47,48より供給された冷却水により、スラグロックホッパ9,スラグロックホッパ10をそれぞれ満水にして水張りを行う。また、A系統のスラグ受け入れ時には、冷却水供給バルブ28,29を開とし、B系統のスラグ受け入れ時には、冷却水供給バルブ28,30を開とし、さらにA系統からB系統への切り換え時には、冷却水供給バルブ28,29,30をすべて開とする。このようにして、上部配管3,4に冷却水を流し、スラグロックホッパ9,10に冷却水を溜めておくことにより、ガス化炉1からスラグが排出されてスラグロックホッパに貯留されるまでの間、スラグは高い流動性を保ちながら上部配管3を流れ、スラグの詰まりを生じることなく、スラグロックホッパ9,10に溜められる。また、スラグロックホッパ内でスラグが局所的に滞留することもない。
【0035】
次に、A系統のスラグ受け入れを終了し、スラグロックホッパ9の脱圧を行う。この場合、上部カット弁5,上部シール弁6を閉とし、スラグロックホッパ9のスラグ受け入れを止める。これと同時に、冷却水供給バルブ29も閉とする。その後、脱圧遮断弁13を開き、スラグロックホッパ9内の脱圧を行う。
【0036】
脱圧が終了すると、下部カット弁15,下部シール弁16を開くことにより、スラグロックホッパ9よりスラグが排出される。このときスラグは、冷却水に同伴されてスラグ排出配管34を流れるため、スラグの詰まりを発生することなくスムーズな流れを形成しスラグ分離槽19まで移送される。また、このスラグ排出時に、冷却水供給弁11を開として冷却水をスラグロックホッパ9に供給することもできる。これにより、スラグロックホッパ9のスラグ排出部及びスラグ排出配管34の閉塞をより確実に防止することができる。
【0037】
スラグロックホッパ9に貯留されたすべてのスラグが排出されると、下部カット弁15及び下部シール弁16を閉、冷却水遮断弁11を開とし、冷却水をスラグロックホッパ9に貯留して満水とする。その後、脱圧遮断弁13,冷却水供給遮断弁11を閉じる。
【0038】
一方、B系統では、A系統のスラグ受け入れ終了前に、A系統と同様の弁操作によりスラグロックホッパ10へのスラグ受け入れが開始され、A系統のスラグの受け入れ終了時点で、B系統への切り換えが行われる。そして、B系統ではA系統と同様の操作がなされ、B系統のスラグ受け入れ終了前に再びA系統のスラグ受け入れが開始され、その後、A系統とB系統の切り換えが行われる。このようにして、A系統とB系統の交互の切り換え運転がなされる。
【0039】
一方、スラグロックホッパ9,10から排出されたスラグは、冷却水とともにスラグ分離槽19に一時貯留され、沈澱したスラグはスラグコンベア20によって移送される。これにより冷却水とスラグは分離された状態となる。スラグコンベア20によって移送されたスラグは、スラグバンカ21に落下して回収される。スラグバンカ21は、回収されたスラグとともに、ロードセル22によって重量が連続的又は断続的に検出される。
【0040】
ロードセル22により検出されたスラグバンカ21の重量は、回収されたスラグの総重量を含むため、図3に示すように、時間経過とともに直線状に増加する。ここでは、A系統により払い出されたスラグとB系統により払い出されたスラグが交互に記録され、スラグの排出が正常に行われていれば、図の(1)及び(2)に示すように、時間当たりの重量増加(重量増加率)が一定となるが、図の(3)に示すようにスラグバンカ21の重量増加率が一定でない場合、つまり重量増加率が規定値未満となった場合、A系統のスラグロックホッパ9からのスラグ排出が異常、つまりスラグの詰まりが発生していると判断される。この判断は、ロードセル22より出力された検出信号に基づいて制御装置37により行われる。
【0041】
制御装置37は、A系統のスラグ排出が異常と判断すると、スラグの詰まりの解消するため、冷却水供給弁11の弁開度を増加してスラグロックホッパ9に供給する冷却水量を増加させ、或いは、スラグロックホッパ9に冷却水が供給されていないときは、冷却水を供給し、一定時間経過後、B系統のスラグロックホッパ10からのスラグ排出に切り換えるように制御する。このとき、図3に示すように、A系統ではスラグの受け入れ運転となるが、スラグロックホッパ9の上流側の上部配管3にスラグ詰まりが発生していることも考えられるため、制御装置37は、A系統でのスラグの受け入れ運転時において、冷却水供給バルブ29を調整して冷却水の供給流量を増やし、スラグ詰まりを解消する制御を行う。
【0042】
その後、スラグロックホッパからのスラグ排出は、B系統によるスラグ排出から、再びA系統によるスラグ排出に切り換えられる。ここで、スラグバンカ21の重量増加率が正常であれば、そのまま運転が継続されるが、異常と判断された場合は、制御装置37により、B系統によるスラグ排出に切り換えられ、その間、A系統のメンテナンスが行われる。このメンテナンスの箇所は、上部配管3とスラグロックホッパ9のスラグ排出部に限定され、短時間で実施されるため、B系統の単独運転において貯留ホッパ61のスラグの圧密が生じることはなく、片方の系統における閉塞が発生しても、ガス化炉1は支障なく連続運転を行うことができる。
【0043】
以上述べたように、本実施形態のスラグ排出装置によれば、2つのスラグ排出系統を交互に切り換えて運転することができるため、ガス化炉1内で水砕したスラグを連続的に排出することが可能となる。これにより、従来のスラグ排出装置において頻繁に発生していたガス化炉下部におけるスラグ排出部の閉塞を防止することができ、ガス化炉の連続運転の信頼性を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態のスラグ排出装置では、2つのスラグ排出系統を備える例を説明したが、さらに多くのスラグ排出系を備えていても、スラグを連続的に排出するように切り換え制御を行うことにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ガス化炉
2 スラグクラッシャ
3,4 上部配管
5,7 上部カット弁
6,8 上部シール弁
9,10 スラグロックホッパ
11,12 冷却水供給バルブ
13,14 脱圧遮断弁
15,17 下部カット弁
16,18 下部シール弁
19 スラグ分離槽
20 スラグコンベア
21 スラグバンカ
22 ロードセル
29,30 冷却水供給バルブ
31,32 オーバーフロー水用遮断弁
34,35 スラグ排出配管
36 レベル計
37 制御装置
61 貯留ホッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料をガス化させるとともに溶融スラグを発生させるガス化部と該ガス化部より流下する前記溶融スラグを水砕する冷却水が貯留された貯留ホッパとを有するガス化炉と、前記ガス化炉の底部と連通され前記貯留ホッパより排出されたスラグを貯留して排出するスラグ容器とを備えてなるスラグ排出装置において、
前記スラグ容器は、前記ガス化炉から排出される前記スラグが通流する複数の配管系統の先にそれぞれ接続され、前記配管系統を切り換える切換手段と、前記スラグ容器内の圧力を開放する圧力開放手段と、前記スラグ容器内に貯留された前記スラグを排出するスラグ排出手段とを備え、
前記圧力開放手段と前記スラグ排出手段と前記切換手段の動作を制御する制御手段と、前記各スラグ容器から排出された前記スラグを回収するスラグバンカと、該スラグバンカに回収された前記スラグの重量を連続的又は断続的に検出する重量検出手段と、前記スラグ容器に冷却水を供給する冷却水供給手段が設けられ、
前記制御手段は、前記重量検出手段によるスラグの重量増加率が規定値未満のとき、該スラグを排出するスラグ容器内に冷却水を供給するように制御することを特徴とするスラグ排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスラグ排出装置を用いたスラグ排出方法において、
前記貯留ホッパで水砕された前記スラグが連続的に排出されるように、前記配管系統を切り換えることを特徴とするスラグ排出方法。
【請求項3】
請求項1に記載のスラグ排出装置を用いたスラグ排出方法において、
一の前記配管系統のみを開放して該配管系統に連通する前記貯留ホッパに前記スラグを貯留し、前記一の配管系統を閉じる前に、他の前記配管系統を開放することを特徴とするスラグ排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−265409(P2010−265409A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118721(P2009−118721)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度〜20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)/パイロット試験設備およびゼロエミッション化技術に関する研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)