説明

スリッパ底構造

【課題】扁平足の矯正及び予防をするため土踏まず凸部の厚さを簡単に交換し、強固に収納し、かつ履き心地が快適で衛生的なスリッパ底構造を提供し、スリッパ歩行の際につま先立ち状態を可能にして、すり足気味の歩行を防止する。
【解決手段】スリッパ底構造は、外底1,中底2,その上を被覆する被覆布3とを基本構成とし、平面形状が半月状であり、断面形状が略三角形であり、高さの異なる複数種類から選択使用される土踏まず凸部4と、中底2の土踏まず部分の収納切欠13に土踏まず凸部4が収納され、収納切欠13内の面ファスナ12の結合力によって固定される収納固定部5と、中底2等を屈曲可能としてつま先立ち状態とする長孔17の屈曲部6及び甲部と、外反母指予防の第1凸部7と、足指の突っかかりとなりかつ湧泉部位を刺激する第2乃至第4凸部8乃至10とを備える。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案はスリッパに用いるスリッパ底構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
足の疾患ひとつとして扁平足があり、真性扁平足と疑似扁平足とに分けられる。疑似扁平足は足底フットプリントでは確実に扁平足の状況を呈するが、X線写真では正常な骨の発育及びアーチの形成が認められる場合であり、発育期の小児及び脂肪層,筋肉が異常に発育した肥満者,相撲取り,柔道選手等に多く見られる。また、スリッパを履いて歩行する場合、すり足気味の歩行となる。このすり足歩行はつま先立ち状態になりにくい歩行であるため、足底の土踏まず形成にとって好ましくない歩行であり、特に発育期の小児にとって好ましくない。
【0003】
ここで、扁平足の治療法としては保存的治療法と手術療法があり、保存的治療法の一つとして足底板等による矯正がある。この足底板等による扁平足の矯正は、発育期の小児、若年性扁平足、外反扁平足等に対して有効である。従来、足底板等の一種として土踏まず部分に凸部を形成する手段が数多く提案されており、中でも複数の凸部を選択的に着脱自在に使用できるものとして、実開平1−159703号公報、登録実用新案公報第3019676号に開示された技術がある。
これらは、足底の土踏まず部分にクッション又は指圧用刺激体を面ファスナによって着脱自在に取付可能とし、指圧用刺激体等は複数のサイズの中から各人の足裏に適合するものを選択使用できる構成である。また、クッション又は指圧用刺激体を完全に取り外せば、普通の中敷等として使用できる構成でもある。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
従来の実開平1−159703号公報、登録実用新案公報第3019676号
に記載された技術では、クッション,指圧用刺激体の表面が足裏に直接触れるために長時間使用すると汗,汚れ等によって履き心地が著しく悪くかつ不衛生となる。また、指圧用刺激体が底面の上に単に取り付けられているため、歩行中等の安定性が良好でない。
また、上記指圧用刺激体等がスリッパの中底に形成されただけでは、スリッパのすり足歩行に対する対策が全く考慮されていない。
さらに、足の他の疾患である外反母指等に対する対策も考慮されていない。
本考案は上述の問題点にかんがみなされたもので、第1の目的は、扁平足の矯正及び予防をするため土踏まず部分に当てる凸部の厚さを簡単に交換でき、かつ足裏に直接接することなく履き心地が快適で衛生的であり、凸部を安定させるスリッパ底構造を提供する。
また、第2の目的は、スリッパ歩行の際につま先立ち状態を可能にして、スリッパ歩行特有のすり足歩行を可及的に防止できるスリッパ底構造を提供する。
また、第3の目的は、上述した扁平足対策だけでなく、足の他の疾患である外反母指等の予防対策も同時に兼ねることのできるスリッパ底構造を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため、請求項1に係るスリッパ底構造は、 外底,少なくとも1枚の中底及びその上面を被覆する被覆布とで構成されるスリッパ底構造において、 平面形状が足裏の土踏まずに対応する半月状であり、断面形状が略三角形であり、足裏との接面が曲面かつ被覆布に覆われて形成され、側辺下部が中底の厚さ分だけ垂直とした固定用の安定辺とされ、取付用の面ファスナが底面に設けられ、断面の高さが2mmから25mmまでの範囲内において複数種類設定され、その高さの異なる複数種類の内から一つ選択使用される土踏まず凸部と、 中底の土踏まず対応部分において、前記土踏まず凸部の安定辺が上方からはめ合い可能な収納切欠を形成し、前記土踏まず凸部底面の面ファスナと接着する面ファスナが前記収納切欠内に設けられ、前記土踏まず凸部が前記面ファスナの結合力によって固定される収納固定部とを備える。
このため、土踏まず凸部は偏平足の程度に応じて高さを簡単に選択取付でき、安定辺及び収納切欠によって強固に収納され、かつ履き心地が快適かつ衛生的なスリッパとして使用できる。
また、第1及び第2の目的を達成するため、請求項2に係るスリッパ底構造は、 上記請求項1に対して、 上記中底及び外底のつま先から約1/3近傍付近であり、接地した足の足親指のけい側中点と足第5指のひ側中側点を結ぶ線の前後範囲において、前記中底及び外底を屈曲可能とする屈曲部が少なくとも中底に設けられる。
このため、前記請求項1の場合に加えて、更に、スリッパ歩行時に、中底等が屈曲部6において、曲げられてつま先立ち状態を可能とする。
【0006】
また、第1及び第2の目的を達成するため、請求項3に係るスリッパ底構造は、 上記請求項2に対して、 足指及び付け根に対応する前半部分が伸縮部材によって形成されてこの部分の歩行時の足の膨張を吸収し、また足甲に対応する後半部分が伸びの小さい材料を使用して、上記屈曲部の後ろ側を引っ張り上げて屈曲を補助し、つま先立ち状態のスリッパ歩行を可能とする、甲部が上記中底及び外底に取り付けられる。
このため、前記請求項2の場合に加えて、甲部の前半部分はつま先立ち状態の足の膨張を吸収してつま先立ち状態を可能とし、また後半部分が屈曲部の後ろ側を引っ張り上げて、中底等の屈曲を補助してつま先立ち状態を可能とする。
また、第1,第2及び第3の目的を達成するため、請求項4に係るスリッパ底構造は、 上記請求項3に対して、 長楕円体の半分とした立体形状であり、足母指と足第2指との間に対接する中底位置において前記足母指の母指線に並んで突設される第1凸部と、 長い丘状の立体形状であり、足第2指から足小指までの付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第2凸部と、 楕円体の半分とした立体形状であり、足母指の付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第3凸部と、 曲面立体形状であり、足裏の湧泉部位に対接する中底位置に突設される第4凸部とを備える。
このため、前記請求項3に加えて、第1凸部が外反母指を予防し、第2凸部及び第3凸部が足指の適当な突っかかりとなって中底上での足裏の安定を良くし、つま先立ち状態を安定させ、第4凸部は、湧泉部位を刺激してより効果的に外反母指の予防を行うだけでなく、全般的な体調を整えることができる。
また、請求項5に係るスリッパ底構造は、 上記請求項2に対して、 足甲に対応する後半部分が伸びの小さい材料を使用して、上記屈曲部の後ろ側を引っ張り上げて屈曲を補助し、つま先立ち状態のスリッパ歩行を可能とする、甲部が上記中底及び外底に取り付けられる。
このため、前記請求項2の場合に加えて、甲部の後半部分が屈曲部の後ろ側を引っ張り上げて、中底等の屈曲を補助してつま先立ち状態を可能とする。
また、請求項6に係るスリッパ底構造は、 上記請求項5に対して、 長楕円体の半分とした立体形状であり、足母指と足第2指との間に対接する中底位置において前記足母指の母指線に並んで突設される第1凸部と、 長い丘状の立体形状であり、足第2指から足小指までの付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第2凸部と、 楕円体の半分とした立体形状であり、足母指の付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第3凸部と、 曲面立体形状であり、足裏の湧泉部位に対接する中底位置に突設される第4凸部とを備える。
このため、前記請求項5に加えて、第1凸部が外反母指を予防し、第2凸部及び第3凸部が足指の適当な突っかかりとなって中底上での足裏の安定を良くし、つま先立ち状態を安定させ、第4凸部は、湧泉部位を刺激してより効果的に外反母指の予防を行うだけでなく、全般的な体調を整えることができる。
【0007】
【考案の実施の形態】
以下に、上記請求項に対応した実施の形態を、適宜図面を使って説明する。
図1は、請求項4に対応した第1の実施形態の右足用のスリッパ底構造の平面面である。なお、請求項4は請求項1乃至請求項3に係る考案を組み込んでいる。このスリッパ底構造は通常の外底1、中底2、被覆布3の構成に対して、土踏まず凸部4と、土踏まず凸部4を収納する収納固定部5と、中底2及び外底1が屈曲可能とされる屈曲部6及び甲部18と、足指部分に対接する第1凸部7から第3凸部9及び湧泉部位に対接する第4凸部10とを加えて構成される。なお、これらのスリッパ底は左右一対として構成されるが、以下の説明においては左足用又は右足用のどちらか一方を使っている。
【0008】
土踏まず凸部4は、図1及び図2に示すように、平面形状が足裏の土踏まずに対応する半月状であり、断面形状が略三角形であり、足裏の土踏まず空間に対応する立体形状となっている。また、足裏との接面が曲面かつ被覆布3に覆われ、側辺下部は中底2の厚さ分だけ垂直とした固定用の安定辺11とされ、取付用の面ファスナ12(JIS L 3416相当)が底面に設けられる。被覆布3によって足裏との接面が常に覆われているため、汗等で直接汚れることもなく、履き心地が快適かつ衛生的に使用できる。安定辺11の高さが中底2厚さより薄い場合、収納切欠13との安定性が悪くなる。反対に厚すぎる場合、縫製面から作業性が悪くなる。断面の高さhは、2mmから25mmまでの範囲内において、高さの異なる複数種類が設定される。そして、その内から一つを選択して使用する。高さ2mmから25mmまでの数値範囲は、小児から大人までの土踏まず部分に対して効果的な高さ範囲である。従って、偏平度合い,年齢,足のサイズ等に応じて適切な厚さの土踏まず凸部4を選択することができ、効果的な扁平足の矯正と予防が行える。
例えば、足長18cmから27.5cmまでのスリッパサイズにおいて、13mm,15mm,18mmの3種類を設定する。なお、平面形状の縦横の大きさは、各サイズのスリッパ中底の土踏まず部分の大きさに合わせて決定される。
【0009】
土踏まず凸部4の材質は、硬さを硬軟いずれも採用するので、合成樹脂材,ゴム材,木材等の軽量で加工又は成形容易な材料を使用する。また、これらの単一材料を使用するだけでなく、硬質材と軟質材を二層等に組み合わせる構成、固体でなく流体(水,空気),半流動体(ゲル)等を袋に充填した構成を取ることもできる。
【0010】
収納固定部5は、図2に示すように、中底2の上面の土踏まず対応部分において、土踏まず凸部4の安定辺11が上方からはめ合うように中底2の一部が切りとられて収納切欠13が形成され、土踏まず凸部底面の面ファスナ12と接着する面ファスナ12が収納切欠13内に設けられている。収納切欠13と安定辺11とのはめ合い具合sは、図2の場合、中底2厚さ5mm,安定辺11高さ5mmにおいて約2mmである。中底2側の面ファスナ12は、綿布等の補強布14を介して中底2に接合されている。このため、図1に示すように、土踏まず凸部4が上方から出し入れ自在とされ、中底2内に収納可能とされる。この時、土踏まず凸部8の横方向は収納切欠12と安定辺11とで強固に保持され、垂直方向は面ファスナ12の結合力によって固定され、土踏まず凸部8が強固に固定される。なお、薄い厚さの土踏まず凸部4が収納固定部5へ選択設置されて、土踏まず凸部の上面と中底2上面とが面一状態となれば、普通のスリッパの中底と同じになる。
【0011】
屈曲部6は、図3に示す右足図において、つま先から約1/3近傍付近であり、接地した足の足親指のけい側中足点15と足第5指のひ側中足点16を結ぶ線(屈曲線6a)の前後範囲(ゾーン)に形成される。屈曲部6の具体的な構成例は、図1に示す右足用中底2において、4本の長孔17を設けることでゾーンを形成している。例えば、長さ25cmの足用にて幅4mm,間隔10mmの長孔17である。このゾーンの形成は長孔17に限定することなく、小さな円孔を多数設けてゾーン形成する場合等、各種形状の孔及び板厚を薄くしてゾーン形成される場合も含まれる。また、屈曲部6は中底2に設けられたが、これに限定されることなく外底1に設けても、更に複数枚の中底・中芯の場合必要な枚数を選択できる。この屈曲部6において、中底2及び外底1が屈曲可能となり、スリッパ歩行時につま先立ち状態可能となる。
【0012】
図1の右足用のスリッパ底構造において、第1凸部7は長楕円体の半分とした立体形状であり、足母指と足第2指との間に対接する中底2位置において足母指の母指線に並んで突設される。第2凸部8は、長い丘状の立体形状であり、足第2指から足小指までの付け根の土踏まず部位に対接する中底2位置に突設される。第3凸部9は、楕円体の半分とした立体形状であり、足母指の付け根の土踏まず部位に対接する中底2位置に突設される。第4凸部10は、曲面立体形状の一種である半球形であり、足裏の湧泉部位に対接する中底2位置に突設される。湧泉部位は足裏の足母指側の付け根のふくらみ(母指球)と足小指側の付け根のふくらみ(小指球)の交わる点に存在し、足母指と足第2指とを広げるツボ及び体全体のツボとして知られている。湧泉部位は鍼等の経絡図に見られ、反射療法図の太陽神経叢に相当する。
【0013】
甲部18は、図4に示すように、上記中底2及び外底1に取り付けられる。足指及び付け根に対応する前半部分19が伸縮部材によって形成されて、この部分の歩行時の足の膨張を吸収する。特に、つま先立ち状態の足では、足の膨張が最大となるので、前半部分19がこの膨張を完全に吸収してつま先立ち状態を可能にする。また、足甲に対応する後半部分20が伸びの小さい材料を使用している。伸びの小さい材料としては、各種の繊維素材の中から伸びの小さいものが選択使用される。具体的な製造例としては、前半部分19の伸縮部材が甲部18全体に使用され、後半部分20には綿等の力布が裏に貼られて伸びを抑えている。また、前半部分19と後半部分20それぞれ別の素材を使用して境目で縫い合わせるなどして甲部18を構成することもできる。
【0014】
前半部分19に用いる布状の伸縮部材としては、弾性を有するゴム引布(JIS K 6328相当)、綿糸と糸ゴム(JIS K 6327相当)を編んで形成した幅広のゴムひも等の編物類といった各種の安価な市販品の伸縮部材も使用できる。使用ゴムの材質としては、天然ゴム,合成ゴム(ジエン系合成ゴム,非ジエン系合成ゴム,熱可塑性ゴム等)といった種類に関係なく、足挿入時による足膨張を十分に吸収できる性能を有すれば良い。
また、伸縮部材はゴム材に限定することなく、いわゆるストレッチ素材を利用する織物・編物を採用することができる。ストレッチ素材は、原糸自体がストレッチ機能を持つ弾性糸と、非弾性糸に後加工によりかさ高性と伸縮性を付与したものである。非弾性糸の後加工によって伸縮性を付与させた素材としては、例えば、ポリエステル繊維,PBT繊維,ポリアミド繊維に特殊な加工条件で伸縮性を付与した加工糸がある。弾性糸としては、例えば、ポリウレタン弾性糸,芯鞘型複合糸,ポリエーテル・エステル系弾性糸及び天然ゴム(上記ゴム材を含む)
がある。なお、弾性糸を用いて製織製編するには、ベア糸使いの場合とカバリング弾性糸を用いる場合がある。
更に、伸縮性能を有する合成樹脂材(例えば、最大伸び率の大きな熱可塑性プラスチック,ポリウレタン,シリコーン樹脂等)を採用することもできる。
ゴム布7等の伸縮部材の中底2等への接合方法は、接着剤、縫製、熱融着等の各種の一般的接合方法を採用する。
【0015】
なお、外底1及び中底2の使用材料は、通常使用されるポリエチレン(EVA),ウレタン等であり、表材としてポリ塩化ビニル(PVC)等を使う。また、中底2も上記実施形態の1枚に限定されず、必要に応じて2枚以上使用でき、踵部分にウレタン等のクッション材を付加する場合もある。なお、携帯用,機内用等のスリッパでは、外底1と中底2とが一体化して1枚となっており、このような場合も本発明のスリッパ底構造を採用できる。被覆布3は、各種繊維の織物又は不織布であり、例えば、綿,麻等の天然繊維、ポリエステル,ナイロン等の合成繊維である。また、繊維機能として、吸湿性,保温性,通気性のはき心地を向上させる機能を備えている材料であれば最適である。
【0016】
次に、上述したスリッパ底構造を用いたスリッパの使用について説明する。
例えば、足裏が扁平足状態のとき、使用する人のサイズに合ったスリッパを利用する場合、数種類の厚さの土踏まず凸部4中から最も薄いものを最初に選択使用する。まず、上方から土踏まず凸部4を収納固定部5へ入れると、土踏まず凸部4が垂直方向において面ファスナ12、横方向において安定辺11及び収納切欠13によって固定される。この状態のスリッパを日常使用すれば、大きな痛みを伴うことなく扁平足の矯正ができる。そして、ある程度の期間使用して慣れたなら、より厚さの厚い土踏まず凸部4に交換して使用する。このように段階的に徐々に厚さを厚くしていくことで効果的に矯正できる。また、扁平足の予防だけなら、足裏に適応した厚さを選んでそれのみを使用すれば良い。上記土踏まず凸部4の交換は極めて簡単だけでなく、常に土踏まず凸部4の被覆布3を介して足裏が接するので、汗などは被覆布3に吸収され、履き心地が快適かつ衛生的なスリッパを使用できる。しかも、土踏まず凸部4、被覆布3が足裏に接するので、全く普通のスリッパと同じになる。大人に多い疑似扁平足の人についても、上記と同様に土踏まず凸部4を徐々に厚くして疑似扁平足の矯正・予防に寄与することができる。
【0017】
次に、すり足気味となるスリッパ歩行の際、屈曲部6で曲がり易くなっているために、スリッパ歩行中でもつま先立ち状態をとることが可能となって扁平足の矯正又は防止に役立つ。特に、甲部18の後半部分20は、図5に示すように、屈曲部6の後ろ側を引っ張り上げる動作となって屈曲を補助し、つま先立ち状態のスリッパ歩行を可能とする。また、つま先立ち状態の足では、足の膨張が最大となるので、前半部分19がこの膨張を完全に吸収してつま先立ち状態を可能にする。
【0018】
第1凸部7は、足母指を母指線に沿って無理なく健康的な位置に案内し、外反母指の予防を無理なく行う。しかも、足母指の下部分に当たるだけで、足第2指を強制的に分離させないので、痛みもなく日常生活の妨げとなることもない。他方、第2凸部8及び第3凸部9は、足母指及び足第2指から足小指までの付け根の土踏まず部位に接触するため、適当な突っかかりとなって中底2上での足裏の安定を良くし、つま先立ち状態を安定させることができる。第4凸部10は、湧泉部位を刺激してより効果的に外反母指の予防を行うだけでなく、全般的な体調を整えることができる。
【0019】
請求項1に対応した実施形態は、前述第1実施形態の土踏まず凸部4及び収納固定部5を通常のスリッパ底に利用した構成である。このため、土踏まず凸部4は偏平足の程度に応じて高さを簡単に選択取付でき、安定辺11及び収納切欠13によって強固に収納される。更に、土踏まず凸部4の足裏へ接する面には被覆布3が覆われているため、履き心地が快適かつ衛生的なスリッパとして使用できる。
【0020】
請求項2に対応した実施形態は、請求項1の実施形態に屈曲部6を付加する構成である。このため、前記請求項1の場合に加えて、更に、スリッパ歩行時に、中底等が屈曲部6において、曲げられてつま先立ち状態を可能とする。
【0021】
請求項3に対応した実施形態は、前記請求項2の実施形態に甲部18をさらに付加する構成であり、その他は通常のスリッパ底である。このため、前記請求項2の場合に加えて、甲部18の前半部分19はつま先立ち状態の足の膨張を完全に吸収してつま先立ち状態を可能にする。また、甲部18の後半部分20は屈曲部6の後ろ側を引っ張り上げて、中底2等の屈曲を補助してつま先立ち状態を確実とする。
請求項5,6に対応した実施形態は、上記請求項3,4の実施形態に対して甲部の前半部分が伸縮部材を用いるのでなく、スリッパの表地に通常用いられる布部材を用いる構成である。この布部材は天然繊維又は化繊であるため、上述の伸縮部材ほど足の膨張を吸収することはない。しかし、逆に少し吸収する方が、かえって感触が良い場合もあり、これを好む使用者等の多彩な要請に答えることができる。
【0022】
【考案の効果】
以上のように構成した本考案に係るスリッパ底構造であれば、請求項1乃至4記載の考案によって、扁平足の矯正及び予防をするため土踏まず部分に当てる凸部の厚さを簡単に交換できより強固に固定でき、かつ吸湿性,通気性等に富んだ繊維素材の被覆布が足裏に常に接するので、快適かつ衛生的な履き心地が得られる。また前記に加えて、請求項2乃至3記載の考案では、スリッパ歩行の際につま先立ち状態を可能にして、スリッパ歩行特有のすり足気味の歩行を可及的に防止し、扁平足の矯正と予防を効果的に図ることができる。更に、請求項4記載の考案では、足の他の疾患である外反母指等の予防対策も同時に兼ねることができる。請求項5,6記載の考案では、甲部の感触に対する使用者の多彩な要請に答えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項4の第1実施形態の右足用のスリッパ底構造の平面図である。
【図2】図1のAーA断面の断面説明図である。
【図3】右足の足親指のけい側中足点22と足第5指のひ側中足点23を結ぶ線16aを示す説明図である。
【図4】第1実施形態のスリッパ甲部の側面図である。
【図5】第1実施形態のスリッパのつま先立ち状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 外底 2 中底 3 被覆布 4 土踏まず凸部 5 収納固定部
11 安定辺 13 収納切欠 12 面ファスナ
6 屈曲部 17 長孔 7〜10 第1凸部〜第4凸部
15 足親指のけい側中足点 16 足第5指のひ側中足点
18 甲部 19,20 甲部の前半,後半

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】外底,少なくとも1枚の中底及びその上面を被覆する被覆布とで構成されるスリッパ底構造において、平面形状が足裏の土踏まずに対応する半月状であり、断面形状が略三角形であり、足裏との接面が曲面かつ被覆布に覆われて形成され、側辺下部が中底の厚さ分だけ垂直とした固定用の安定辺とされ、取付用の面ファスナが底面に設けられ、断面の高さが2mmから25mmまでの範囲内において複数種類設定され、その高さの異なる複数種類の内から一つ選択使用される土踏まず凸部と、中底の土踏まず対応部分において、前記土踏まず凸部の安定辺が上方からはめ合い可能な収納切欠を形成し、前記土踏まず凸部底面の面ファスナと接着する面ファスナが前記収納切欠内に設けられ、前記土踏まず凸部が前記面ファスナの結合力によって固定される収納固定部とを備える、ことを特徴とするスリッパ底構造。
【請求項2】上記中底及び外底のつま先から約1/3近傍付近であり、接地した足の足親指のけい側中点と足第5指のひ側中側点を結ぶ線の前後範囲において、前記中底及び外底を屈曲可能とする屈曲部が少なくとも中底に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載されるスリッパ底構造。
【請求項3】足指及び付け根に対応する前半部分が伸縮部材によって形成されてこの部分の歩行時の足の膨張を吸収し、また足甲に対応する後半部分が伸びの小さい材料を使用して、上記屈曲部の後ろ側を引っ張り上げて屈曲を補助し、つま先立ち状態のスリッパ歩行を可能とする、甲部が上記中底及び外底に取り付けられる、ことを特徴とする請求項2に記載されるスリッパ底構造。
【請求項4】長楕円体の半分とした立体形状であり、足母指と足第2指との間に対接する中底位置において前記足母指の母指線に並んで突設される第1凸部と、長い丘状の立体形状であり、足第2指から足小指までの付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第2凸部と、楕円体の半分とした立体形状であり、足母指の付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第3凸部と、曲面立体形状であり、足裏の湧泉部位に対接する中底位置に突設される第4凸部とを備える、ことを特徴とする請求項3に記載されるスリッパ底構造。
【請求項5】足甲に対応する後半部分が伸びの小さい材料を使用して、上記屈曲部の後ろ側を引っ張り上げて屈曲を補助し、つま先立ち状態のスリッパ歩行を可能とする、甲部が上記中底及び外底に取り付けられる、ことを特徴とする請求項2に記載されるスリッパ底構造。
【請求項6】長楕円体の半分とした立体形状であり、足母指と足第2指との間に対接する中底位置において前記足母指の母指線に並んで突設される第1凸部と、長い丘状の立体形状であり、足第2指から足小指までの付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第2凸部と、楕円体の半分とした立体形状であり、足母指の付け根の土踏まず部位に対接する中底位置に突設される第3凸部と、曲面立体形状であり、足裏の湧泉部位に対接する中底位置に突設される第4凸部とを備える、ことを特徴とする請求項5に記載されるスリッパ底構造。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【登録番号】第3043049号
【登録日】平成9年(1997)8月20日
【発行日】平成9年(1997)11月11日
【考案の名称】スリッパ底構造
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−4015
【出願日】平成9年(1997)5月2日
【出願人】(594091592)三和株式会社 (1)