説明

スラリーの製造方法

【課題】スラリーの状態、スラリーの製造、スラリーの後加工、スラリーを用いて生産した最終製品のそれぞれに関する管理パラメータを、源流管理を含めて、一貫的に、総合的に管理する製造法を提供する。
【解決手段】固液分散系における粒子の濃度、及び、スラリー粘度は、粒子の乾燥状態における一次粒子径をDとし、粒子の凝集による凝集粒子径をD0としたとき、(D/D0)で表される凝集度と、スラリー粘度との関係を示すデータから得られる球状顆粒領域及び非球状顆粒領域のうち、球状顆粒領域内に入るように選定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーおよびスラリーの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に固体粒子を分散混合した固液分散系としてのスラリーは、ファインセラミクス分野だけでなく、砥粒、セメント、樹脂、塗料など、広い産業分野で用いられている。スラリーには、流動性、塗布特性、ポットシェルライフなどの固液分散系としての特性のみならず、スラリーを材料として用いる後加工に対しても必要な諸特性も求められる。これは、スラリーが顆粒等のような粒状の形状や、押出しシートのような平板状の形状、または、射出成形のように三次元立体形状に後加工されて形成されて利用されるなどの場合が多いからであり、このような場合に、スラリー自体の性状が後加工性や後加工された製品の特性にも大きな影響を与えるからである。
【0003】
このようにスラリーは、産業上、重要な利用価値があるので、従来からスラリー特性やスラリーを後加工する際に求められる諸特性に関して、様々な研究が蓄積されてきた。例えば、研磨スラリーに関して連続調合を可能にするシステム(特許文献1)、重合体と無機粒子をζ電位の調整により分散させるスラリー(特許文献2)、複写機用トナー(特許文献3)、分散剤を含むセラミック原料としてのスラリー(特許文献4)、セラミックグリーンシートの製造方法(特許文献5)などに最近の動向を見ることができる。
【0004】
このように、スラリーの特性は、固液分散系として溶媒だけでなく固体粒子(一次粒子とも言う)の固液界面を含めた化学的、物理的、電気化学的な影響も受ける。
【0005】
さらに、セラミックを例に取れば、スラリーを顆粒やグリーンシートに腑形したのち成形するなどの後工程での顆粒の流れ性や成型特性、その後の焼結特性などにも大きな影響を与える。このように、スラリーに求められる特性には、いろいろな要因が複雑に絡み合っている。
【0006】
そこで、噴霧乾燥法による顆粒の製造過程に注目し、結合剤と乳化剤を併用する例(特許文献6)や、真円度のある顆粒を造粒する際に結合剤を溶解し難い溶媒を加える例(特許文献7)などがあり、さらには、最近でもスラリーのpH調整条件と顆粒の形状の関係をモデル化する研究(非特許文献1)などがある。
【0007】
また、添加剤を用いるマクロな分散や重合体の官能基によるζ電位の調整等の手法も知られている(特許文献8など)。
【0008】
更に、スラリーを原料として顆粒を造粒する場合に、顆粒の嵩密度や顆粒の粒径に着目してインペラの抵抗から造粒作業を管理しようとする対応(特許文献9等)も知られている。
【0009】
ところで、顆粒に要求される最も重要な事項は、如何に成型し易い中実球状顆粒を作り上げるかである。
【0010】
ところが、上述した従来手法では、スラリーの製造、または、スラリーの状態、スラリーの後加工、スラリーを用いて生産した最終製品のそれぞれに関する管理パラメータは個々の工程毎に把握されていても、出発原料から最終製品に至る全体を通じた工程の関連の中で、中実球状顆粒を作り上げる管理パラメータとなる本質的な特性要件が明確にされておらず、このため、製品にバラツキや不良が生じるという問題が、依然として未解決のまま残されていた。
【特許文献1】特開2000−308957号公報
【特許文献2】特開2000−273311
【特許文献3】特開2001−31427号公報
【特許文献4】特開2001−48654号公報
【特許文献5】特開200I−31474号公報
【特許文献6】特公昭63−27051号公報
【特許文献7】公昭63−29579号公報
【特許文献8】特開2000−273311号公報
【特許文献9】特開2001−29769号公報
【非特許文献1】日本窯業学会誌、106巻12号(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、球状顆粒の生成に適したスラリー、スラリー管理方法、スラリーの製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1.スラリー上述した課題を解決するため、まず、本発明は、固体成分の粒子が液中で固液分散系を構成するスラリーにおいて、前記粒子の濃度は、前記粒子の分散状態における一次粒子の平均粒径をDとし、前記粒子の凝集による凝集粒子の平均粒径をD0としたとき、(D/D0)で表される凝集度と、スラリー粘度との関係を示すデータから得られる球状顆粒領域及び非球状顆粒領域のうち、前記球状顆粒領域内に入るように選定されている。
【0013】
即ち、固体成分の粒子が液中で固液分散系を形成するスラリーにおいて、凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係を示す実験データから、例えば、グラフを作成した場合、このグラフは、球状顆粒領域及び非球状顆粒領域を示すことが解った。従って、あるスラリーの粒子の濃度またはスラリー粘度が、このグラフの示す球状顆粒領域内に入っていれば、当該スラリーは球状顆粒の製造を保証することになる。
【0014】
凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係は、スラリーに含まれる粒子材料毎に異なるが、何れの場合も、グラフ化した場合には、球状顆粒領域及び非球状顆粒領域を示す。従って、スラリーに含まれる粒子材料毎に凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係データを実験的に収集しておくことにより、粒子材料毎に、球状顆粒の得るのに適したスラリーを得ることができる。
【0015】
ところで、本発明を、ファインセラミクス分野に適用する場合、スラリーには、セラミックス粉体、バインダ、分散剤、可塑材等が含まれ、更には、消泡剤や凝集剤等が含まれることもある。これらの組成分を混合して撹拌しスラリーを製造する。
【0016】
ところが、上述した本発明の教示にしたがって、スラリーの粘度、および、セラミックス粉体の濃度を、球状顆粒領域に入るように選定した場合でも、長時間にわたって撹拌を継続すると、バインダの量やセラミック粉体の濃度によっては、球状顆粒領域から非球状顆粒領域に入ってしまうことがあり、例えば、スプレードライヤ等で造粒している過程で、スラリー性状が変化し、初期は中実球状の顆粒が得られていたものが、陥没状の顆粒になることがある、ということが分かった。
【0017】
この経時的変化の問題点を解消すべく、本発明者らは鋭意研究を進めた。その結果、ある種の添加物が、撹拌による非球状顆粒領域移行現象を抑止するのに、極めて有効であることを見出した。この添加物は、少なくとも一つの水酸基を有し、かつカルボキシル基、カルボキシレート、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、アミン、及び第4級アミン塩からなる群から選択される官能基を有する非重合体の有機化合物である。
【0018】
例として、有機化合物は、水酸基含有カルボン酸、水酸基含有カルボキシレート、水酸基含有スルホン酸、水酸基含有スルホン酸塩、水酸基含有リン酸、水酸基含有リン酸塩、水酸基含有アミン、及び水酸基含有第4級アンモニウム塩からなる群から選択されうる。さらに詳しくは、この有機化合物は、クエン酸、メソ酒石酸、水酸基含有低級カルボン酸、水酸基含有低級アルケニルカルボン酸、水酸基含有低級アルキニルカルボン酸、水酸基含有芳香族カルボン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択されうる。
【0019】
ファインセラミクス分野への適用において、更に研究を進めて行くうちに、組成、および、製造プロセスは同一であるが、製造ロットの異なる複数種のセラミックス粉体を用いた場合、あるロットのセラミックス粉体では球状顆粒領域内に入るのに、他のロットのセラミックス粉体では、非球状顆粒領域に入ってしまうという問題に直面した。この問題点は、工業的量産に直接に影響を与えるので、是非解決しなければならない問題である。
【0020】
この問題点を解決するため、本発明者らは、更に、鋭意研究を進めた。その結果、この問題を解決するのに、アルカリの添加が極めて有効であることを見出した。具体例としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0021】
2.スラリーの管理方法本発明に係るスラリーの管理方法では、前記スラリーを平坦な樹脂面上に滴下して、半球状の液滴を形成する。次に、前記液滴を加熱して液相分の含有量を減らし、その乾燥過程における半球状液滴の形状の変化によってスラリーの性状を判定する。
【0022】
本発明に係るスラリー管理方法によれば、用意されたスラリーが、球状顆粒を得るのに適しているか否かを、模擬的に検証することができる。
【0023】
スラリーの管理方法は、具体的には、前記乾燥によって前記液滴が凹む程度を、顆粒としたときの真球性及び非真球性の判定基準とする。更に具体的には、前記乾燥によって前記液滴が凹む場合は顆粒の真球性が得られず、凹まない場合は真球性が得られると判定する。
【0024】
3.スラリーの製造方法本発明に係るスラリーの製造に当っては、粒子の分散状態における一次粒子の平均粒径Dと、粒子の凝集による凝集粒子の平均粒径D0との比(D/D0)で表される凝集度と、スラリー粘度との関係を示すデータを準備する。
【0025】
次に、固液分散系における粒子の濃度を、前記データを用いて得られる球状顆粒領域及び非球状顆粒領域のうち、前記球状顆粒領域内に入るように選定する。
【0026】
本発明に係るスラリーの製造方法によれば、スラリーの後加工である顆粒の生成に要求される粒子の分散状態、粒子状態の実現、および、その分散状態を維持し得る。しかも、本発明に係るスラリーの製造方法は、固液が多様な態様で混在する複合体である固液分散系に広範囲に適用できる。また、スラリーの後加工、スラリーを用いて生産した最終製品のそれぞれに関する管理パラメータを、スラリーの性状として源流管理することができる。
【0027】
凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係を示すデータは、スラリーを構成する粒子材料毎に実験して収集しておく。収集された凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係を示すデータは、コンピュータに蓄積しておき、コンピュータのディスプレイ上にグラフとして示すことができる。このディスプレイ上のグラフは、球状顆粒領域及び非球状顆粒領域を示す。
【0028】
そこで、対象とするスラリーにおける粒子の濃度またはスラリー粘度を、グラフ上に示される球状顆粒領域及び非球状顆粒領域のうち、前記球状顆粒領域内に入るように、設定する。これにより、球状顆粒を作成することが可能になる。
【0029】
収集された凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係を示すデータは、紙面上でグラフ化しておき、これを、データシートとして利用してもよい。
重複説明は省略するが、本発明に係るスラリーの製造方法は、上述した本発明に係るスラリーを得るための全てのステップを包含する。
【0030】
更に、本発明に係る製造方法は、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体とするために撹拌するステップを含むことができる。この場合、撹拌時間を調整し、前記集合体化を制御することができる。
【0031】
別の手段として、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体にするために、溶媒特性を調整してもよい。
【0032】
更に別の手段として、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体にするために、前記粒子の平均粒度分布を調整するステップを採用することもできる。
【0033】
更に別の手段として、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体にするために、粒子間のζ電位を調整してもよい。
【0034】
スラリーの性状は、粒子が溶媒中でフロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成する凝集度によって制御することができる。スラリーの性状は、粒子固有の等電点と、溶媒と粉の相互作用のζ電位(表面電位)と、溶媒のpHの少なくとも1つによって制御してもよい。
【0035】
4.顆粒本発明に係る顆粒は、上述した本発明に係るスラリーから造粒される。この顆粒は、球状であり、フロック様、または、フロック前駆体の凝集した集合体が内部で骨格を形成している。
【0036】
上述した本発明に係る顆粒は、乾式成型、射出成型、シート成型等に用いられる。ここで、本発明に係る顆粒は、球状であり、フロック様、または、フロック前駆体の凝集した集合体が内部で骨格を形成しているから、乾式成型、射出成型、シート成型等によって得られる最終製品として特性の優れたものを得ることができる。
【0037】
中実球状顆粒を得るためには、前記粒子は、細粒と、粗粒とを含み、前記細粒が、他の細粒、または、前記粗粒に付着してフロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成していることが好ましい。別の態様として、粗粒は前記細粒を集めたフロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成していてもよい。中実球状顆粒を得るためには、顆粒の表面近傍と内部の中央近傍で細粒と粗粒との相対密度差が少ないことが好ましい。
【0038】
空隙を残して凝集したフロック様、または、フロック前駆体の集合体を有すること、立体障害となる粗粒、または、立体障害となるフロック様もしくはフロック前駆体の集合体を有すること、特定の形状に凝集させたフロック様またはフロック前駆体の集合体による腑形体を含有すること、空孔率が35%以上であることなども、中実球状顆粒を得るための有効なファクタになる。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、球状顆粒の生成に適したスラリー、スラリー管理方法、スラリーの製造法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
1.スラリー本発明に係るスラリーは、固体成分の粒子が液中で固液分散系を構成する。粒子の濃度は、粒子の分散状態における一次粒子の平均粒径をDとし、粒子の凝集による凝集粒子の平均粒径をD0としたとき、(D/D0)で表される凝集度と、スラリー粘度との関係を示すデータから得られる球状顆粒領域及び非球状顆粒領域のうち、前記球状顆粒領域内に入るように選定されている。
【0041】
従って、本発明に係るスラリーによれば、球状顆粒を確実に生成することができる。
【0042】
図1は一次粒子の凝集度(D/D0)とスラリー粘度との関係を示すグラフである。図において、横軸にスラリー粘度(Ps)をとり、縦軸に一次粒子の凝集度(D/D0)をとってある。
【0043】
濃度は、スラリー中の粉体の体積濃度(vol%)である。スラリーには、バインダ、分散剤、可塑材、消泡剤等が含まれ、更に、凝集剤が含まれることもある。
【0044】
特性A11〜A13は、濃度a11〜a13(vol%)をパラメータとしたスラリー粘度−凝集度特性を示している。濃度a11〜a13(vol%)は、a11<a12<a13の順序で高くなる。
【0045】
図1において、斜線領域が球状顆粒領域S1を示し、球状顆粒領域S1から直線L0によって区画された白い領域が非球状顆粒領域S2を示している。図1に示すように、固体成分の粒子が液中で固液分散系を形成するスラリーにおいて、凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係を示す実験データから得られるグラフは、球状顆粒領域S1及び非球状顆粒領域S2を示す。
【0046】
図1を参照すると、濃度特性A11〜A13は、粘度が低い内は、非球形顆粒領域S2にあるが、粘度が高くなると球状顆粒領域S1に入ることを示している。従って、図1に示したグラフを用い、濃度または粘度が、球状顆粒領域S1に入るスラリーを準備することにより、球状顆粒を得ることができる。
【0047】
具体的に説明すると、あるプロセスにおいて、スラリーに要求される粘度の上限値がPS1である場合、濃度a12(vol%)のスラリーであれば、球状顆粒を得ることができる。
【0048】
また、濃度a13(vol%)のスラリーを用いる場合を想定すると、粘度をPS2よりも高くすれば、濃度a13、a12、a11(vol%)の何れの場合も球状顆粒を得ることができる。
【0049】
上述したように、本発明に係るスラリーから形成された顆粒は球状であり、表面近傍と内部の密度が均一で、無数の細孔があるが密度の高い球状になっている。つまり、球状であるということは、密度が高く、均一な顆粒であることに他ならない。
【0050】
図2は誘電材料について、一次粒子の凝集度(D/D0)とスラリー粘度との関係を示すグラフである。図において、横軸にスラリー粘度(Ps)をとり、縦軸に一次粒子の凝集度(D/D0)をとってある。
【0051】
ここにいう誘電材料とは、チタン酸バリウムを主成分としもので、誘電率93、比重5.8(g/cm3)、平均粒度(D50)が1.9μmのものである。この場合のスラリー作成条件及びスラリー物性測定方法は、次の通りである。
(a)PVAポリビニルアルコール(分子量500)を用いた。
(b)添加剤分散剤:合成ポリカルボン酸NH4塩可塑剤:DEG(ジエチレングリコール〕
消泡剤:オクチルアルコール(c)配合比量産条件にあわせて粉(一次位子)100g当りに対し、下記のような量を加えた。
PVA:13cc/粉100g可塑剤:1cc/粉100g消泡剤:1cc/粉100g分散剤:0〜数cc/粉100g純水:残部(量は濃度による)
(d)スラリー製造方法ホモジナイサーを用い、最初に溶媒(水十PVA十可塑剤十消泡剤)を作製し、撹拌しながら徐々に粉を加えていった。粉が、溶けなくなった時点、または、狙いの粘度にする為に、分散剤を加えた。撹拌は、2000r.p.mで5〜30分行った。
【0052】
(e)スラリー物性の測定方法粒子の一次粒子の平均粒径Dは、島津製作所製のレーザ回折式粒度分布計(SALD−2100)にて測定した。測定に当っては、一次粒子の乾粉を、0.2wt%の濃度に希釈し、更にヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤を添加し、超音波を10分間照射した後に平均粒径を測定した。
【0053】
粒子の凝集による凝集粒子の平均粒径D0は、スラリー化後の凝集粒子の平均粒径を上述したレーザ回折式粒度分布計(SALD−2100)にて測定して得られた凝集粒子の平均粒径(D50)の値である。スラリー粘度(Ps)は、リオン(株)社製のビスコメータVM−10及び東京工機(株)社製B型粘度計を用いて測定した。
【0054】
図2において、スラリーに要求される粘度が、例えば、1(Ps)よりも低い場合、濃度a12=30(vol%)、a13=35(vol%)のスラリーでは球状顆粒を得ることができない。球状顆粒を得るためには、濃度a11=25(vol%)を用いなければならない。
【0055】
また、濃度a13=35(vol%)のスラリーを用いる場合を想定すると、粘度を3(Ps)よりも高くすれば、濃度a13=35(vol%)、a12=30(vol%)、a11=25(vol%)の何れの場合も球状顆粒を得ることができる。
【0056】
図3は他の誘電材料について、一次粒子の凝集度(D/D0)とスラリー粘度との関係を示すグラフである。このグラフは、図2に示したグラフと同様のスラリー作成条件及びスラリー物性測定方法の適用によって得られたものである。ここにいう誘電材料は、比重が5(g/cm3)、平均粒度(D50)が1.1μmである。
【0057】
図3において、スラリーに要求される粘度が、例えば、1(Ps)よりも低い場合、濃度a11=20(vol%)、a12=25(vol%)、a13=a12=30(vol%)のスラリーの何れにおいても、球状顆粒を得ることができるが、濃度a14=35(vol%)では球状顆粒を得ることができない。
【0058】
濃度a14=35(vol%)のスラリーを用いる場合は、粘度を2(Ps)よりも高くすれば、球状顆粒を得ることができる。濃度一定のもとで、粘度を変化させる方法としては、分散剤や凝集剤の添加量の調整の他に、粉体の一次粒径の調整およびスラリーのpHの調整等がある。
【0059】
図2及び図3にも示すように、凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係は、スラリーに含まれる粒子材料毎に異なるが、何れの場合も、グラフ化した場合には、球状顆粒領域S1及び非球状顆粒領域S2を示す。従って、スラリーに含まれる粒子材料毎に凝集度(D/D0)と、スラリー粘度との関係データを実験的に収集しておくことにより、粒子材料毎に、球状顆粒を得るのに適したスラリーを得ることができる。
【0060】
高密度顆粒を得るには、スラリーの固形分量(粒子量)を上げる必要があるが、図1乃至図3の特性A11〜A14から明らかなように、スラリー濃度が高すぎると、球状顆粒を作ることが難しくなる。
【0061】
また、上記手法を数種類の材料に適用し、得られた高密度球状顆粒により数々の製品における成型実験を試み、成型重量バラツキが1/2〜1/4に小さくなると言う効果も確認できた。
【0062】
粒子は、液中でフロック様、または、フロック前駆体としての集合体を形成していることが好ましい。集合体の特に好ましい状態は、単独粒子または集合粒子が液中で自存に離散、集合している状態である。このような集合体を含むスラリーは、中実球状顆粒を得るのに有効である。
【0063】
図4はフロック様、または、フロック前駆体の集合体を、模式的に示す図である。フロック様、または、フロック前駆体の集合体とは、粒子1、2が弱い集合力により集まった集合状態を言う。ちなみにフロックは、無機塩や電解質、高分子凝集剤により粒子密度の高い綿状の凝集物を言うのが一般的定義であり、本発明のフロック様、または、フロック前駆体の集合体は添加剤の凝集力よりも弱い力で粒子が集まった状態を言う。
【0064】
更に好ましくは、スラリー中の粉体の濃度は、フロック様、または、フロック前駆体の集合体が形成されなくなる濃度の少し手前になるように設定する。これにより、球状顆粒を確実に得ることができるようになる。この点は、図1乃至図3のグラフを用いても、説明することができる。即ち、図1乃至図3において、球状顆粒領域S1及び非球状顆粒領域S2の境界となる直線L0と、濃度特性A11〜A14との交点を、フロック様、または、フロック前駆体の集合体が形成されなくなる境界点であるとみなすことができ、この境界点よりも、少し低い濃度に設定すれば、球状顆粒領域S1に入ることになる。
【0065】
粒子は、図4に示すように、細粒1と、粗粒2とを含み、細粒1が、他の細粒1、または、粗粒2に付着してフロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成しているスラリーも、中実球状顆粒の生成に有効である。または、粒子は、粗粒2が細粒1を集めたフロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成しているスラリーであってもよい。
【0066】
粒子が、細粒1と、粗粒2とを含む場合、細粒1は平均粒径d1が1ミクロン以下の粒子を主とし、粗粒2は平均粒径d2が1ミクロン以上の粒子を主とすることが好ましい。
【0067】
次に、平均粒径と、粘度及び凝集度との関係について、実験データを参照して説明する。
【0068】
平均粒径で1.6μm〜2.2μmでスラリーの粘度と凝集度を調査した。結果を図5に示す。図5において、横軸に平均粒径(μm)をとり、左縦軸に粘度(PS)をとり、右縦軸に凝集度をとってある。特性L51は粘度特性を示し、特性L52は凝集度特性を示している。
【0069】
図5に示すように、粘度は、平均粒径2.2μmの一次粒子を用いたスラリーの方が、1.6μmの一次粒子を用いたスラリーよりも高かったが、凝集度は、逆に2.2μmの一次粒子を用いたスラリーの方が低くなった。
【0070】
このことから、凝集度に関しては、電気2重層のより小さい1.6μmの方が凝集し易い為に、2.2μmよりも凝集度が高かったと考えられる。また、粘度に関しては、大きい方が、立体障害になって、ずり粘度が上昇したと考えられる。
【0071】
但し、より凝集し易くなる粘度においては、逆にフロック状の凝集体がより大きな立体障害を形成することも考えられるため、粒径1μm以下の一次粒子についても同様の実験及び評価を行った。結果を、図6に示す。
【0072】
図6において横軸に平均粒径(μm)をとり、左縦軸に粘度(PS)をとり、右縦軸に凝集度をとってある。特性L61は粘度特性を示し、特性L62は凝集度特性を示している。
【0073】
実験に当っては、平均粒径が、それぞれ、0.789μm及び1.741μmになるように粉砕した2種類の粒子を用い、それぞれ100:0、50:50、0:100の割合に混合して、3種のサンプルを準備した。
【0074】
図6を参照すると、図5に図示した粒径1.6〜2.2μmの場合の結果とは異なり、粒径が小さくなるにつれて、粘度が上昇していることが分かる。これは、0.8μm〜1.6μmの間に、粘度が低下傾向から上昇傾向に変わる変曲点が存在することを意味する。これは、粒径1μm程度を境に、粒子のブラウン運動が大きくなり、接触による凝集力の方が、スラリーの撹拌による粒子の引き剥がし力を上回るようになり、フロック状になった1次粒子が今度は、立体障害となって、粘度の上昇をもたらしたと考えられる。
【0075】
図5及び図6を総合すると、粘度の観点から、粒子は、細粒1と、粗粒2とを含むべきこと(図4参照)こと、及び、細粒1は平均粒径d1が1ミクロン以下の粒子を主とし、粗粒2は平均粒径d2が1ミクロン以上の粒子を主とすることが好ましいことがわかる。
【0076】
また、細粒1の平均粒径d1と、集合体の平均径dfは、0.01<d1/df<1.0を満たすことが好ましい。(d1/df)が1.0以上であれば、その後のスラリーを用いた造粒工程において、球状顆粒を作製するのに十分なフロック様、または、フロック前駆体となる集合体の量が得られなくなってしまう。逆に、(d1/df)が0.01以下であると、フロック様、または、フロック前駆体となる集合体が大きくなりすぎ、その後の造粒工程において、配管を詰まらせる等の不具合が起きてしまう。
【0077】
フロック様、または、フロック前駆体の集合体の径dfは、粗粒2の平均粒径d2に対して、df≧d2の関係にあることが好ましい。更に、フロック様、または、フロック前駆体の凝集した集合体の径dfは、粗粒2の平均粒径d2に対して、df≧d2の関係にあることも、中実球状顆粒を得るのに有効である。粗粒2の平均粒径d2が集合体の径dfより大きくなると、その後の工程で作製された顆粒中に、粗大粒子が含まれて、顆粒内密度が不均一になったり、スラリー中に粗粒2が沈降して、スラリー濃度にバラツキを生じたりする恐れが発生してしまう。
【0078】
スラリーにおける粒子の粒径分布は、細粒1と粗粒2の二項分布であることが好ましい。一次粒子の平均粒径は小さいほどフロック様、または、フロック前駆体となる集合体を形成しやすくなる。従って、体積粒度分布で一次粒子の粒度分布を適度な2項分布になるようにあらかじめ設定しておけば、フロック様、または、フロック前駆体となる集合体をより造りやすくなる。
【0079】
スラリーの液中に混在する細粒1は、粗粒2に比べて重量が小さいので、液中で移動しやすく(易移動状態)、細粒1が互いに液中で触れ合い、または粗粒2と細粒1とが、粗粒2を核として触れ合い、吸引力や吸着力によって細粒1同士または粗粒2と細粒1が集合して、フロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成し、難移動状態になる。
【0080】
フロック様、または、フロック前駆体の集合体や粗粒2は、液中の細粒1に対して立体障害として働くので、一旦、局所的であれフロック様、または、フロック前駆体の集合体が、液中で形成されると、フロック様、または、フロック前駆体の集合体の周囲にはさらに新たな細粒1が集合し、フロック様、または、フロック前駆体の集合体は径を大きく成長し、立体障害状態が進展する。
【0081】
このとき、フロック様、または、フロック前駆体の集合体は、それ自体の結合力がそれ程に強固ではないので、解しては集合するなどを繰り返す場合がある。そして、固液分散系としてのスラリーの中でフロック様、または、フロック前駆体の集合体は、平衡した適度な大きさをもつに至り、それによって、液中での独立な細粒1は減り、細粒1の移動が抑えられる。これにより、フロック様、または、フロック前駆体の集合体はスラリーの固液分散状態を均質にするという作用をなす。
【0082】
本発明のスラリーでは、細粒1が集合したフロック様、または、フロック前駆体の集合体が液中での立体障害として働くので、細粒1や粗粒2がスラリー中で偏りや沈降、分離を生じることを妨げ、固液が分散したスラリー状態を長期間にわたって維持する働きをする。
【0083】
また、本発明のスラリーを用いて、顆粒やグリーンシートなどの腑形体を得る場合には、液相成分を乾燥させて減少させる過程で、液中の細粒1がフロック様、または、フロック前駆体の集合体に集合して拘束されること、しかも、フロック様、または、フロック前駆体の集合体が立体障害となって細粒1が腑形体の内部から表面に移動するのが妨げられることから、腑形体の表面に細粒1だけが集まることを防ぐ働きをする。これにより、腑形体に、いわゆる「皮張り」を生じることがない。
【0084】
フロック様、または、フロック前駆体の集合体に含まれる液相成分が減少する過程では、細粒1をと粗粒2が集合した集合体が骨格を形成するので、腑形体は全体にわたって疎な腑形体が形成されることになる。このため、骨格の空隙を通じて腑形体の内部の液相成分が表面に出やすくなるので、腋形体の内部に液相成分が取り残されることがなく、腋形体の表面近傍と内部で、その固液分散状態が均質になる。
【0085】
更に本発明に係るスラリーは、第2の細粒を含むことができる。第2の細粒は、細粒1が液中で移動し易い易移動状態から、フロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成して移動し難い難移動状態へと、液中での移動度を変えてスラリーの粘度を増粘させる。
【0086】
発明の主要な適用領域であるファインセラミックス分野において、スラリーは、バインダを含む。このスラリーは、凝集剤を含まない水溶液であってもよいし、分散剤を含まないスラリーであってもよい。これとは逆に、分散剤を微量含んでいてもよい。更に、水分徐放性添加剤を含んでいてもよい。
【0087】
ファインセラミックス分野において、スラリーの粘度、および、セラミックス粉体の濃度を、球状顆粒領域に入るように選定した場合でも、長時間にわたって撹拌を継続すると、バインダの量やセラミック粉体の濃度によっては、球状顆粒領域から非球状顆粒領域に入ってしまうことがある。
【0088】
この問題点は、少なくとも一つの水酸基を有し、かつカルボキシル基、カルボキシレート、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、アミン、及び第4級アミン塩からなる群から選択される官能基を有する非重合体の有機化合物を添加することによって解決される。
【0089】
例として、有機化合物は、水酸基含有カルボン酸、水酸基含有カルボキシレート、水酸基含有スルホン酸、水酸基含有スルホン酸塩、水酸基含有リン酸、水酸基含有リン酸塩、水酸基含有アミン、及び水酸基含有第4級アンモニウム塩からなる群から選択されうる。さらに詳しくは、この有機化合物は、クエン酸、メソ酒石酸、水酸基含有低級カルボン酸、水酸基含有低級アルケニルカルボン酸、水酸基含有低級アルキニルカルボン酸、水酸基含有芳香族カルボン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択されうる。
【0090】
以下、添加物として、クエン酸を用いた場合を例にとって説明する。図7はクエン酸(1mol/l水溶液)を添加しない(0ml)場合の粘度−凝集度特性を示す図である。PVA量は0wt%、0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%、2.34wt%の5段階で変えた。PVA量の各量において、両側矢印の実線で示された特性はスラリー中のセラミック粉体の濃度を、25vol%〜34vol%の範囲で変えたときの初期の粘度−凝集度特性である。直線L0は球状顆粒領域S1と非球状顆粒領域S2との境界を示している。直線状の点線矢印L71〜L74は、長時間(例えば約24時間)にわたって撹拌を継続した場合におけるPVA量の各量毎の粘度−凝集度変化方向、および、変化の大きさを示す。粘度−凝集度変化方向は、点線矢印L71〜L74の向きによって示され、変化の大きさはその点線の長さによって示される。この原則は、図8〜図11においても、同様に採用される。
【0091】
まず、図7に示すように、PVA量が増加すると、粘度および凝集度がともに、低下する。これは、この種のスラリーにおいて、よく見られる現象である。
【0092】
図7のクエン酸を含まないスラリーでは、PVA量が0.5〜1.5wt%の範囲内であれば、セラミック粉体の濃度25vov〜34vol%の全範囲において、球状顆粒領域S1に入る。ところが、撹拌を長時間(例えば24時間)継続すると、粘度−凝集度特性が、点線矢印L72で示すように、粘度および凝集度が、ともに低下し、球状顆粒領域S1と非球状顆粒領域S2との境界を示す直線L0に近づく方向に変化する。しかも、粘度および凝集度の変化が非常に大きい。
【0093】
PVA量が1.5wt%の場合は、25vol%〜34vol%の範囲で変えたときの初期の粘度−凝集度特性は、中間部の一部が、非球形状顆粒領域S2に入り、撹拌を長時間継続すると、粘度−凝集度特性が、点線矢印L73で示すように、粘度および凝集度が、ともに低下する方向に変化し、全体として、非球状顆粒領域S2に入って行く。
【0094】
PVA量が2.34wt%の場合は、25vol%〜34vol%の範囲で変えたときの初期の粘度−凝集度特性は、全体が、非球状顆粒領域S2に入る。
【0095】
PVA量が少ないと、このスラリーから造粒される顆粒が脆くなってしまうので、これを回避する場合は、PVA量は1wt%〜3wt%程度の含有量になるように設定することが好ましい。ところが、クエン酸を含有しないスラリーでは、図7に示したように、PVA量が1.5wt%〜2.34wt%となる範囲で、初期値が非球形顆粒領域S2に入ってしまうことがあるため、使用しにくい。
【0096】
図8はクエン酸の含有量を、0.5mlとした場合の粘度−凝集度特性を示す図である。PVA量の含有量は、図7に示したと同様に、5段階で変えた。PVA量の各量において、両側矢印の実線で示された特性はスラリー中のセラミック粉体の濃度を、25vol%〜34vol%の範囲で変えたときの初期の粘度−凝集度特性である。直線L0は球状顆粒領域S1と非球状顆粒領域S2との境界を示している。点線矢印L81は、PVA量を2.34wt%とし、セラミック粉体濃度を34vol%としたスラリーを、長時間にわたって撹拌を継続した場合における粘度−凝集度変化方向を示し、点線矢印L82は、PVA量を2.34wt%とし、セラミック粉体濃度を約30vol%としたスラリーを、長時間にわたって撹拌を継続した場合における粘度−凝集度変化方向を示している。
【0097】
クエン酸の含有量が0.5mlの場合、PVA量が0.5〜2.34wt%の何れの場合もセラミック粉体の濃度25vov〜34vol%の全範囲において、初期の粘度−凝集度特性は球状顆粒領域S1に入る。
【0098】
PVA量が2.34wt%のスラリーの場合、撹拌を長時間(例えば24時間)継続すると、粘度−凝集度特性が、点線矢印L81、L82で示すように、粘度および凝集度が、ともに低下し、非球状顆粒領域S2に入る方向に変化するが、その変化量は、図7の場合と比較して、小さくなっている。
【0099】
しかも、点線矢印L81、L82において、粘度の変化量に対する凝集度の変化量が、図7の点線矢印L72〜L74の場合と比較して、小さくなる(矢印方向が立ってきている)傾向が見られる。
図9はクエン酸の含有量を、2.5mlとした場合の粘度−凝集度特性を示す図である。PVA量の含有量は、図7に示したと同様に、5段階で変えた。PVA量の各量において
、両側矢印の実線で示された特性はスラリー中のセラミック粉体の濃度を、25vol%〜34vol%の範囲で変えたときの初期の粘度−凝集度特性である。点線矢印L91は、PVA量を2.34wt%とし、セラミック粉体濃度を25vol%としたスラリーを、長時間にわたって撹拌した場合における粘度−凝集度変化方向を示している。
【0100】
クエン酸の含有量が2.5mlの場合、PVA量が0.5〜2.34wt%の何れの場合もセラミック粉体の濃度25vov〜34vol%の全範囲において、初期の粘度−凝集度特性は球状顆粒領域S1に入る。即ち、クエン酸を含有しない図7の例よりも、球状顆粒が作り易くなっている。但し、量産化工程における管詰まり等を防止するためには、粘度は3(Ps)以下が望ましい。その観点から、粘度が3(Ps)を越えるPVA量0.5〜1.0wt%の範囲のスラリーは、量産に適さない。
【0101】
PVA量が1.5wt%〜2.3wt%のスラリーは、初期の粘度−凝集度特性が、セラミック粉体濃度25vol%〜約28vol%の範囲において、球状顆粒領域S1に入る。即ち、クエン酸を含有しない図7、クエン酸を0.5ml含有する図8の例よりも、球状顆粒が作り易くなっている。
【0102】
PVA量が2.34wt%のスラリーの場合、長時間の撹拌により、粘度−凝集度特性が、点線矢印L91で示すように、ほぼ一定の粘度保ちながら、凝集度が低下する方向に変化するが、その変化量は、図7、図8の場合と比較して、小さくなっている。
【0103】
しかも、点線矢印L91の示す変化の方向性は、粘度の変化量に対する凝集度の変化量が、図8の点線矢印L81、L82の場合と比較して、小さくなる(矢印方向が立ってきている)傾向を示している。
【0104】
図10はクエン酸の含有量を、5mlとした場合の粘度−凝集度特性を示す図である。PVA量の含有量は、図7に示したと同様に、5段階で変えた。PVA量の各量において、両側矢印の実線で示された特性はスラリー中のセラミック粉体の濃度を、25vol%〜34vol%の範囲で変えたときの初期の粘度−凝集度特性である。点線矢印L101は、PVA量を2.34wt%とし、かつ、セラミック粉体濃度を25vol%としたスラリーを、長時間にわたって撹拌した場合における粘度−凝集度変化方向を示している。
【0105】
クエン酸の含有量が5mlの場合、PVA量が0.5〜2.34wt%の何れの場合もセラミック粉体の濃度25vov〜34vol%の全範囲において、初期の粘度−凝集度特性は球状顆粒領域S1に入る。即ち、クエン酸を含有しない図7の例よりも、球状顆粒が作り易くなっている。粘度が3(Ps)を越えるPVA量0.5wt%以上、1.0wt%未満の範囲のスラリーは、量産に適さない。
【0106】
PVA量が1.5wt%〜2.3wt%のスラリーは、初期の粘度−凝集度特性が、セラミック粉体濃度25vol%〜約28vol%の範囲において、球状顆粒領域S1に入る。即ち、クエン酸を含有しない図7、クエン酸を0.5ml含有する図8の例よりも、球状顆粒が作り易くなっている。
【0107】
PVA量が2.34wt%のスラリーの場合、撹拌による粘度−凝集度特性の変化は、点線矢印L101で示すように、ほぼ一定の粘度保ちながら、凝集度が低下する方向となるが、その変化量は、図7〜図9の場合と比較して、小さくなっている。しかも、点線矢印L101の示す変化方向性は、粘度の変化量に対する凝集度の変化量が、図8の点線矢印L81、L82の場合と比較して、小さくなる(矢印方向が立ってきている)傾向を示している。
【0108】
図11はクエン酸とPVAとの比を変えた場合の粘度−凝集度特性の変化傾向を示す図である。図11に図示された特性は、図7〜図10に示す特性図からも読み取れるものであるが、図11はその理解のために示した。
【0109】
直線矢印L111〜L116は、PVA量およびセラミック粉体濃度を一定とし、クエン酸の量を変えたスラリーを、撹拌した場合における粘度−凝集度変化方向を示している。
【0110】
図11に示されているように、(クエン酸/PVA)比が増大(クエン酸増加)するにつれて、粘度の変化に対する凝集度変化の割合が小さくなり、非球状顆粒領域S2に入りにくくなることを示している。即ち、クエン酸の含有量をコントロールすることにより、撹拌にもかかわらず、安定して、球状顆粒を作ることができるようになる。
【0111】
スラリーを撹拌した場合に、球形顆粒領域S1にあったスラリーが、非球形顆粒領域S2に入るようになる理由、および、この問題点がクエン酸を含有することにより解消できる理由は、推測であるが、次のように説明することができる。
【0112】
セラミック粉体、水、PVAおよび分散剤を含むスラリーについて、撹拌前の初期状態を考えた場合、PVAがセラミック粉体を構成する粒子に吸着する。酸化物セラミック粒子の表面には酸素原子の孤立電子対(ローンペア)が存在するので、セラミック粒子の相互およびそれに付着したPVAは、電気的な斥力により、互いに反発し、遊離する。この電気的な斥力は、粘度、および、凝集度に影響を与える。
【0113】
一方、PVAがプロトン(H+)を放出する。このプロトン(H+)の放出は、スラリーのpHを変化(低下)させる。pHの変化も、粘度および凝集度に影響を与える。
【0114】
本発明にしたがって調整されたスラリーは、初期状態では、上述の斥力、pH等によって影響を受ける粘度および凝集度、さらには、濃度が、球形顆粒領域に設定されていることは、既に述べた通りである。
【0115】
上述のように初期設定されたスラリー系を、長時間にわたって撹拌した場合、スラリー中に存在するプロトン(H+)のうち、セラミック粉体の周囲の酸素に吸着するものが微増する。このため、スラリーのpHが、微少ではあるが、上昇し、粘度および凝集度が低下する。
【0116】
この結果、図7〜図10に示したように、初期状態では、球形顆粒領域S1に合ったスラリーが、撹拌により、非球形顆粒領域S2に入るようになるものと推測される。
【0117】
一方、セラミック粉体、水、PVAおよび分散剤を含むスラリーに、クエン酸が加えられた場合、クエン酸は(−C00H)を有しており、大量のプロトン(H+)を放出する。このため、スラリーのpHが下降し、粘度が上がる。
【0118】
一方、放出されたプロトン(H+)が、PVAに優先して、セラミック粉体を構成するセラミック粒子の周りに吸着し、水素結合により、セラミック粒子を凝集させる働きが生じる。つまり、PVAがセラミック粒子に吸着することによる粒子の分散効果を減らす働きが生じる。
【0119】
つまり、クエン酸を含有させることにより、スラリーの粘度と、凝集度とを増加させる。これは、図1〜図10に図示された粘度−凝集度特性において、点線矢印で示す経時変化を打ち消す方向になることを意味する。
【0120】
このため、クエン酸を含有させることにより、撹拌にもかかわらず、球形顆粒領域S1内に保持する作用効果が得られるものと推測される。
【0121】
クエン酸を含有させることの意味が、大量のプロトン(H+)を放出させることにあり、更に、pH緩衝効果、即ち、液中のプロトン(H+)の量を安定化させることにあるとすれば、同様の働きを有する有機化合物であれば、クエン酸に代えて用い得ることは明らかである。上述した有機化合物がその例である。また、セラミック粉体と水だけのスラリーにおいては、顕著な経時変化が見られないことからも、PVAを含むスラリーにおける上記説明が妥当であると考えることができる。
【0122】
次に、組成や製造プロセスは同一であるが、製造ロットの異なる複数種のセラミックス粉体を用いた場合、図12に示したように、あるロットのセラミックス粉体を用いたスラリーP1では球状顆粒領域S1内に入るのに、他のロットのセラミックス粉体を用いたスラリーP2では、非球状顆粒領域S2に入ってしまうという問題点を生じることがある。
【0123】
この問題点を解決するのに、スラリー中に、アルカリを含有させることが極めて有効である。具体的には、アンモニア、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0124】
アルカリ添加による作用効果は、図13を参照して次のように説明することができる。図13はpHと粘度(左縦軸目盛り参照)およびゼータ電位(右縦軸目盛り参照)との関係を示す図である。曲線L131はアルカリ添加前のスラリーのpH−粘度特性、曲線L132はアルカリ添加前のpH−ゼータ電位特性、曲線L133はアルカリ添加後のスラリーのpH−粘度特性、曲線L134はアルカリ添加後のpH−ゼータ電位特性をそれぞれ示している。
【0125】
まず、アルカリ添加前のスラリーについて、pH−粘度特性L131、および、pH−ゼータ電位特性L132について検討するに、pHが低くなると、ゼータ電位が等電位点に近づき、粘度が高くなる。凝集度は図示されていないが、粘度にほぼ比例して変化する。これは、pHが低くなるにつれて、スラリー中のセラミック粒子の表面に形成される電気二重層によるゼータ電位が低下し、等電位点ζ01に向かうため、セラミック粒子間に働く斥力が低下し、凝集し易くなるためと推測される。凝集は、セラミック粒子間に働く斥力がほぼゼロになる等電位点ζ01で最大になる。
【0126】
一方、pHが高くなると、ゼータ電位も高くなり、粘度が低くなる。これは、pHが高くなるにつれて、スラリー中のセラミック粒子のゼータ電位が高くなりセラミック粒子間に働く斥力が大きくなり、分散し易くなるためと推測される。
【0127】
図13に示すような初期状態のスラリーにアルカリを添加した場合、pHが高くなる。図13のpH−粘度特性L131、および、pH−ゼータ電位特性L132からは、pHが高くなれば、分散し易くなり、粘度および凝集度が低下するようにも思える。
【0128】
ところが、実際には、アルカリ添加により、粘度および凝集度が上がり、図12に示したように、非球状顆粒領域S2に入っていたスラリーP2が、球状顆粒領域S1に入ることが確認された。
【0129】
その理由は、未確認であるが、初期のゼータ電位の等電位点ζ01が、アルカリ添加により、等電位点ζ02に移り、初期のpH−粘度特性L131、および、pH−ゼータ電位特性L132が、矢印b1、c1で示すように移行し、pH−粘度特性L133、および、pH−ゼータ電位特性L134のようになったためではないかと推測される。
【0130】
2.スラリーの管理方法顆粒の評価を行う場合、従来は、スプレードライヤにより得られた顆粒を確認するしか方法が無く、それ故にスラリー条件の検討などにおいては、多大の労力、時間、材料が必要であった。
【0131】
本発明に係るスラリーの管理方法では、前記スラリーを平坦な樹脂面上に滴下して、半球状の液滴を形成する。次に、前記液滴を加熱して液相分の含有量を減らし、その乾燥過程における半球状液滴の形状の変化によってスラリーの性状を判定する。
【0132】
本発明に係るスラリー管理方法によれば、用意されたスラリーが、球状顆粒を得るのに適しているか否かを、模擬的に検証することができる。また、本発明に係るスラリー管理方法は、図1〜図3に示したデータ収集にも、極めて有効な手段である。
【0133】
本発明に係るスラリーの管理方法は、具体的には、乾燥によって液滴が凹む程度を、顆粒としたときの真球性及び非真球性の判定基準とする。更に具体的には、乾燥によって液滴が凹む場合は顆粒の真球性が得られず、凹まない場合は真球性が得られると判定する。
【0134】
図14にスラリー管理方法の具体的一例を示す。先ず、図14(a)に示すように、ディスペンサー32を用いて、スラリーを、シリコーンシート31の上に、例えば500μm程度の大きさに滴下し、液滴33を形成する。液滴33の大きさは、検出感度に影響するので、予め規定しておくのがよい。
【0135】
次に、図14(b)に示すように、10sec以内に150℃の乾燥機34に投入し、液滴33を乾燥させる。温度条件等は、造粒条件に応じて適宜決定する。
【0136】
次に図14(c)に示すように、乾燥機34から取出した時の、半球状の液滴33の乾燥物の形状をみて、陥没(図14(C1))か球状(図14(C2)かを判断する。この方式による顆粒形状は、スプレードライヤ後の顆粒形状は、良く一致している。
【0137】
上記シリコーンシートとしては、富士高分子(株)製サーコン(登録商標)が適している。このシリコーンシートには、無機充填材が混練されており、スラリー滴下時の接触角が大きくなる。このため、よりスプレードライヤで作製された顆粒形状に近づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】一次粒子の凝集度(D/D0)とスラリー粘度との関係を示すグラフである。
【図2】誘電材料について、一次粒子の凝集度(D/D0)とスラリー粘度との関係を示すグラフである。
【図3】他の誘電材料について、一次粒子の凝集度(D/D0)とスラリー粘度との関係を示すグラフである。
【図4】フロック様、または、フロック前駆体の集合体を、模式的に示す図である。
【図5】誘電材料について、平均粒径(μm)と、粘度(PS)及び凝集度の関係を示す図である。
【図6】誘電材料について、平均粒径(μm)と、粘度(PS)及び凝集度の別の関係を示す図である。
【図7】クエン酸を添加しない(0ml)場合の粘度−凝集度特性を示す図である。
【図8】クエン酸の含有量を、0.5mlとした場合の粘度−凝集度特性を示す図である。
【図9】クエン酸の含有量を、2.5mlとした場合の粘度−凝集度特性を示す図である。
【図10】クエン酸の含有量を、5mlとした場合の粘度−凝集度特性を示す図である。
【図11】クエン酸とPVAとの比を変えた場合の粘度−凝集度特性の変化傾向を示す図である。
【図12】製造ロットの異なる複数種のセラミックス粉体を用いた場合のスラリーの粘度−凝集度特性を示す図である。
【図13】pHと粘度およびゼータ電位との関係を示す図である。
【図14】本発明に係るスラリー管理方法の具体的一例を示す図である。
【符号の説明】
【0139】
S1 球状顆粒領域
S2 非球状顆粒領域
A11〜A13 濃度をパラメータとする粘度−凝集度特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体成分の粒子が液中で固液分散系を形成するスラリーであって、
前記固液分散系における前記粒子の濃度、及び、スラリー粘度は、前記粒子の分散状態における一次粒子の平均粒径をDとし、前記粒子の凝集による凝集粒子の平均粒径をD0としたとき、(D/D0)で表される凝集度と、前記スラリー粘度との関係を示すデータから得られる球状顆粒領域及び非球状顆粒領域のうち、前記球状顆粒領域内に入るように選定されているスラリー。
【請求項2】
請求項1に記載されたスラリーであって、前記粒子は、液中でフロック様、または、フロック前駆体としての集合体を形成しているスラリー。
【請求項3】
請求項2に記載されたスラリーであって、前記集合体は、単独粒子または集合粒子が液中で自存に離散、集合している状態であるスラリー。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載されたスラリーであって、
前記粒子は、細粒と、粗粒とを含み、前記細粒が、他の細粒、または、前記粗粒に付着してフロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成しているスラリー。
【請求項5】
請求項4に記載されたスラリーであって、前記細粒は平均粒径が1ミクロン以下の粒子を主とし、前記粗粒は平均粒径が1ミクロン以上の粒子を主とするスラリー。
【請求項6】
請求項4または5に記載されたスラリーであって、
前記細粒の平均粒径をd1とし、前記集合体の平均径をdfとしたとき、0.01<d1/df<1.0を満たすスラリー。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れかに記載されたスラリーであって、前記粒子の粒径分布は前記細粒と前記粗粒の二項分布であるスラリー。
【請求項8】
請求項2乃至7の何れかに記載されたスラリーであって、立体障害となる粗粒、または、立体障害となるフロック様もしくはフロック前駆体の集合体を有するスラリー。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載されたスラリーであって、バインダを含む水溶液であるスラリー。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載されたスラリーであって、分散剤を含まないスラリー。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載されたスラリーであって、分散剤を微量含むスラリー。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れかに記載されたスラリーであって、水分徐放性添加剤を含むスラリー。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れかに記載されたスラリーであって、
少なくとも一つの水酸基を有し、かつカルボキシル基、カルボキシレート、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、アミン、及び第4級アミン塩からなる群から選択される有機化合物の少なくとも一種を含有するスラリー。
【請求項14】
請求項13に記載されたスラリーであって、
前記有機化合物は、水酸基含有カルボン酸、水酸基含有カルボキシレート、水酸基含有スルホン酸、水酸基含有スルホン酸塩、水酸基含有リン酸、水酸基含有リン酸塩、水酸基含有アミン、及び水酸基含有第4級アンモニウム塩からなる群から選択された少なくとも一種を含有するスラリー。
【請求項15】
請求項13に記載されたスラリーであって、
前記有機化合物は、クエン酸、メソ酒石酸、水酸基含有低級カルボン酸、水酸基含有低級アルケニルカルボン酸、水酸基含有低級アルキニルカルボン酸、水酸基含有芳香族カルボン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも一種を含有するスラリー。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れかに記載されたスラリーであって、アルカリを含有するスラリー。
【請求項17】
請求項16に記載されたスラリーであって、前記アルカリは、アンモニア、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムの少なくとも一種を含むスラリー。
【請求項18】
固体成分の粒子が液中で固液分散系を形成するスラリーの製造方法であって、
前記粒子の分散状態における一次粒子の平均粒径をDとし、前記粒子の凝集による凝集粒子の平均粒径をD0としたとき、(D/D0)で表される凝集度と、スラリー粘度との関係を示すデータを準備し、
前記固液分散系における前記粒子の濃度または前記スラリー粘度を、前記凝集度(D/D0)と、前記スラリー粘度との関係を示すデータから得られる球状顆粒領域及び非球状顆粒領域のうち、前記球状顆粒領域内に入るように選定するステップを含むスラリーの製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載されたスラリーの製造方法であって、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体とするために撹拌するスラリーの製造方法。
【請求項20】
請求項18に記載されたスラリーの製造方法であって、撹拌時間を調整し、前記集合体化を制御するスラリーの製造方法。
【請求項21】
請求項18乃至20の何れかに記載されたスラリーの製造方法であって、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体にするために、溶媒特性を調整するスラリーの製造方法。
【請求項22】
請求項18乃至21の何れかに記載されたスラリーの製造方法であって、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体にするために、前記粒子の平均粒度分布を調整するスラリーの製造方法。
【請求項23】
請求項18乃至22の何れかに記載されたスラリーの製造方法であって、粉が凝集している状態から解砕した後、フロック様、または、フロック前駆体の集合体にするために、前記粒子間のζ電位を調整するスラリーの製造方法。
【請求項24】
請求項18乃至23の何れかに記載されたスラリーの製造方法であって、前記スラリーの性状を、前記粒子が溶媒中でフロック様、または、フロック前駆体の集合体を形成する凝集度によって制御するスラリーの製造方法。
【請求項25】
請求項18乃至24の何れかに記載されたスラリーの製造方法であって、前記スラリーの性状を、粒子固有の等電点と、溶媒と粉の相互作用のζ電位(表面電位)と、溶媒のpHの少なくとも1つによって制御するスラリーの製造方法。
【請求項26】
固体成分の粒子が液中で固液分散系を形成するスラリーの管理方法であって、
前記スラリーを平坦な樹脂面上に滴下して、半球状の液滴を形成し、
前記液滴を加熱して液相分の含有量を減らし、その乾燥過程における半球状液滴の形状の変化によってスラリーの性状を判定する
ステップを含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載されたスラリーの管理方法であって、前記乾燥によって前記液滴が凹む程度を、顆粒としたときの真球性及び非真球性の判定基準とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載されたスラリーの管理方法であって、前記乾燥によって前記液滴が凹む場合は顆粒の真球性が得られず、凹まない場合は真球性が得られると判定する方法。
【請求項29】
スラリーから造粒した顆粒であって、
球状であり、フロック様、または、フロック前駆体の凝集した集合体が内部で骨格を形成している顆粒。
【請求項30】
請求項29に記載された顆粒であって、内部が中実である顆粒。
【請求項31】
請求項29または30に記載された顆粒であって、外側に開口した空隙を有し、前記空隙は内部にまで通じている顆粒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−39713(P2009−39713A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215467(P2008−215467)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2002−148278(P2002−148278)の分割
【原出願日】平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】