説明

スラブ軌道補修用のモルタル掘削装置

【課題】CAモルタル掘削時の作業負担の軽減と、迅速な作業の実施と、安定した作業性の確保とを図ることのできるスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置を提供する。
【解決手段】軌道スラブの側縁部と路盤との間のモルタルを削り取るモルタル掘削装置において、軌道スラブ上を軌道スラブの側縁部に沿って走行可能な車体10と、車体を走行させるために車体に搭載された走行用電動モータ30と、車体に搭載されたカッタ駆動用電動モータ50と、車体の左右方向の一側部に上下方向及び左右方向に位置調節可能に取り付けられ且つカッタ駆動用電動モータにより水平面内で回転させられることで、軌道スラブの側縁部と路盤との間のモルタルを削り取るカッタを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の軌道スラブにレールを直結した構造のスラブ軌道の補修用のモルタル掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の高速鉄道の軌道には、図5に示すような、コンクリート製の路盤1の上にプレキャストコンクリート製の軌道スラブ2を据え付け、軌道スラブ2と路盤1との間に緩衝用のCAモルタル(セメントアスファルトモルタル)4を注入し、軌道スラブ2上にレール3を固定した構造のスラブ軌道が採用されている。なお、軌道スラブ2に作用する横荷重を支持するため、路盤1に立設された円柱状の突起5と、軌道スラブ2との間にもCAモルタル6が充填されている。
【0003】
この種のスラブ軌道では、軌道スラブ2に作用するレール3の温度応力や列車の遠心力等の外力によって、CAモルタル4、6が劣化したり疲労したりするため、定期的な補修が必要となる。特に豪雪地域では、露出部分からしみ込んだ水分が凍結・融解を繰り返して劣化を早めるため、比較的短期間のうちに補修が必要となる。
【0004】
例えば、軌道スラブ2の側縁部のCAモルタル4の補修については、図6、図7(a)に示すように、まず、上下左右に位置調整しながら回転式のカッタ7で劣化部分を削り取り、次いで、図7(b)に示すように、削り取った部分に補修材料8を充填するという作業を実施している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来、この種の補修作業に使用するCAモルタル掘削装置(破砕装置とも言う)として、特許文献2に記載のものが知られている。この特許文献2に記載のCAモルタル掘削装置は、スラブ軌道上を走行可能な車体と、この車体上に取り付けられたカッタ駆動機構と、車体の一側部に上下及び前後左右に位置調節可能に取り付けられ且つカッタ駆動機構により水平面内で回転させられるカッタとを備えたものである。
【特許文献1】特開平11−256504号公報
【特許文献2】実公平3−36568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のCAモルタル掘削装置は、作業員が手押しで車体を走行させながらカッタによる掘削を進めるものであり、走行のための駆動力を人力に頼っていたので、作業員の数が多く必要であり、時間もかかり、作業の安定性も低いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、CAモルタル掘削時の作業負担の軽減と、迅速な作業の実施と、安定した作業性の確保とを図ることのできるスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、軌道スラブを路盤上に据え付け、軌道スラブと路盤との間に緩衝用のモルタルを注入し、軌道スラブ上にレールを固定したスラブ軌道の補修用の装置であって、上記軌道スラブの側縁部と路盤との間のモルタルを、軌道スラブの側縁部の外側から削り取るモルタル掘削装置において、上記軌道スラブ上を該軌道スラブの側縁部に沿って走行可能な車体と、上記車体を走行させるために該車体に搭載された走行駆動機構と、上記車体に搭載されたカッタ駆動機構と、上記車体の左右方向の一側部に上下方向及び左右方向に位置調節可能に取り付けられ且つ上記カッタ駆動機構により水平面内で回転させられることで、上記軌道スラブの側縁部と路盤との間のモルタルを、軌道スラブの側縁部の外側から削り取るカッタとを具備することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、上記車体に、上記カッタ駆動機構を支持するカッタ駆動部支持フレームを設け、そのカッタ駆動部支持フレームに、軸線方向を上下に向けて軸受ユニットを固定し、該軸受ユニットにより、軸線を上下に向けたカッタ主軸を回転自在に支持し、このカッタ主軸の下端に上記カッタを取り付けると共に、該カッタ主軸の上端に上記カッタ駆動機構の出力軸を連結したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、装置全体を、少なくとも上記車体と上記走行駆動機構とを備えた車体側ユニットと、少なくとも上記カッタと上記カッタ駆動機構と上記カッタ駆動部支持フレームとを備えたカッタ側ユニットとに2分割し、上記車体側ユニットとカッタ側ユニットとを、車体側ユニットに設けた水平フランジ部にカッタ側ユニットに設けた水平フランジ部を上方から載置して上方からボルトで上記水平フランジ部同士を連結することにより、一体に組立可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、上記車体側ユニットに、上記車体に固定された第1ベースフレームと、該第1ベースフレーム上に左右方向スライド自在に支持された第1可動フレームと、上記第1ベースフレームと第1可動フレームとの間に装備され上記第1可動フレームを第1ベースフレームに対して左右方向に位置調整する左右位置調整機構とを設け、上記カッタ側ユニットに、上記第1可動フレームに着脱自在に固定される第2ベースフレームと、該第2ベースフレーム上に上下方向スライド自在に支持された第2可動フレームと、上記第2ベースフレームと第2可動フレームとの間に装備され上記第2可動フレームを第2ベースフレームに対して上下方向に位置調整する上下位置調整機構とを設け、上記第1可動フレームと上記第2ベースフレームとにそれぞれ上記水平フランジ部を形成して、上記車体側ユニットとカッタ側ユニットとを、車体側ユニットの第1可動フレームに設けた水平フランジ部にカッタ側ユニットの第2ベースフレームに設けた水平フランジ部を上方から載置して上方からボルトで上記水平フランジ部同士を連結することにより、一体に組立可能とすると共に、上記第2可動フレームと上記カッタ駆動部支持フレームとを一体に構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載の発明において、上記カッタ駆動機構として、電動モータを、出力軸を下に向け且つ軸線を垂直な姿勢にして上記カッタ駆動部支持フレームに取り付けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、上記車体の下部の左右方向の一側部に、作業する側の上記軌道スラブの側縁部の上面を転動する車輪が車体の走行方向の前後に離間して少なくとも2個設けられ、上記車体の下部の左右方向の他側部に、作業する側の軌道スラブの側縁部に近い方のレールに支持を取ることで車体のバランスを取り且つ該レールに沿って走行する走行機構が車体の走行方向の前後に離間して少なくとも2個設けられ、上記各走行機構は、上記レールの両側面を挟持した状態で回転する一対のローラと、これら一対のローラを、上記レールを挟持する位置にセットしたり上記レールから取り外す位置にリセットしたりする挟持機構とを備え、上記全ての走行機構の少なくとも1個のローラが駆動ローラとされ、この駆動ローラに、上記走行駆動機構として設けられた電動モータの出力軸が連結されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の発明において、上記車輪および上記走行駆動機構として設けられた電動モータを、着脱自在に上記車体側ユニットに装備するとともに、上記カッタ駆動機構として設けられた電動モータを、着脱自在に上記カッタ駆動部支持フレームに取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明のモルタル掘削装置は、車体に走行駆動機構を搭載しているので、自走することができる。従って、作業員による押し走行が不要であり、労力を軽減することができると共に、走行速度が自由に調節できることにより、モルタルのカット作業を安定性よく実施することができる。
【0016】
請求項2の発明のモルタル掘削装置は、カッタ駆動機構の出力軸とカッタとを繋ぐカッタ主軸を、カッタ駆動部支持フレームに固定した軸受ユニットにより回転自在に支持したから、カッタ駆動機構とカッタとの間の距離に拘わらず、カッタの回転振れ防止を図ることができる。また、カッタ主軸とカッタ駆動機構の出力軸の間に歯車機構などを設けることにより、カッタ駆動機構の配置の自由度を広げることができる。
【0017】
請求項3の発明のモルタル掘削装置は、装置全体を車体側ユニットとカッタ側ユニットとに分割したので、軌道スラブ上に装置をセットする場合の運搬作業を分割して行うことができる。即ち、最初に車体側ユニットを運んで軌道スラブ上にセットし、次にカッタ側ユニットを運んで、先にセットしてある車体側ユニットに組み付けることができる。このように運搬作業を分けて行うことができるので、1回に運ぶ荷重を減らすことができて運搬に必要な要員数や労力を少なくすることができる。
【0018】
また、車体側ユニットに設けた水平フランジ部にカッタ側ユニットに設けた水平フランジ部を載せた状態で、上方からボルトで両水平フランジ部同士を連結するようにしているので、組み立てや取り外し作業を容易に行うことができる。
【0019】
請求項4の発明のモルタル掘削装置は、車体側ユニットとカッタ側ユニットとに、カッタの左右方向の位置を調整する手段(第1ベースフレームと第1可動フレームと左右位置調整機構)と、カッタの上下方向の位置を調整する手段(第2ベースフレームと第2可動フレームと上下位置調整機構)とを分担して装備させたので、各ユニットの重量をバランスよく分散することができ、運搬の容易化に寄与することができる。
【0020】
請求項5の発明のモルタル掘削装置は、カッタ駆動機構として、電動モータを、出力軸を下に向け且つ軸線を垂直な姿勢にしてカッタ駆動部支持フレームに取り付けているので、左右方向への張り出し寸法を少なくしたコンパクトな形態でカッタ駆動機構を装備することができる。また、電動モータを縦姿勢で据え付けることになるので、カッタ側ユニットを縦長のユニットとして構成することができ、少人数でバランスよく運搬できるようになる。
【0021】
請求項6の発明のモルタル掘削装置は、軌道スラブの側縁部の上面を転動する走行車輪と、片方のレールに支持を取って走行可能な走行機構とで車体のバランスを保持するので、車体を最小の大きさに制限することができる。また、一対のローラでレールの両側面を挟持するようにしているので、脱輪する心配がなく、レールに沿って車体を安定走行させることができる。
【0022】
請求項7の発明のモルタル掘削装置は、車輪および走行駆動機構としての電動モータを車体側ユニットに着脱自在に装備させ、かつカッタ駆動機構としての電動モータをカッタ駆動部支持フレームに着脱自在に取り付けたため、上記車体側ユニットとカッタ側ユニットの分割に加えて、これらの車輪や電動モータも取り外して運搬することにより、著しく必要な要員数や労力を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は実施形態のCAモルタル掘削装置の平面図、図2は図1のII−II矢視断面図、図3は図1のIII−III矢視断面図、図4は運搬時の装置の分割の様子を示す断面図である。
【0024】
このCAモルタル掘削装置は、図5に示すように、軌道スラブ2を路盤1上に据え付け、軌道スラブ2と路盤1との間に緩衝用のCAモルタル(セメントアスファルトモルタル)4を注入し、軌道スラブ2上にレール3を固定したスラブ軌道の補修用の装置であり、図2に示すように、軌道スラブ2の側縁部と路盤1との間のCAモルタル4を、軌道スラブ2の側縁部の外側から削り取るためのものである。
【0025】
そのために、このCAモルタル掘削装置は、軌道スラブ2上を軌道スラブ2の側縁部に沿って走行可能な車体10と、車体10を走行させるために車体10に搭載された走行用電動モータ(走行駆動機構)30と、車体10にカッタ駆動部支持フレーム42を介して搭載されたカッタ駆動用電動モータ(カッタ駆動機構)50と、車体10の左右方向の一側部に上下方向及び左右方向に位置調節可能に取り付けられ且つカッタ駆動用電動モータ50により水平面内で回転させられることで、軌道スラブ2の側縁部と路盤との間のCAモルタル4を軌道スラブ2の側縁部の外側から削り取るカッタ60とを具備している。
【0026】
車体10は、左右方向に平行に延びる前後2本のビーム11A、11Bと、それら2本のビーム11A、11Bの間に支持固定された第1ベースフレーム12とを有している。図1及び図3に示すように、車体10の下部の左右方向の一側部には、作業する側の軌道スラブ2の側縁部の上面を転動する車輪21が取り付けられている。これら車輪21は、2本のビーム11A、11Bにそれぞれフランジ290を介してワンタッチで着脱自在に設けられて、2本のビーム11A、11Bの下面にそれぞれ位置することにより、車体10の走行方向の前後に互いに離間して配置されている。なお、図3に示すように、車輪21は、ビーム11A、11Bの高さを調節可能な高さ調節ネジ機構29が取り付けられている。
【0027】
また、車体10の下部の左右方向の他側部には、作業する側の軌道スラブ2の側縁部に近い方のレール3に支持を取ることで車体10のバランスを取り、且つ、そのバランスを取った状態でレール3に沿って走行する走行機構22が設けられている。これらの走行機構22も、2本のビーム11A、11Bにそれぞれ装備されることで、車体10の走行方向の前後に互いに離間して配置されている。
【0028】
各走行機構22は、レール3の両側面を挟持した状態で回転する一対のローラ23A、23Bと、レール3の上面に乗ることでレール3に荷重を伝える小車輪23C(単に滑り移動するものでも可)と、上記一対のローラ23A、23Bを、レール3を挟持する位置にセットしたり、レール3から取り外す位置にリセットしたりする挟持機構28とを有している。
【0029】
各走行機構22の内側のローラ23Aは、ビーム11A、11Bに固定された固定ブロック24に回転自在に支持され、外側のローラ23Bは、ビーム11A、11Bに沿って左右方向スライド自在に設けられたスライドブロック27に回転自在に支持されている。また、各スライドブロック27は、挟持機構28のハンドル28Hを回すことで、移動位置が調整されるようになっている。従って、スライドブロック27を移動させて、外側のローラ23Bを内側のローラ23Aに対して接近させたり離間させたりすることで、両ローラ23A、23Bでレール3を挟んだり挟むのを解除したりすることができる。
【0030】
1つの走行機構22の内側のローラ23Aは走行用の駆動ローラとして構成されており、図3に示すように、その駆動ローラ23Aのシャフト25が固定ブロック24の上側に貫通している。そして、その貫通したシャフト25の上端に歯車26、31を介して走行用電動モータ30の出力軸が連結され、走行用電動モータ30を駆動して駆動ローラ(1個のローラ23A)を回転させることにより、車体10をレール3に沿って走行させることができるようになっている。なお、この走行用電動モータ30は、歯車31とともに車体10に着脱自在に設けられている。
【0031】
また、このCAモルタル掘削装置の装置全体は、車体側ユニットAとカッタ側ユニットBに分割されている。車体側ユニットAには、少なくとも車体10と、走行用電動モータ30と、走行機構22や車輪21等が含まれている。また、カッタ側ユニットBには、少なくともカッタ60と、カッタ駆動用電動モータ50と、カッタ駆動部支持フレーム42と、後述する第2ベースフレーム41等が含まれている。
【0032】
車体10を構成する第1ベースフレーム12上には、スライドガイド15を介して左右方向スライド自在に第1可動フレーム13が支持されている。
この第1の可動フレーム13は、第1ベースフレーム12上の矩形板状の第1可動フレーム本体13aと、その左右方向における車輪21側端部かつビーム11A側端部に位置する角部と一体に設けられて、レール13と平行にビーム11Aに向けて垂直に配設された軸受板13bとを有している。
この第1のベースフレーム12と第1の可動フレーム13との間には、軸受板13bに形成されたネジ穴に螺合する左右位置調整機構14が装備されている。
この左右位置調整機構14は、ネジ式のもので、ネジの先端に取り付けたハンドル14Hを回すことで、第1可動フレーム13の左右方向の位置を調節できるようになっている。車体側ユニットAには、これら第1可動フレーム13及び左右位置調整機構14までが含まれている。
【0033】
カッタ側ユニットBには、第1可動フレーム13に着脱自在に固定される第2ベースフレーム41と、第2ベースフレーム41上にスライドガイド43を介して上下方向スライド自在に支持された第2可動フレーム(カッタ駆動部支持フレーム)42と、第2ベースフレーム41と第2可動フレーム42との間に装備され、第2可動フレーム42を第2ベースフレーム41に対して上下方向に位置調整する上下位置調整機構45とが含まれている。ここで、第2可動フレーム42は、カッタ駆動部支持フレーム(同符号42で示す)と一体に構成されている。この上下位置調整機構45はネジ式のもので、ネジの先端に取り付けたハンドル45Hを回すことで、第2可動フレーム(カッタ駆動部支持フレーム)42の上下方向の位置を調節できるようになっている。
【0034】
上述した車体側ユニットAに含まれる第1可動フレーム13と、カッタ側ユニットBに含まれる第2ベースフレーム41とには、図4に示すように、それぞれ水平フランジ部RA、RBが形成されており、車体側ユニットAとカッタ側ユニットBとを合体する際に、車体側ユニットAの第1可動フレーム13に設けた水平フランジ部RAに、カッタ側ユニットBの第2ベースフレーム41に設けた水平フランジ部RBを上方から載置して、上方からボルトで水平フランジ部RA、RB同士を連結することにより、両ユニットA、Bを一体に組み立てることができるようになっている。
【0035】
また、カッタ駆動部支持フレーム(第2可動フレーム)42には、カッタ駆動用電動モータ50が、出力軸を下に向け且つ軸線を垂直な姿勢にして着脱自在に取り付けられており、その下側には、カッタ駆動部支持フレーム42に固定されることで、軸線方向を上下に向けた軸受ユニット61が配置されている。軸受ユニット61には、軸線を上下に向けたカッタ主軸62が回転自在に支持されており、軸受ユニット61を貫通したカッタ主軸62の下端にカッタ60が取り付けられ、上端にカッタ駆動用電動モータ50の出力軸が歯車51、63を介して連結されている。
【0036】
次に作用を述べる。
軌道スラブ2の側縁部のCAモルタル4を削り取る作業を行う場合は、まず、車輪21、走行用電動モータ30およびカッタ駆動用電動モータ50を取り外した状態で、2つに分割された車体側ユニットA、カッタ側ユニットBのうち、車体側ユニットAを運搬して軌道スラブ2上にセットする。即ち、何人かの作業員で車体側ユニットAとともに車輪21および走行用電動モータ30を運搬した後に、車輪21を車体側ユニットAに取り付けて、持ち上げることにより、車輪21を軌道スラブ2の側縁部の上面に載せる。また、走行機構22の固定側のローラ23Aをレール3の外側の側面に当接させつつ、小車輪23Cをレール3の上面に載せる。
【0037】
次いで、可動側のローラ23Bを、挟持機構28のハンドル28Hを回して移動し、レール3の内側の側面に当接させる。両方のローラ23A、23Bをレール3の両側面に適当な荷重で当接させることにより、走行機構22をレール3に係合させることができ、それにより、車体10をバランス良く軌道スラブ2上にセットすることができる。その後、走行用電動モータ30を車体側ユニットAに取り付ける。
【0038】
次に、カッタ側ユニットBをカッタ駆動用電動モータ50とともに運搬した後に、カッタ側ユニットBを何人かの作業員で持ち上げて、車体側ユニットAに組み付ける。その場合、図4に示すように、カッタ側ユニットBの第2ベースフレーム41の水平フランジ部RBを、車体側ユニットAの第1可動フレーム13の水平フランジ部RAに上方から載置して、その状態で上方からボルト100を締め込むことにより、両水平フランジ部RA、RB同士を連結する。次いで、カッタ側ユニットBに、カッタ駆動用電動モータ50を取り付けて、車体側ユニットAにカッタ側ユニットBを合体させることができる。
【0039】
以上によりCAモルタル掘削装置の据え付けが完了する。
あとは、左右位置調整機構14のハンドル14Hや上下位置調整機構45のハンドル45Hを操作して、カッタ60の位置を調整し、カッタ駆動用電動モータ50を駆動することによりカッタ60を回転させてCAモルタル4を削り取る。また、走行用電動モータ30を駆動することにより、車体10を走行させて、軌道スラブ2の側縁部に沿って削り取り作業を進めて行く。
【0040】
以上のように、本実施形態のCAモルタル掘削装置は、車体10に走行用電動モータ30を搭載しているので、自走することができる。従って、作業員による押し走行が不要であり、労力を軽減することができると共に、走行速度が自由に調節できることにより、CAモルタルのカット作業を安定性よく実施することができる。
【0041】
また、カッタ駆動用電動モータ50の出力軸とカッタ60とを繋ぐカッタ主軸62を、カッタ駆動部支持フレーム42に固定した軸受ユニット61により回転自在に支持しているので、カッタ駆動用電動モータ50とカッタ60との間の距離に拘わらず、カッタ60の回転振れ防止を図ることができる。また、カッタ主軸62とカッタ駆動用電動モータ50の出力軸の間に歯車51、63を設けているから、カッタ駆動用電動モータ50の配置の自由度を広げることができる。つまり、図2に示すように、カッタ60の回転軸線L1よりカッタ駆動用電動モータ50の回転軸線L2を外側に配置することができ、結果的にカッタ駆動用電動モータ50の位置を下げることができるようになる。
【0042】
また、本実施形態のCAモルタル掘削装置は、装置全体を車体側ユニットAとカッタ側ユニットBとに分割しているので、軌道スラブ2上に装置をセットする場合の運搬作業を分割して行うことができる。即ち、最初に車体側ユニットAを運んで軌道スラブ2上にセットし、次にカッタ側ユニットBを運んで、先にセットしてある車体側ユニットAに組み付けることができる。このように運搬作業を分けて行うことができるので、1回に運ぶ荷重を減らすことができて運搬に必要な要員数や労力を少なくすることができる。加えて、車輪21、走行用電動モータ30およびカッタ駆動用電動モータ50を着脱自在に設けたため、上記車体側ユニットAとカッタ側ユニットBの分解に加えて、これらの車輪21やモータ30、50も取り外して、運搬することにより、著しく必要な要員数や労力を減少させることができる。
【0043】
また、車体側ユニットAに設けた水平フランジ部RAにカッタ側ユニットBに設けた水平フランジ部RBを載せた状態で、上方からボルト100で両水平フランジ部RA、RB同士を連結するようにしているので、組み立てや取り外し作業を容易に行うことができる。
【0044】
また、車体側ユニットAとカッタ側ユニットBとに、カッタ60の左右方向の位置を調整する手段(第1ベースフレーム12と第1可動フレーム13と左右位置調整機構14)と、カッタ60の上下方向の位置を調整する手段(第2ベースフレーム41と第2可動フレーム42と上下位置調整機構45)とを分担して装備させているので、各ユニットA、Bの重量をバランスよく分散することができ、運搬の容易化に寄与することができる。
【0045】
また、カッタ駆動用電動モータ50を、出力軸を下に向け且つ軸線を垂直な姿勢にしてカッタ駆動部支持フレーム42に取り付けているので、左右方向への張り出し寸法を少なくしたコンパクトな形態でカッタ駆動用電動モータ50を装備することができる。また、カッタ駆動用電動モータ50を縦姿勢で据え付けているので、カッタ側ユニットBを縦長のユニットとして構成することができ、少人数でバランスよく運搬できるようになる。
【0046】
また、本実施形態のCAモルタル掘削装置は、軌道スラブ2の側縁部の上面を転動する車輪21と、片方のレール3に支持を取って走行可能な走行機構22とで車体のバランスを保持するようにしているので、車体10を最小の大きさに制限することができる。また、一対のローラ23A、23Bでレール3の両側面を挟持するようにしているので、脱輪する心配がなく、レール3に沿って車体10を安定走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態のCAモルタル掘削装置の平面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】運搬時の装置の分割の様子を示す断面図である。
【図5】スラブ軌道の構成を示す斜視図である。
【図6】スラブ軌道のCAモルタルの補修時の状態を示す断面図である。
【図7】スラブ軌道のCAモルタルの補修の工程(a)、(b)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 路盤
2 軌道スラブ
3 レール
4 CAモルタル
10 車体
12 第1ベースフレーム
13 第1可動フレーム
14 左右位置調整機構
21 車輪
22 走行機構
23A,23B ローラ
28 挟持機構
30 走行用電動モータ(走行駆動機構)
41 第2ベースフレーム
42 カッタ駆動部支持フレーム(第2可動フレーム)
45 上下位置調整機構
50 カッタ駆動用電動モータ(カッタ駆動機構)
60 カッタ
61 軸受ユニット
62 カッタ主軸
100 ボルト
A 車体側ユニット
B カッタ側ユニット
RA,RB 水平フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道スラブを路盤上に据え付け、軌道スラブと路盤との間に緩衝用のモルタルを注入し、軌道スラブ上にレールを固定したスラブ軌道の補修用の装置であって、上記軌道スラブの側縁部と路盤との間のモルタルを、軌道スラブの側縁部の外側から削り取るモルタル掘削装置において、
上記軌道スラブ上を該軌道スラブの側縁部に沿って走行可能な車体と、
上記車体を走行させるために該車体に搭載された走行駆動機構と、
上記車体に搭載されたカッタ駆動機構と、
上記車体の左右方向の一側部に上下方向及び左右方向に位置調節可能に取り付けられ且つ上記カッタ駆動機構により水平面内で回転させられることで、上記軌道スラブの側縁部と路盤との間のモルタルを、軌道スラブの側縁部の外側から削り取るカッタとを具備することを特徴とするスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置。
【請求項2】
上記車体に、上記カッタ駆動機構を支持するカッタ駆動部支持フレームを設け、そのカッタ駆動部支持フレームに、軸線方向を上下に向けて軸受ユニットを固定し、該軸受ユニットにより、軸線を上下に向けたカッタ主軸を回転自在に支持し、このカッタ主軸の下端に上記カッタを取り付けると共に、該カッタ主軸の上端に上記カッタ駆動機構の出力軸を連結したことを特徴とする請求項1に記載のスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置。
【請求項3】
装置全体を、少なくとも上記車体と上記走行駆動機構とを備えた車体側ユニットと、少なくとも上記カッタと上記カッタ駆動機構と上記カッタ駆動部支持フレームとを備えたカッタ側ユニットとに分割し、
上記車体側ユニットとカッタ側ユニットとを、車体側ユニットに設けた水平フランジ部にカッタ側ユニットに設けた水平フランジ部を上方から載置して上方からボルトで上記水平フランジ部同士を連結することにより、一体に組立可能としたことを特徴とする請求項2に記載のスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置。
【請求項4】
上記車体側ユニットに、上記車体に固定された第1ベースフレームと、該第1ベースフレーム上に左右方向スライド自在に支持された第1可動フレームと、上記第1ベースフレームと第1可動フレームとの間に装備され上記第1可動フレームを第1ベースフレームに対して左右方向に位置調整する左右位置調整機構とを設け、
上記カッタ側ユニットに、上記第1可動フレームに着脱自在に固定される第2ベースフレームと、該第2ベースフレーム上に上下方向スライド自在に支持された第2可動フレームと、上記第2ベースフレームと第2可動フレームとの間に装備され上記第2可動フレームを第2ベースフレームに対して上下方向に位置調整する上下位置調整機構とを設け、
上記第1可動フレームと上記第2ベースフレームとにそれぞれ上記水平フランジ部を形成して、上記車体側ユニットとカッタ側ユニットとを、車体側ユニットの第1可動フレームに設けた水平フランジ部にカッタ側ユニットの第2ベースフレームに設けた水平フランジ部を上方から載置して上方からボルトで上記水平フランジ部同士を連結することにより、一体に組立可能とすると共に、
上記第2可動フレームと上記カッタ駆動部支持フレームとを一体に構成したことを特徴とする請求項3に記載のスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置。
【請求項5】
上記カッタ駆動機構として、電動モータを、出力軸を下に向け且つ軸線を垂直な姿勢にして上記カッタ駆動部支持フレームに取り付けたことを特徴とする請求項3または4に記載のスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置。
【請求項6】
上記車体の下部の左右方向の一側部に、作業する側の上記軌道スラブの側縁部の上面を転動する車輪が車体の走行方向の前後に離間して少なくとも2個設けられ、
上記車体の下部の左右方向の他側部に、作業する側の軌道スラブの側縁部に近い方のレールに支持を取ることで車体のバランスを取り且つ該レールに沿って走行する走行機構が車体の走行方向の前後に離間して少なくとも2個設けられ、
上記各走行機構は、上記レールの両側面を挟持した状態で回転する一対のローラと、これら一対のローラを、上記レールを挟持する位置にセットしたり上記レールから取り外す位置にリセットしたりする挟持機構とを備え、
上記全ての走行機構の少なくとも1個のローラが駆動ローラとされ、この駆動ローラに、上記走行駆動機構として設けられた電動モータの出力軸が連結されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置。
【請求項7】
上記車輪および上記走行駆動機構として設けられた電動モータを、着脱自在に上記車体側ユニットに装備するとともに、上記カッタ駆動機構として設けられた電動モータを、着脱自在に上記カッタ駆動部支持フレームに取り付けたことを特徴とする請求項6に記載のスラブ軌道補修用のモルタル掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−308878(P2008−308878A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157475(P2007−157475)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】