スルビビン抗原を提示する腫瘍を治療するための組成物および方法
本発明は、ヒトにおいてヒトスルビビンに対する免疫応答を誘発して、スルビビンを過剰発現している腫瘍罹患細胞を攻撃するワクチン組成物を提供する。特に、本発明は、非哺乳類スルビビン由来の、および哺乳類、特にヒトの改変されたスルビビン由来のペプチドを含むワクチン組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍を治療するためのワクチン戦略に関する。具体的に、本発明は、ヒトにおいてヒトスルビビンに対する免疫応答を誘発して、スルビビンを過剰発現している腫瘍罹患細胞を攻撃するワクチン組成物に関する。特に、本発明は、非哺乳類スルビビン由来、および哺乳類、特にヒトの改変されたスルビビン由来のペプチドを含むワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
免疫系は、一つには、細胞のタンパク質組成をモニターすることによってその監視機能を実行する。T細胞抗原提示と称されるプロセスにおいて、細胞内のタンパク質はペプチドに処理される。処理されたペプチドのサブセットである抗原は、主要組織適合複合体(MHC)受容体として知られている受容体の1クラスの1メンバーと特異的に結合して、細胞表面に運ばれる。これらのMHC−ペプチド複合体は、特殊化された免疫細胞、T細胞によってT細胞受容体(TCR)として知られているT細胞表面タンパク質との相互作用を介して抽出される。所与のT細胞はそれぞれ、表面上に固有のTCRを備えている。T細胞のTCRとMHC−ペプチド複合体との生産的な相互作用によって、免疫応答が活性化され、特定のMHC−ペプチド複合体を提示する細胞の排除が引き起こされる。一般的に、提示された抗原が宿主由来、すなわち「自己」抗原の場合、相互作用は、非生産的である。通常、免疫応答は、外来タンパク質由来の抗原、例えば、感染ウイルスの構成タンパク質由来の抗原と相互作用することによって活性化される。
【0003】
活性免疫化によって腫瘍を治療する目的は、腫瘍細胞を認識して、排除する免疫系を誘導することである。その他のあらゆる細胞と同様に、腫瘍細胞上のペプチド抗原は、発現したタンパク質の全範囲から得られる。腫瘍で個別に発現したタンパク質から得られた腫瘍に豊富な抗原は、ウイルス抗原が感染細胞中に存在するのとちょうど同じように、原則として免疫監視の標的となる。したがって、腫瘍を排除する目的のために、細胞内感染に対抗するために進化した免疫系の分岐を利用することは有用である。
【0004】
このような腫瘍で豊富な1タンパク質は、スルビビンである。腫瘍細胞はしばしば、スルビビンタンパク質を過剰発現し、アポトーシスを遮断して、腫瘍細胞の異常増殖を防ぐ機構を妨害すると考えられている。他方、正常細胞は、スルビビンをほとんど発現しない(例えば、Ambrosini他、(1997)Nat.Med.、3:917〜921を参照)。したがって、スルビビンは、理想的な腫瘍特異的または腫瘍に豊富な抗原である。このことは、スルビビンに対する免疫応答を誘発するように、抗原型のスルビビンタンパク質を抗原提示細胞に輸送するために役立つだろう。しかし、ウイルス感染細胞とは対照的に、スルビビンは、腫瘍で個別に発現しているその他の多くのタンパク質と同様に、宿主タンパク質であり、免疫系を活性化しない。したがって、腫瘍細胞、特にスルビビンの過剰発現が特徴である腫瘍細胞に対して効果的に免疫応答を惹起するのに有効な組成物および方法を開発することが、当業界では依然として必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明は、腫瘍細胞に対して効果的に免疫応答を惹起するのに有効な組成物および方法を提供する。具体的に、本発明は、T細胞抗原として、腫瘍に豊富なタンパク質の抗原型を使用したワクチン接種戦略を提供する。特に、本発明は、腫瘍に豊富なタンパク質、スルビビンの抗原型を提供する。
【0006】
したがって、本発明は、一態様では、非哺乳類スルビビン由来の少なくとも1種のペプチドをコードする核酸を含むワクチンに関する。あるいは、本発明は、非哺乳類スルビビン由来の少なくとも1種のペプチドを含むワクチンに関する。本明細書で使用した「非哺乳類スルビビン」は、ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%超90%未満である、例えば、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%であるBIRドメイン(またはIAPドメイン)を含む任意のスルビビンタンパク質を少なくとも包含する。「非哺乳類スルビビン」には、当業者に公知の非哺乳類種で同定された任意のスルビビンタンパク質も含まれる。本明細書で使用した「ペプチド」は、完全長スルビビンタンパク質を含む、任意の数のアミノ酸を有するペプチドを包含する。特に、ペプチドは、少なくとも8、9、10、15、20、25、30個以上のアミノ酸を含有することができる。
【0007】
好ましい一実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする核酸が含まれる。核酸は、哺乳類のプロモーターを含んでよい。一実施形態では、核酸は裸DNAである。他の実施形態では、核酸は哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化される。本発明のワクチンはアジュバントも含んでよい。
【0008】
一実施形態では、核酸はウイルス粒子、例えば、アデノウイルス粒子の一部である。本発明に適したアデノウイルス粒子には、複製可能なアデノウイルス由来のもの、または特定の細胞でのみ、もしくは特定の条件下でのみ複製する条件付きで複製するアデノウイルス(「CRAD」)由来のもの、または複製能力がないアデノウイルス由来のものが含まれる。その他の適切なウイルス粒子には、限定はしないが、ほんの少数の例を挙げれば、レンチウイルスもしくはその他のRNAウイルス、アデノ随伴ウイルス、ロタウイルス、またはワクシニアウイルス由来のウイルス粒子が含まれる。
【0009】
一実施形態では、ワクチンは核酸を含有する細菌を含む。好ましくは、この細菌は腸内細菌、例えば、サルモネラ、大腸菌またはクレブシラである。その他の細菌、例えば、リステリア種もこのような核酸の宿主となるために使用することができる。この細菌は、野生型細菌であってよく、または、例えば、その病原性を弱めた変異を含有してよい。一般的に、細菌の変異型、例えば、栄養要求体を使用することが好ましい。
【0010】
他の好ましい実施形態では、本発明のワクチンは、非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードするか、または含む。好ましくは、非哺乳類スルビビン由来のペプチドには、BIRドメインが含まれる。一般的に、非哺乳類スルビビン由来のBIRドメインは、ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%超80%未満である。非哺乳類スルビビンは、鳥類、魚類、は虫類、両生類またはその他の脊椎動物から得られる。好ましい実施形態では、非哺乳類スルビビンは、ニワトリから得られる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンは、T細胞抗原提示を促進する変異を有する非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードするか、または含む。例えば、非哺乳類スルビビン変異ペプチドは、ヒトスルビビンのAsn97、Thr99、Val100またはGln101に対応する位置にアミノ酸置換を含有してよい。より具体的には、ニワトリまたはその他の種由来の非哺乳類スルビビンは、以下のアミノ酸置換、N97E、T99M、V100LまたはQ101Gの1つを含有してよい。他の例では、カエルSIXスルビビン由来のペプチドは、同等の位置Thr110および/またはSer112に置換を含有する。具体的な例では、カエルSIXスルビビン由来のペプチドは、Thr110Metおよび/またはSer112Glyの置換を含有する。
【0012】
その他の実施形態では、本発明のワクチンは、BIRドメインの生物学的活性が潜在的に消失する変異を有する非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードするか、または含む。例えば、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、ヒトスルビビンのArg18、Cys57、Cys60、His77またはCys84に対応する位置に少なくとも1個のアミノ酸置換を含有してよい。
【0013】
さらに、非哺乳類スルビビンは、場合によってアミノ酸欠失を含有してよい。一実施形態では、非哺乳類スルビビン部分は、C末端に欠失を含有する。他の実施形態では、非哺乳類スルビビンは、N末端に欠失を含有する。
【0014】
その他の実施形態では、本発明のワクチンは、癌細胞上でMHC分子と結合したとき、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる。具体的に、このようなヒトスルビビンペプチド配列は、例えば、LTLGEFLKL(配列番号1)、CPTENEPDL(配列番号2)またはEPDLAQCFF(配列番号3)であってよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、Fc部分と融合するか、または結合している。好ましいFc部分は、哺乳類Fc領域由来で、より好ましくはヒトFc領域由来である。Fc部分は、集合を改善する変異、例えば、IgG1ヒンジの配列EPKSCDK(配列番号4)のシステインとセリンの置換を含有してよい。結果的に、Fc部分は、改変された配列EPKSSDK(配列番号5)を含有してよい。Fc部分はまた、免疫応答が望ましくない領域、例えば、融合タンパク質間の連結点の免疫原性を減少させる変異を含有してよい。
【0016】
選択された実施形態では、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、免疫応答に寄与するエフェクター分子と相まって作用する。例えば、このようなエフェクター分子は、限定はしないが、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23、GM−CSFを含むサイトカイン成分、または任意のその他のサイトカイン、特にTh1免疫応答を活性化できるものであってよい。このようなエフェクター分子はまた、免疫系を抑制するサイトカインの阻害剤、例えば、STAT3阻害剤(例えば、STAT3βなどのドミナントネガティブSTAT3タンパク質)であってよい。サイトカインまたはその他のエフェクター分子はまた、変異を含有してよい。例えば、サイトカインは、IL−2のCys125に対応する位置にSer置換を含有してよい。
【0017】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする核酸が含まれる。非哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子ペプチドをコードする領域は、単一の転写単位、または2つに分離した転写単位に存在することができる。あるいは、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする核酸および免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする別の核酸が含まれる。
【0018】
その他の実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドが含まれる。一実施形態では、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、エフェクター分子を含むペプチドと融合するか、または結合している。非哺乳類スルビビンおよびエフェクター分子融合タンパク質は、前述のようにFc部分とさらに融合しているか、または結合していてよい。
【0019】
他の態様では、本発明は、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸を含むワクチンに関する。あるいは、本発明は、改変された哺乳類スルビビンペプチドを含むワクチンに関する。改変された哺乳類スルビビンペプチドは、生物学的に不活性であるが、哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的に類似である。本明細書で使用したように、「生物学的に不活性」とは、正常なスルビビンに通常関連した活性を実質的に発揮できないか、または影響を及ぼすことができないスルビビンペプチドを意味する。例えば、「生物学的に不活性」なスルビビンペプチドは、実質的にアポトーシス阻害活性を持たず、内在性スルビビンタンパク質に通常関連しているアポトーシス阻害活性を実質的に妨害することができない。生物学的に不活性なスルビビンは一般的に、実質的にドミナントネガティブ効果を持たない。本明細書で使用したように、「哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的に類似である」とは、対応する改変していない哺乳類スルビビンペプチドの標的配列に対する免疫応答と同様の免疫応答を少なくとも1種惹起することができる改変されたスルビビンペプチドを意味する。免疫応答は、例えば、CD8+T細胞集団または標的配列に応答したCD8+T細胞によるIFNγ放出によって測定することができる。
【0020】
好ましい一実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸が含まれる。核酸は、哺乳類のプロモーターを含んでよい。一実施形態では、核酸は裸DNAである。他の実施形態では、核酸は哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化される。本発明のワクチンはアジュバントも含んでよい。
【0021】
一実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸はウイルス粒子、例えば、アデノウイルス粒子の一部である。本発明に適したアデノウイルス粒子には、複製可能なアデノウイルス由来のもの、または特定の細胞でのみ、もしくは特定の条件下でのみ複製する条件付きで複製するアデノウイルス(「CRAD」)由来のもの、または複製能力がないアデノウイルス由来のものが含まれる。その他の適切なウイルス粒子には、限定はしないが、ほんの少数の例を挙げれば、レンチウイルスもしくはその他のRNAウイルス、アデノ随伴ウイルス、ロタウイルス、またはワクシニアウイルス由来のウイルス粒子が含まれる。
【0022】
一実施形態では、ワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸を含有する細菌が含まれる。好ましくは、この細菌は腸内細菌、例えば、サルモネラ、大腸菌またはクレブシラである。その他の細菌、例えば、リステリア種もこのような核酸の宿主にするために使用することができる。この細菌は、野生型細菌であってよく、または例えばその病原性を弱めた変異を含有してよい。一般的に、細菌の変異型、例えば、栄養要求体を使用することが好ましい。
【0023】
他の好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドが含まれる。好ましくは、改変された哺乳類スルビビンペプチドには、改変されたBIRドメインが含まれる。改変されたBIRドメインは、ヒトスルビビンのArg18、Cys57、Cys60、His77およびCys84に対応する位置に少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでよい。あるいは、または、さらに、改変された哺乳類スルビビンペプチドには、改変されたヘリカルドメインが含まれる。改変されたヘリカルドメインは、ヒトスルビビンのLys122、Ala128およびIle135に対応する位置に少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでよい。例えば、改変されたヘリカルドメインは、ヒトスルビビンのAla128に対応する位置にProを含有してよい。改変されたヘリカルドメインは、Ile135に対応する位置にProを含んでいてもよい。改変された哺乳類スルビビンペプチドは、1個または複数のMHCクラスIT細胞エピトープを含有することが好ましい。例えば、改変された哺乳類スルビビンペプチドは、アミノ酸配列LTLGEFLKL(配列番号1)またはLMLGEFLKL(配列番号6)を含んでよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドには、Fc部分と融合している。好ましいFc部分は、哺乳類Fc領域由来で、より好ましくはヒトFc領域由来である。Fc部分は、集合を改善する変異、例えば、IgG1ヒンジの配列EPKSCDK(配列番号4)のシステインとセリンの置換を含有してよい。結果的に、Fc部分は、改変された配列EPKSSDK(配列番号5)を含有してよい。Fc部分はまた、免疫応答が望ましくない領域、例えば、融合タンパク質成分間の連結点の免疫原性を減少させる変異を含有してよい。
【0025】
ある種の実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドは、免疫応答に寄与するエフェクター分子と相まって作用する。例えば、このようなエフェクター分子は、限定はしないが、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23、GM−CSFを含むサイトカイン成分、または任意のその他のサイトカイン、特にTh1免疫応答を活性化できるものであってよい。このようなエフェクター分子はまた、免疫系を抑制するサイトカインの阻害剤、例えば、STAT3阻害剤(例えば、STAT3βなどのドミナントネガティブSTAT3タンパク質)であってよい。サイトカインまたはその他のエフェクター分子はまた、変異を含有してよい。例えば、サイトカインは、IL−2のCys125に対応する位置にSer置換を含有してよい。
【0026】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする核酸が含まれる。改変された哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子ペプチドをコードする領域は、単一の転写単位、または2つに分離した転写単位に存在することができる。あるいは、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸および免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする別の核酸が含まれる。
【0027】
その他の実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドが含まれる。一実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドは、エフェクター分子を含むペプチドと融合するか、または結合している。改変された哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子融合タンパク質は、前述のようにFc部分とさらに融合しているか、または結合していてよい。
【0028】
他の態様では、本発明は、ヒトスルビビンを発現する細胞に対する免疫応答を惹起することができる核酸に関する。この核酸は、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が50%超80%未満であるアミノ酸配列を含むペプチドをコードし、この核酸は、哺乳類細胞のペプチドを発現することができるプロモーターを含有する。
【0029】
本発明はまた、前述のワクチンまたは核酸を投与することを含む治療方法に関する。特に、本発明は、癌および所望しない細胞増殖が関連する他の疾患の治療方法を提供する。本発明の治療方法は、その他のステップ、例えば、高レベルのスルビビンの発現について患者の腫瘍を最初に試験するステップを場合によって含んでよい。他の任意選択のステップは、本発明のワクチンまたは核酸を投与する前に、患者を弱い免疫抑制剤、例えば、低用量のシクロホスファミドで前処理することである。理論によって結びつけることは望まないが、このような前処理の1効果は、制御性T細胞の数を減少させることである。したがって、同様の効果を有するその他の前処理は本発明に包含される。
【0030】
スルビビンに加えて、本発明は、抗原として利用できる多種多様なタンパク質、例えば、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原およびその他の抗原に適用することができる。本発明は、スルビビンに加えて、腫瘍特異的抗原の中でも上皮細胞接着分子、Rasなどの癌遺伝子、癌胎児抗原およびその他の腫瘍特異的、または腫瘍に豊富なタンパク質に適用することができる。本発明は、ウイルス抗原の中でもHIVのp24、インフルエンザ赤血球凝集素およびその他のウイルスタンパク質に適用することができる。
【0031】
要するに、本発明は以下に関する。
・ヒトにおける腫瘍および腫瘍関連疾患の治療に使用するためのワクチンであって、
(a)ヒトスルビビンのAsp16からLeu87にわたるBIRとのアミノ酸同一性が50%と90%との間であるBIRドメインを含む非哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、または(b)BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、および(c)場合によってアジュバントを含み、ヒトにおいてヒトスルビビンに対する免疫応答を惹起するワクチン。
・ワクチンによって引き起こされた前記免疫応答が、ヒトスルビビンを発現する細胞を攻撃するCD8+T細胞を生じさせる対応するワクチン。
・ペプチドが非哺乳類スルビビン由来である対応するワクチン。
・前記BIRドメインが、前記ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%と80%との間である対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビンが鳥類、魚類、は虫類または両生類、好ましくはニワトリ由来である対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビン由来のペプチドが、MHC分子に結合することによってT細胞抗原提示を促進する1個または複数の変異を含む対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビンがニワトリのものであり、変異がニワトリスルビビンのAsn97、Thr99、Val100またはGln101の位置の1個または複数でのアミノ酸置換である対応するワクチン。好ましい変異は、N97Eおよび/またはT99Mおよび/またはV100Lおよび/またはQ101Gである。
・変異がN97E、T99M、V100LおよびQ101Gである配列番号12のワクチン。
・非哺乳類スルビビンが、BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む対応するワクチン。
・消失する前記生物学的活性がアポトーシスである対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84に対応する1個または複数の位置にアミノ酸置換を含有する対応するワクチン。
・MHC分子と結合したとき、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる対応するワクチンであって、前記ヒトスルビビンペプチド配列がLTLGEFLKL、CPTENEPDLおよびEPDLAQCFFからなるペプチドの群から選択されることが好ましいワクチン。
・ペプチドが、改変された哺乳類スルビビン、好ましくはヒトスルビビン由来である対応するワクチン。
・改変されたヒトスルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84の1個または複数の位置にアミノ酸置換を含有する対応するワクチン。
・改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドが、改変されたヘリカルドメインを含み、ヒトスルビビンのLys12および/またはAla128および/またはIle135の位置にアミノ酸置換を含有する対応するワクチン。
・変異が少なくともAla128Pおよび/またはIl2135Pである対応するワクチン。
・以下の変異、R18E、P47L、Q56L、H77A、C84A、A128PおよびI135Pを有する改変されたヒトスルビビンを含む配列番号56のワクチン。
・改変された哺乳類スルビビンペプチドが、アミノ酸配列LTLGEFLKLまたはLMLGEFLKLを含む対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドがFc部分と融合している対応するワクチン。
・エフェクター分子、好ましくはIL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23およびGM−CSFからなる群から選択されたサイトカイン由来のペプチドをさらにコードするか、または含む対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビンまたは改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする核酸が哺乳類プロモーターを含み、好ましくは裸DNAである対応するワクチン。
・核酸が、哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化されている対応するワクチン。
・核酸がウイルス粒子、好ましくはアデノウイルス粒子の一部である対応するワクチン。
・核酸を含む細菌を含み、細菌が好ましくは腸内細菌、より好ましくはサルモネラである対応するワクチン。
・特許請求の範囲および明細書のいずれかに記載のワクチンを、許容される担体、希釈剤または賦形剤と場合によって一緒に含む、スルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対してヒトを免疫するための医薬組成物。
・ヒトスルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対して患者を免疫するための医薬品を製造するための対応するワクチンの使用。
【0032】
図面の簡単な説明
図1は、スルビビン相同体のタンパク質配列のアラインメントである。アラインメントは、Clustal W法によって実施した(Thompson他、(1994)Nucl.Acid Res.22:4673〜4680参照)。配列は、以下のアクセッション番号を使用して、NCBIデータベースから入手した。ヒトスルビビン(アクセッション番号NW_001168、配列番号8)、イヌスルビビン(NP_001003019、配列番号9)、ブタスルビビン(NP_999306、配列番号39)、ウシスルビビン(NP_001001855、配列番号40)、ネコスルビビン(NP_001009280、配列番号41)、マウススルビビン(NP_033819、配列番号10)、ラットスルビビン(AAF82586、配列番号42)、オランウータンスルビビン(CAH91231、配列番号43)、ニワトリスルビビン(NP_001012318、配列番号11)、アフリカツメガエルSIX(AAO20085、配列番号13)、アフリカツメガエルスルビビン相同体(AAM76714、配列番号46)、アフリカツメガエルスルビビン相同体2(AAH89271、配列番号47)、ナマズスルビビン相同体(CK419466、配列番号52)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体((NP_919378、配列番号48)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体2(NP_660196、配列番号49)、フグスルビビン様相同体(CAG04432、配列番号50)およびフグスルビビン様相同体2(CAG07433、配列番号51)。BIRドメインには下線が引いてある。アスタリスクはZn配位に関与する表記残基を示し、波線はアラインメントのギャップを示す。非ヒト配列において、ヒト残基と同一の残基は、ピリオドによって表し、その他の残基は1文字アミノ酸コードで表す。
【0033】
図2は、様々なスルビビン相同体のBIRドメインを比較するためのアミノ酸のパーセント同一性を示した表である。配列1は、ヒト配列、配列2はイヌ由来、配列3はブタ由来、配列4はウシ由来、配列5はネコ由来、配列6はマウス由来、配列7はラット由来、配列8はオランウータン由来、配列9はニワトリ由来、配列10はアフリカツメガエルSIXタンパク質由来、配列11はアフリカツメガエル相同体由来、配列12はアフリカツメガエル相同体2由来、配列13はナマズ相同体由来、配列14はゼブラフィッシュ相同体由来、配列15はゼブラフィッシュ相同体2由来、配列16はフグスルビビン様タンパク質1由来、および配列17はフグスルビビン様タンパク質2由来である。
【0034】
図3は、無脊椎動物のBIRドメイン配列とヒトスルビビンとのアラインメントである。ヒトスルビビンBIRドメイン配列を配列番号63に示す。アラインメントは、Clustal W法によって実施した(Thompson他、(1994)Nucl.Acid Res.22:4673〜4680参照)。配列は、以下のアクセッション番号を使用して、NCBIデータベースから入手した。ヒトスルビビン(NM_001168、配列番号63で示したBIRドメイン配列)、キイロショウジョウバエ(AAF55399、配列番号53で示したBIRドメイン相同体)およびエレガンス線虫(NP_505949、配列番号54で示したBIRドメイン相同体)。BIRドメインには下線が引いてある。アスタリスクは、Zn配位に関与する表記残基を示し、波線はアラインメントのギャップを示す。非ヒト配列において、ヒト残基と同一の残基は、ピリオドによって表し、その他の残基は1文字アミノ酸コードで表す。
【0035】
図4は、スルビビンポリペプチドをコードしているプラスミドを有するサルモネラによるDNAワクチン接種の方法の概略を示す。腸管内腔のサルモネラはバイエル板のM細胞によって腸管上皮に侵入する。一旦上皮に入ると、サルモネラはマクロファージおよび樹状細胞などの細胞に侵入する。細菌死およびプラスミド輸送によって、マクロファージによるプラスミド発現が可能になり、MHCクラスI分子におけるコードされたスルビビンポリペプチドからのペプチドの提示が引き起こされる。さらに、スルビビンポリペプチドを発現しているアポトーシスマクロファージの樹状細胞による取り込みによって、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子におけるペプチド提示から生じる交差提示が引き起こされる。
【0036】
図5は、癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。IFNγ放出は、ELISpot測定法で測定した。C57Bl/6マウスを、マウスまたはニワトリスルビビン発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種するか、あるいはワクチン接種せず(x軸)、T細胞をB16/KSA(縞模様の棒)またはLLC/KSA(黒い棒)癌細胞系に曝露した後、播種したT細胞5×105個当たりのIFNγスポットの数(y軸)を測定した。
【0037】
図6は、癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。IFNγ放出は、ELISpot測定法で測定した。Balb/cマウスを、マウスまたはニワトリスルビビン発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種するか、ワクチン接種せず(x軸)、T細胞を4T1/KSA(縞模様の棒)またはA20(黒い棒)癌細胞系に曝露した後、播種したT細胞5×105個当たりのIFNγスポットの数を測定した。
【0038】
図7は、サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。生存したBalb/cマウスの%(y軸)を、マウススルビビン(黒三角)またはニワトリスルビビン(黒四角)またはPBS(黒ひし形)の発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種したマウスのCT26/KSA曝露後の日数(x軸)に対してプロットする。
【0039】
図8は、サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。生存したC57Bl/6マウスの%(y軸)を、マウススルビビン(黒三角)またはニワトリスルビビン変異体、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)(黒四角)またはPBS(黒ひし形)の発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種したマウスのLLC/KSA曝露後の日数(x軸)に対してプロットする。
【0040】
図9は、腫瘍曝露10日目に対するワクチン接種時期の効果を評価するための投与計画の概略図である。「D」は、「日」の略語である。したがって、例えば、マウス数匹には、1日目に経口的にワクチン接種を行い、10日目に腫瘍曝露し、13日目に経口的にワクチン接種を行い、その他のマウスには、10日目に腫瘍曝露と経口的ワクチン接種を行い、18日目に2度目の経口的ワクチン接種を行った。肺癌罹患は、29日目に評価した。
【0041】
図10は、1日目および13日目、7日目および13日目、10日目および18日目、または13日目および21日目にワクチン接種を受けたマウスあるいはPBSを受けたマウスの肺の重量を示した図である。マウスには全て、10日目に静脈内にLLC/KSA細胞の腫瘍曝露を行った。マウスそれぞれの肺転移スコアも示した。
【0042】
図11は、1日目および15日目にニワトリスルビビンによるサルモネラ媒介ワクチン接種を行い、4日目にLLC/KSA細胞で静脈内に腫瘍曝露し、11日目に腹腔内にシクロホスファミド(CTX)で、12〜15日目にインドメタシンで処理することを含む投与計画の概略図である。肺を28日目の腫瘍罹患について記録した。
【0043】
図12は、腫瘍曝露のみ(媒体);1日目(初回)および15日目(追加)にニワトリスルビビンでワクチン接種し、4日目に腫瘍曝露(PCB);CTXおよびインドメタシンおよび腫瘍曝露C(CI);初回、曝露、CTX、インドメタシン、および追加(PC(CI)B);初回、曝露、CTXおよびインドメタシン(PC(CI))、または曝露、CTX、インドメタシンおよび追加C(CI)Bを受けたマウスの肺重量を示した図である。マウスそれぞれの肺転移スコアも示した。
【0044】
図13は、非哺乳類スルビビンをコードするプラスミドを有するサルモネラでワクチン接種した後のマウスにおけるCD44明、CD3低細胞の新規集団の外観を示す末梢血細胞のフローサイトメトリーデータを表した図である。x軸はCD3細胞を表し、y軸はCD44細胞を表す。
【0045】
図14は、1日目の皮下腫瘍曝露、4、11、18および25日目の非哺乳類スルビビンによるサルモネラ媒介ワクチン接種、ならびに8、9および10日目の静脈内免疫サイトカイン処理を含む投与計画の概略図である。
【0046】
図15は、PBS、免疫サイトカイン、非哺乳類スルビビン、または免疫サイトカインおよび哺乳類スルビビンで処理したマウスの経時的腫瘍体積を示した図である。
【0047】
発明の詳細な説明
本発明は、疾患細胞に対して効果的に免疫応答を惹起する組成物および方法を提供することによって、癌またはその他の疾患の治療を改善する。癌は、第1の標的疾患であるが、本発明は、その他の疾患および症状、例えば、正常細胞の望ましくない増殖、例えば、類線維腫組織に適用される。本発明はまた、ウイルス感染、例えば、HIV感染、インフルエンザウイルス感染、およびその他のウイルス感染を治療するための組成物および方法を企図する。
【0048】
特に、癌またはその他の腫瘍を治療するために、本発明は、哺乳類において癌または腫瘍細胞に対して適応した免疫応答を惹起するために、抗原提示細胞上に、腫瘍特異的または腫瘍に豊富なタンパク質に関連したペプチドを提示するための組成物および方法を提供する。本発明のために好ましい1種の腫瘍特異的または腫瘍に豊富な抗原はスルビビンである。
【0049】
(T細胞抗原提示の概要)
抗原提示とは、細胞内のタンパク質がペプチドに処理されて、その後分泌経路に沿って細胞表面に輸送される細胞プロセスである。処理されたペプチドは、MHCとして知られる特殊化されたペプチド提示膜タンパク質との安定な複合体として輸送される。このプロセスは、免疫系の成分、例えば、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)および細胞傷害性T細胞(CTLまたはCD8+T細胞)がMHC−ペプチド複合体を抽出することによって細胞の組成を調査することを可能にする。ヘルパーT細胞は、MHCII−ペプチド複合体と相互作用し、一方細胞傷害性T細胞はMHCI−ペプチド複合体と相互作用する。相互作用は、T細胞の表面上に発現したT細胞受容体(TCR)を介して起こる。T細胞はそれぞれ、固有のTCRを発現している。抗体と類似して、TCRの多様性は、染色体のTCR座の再構成によって生じる。抗体産生細胞のように、T細胞分化の間に自己抗原(すなわち、細胞に存在する内在性タンパク質から生じる抗原ペプチド)と遭遇することによって、その特定のT細胞のネガティブ選択を引き起こす。ネガティブ選択中に排除されないT細胞はさらに、成熟T細胞に発達する。結局、MHCと結合した外来抗原との相互作用は、特に第2の刺激の存在下で、T細胞活性化を引き起こす。
【0050】
(スルビビン)
スルビビンタンパク質の特徴は、BIRドメイン(またはIAPドメイン)として知られている約70個の保存されたアミノ酸ドメインである。ヒトスルビビンでは、このBIRドメインは、Asp16からLeu87にわたる領域に対応する。癌または腫瘍細胞はしばしば、スルビビンタンパク質を過剰発現し、これらの細胞のアポトーシスを阻害して、癌または腫瘍細胞の異常増殖を防御する機構を妨害すると考えられている。他方、正常細胞は、スルビビンをほとんど発現しない。したがって、スルビビンは、理想的な腫瘍特異的または腫瘍に豊富な抗原である。したがって、スルビビン発現腫瘍細胞に対する免疫応答を誘発できるように、抗原型のスルビビンタンパク質を抗原提示細胞に輸送することは本発明の目的である。ヒトおよび哺乳類のスルビビンタンパク質および遺伝子は、米国特許第6245523号またはWO2004/067023号に詳細に記載されている。
【0051】
(非哺乳類スルビビン)
本発明の一態様は、非哺乳類スルビビン遺伝子および/またはタンパク質を癌およびその他の疾患のためのワクチンで使用できるという驚くべき発見を中心に展開している。例えば、マウスまたはヒトを、ニワトリスルビビンをコードする核酸で免疫すると、マウスまたはヒトスルビビンを発現する細胞をそれぞれ攻撃するCD8+T細胞を生じさせることができる。この発見は、ニワトリスルビビンタンパク質が免疫学的にヒトスルビビンと実質的に類似であることを示しており、ニワトリスルビビンは哺乳類において免疫応答を惹起する抗原型のスルビビンタンパク質として使用できることを示唆している。
【0052】
哺乳類および非哺乳類種のスルビビンタンパク質を図1に整列させた。アラインメントに含めたスルビビンタンパク質は、ヒトスルビビン(Genbankアクセッション番号NM_001168または015392、配列番号8)、イヌスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001003019、配列番号9)、ブタスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_999306、配列番号39)、ウシスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001001855、配列番号40)、ネコスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001009280、配列番号41)、マウススルビビン(Genbankアクセッション番号NP_033819、配列番号10)、ラットスルビビン(Genbankアクセッション番号AAF82586、配列番号42)、オランウータンスルビビン(Genbankアクセッション番号CAH91231、配列番号43)、ニワトリスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001012318、配列番号11、「野生型」)、アフリカツメガエルSIXスルビビン(Genbankアクセッション番号AAO20085、配列番号13)、アフリカツメガエルスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号AAM76714、配列番号46)、アフリカツメガエルスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号AAH89271、配列番号47)、ナマズスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号CK419466、配列番号52)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号NP_919378、配列番号48)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号NP_660196、配列番号49)、フグスルビビン様相同体(Genbankアクセッション番号CAG04432、配列番号50)およびフグスルビビン様相同体2(Genbankアクセッション番号CAG07433、配列番号51)である。Genbankアクセッション番号によって本明細書で開示した配列は全て、参考として援用している。図1に含まれる配列はまた、明細書の配列表に挙げてある。
【0053】
さらに、2種類のニワトリスルビビン変種も、添付の配列表に含まれており、変種1(Genbankアクセッション番号NM_001012319、配列番号44)は異なるC末端を得るために配列番号11で示した野生型ニワトリスルビビン配列とはアミノ酸残基116での開始が異なっており、変種2(Genbankアクセッション番号NP_001012317、配列番号45)は、配列番号11で示した野生型ニワトリスルビビン配列とはアミノ酸残基38での開始が異なっている。
【0054】
以下の配列がさらに配列表に含まれる。ヒトスルビビン(Genbankアクセッション番号NM_001168.2、配列番号64)、ホモサピエンススルビビン(Genbankアクセッション番号O15392、配列番号65)、イヌスルビビン(Genbankアクセッション番号NM_001003019.1、配列番号66)、ブタスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_999306.1、配列番号67)、ウシスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001001855.2、配列番号68)、ネコスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001009280.1、配列番号69)、マウススルビビン(Genbankアクセッション番号NP_033819.1、配列番号70)、ラットスルビビン(Genbankアクセッション番号AAF82586.1、配列番号71)、オランウータンスルビビン(Genbankアクセッション番号CAH91231.1、配列番号72)、ニワトリスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001012318.1、配列番号73)、アフリカツメガエルSIXスルビビン(Genbankアクセッション番号AAO20085.1、配列番号74)、アフリカツメガエルスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号AAM76714.1、配列番号75)、アフリカツメガエルスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号AAH89271.1、配列番号76)、ナマズスルビビンをコードする核酸(Genbankアクセッション番号CK419466.1、配列番号77)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号NP_919378.1、配列番号78)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号NP_660196.1、配列番号79)、フグスルビビン様相同体(Genbankアクセッション番号CAG04432.1、配列番号80)、フグスルビビン様相同体2(Genbankアクセッション番号CAG07433.1、配列番号81)、キイロショウジョウバエスルビビン(Genbankアクセッション番号AAF55399.1、配列番号82)およびエレガンス線虫スルビビン(Genbankアクセッション番号NP_505949.1、配列番号83)。
【0055】
本発明は、図1で開示したスルビビン配列などの天然に見いだされるスルビビン配列だけでなく、図1で開示した配列の少なくとも1つとのアミノ酸同一性が、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%であるその他のアミノ酸配列を使用することを企図する。
【0056】
図1で示したように、アラインメント中の哺乳類スルビビンタンパク質は、ヒトスルビビンとの同一性が80%超であるのに対して、アラインメント中のスルビビンの非哺乳類性相同体は、ヒトスルビビンとの同一性が60%未満である。しかし、BIRドメイン(図1のアラインメントの下線領域)内では、非哺乳類スルビビンタンパク質は、ヒトスルビビンとの同一性が60%超80%未満であり、一方、哺乳類スルビビンタンパク質は、ヒトスルビビンとの同一性が90%超である。スルビビン相同体のBIRドメインの配列対パーセント同一性を図2にまとめて示す。例えば、ニワトリスルビビンは、BIRドメインでのヒトスルビビンとの同一性が約78%である。
【0057】
図1で示したように、ニワトリスルビビンでは、BIRドメイン内の1種の9‐merペプチド(18〜26:STRAATFRN)(配列番号7)のみが、対応するヒト配列に対して50%超のアミノ酸変動を含有する(この特定の9‐merペプチドにおいて、9個のアミノ酸のうち5個が異なっている)ことは重要である。ニワトリスルビビンのBIRドメイン内のほとんどの9‐merペプチドが含有する配列変化は2個以下である(64個のペプチドのうち48個)。理論に結びつけることは望まないが、この配列保存性の程度によって、ニワトリスルビビンは、効果的にヒトスルビビンと免疫学的に実質的に類似することができると考えられる。
【0058】
一般的に、ニワトリスルビビンBIRドメインと図2に示した哺乳類スルビビンBIRドメインとの間のパーセント同一性は、約72%と約78%との間で変化する。さらに、BIRドメインのニワトリスルビビン由来9‐merペプチドの約75%は、対応する哺乳類9‐merペプチドと比較して2個以下の配列変化を含有している。例えば、ニワトリスルビビンはBIRドメインでマウススルビビンとの同一性が75%であり、このことは、以下の実施例6で説明するように、ニワトリスルビビンがマウススルビビンと免疫学的に実質的に類似しているという結果と一致している。
【0059】
以下の実施例で例示したように、非哺乳類スルビビン組成物、例えば、ニワトリスルビビン組成物が、マウスにおいてマウススルビビンを発現している腫瘍に対して免疫応答を誘導する効果は、本発明の基本的方針、すなわち、非哺乳類スルビビン分子を哺乳類にワクチン接種すると、哺乳類スルビビンまたは哺乳類スルビビンを過剰発現している細胞に対する免疫応答を誘導するのに有用であることを強調している。したがって、免疫学的応答は哺乳類間で十分に保存されているので、ニワトリスルビビンはまた、ヒトにおいてヒトスルビビンを過剰発現する細胞、例えば、多くの腫瘍細胞に対して効果的な免疫応答を引き起こすのに有用である。
【0060】
対照的に、無脊椎動物のBIRからヒトのスルビビンBIRドメインまでのアラインメントによって、D.メラノガスター(AAF55399、配列番号53)およびC.エレガンス(NP_505949、配列番号54)のBIRドメインは、ヒトスルビビンBIRドメイン配列に対する同一性が50%以下であるが(図3)、Znキレート化のために不可欠な残基は保存されている(図3のアラインメントのアスタリスク参照)。例えば、ハエスルビビンBIRドメインは、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が約50%である。ハエBIRドメインが含有する、対応するヒトペプチドと比較して2個以下のアミノ酸置換を有する9‐merペプチドは3個のみであること(64個のうち3個)は重要である。
【0061】
本発明では、本明細書で使用した「非哺乳類スルビビン」という用語には、ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が少なくとも50%超であるが90%未満、例えば、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%であるBIRドメイン(またはIAPドメイン)を有する任意のスルビビンタンパク質を少なくとも包含する。
【0062】
パーセント同一性を計算するために、各配列の整列したアミノ酸を順次比較する。アミノ酸が同一でなければ、ペアワイズ同一性スコアはゼロである。その他の場合、ペアワイズ同一性スコアは1.0である。生の同一性スコアは、同一の整列アミノ酸の合計である。次に、生スコアを、候補配列または参照配列のより小さいアミノ酸の数で除し、その結果に100を乗ずることによって正規化する。正規化された生スコアがパーセント同一性である。挿入および欠失は、パーセント同一性の計算のためには無視される。したがって、ギャップペナルティーは、この計算に使用しない。
【0063】
複数の配列アラインメントを作製する方法は、当業者には周知である。スルビビン配列を整列させるために、DNASTAR Lasergene(商標)6ソフトウェアパッケージのMegalign6.1モジュールを、ClustalVアラインメントアルゴリズムを適用して、初期設定を用いて使用した(Higgins and Sharps(1989)Comput Appl Biosci.5:151〜3)。スルビビンBIRドメインのサブアラインメントには、Clustal W(「slow−accurate」)法を初期設定を用いて適用した(Thompson他、(1994)Nucleic Acids Res.22:4673〜80)。
【0064】
非哺乳類スルビビンはまた、哺乳類スルビビンよりもTヘルパー細胞応答を生じさせる潜在力を有するペプチドを多く含有することができるものと考えられる。理論に結びつけることは望まないが、増強された免疫効果は、免疫応答における、MHCIによる細胞傷害性T細胞の関与およびMHCIIによるTヘルパー細胞の関与によって実施することができるものと考えられる。内在性ヒトスルビビンと非哺乳類スルビビンとの間の配列の違いは、ヒト免疫系が寛容化されていない提示されたいくつかのペプチドをもたらすものと思われる。有効なMHCIIエピトープの存在は、公的に使用可能な予測アルゴリズム、例えば、ProPred分析(www.imtech.res.in/raghava/propred;Singh他、(2001)Bioinformatics 17:1236〜1237、内容を本明細書に参考により組み込む)を使用して分析することができる。このようなアルゴリズムを使用して、ヒトまたはイヌスルビビンなどの哺乳類スルビビンタンパク質に対して、ニワトリスルビビンまたはカエルSIXスルビビンなどの非哺乳類スルビビンタンパク質は、MHCII分子に結合するペプチドおよび/またはMHCII分子に対して高い結合親和性を有するペプチドを多く含有すると予測されることがわかる。
【0065】
【表1−1】
【0066】
【表1−2】
【0067】
【表1−3】
【0068】
【表1−4】
【0069】
表1は、少なくとも1個のHLA−DR対立遺伝子に結合する9‐merペプチドそれぞれの開始位置(番号)および配列(ペプチド)を示している。結合数は、任意の結合閾値、この場合20%を上回ってペプチドが結合する対立遺伝子の数(50個のうち)を意味している。20%閾値とは、Propredで実施したようなアルゴリズムによって計算した場合、理論的最大結合スコアの20%を意味する。スコアは、そのペプチドが結合する全HLA対立遺伝子での累積的スコアを意味する。参考として、ヒトにおいて抗MBP抗体を生じることが知られているタンパク質(MBP(85〜99))の部分から得られたヒトミエリン塩基性タンパク質(MBP)ペプチドVVHFFKNIV(配列番号14)は、累積スコア1087.6で29個のHLA対立遺伝子に結合する。
【0070】
MHC分子と結合すると、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる非哺乳類スルビビン由来のペプチドを含むか、またはコードするワクチンを提供することが望ましい。このようなヒトスルビビンペプチドまたはそれら由来のペプチドには、限定はしないが、EPDLAQCFF(配列番号3)、EPDLAQCFY(配列番号15)、CPTENEPDL(配列番号2)およびCPTENEPDY(配列番号16)が含まれる。他のヒトペプチドおよびT細胞を活性化するか、T細胞の活性化を増強するために有用な改変は、本明細書に参考として内容を援用した米国特許出願公開第2004−0210035号に記載されている。
【0071】
したがって、非哺乳類スルビビン配列に、公知のヒトスルビビンエピトープに対応する変異、またはそのようなペプチド配列がMHCに結合するのを増強することができる変異を導入するために有用であり得る。例えば、ニワトリスルビビン配列のAsn97、Thr99、Val100またはGln101の位置にアミノ酸置換を導入することは有用であり得る。理論に結合させることは望まないが、ニワトリスルビビンのThr99の位置の置換は、得られたペプチドがMHC分子に結合するのを増強することができる。具体的な例では、ニワトリスルビビン由来のペプチドは、以下のアミノ酸置換、An97Glu、Thr99Met、Val100LeuおよびGln101Glyの少なくとも1つを含有することができる。他の例では、カエルSIXスルビビンに、Thr110またはSer112でのアミノ酸置換を導入することは有用であり得る。アフリカツメガエルSIXスルビビンのアミノ酸配列(T110M、S112G)を配列番号55に示す。理論に結びつけることは望まないが、Thr110の位置の置換は、得られたペプチドがMHC分子に結合するのを増強することができる。具体的な例では、カエルスルビビン由来のペプチドは、以下の置換、Thr110Met、Ser112Glyの少なくとも1つを含有することができる。
【0072】
本発明に適した非哺乳類スルビビンペプチドはまた、アミノ酸欠失を含有することができる。例えば、非哺乳類スルビビンペプチドは、C末端切断またはN末端切断を含有することができる。
【0073】
非哺乳類スルビビンタンパク質内のある種の保存性の低い配列は、ヒトスルビビンと同様の発現プロファイルを持つことができず、したがって腫瘍特異的であることができないその他の非スルビビンヒトタンパク質に割り当てることができる。このことは、短い、ほぼ正確な一致を同定する設定で、非重複ヒトタンパク質データベースに対して、非哺乳類スルビビンの多岐にわたる領域の配列でBLAST検索を実施することによる最初の方法で評価することができる。例えば、ニワトリスルビビン配列のC末端ドメイン(aa90−aa142)での検索では、ほぼ正確な一致で同定されたヒトタンパク質は数個のみであった(ヒットは5個未満)。次に、そのようなヒトタンパク質を、まず以下に説明したインシリコ法によって、発現パターンに関して、および抗原ペプチドを生じる能力に関してさらに分析することができる。
【0074】
(改変されたスルビビン)
他の態様では、本発明は、哺乳類スルビビンタンパク質に改変を導入することによって、スルビビンタンパク質の抗原型を提供する。具体的に、本発明は、生物学的に不活性であるが、哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的に類似している改変された哺乳類スルビビンペプチドを企図する。本発明のこの態様はまた、抗原提示細胞の細胞質内でスルビビンタンパク質を単に発現するという単純な取り組みで、2つの特定の問題を解決する。第1の問題は、生物学的に活性のあるスルビビンタンパク質は、抗原提示細胞の生理機能を破壊し得ることである。第2の問題は、スルビビンまたは本質的に任意のその他のタンパク質を細胞内で発現させるとき、細胞表面上のMHCクラスIによって抗原ペプチドを提示するような方法でほんの小量のタンパク質が分解されることである。
【0075】
したがって、本発明は、ヒトスルビビンの変異体種または非ヒト哺乳類スルビビンの変異体種を含む改変された哺乳類スルビビンタンパク質を企図する。本発明はまた、図1で開示したスルビビン配列などの、天然に見いだされるスルビビン配列だけでなく、図1で開示した配列の少なくとも1つとのアミノ酸同一性が、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%であるその他のアミノ酸配列も使用することを企図する。
【0076】
ヒトスルビビンの構造は決定されている(Chantalat他、(2000)Mol.Cell 6:183〜189、タンパク質データバンク(PDB)タンパク質構造アクセッション番号PDB ID 1E31、Verdecia他、(2000)Nat.Struct.Bio.7:602〜608、タンパク質データバンク(PDB)タンパク質構造アクセッション番号PDB ID 1F3H、いずれの教示も本明細書に参考として援用している)。3D構造に基づいて、ヒトスルビビンは、少なくとも2個のドメイン、BIRまたはIAPドメインと称される亜鉛結合部位を含むN末端球状ドメインおよび本明細書ではヘリカルドメインと称される伸長したC末端アルファヘリックスを含む。好ましい実施形態では、本発明は、N末端BIRドメインおよび/またはC末端ヘリカルドメインにおいて変異を有するスルビビンの形態を提供する。最適な効果は両領域を変異させることによって実施できることが本発明の知見である。理論に結びつけることは望まないが、N末端BIRドメインおよびC末端ヘリカルドメインはそれぞれ生物学的活性を有するものと考えられる。例えば、BIRドメインは、ヘリカルドメインがなくてもあるレベルのアポトーシス阻害活性を有する。さらに、ヘリカルドメインは、細胞骨格結合活性を有し、異なった生物学的活性を有し得る。
【0077】
具体的に、BIRドメインでは、例えば、好ましい変異には、限定はしないが、ヒトスルビビンのCys57、Cys60、His77またはCys84に対応する位置でのアミノ酸置換が含まれる。例えば、改変されたBIRドメインは、以下の置換、Cys57Ser、Cys60Ser、His77PheおよびCys84Serの少なくとも1つを含有することができる。これらのアミノ酸のいずれかをアラニンまたはプロリンに置換することも好ましい。これらの変異は、BIRドメインの亜鉛結合部位を破壊するものと考えられる。亜鉛結合部位を破壊する効果を有するその他の変異も使用することができる。さらに、ヒトスルビビンArg18に対応する位置、好ましくはアスパラギン酸またはグルタミン酸の変異を使用して、不活性なBIRドメインを生じることができる。亜鉛結合アミノ酸が2、3または4個の位置で変異した、改変されたBIRドメインが特に好ましい。
【0078】
機能を破壊するためにヘリカルドメインのどこかにプロリン残基を導入することは、一般的に有用である。特に、プロリン置換は、ヒトスルビビンAla128またはIle135に対応する位置に導入することができる。ヘリカルドメインを破壊することができるその他のアミノ酸置換も好ましい。
【0079】
好ましい改変された哺乳類スルビビンは、Arg18、Cys57、Cys60、His77および/またはCys84での変異およびヘリカルドメインのプロリンを含有することができる。Arg18、Cys57、Cys60、His77、Cys84、Ala128およびIle135の位置の前述のアミノ酸はそれぞれ、ヒトとニワトリスルビビンの間で保存されており、したがって、同一の変異を導入して、生物学的に不活性なニワトリスルビビンを作製することができる。同様の変異は、その他の非哺乳類スルビビンタンパク質の対応する位置にも導入することができる。
【0080】
前記の変異のいずれかを、ヒトスルビビンのLeu98に対応する位置における変異、例えば、Leu98Arg、Leu98LysおよびLeu98Alaなどと組み合わせることができる。ニワトリスルビビンでは、ヒトLeu98に対応する位置はVal100である。
【0081】
その他の有用な変異は、実施例で説明したように、通常の実験によって同定することができる。例えば、変異をスルビビンタンパク質に導入して、例えば、生物学的活性の欠如、および/または分解の促進、および/または腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導する能力について試験する。これらの試験の例となる測定法は、以下の実施例に記載されており、当業界では公知である。
【0082】
一般的に、好ましい改変されたスルビビンペプチドは、3個、4個、5個以上の変異を含有する。しかし、本発明によって企図される改変されたスルビビンの1用途は、MHCクラスI分子によってスルビビン由来のT細胞エピトープペプチドを提示することである。したがって、哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的な類似性を維持するために、50個未満(または30個未満または20個未満)のアミノ酸を変異させることが一般的に好ましい。
【0083】
(抗原提示)
本発明は、MHCクラスIエピトープのプロセシングがあまり妨げられないように、スルビビンまたはその他のタンパク質配列に変異を最適に導入するための方針を提供する。
【0084】
特定のスルビビン変異は、MHCクラスI分子によって提示され、特定のT細胞受容体によって認識されるペプチド部分内に位置することができる。エピトープが切断されるか、またはエピトープは切断されないが、新たなエピトープが好ましく作出されるように、変異によって、スルビビンのペプチドエピトープへのタンパク質分解処理を改変することも可能である。抗原提示の問題に取り組むために、公的に使用できるデータベースおよびスルビビンタンパク質の候補MHCクラスIエピトープを同定し、その後ある変異がエピトープを変化させるかどうかを決定する情報を使用することができる。例えば、SYFPEITHIアルゴリズムを使用することができる(その教示を本明細書に参考として援用したwww.uni−tuebingen.de.uni.kxi、Rammensee他、(1999)Immunogenetics 50:213〜219も参照。)あるいは、BIMASアルゴリズムを使用することができる(その教示を本明細書に参考として援用したbimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/、Parker他、(1994)J.Immunol.152:163〜175も参照)。ヒトMHCクラスIタンパク質をコードするHLA遺伝子は多形性が高く、様々なペプチドモチーフに結合する様々なMHCクラスIタンパク質を備えているので、1つの軸に様々なMHCクラスI分子を有し、他方の軸にスルビビン配列を有する潜在的エピトープの表を作製する。この表の項目は、所与のMHCクラスI分子のエピトープの位置を同定している。候補の変異の効果は、様々なエピトープに対する効果に基づいて判断される。結局、変異または変異類は、例えば、様々なHLA対立遺伝子の対立遺伝子頻度またはHLA対立遺伝子の群特異的頻度を考慮して、ワクチンの必要性に基づいて選択される。タンパク質分解プロセシングの問題と取り組むために、本発明では、公的に使用できるデータベース、および候補プロテアソーム切断部位を同定し、その後変異がこのような切断部位を変化させるかどうかを決定する情報を使用することができる。例えば、公的に使用できるデータベースNetChopを使用することができる(www.cbs.dtu.dk/services/NetChop/)。切断部位の変化を回避することが一般的に好ましい。
【0085】
例示の目的のために、実施例12は、スルビビンタンパク質において有用な置換を決定する例示的分析法を提供する。
【0086】
本発明では、「イムノプロテアソーム」を検討することも有用である。抗原提示細胞では、プロテアソームはタンパク質の多少異なる組成物を有し、そのタンパク質分解特異性は、C末端を疎水性残基に切断する酵素によって支配されている。結局、プロテアソームは、MHCクラスIをC末端疎水性アンカー残基に結合させることができるペプチドを生成する。イムノプロテアソーム切断パターンの特異性を維持することが望ましいならば、このような疎水性残基、特にロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンは変異させないことが好ましい。同様に、その他の残基もロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンに変異させないことが好ましい。したがって、Arg18、Cys57、Cys60、His77およびCys84の変異は、スルビビンの構造を不安定にすること、およびイムノプロテアソーム切断部位を除去しないことの両方について有利である。さらに、タンパク質配列のN末端に隣接した7個から9個のアミノ酸に、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンへの変異を導入しないことが好ましい。
【0087】
したがって、本発明は、免疫原性の高いタンパク質を生成するために、タンパク質配列中の好ましい変異部位を同定する一般的方法を提供する。この方法に基づいて、タンパク質配列中の好ましい変異部位は、以下の特性を有する。第1に、この部位の1個または複数の変異は、タンパク質構造を不安定にする。第2に、不安定化変異では、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンまたはフェニルアラニンを導入しない。第3に、この位置の通常のアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンではない。この方法は、抗原として利用できる多種多様なタンパク質、例えば、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原およびその他の抗原などに適用することができる。腫瘍特異的抗原の中でも、スルビビンに加えて、この方法は、上皮細胞接着分子、Rasなどの癌遺伝子、癌胎児抗原などに適用することができる。ウイルス抗原の中でも、この方法は、HIVのp24、インフルエンザ赤血球凝集素およびその他のウイルスタンパク質に適用することができる。
【0088】
(非哺乳類および/または改変されたスルビビンを含む融合タンパク質)
スルビビン部分の分解およびMHCクラスI分子によって提示することができるペプチドへのプロセシングを促進するために、非哺乳類スルビビンまたは前述の変異スルビビンペプチドを適切な第2のタンパク質に融合することが望ましい。例えば、ユビキチンは、この目的のために特に好ましい融合相手である。ユビキチン−スルビビン融合タンパク質は、以下の配置、N末端−ユビキチン−スルビビン−C末端またはN末端−スルビビン−ユビキチン−C末端の1つに構築することができる。N末端−ユビキチン−スルビビン−C末端の方向が好ましい。さらに、スルビビンN末端メチオニンは、好ましくはアルギニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸に変異させることが望ましい。ユビキチン−スルビビン融合タンパク質のヒトスルビビンIle19またはVal21に対応する位置にリシンを導入することも望ましい。
【0089】
本発明のスルビビンをFc部分に融合することも望ましい。好ましいFc部分は、抗体CH2およびCH3ドメインを含有し、場合によってヒンジ領域を含有する。Fc部分は、スルビビンのN末端またはC末端のいずれかに融合させることができる。成熟ヒトFc−Chickenスルビビンのタンパク質配列を配列番号25に示す。成熟マウスFc−Chickenスルビビンのタンパク質配列を配列番号27に示す。
【0090】
さらに、スルビビンおよびFc部分を含有する融合タンパク質はさらに、その他の部分、例えば、PCT公開WO01/07081に記載されているような免疫系を刺激するサイトカインを含有することができる。理論に結びつけることは望まないが、Fc部分の存在は、スルビビン含有融合タンパク質の抗原提示細胞への取り込みを促進することができる。Fc部分は、治療する生物由来であることが一般的に好ましい。例えば、ヒトの治療の場合、ヒトFc部分を使用することが好ましい。
【0091】
Fc−スルビビン融合タンパク質またはこの融合タンパク質をコードする核酸は、分泌用にシグナル配列を含有することが好ましい。シグナル配列の存在は、哺乳類細胞系、例えば、NS/0細胞における融合タンパク質の発現を容易にし、対応する核酸を患者に投与するならば、融合タンパク質のin vivoでの分泌を可能にすることができる。Fc−スルビビン融合タンパク質をコードする配列は、イムノグロブリン重鎖またはその変異型の少なくとも一部とインフレームで融合した、例えば、抗体軽(L)鎖から、好ましくはヒトイムノグロブリンγ1遺伝子のFcγ1領域から得られた「リーダー配列」と5’から3’の方向で開始することが好ましい。イムノグロブリンFcγ1遺伝子のFcγ1領域は、好ましくは少なくともヒンジドメインの一部およびCH3ドメインを含み、より好ましくは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。
【0092】
シグナル配列をコードするDNAの一部は、Fc融合タンパク質の分泌を目的とし、その後Fc融合タンパク質の残部から切り離されるペプチド部分をコードすることが好ましい。本発明のシグナル配列は、小胞体膜を貫通したタンパク質輸送を開始するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。本発明に有用なシグナル配列には、抗体軽鎖シグナル配列、例えば、抗体14.18(Gillies他、(1989)J.Immunol.Meth.125:191)、抗体重鎖シグナル配列、例えば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakano他、(1980)Nature、286:5774)および当業界で公知のその他の任意のシグナル配列(例えば、Watson(1984)Nucleic Acids Research、12:5145参照)が含まれる。
【0093】
シグナル配列は、当業界でよく特徴付けられていて、典型的にはアミノ酸残基を16個から30個含有しているが、より多い、またはより少ないアミノ酸残基を含有してよい。一般的なシグナルペプチドは、3個の領域、塩基性N末端領域、中央の疎水性領域および極性の高いC末端領域からなる。中央の疎水性領域は、新生ポリペプチドが輸送される間、膜の脂質二重層を貫通してシグナルペプチドを係留する4個から12個の疎水性残基を含有する。開始後、シグナルペプチドは通常、シグナルペプチダーゼとして知られている細胞性酵素によって小胞体の管腔内で切断される。シグナルペプチドの潜在的な切断部位は、一般的に「(−3、−1)法則」に則る。したがって、一般的なシグナルペプチドは、−1と−3に位置する小さな中性のアミノ酸残基で、この領域内にはプロリン残基が含まれない。シグナルペプチダーゼは、このようなシグナルペプチドをアミノ酸−1と+1との間で切断する。したがって、シグナル配列は、分泌中に融合タンパク質のアミノ末端から切断され得る。これはFc融合タンパク質の分泌中に生じる。本発明の実行に有用なシグナルペプチド配列は、当業界では周知である。例えば、von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.、14:4683を参照。
【0094】
「シグナル配列」、「シグナルペプチド」、「リーダー配列」または「リーダーペプチド」という用語は、本明細書で同義に使用される。
【0095】
分泌された融合タンパク質は、正確に折り畳まれたFcドメインを通例有することができるが、スルビビン部分は不正確に折り畳まれている。理論に結びつけることは望まないが、スルビビンがFc−スルビビン融合タンパク質のFc部分によって強制的に分泌経路に入ると、特にスルビビンはジスルフィド結合に関係し得るシステインを数多く含有しているので、スルビビンの折り畳み構造が緩む。スルビビン部分の正確な折り畳み構造は、本発明のワクチンの活性に必要ではない。
【0096】
遺伝子操作技術によるタンパク質の融合の代替法として、タンパク質部分を連結するために、従来の化学的架橋剤を使用した化学結合法を使用することができる。
【0097】
(核酸)
本発明はまた、非哺乳類および/または改変されたスルビビンおよび前述のようなスルビビンを含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。例えば、ヒトスルビビンのヌクレオチド配列は、配列番号57に示されており、アフリカツメガエルSIXスルビビンのヌクレオチド配列は、配列番号58に示されており、アフリカツメガエルスルビビン相同体のヌクレオチド配列は、配列番号59に示されており、ゼブラフィッシュスルビビン相同体のヌクレオチド配列は配列番号60に示されており、ナマズスルビビン相同体のヌクレオチド配列は配列番号61に示されている。核酸は、真核細胞、特に、哺乳類細胞における発現を可能にする因子と結合して、互いに組み合わさって、発現カセットを形成することが好ましい。一般的に、スルビビンをコードする発現カセットには、以下の調節因子、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ターミネーター、ポリアデニル化シグナルなどの少なくとも1個が含まれる。好ましくは、哺乳類プロモーターが含まれる。本明細書で使用したように、「哺乳類プロモーター」とは、哺乳類または通常哺乳類で増殖するウイルスで見いだされるプロモーター由来の遺伝子プロモーターを意味する。例えば、好ましいプロモーターには、哺乳類細胞で増殖するウイルス、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、モロニーサルウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)に存在するプロモーター、または哺乳類アクチン、ベータグロビン、ミオシンなどの哺乳類遺伝子由来のプロモーター、またはファシンもしくはその他の当業界で公知のAPC特異的遺伝子などの抗原提示細胞で好ましくは発現する哺乳類遺伝子由来のプロモーターが場合によって含まれる。有用なポリアデニル化シグナルの例は、SV40ポリアデニル化シグナルから得られたシグナルである。
【0098】
発現因子は、全真核細胞においてスルビビンタンパク質の発現を対象とすることができるか、または、例えば、抗原提示細胞における発現を対象とする細胞型特異的エンハンサーを有することができる。発現カセットのコーディング部分はまた、真核細胞、特に哺乳類またはヒトの細胞において最も一般的に使用されるコドンを有するように設計することが好ましい。
【0099】
本発明の発現カセットは、培養細胞において本発明のタンパク質を産生するために使用することができる。したがって、この発現カセットは、適切な薬剤耐性遺伝子、DNA複製起点および発現カセットの選択および複製を容易にするその他の因子に連結することができる。一実施形態では、この発現カセットの核酸配列は、細菌で複製することができるプラスミドに組み込まれる。本発明に適切なプラスミドは、細菌細胞で選択するためのマーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子を有することができる。あるいは、適切なプラスミドは、抗生物質耐性マーカーがなくてもよいが、代謝酵素をコードする遺伝子、サプレッサーtRNA、非薬剤耐性菌のゲノムで通常見いだされる他の遺伝子を場合によって含んでよい。したがって、本発明の例示的実施形態は、抗生物質耐性マーカーを含まず、哺乳類プロモーターに操作可能に結合した本発明のスルビビンペプチドをコードする核酸を含有するプラスミドである。このようなプラスミドを細菌に形質転換し、次に、この細菌を使用して、患者に抗生物質耐性遺伝子を導入することなく患者にワクチン接種することができる。あるいは、このようなプラスミドは、生きた担体がなくても患者に導入することができる。例えば、このようなプラスミドは、裸DNAとして、またはビーズ内に封入された、もしくはビーズ表面上にコーティングされたDNAとして導入することができる。
【0100】
本発明の発現カセットは、ウイルスゲノム、裸DNA投与に適したプラスミド、または細菌ゲノムに組み込むことができる。ウイルスゲノムの場合、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどの2本鎖DNAウイルスおよびレトロウイルスなどのRNAウイルスを使用することが望ましい。発現カセットをこのようなウイルスのゲノムに標準的技術によって挿入する。こうして、本発明は、核酸のDNAおよびRNA両方の形態を提供する。
【0101】
(エフェクター分子)
本発明はまた、非哺乳類ペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドが、免疫応答に寄与するエフェクター分子と相まって作用することが可能な実施形態を提供する。例えば、このようなエフェクター分子は、限定はしないが、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23、GM−CSFまたは任意のその他のサイトカインを含むサイトカイン部分、特にTh1免疫応答を活性化できるものであってよい。このようなエフェクター分子はまた、免疫系を抑制するサイトカインの阻害剤、例えば、STAT3阻害剤(例えば、STAT3βなどのドミナントネガティブSTAT3タンパク質)であってよい。サイトカインまたはその他のエフェクター分子はまた、変異を含有してよい。例えば、サイトカインは、IL−2のCys125に対応する位置にSer置換を含有してよい。
【0102】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする核酸が含まれる。非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子ペプチドをコードする領域は、単一の転写単位、または2つに分かれた転写単位であってよい。あるいは、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸および免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする別の核酸が含まれる。
【0103】
その他の実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類のスルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドが含まれる。一実施形態では、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドは、エフェクター分子を含むペプチドと融合するか、または結合している。スルビビンペプチドおよびエフェクター分子融合タンパク質は、前述のようにFc部分とさらに融合しているか、または結合していてよい。
【0104】
(投与)
本発明のワクチンは、スルビビン過剰発現と関連した疾患を表すか、危険性があるヒトまたは哺乳類を治療するために使用される。このような疾患には、癌またはスルビビンを過剰発現する細胞を特徴とするその他の腫瘍が含まれる。
【0105】
本発明によって生成されるワクチンは、いかなる経路によっても哺乳類宿主に投与することができる。タンパク質抗原の注射は通常、哺乳類において免疫応答を惹起するために使用される。しかし、本発明のワクチンはまた、核酸、例えば、DNAの注射によってAPCに送達することができる。通常使用される技術は、抗原性タンパク質をコードするDNA発現ベクターを筋肉内に注射することである。特殊化されたAPC、例えば、マクロファージおよび樹状細胞は、注射または投与部位に移行し、抗原提示プロセスとして知られているプロセスによって抗原を捉え、提示すると考えられる。
【0106】
したがって、適切ならば、投与は、経口的、または静脈内および腹腔内投与経路を含む非経口的であってよい。さらに、投与は、ワクチンボーラスの断続的注射によって行うことができ、または外部の貯蔵体(例えば、バッグ)からの静脈内または腹腔内投与によってより継続的に行うことができる。ある実施形態では、本発明のワクチンは、医薬品等級であってよい。すなわち、ある種の実施形態は、ヒトに投与するために必要な純度および品質管理の基準を満たしている。獣医学的な適用はまた、本明細書で使用した企図した意味の範囲内である。
【0107】
獣医学的およびヒトへの医学的使用のための本発明によるワクチンの製剤は一般的に、薬学的に許容されるアジュバント、担体および場合によってはその他の成分と関連してこのようなワクチンを含む。担体は、製剤のその他の成分と適合しており、それの受容者に対して有害ではないという意味で「許容される」ことができる。この点に関して、薬学的に許容される担体は、医薬品投与に適合したありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むものとする。薬学的に活性のある物質のこのような媒体および薬剤の使用は、当業界で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物またはその投与媒介物に不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用は企図される。(本発明で同定された、および/または当業界で公知の)補助活性化合物はまた、組成物に組み込むことができる。製剤は、便利に投与単位形態に形成することができ、製薬/微生物の業界で周知の方法のいずれかによって調製することができる。一般的に、いくつかの製剤は、ワクチンを液体担体または微粉砕固体担体またはそれらの両方に結合させ、次に、必要に応じて、その生成物を所望する製剤に成形することによって調製される。
【0108】
本発明のワクチン組成物は、企図する投与経路に適合させて製剤化される。投与経路の例には、経口または非経口、例えば、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、筋肉内および直腸投与が含まれる。非経口、皮内または皮下適用に使用する溶液または懸濁液には、以下の成分、注射用水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性調節のための薬剤を含めることができる。pHは、塩化水素酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。
【0109】
経口または非経口投与に有用な溶液は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro,A.編)、Mack Pub.、1990に記載された製薬業界で周知の方法のいずれかによって調製することができる。非経口投与用の製剤はまた、頬側投与用のグリココール酸、結腸投与用のメトキシサリチル酸または膣投与用のクエン酸を含むことができる。非経口用調製物は、ガラスまたはプラスティック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与用バイアルに封入することができる。結腸投与用の座剤はまた、薬剤を非刺激性賦形剤、例えば、カカオ脂、その他のグリセリド、または室温では固体で、体温では液体であるその他の組成物と混合することによって調製することができる。製剤はまた、例えば、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、野菜由来の油、水素化ナフタレンなどを含むことができる。直接投与用の製剤は、グリセロールおよび粘度の高いその他の組成物を含むことができる。これらのワクチンのためにその他の潜在的に有用な非経口用担体には、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植用注入システムおよびリポソームが含まれる。吸入投与用の製剤は、賦形剤として、例えば、ラクトースを含有することができるか、あるいは、例えば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸およびデオキシコール酸を含有する水性溶液、または点鼻剤の形態で、もしくは鼻腔内に適用するジェルとして投与するための油性溶液であることができる。保持浣腸も結腸輸送のために使用することができる。
【0110】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが予め測定された量の薬剤を含有する区別された単位、例えば、カプセル、ゼラチンカプセル、サシェ、錠剤、トローチまたは薬用ドロップの形態、粉末または顆粒の形態、水性液体または非水性液体に溶かした溶液または懸濁液の形態、水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンの形態であってよい。ワクチンはまた、ボーラス、舐剤またはペーストの形態で投与することができる。錠剤は、場合によって1種または複数の付属成分と共に圧縮するか、または成形することによって製造することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの易流動形態の薬剤を、適切な機械で、場合によって結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合して圧縮することによって調製することができる。成形された錠剤は、適切な機械で、粉末化された薬剤と不活性液体希釈剤で湿潤させた適切な担体との混合物を成形することによって製造することができる。
【0111】
経口用組成物は通例、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口用ワクチン投与のために、活性化合物を賦形剤と共に組み込むことができる。口腔洗浄剤として使用するために液体担体を用いて調製した経口組成物には、液体担体に溶かした化合物が含まれ、経口的に適用して、うがいをしたり、はき出したり、嚥下したりする。薬学的に適合した結合剤および/または補助剤物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤、澱粉またはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモジェルまたはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテスなどの潤滑剤、コロイド状二酸化珪素などの流動促進剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバなどの矯味矯臭剤または同様の性質の化合物のいずれかを含有することができる。
【0112】
注射可能な使用に適したワクチン組成物には、滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射可能溶液もしくは分散液の即時調合のための滅菌粉末が含まれる。静脈投与のために、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合も、組成物は滅菌されていることが可能で、容易に注射針を通過して存在する範囲まで流体であることができる。製造および保存の条件下で安定であることが可能で、真菌などの微生物の汚染作用から保護され得る。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することによって、分散剤の場合必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコールおよび塩化ナトリウムを組成物に含めることは好ましい。注射可能な組成物の吸収持続は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0113】
滅菌注射可能溶液は、適切な溶媒中に上記に列記した成分の1種または組み合わせと共に活性化合物を必要な量で組み入れて、必要であれば、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体および上記に列記した成分以外の必要な成分を含有する滅菌媒体に組み入れることによって調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法には、活性成分および任意の追加的な所望する成分の粉末を、既に滅菌濾過したそれらの溶液から生成する真空乾燥および凍結乾燥が含まれる。
【0114】
関節内投与に適した製剤は、微結晶形態、例えば、水性微結晶懸濁液の形態であってよいワクチンの滅菌水性調製物の形態であることができる。関節内投与および眼科的投与のためのワクチンを作製するために、リポソーム製剤または生分解性ポリマー系も使用することができる。
【0115】
局所投与に適した製剤には、リニメント剤、ローション、ジェル、膏薬、クリームなどの水中油または油中水エマルジョン、軟膏またはペーストなどの液体または半液体調製物、あるいは滴剤などの溶液または懸濁液が含まれる。皮膚表面への局所投与用製剤は、ワクチンをローション、クリーム、軟膏または石けんなどの皮膚科学的に許容される担体で分散させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、塗布の位置を特定し、除去を阻止するフィルムまたは層を皮膚上に形成することができる担体が有用である。組織表面への接着を所望する場合、組成物はフィブリノーゲン−トロンビン組成物またはその他の生体接着物に分散させたワクチンを含むことができる。次に、ワクチンを所望する組織表面に塗布、噴霧またはその他の場合は適用することができる。内部組織表面への局所投与の場合、薬剤を液体組織接着物または組織表面への吸着を増強することが知られているその他の物質に分散させることができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノーゲン/トロンビン溶液を有利に使用することができる。あるいは、組織コーティング溶液、例えば、ペクチン含有製剤を使用することができる。
【0116】
吸入治療の場合、スプレー缶、ネブライザーまたはアトマイザーで分散させた粉末(自己噴射製剤または噴霧製剤)の吸入を使用することができる。このような製剤は、粉末吸入装置または自己噴射粉末分配製剤から肺投与するために微細に粉砕された粉末の形態であることができる。自己噴射溶液および噴霧製剤の場合、その効果は、所望する噴霧特性を有する(すなわち、所望する粒径を有する噴霧を生成することができる)バルブを選択するか、または制御された粒径の懸濁粉末として活性成分を取り込むことによって実現することができる。吸入によって投与するために、ワクチンはまた、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する圧縮容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーからエアロゾル噴霧の形態で送達させることができる。点鼻薬も使用できる。
【0117】
経粘膜または経皮手段によって全身投与することもできる。経粘膜または経皮投与の場合、浸透する障壁に適切な浸透剤を製剤中に使用する。このような浸透剤は一般的に当業界では公知で、例えば、経粘膜投与用には、界面活性剤、胆汁塩およびフィルシディック酸(filsidic acid)誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻噴霧または座剤を使用して実現することができる。経皮投与の場合、ワクチンは一般的に、当業界で一般的に公知であるように、軟膏、膏薬、ジェルまたはクリームに製剤化される。
【0118】
一実施形態では、ワクチンは体からの迅速な排泄を防御する担体、例えば、移植片およびマイクロカプセル化輸送系を含む放出制御製剤と共に調製される。生分解性の生体適合ポリマー、例えば、エチレンビニル酢酸、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかである。材料はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals、Inc.から商用に入手できる。リポソーム懸濁液も、薬剤として許容できる担体として使用することができる。これらは、当業界で公知の方法、例えば、米国特許第4522811号に記載されたように調製することができる。ミクロソームおよび微粒子も使用することができる。
【0119】
経口用または非経口用組成物は、投与が容易で、投薬が一定した投与単位形態に製剤化することができる。投与単位形態とは、治療する対象のための単位製剤として適した物理的に区別された単位を意味し、各単位は、必要な医薬品担体と関連して所望するワクチン効果を生じるように計算された活性化合物の予め決定された量を含有する。本発明の投与単位形態の詳細は、活性化合物特有の特性および実現する特定のワクチン効果ならびに個体を治療するためにこのような活性化合物を調合する業界固有の限界によって影響を受け、直接左右される。
【0120】
一般的に、本発明によって同定されたワクチンは、治療有効量で、例えば、所望する効果を誘導するために十分な時間、標的組織に適切な濃度の薬剤をもたらす量で、ヒトまたはその他の哺乳類に非経口または経口投与するために製剤化することができる。さらに、本発明のワクチンは、単独で、または関心のある特定の疾患または適応症に対して有益な効果を有することが知られているその他の分子と組み合わせて投与することができる。ほんの一例として、有用な補因子には、消毒薬、抗生物質、抗ウイルス薬および抗真菌薬を含む症状を緩和する補因子ならびに鎮痛薬および麻酔薬が含まれる。
【0121】
ワクチン組成物中における送達すべき本発明で同定されたワクチンの効果的な濃度は、投与する薬剤の最終的に所望する製剤および投与経路を含むいくつかの要素によって変化する。投与する好ましい製剤はまた、治療する疾患または適応症の種類および程度、特定の患者の全体的健康状態、送達するワクチンの相対的生物学的効果、ワクチンの処方、製剤中の賦形剤の存在および種類ならびに投与経路のような変数に左右されるようである。いくつかの実施形態では、本発明のワクチンは、非ヒト霊長類および齧歯類を使用した前述の哺乳類の研究から推定された一般的な容量単位を使用して、個体に提供することができる。前述したように、投薬単位とは、ワクチンをそれ自体として、または固体もしくは液体の医薬希釈剤もしくは担体との混合物として含む、物理的および生物学的に安定な単位用量として維持されている、患者に投与することができ、取り扱いおよび包装が容易であり得る単一の、すなわち1回の用量のことを意味している。
【0122】
(ビーズを含むスルビビン核酸の送達形態)
他の実施形態では、本発明の核酸は、ビーズなどの送達媒体と共に構成することができる。例えば、本発明の核酸は、その教示を本明細書に参考として援用した米国特許出願公開第2003−0166594号に記載されているような方法に従ってセルロースビーズにコーティングすることができる。本発明の核酸は、その教示を本明細書に参考として援用した米国特許第5783567号に記載されているような方法に従ってポリマービーズに組み込むことができる。
【0123】
ある実施形態では、生物(例えば、細菌、哺乳類細胞およびウイルス粒子)を操作して本発明のスルビビンを産生させる。これらの生物は、収集するためにスルビビンを放出し、患者に直接ワクチンとして導入することができる。
【0124】
(ウイルス内のスルビビン核酸の送達形態)
本発明の核酸は、ウイルス送達媒体と共に構成することができる。ウイルス送達媒体は、場合によってアジュバント効果を有することができる。例えば、適切なウイルス粒子には、限定はしないが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ロタウイルス、またはワクシニアウイルスが含まれる。ウイルスの変異体または無能化形態、例えば、複製能力がないウイルスを使用することが好ましいことが多い。本発明の核酸を、ウイルスゲノムに挿入し、さらにウイルス粒子に組み込む。この核酸は、遺伝子治療の業界で周知のヘルパーウイルス系を使用して封入される。
【0125】
(細菌内のスルビビン核酸の送達形態)
本発明の核酸は、例えば、それぞれの教示を本明細書に参考として援用したGentschev他(2000)J.Biotechnol.、83:19〜26;またはStocker BAD(2000)J.Biotechnol.、83:45〜50に記載されているように、微生物宿主内で輸送するために構成することができる。核酸(例えば、DNA)輸送のために適した細菌には、限定はしないが、サルモネラ、シゲラ、リステリアまたは大腸菌が含まれる。変異体、弱毒型の細菌、例えば、栄養要求体を使用することがしばしば好ましい。例えば、適切なサルモネラ種には、限定はしないが、サルモネラチフィムリウム アロA、栄養要求体SL7202(例えば、Darji他、(1997)Cell、91:765〜775参照)、サルモネラチフィムリウム アロAdam-栄養要求体RE88(例えば、Heithoff他、(1999)Science、284:967〜70参照)、サルモネラチフィムリウムmsb-、purI栄養要求体VNP20009(例えば、Clairmont他、(2000)J.Infect.Dis.、181(6):1996〜2002、Low他、(2004)Methods Mol.Med.、90:47〜60参照)、またはサルモネラチフィムリウム原栄養体LT2(ATCC#700720)が含まれる。サルモネラによるDNAワクチン接種様式の例を図4に示す。
【0126】
(併用療法)
本発明のワクチンは、患者の治療に使用するその他の治療法と併用することができる。治療の一実施形態では、ワクチンは腫瘍の手術による切除と合わせて使用される。治療の実施形態の他の例では、ワクチンは、腫瘍の大きさを縮小するか、潜在的に腫瘍の脈管構造に損傷を与えるか、または腫瘍を免疫応答に感受性にさせる化学療法または放射線療法と組み合わせて使用される。本発明のワクチンとの併用療法に特に有用な化学療法薬または放射線療法薬には、限定はしないが、シクロホスファミドなどのDNA損傷薬、ゲムシタビンなどの抗代謝薬、およびタキソールなどの細胞骨格機能を破壊する薬剤が含まれる。このような薬剤は、腫瘍増殖を減少させ、腫瘍の脈管構造に損傷を与えることができ、理論と結びつけることは望まないが、腫瘍を免疫応答により感受性にさせると考えられる。
【0127】
併用治療では、化学療法および照射は一般的にワクチンの投与の前に行われ、効果的な抗腫瘍免疫応答の形成がこの前治療の残存の可能性がある効果によって損なわれることがないようにする。
【0128】
併用治療の他の実施形態では、ワクチン治療は、免疫サイトカイン治療と併用することができる。理論に結びつけることは望まないが、サイトカインが促進する免疫応答が腫瘍の微小環境に存在すると、ワクチンはより効果的な免疫応答を生じるものと考えられる。例えば、特に有用な免疫サイトカインは、Th1応答を惹起するもの、例えば、IL−2またはIL−12である。併用療法中に、例えば、患者にまず本発明のワクチンを投与して腫瘍に対する免疫応答を起こさせ、その後腫瘍を標的とし、腫瘍における免疫応答を支持することができる免疫サイトカインを投与することができる。好ましい免疫サイトカインは一般的に、例えば、腫瘍に特徴的な表面抗原、例えば、EpCAMを認識する抗体部分、または腫瘍の壊死性核、例えば、DNAの特徴を認識する抗体部分を有する。免疫サイトカインはまた、一般的に、IL−2、IL−12またはTh1応答を優先的に導くその他のものなどのサイトカイン部分を有する。本発明に適した免疫サイトカインは、内容を本明細書に参考として援用した米国特許第5650150号に記載されている。
【0129】
(実施例)
本発明の実施は、例示のためのみに本明細書に提示しており、いかなる方法によっても本発明を限定すると解決すべきではない以下の実施例によってより完全に理解されよう。
【0130】
実施例1; ニワトリスルビビンのクローニング、ニワトリスルビビン変種の作製、サルモネラで複製し、哺乳類細胞中でニワトリスルビビンを発現するプラスミドの構築
所望するDNA分子を単離する方法は、当業者によく知られている。例えば、所望するDNA分子の配列が公知の場合、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を通常使用するか、DNA分子は、商用供給業者、例えば、Blue Heron Biotechnology Inc.(Bothwell、WA)を使用して化学合成によって得ることができる。野生型ニワトリスルビビンをコードするDNAを得るために、RT−PCRを、ニワトリ肝臓から単離したポリA+mRNA(BD Biosciencesカタログ番号636307)で、Long Templates Kit用Superscript 1段階RT−PCR(Invitrogen、Carlsbad、CA)および1回目の逆転写および増幅では1組の外部プライマーを使用して、ならびにSupermix High Fidelity Kit(Invitrogen)および2回目の増幅用に1組の内部プライマーを使用して実施した。外部プライマーは、センスプライマー5’−GAAAAATGGCGGCCTATGC−3’(配列番号17)およびアンチセンスプライマー5’−CACCGTAGACCCAGAGGAACC−3’(配列番号18)であり、内部プライマーはそれぞれ、XbaI制限部位(下線部)を含むセンスプライマー5’−CTCTAGAATGGCGGCCTATGCTG−3’(配列番号19)およびXhoI制限部位(下線部)を含むアンチセンスプライマー5’−CCTCGAGACCTAAGGGCCCATGTTCTC−3’(配列番号20)である。増幅されたPCR産物は、ゲル電気泳動によって分離し、単離して、pCR2.1ベクター(Invitrogen)にクローニングして、その配列を確認した。野生型ニワトリスルビビンのヌクレオチドおよびアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号21および配列番号11としてあげた配列に示す。
【0131】
完全長野生型ニワトリスルビビンをコードする核酸断片を、哺乳類細胞で発現させるために適した発現ベクターに移した。例えば、XbaI/XhoIで消化した野生型ニワトリスルビビンをコードする配列の断片を、同様に消化したプラスミドpdCs(Lo他、(1998)Protein Engineering 11:495)に挿入し、野生型ニワトリスルビビン遺伝子をCMVプロモーターの制御下に配置した。
【0132】
他の例として、野生型ニワトリスルビビンをコードする断片を発現ベクターpdCs−huFc(Lo他、(1998)Protein Engineering 11:495)に挿入し、開始メチオニンを欠如した完全長野生型ニワトリスルビビンをヒトFcをコードする配列の下流に配置し、huFc−ChickenSurvivin融合タンパク質をコードするプラスミドを作製した。簡単に説明すると、PflMI/XhoI野生型ニワトリスルビビン断片(PflMI部位は野生型ニワトリスルビビンのヌクレオチド26にある)、SmaI/XhoIpdCs−huFcプラスミド断片(Lo他、(1998)Protein Engineering 11:495)および野生型ニワトリスルビビン配列の5’末端を修復するアダプターオリゴヌクレオチド2本鎖分子で3重連結を実施し、開始ATGコドンは除いた。2本鎖アダプター分子は、相補的オリゴヌクレオチド、センス5’−GGGTGCAGCGGCCTATGCTGAAATGCTGCCCAAGGA−3’(配列番号22)およびアンチセンス5’−TTGGGCAGCATTTCAGCATAGGCCGCTGCACCC−3’(配列番号23)オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって形成した。正確にコードされた融合タンパク質が作製されたことは、配列決定によって確認した。成熟ヒトFcγ1−ChickenSurvivin(ChickenSurvivinから開始Metを除いたもの)のヌクレオチド配列を配列番号24として挙げた配列に示す。
【0133】
muFc−ChickenSurvivinをコードする発現ベクターを得るために、pdCs−huFc−ChickenSurvivinからSmaI/XhoIで消化した野生型ニワトリスルビビン断片を、同様に処理したpdCs−muFc由来の発現ベクターに移して、ニワトリスルビビンをmuFcのCH3部分をコードする配列のすぐ下流にインフレームで配置した、muFcと野生型ニワトリスルビビンとのキメラ配列を生じさせた。この発現ベクターによってコードされたmuFc部分は、IgG2aアイソタイプのものであった。成熟muFcγ2−ChickenSurvivin(ChickenSurvivinから開始Metを除いたもの)のヌクレオチド配列を配列番号26に示す。成熟muFc−ニワトリスルビビンのアミノ酸配列を配列番号27に示す。
【0134】
ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするニワトリスルビビン配列を、突然変異誘発プライマーを組み込むPCRアプローチによって作製した。突然変異誘発センスプライマー(Mut1s)5’−CCTCTGAACTGATGTTGGGGGA≪G≫TTCTTGAAGCTGGAT−3’(配列番号28)およびアンチセンスプライマー(Mut1a)5’−AACTCCCCCAACATCAGTTCAGAGGGATCTTTCTG−3’(配列番号29)におけるコドン置換は、下線を引いて示してあり、EcoR1部位を除去するAからGへの置換は太字で示してある。野生型ニワトリスルビビンDNA鋳型の2種類の重複PCR断片をそれぞれ増幅用に作製し、上流断片は隣接プライマーPrls(5’−CCGCGGCCGCCCCCTTCACCATGGCGGCCTTGCTGAAATG−3’)(配列番号30)およびMut1aを使用して、下流断片は隣接プライマーPr1a(5’−AGATCTGGATCCCTAAGGGCCCATGTTCTCTATC−3’)(配列番号31)およびMut1sを使用して作製した。PCR反応を、プライマーPr1sおよびPr1aと一緒にして、得られたPCR断片で実施し、完全長産物を作製し、pCR2.1ベクター(Invitrogen)にクローニングして、その配列を確認した。ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードする断片は、NotI/BamHIで切り出して、同様に消化したpdCs発現ベクターに連結した。ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)のタンパク質配列は、配列番号12として示され、アミノ酸配列は配列番号62として示されている。
【0135】
実施例2; その他の非哺乳類由来のスルビビン遺伝子の合成および哺乳類発現ベクターの構築
本発明では、その他の非哺乳類脊椎動物から得られたスルビビン遺伝子およびタンパク質をワクチン組成物に使用する。例えば、フグ、サメ、ナマズまたはゼブラフィッシュなどの魚由来、またはアフリカツメガエルなどの両生類由来、またはアメリカワニ、アフリカワニ、カメ、トカゲまたはサンショウウオなどのは虫類由来、またはニワトリに加えてその他のトリ由来のスルビビン遺伝子を、実施例1に記載した方法に類似した方法または分子生物学の当業者に公知のその他の方法によって得る。いくつかの場合では、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ナマズおよびフグのスルビビン相同体(その配列はこの明細書に挙げた配列にある)などのスルビビン相同体は記載されており、PubMedなどの公的データベースから入手することができる。スルビビン相同体の遺伝子配列が公知の場合、対応するDNAは、商用DNA合成企業、例えば、Blue Heron Biotechnology(Bothell、WA)から入手できる。
【0136】
このような魚、両生類、は虫類および鳥類のスルビビン相同体を、実施例3、4および5の方法と類似の方法によってワクチン組成物に構成する。例えば、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ナマズおよびフグのスルビビン遺伝子は、コーディング配列の末端に5’XbaI部位および3’XhoI部位を付加した後、プラスミドpdCsに配置される。これは、例えば、実施例1の方法と類似のPCR法を使用して、またはリンカーが隣接した関連するコーディング配列の全遺伝子合成によって、実施される。次に、pdCs−スルビビンプラスミドを実施例3に記載した方法によってサルモネラ種に配置する。
【0137】
あるいは、スルビビン遺伝子は、実施例1におけるようにFc−スルビビン融合タンパク質を発現するプラスミドに構成し、Fc−スルビビン融合タンパク質をワクチンとして使用する。例えば、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ナマズまたはフグのスルビビン遺伝子は、コーディング配列の末端に5’XmaI部位および3’XhoI部位を付加した後、プラスミドpdCsに配置される。これは、例えば、実施例4の方法と類似のPCR法を使用して、またはリンカーが隣接した関連するコーディング配列の全遺伝子合成によって、実施される。次に、Fc−スルビビンプラスミドを高レベル発現に適した哺乳類細胞系、例えば、NS/0細胞に配置して、得られた分泌タンパク質を収集して、実施例4のように精製して、アジュバントと共に製剤化し、実施例5のようにヒトまたは動物のワクチン接種に使用する。
【0138】
実施例3; 本発明のプラスミドを含有するサルモネラ株の構築
ワクチン接種に使用するための本発明のプラスミドを有するサルモネラ株は、当業者によく知られている以下に概略を示した標準的エレクトロポレーション法によって作製した。例えば、プラスミドpdCs−ChickenSurvivinを弱毒化サルモネラチフィムリウムaroA株SL7207などのプラスミドを含まないサルモネラ株に形質転換した。その他の弱毒化サルモネラ株、例えば、遺伝子型aroA、dam−のRE88、遺伝子型msb−、purIのVNP20009、または原栄養体LT2株も使用することができる。好ましくは弱毒化されたサルモネラチフィムリウム株も使用できる。
【0139】
電気的コンピテント細菌を用意するために、サルモネラの対数増殖期の培養物50mlをOD600が少なくとも0.5で収穫し、氷上で冷却し、細胞を同量次いで半量の氷冷したHEPES1mMで洗浄し、再度ペレットにした。次に、細胞を冷却した10%グリセロール、HEPES1mM、1mlに再懸濁し、ペレットにして、最終的に、ゆっくりピペッティングすることによって冷却した10%グリセロール、HEPES1mM、0.5mlに再懸濁した。さらに使用するまで氷上に細胞を維持するか、小分けして−80℃で保存した。
【0140】
エレクトロポレーションについては、電気的コンピテントな細菌40マイクロリットルを予め冷却した1.5mlの微小遠心管に添加し、2ミクロリットルまでの量で200ngまでのスーパーコイルプラスミドpdCs−ChickenSurvivinと一緒にして、軽打によって混合した。細菌−DNA混合物を予め冷却した0.2cmのギャップの容器(Bio−Rad、Hercules、CA)に移し、2500V、25μF、200ohmの電気パルスでエレクトロポレーションし、一般的に時定数は4.5+/−0.2が得られ、それからSOC溶媒1mlを添加した。1時間37℃でインキュベーションした後、細胞0.1mlをLB抗生物質選択プレート(100マイクログラム/mlアンピシリン)に蒔いた。
【0141】
単一のコロニー単離物を得て、培養し、プラスミドDNAを単離して、制限分析によってその特性を確認した。新たに増殖させた検証用培養物に15%グリセロールを補給し、500マイクロリットルずつ新鮮な状態で凍結し、−80℃で保存した。
【0142】
実施例4; Fc−スルビビン融合タンパク質のトランスフェクション、発現、予備的な特徴付け、および精製
A.Fc−スルビビン融合タンパク質のトランスフェクションおよび発現
タンパク質発現を迅速に分析するために、プラスミド発現、例えば、muFc−ChickenSurvivinまたはmuFc−muSurvivinは通常、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用して一時的にトランスフェクションすることによって、ヒト胎児腎臓HEK293細胞(ATCC#CRL1573)などの細胞系に導入される。
【0143】
Fc−スルビビンタンパク質を発現する安定してトランスフェクションされたクローンを得るために、例えば、適切なプラスミドDNAをエレクトロポレーションによってマウス骨髄腫NS/0細胞に導入した。NS/0細胞を、熱不活性化牛胎児血清10%、グルタミン2mMおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補給したダルベッコ改変イーグル培地中で増殖させた。約5×106個の細胞をPBSで1回洗浄し、PBS0.5mlに再懸濁した。その後、直線化したプラスミドDNA10μgを細胞とGene Pulser容器(電極間隔0.4cm、BioRad、Hercules、CA)中において、氷上で10分間インキュベートした。エレクトロポレーションは、Gene Pulser(BioRad)を使用して0.25Vおよび500mFの設定で実施した。細胞を氷上で10分間回復させ、その後増殖培地に再懸濁し、2枚の96ウェルプレートに蒔いた。安定してトランスフェクションされたクローンを、メソトレキセート(MTX)100nMの存在下で増殖させることによって選択し、トランスフェクション後2日目に増殖培地に添加した。細胞を3日毎に2回から3回以上培地交換すると、2から3週間のうちにMTX耐性クローンが出現した。クローンの上清を抗FcELISAによって測定して、産生の多いものを同定した。産生の多いクローンを単離し、MTX100nMを含有する増殖培地で増殖させた。一般的に、H−SFMまたはCD培地(Invitrogen)増殖培地を使用した。
【0144】
あるいは、前述の方法と類似の方法によって、安定してFc−スルビビン融合タンパク質を発現するクローンをメソトレキセート選択によってヒト胎児腎臓HEK293細胞で得る。HEK293クローンを、10%FBSを補給したDMEM中で維持する。
【0145】
B.Fc−スルビビン融合タンパク質の精製および分析
Fcを含有する融合タンパク質の標準的な精製は、プロテインAに対するFcタンパク質部分の親和性に基づいて実施した。簡単に説明すると、Fc−スルビビン融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクションした細胞は通常、ローラーボトル内でMTX0.1μMを補給したH−SFM中で増殖させ、融合タンパク質を含有する細胞上清を予め平衡化した(リン酸化ナトリウム50mM、NaCl150mM、0.01%Tween80、中性pH)プロテインAセファロースファストフローカラムに添加した。カラムをこの緩衝液で徹底的に洗浄して、結合したタンパク質をpHの低い(pH2.5)前記と同様の緩衝液で溶出し、画分は1Mトリス塩基pH11でpH6.7にした。
【0146】
プロテインAセファロース−精製したFc−スルビビン融合タンパク質は、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析し、一般的に物質の大部分が凝集した状態であることが発見された。この結果は、スルビビンは通常細胞質タンパク質であるので予期できないことではなかった。理論に結びつけることは望まないが、スルビビンがFc−スルビビン融合タンパク質のFc部分によって強制的に分泌経路に入ると、特にスルビビンはジスルフィド結合で結合することができるシステインを数多く含有しているので、スルビビンの折り畳み構造は緩む。この凝集は、生物学的活性を妨げる可能性があるが、タンパク質をワクチンとして使用するとき、凝集は有害ではない。
【0147】
融合タンパク質の状態および純度は、還元SDS−PAGE電気泳動によって確認した。最も強いバンドが約45kDaに見られ、融合タンパク質の予測される大きさであった。多数の第2のバンドがまた存在しており、タンパク質が実際に凝集していることがさらに証明された。
【0148】
C.ELISA法
MTX耐性クローンの上清中および他の試験試料中のFc含有タンパク質生成物の濃度は、抗FcELISAによって測定した。以下に詳細に説明したような標準方法は本質的に以下の通りである。
i.コーティングプレート
ELISAプレートは、PBSに溶かしたAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson Immuno Research Laboratories、West Grove、PA)5μg/mLで、96ウェルプレート(Nunc−ImmunoプレートMxisorp)に100μL/ウェルでコーティングした。コーティングしたプレートを覆って、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートをPBSに溶かした0.05%Tween(Tween20)で4回洗浄し、PBSに溶かした1%BSA/1%ヤギ血清で、200μl/ウェルでブロックした。ブロッキング緩衝液で37℃で2時間インキュベートした後、プレートをPBSに溶かした0.05%Tweenで4回洗浄し、紙タオルに打ちつけて乾燥させた。
ii.試験試料および2次抗体とのインキュベート
試験試料は、適切ならば試料緩衝液(1%BSA/1%ヤギ血清/0.05%TweenのPBS溶液)で希釈した。標準曲線は、濃度がわかっているキメラ抗体(ヒトFcを含む)を使用して作成した。標準曲線を作成するために、試料緩衝液で連続希釈を行い、125ng/mLから3.9ng/mLの範囲の標準曲線を得た。希釈した試料および標準物を100μL/ウェルでプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBSに溶かした0.05%Tweenで8回洗浄した。次に、各ウェルに、試料緩衝液で約1:120000に希釈した2次抗体、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research)100μlを添加した。使用する2次抗体の正確な希釈は、各ロットによって変化させる。37℃で2時間インキュベーションした後、プレートをPBSに溶かした0.05%Tweenで8回洗浄した。
iii.発色
基質溶液をプレートに100μL/ウェルで添加した。基質溶液は、OPD(o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)30mg(1錠)を、新たに添加した過酸化水素0.03%を含有する0.025M クエン酸/0.05M Na2HPO4緩衝液、pH5、15mLに溶解することによって調製した。色を室温で暗所において約30分間発色させた。発色時間は、コーティングしたプレートのロットの違い、2次抗体などに応じて変化させる。反応は、4N硫酸を100μL/ウェルで添加することによって停止させた。490nmおよび650nmの両方に設定し、490nmのODから650nmの背景ODを差し引くように設定されたプレートリーダーでプレートを読み取った。
【0149】
実施例5; ワクチン輸送および腫瘍曝露の方法
C57Bl/6およびBalb/cマウス(7〜8週齢)は、Jackson Laboratories(Bar Harbour、ME)から購入した。マウスは、EMD Lexigen Research Center Corp.、Billerica、MAで飼育し、動物実験は全て、承認された実験動物施設作業手順に従って実施した。
【0150】
サルモネラワクチン試料を調製するために、LB/AMPの培養物5mlを形質転換細菌単一コロニーに接種し、37℃で一晩増殖させ、2000×gで10分間遠心し、PBSで1回洗浄して、その後PBS2mlに再懸濁した。培養物をPBSで1:10に希釈してOD600を測定し、(培養物の連続希釈物をLB/アンピシリンプレートに蒔いて測定したように)1OD600単位は、約109細菌/mlに対応すると仮定して、培養物の濃度をPBSで109細胞/mlに調節した。経口強制投与によるワクチン接種は、胃に通した20G×1.5″使い捨て栄養針を装備した1mlシリンジで実施した。マウスは、胃酸を中和するために10%重炭酸ナトリウム0.1mlを経管投与して予め処理し、5分後にマウスにワクチン試料0.1ml(細菌108個)を投与した。
【0151】
ワクチンの効果は、哺乳類スルビビンを発現し、MHCにスルビビン由来抗原を提示する腫瘍細胞系で測定した。以下の実施例で使用した腫瘍細胞系は、マウス肺癌細胞系D121、マウスリンパ腫細胞系A20、マウス乳癌細胞系4T1、マウスルイス肺癌細胞系LLC、マウス結腸癌細胞系CT26およびマウス黒色腫細胞系B16であるが、哺乳類スルビビンを発現し、スルビビン由来抗原を提示しているその他の細胞系を使用することもできた。いくつかの実施形態では、「KSA」(例えば、LLC/KSA)と称されるヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように操作された腫瘍細胞系を使用した。スルビビン発現は、ウェスタンブロット、標準的方法によって便利に評価される。ヒトおよびマウススルビビンに対するウサギポリクローナル抗体(AHP604、Serotec、Raleigh、NC)は、1:500に希釈して使用した。
【0152】
以下の実施例で使用した腫瘍細胞系は、以下の培地で維持した。D121は、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)、1%L−グルタミン、1%ピルビン酸Naおよび1%非必須アミノ酸を補給した10%牛胎児血清(FBS)を含むDMEM中で増殖させた。A20および4T1は、10%FBS、1%P/S、1%L−グルタミンを含むRPMI中で増殖させた。LLCは、10%FBS、1%P/S、1%L−グルタミンを含むDMEM中で増殖させた。CT26は、10%FBS、1%P/S、1%L−グルタミンおよび1%ビタミンB16媒体を含むDMEM中で増殖させた。CT26/KSA培地はまた、1%ピルビン酸Naおよび1%非必須アミノ酸を含んだ。さらにEpCAMを発現する細胞系の培地はまた、G4181μg/mlを含有した。
【0153】
ワクチンのマウス生存率または処理したマウスの肺腫瘍罹患に対する効果を評価するために、腫瘍細胞を静脈内に投与した。腫瘍細胞系をPBSで洗浄して、3分間トリプシン処理して、トリプシンを調整培地で中和した。細胞をペレットにして、PBSで、またはD121細胞の場合は、PBS、1%牛血清アルブミン、EDTA50μMで2回洗浄した。単一細胞の懸濁液は、複数の使い捨て100μMナイロンメッシュの篩(BD Falcon)上に再懸濁した細胞を添加することによって得た。マウスの尾静脈に、27ゲージの針を使用してマウス1匹当たり200μlの量の細胞懸濁液を静脈内注射した。肺を取り出し、重量を測定して、罹患した転移腫瘍と比較するために、腫瘍によって覆われている肺の領域割合を評価することによって記録した。
【0154】
実施例6; ニワトリスルビビンをコードするDNAで免疫すると哺乳類スルビビンと交差反応する抗体が生じる
ニワトリスルビビンをコードする核酸をワクチン接種すると哺乳類スルビビンと交差反応する抗体が生じ得るかどうかを試験するために、以下の実験を実施した。Davis((1996)Adv.Drug Delivery Reviews 21:33)に記載された免疫方法を実験の基礎として使用した。7〜8週齢メスBalb/cマウス(処理群当たりn=2)を、野生型ニワトリスルビビン(ChSur)またはmuFc−ChickenSurvivin(FcChSur)をコードする発現プラスミドあるいはmuFc−癌胎児抗原(CEA)(FcCEA)をコードする対照発現プラスミドで1回(1日目)または3回(1、21および46日目)免疫した。マウスの前脛骨筋に心臓毒の10μM溶液を100μl注射し、注射して5日後にプラスミドDNA100μgを注射した。62日目に、マウスから採血し、血清のマウススルビビンに対する抗体を測定した。連続希釈した血清を、muFc−muSurvivin融合タンパク質でコーティングしたELISAプレートに添加して、このプレートを洗浄して、試料をペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG2a抗体とインキュベートした。ELISAは、比色測定法によって陰性対照の未処理のマウスと比較して抗スルビビン抗体の存在を検出した。表2に示した結果は、スルビビンDNAワクチンがマウススルビビンに対する抗体反応を惹起するのに効果的であるが、一方対照DNAワクチンは効果的ではないことを示している。
【0155】
【表2】
【0156】
マウス抗スルビビン抗体をウェスタンブロットまたはELISAのいずれかでヒトスルビビンに対する交差反応性をさらに試験する。ニワトリスルビビンワクチン組成物でマウスをワクチン接種することによって得られたマウススルビビン抗体はまた、ヒトスルビビンタンパク質に結合すると予測される。
【0157】
実施例7; スルビビンをコードするDNAを哺乳類にワクチン接種すると、癌細胞に対するT細胞免疫応答が惹起される
サルモネラをベースにしたスルビビンワクチンが癌細胞に対するT細胞応答を刺激する能力を測定するために、以下の実験を実施した。Balb/cマウスに、実施例5で説明したように、AroA変異(Medina他(1999)Infection and Immunity、pp.1093〜1099)、およびマウススルビビン(n=2)または野生型ニワトリスルビビン(n=2)をコードする哺乳類発現ベクターも有するSL7207サルモネラ株を0日目および14日目にワクチン接種した。未処理の免疫していないマウス(n=2)をこの実験の陰性対照として使用した。
【0158】
1回目のワクチン接種の1ヵ月後に、各群の脾細胞を取り出し、収集した。CD8+T細胞を精製し、本質的に以下に説明したように、マウスIFNγELISpot測定の反応体として使用した。この測定において、A20および4T1腫瘍細胞系をエフェクター細胞として使用した(図6)。4T1細胞は、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように操作したが、これは実験に関係ないと考えられた。対照動物よりもワクチン接種したマウスには著しく多くのIFNγ反応性T細胞が存在した。マウスまたはニワトリスルビビン発現プラスミドを含有するサルモネラによるワクチン接種は、様々な腫瘍細胞系に応答してIFNγを分泌する前駆体T細胞の数の増加と相関した。
【0159】
同様のワクチン接種プロトコールをC57Bl/6マウスでも実施した。マウスIFNγElispot測定では、これらのマウスの脾臓のCD8+T細胞をルイス肺癌細胞(LLC)またはB16黒色腫細胞と共にインキュベートした。LLCおよびB16細胞は、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように操作したが、これは実験に関係ないと考えられた。両方のワクチンは、未処理C57Bl/6動物と比較して、MHCクラスIの場合に発現した標的抗原のペプチドに特異的な反応性T細胞の相対数の増加をもたらした(図5)。SL7207ニワトリスルビビンをワクチン接種したマウスでは、SL7207マウススルビビンを接種したマウスよりも、LLC腫瘍細胞およびB16細胞の両方に対して産生したIFNγ分泌細胞が著しく多かった。
【0160】
考え合わせると、これらの結果は、両方のワクチン接種の取り組みは、MHCクラスIエピトープの場合に、哺乳類スルビビンペプチドを提示する癌細胞と反応するCD8+T細胞前駆体の数の増加を導くことを示している。これらの所見はまた、ニワトリスルビビンによる免疫は、耐性の破壊および哺乳類スルビビンを発現する標的細胞に特異的な免疫応答の発生についてより効力があり得ることを示唆している。
【0161】
この実施例および以下の実施例のいくつかにおいて、サルモネラチフィムリウムSL7207株を使用したが、サルモネラチフィなどのその他のサルモネラ株を使用することができた。ヒトにおいてサルモネラチフィでヒトを治療するとき、一般的に、場合によってその他の弱毒化変異を有する栄養要求体を使用することが好ましい。
【0162】
マウスIFNγELISpot測定プロトコール
ELISpot測定法は、本質的にPower他に記載されたように実施した(Power他、(1999)J.Immunol.Meth.227:99〜107)。CD8+T細胞は、MiltenyiCD8+T細胞単離キット(Miltenyi Biotech、Auburn、CA)を使用して脾細胞から単離し、製造業者の指示に従ってAutomacs磁気ビーズ選別装置で選別した。CD8+T細胞は、IL−2(R&D Systems)0.7ng/mlを補給したRPMI中で維持した。24時間以内に、生細胞をLympholyte(登録商標)勾配で精製し、最終濃度106細胞/mlになるように再懸濁した。CD8+T細胞を105細胞/ウェルから連続的に希釈して、抗マウスIFNγ抗体5μg/mlで予めコーティングしたマウスIFNγELISpotプレート(BD Biosciences、San Jose、CA)に蒔いた。全腫瘍細胞系を5×104細胞/ウェルの濃度で添加した。18〜24時間後、細胞を除去し、抗IFNγコーティング膜をPBSに溶かした0.05%Tweenで洗浄して、2%牛胎児血清を含むPBSに溶かしたIFNγに対する2次ビオチン化抗体とインキュベートし、結合した2次抗体をストレプトアビジン結合HRPおよびAEC(3−アミノ−9−エチルカルバゾール)酢酸溶液に曝露することによって視覚化した。IFNγ分泌CD8+T細胞に対応するスポットは、Zeiss KS ELISpotシステム(Muenchen−Hallergmoss、Germany)を使用して定量した。
【0163】
実施例8; ヒト由来免疫細胞のニワトリスルビビンによるin vitro免疫
非哺乳類スルビビン配列、例えば、ニワトリスルビビン配列がヒトにおいて抗スルビビン応答を惹起する能力を確かめるために、in vitroにおける免疫測定法を、患者の末梢血細胞(huPBMC)を使用して実施する。根本的に、樹状細胞(DC)およびT細胞はhuPBMCから精製し、DCに選択した抗原を負荷して、T細胞と共にインキュベートし、当業者によく知られている標準的方法を使用して、例えば、ヒトスルビビンを発現する標的細胞の形態で、スルビビンペプチドへの曝露に対するT細胞の応答を測定する。
【0164】
例えば、(HLA−A2+患者のhuPBMC由来で、IL−4およびGM−CSFを使用して得られた)DCをHLA−A2+対立遺伝子のエピトープであることが知られている対照スルビビンペプチド配列、例えば、LMLGEFLKL(配列番号6)でパルス標識するか、実験用ペプチド、例えば、(i)30マーニワトリスルビビン由来ペプチドGCAFAALQKDPSELMLGEFLKLDRERAKNV(配列番号32)、(ii)野生型ニワトリスルビビンペプチド、あるいは(iii)ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)(配列番号12)などの変異ニワトリスルビビンペプチドでパルス標識する。あるいは、これらの配列を発現するDNA構築物をDCに導入する。ペプチドもしくはタンパク質とのインキュベーション、または導入したDNAの発現の後で、DCを照射し、外部から添加した過剰なペプチドを除去するために洗浄し、次いでIL−7およびIL−2の存在下で合成T細胞と混合する。培養したT細胞を新たに処理し、照射したDCと共に混合することによって、T細胞を週1回の頻度で刺激する。
【0165】
一測定において、スルビビン反応T細胞の存在は、基本的に実施例7に説明したように、IFNγELISpot測定法によって検出する。あるいは、従来の[51Cr]放出測定法を使用して、MHCクラスI分子の場合においてスルビビンペプチドを提示している標的腫瘍細胞に[51Cr]を負荷し、これらのT細胞とインキュベートして、腫瘍細胞溶解物を[51Cr]放出によって定量して、これらの細胞の機能的活性を評価する。スルビビンを発現しない対照標的細胞系は、陰性対照として使用する。実験用調製物は、スルビビンに応答するT細胞の生成において少なくとも対照調製物と同様に有効であることが予測され、ニワトリスルビビン由来配列は、ヒトスルビビンを発現する細胞に対する特異的免疫応答を対象とするエピトープとして役立ち得ることを示している。
【0166】
実施例9; 肺癌に対するワクチンの効果
腫瘍罹患後まで2度目の治療を遅延させた場合、ワクチンによって惹起された免疫応答が転移腫瘍の増殖を阻害できるかどうかを決定するために、以下の実験を実施した。
【0167】
0日目に、C57Bl/6マウス(治療条件当たりn=5)に、10%重炭酸ナトリウム100μl、続いて変異ニワトリスルビビンをコードするプラスミド(ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G))、muFc−ChickenSurvivinをコードするプラスミド、または2個の転写単位、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするものとアジュバントとして融合タンパク質muFc−muIL2をコードするものを有するプラスミドを含有するSL7207サルモネラ108個を経口的にワクチン接種した。対照マウスはPBSで治療した。
【0168】
マウスに経口的に10%重炭酸ナトリウム100μLを予め投与し、SL7207サルモネラをPBSに溶かして投与した(前述のように調製した)。初回ワクチン接種の10日後に、マウスにPBS200μlに溶かしたLCC/KSA細胞1×106個の単一細胞懸濁液を静脈注射して、同濃度のサルモネラを使用して2回目の経口ワクチン接種を行い追加免疫した。マウスを32日目に殺処分した。
【0169】
一般的な結果を以下の表に示す(表3)。この結果は、どちらのニワトリスルビビン構築物の発現ベクターを有しているサルモネラでワクチン接種しても、転移性肺癌に対して同様の防御が得られることを示している。
【0170】
【表3】
【0171】
表3では、(*)腫瘍罹患は、0〜3(0=肺に腫瘍がない、1=腫瘍罹患<5%、2=腫瘍罹患5〜50%、3=肺の>50%が腫瘍に覆われている)の等級で得点付けした。イタリック体および太字の腫瘍の得点は、尾の基部に肺以外の腫瘍の所見があるマウスを示している。
【0172】
実施例10; SL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種すると死亡時期が著しく遅延する
スルビビン発現プラスミドを有するサルモネラSL7207によるワクチン接種が腫瘍罹患を減少させ、生存率を増加させるかどうかを決定するために、Balb/cマウス(治療条件当たりn=5)に、PBS、マウススルビビン発現プラスミドを有するSL7207サルモネラ、または野生型ニワトリスルビビン発現プラスミドを有するSL7207サルモネラを、前述のように経口的な経管投与によって2週間間隔で2回投与した。2度目のワクチンを接種してから2週間後に、マウスにCT26/KSA同系細胞(ヒトEpCAMタンパク質も発現していたが、実験には関係ないと考えられた)5×105細胞/mlのPBS懸濁液200μlを静脈注射した。マウスの生存率をモニターした。図7に例示したように、PBSまたはSL7207マウススルビビンによる治療と比較して、SL7207ニワトリスルビビンで治療したマウスにおける生存特性は延長した。
【0173】
実施例11; スルビビン発現ベクターを有するサルモネラでワクチン接種した結果としての、癌転移を有する哺乳類の生存期間の延長
既に癌が存在している哺乳類にスルビビン発現プラスミドを有するサルモネラをワクチン接種することができるかどうかを解決するために、以下の実験を実施した。この実験では、0日目に、C57Bl/6マウスを10%重炭酸ナトリウム0.1mlで予め治療して、次に(前述のように調製した)PBSに溶かしたマウススルビビン(n=5)またはChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)(n=5)のベクターを含有するSL7207サルモネラ約1億個を経口的にワクチン接種した。対照マウスには、重炭酸ナトリウムおよびPBS(n=5)を経管投与した。初回ワクチンを接種してから10日後に、マウスにLLC/KSA細胞(ヒトEpCAMタンパク質も発現していたが、実験には関係ないと考えられた)1×106細胞のPBS懸濁液200μlを静脈注射した。腫瘍を注射してから4時間後に、免疫応答を刺激するために投与した同濃度のサルモネラを使用して、全マウスに2度目の経口ワクチン接種を追加投与した。
【0174】
腫瘍曝露後12週間にわたって生存を追跡した。対照マウスは全て、腫瘍投与後35日以内に死亡した。スルビビン構築物の1種でワクチン接種したマウスは全て、35日目でもまた生きていた。SL7207ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)治療群のマウスは全て、LLC/KSAを注射して10週間以内に死亡した。SL7027マウススルビビンで治療した群では、3ヵ月後も生存した動物が1匹いた。2つの治療群の間には生存期間の有意差はなかった(p=0.243)。
【0175】
図8に、LLC/KSA細胞による腫瘍曝露に対するワクチン接種の生存曲線を示した。
【0176】
実施例12; スルビビン配列における置換を評価するための予測アルゴリズムの使用
本発明のスルビビン変種が潜在的抗原エピトープを損なうかどうか、または逆に、準優位な抗原エピトープが潜在的に改善され得るかどうかを評価するために、予測アルゴリズムを使用することができる。例えば、huSurvivin変種huSur(R18E、H77A、C84A、A128P)(配列番号84)を、タンパク質分解酵素切断部位予測のために公的に使用できるデータベース、例えば、NetChop(www.cbs.dtu.dk/NetChop)および主要MHCIHLAスーパータイプのエピトープ予測のためのデータベース、例えば、SYFPEITHI(www.syfpheithi.de)を使用して分析した。NetChopを使用すると、切断パターンはR18E、H77A、C84A、A128Pの置換をヒトスルビビンに導入しても(「S」は、閾値0.8を上回る潜在的切断部位を示す)、以下のように、大幅には変化しないことがわかる。
【0177】
【表4】
【0178】
HLA−A0201サブタイプに結合することが既に同定された抗原エピトープは、太字および下線で示してあり、NetChopでこのエピトープのC末端切断部位を予測する。
【0179】
SYFPEITHIを使用して、ヒト集団の少なくとも約85%に及ぶHLAスーパータイプA2、A3およびB7に結合するエピトープについてhuSur(R18E、H77A、C84A、A128P)(配列番号84)配列を分析する(Sette他、(1999)Immunogen.50:201〜212)。野生型huSurvivinと比較した場合、上位の順位付けされるエピトープはHLA−A0201およびHLA−A03では同一であったが、HLA−B0702では同一ではなく、このスルビビン変種配列は、H77Aの置換によってより好ましいC末端アンカー残基が実現するため、上位に順位付けされるエピトープを生じる。したがって、ペプチドEPDDDPIEEA(配列番号33)は、ペプチドEPDDDPIEEH(配列番号34)より好ましい抗原ペプチドであり得る。
【0180】
NetChop分析から示唆されるように、P47LおよびQ56Lなどの置換をさらにhuSur(R18E、H77A、C84A、A128P)に導入することができ、この配列を上記のようにSYFPEITHIによって再分析することができる。HumanSurvivinの配列(R18E、H77A、C84A、A128P)を配列番号84に示す。HumanSurvivinの配列(R18E、P47L、Q56L、H77A、C84A、A128P、I135P)を配列番号56に示す。具体的に、変異P47Lは、CPTENEPDL(配列番号2)のアンカー位置2を強化し、CLTENEPDL(配列番号35)に変化させる。
【0181】
同様に、置換Q56Lによって、AQCFFCFKEL(配列番号37)と比較して2番目の位置が好ましいアンカー残基であり、HLA−A0201に対する結合力がかなり弱いことが予測されるペプチドALCFFCFKEL(配列番号36)が生成する。野生型huSurvivinと比較すると、Q56L変種スルビビン配列は、確認されているhuSurvivin抗原ペプチドELTLGEFLKL(配列番号38)と同じ強さの抗原であることが予測されるペプチドを生じる(Andersen他、(2001)Cancer Res.61:869〜872)。
【0182】
本発明では、このような分析は、例えば、準優位なエピトープに対する応答を促進することによって、CTLが寛容化されにくい抗原性の強いペプチドを含有するスルビビン配列をもたらすことができる。
【0183】
実施例13; 非哺乳類スルビビンを発現するベクターを含有するワクチンによるヒト癌患者の治療
本発明では、癌を有するヒトを以下のように本発明のワクチンで治療する。まず、治療のための候補者を、癌細胞がスルビビンを過剰発現しているかどうかを試験する診断薬で場合によって分類する。例えば、腫瘍試料は、抗スルビビン抗体による免疫蛍光法によって分析することができる。あるいは、候補患者の腫瘍試料は、逆転写酵素PCRによってスルビビンmRNAレベルを検出する遺伝子チップとのハイブリダイゼーション、またはスルビビンmRNAまたはタンパク質レベルを検出するその他の任意の方法によって分析することができる。患者はまた、その他の診断試験、例えば、MHC発現レベル、T細胞媒介性の死滅に関与することが知られているシグナル伝達分子のレベル、または機能は知られていないが、免疫療法に対する応答性と関連することが経験的に知られている分子のレベルの試験に基づいた応答の可能性で分類することができる。
【0184】
腫瘍のほとんどの手術切除を行ったヒト患者を選択することは特に有用である。これによって、前述のように腫瘍の診断分析が可能になる。さらに、理論に結びつけることは望まないが、大きくて、嵩のある腫瘍は単純に免疫系を徐々に高める可能性があるので、手術によって切除した後、治療することが有利である。さらに、腫瘍は、小さな転移より大きな塊において高濃度をもたらす拡散性の免疫抑制因子を分泌する。
【0185】
治療のために選択された患者は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、神経膠芽腫、頭部および頚部癌およびその他の癌を有する。
【0186】
適切に診断して患者を選択した後、非哺乳類スルビビン発現ベクター(哺乳類細胞で非哺乳類スルビビンを発現するベクター)を有するサルモネラ株で患者を治療する。例えば、患者に、哺乳類プロモーターからニワトリスルビビンを発現するプラスミドを有する生きたサルモネラLT2約109個から1013個を投与することができる。好ましくは、約1010〜1012個の細菌を使用し、より好ましくは約2×1011個のサルモネラを投与する。サルモネラ株は好ましくは栄養要求性であり、実施例で触れた株のいずれも使用することができる。
【0187】
胃の酸性環境におけるサルモネラ細菌の生存問題を解決するために、2種類の他の方法を使用する。第1の方法では、患者はまず、安全かつ有効な量の重炭酸ナトリウムを摂取して、胃酸を中和する。第2の方法では、胃を通過して、小腸で溶解するように腸溶性コーティングされた丸剤としてサルモネラ細菌を製剤化する。
【0188】
副作用には、サルモネラチフィムリウム株を使用するときの軽い下痢が含まれ、サルモネラチフィムリウムは天然ではマウスの病原体であり、通常ヒトには病原性を持たない。このような軽い下痢を対症療法的に治療することが好ましいが、抗生物質で治療することはワクチン作用を無効にする可能性があるので、好ましくない。
【0189】
実施例14; 腫瘍曝露に対するワクチン接種の時期
腫瘍曝露の時間に対するニワトリスルビビンのワクチン接種の時期の重要性を試験するために実験を実施した。マウスに、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするプラスミドを含有するサルモネラを経口から経管投与した。投与計画を図9に示す。図示したように、10日目のLLC/KSA細胞の静脈内曝露および29日目の肺癌罹患の評価に対して、経口からの経管投与を1日目および13日目、7日目および13日目、10日目および18日目、または13日目および21日目に実施した。図10に示したように、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするプラスミドを含有するサルモネラの経口からの経管投与は、使用した投与計画に関係なく肺癌罹患の減少に有効であった。ワクチンの効果は、初回ワクチンを腫瘍曝露の3日より前に投与したとき、より顕著であった。
【0190】
肺転移に対する様々な投与計画の効果も評価した。肺の転移は以下のように採点した。肺表面の50%超が腫瘍に覆われているマウスのスコアは3であり、肺表面の5〜50%が腫瘍に覆われているマウスのスコアは2であり、肺表面の5%未満が腫瘍に覆われているマウスのスコアは1であり、肺に腫瘍のコロニーが視認できないマウスのスコアは0であった。図10に示したように、腫瘍曝露前の最初の投与を含む投与計画は、後に投与する計画またはChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)で経口的に免疫されていないマウスと比較して、肺転移のスコアが減少する傾向があった。
【0191】
実施例15; スルビビンワクチンと化学療法の併用治療
スルビビンに対するワクチンと化学療法の組み合わせの効果も評価した。試験方法を図11に示す。図に示したように、完全な治療を受けたマウスを、野生型ニワトリスルビビンをコードするプラスミドを有するサルモネラで1日目に刺激した。LLC/KSA細胞を4日目に静脈内に導入(曝露)した。シクロホスファミド(CTX)を11日目に腹腔内投与して、インドメタシンを12〜15日目に投与した。15日目に、マウスに野生型ニワトリスルビビンプラスミドを有するサルモネラで2回目の経口による経管投与(追加免疫)を行い、肺癌罹患を28日目に評価した。
【0192】
その他のマウスは治療の一部のみを受けた。例えば、初回免疫、曝露、および追加免疫のみを受けた(PCB)、曝露、CTXおよびインドメタシンは受けたが初回または追加免疫は受けなかった(C(CI))、初回、曝露、CTXおよびインドメタシンは受けたが追加免疫は受けなかった(PC(CI))、または曝露、CTX、インドメタシン、および追加免疫は受けたが初回免疫は受けなかった(C(CI)B)。
【0193】
図12に示したように、初回免疫、曝露および追加免疫のみを受けたマウスは腫瘍罹患の軽減を示し、陰性対照と比較して肺転移スコアが減少した。CTXおよびインドメタシンは肺転移スコアに対して同様の効果を有し、腫瘍罹患がより全体的に軽減した。最低の腫瘍罹患および最低の肺転移が、少なくとも初回免疫およびCTXおよびインドメタシンを受けたマウスで認められ、ワクチン治療および化学療法が協同して腫瘍罹患および肺転移を軽減し得ることを示している。
【0194】
実施例16; 非哺乳類スルビビンをコードするDNAによるサルモネラをベースにしたワクチン接種は、活性化された記憶表現型のT細胞の出現と相関する
末梢血リンパ球は、以前の実施例で説明したPCB、CI、PC(CI)、C(CI)Bまたは完全な(PC(CI)B)治療を受けたマウスから単離した。この治療が活性化した記憶T細胞の出現を誘導したかどうかを決定するために、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。記憶T細胞の有無は、CD44の発現が多く、CD3の発現が少ない細胞(CD4明CD3低)をモニターすることによって決定した。図13に示したように、初回免疫−曝露−追加免疫(PCB)プロトコールで治療されたマウスは、活性化した記憶T細胞の出現を示すCD44明発現プロファイルを有するT細胞を示した。ニワトリスルビビンをコードするプラスミドを有するサルモネラによる免疫を含むプロトコールのそれぞれにおいて、同様のプロファイルが認められたが、化学療法のみで治療されたマウス(および陰性対照のマウス)では認められなかった。
【0195】
実施例17; 免疫サイトカインと非哺乳類スルビビンをコードするDNAによるワクチン接種との併用治療
非哺乳類スルビビンを使用したワクチン接種が免疫サイトカインをベースにした腫瘍の治療の効果を増強するかどうかを測定するために、1日目にマウスの皮下にLLC/KSA細胞を曝露し、図14に示した計画に従って治療した。ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするプラスミドを含むサルモネラを経口的に経管投与されたマウスは、4、11、18および25日目に投与された。この実験で使用するために選択された免疫サイトカインは、米国特許出願公開第2003−0157054号明細書に記載されているように、IL−2と脱免疫された抗EpCAM抗体との融合物であった。免疫サイトカインを投与されたマウスは、8、9および10日目に免疫サイトカイン20μgを静脈内に投与された。
【0196】
経時的に得られた腫瘍体積を図15に示す。ワクチン接種も免疫サイトカインによる治療も経時的な腫瘍増殖を遅らせるのに十分であった。ワクチンおよび免疫サイトカインの両方を投与されたマウスはさらに良好で、ワクチン接種単独または免疫サイトカイン治療単独と比較して腫瘍増殖速度のさらなる抑制が示された。
【0197】
実施例18; 本発明のスルビビン構築物の生物学的活性の評価
本発明のある種のスルビビン変種は、生物学的に不活性であるように設計されている。したがって、このタンパク質自体は、細胞内において、野生型スルビビンタンパク質によって妨害され得るアポトーシスを通常は誘導する条件下で発現しても、アポトーシス阻害活性を示さない。同様に、このタンパク質は、アポトーシス誘導剤の作用から細胞を防御する内在性野生型スルビビンの活性を妨害しない。
【0198】
スルビビンタンパク質が生物学的に不活性であることは、BaF3リンパ球前駆細胞を使用して試験することができる。BaF3細胞は、増殖のためにIL−3に依存しており、増殖因子を除去するとアポトーシスを受けるが、スルビビンの活性によって対抗することができる(例えば、Ambrosini他(1997)Nat.Med.3:917〜921)。BaF3細胞を、本発明のスルビビン構築物、野生型スルビビンタンパク質または空の挿入物、および外部から導入されたDNAを発現する細胞をモニターできるようにGFPなどのマーカータンパク質を追加的にコードしているプラスミドでトランスフェクションする。トランスフェクションから回復した後、IL−3を培地から除去し、BaF3細胞のアポトーシスを、例えば、1、2、3および4日目に%生存率を評価するか、または当業者によく知られているアポトーシスを示す測定法、例えば、核形態学(DNA凝縮および断片化)によってモニターする。野生型スルビビンをトランスフェクションされたBaF3細胞のほとんどが4日間生存する一方、空のプラスミドまたは本発明のスルビビン変種をトランスフェクションされたBaF3細胞の生存は維持されず、ほとんどがアポトーシスの指標となる核形態を示した。
【0199】
本発明のスルビビン構築物が生物学的に不活性であることはまた、HeLa細胞を使用して試験することができる。HeLa細胞は、著しいレベルで内因性スルビビンを発現し、特定の変異体、例えばhuSurvivin(C84A)はスルビビンのドミナントネガティブ型(DNスルビビン)として作用し、これらの細胞でアポトーシスを誘導することが知られている(例えば、Li他(1999)Nat.Cell Biology 1:461〜466参照)。HeLa細胞を、外来から導入されたDNAを発現する細胞をモニターできるように、GFPなどのマーカータンパク質に加えて、DNスルビビンまたは本発明のスルビビン構築物をコードするプラスミドでトランスフェクションする。トランスフェクションから回復した後、HeLa細胞を48時間増殖させ、固定し、核をDAPIで染色して、細胞の核形態を免疫蛍光顕微鏡によって分析する。DNスルビビンをトランスフェクションされたHeLa細胞が一般的にアポトーシスを受けた特徴、例えば、凝縮し、断片化した核を有する一方、本発明のスルビビン構築物をトランスフェクションされたHeLa細胞は正常に増殖することが発見されている。
【0200】
実施例19; 本発明のスルビビン構築物の安定性の評価
スルビビン構築物の安定性を評価するために、発現したスルビビンタンパク質の量を標準に対して測定できるように、GFPなどのマーカータンパク質を追加的に発現するベクターから発現させることができる。BHK細胞などの組織培養細胞を一時的にトランスフェクションして、スルビビン構築物の発現レベルを、マーカー発現で正規化したウェスタンブロットで測定する。使用可能な抗スルビビン抗体がこのタンパク質を認識しないならば、これらの変種のC末端にタグ付けしたものを使用することができる。野生型スルビビンと比較して、本発明のある種の好ましい改変されたスルビビン構築物、例えば、多重不安定化変異を有するものは、はるかに少ないレベルで検出されることが発見された。
【0201】
安定状態レベルの評価に加えて、分解速度を経時変化実験で評価することができる。翻訳阻害剤シクロヘキシミドを細胞に0時に添加し、細胞を4時間インキュベートする。0、2、5、10、20、60および240分後に試料を取り出し、ウェスタンブロット分析する。改変されたスルビビン構築物と野生型スルビビンとの間の速度を比較するために、量を0時点で正規化する。本発明のある種の好ましい改変されたスルビビン構築物は、野生型スルビビンよりも迅速に分解することがわかる。
【0202】
プロテアソーム媒介経路によって分解が進行するかどうかを評価するために、細胞をプロテアソーム阻害剤、例えば、ラクタシスチン(2時間、100μM)の存在下または非存在下で場合によってインキュベートし、スルビビンレベルをウェスタンブロットによって再度測定する。ラクタシスチンの存在下では、本発明のスルビビン変種および野生型huSurvivinは同レベルで検出されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】スルビビン相同体のタンパク質配列のアラインメントを示す図である。
【図2】様々なスルビビン相同体のBIRドメインを比較するためのアミノ酸のパーセント同一性を示した図である。
【図3】無脊椎動物のBIRドメイン配列とヒトスルビビンとのアラインメントを示す図である。
【図4】スルビビンポリペプチドをコードしているプラスミドを有するサルモネラによるDNAワクチン接種の方法を示す概略図である。
【図5】癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。
【図6】癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。
【図7】サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。
【図8】サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。
【図9】腫瘍曝露10日目に対するワクチン接種時期の効果を評価するための投与計画の概略図である。
【図10】異なる経過時間後にワクチン接種を受けたマウスあるいはPBSを受けたマウスの肺の重量を示した図である。
【図11】ワクチン接種、LLC/KSA細胞による静脈内への腫瘍曝露、腹腔内のシクロホスファミド(CTX)、インドメタシン処理に関する投与計画の概略図である。
【図12】ワクチン接種後に腫瘍曝露したマウスの肺重量を示した図である。
【図13】非哺乳類スルビビンのワクチン接種した後のマウスにおけるCD44明、CD3低細胞の新規集団の外観を示す図である。
【図14】皮下腫瘍曝露、非哺乳類スルビビンによるサルモネラ媒介ワクチン接種、ならびに静脈内免疫サイトカイン処理を含む投与計画の概略図である。
【図15】PBS、免疫サイトカイン、非哺乳類スルビビン、または免疫サイトカインおよび哺乳類スルビビンで処理したマウスの経時的腫瘍体積を示す図である。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍を治療するためのワクチン戦略に関する。具体的に、本発明は、ヒトにおいてヒトスルビビンに対する免疫応答を誘発して、スルビビンを過剰発現している腫瘍罹患細胞を攻撃するワクチン組成物に関する。特に、本発明は、非哺乳類スルビビン由来、および哺乳類、特にヒトの改変されたスルビビン由来のペプチドを含むワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
免疫系は、一つには、細胞のタンパク質組成をモニターすることによってその監視機能を実行する。T細胞抗原提示と称されるプロセスにおいて、細胞内のタンパク質はペプチドに処理される。処理されたペプチドのサブセットである抗原は、主要組織適合複合体(MHC)受容体として知られている受容体の1クラスの1メンバーと特異的に結合して、細胞表面に運ばれる。これらのMHC−ペプチド複合体は、特殊化された免疫細胞、T細胞によってT細胞受容体(TCR)として知られているT細胞表面タンパク質との相互作用を介して抽出される。所与のT細胞はそれぞれ、表面上に固有のTCRを備えている。T細胞のTCRとMHC−ペプチド複合体との生産的な相互作用によって、免疫応答が活性化され、特定のMHC−ペプチド複合体を提示する細胞の排除が引き起こされる。一般的に、提示された抗原が宿主由来、すなわち「自己」抗原の場合、相互作用は、非生産的である。通常、免疫応答は、外来タンパク質由来の抗原、例えば、感染ウイルスの構成タンパク質由来の抗原と相互作用することによって活性化される。
【0003】
活性免疫化によって腫瘍を治療する目的は、腫瘍細胞を認識して、排除する免疫系を誘導することである。その他のあらゆる細胞と同様に、腫瘍細胞上のペプチド抗原は、発現したタンパク質の全範囲から得られる。腫瘍で個別に発現したタンパク質から得られた腫瘍に豊富な抗原は、ウイルス抗原が感染細胞中に存在するのとちょうど同じように、原則として免疫監視の標的となる。したがって、腫瘍を排除する目的のために、細胞内感染に対抗するために進化した免疫系の分岐を利用することは有用である。
【0004】
このような腫瘍で豊富な1タンパク質は、スルビビンである。腫瘍細胞はしばしば、スルビビンタンパク質を過剰発現し、アポトーシスを遮断して、腫瘍細胞の異常増殖を防ぐ機構を妨害すると考えられている。他方、正常細胞は、スルビビンをほとんど発現しない(例えば、Ambrosini他、(1997)Nat.Med.、3:917〜921を参照)。したがって、スルビビンは、理想的な腫瘍特異的または腫瘍に豊富な抗原である。このことは、スルビビンに対する免疫応答を誘発するように、抗原型のスルビビンタンパク質を抗原提示細胞に輸送するために役立つだろう。しかし、ウイルス感染細胞とは対照的に、スルビビンは、腫瘍で個別に発現しているその他の多くのタンパク質と同様に、宿主タンパク質であり、免疫系を活性化しない。したがって、腫瘍細胞、特にスルビビンの過剰発現が特徴である腫瘍細胞に対して効果的に免疫応答を惹起するのに有効な組成物および方法を開発することが、当業界では依然として必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明は、腫瘍細胞に対して効果的に免疫応答を惹起するのに有効な組成物および方法を提供する。具体的に、本発明は、T細胞抗原として、腫瘍に豊富なタンパク質の抗原型を使用したワクチン接種戦略を提供する。特に、本発明は、腫瘍に豊富なタンパク質、スルビビンの抗原型を提供する。
【0006】
したがって、本発明は、一態様では、非哺乳類スルビビン由来の少なくとも1種のペプチドをコードする核酸を含むワクチンに関する。あるいは、本発明は、非哺乳類スルビビン由来の少なくとも1種のペプチドを含むワクチンに関する。本明細書で使用した「非哺乳類スルビビン」は、ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%超90%未満である、例えば、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%であるBIRドメイン(またはIAPドメイン)を含む任意のスルビビンタンパク質を少なくとも包含する。「非哺乳類スルビビン」には、当業者に公知の非哺乳類種で同定された任意のスルビビンタンパク質も含まれる。本明細書で使用した「ペプチド」は、完全長スルビビンタンパク質を含む、任意の数のアミノ酸を有するペプチドを包含する。特に、ペプチドは、少なくとも8、9、10、15、20、25、30個以上のアミノ酸を含有することができる。
【0007】
好ましい一実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする核酸が含まれる。核酸は、哺乳類のプロモーターを含んでよい。一実施形態では、核酸は裸DNAである。他の実施形態では、核酸は哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化される。本発明のワクチンはアジュバントも含んでよい。
【0008】
一実施形態では、核酸はウイルス粒子、例えば、アデノウイルス粒子の一部である。本発明に適したアデノウイルス粒子には、複製可能なアデノウイルス由来のもの、または特定の細胞でのみ、もしくは特定の条件下でのみ複製する条件付きで複製するアデノウイルス(「CRAD」)由来のもの、または複製能力がないアデノウイルス由来のものが含まれる。その他の適切なウイルス粒子には、限定はしないが、ほんの少数の例を挙げれば、レンチウイルスもしくはその他のRNAウイルス、アデノ随伴ウイルス、ロタウイルス、またはワクシニアウイルス由来のウイルス粒子が含まれる。
【0009】
一実施形態では、ワクチンは核酸を含有する細菌を含む。好ましくは、この細菌は腸内細菌、例えば、サルモネラ、大腸菌またはクレブシラである。その他の細菌、例えば、リステリア種もこのような核酸の宿主となるために使用することができる。この細菌は、野生型細菌であってよく、または、例えば、その病原性を弱めた変異を含有してよい。一般的に、細菌の変異型、例えば、栄養要求体を使用することが好ましい。
【0010】
他の好ましい実施形態では、本発明のワクチンは、非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードするか、または含む。好ましくは、非哺乳類スルビビン由来のペプチドには、BIRドメインが含まれる。一般的に、非哺乳類スルビビン由来のBIRドメインは、ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%超80%未満である。非哺乳類スルビビンは、鳥類、魚類、は虫類、両生類またはその他の脊椎動物から得られる。好ましい実施形態では、非哺乳類スルビビンは、ニワトリから得られる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンは、T細胞抗原提示を促進する変異を有する非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードするか、または含む。例えば、非哺乳類スルビビン変異ペプチドは、ヒトスルビビンのAsn97、Thr99、Val100またはGln101に対応する位置にアミノ酸置換を含有してよい。より具体的には、ニワトリまたはその他の種由来の非哺乳類スルビビンは、以下のアミノ酸置換、N97E、T99M、V100LまたはQ101Gの1つを含有してよい。他の例では、カエルSIXスルビビン由来のペプチドは、同等の位置Thr110および/またはSer112に置換を含有する。具体的な例では、カエルSIXスルビビン由来のペプチドは、Thr110Metおよび/またはSer112Glyの置換を含有する。
【0012】
その他の実施形態では、本発明のワクチンは、BIRドメインの生物学的活性が潜在的に消失する変異を有する非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードするか、または含む。例えば、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、ヒトスルビビンのArg18、Cys57、Cys60、His77またはCys84に対応する位置に少なくとも1個のアミノ酸置換を含有してよい。
【0013】
さらに、非哺乳類スルビビンは、場合によってアミノ酸欠失を含有してよい。一実施形態では、非哺乳類スルビビン部分は、C末端に欠失を含有する。他の実施形態では、非哺乳類スルビビンは、N末端に欠失を含有する。
【0014】
その他の実施形態では、本発明のワクチンは、癌細胞上でMHC分子と結合したとき、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる。具体的に、このようなヒトスルビビンペプチド配列は、例えば、LTLGEFLKL(配列番号1)、CPTENEPDL(配列番号2)またはEPDLAQCFF(配列番号3)であってよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、Fc部分と融合するか、または結合している。好ましいFc部分は、哺乳類Fc領域由来で、より好ましくはヒトFc領域由来である。Fc部分は、集合を改善する変異、例えば、IgG1ヒンジの配列EPKSCDK(配列番号4)のシステインとセリンの置換を含有してよい。結果的に、Fc部分は、改変された配列EPKSSDK(配列番号5)を含有してよい。Fc部分はまた、免疫応答が望ましくない領域、例えば、融合タンパク質間の連結点の免疫原性を減少させる変異を含有してよい。
【0016】
選択された実施形態では、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、免疫応答に寄与するエフェクター分子と相まって作用する。例えば、このようなエフェクター分子は、限定はしないが、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23、GM−CSFを含むサイトカイン成分、または任意のその他のサイトカイン、特にTh1免疫応答を活性化できるものであってよい。このようなエフェクター分子はまた、免疫系を抑制するサイトカインの阻害剤、例えば、STAT3阻害剤(例えば、STAT3βなどのドミナントネガティブSTAT3タンパク質)であってよい。サイトカインまたはその他のエフェクター分子はまた、変異を含有してよい。例えば、サイトカインは、IL−2のCys125に対応する位置にSer置換を含有してよい。
【0017】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする核酸が含まれる。非哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子ペプチドをコードする領域は、単一の転写単位、または2つに分離した転写単位に存在することができる。あるいは、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする核酸および免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする別の核酸が含まれる。
【0018】
その他の実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドが含まれる。一実施形態では、非哺乳類スルビビン由来のペプチドは、エフェクター分子を含むペプチドと融合するか、または結合している。非哺乳類スルビビンおよびエフェクター分子融合タンパク質は、前述のようにFc部分とさらに融合しているか、または結合していてよい。
【0019】
他の態様では、本発明は、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸を含むワクチンに関する。あるいは、本発明は、改変された哺乳類スルビビンペプチドを含むワクチンに関する。改変された哺乳類スルビビンペプチドは、生物学的に不活性であるが、哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的に類似である。本明細書で使用したように、「生物学的に不活性」とは、正常なスルビビンに通常関連した活性を実質的に発揮できないか、または影響を及ぼすことができないスルビビンペプチドを意味する。例えば、「生物学的に不活性」なスルビビンペプチドは、実質的にアポトーシス阻害活性を持たず、内在性スルビビンタンパク質に通常関連しているアポトーシス阻害活性を実質的に妨害することができない。生物学的に不活性なスルビビンは一般的に、実質的にドミナントネガティブ効果を持たない。本明細書で使用したように、「哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的に類似である」とは、対応する改変していない哺乳類スルビビンペプチドの標的配列に対する免疫応答と同様の免疫応答を少なくとも1種惹起することができる改変されたスルビビンペプチドを意味する。免疫応答は、例えば、CD8+T細胞集団または標的配列に応答したCD8+T細胞によるIFNγ放出によって測定することができる。
【0020】
好ましい一実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸が含まれる。核酸は、哺乳類のプロモーターを含んでよい。一実施形態では、核酸は裸DNAである。他の実施形態では、核酸は哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化される。本発明のワクチンはアジュバントも含んでよい。
【0021】
一実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸はウイルス粒子、例えば、アデノウイルス粒子の一部である。本発明に適したアデノウイルス粒子には、複製可能なアデノウイルス由来のもの、または特定の細胞でのみ、もしくは特定の条件下でのみ複製する条件付きで複製するアデノウイルス(「CRAD」)由来のもの、または複製能力がないアデノウイルス由来のものが含まれる。その他の適切なウイルス粒子には、限定はしないが、ほんの少数の例を挙げれば、レンチウイルスもしくはその他のRNAウイルス、アデノ随伴ウイルス、ロタウイルス、またはワクシニアウイルス由来のウイルス粒子が含まれる。
【0022】
一実施形態では、ワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸を含有する細菌が含まれる。好ましくは、この細菌は腸内細菌、例えば、サルモネラ、大腸菌またはクレブシラである。その他の細菌、例えば、リステリア種もこのような核酸の宿主にするために使用することができる。この細菌は、野生型細菌であってよく、または例えばその病原性を弱めた変異を含有してよい。一般的に、細菌の変異型、例えば、栄養要求体を使用することが好ましい。
【0023】
他の好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドが含まれる。好ましくは、改変された哺乳類スルビビンペプチドには、改変されたBIRドメインが含まれる。改変されたBIRドメインは、ヒトスルビビンのArg18、Cys57、Cys60、His77およびCys84に対応する位置に少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでよい。あるいは、または、さらに、改変された哺乳類スルビビンペプチドには、改変されたヘリカルドメインが含まれる。改変されたヘリカルドメインは、ヒトスルビビンのLys122、Ala128およびIle135に対応する位置に少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでよい。例えば、改変されたヘリカルドメインは、ヒトスルビビンのAla128に対応する位置にProを含有してよい。改変されたヘリカルドメインは、Ile135に対応する位置にProを含んでいてもよい。改変された哺乳類スルビビンペプチドは、1個または複数のMHCクラスIT細胞エピトープを含有することが好ましい。例えば、改変された哺乳類スルビビンペプチドは、アミノ酸配列LTLGEFLKL(配列番号1)またはLMLGEFLKL(配列番号6)を含んでよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドには、Fc部分と融合している。好ましいFc部分は、哺乳類Fc領域由来で、より好ましくはヒトFc領域由来である。Fc部分は、集合を改善する変異、例えば、IgG1ヒンジの配列EPKSCDK(配列番号4)のシステインとセリンの置換を含有してよい。結果的に、Fc部分は、改変された配列EPKSSDK(配列番号5)を含有してよい。Fc部分はまた、免疫応答が望ましくない領域、例えば、融合タンパク質成分間の連結点の免疫原性を減少させる変異を含有してよい。
【0025】
ある種の実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドは、免疫応答に寄与するエフェクター分子と相まって作用する。例えば、このようなエフェクター分子は、限定はしないが、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23、GM−CSFを含むサイトカイン成分、または任意のその他のサイトカイン、特にTh1免疫応答を活性化できるものであってよい。このようなエフェクター分子はまた、免疫系を抑制するサイトカインの阻害剤、例えば、STAT3阻害剤(例えば、STAT3βなどのドミナントネガティブSTAT3タンパク質)であってよい。サイトカインまたはその他のエフェクター分子はまた、変異を含有してよい。例えば、サイトカインは、IL−2のCys125に対応する位置にSer置換を含有してよい。
【0026】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする核酸が含まれる。改変された哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子ペプチドをコードする領域は、単一の転写単位、または2つに分離した転写単位に存在することができる。あるいは、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸および免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする別の核酸が含まれる。
【0027】
その他の実施形態では、本発明のワクチンには、改変された哺乳類スルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドが含まれる。一実施形態では、改変された哺乳類スルビビンペプチドは、エフェクター分子を含むペプチドと融合するか、または結合している。改変された哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子融合タンパク質は、前述のようにFc部分とさらに融合しているか、または結合していてよい。
【0028】
他の態様では、本発明は、ヒトスルビビンを発現する細胞に対する免疫応答を惹起することができる核酸に関する。この核酸は、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が50%超80%未満であるアミノ酸配列を含むペプチドをコードし、この核酸は、哺乳類細胞のペプチドを発現することができるプロモーターを含有する。
【0029】
本発明はまた、前述のワクチンまたは核酸を投与することを含む治療方法に関する。特に、本発明は、癌および所望しない細胞増殖が関連する他の疾患の治療方法を提供する。本発明の治療方法は、その他のステップ、例えば、高レベルのスルビビンの発現について患者の腫瘍を最初に試験するステップを場合によって含んでよい。他の任意選択のステップは、本発明のワクチンまたは核酸を投与する前に、患者を弱い免疫抑制剤、例えば、低用量のシクロホスファミドで前処理することである。理論によって結びつけることは望まないが、このような前処理の1効果は、制御性T細胞の数を減少させることである。したがって、同様の効果を有するその他の前処理は本発明に包含される。
【0030】
スルビビンに加えて、本発明は、抗原として利用できる多種多様なタンパク質、例えば、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原およびその他の抗原に適用することができる。本発明は、スルビビンに加えて、腫瘍特異的抗原の中でも上皮細胞接着分子、Rasなどの癌遺伝子、癌胎児抗原およびその他の腫瘍特異的、または腫瘍に豊富なタンパク質に適用することができる。本発明は、ウイルス抗原の中でもHIVのp24、インフルエンザ赤血球凝集素およびその他のウイルスタンパク質に適用することができる。
【0031】
要するに、本発明は以下に関する。
・ヒトにおける腫瘍および腫瘍関連疾患の治療に使用するためのワクチンであって、
(a)ヒトスルビビンのAsp16からLeu87にわたるBIRとのアミノ酸同一性が50%と90%との間であるBIRドメインを含む非哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、または(b)BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、および(c)場合によってアジュバントを含み、ヒトにおいてヒトスルビビンに対する免疫応答を惹起するワクチン。
・ワクチンによって引き起こされた前記免疫応答が、ヒトスルビビンを発現する細胞を攻撃するCD8+T細胞を生じさせる対応するワクチン。
・ペプチドが非哺乳類スルビビン由来である対応するワクチン。
・前記BIRドメインが、前記ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%と80%との間である対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビンが鳥類、魚類、は虫類または両生類、好ましくはニワトリ由来である対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビン由来のペプチドが、MHC分子に結合することによってT細胞抗原提示を促進する1個または複数の変異を含む対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビンがニワトリのものであり、変異がニワトリスルビビンのAsn97、Thr99、Val100またはGln101の位置の1個または複数でのアミノ酸置換である対応するワクチン。好ましい変異は、N97Eおよび/またはT99Mおよび/またはV100Lおよび/またはQ101Gである。
・変異がN97E、T99M、V100LおよびQ101Gである配列番号12のワクチン。
・非哺乳類スルビビンが、BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む対応するワクチン。
・消失する前記生物学的活性がアポトーシスである対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84に対応する1個または複数の位置にアミノ酸置換を含有する対応するワクチン。
・MHC分子と結合したとき、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる対応するワクチンであって、前記ヒトスルビビンペプチド配列がLTLGEFLKL、CPTENEPDLおよびEPDLAQCFFからなるペプチドの群から選択されることが好ましいワクチン。
・ペプチドが、改変された哺乳類スルビビン、好ましくはヒトスルビビン由来である対応するワクチン。
・改変されたヒトスルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84の1個または複数の位置にアミノ酸置換を含有する対応するワクチン。
・改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドが、改変されたヘリカルドメインを含み、ヒトスルビビンのLys12および/またはAla128および/またはIle135の位置にアミノ酸置換を含有する対応するワクチン。
・変異が少なくともAla128Pおよび/またはIl2135Pである対応するワクチン。
・以下の変異、R18E、P47L、Q56L、H77A、C84A、A128PおよびI135Pを有する改変されたヒトスルビビンを含む配列番号56のワクチン。
・改変された哺乳類スルビビンペプチドが、アミノ酸配列LTLGEFLKLまたはLMLGEFLKLを含む対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドがFc部分と融合している対応するワクチン。
・エフェクター分子、好ましくはIL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23およびGM−CSFからなる群から選択されたサイトカイン由来のペプチドをさらにコードするか、または含む対応するワクチン。
・非哺乳類スルビビンまたは改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする核酸が哺乳類プロモーターを含み、好ましくは裸DNAである対応するワクチン。
・核酸が、哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化されている対応するワクチン。
・核酸がウイルス粒子、好ましくはアデノウイルス粒子の一部である対応するワクチン。
・核酸を含む細菌を含み、細菌が好ましくは腸内細菌、より好ましくはサルモネラである対応するワクチン。
・特許請求の範囲および明細書のいずれかに記載のワクチンを、許容される担体、希釈剤または賦形剤と場合によって一緒に含む、スルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対してヒトを免疫するための医薬組成物。
・ヒトスルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対して患者を免疫するための医薬品を製造するための対応するワクチンの使用。
【0032】
図面の簡単な説明
図1は、スルビビン相同体のタンパク質配列のアラインメントである。アラインメントは、Clustal W法によって実施した(Thompson他、(1994)Nucl.Acid Res.22:4673〜4680参照)。配列は、以下のアクセッション番号を使用して、NCBIデータベースから入手した。ヒトスルビビン(アクセッション番号NW_001168、配列番号8)、イヌスルビビン(NP_001003019、配列番号9)、ブタスルビビン(NP_999306、配列番号39)、ウシスルビビン(NP_001001855、配列番号40)、ネコスルビビン(NP_001009280、配列番号41)、マウススルビビン(NP_033819、配列番号10)、ラットスルビビン(AAF82586、配列番号42)、オランウータンスルビビン(CAH91231、配列番号43)、ニワトリスルビビン(NP_001012318、配列番号11)、アフリカツメガエルSIX(AAO20085、配列番号13)、アフリカツメガエルスルビビン相同体(AAM76714、配列番号46)、アフリカツメガエルスルビビン相同体2(AAH89271、配列番号47)、ナマズスルビビン相同体(CK419466、配列番号52)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体((NP_919378、配列番号48)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体2(NP_660196、配列番号49)、フグスルビビン様相同体(CAG04432、配列番号50)およびフグスルビビン様相同体2(CAG07433、配列番号51)。BIRドメインには下線が引いてある。アスタリスクはZn配位に関与する表記残基を示し、波線はアラインメントのギャップを示す。非ヒト配列において、ヒト残基と同一の残基は、ピリオドによって表し、その他の残基は1文字アミノ酸コードで表す。
【0033】
図2は、様々なスルビビン相同体のBIRドメインを比較するためのアミノ酸のパーセント同一性を示した表である。配列1は、ヒト配列、配列2はイヌ由来、配列3はブタ由来、配列4はウシ由来、配列5はネコ由来、配列6はマウス由来、配列7はラット由来、配列8はオランウータン由来、配列9はニワトリ由来、配列10はアフリカツメガエルSIXタンパク質由来、配列11はアフリカツメガエル相同体由来、配列12はアフリカツメガエル相同体2由来、配列13はナマズ相同体由来、配列14はゼブラフィッシュ相同体由来、配列15はゼブラフィッシュ相同体2由来、配列16はフグスルビビン様タンパク質1由来、および配列17はフグスルビビン様タンパク質2由来である。
【0034】
図3は、無脊椎動物のBIRドメイン配列とヒトスルビビンとのアラインメントである。ヒトスルビビンBIRドメイン配列を配列番号63に示す。アラインメントは、Clustal W法によって実施した(Thompson他、(1994)Nucl.Acid Res.22:4673〜4680参照)。配列は、以下のアクセッション番号を使用して、NCBIデータベースから入手した。ヒトスルビビン(NM_001168、配列番号63で示したBIRドメイン配列)、キイロショウジョウバエ(AAF55399、配列番号53で示したBIRドメイン相同体)およびエレガンス線虫(NP_505949、配列番号54で示したBIRドメイン相同体)。BIRドメインには下線が引いてある。アスタリスクは、Zn配位に関与する表記残基を示し、波線はアラインメントのギャップを示す。非ヒト配列において、ヒト残基と同一の残基は、ピリオドによって表し、その他の残基は1文字アミノ酸コードで表す。
【0035】
図4は、スルビビンポリペプチドをコードしているプラスミドを有するサルモネラによるDNAワクチン接種の方法の概略を示す。腸管内腔のサルモネラはバイエル板のM細胞によって腸管上皮に侵入する。一旦上皮に入ると、サルモネラはマクロファージおよび樹状細胞などの細胞に侵入する。細菌死およびプラスミド輸送によって、マクロファージによるプラスミド発現が可能になり、MHCクラスI分子におけるコードされたスルビビンポリペプチドからのペプチドの提示が引き起こされる。さらに、スルビビンポリペプチドを発現しているアポトーシスマクロファージの樹状細胞による取り込みによって、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子におけるペプチド提示から生じる交差提示が引き起こされる。
【0036】
図5は、癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。IFNγ放出は、ELISpot測定法で測定した。C57Bl/6マウスを、マウスまたはニワトリスルビビン発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種するか、あるいはワクチン接種せず(x軸)、T細胞をB16/KSA(縞模様の棒)またはLLC/KSA(黒い棒)癌細胞系に曝露した後、播種したT細胞5×105個当たりのIFNγスポットの数(y軸)を測定した。
【0037】
図6は、癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。IFNγ放出は、ELISpot測定法で測定した。Balb/cマウスを、マウスまたはニワトリスルビビン発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種するか、ワクチン接種せず(x軸)、T細胞を4T1/KSA(縞模様の棒)またはA20(黒い棒)癌細胞系に曝露した後、播種したT細胞5×105個当たりのIFNγスポットの数を測定した。
【0038】
図7は、サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。生存したBalb/cマウスの%(y軸)を、マウススルビビン(黒三角)またはニワトリスルビビン(黒四角)またはPBS(黒ひし形)の発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種したマウスのCT26/KSA曝露後の日数(x軸)に対してプロットする。
【0039】
図8は、サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。生存したC57Bl/6マウスの%(y軸)を、マウススルビビン(黒三角)またはニワトリスルビビン変異体、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)(黒四角)またはPBS(黒ひし形)の発現プラスミドを有するサルモネラでワクチン接種したマウスのLLC/KSA曝露後の日数(x軸)に対してプロットする。
【0040】
図9は、腫瘍曝露10日目に対するワクチン接種時期の効果を評価するための投与計画の概略図である。「D」は、「日」の略語である。したがって、例えば、マウス数匹には、1日目に経口的にワクチン接種を行い、10日目に腫瘍曝露し、13日目に経口的にワクチン接種を行い、その他のマウスには、10日目に腫瘍曝露と経口的ワクチン接種を行い、18日目に2度目の経口的ワクチン接種を行った。肺癌罹患は、29日目に評価した。
【0041】
図10は、1日目および13日目、7日目および13日目、10日目および18日目、または13日目および21日目にワクチン接種を受けたマウスあるいはPBSを受けたマウスの肺の重量を示した図である。マウスには全て、10日目に静脈内にLLC/KSA細胞の腫瘍曝露を行った。マウスそれぞれの肺転移スコアも示した。
【0042】
図11は、1日目および15日目にニワトリスルビビンによるサルモネラ媒介ワクチン接種を行い、4日目にLLC/KSA細胞で静脈内に腫瘍曝露し、11日目に腹腔内にシクロホスファミド(CTX)で、12〜15日目にインドメタシンで処理することを含む投与計画の概略図である。肺を28日目の腫瘍罹患について記録した。
【0043】
図12は、腫瘍曝露のみ(媒体);1日目(初回)および15日目(追加)にニワトリスルビビンでワクチン接種し、4日目に腫瘍曝露(PCB);CTXおよびインドメタシンおよび腫瘍曝露C(CI);初回、曝露、CTX、インドメタシン、および追加(PC(CI)B);初回、曝露、CTXおよびインドメタシン(PC(CI))、または曝露、CTX、インドメタシンおよび追加C(CI)Bを受けたマウスの肺重量を示した図である。マウスそれぞれの肺転移スコアも示した。
【0044】
図13は、非哺乳類スルビビンをコードするプラスミドを有するサルモネラでワクチン接種した後のマウスにおけるCD44明、CD3低細胞の新規集団の外観を示す末梢血細胞のフローサイトメトリーデータを表した図である。x軸はCD3細胞を表し、y軸はCD44細胞を表す。
【0045】
図14は、1日目の皮下腫瘍曝露、4、11、18および25日目の非哺乳類スルビビンによるサルモネラ媒介ワクチン接種、ならびに8、9および10日目の静脈内免疫サイトカイン処理を含む投与計画の概略図である。
【0046】
図15は、PBS、免疫サイトカイン、非哺乳類スルビビン、または免疫サイトカインおよび哺乳類スルビビンで処理したマウスの経時的腫瘍体積を示した図である。
【0047】
発明の詳細な説明
本発明は、疾患細胞に対して効果的に免疫応答を惹起する組成物および方法を提供することによって、癌またはその他の疾患の治療を改善する。癌は、第1の標的疾患であるが、本発明は、その他の疾患および症状、例えば、正常細胞の望ましくない増殖、例えば、類線維腫組織に適用される。本発明はまた、ウイルス感染、例えば、HIV感染、インフルエンザウイルス感染、およびその他のウイルス感染を治療するための組成物および方法を企図する。
【0048】
特に、癌またはその他の腫瘍を治療するために、本発明は、哺乳類において癌または腫瘍細胞に対して適応した免疫応答を惹起するために、抗原提示細胞上に、腫瘍特異的または腫瘍に豊富なタンパク質に関連したペプチドを提示するための組成物および方法を提供する。本発明のために好ましい1種の腫瘍特異的または腫瘍に豊富な抗原はスルビビンである。
【0049】
(T細胞抗原提示の概要)
抗原提示とは、細胞内のタンパク質がペプチドに処理されて、その後分泌経路に沿って細胞表面に輸送される細胞プロセスである。処理されたペプチドは、MHCとして知られる特殊化されたペプチド提示膜タンパク質との安定な複合体として輸送される。このプロセスは、免疫系の成分、例えば、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)および細胞傷害性T細胞(CTLまたはCD8+T細胞)がMHC−ペプチド複合体を抽出することによって細胞の組成を調査することを可能にする。ヘルパーT細胞は、MHCII−ペプチド複合体と相互作用し、一方細胞傷害性T細胞はMHCI−ペプチド複合体と相互作用する。相互作用は、T細胞の表面上に発現したT細胞受容体(TCR)を介して起こる。T細胞はそれぞれ、固有のTCRを発現している。抗体と類似して、TCRの多様性は、染色体のTCR座の再構成によって生じる。抗体産生細胞のように、T細胞分化の間に自己抗原(すなわち、細胞に存在する内在性タンパク質から生じる抗原ペプチド)と遭遇することによって、その特定のT細胞のネガティブ選択を引き起こす。ネガティブ選択中に排除されないT細胞はさらに、成熟T細胞に発達する。結局、MHCと結合した外来抗原との相互作用は、特に第2の刺激の存在下で、T細胞活性化を引き起こす。
【0050】
(スルビビン)
スルビビンタンパク質の特徴は、BIRドメイン(またはIAPドメイン)として知られている約70個の保存されたアミノ酸ドメインである。ヒトスルビビンでは、このBIRドメインは、Asp16からLeu87にわたる領域に対応する。癌または腫瘍細胞はしばしば、スルビビンタンパク質を過剰発現し、これらの細胞のアポトーシスを阻害して、癌または腫瘍細胞の異常増殖を防御する機構を妨害すると考えられている。他方、正常細胞は、スルビビンをほとんど発現しない。したがって、スルビビンは、理想的な腫瘍特異的または腫瘍に豊富な抗原である。したがって、スルビビン発現腫瘍細胞に対する免疫応答を誘発できるように、抗原型のスルビビンタンパク質を抗原提示細胞に輸送することは本発明の目的である。ヒトおよび哺乳類のスルビビンタンパク質および遺伝子は、米国特許第6245523号またはWO2004/067023号に詳細に記載されている。
【0051】
(非哺乳類スルビビン)
本発明の一態様は、非哺乳類スルビビン遺伝子および/またはタンパク質を癌およびその他の疾患のためのワクチンで使用できるという驚くべき発見を中心に展開している。例えば、マウスまたはヒトを、ニワトリスルビビンをコードする核酸で免疫すると、マウスまたはヒトスルビビンを発現する細胞をそれぞれ攻撃するCD8+T細胞を生じさせることができる。この発見は、ニワトリスルビビンタンパク質が免疫学的にヒトスルビビンと実質的に類似であることを示しており、ニワトリスルビビンは哺乳類において免疫応答を惹起する抗原型のスルビビンタンパク質として使用できることを示唆している。
【0052】
哺乳類および非哺乳類種のスルビビンタンパク質を図1に整列させた。アラインメントに含めたスルビビンタンパク質は、ヒトスルビビン(Genbankアクセッション番号NM_001168または015392、配列番号8)、イヌスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001003019、配列番号9)、ブタスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_999306、配列番号39)、ウシスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001001855、配列番号40)、ネコスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001009280、配列番号41)、マウススルビビン(Genbankアクセッション番号NP_033819、配列番号10)、ラットスルビビン(Genbankアクセッション番号AAF82586、配列番号42)、オランウータンスルビビン(Genbankアクセッション番号CAH91231、配列番号43)、ニワトリスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001012318、配列番号11、「野生型」)、アフリカツメガエルSIXスルビビン(Genbankアクセッション番号AAO20085、配列番号13)、アフリカツメガエルスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号AAM76714、配列番号46)、アフリカツメガエルスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号AAH89271、配列番号47)、ナマズスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号CK419466、配列番号52)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号NP_919378、配列番号48)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号NP_660196、配列番号49)、フグスルビビン様相同体(Genbankアクセッション番号CAG04432、配列番号50)およびフグスルビビン様相同体2(Genbankアクセッション番号CAG07433、配列番号51)である。Genbankアクセッション番号によって本明細書で開示した配列は全て、参考として援用している。図1に含まれる配列はまた、明細書の配列表に挙げてある。
【0053】
さらに、2種類のニワトリスルビビン変種も、添付の配列表に含まれており、変種1(Genbankアクセッション番号NM_001012319、配列番号44)は異なるC末端を得るために配列番号11で示した野生型ニワトリスルビビン配列とはアミノ酸残基116での開始が異なっており、変種2(Genbankアクセッション番号NP_001012317、配列番号45)は、配列番号11で示した野生型ニワトリスルビビン配列とはアミノ酸残基38での開始が異なっている。
【0054】
以下の配列がさらに配列表に含まれる。ヒトスルビビン(Genbankアクセッション番号NM_001168.2、配列番号64)、ホモサピエンススルビビン(Genbankアクセッション番号O15392、配列番号65)、イヌスルビビン(Genbankアクセッション番号NM_001003019.1、配列番号66)、ブタスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_999306.1、配列番号67)、ウシスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001001855.2、配列番号68)、ネコスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001009280.1、配列番号69)、マウススルビビン(Genbankアクセッション番号NP_033819.1、配列番号70)、ラットスルビビン(Genbankアクセッション番号AAF82586.1、配列番号71)、オランウータンスルビビン(Genbankアクセッション番号CAH91231.1、配列番号72)、ニワトリスルビビン(Genbankアクセッション番号NP_001012318.1、配列番号73)、アフリカツメガエルSIXスルビビン(Genbankアクセッション番号AAO20085.1、配列番号74)、アフリカツメガエルスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号AAM76714.1、配列番号75)、アフリカツメガエルスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号AAH89271.1、配列番号76)、ナマズスルビビンをコードする核酸(Genbankアクセッション番号CK419466.1、配列番号77)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体(Genbankアクセッション番号NP_919378.1、配列番号78)、ゼブラフィッシュスルビビン相同体2(Genbankアクセッション番号NP_660196.1、配列番号79)、フグスルビビン様相同体(Genbankアクセッション番号CAG04432.1、配列番号80)、フグスルビビン様相同体2(Genbankアクセッション番号CAG07433.1、配列番号81)、キイロショウジョウバエスルビビン(Genbankアクセッション番号AAF55399.1、配列番号82)およびエレガンス線虫スルビビン(Genbankアクセッション番号NP_505949.1、配列番号83)。
【0055】
本発明は、図1で開示したスルビビン配列などの天然に見いだされるスルビビン配列だけでなく、図1で開示した配列の少なくとも1つとのアミノ酸同一性が、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%であるその他のアミノ酸配列を使用することを企図する。
【0056】
図1で示したように、アラインメント中の哺乳類スルビビンタンパク質は、ヒトスルビビンとの同一性が80%超であるのに対して、アラインメント中のスルビビンの非哺乳類性相同体は、ヒトスルビビンとの同一性が60%未満である。しかし、BIRドメイン(図1のアラインメントの下線領域)内では、非哺乳類スルビビンタンパク質は、ヒトスルビビンとの同一性が60%超80%未満であり、一方、哺乳類スルビビンタンパク質は、ヒトスルビビンとの同一性が90%超である。スルビビン相同体のBIRドメインの配列対パーセント同一性を図2にまとめて示す。例えば、ニワトリスルビビンは、BIRドメインでのヒトスルビビンとの同一性が約78%である。
【0057】
図1で示したように、ニワトリスルビビンでは、BIRドメイン内の1種の9‐merペプチド(18〜26:STRAATFRN)(配列番号7)のみが、対応するヒト配列に対して50%超のアミノ酸変動を含有する(この特定の9‐merペプチドにおいて、9個のアミノ酸のうち5個が異なっている)ことは重要である。ニワトリスルビビンのBIRドメイン内のほとんどの9‐merペプチドが含有する配列変化は2個以下である(64個のペプチドのうち48個)。理論に結びつけることは望まないが、この配列保存性の程度によって、ニワトリスルビビンは、効果的にヒトスルビビンと免疫学的に実質的に類似することができると考えられる。
【0058】
一般的に、ニワトリスルビビンBIRドメインと図2に示した哺乳類スルビビンBIRドメインとの間のパーセント同一性は、約72%と約78%との間で変化する。さらに、BIRドメインのニワトリスルビビン由来9‐merペプチドの約75%は、対応する哺乳類9‐merペプチドと比較して2個以下の配列変化を含有している。例えば、ニワトリスルビビンはBIRドメインでマウススルビビンとの同一性が75%であり、このことは、以下の実施例6で説明するように、ニワトリスルビビンがマウススルビビンと免疫学的に実質的に類似しているという結果と一致している。
【0059】
以下の実施例で例示したように、非哺乳類スルビビン組成物、例えば、ニワトリスルビビン組成物が、マウスにおいてマウススルビビンを発現している腫瘍に対して免疫応答を誘導する効果は、本発明の基本的方針、すなわち、非哺乳類スルビビン分子を哺乳類にワクチン接種すると、哺乳類スルビビンまたは哺乳類スルビビンを過剰発現している細胞に対する免疫応答を誘導するのに有用であることを強調している。したがって、免疫学的応答は哺乳類間で十分に保存されているので、ニワトリスルビビンはまた、ヒトにおいてヒトスルビビンを過剰発現する細胞、例えば、多くの腫瘍細胞に対して効果的な免疫応答を引き起こすのに有用である。
【0060】
対照的に、無脊椎動物のBIRからヒトのスルビビンBIRドメインまでのアラインメントによって、D.メラノガスター(AAF55399、配列番号53)およびC.エレガンス(NP_505949、配列番号54)のBIRドメインは、ヒトスルビビンBIRドメイン配列に対する同一性が50%以下であるが(図3)、Znキレート化のために不可欠な残基は保存されている(図3のアラインメントのアスタリスク参照)。例えば、ハエスルビビンBIRドメインは、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が約50%である。ハエBIRドメインが含有する、対応するヒトペプチドと比較して2個以下のアミノ酸置換を有する9‐merペプチドは3個のみであること(64個のうち3個)は重要である。
【0061】
本発明では、本明細書で使用した「非哺乳類スルビビン」という用語には、ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が少なくとも50%超であるが90%未満、例えば、ヒトスルビビンBIRドメインとの同一性が少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%であるBIRドメイン(またはIAPドメイン)を有する任意のスルビビンタンパク質を少なくとも包含する。
【0062】
パーセント同一性を計算するために、各配列の整列したアミノ酸を順次比較する。アミノ酸が同一でなければ、ペアワイズ同一性スコアはゼロである。その他の場合、ペアワイズ同一性スコアは1.0である。生の同一性スコアは、同一の整列アミノ酸の合計である。次に、生スコアを、候補配列または参照配列のより小さいアミノ酸の数で除し、その結果に100を乗ずることによって正規化する。正規化された生スコアがパーセント同一性である。挿入および欠失は、パーセント同一性の計算のためには無視される。したがって、ギャップペナルティーは、この計算に使用しない。
【0063】
複数の配列アラインメントを作製する方法は、当業者には周知である。スルビビン配列を整列させるために、DNASTAR Lasergene(商標)6ソフトウェアパッケージのMegalign6.1モジュールを、ClustalVアラインメントアルゴリズムを適用して、初期設定を用いて使用した(Higgins and Sharps(1989)Comput Appl Biosci.5:151〜3)。スルビビンBIRドメインのサブアラインメントには、Clustal W(「slow−accurate」)法を初期設定を用いて適用した(Thompson他、(1994)Nucleic Acids Res.22:4673〜80)。
【0064】
非哺乳類スルビビンはまた、哺乳類スルビビンよりもTヘルパー細胞応答を生じさせる潜在力を有するペプチドを多く含有することができるものと考えられる。理論に結びつけることは望まないが、増強された免疫効果は、免疫応答における、MHCIによる細胞傷害性T細胞の関与およびMHCIIによるTヘルパー細胞の関与によって実施することができるものと考えられる。内在性ヒトスルビビンと非哺乳類スルビビンとの間の配列の違いは、ヒト免疫系が寛容化されていない提示されたいくつかのペプチドをもたらすものと思われる。有効なMHCIIエピトープの存在は、公的に使用可能な予測アルゴリズム、例えば、ProPred分析(www.imtech.res.in/raghava/propred;Singh他、(2001)Bioinformatics 17:1236〜1237、内容を本明細書に参考により組み込む)を使用して分析することができる。このようなアルゴリズムを使用して、ヒトまたはイヌスルビビンなどの哺乳類スルビビンタンパク質に対して、ニワトリスルビビンまたはカエルSIXスルビビンなどの非哺乳類スルビビンタンパク質は、MHCII分子に結合するペプチドおよび/またはMHCII分子に対して高い結合親和性を有するペプチドを多く含有すると予測されることがわかる。
【0065】
【表1−1】
【0066】
【表1−2】
【0067】
【表1−3】
【0068】
【表1−4】
【0069】
表1は、少なくとも1個のHLA−DR対立遺伝子に結合する9‐merペプチドそれぞれの開始位置(番号)および配列(ペプチド)を示している。結合数は、任意の結合閾値、この場合20%を上回ってペプチドが結合する対立遺伝子の数(50個のうち)を意味している。20%閾値とは、Propredで実施したようなアルゴリズムによって計算した場合、理論的最大結合スコアの20%を意味する。スコアは、そのペプチドが結合する全HLA対立遺伝子での累積的スコアを意味する。参考として、ヒトにおいて抗MBP抗体を生じることが知られているタンパク質(MBP(85〜99))の部分から得られたヒトミエリン塩基性タンパク質(MBP)ペプチドVVHFFKNIV(配列番号14)は、累積スコア1087.6で29個のHLA対立遺伝子に結合する。
【0070】
MHC分子と結合すると、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる非哺乳類スルビビン由来のペプチドを含むか、またはコードするワクチンを提供することが望ましい。このようなヒトスルビビンペプチドまたはそれら由来のペプチドには、限定はしないが、EPDLAQCFF(配列番号3)、EPDLAQCFY(配列番号15)、CPTENEPDL(配列番号2)およびCPTENEPDY(配列番号16)が含まれる。他のヒトペプチドおよびT細胞を活性化するか、T細胞の活性化を増強するために有用な改変は、本明細書に参考として内容を援用した米国特許出願公開第2004−0210035号に記載されている。
【0071】
したがって、非哺乳類スルビビン配列に、公知のヒトスルビビンエピトープに対応する変異、またはそのようなペプチド配列がMHCに結合するのを増強することができる変異を導入するために有用であり得る。例えば、ニワトリスルビビン配列のAsn97、Thr99、Val100またはGln101の位置にアミノ酸置換を導入することは有用であり得る。理論に結合させることは望まないが、ニワトリスルビビンのThr99の位置の置換は、得られたペプチドがMHC分子に結合するのを増強することができる。具体的な例では、ニワトリスルビビン由来のペプチドは、以下のアミノ酸置換、An97Glu、Thr99Met、Val100LeuおよびGln101Glyの少なくとも1つを含有することができる。他の例では、カエルSIXスルビビンに、Thr110またはSer112でのアミノ酸置換を導入することは有用であり得る。アフリカツメガエルSIXスルビビンのアミノ酸配列(T110M、S112G)を配列番号55に示す。理論に結びつけることは望まないが、Thr110の位置の置換は、得られたペプチドがMHC分子に結合するのを増強することができる。具体的な例では、カエルスルビビン由来のペプチドは、以下の置換、Thr110Met、Ser112Glyの少なくとも1つを含有することができる。
【0072】
本発明に適した非哺乳類スルビビンペプチドはまた、アミノ酸欠失を含有することができる。例えば、非哺乳類スルビビンペプチドは、C末端切断またはN末端切断を含有することができる。
【0073】
非哺乳類スルビビンタンパク質内のある種の保存性の低い配列は、ヒトスルビビンと同様の発現プロファイルを持つことができず、したがって腫瘍特異的であることができないその他の非スルビビンヒトタンパク質に割り当てることができる。このことは、短い、ほぼ正確な一致を同定する設定で、非重複ヒトタンパク質データベースに対して、非哺乳類スルビビンの多岐にわたる領域の配列でBLAST検索を実施することによる最初の方法で評価することができる。例えば、ニワトリスルビビン配列のC末端ドメイン(aa90−aa142)での検索では、ほぼ正確な一致で同定されたヒトタンパク質は数個のみであった(ヒットは5個未満)。次に、そのようなヒトタンパク質を、まず以下に説明したインシリコ法によって、発現パターンに関して、および抗原ペプチドを生じる能力に関してさらに分析することができる。
【0074】
(改変されたスルビビン)
他の態様では、本発明は、哺乳類スルビビンタンパク質に改変を導入することによって、スルビビンタンパク質の抗原型を提供する。具体的に、本発明は、生物学的に不活性であるが、哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的に類似している改変された哺乳類スルビビンペプチドを企図する。本発明のこの態様はまた、抗原提示細胞の細胞質内でスルビビンタンパク質を単に発現するという単純な取り組みで、2つの特定の問題を解決する。第1の問題は、生物学的に活性のあるスルビビンタンパク質は、抗原提示細胞の生理機能を破壊し得ることである。第2の問題は、スルビビンまたは本質的に任意のその他のタンパク質を細胞内で発現させるとき、細胞表面上のMHCクラスIによって抗原ペプチドを提示するような方法でほんの小量のタンパク質が分解されることである。
【0075】
したがって、本発明は、ヒトスルビビンの変異体種または非ヒト哺乳類スルビビンの変異体種を含む改変された哺乳類スルビビンタンパク質を企図する。本発明はまた、図1で開示したスルビビン配列などの、天然に見いだされるスルビビン配列だけでなく、図1で開示した配列の少なくとも1つとのアミノ酸同一性が、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%であるその他のアミノ酸配列も使用することを企図する。
【0076】
ヒトスルビビンの構造は決定されている(Chantalat他、(2000)Mol.Cell 6:183〜189、タンパク質データバンク(PDB)タンパク質構造アクセッション番号PDB ID 1E31、Verdecia他、(2000)Nat.Struct.Bio.7:602〜608、タンパク質データバンク(PDB)タンパク質構造アクセッション番号PDB ID 1F3H、いずれの教示も本明細書に参考として援用している)。3D構造に基づいて、ヒトスルビビンは、少なくとも2個のドメイン、BIRまたはIAPドメインと称される亜鉛結合部位を含むN末端球状ドメインおよび本明細書ではヘリカルドメインと称される伸長したC末端アルファヘリックスを含む。好ましい実施形態では、本発明は、N末端BIRドメインおよび/またはC末端ヘリカルドメインにおいて変異を有するスルビビンの形態を提供する。最適な効果は両領域を変異させることによって実施できることが本発明の知見である。理論に結びつけることは望まないが、N末端BIRドメインおよびC末端ヘリカルドメインはそれぞれ生物学的活性を有するものと考えられる。例えば、BIRドメインは、ヘリカルドメインがなくてもあるレベルのアポトーシス阻害活性を有する。さらに、ヘリカルドメインは、細胞骨格結合活性を有し、異なった生物学的活性を有し得る。
【0077】
具体的に、BIRドメインでは、例えば、好ましい変異には、限定はしないが、ヒトスルビビンのCys57、Cys60、His77またはCys84に対応する位置でのアミノ酸置換が含まれる。例えば、改変されたBIRドメインは、以下の置換、Cys57Ser、Cys60Ser、His77PheおよびCys84Serの少なくとも1つを含有することができる。これらのアミノ酸のいずれかをアラニンまたはプロリンに置換することも好ましい。これらの変異は、BIRドメインの亜鉛結合部位を破壊するものと考えられる。亜鉛結合部位を破壊する効果を有するその他の変異も使用することができる。さらに、ヒトスルビビンArg18に対応する位置、好ましくはアスパラギン酸またはグルタミン酸の変異を使用して、不活性なBIRドメインを生じることができる。亜鉛結合アミノ酸が2、3または4個の位置で変異した、改変されたBIRドメインが特に好ましい。
【0078】
機能を破壊するためにヘリカルドメインのどこかにプロリン残基を導入することは、一般的に有用である。特に、プロリン置換は、ヒトスルビビンAla128またはIle135に対応する位置に導入することができる。ヘリカルドメインを破壊することができるその他のアミノ酸置換も好ましい。
【0079】
好ましい改変された哺乳類スルビビンは、Arg18、Cys57、Cys60、His77および/またはCys84での変異およびヘリカルドメインのプロリンを含有することができる。Arg18、Cys57、Cys60、His77、Cys84、Ala128およびIle135の位置の前述のアミノ酸はそれぞれ、ヒトとニワトリスルビビンの間で保存されており、したがって、同一の変異を導入して、生物学的に不活性なニワトリスルビビンを作製することができる。同様の変異は、その他の非哺乳類スルビビンタンパク質の対応する位置にも導入することができる。
【0080】
前記の変異のいずれかを、ヒトスルビビンのLeu98に対応する位置における変異、例えば、Leu98Arg、Leu98LysおよびLeu98Alaなどと組み合わせることができる。ニワトリスルビビンでは、ヒトLeu98に対応する位置はVal100である。
【0081】
その他の有用な変異は、実施例で説明したように、通常の実験によって同定することができる。例えば、変異をスルビビンタンパク質に導入して、例えば、生物学的活性の欠如、および/または分解の促進、および/または腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導する能力について試験する。これらの試験の例となる測定法は、以下の実施例に記載されており、当業界では公知である。
【0082】
一般的に、好ましい改変されたスルビビンペプチドは、3個、4個、5個以上の変異を含有する。しかし、本発明によって企図される改変されたスルビビンの1用途は、MHCクラスI分子によってスルビビン由来のT細胞エピトープペプチドを提示することである。したがって、哺乳類スルビビンと免疫学的に実質的な類似性を維持するために、50個未満(または30個未満または20個未満)のアミノ酸を変異させることが一般的に好ましい。
【0083】
(抗原提示)
本発明は、MHCクラスIエピトープのプロセシングがあまり妨げられないように、スルビビンまたはその他のタンパク質配列に変異を最適に導入するための方針を提供する。
【0084】
特定のスルビビン変異は、MHCクラスI分子によって提示され、特定のT細胞受容体によって認識されるペプチド部分内に位置することができる。エピトープが切断されるか、またはエピトープは切断されないが、新たなエピトープが好ましく作出されるように、変異によって、スルビビンのペプチドエピトープへのタンパク質分解処理を改変することも可能である。抗原提示の問題に取り組むために、公的に使用できるデータベースおよびスルビビンタンパク質の候補MHCクラスIエピトープを同定し、その後ある変異がエピトープを変化させるかどうかを決定する情報を使用することができる。例えば、SYFPEITHIアルゴリズムを使用することができる(その教示を本明細書に参考として援用したwww.uni−tuebingen.de.uni.kxi、Rammensee他、(1999)Immunogenetics 50:213〜219も参照。)あるいは、BIMASアルゴリズムを使用することができる(その教示を本明細書に参考として援用したbimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/、Parker他、(1994)J.Immunol.152:163〜175も参照)。ヒトMHCクラスIタンパク質をコードするHLA遺伝子は多形性が高く、様々なペプチドモチーフに結合する様々なMHCクラスIタンパク質を備えているので、1つの軸に様々なMHCクラスI分子を有し、他方の軸にスルビビン配列を有する潜在的エピトープの表を作製する。この表の項目は、所与のMHCクラスI分子のエピトープの位置を同定している。候補の変異の効果は、様々なエピトープに対する効果に基づいて判断される。結局、変異または変異類は、例えば、様々なHLA対立遺伝子の対立遺伝子頻度またはHLA対立遺伝子の群特異的頻度を考慮して、ワクチンの必要性に基づいて選択される。タンパク質分解プロセシングの問題と取り組むために、本発明では、公的に使用できるデータベース、および候補プロテアソーム切断部位を同定し、その後変異がこのような切断部位を変化させるかどうかを決定する情報を使用することができる。例えば、公的に使用できるデータベースNetChopを使用することができる(www.cbs.dtu.dk/services/NetChop/)。切断部位の変化を回避することが一般的に好ましい。
【0085】
例示の目的のために、実施例12は、スルビビンタンパク質において有用な置換を決定する例示的分析法を提供する。
【0086】
本発明では、「イムノプロテアソーム」を検討することも有用である。抗原提示細胞では、プロテアソームはタンパク質の多少異なる組成物を有し、そのタンパク質分解特異性は、C末端を疎水性残基に切断する酵素によって支配されている。結局、プロテアソームは、MHCクラスIをC末端疎水性アンカー残基に結合させることができるペプチドを生成する。イムノプロテアソーム切断パターンの特異性を維持することが望ましいならば、このような疎水性残基、特にロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンは変異させないことが好ましい。同様に、その他の残基もロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンに変異させないことが好ましい。したがって、Arg18、Cys57、Cys60、His77およびCys84の変異は、スルビビンの構造を不安定にすること、およびイムノプロテアソーム切断部位を除去しないことの両方について有利である。さらに、タンパク質配列のN末端に隣接した7個から9個のアミノ酸に、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンへの変異を導入しないことが好ましい。
【0087】
したがって、本発明は、免疫原性の高いタンパク質を生成するために、タンパク質配列中の好ましい変異部位を同定する一般的方法を提供する。この方法に基づいて、タンパク質配列中の好ましい変異部位は、以下の特性を有する。第1に、この部位の1個または複数の変異は、タンパク質構造を不安定にする。第2に、不安定化変異では、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンまたはフェニルアラニンを導入しない。第3に、この位置の通常のアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファンおよびフェニルアラニンではない。この方法は、抗原として利用できる多種多様なタンパク質、例えば、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原およびその他の抗原などに適用することができる。腫瘍特異的抗原の中でも、スルビビンに加えて、この方法は、上皮細胞接着分子、Rasなどの癌遺伝子、癌胎児抗原などに適用することができる。ウイルス抗原の中でも、この方法は、HIVのp24、インフルエンザ赤血球凝集素およびその他のウイルスタンパク質に適用することができる。
【0088】
(非哺乳類および/または改変されたスルビビンを含む融合タンパク質)
スルビビン部分の分解およびMHCクラスI分子によって提示することができるペプチドへのプロセシングを促進するために、非哺乳類スルビビンまたは前述の変異スルビビンペプチドを適切な第2のタンパク質に融合することが望ましい。例えば、ユビキチンは、この目的のために特に好ましい融合相手である。ユビキチン−スルビビン融合タンパク質は、以下の配置、N末端−ユビキチン−スルビビン−C末端またはN末端−スルビビン−ユビキチン−C末端の1つに構築することができる。N末端−ユビキチン−スルビビン−C末端の方向が好ましい。さらに、スルビビンN末端メチオニンは、好ましくはアルギニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸に変異させることが望ましい。ユビキチン−スルビビン融合タンパク質のヒトスルビビンIle19またはVal21に対応する位置にリシンを導入することも望ましい。
【0089】
本発明のスルビビンをFc部分に融合することも望ましい。好ましいFc部分は、抗体CH2およびCH3ドメインを含有し、場合によってヒンジ領域を含有する。Fc部分は、スルビビンのN末端またはC末端のいずれかに融合させることができる。成熟ヒトFc−Chickenスルビビンのタンパク質配列を配列番号25に示す。成熟マウスFc−Chickenスルビビンのタンパク質配列を配列番号27に示す。
【0090】
さらに、スルビビンおよびFc部分を含有する融合タンパク質はさらに、その他の部分、例えば、PCT公開WO01/07081に記載されているような免疫系を刺激するサイトカインを含有することができる。理論に結びつけることは望まないが、Fc部分の存在は、スルビビン含有融合タンパク質の抗原提示細胞への取り込みを促進することができる。Fc部分は、治療する生物由来であることが一般的に好ましい。例えば、ヒトの治療の場合、ヒトFc部分を使用することが好ましい。
【0091】
Fc−スルビビン融合タンパク質またはこの融合タンパク質をコードする核酸は、分泌用にシグナル配列を含有することが好ましい。シグナル配列の存在は、哺乳類細胞系、例えば、NS/0細胞における融合タンパク質の発現を容易にし、対応する核酸を患者に投与するならば、融合タンパク質のin vivoでの分泌を可能にすることができる。Fc−スルビビン融合タンパク質をコードする配列は、イムノグロブリン重鎖またはその変異型の少なくとも一部とインフレームで融合した、例えば、抗体軽(L)鎖から、好ましくはヒトイムノグロブリンγ1遺伝子のFcγ1領域から得られた「リーダー配列」と5’から3’の方向で開始することが好ましい。イムノグロブリンFcγ1遺伝子のFcγ1領域は、好ましくは少なくともヒンジドメインの一部およびCH3ドメインを含み、より好ましくは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。
【0092】
シグナル配列をコードするDNAの一部は、Fc融合タンパク質の分泌を目的とし、その後Fc融合タンパク質の残部から切り離されるペプチド部分をコードすることが好ましい。本発明のシグナル配列は、小胞体膜を貫通したタンパク質輸送を開始するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。本発明に有用なシグナル配列には、抗体軽鎖シグナル配列、例えば、抗体14.18(Gillies他、(1989)J.Immunol.Meth.125:191)、抗体重鎖シグナル配列、例えば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakano他、(1980)Nature、286:5774)および当業界で公知のその他の任意のシグナル配列(例えば、Watson(1984)Nucleic Acids Research、12:5145参照)が含まれる。
【0093】
シグナル配列は、当業界でよく特徴付けられていて、典型的にはアミノ酸残基を16個から30個含有しているが、より多い、またはより少ないアミノ酸残基を含有してよい。一般的なシグナルペプチドは、3個の領域、塩基性N末端領域、中央の疎水性領域および極性の高いC末端領域からなる。中央の疎水性領域は、新生ポリペプチドが輸送される間、膜の脂質二重層を貫通してシグナルペプチドを係留する4個から12個の疎水性残基を含有する。開始後、シグナルペプチドは通常、シグナルペプチダーゼとして知られている細胞性酵素によって小胞体の管腔内で切断される。シグナルペプチドの潜在的な切断部位は、一般的に「(−3、−1)法則」に則る。したがって、一般的なシグナルペプチドは、−1と−3に位置する小さな中性のアミノ酸残基で、この領域内にはプロリン残基が含まれない。シグナルペプチダーゼは、このようなシグナルペプチドをアミノ酸−1と+1との間で切断する。したがって、シグナル配列は、分泌中に融合タンパク質のアミノ末端から切断され得る。これはFc融合タンパク質の分泌中に生じる。本発明の実行に有用なシグナルペプチド配列は、当業界では周知である。例えば、von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.、14:4683を参照。
【0094】
「シグナル配列」、「シグナルペプチド」、「リーダー配列」または「リーダーペプチド」という用語は、本明細書で同義に使用される。
【0095】
分泌された融合タンパク質は、正確に折り畳まれたFcドメインを通例有することができるが、スルビビン部分は不正確に折り畳まれている。理論に結びつけることは望まないが、スルビビンがFc−スルビビン融合タンパク質のFc部分によって強制的に分泌経路に入ると、特にスルビビンはジスルフィド結合に関係し得るシステインを数多く含有しているので、スルビビンの折り畳み構造が緩む。スルビビン部分の正確な折り畳み構造は、本発明のワクチンの活性に必要ではない。
【0096】
遺伝子操作技術によるタンパク質の融合の代替法として、タンパク質部分を連結するために、従来の化学的架橋剤を使用した化学結合法を使用することができる。
【0097】
(核酸)
本発明はまた、非哺乳類および/または改変されたスルビビンおよび前述のようなスルビビンを含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。例えば、ヒトスルビビンのヌクレオチド配列は、配列番号57に示されており、アフリカツメガエルSIXスルビビンのヌクレオチド配列は、配列番号58に示されており、アフリカツメガエルスルビビン相同体のヌクレオチド配列は、配列番号59に示されており、ゼブラフィッシュスルビビン相同体のヌクレオチド配列は配列番号60に示されており、ナマズスルビビン相同体のヌクレオチド配列は配列番号61に示されている。核酸は、真核細胞、特に、哺乳類細胞における発現を可能にする因子と結合して、互いに組み合わさって、発現カセットを形成することが好ましい。一般的に、スルビビンをコードする発現カセットには、以下の調節因子、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ターミネーター、ポリアデニル化シグナルなどの少なくとも1個が含まれる。好ましくは、哺乳類プロモーターが含まれる。本明細書で使用したように、「哺乳類プロモーター」とは、哺乳類または通常哺乳類で増殖するウイルスで見いだされるプロモーター由来の遺伝子プロモーターを意味する。例えば、好ましいプロモーターには、哺乳類細胞で増殖するウイルス、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、モロニーサルウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)に存在するプロモーター、または哺乳類アクチン、ベータグロビン、ミオシンなどの哺乳類遺伝子由来のプロモーター、またはファシンもしくはその他の当業界で公知のAPC特異的遺伝子などの抗原提示細胞で好ましくは発現する哺乳類遺伝子由来のプロモーターが場合によって含まれる。有用なポリアデニル化シグナルの例は、SV40ポリアデニル化シグナルから得られたシグナルである。
【0098】
発現因子は、全真核細胞においてスルビビンタンパク質の発現を対象とすることができるか、または、例えば、抗原提示細胞における発現を対象とする細胞型特異的エンハンサーを有することができる。発現カセットのコーディング部分はまた、真核細胞、特に哺乳類またはヒトの細胞において最も一般的に使用されるコドンを有するように設計することが好ましい。
【0099】
本発明の発現カセットは、培養細胞において本発明のタンパク質を産生するために使用することができる。したがって、この発現カセットは、適切な薬剤耐性遺伝子、DNA複製起点および発現カセットの選択および複製を容易にするその他の因子に連結することができる。一実施形態では、この発現カセットの核酸配列は、細菌で複製することができるプラスミドに組み込まれる。本発明に適切なプラスミドは、細菌細胞で選択するためのマーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子を有することができる。あるいは、適切なプラスミドは、抗生物質耐性マーカーがなくてもよいが、代謝酵素をコードする遺伝子、サプレッサーtRNA、非薬剤耐性菌のゲノムで通常見いだされる他の遺伝子を場合によって含んでよい。したがって、本発明の例示的実施形態は、抗生物質耐性マーカーを含まず、哺乳類プロモーターに操作可能に結合した本発明のスルビビンペプチドをコードする核酸を含有するプラスミドである。このようなプラスミドを細菌に形質転換し、次に、この細菌を使用して、患者に抗生物質耐性遺伝子を導入することなく患者にワクチン接種することができる。あるいは、このようなプラスミドは、生きた担体がなくても患者に導入することができる。例えば、このようなプラスミドは、裸DNAとして、またはビーズ内に封入された、もしくはビーズ表面上にコーティングされたDNAとして導入することができる。
【0100】
本発明の発現カセットは、ウイルスゲノム、裸DNA投与に適したプラスミド、または細菌ゲノムに組み込むことができる。ウイルスゲノムの場合、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどの2本鎖DNAウイルスおよびレトロウイルスなどのRNAウイルスを使用することが望ましい。発現カセットをこのようなウイルスのゲノムに標準的技術によって挿入する。こうして、本発明は、核酸のDNAおよびRNA両方の形態を提供する。
【0101】
(エフェクター分子)
本発明はまた、非哺乳類ペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドが、免疫応答に寄与するエフェクター分子と相まって作用することが可能な実施形態を提供する。例えば、このようなエフェクター分子は、限定はしないが、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23、GM−CSFまたは任意のその他のサイトカインを含むサイトカイン部分、特にTh1免疫応答を活性化できるものであってよい。このようなエフェクター分子はまた、免疫系を抑制するサイトカインの阻害剤、例えば、STAT3阻害剤(例えば、STAT3βなどのドミナントネガティブSTAT3タンパク質)であってよい。サイトカインまたはその他のエフェクター分子はまた、変異を含有してよい。例えば、サイトカインは、IL−2のCys125に対応する位置にSer置換を含有してよい。
【0102】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする核酸が含まれる。非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドおよびエフェクター分子ペプチドをコードする領域は、単一の転写単位、または2つに分かれた転写単位であってよい。あるいは、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドをコードする核酸および免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドをコードする別の核酸が含まれる。
【0103】
その他の実施形態では、本発明のワクチンには、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類のスルビビンペプチドおよび免疫応答に寄与する前述のエフェクター分子を含む第2のペプチドが含まれる。一実施形態では、非哺乳類スルビビンペプチドまたは改変された哺乳類スルビビンペプチドは、エフェクター分子を含むペプチドと融合するか、または結合している。スルビビンペプチドおよびエフェクター分子融合タンパク質は、前述のようにFc部分とさらに融合しているか、または結合していてよい。
【0104】
(投与)
本発明のワクチンは、スルビビン過剰発現と関連した疾患を表すか、危険性があるヒトまたは哺乳類を治療するために使用される。このような疾患には、癌またはスルビビンを過剰発現する細胞を特徴とするその他の腫瘍が含まれる。
【0105】
本発明によって生成されるワクチンは、いかなる経路によっても哺乳類宿主に投与することができる。タンパク質抗原の注射は通常、哺乳類において免疫応答を惹起するために使用される。しかし、本発明のワクチンはまた、核酸、例えば、DNAの注射によってAPCに送達することができる。通常使用される技術は、抗原性タンパク質をコードするDNA発現ベクターを筋肉内に注射することである。特殊化されたAPC、例えば、マクロファージおよび樹状細胞は、注射または投与部位に移行し、抗原提示プロセスとして知られているプロセスによって抗原を捉え、提示すると考えられる。
【0106】
したがって、適切ならば、投与は、経口的、または静脈内および腹腔内投与経路を含む非経口的であってよい。さらに、投与は、ワクチンボーラスの断続的注射によって行うことができ、または外部の貯蔵体(例えば、バッグ)からの静脈内または腹腔内投与によってより継続的に行うことができる。ある実施形態では、本発明のワクチンは、医薬品等級であってよい。すなわち、ある種の実施形態は、ヒトに投与するために必要な純度および品質管理の基準を満たしている。獣医学的な適用はまた、本明細書で使用した企図した意味の範囲内である。
【0107】
獣医学的およびヒトへの医学的使用のための本発明によるワクチンの製剤は一般的に、薬学的に許容されるアジュバント、担体および場合によってはその他の成分と関連してこのようなワクチンを含む。担体は、製剤のその他の成分と適合しており、それの受容者に対して有害ではないという意味で「許容される」ことができる。この点に関して、薬学的に許容される担体は、医薬品投与に適合したありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むものとする。薬学的に活性のある物質のこのような媒体および薬剤の使用は、当業界で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物またはその投与媒介物に不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用は企図される。(本発明で同定された、および/または当業界で公知の)補助活性化合物はまた、組成物に組み込むことができる。製剤は、便利に投与単位形態に形成することができ、製薬/微生物の業界で周知の方法のいずれかによって調製することができる。一般的に、いくつかの製剤は、ワクチンを液体担体または微粉砕固体担体またはそれらの両方に結合させ、次に、必要に応じて、その生成物を所望する製剤に成形することによって調製される。
【0108】
本発明のワクチン組成物は、企図する投与経路に適合させて製剤化される。投与経路の例には、経口または非経口、例えば、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、筋肉内および直腸投与が含まれる。非経口、皮内または皮下適用に使用する溶液または懸濁液には、以下の成分、注射用水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性調節のための薬剤を含めることができる。pHは、塩化水素酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。
【0109】
経口または非経口投与に有用な溶液は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro,A.編)、Mack Pub.、1990に記載された製薬業界で周知の方法のいずれかによって調製することができる。非経口投与用の製剤はまた、頬側投与用のグリココール酸、結腸投与用のメトキシサリチル酸または膣投与用のクエン酸を含むことができる。非経口用調製物は、ガラスまたはプラスティック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与用バイアルに封入することができる。結腸投与用の座剤はまた、薬剤を非刺激性賦形剤、例えば、カカオ脂、その他のグリセリド、または室温では固体で、体温では液体であるその他の組成物と混合することによって調製することができる。製剤はまた、例えば、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、野菜由来の油、水素化ナフタレンなどを含むことができる。直接投与用の製剤は、グリセロールおよび粘度の高いその他の組成物を含むことができる。これらのワクチンのためにその他の潜在的に有用な非経口用担体には、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植用注入システムおよびリポソームが含まれる。吸入投与用の製剤は、賦形剤として、例えば、ラクトースを含有することができるか、あるいは、例えば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸およびデオキシコール酸を含有する水性溶液、または点鼻剤の形態で、もしくは鼻腔内に適用するジェルとして投与するための油性溶液であることができる。保持浣腸も結腸輸送のために使用することができる。
【0110】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが予め測定された量の薬剤を含有する区別された単位、例えば、カプセル、ゼラチンカプセル、サシェ、錠剤、トローチまたは薬用ドロップの形態、粉末または顆粒の形態、水性液体または非水性液体に溶かした溶液または懸濁液の形態、水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンの形態であってよい。ワクチンはまた、ボーラス、舐剤またはペーストの形態で投与することができる。錠剤は、場合によって1種または複数の付属成分と共に圧縮するか、または成形することによって製造することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの易流動形態の薬剤を、適切な機械で、場合によって結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合して圧縮することによって調製することができる。成形された錠剤は、適切な機械で、粉末化された薬剤と不活性液体希釈剤で湿潤させた適切な担体との混合物を成形することによって製造することができる。
【0111】
経口用組成物は通例、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口用ワクチン投与のために、活性化合物を賦形剤と共に組み込むことができる。口腔洗浄剤として使用するために液体担体を用いて調製した経口組成物には、液体担体に溶かした化合物が含まれ、経口的に適用して、うがいをしたり、はき出したり、嚥下したりする。薬学的に適合した結合剤および/または補助剤物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤、澱粉またはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモジェルまたはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテスなどの潤滑剤、コロイド状二酸化珪素などの流動促進剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバなどの矯味矯臭剤または同様の性質の化合物のいずれかを含有することができる。
【0112】
注射可能な使用に適したワクチン組成物には、滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射可能溶液もしくは分散液の即時調合のための滅菌粉末が含まれる。静脈投与のために、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合も、組成物は滅菌されていることが可能で、容易に注射針を通過して存在する範囲まで流体であることができる。製造および保存の条件下で安定であることが可能で、真菌などの微生物の汚染作用から保護され得る。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することによって、分散剤の場合必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコールおよび塩化ナトリウムを組成物に含めることは好ましい。注射可能な組成物の吸収持続は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0113】
滅菌注射可能溶液は、適切な溶媒中に上記に列記した成分の1種または組み合わせと共に活性化合物を必要な量で組み入れて、必要であれば、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体および上記に列記した成分以外の必要な成分を含有する滅菌媒体に組み入れることによって調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法には、活性成分および任意の追加的な所望する成分の粉末を、既に滅菌濾過したそれらの溶液から生成する真空乾燥および凍結乾燥が含まれる。
【0114】
関節内投与に適した製剤は、微結晶形態、例えば、水性微結晶懸濁液の形態であってよいワクチンの滅菌水性調製物の形態であることができる。関節内投与および眼科的投与のためのワクチンを作製するために、リポソーム製剤または生分解性ポリマー系も使用することができる。
【0115】
局所投与に適した製剤には、リニメント剤、ローション、ジェル、膏薬、クリームなどの水中油または油中水エマルジョン、軟膏またはペーストなどの液体または半液体調製物、あるいは滴剤などの溶液または懸濁液が含まれる。皮膚表面への局所投与用製剤は、ワクチンをローション、クリーム、軟膏または石けんなどの皮膚科学的に許容される担体で分散させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、塗布の位置を特定し、除去を阻止するフィルムまたは層を皮膚上に形成することができる担体が有用である。組織表面への接着を所望する場合、組成物はフィブリノーゲン−トロンビン組成物またはその他の生体接着物に分散させたワクチンを含むことができる。次に、ワクチンを所望する組織表面に塗布、噴霧またはその他の場合は適用することができる。内部組織表面への局所投与の場合、薬剤を液体組織接着物または組織表面への吸着を増強することが知られているその他の物質に分散させることができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノーゲン/トロンビン溶液を有利に使用することができる。あるいは、組織コーティング溶液、例えば、ペクチン含有製剤を使用することができる。
【0116】
吸入治療の場合、スプレー缶、ネブライザーまたはアトマイザーで分散させた粉末(自己噴射製剤または噴霧製剤)の吸入を使用することができる。このような製剤は、粉末吸入装置または自己噴射粉末分配製剤から肺投与するために微細に粉砕された粉末の形態であることができる。自己噴射溶液および噴霧製剤の場合、その効果は、所望する噴霧特性を有する(すなわち、所望する粒径を有する噴霧を生成することができる)バルブを選択するか、または制御された粒径の懸濁粉末として活性成分を取り込むことによって実現することができる。吸入によって投与するために、ワクチンはまた、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する圧縮容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーからエアロゾル噴霧の形態で送達させることができる。点鼻薬も使用できる。
【0117】
経粘膜または経皮手段によって全身投与することもできる。経粘膜または経皮投与の場合、浸透する障壁に適切な浸透剤を製剤中に使用する。このような浸透剤は一般的に当業界では公知で、例えば、経粘膜投与用には、界面活性剤、胆汁塩およびフィルシディック酸(filsidic acid)誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻噴霧または座剤を使用して実現することができる。経皮投与の場合、ワクチンは一般的に、当業界で一般的に公知であるように、軟膏、膏薬、ジェルまたはクリームに製剤化される。
【0118】
一実施形態では、ワクチンは体からの迅速な排泄を防御する担体、例えば、移植片およびマイクロカプセル化輸送系を含む放出制御製剤と共に調製される。生分解性の生体適合ポリマー、例えば、エチレンビニル酢酸、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかである。材料はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals、Inc.から商用に入手できる。リポソーム懸濁液も、薬剤として許容できる担体として使用することができる。これらは、当業界で公知の方法、例えば、米国特許第4522811号に記載されたように調製することができる。ミクロソームおよび微粒子も使用することができる。
【0119】
経口用または非経口用組成物は、投与が容易で、投薬が一定した投与単位形態に製剤化することができる。投与単位形態とは、治療する対象のための単位製剤として適した物理的に区別された単位を意味し、各単位は、必要な医薬品担体と関連して所望するワクチン効果を生じるように計算された活性化合物の予め決定された量を含有する。本発明の投与単位形態の詳細は、活性化合物特有の特性および実現する特定のワクチン効果ならびに個体を治療するためにこのような活性化合物を調合する業界固有の限界によって影響を受け、直接左右される。
【0120】
一般的に、本発明によって同定されたワクチンは、治療有効量で、例えば、所望する効果を誘導するために十分な時間、標的組織に適切な濃度の薬剤をもたらす量で、ヒトまたはその他の哺乳類に非経口または経口投与するために製剤化することができる。さらに、本発明のワクチンは、単独で、または関心のある特定の疾患または適応症に対して有益な効果を有することが知られているその他の分子と組み合わせて投与することができる。ほんの一例として、有用な補因子には、消毒薬、抗生物質、抗ウイルス薬および抗真菌薬を含む症状を緩和する補因子ならびに鎮痛薬および麻酔薬が含まれる。
【0121】
ワクチン組成物中における送達すべき本発明で同定されたワクチンの効果的な濃度は、投与する薬剤の最終的に所望する製剤および投与経路を含むいくつかの要素によって変化する。投与する好ましい製剤はまた、治療する疾患または適応症の種類および程度、特定の患者の全体的健康状態、送達するワクチンの相対的生物学的効果、ワクチンの処方、製剤中の賦形剤の存在および種類ならびに投与経路のような変数に左右されるようである。いくつかの実施形態では、本発明のワクチンは、非ヒト霊長類および齧歯類を使用した前述の哺乳類の研究から推定された一般的な容量単位を使用して、個体に提供することができる。前述したように、投薬単位とは、ワクチンをそれ自体として、または固体もしくは液体の医薬希釈剤もしくは担体との混合物として含む、物理的および生物学的に安定な単位用量として維持されている、患者に投与することができ、取り扱いおよび包装が容易であり得る単一の、すなわち1回の用量のことを意味している。
【0122】
(ビーズを含むスルビビン核酸の送達形態)
他の実施形態では、本発明の核酸は、ビーズなどの送達媒体と共に構成することができる。例えば、本発明の核酸は、その教示を本明細書に参考として援用した米国特許出願公開第2003−0166594号に記載されているような方法に従ってセルロースビーズにコーティングすることができる。本発明の核酸は、その教示を本明細書に参考として援用した米国特許第5783567号に記載されているような方法に従ってポリマービーズに組み込むことができる。
【0123】
ある実施形態では、生物(例えば、細菌、哺乳類細胞およびウイルス粒子)を操作して本発明のスルビビンを産生させる。これらの生物は、収集するためにスルビビンを放出し、患者に直接ワクチンとして導入することができる。
【0124】
(ウイルス内のスルビビン核酸の送達形態)
本発明の核酸は、ウイルス送達媒体と共に構成することができる。ウイルス送達媒体は、場合によってアジュバント効果を有することができる。例えば、適切なウイルス粒子には、限定はしないが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ロタウイルス、またはワクシニアウイルスが含まれる。ウイルスの変異体または無能化形態、例えば、複製能力がないウイルスを使用することが好ましいことが多い。本発明の核酸を、ウイルスゲノムに挿入し、さらにウイルス粒子に組み込む。この核酸は、遺伝子治療の業界で周知のヘルパーウイルス系を使用して封入される。
【0125】
(細菌内のスルビビン核酸の送達形態)
本発明の核酸は、例えば、それぞれの教示を本明細書に参考として援用したGentschev他(2000)J.Biotechnol.、83:19〜26;またはStocker BAD(2000)J.Biotechnol.、83:45〜50に記載されているように、微生物宿主内で輸送するために構成することができる。核酸(例えば、DNA)輸送のために適した細菌には、限定はしないが、サルモネラ、シゲラ、リステリアまたは大腸菌が含まれる。変異体、弱毒型の細菌、例えば、栄養要求体を使用することがしばしば好ましい。例えば、適切なサルモネラ種には、限定はしないが、サルモネラチフィムリウム アロA、栄養要求体SL7202(例えば、Darji他、(1997)Cell、91:765〜775参照)、サルモネラチフィムリウム アロAdam-栄養要求体RE88(例えば、Heithoff他、(1999)Science、284:967〜70参照)、サルモネラチフィムリウムmsb-、purI栄養要求体VNP20009(例えば、Clairmont他、(2000)J.Infect.Dis.、181(6):1996〜2002、Low他、(2004)Methods Mol.Med.、90:47〜60参照)、またはサルモネラチフィムリウム原栄養体LT2(ATCC#700720)が含まれる。サルモネラによるDNAワクチン接種様式の例を図4に示す。
【0126】
(併用療法)
本発明のワクチンは、患者の治療に使用するその他の治療法と併用することができる。治療の一実施形態では、ワクチンは腫瘍の手術による切除と合わせて使用される。治療の実施形態の他の例では、ワクチンは、腫瘍の大きさを縮小するか、潜在的に腫瘍の脈管構造に損傷を与えるか、または腫瘍を免疫応答に感受性にさせる化学療法または放射線療法と組み合わせて使用される。本発明のワクチンとの併用療法に特に有用な化学療法薬または放射線療法薬には、限定はしないが、シクロホスファミドなどのDNA損傷薬、ゲムシタビンなどの抗代謝薬、およびタキソールなどの細胞骨格機能を破壊する薬剤が含まれる。このような薬剤は、腫瘍増殖を減少させ、腫瘍の脈管構造に損傷を与えることができ、理論と結びつけることは望まないが、腫瘍を免疫応答により感受性にさせると考えられる。
【0127】
併用治療では、化学療法および照射は一般的にワクチンの投与の前に行われ、効果的な抗腫瘍免疫応答の形成がこの前治療の残存の可能性がある効果によって損なわれることがないようにする。
【0128】
併用治療の他の実施形態では、ワクチン治療は、免疫サイトカイン治療と併用することができる。理論に結びつけることは望まないが、サイトカインが促進する免疫応答が腫瘍の微小環境に存在すると、ワクチンはより効果的な免疫応答を生じるものと考えられる。例えば、特に有用な免疫サイトカインは、Th1応答を惹起するもの、例えば、IL−2またはIL−12である。併用療法中に、例えば、患者にまず本発明のワクチンを投与して腫瘍に対する免疫応答を起こさせ、その後腫瘍を標的とし、腫瘍における免疫応答を支持することができる免疫サイトカインを投与することができる。好ましい免疫サイトカインは一般的に、例えば、腫瘍に特徴的な表面抗原、例えば、EpCAMを認識する抗体部分、または腫瘍の壊死性核、例えば、DNAの特徴を認識する抗体部分を有する。免疫サイトカインはまた、一般的に、IL−2、IL−12またはTh1応答を優先的に導くその他のものなどのサイトカイン部分を有する。本発明に適した免疫サイトカインは、内容を本明細書に参考として援用した米国特許第5650150号に記載されている。
【0129】
(実施例)
本発明の実施は、例示のためのみに本明細書に提示しており、いかなる方法によっても本発明を限定すると解決すべきではない以下の実施例によってより完全に理解されよう。
【0130】
実施例1; ニワトリスルビビンのクローニング、ニワトリスルビビン変種の作製、サルモネラで複製し、哺乳類細胞中でニワトリスルビビンを発現するプラスミドの構築
所望するDNA分子を単離する方法は、当業者によく知られている。例えば、所望するDNA分子の配列が公知の場合、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を通常使用するか、DNA分子は、商用供給業者、例えば、Blue Heron Biotechnology Inc.(Bothwell、WA)を使用して化学合成によって得ることができる。野生型ニワトリスルビビンをコードするDNAを得るために、RT−PCRを、ニワトリ肝臓から単離したポリA+mRNA(BD Biosciencesカタログ番号636307)で、Long Templates Kit用Superscript 1段階RT−PCR(Invitrogen、Carlsbad、CA)および1回目の逆転写および増幅では1組の外部プライマーを使用して、ならびにSupermix High Fidelity Kit(Invitrogen)および2回目の増幅用に1組の内部プライマーを使用して実施した。外部プライマーは、センスプライマー5’−GAAAAATGGCGGCCTATGC−3’(配列番号17)およびアンチセンスプライマー5’−CACCGTAGACCCAGAGGAACC−3’(配列番号18)であり、内部プライマーはそれぞれ、XbaI制限部位(下線部)を含むセンスプライマー5’−CTCTAGAATGGCGGCCTATGCTG−3’(配列番号19)およびXhoI制限部位(下線部)を含むアンチセンスプライマー5’−CCTCGAGACCTAAGGGCCCATGTTCTC−3’(配列番号20)である。増幅されたPCR産物は、ゲル電気泳動によって分離し、単離して、pCR2.1ベクター(Invitrogen)にクローニングして、その配列を確認した。野生型ニワトリスルビビンのヌクレオチドおよびアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号21および配列番号11としてあげた配列に示す。
【0131】
完全長野生型ニワトリスルビビンをコードする核酸断片を、哺乳類細胞で発現させるために適した発現ベクターに移した。例えば、XbaI/XhoIで消化した野生型ニワトリスルビビンをコードする配列の断片を、同様に消化したプラスミドpdCs(Lo他、(1998)Protein Engineering 11:495)に挿入し、野生型ニワトリスルビビン遺伝子をCMVプロモーターの制御下に配置した。
【0132】
他の例として、野生型ニワトリスルビビンをコードする断片を発現ベクターpdCs−huFc(Lo他、(1998)Protein Engineering 11:495)に挿入し、開始メチオニンを欠如した完全長野生型ニワトリスルビビンをヒトFcをコードする配列の下流に配置し、huFc−ChickenSurvivin融合タンパク質をコードするプラスミドを作製した。簡単に説明すると、PflMI/XhoI野生型ニワトリスルビビン断片(PflMI部位は野生型ニワトリスルビビンのヌクレオチド26にある)、SmaI/XhoIpdCs−huFcプラスミド断片(Lo他、(1998)Protein Engineering 11:495)および野生型ニワトリスルビビン配列の5’末端を修復するアダプターオリゴヌクレオチド2本鎖分子で3重連結を実施し、開始ATGコドンは除いた。2本鎖アダプター分子は、相補的オリゴヌクレオチド、センス5’−GGGTGCAGCGGCCTATGCTGAAATGCTGCCCAAGGA−3’(配列番号22)およびアンチセンス5’−TTGGGCAGCATTTCAGCATAGGCCGCTGCACCC−3’(配列番号23)オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって形成した。正確にコードされた融合タンパク質が作製されたことは、配列決定によって確認した。成熟ヒトFcγ1−ChickenSurvivin(ChickenSurvivinから開始Metを除いたもの)のヌクレオチド配列を配列番号24として挙げた配列に示す。
【0133】
muFc−ChickenSurvivinをコードする発現ベクターを得るために、pdCs−huFc−ChickenSurvivinからSmaI/XhoIで消化した野生型ニワトリスルビビン断片を、同様に処理したpdCs−muFc由来の発現ベクターに移して、ニワトリスルビビンをmuFcのCH3部分をコードする配列のすぐ下流にインフレームで配置した、muFcと野生型ニワトリスルビビンとのキメラ配列を生じさせた。この発現ベクターによってコードされたmuFc部分は、IgG2aアイソタイプのものであった。成熟muFcγ2−ChickenSurvivin(ChickenSurvivinから開始Metを除いたもの)のヌクレオチド配列を配列番号26に示す。成熟muFc−ニワトリスルビビンのアミノ酸配列を配列番号27に示す。
【0134】
ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするニワトリスルビビン配列を、突然変異誘発プライマーを組み込むPCRアプローチによって作製した。突然変異誘発センスプライマー(Mut1s)5’−CCTCTGAACTGATGTTGGGGGA≪G≫TTCTTGAAGCTGGAT−3’(配列番号28)およびアンチセンスプライマー(Mut1a)5’−AACTCCCCCAACATCAGTTCAGAGGGATCTTTCTG−3’(配列番号29)におけるコドン置換は、下線を引いて示してあり、EcoR1部位を除去するAからGへの置換は太字で示してある。野生型ニワトリスルビビンDNA鋳型の2種類の重複PCR断片をそれぞれ増幅用に作製し、上流断片は隣接プライマーPrls(5’−CCGCGGCCGCCCCCTTCACCATGGCGGCCTTGCTGAAATG−3’)(配列番号30)およびMut1aを使用して、下流断片は隣接プライマーPr1a(5’−AGATCTGGATCCCTAAGGGCCCATGTTCTCTATC−3’)(配列番号31)およびMut1sを使用して作製した。PCR反応を、プライマーPr1sおよびPr1aと一緒にして、得られたPCR断片で実施し、完全長産物を作製し、pCR2.1ベクター(Invitrogen)にクローニングして、その配列を確認した。ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードする断片は、NotI/BamHIで切り出して、同様に消化したpdCs発現ベクターに連結した。ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)のタンパク質配列は、配列番号12として示され、アミノ酸配列は配列番号62として示されている。
【0135】
実施例2; その他の非哺乳類由来のスルビビン遺伝子の合成および哺乳類発現ベクターの構築
本発明では、その他の非哺乳類脊椎動物から得られたスルビビン遺伝子およびタンパク質をワクチン組成物に使用する。例えば、フグ、サメ、ナマズまたはゼブラフィッシュなどの魚由来、またはアフリカツメガエルなどの両生類由来、またはアメリカワニ、アフリカワニ、カメ、トカゲまたはサンショウウオなどのは虫類由来、またはニワトリに加えてその他のトリ由来のスルビビン遺伝子を、実施例1に記載した方法に類似した方法または分子生物学の当業者に公知のその他の方法によって得る。いくつかの場合では、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ナマズおよびフグのスルビビン相同体(その配列はこの明細書に挙げた配列にある)などのスルビビン相同体は記載されており、PubMedなどの公的データベースから入手することができる。スルビビン相同体の遺伝子配列が公知の場合、対応するDNAは、商用DNA合成企業、例えば、Blue Heron Biotechnology(Bothell、WA)から入手できる。
【0136】
このような魚、両生類、は虫類および鳥類のスルビビン相同体を、実施例3、4および5の方法と類似の方法によってワクチン組成物に構成する。例えば、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ナマズおよびフグのスルビビン遺伝子は、コーディング配列の末端に5’XbaI部位および3’XhoI部位を付加した後、プラスミドpdCsに配置される。これは、例えば、実施例1の方法と類似のPCR法を使用して、またはリンカーが隣接した関連するコーディング配列の全遺伝子合成によって、実施される。次に、pdCs−スルビビンプラスミドを実施例3に記載した方法によってサルモネラ種に配置する。
【0137】
あるいは、スルビビン遺伝子は、実施例1におけるようにFc−スルビビン融合タンパク質を発現するプラスミドに構成し、Fc−スルビビン融合タンパク質をワクチンとして使用する。例えば、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ナマズまたはフグのスルビビン遺伝子は、コーディング配列の末端に5’XmaI部位および3’XhoI部位を付加した後、プラスミドpdCsに配置される。これは、例えば、実施例4の方法と類似のPCR法を使用して、またはリンカーが隣接した関連するコーディング配列の全遺伝子合成によって、実施される。次に、Fc−スルビビンプラスミドを高レベル発現に適した哺乳類細胞系、例えば、NS/0細胞に配置して、得られた分泌タンパク質を収集して、実施例4のように精製して、アジュバントと共に製剤化し、実施例5のようにヒトまたは動物のワクチン接種に使用する。
【0138】
実施例3; 本発明のプラスミドを含有するサルモネラ株の構築
ワクチン接種に使用するための本発明のプラスミドを有するサルモネラ株は、当業者によく知られている以下に概略を示した標準的エレクトロポレーション法によって作製した。例えば、プラスミドpdCs−ChickenSurvivinを弱毒化サルモネラチフィムリウムaroA株SL7207などのプラスミドを含まないサルモネラ株に形質転換した。その他の弱毒化サルモネラ株、例えば、遺伝子型aroA、dam−のRE88、遺伝子型msb−、purIのVNP20009、または原栄養体LT2株も使用することができる。好ましくは弱毒化されたサルモネラチフィムリウム株も使用できる。
【0139】
電気的コンピテント細菌を用意するために、サルモネラの対数増殖期の培養物50mlをOD600が少なくとも0.5で収穫し、氷上で冷却し、細胞を同量次いで半量の氷冷したHEPES1mMで洗浄し、再度ペレットにした。次に、細胞を冷却した10%グリセロール、HEPES1mM、1mlに再懸濁し、ペレットにして、最終的に、ゆっくりピペッティングすることによって冷却した10%グリセロール、HEPES1mM、0.5mlに再懸濁した。さらに使用するまで氷上に細胞を維持するか、小分けして−80℃で保存した。
【0140】
エレクトロポレーションについては、電気的コンピテントな細菌40マイクロリットルを予め冷却した1.5mlの微小遠心管に添加し、2ミクロリットルまでの量で200ngまでのスーパーコイルプラスミドpdCs−ChickenSurvivinと一緒にして、軽打によって混合した。細菌−DNA混合物を予め冷却した0.2cmのギャップの容器(Bio−Rad、Hercules、CA)に移し、2500V、25μF、200ohmの電気パルスでエレクトロポレーションし、一般的に時定数は4.5+/−0.2が得られ、それからSOC溶媒1mlを添加した。1時間37℃でインキュベーションした後、細胞0.1mlをLB抗生物質選択プレート(100マイクログラム/mlアンピシリン)に蒔いた。
【0141】
単一のコロニー単離物を得て、培養し、プラスミドDNAを単離して、制限分析によってその特性を確認した。新たに増殖させた検証用培養物に15%グリセロールを補給し、500マイクロリットルずつ新鮮な状態で凍結し、−80℃で保存した。
【0142】
実施例4; Fc−スルビビン融合タンパク質のトランスフェクション、発現、予備的な特徴付け、および精製
A.Fc−スルビビン融合タンパク質のトランスフェクションおよび発現
タンパク質発現を迅速に分析するために、プラスミド発現、例えば、muFc−ChickenSurvivinまたはmuFc−muSurvivinは通常、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用して一時的にトランスフェクションすることによって、ヒト胎児腎臓HEK293細胞(ATCC#CRL1573)などの細胞系に導入される。
【0143】
Fc−スルビビンタンパク質を発現する安定してトランスフェクションされたクローンを得るために、例えば、適切なプラスミドDNAをエレクトロポレーションによってマウス骨髄腫NS/0細胞に導入した。NS/0細胞を、熱不活性化牛胎児血清10%、グルタミン2mMおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補給したダルベッコ改変イーグル培地中で増殖させた。約5×106個の細胞をPBSで1回洗浄し、PBS0.5mlに再懸濁した。その後、直線化したプラスミドDNA10μgを細胞とGene Pulser容器(電極間隔0.4cm、BioRad、Hercules、CA)中において、氷上で10分間インキュベートした。エレクトロポレーションは、Gene Pulser(BioRad)を使用して0.25Vおよび500mFの設定で実施した。細胞を氷上で10分間回復させ、その後増殖培地に再懸濁し、2枚の96ウェルプレートに蒔いた。安定してトランスフェクションされたクローンを、メソトレキセート(MTX)100nMの存在下で増殖させることによって選択し、トランスフェクション後2日目に増殖培地に添加した。細胞を3日毎に2回から3回以上培地交換すると、2から3週間のうちにMTX耐性クローンが出現した。クローンの上清を抗FcELISAによって測定して、産生の多いものを同定した。産生の多いクローンを単離し、MTX100nMを含有する増殖培地で増殖させた。一般的に、H−SFMまたはCD培地(Invitrogen)増殖培地を使用した。
【0144】
あるいは、前述の方法と類似の方法によって、安定してFc−スルビビン融合タンパク質を発現するクローンをメソトレキセート選択によってヒト胎児腎臓HEK293細胞で得る。HEK293クローンを、10%FBSを補給したDMEM中で維持する。
【0145】
B.Fc−スルビビン融合タンパク質の精製および分析
Fcを含有する融合タンパク質の標準的な精製は、プロテインAに対するFcタンパク質部分の親和性に基づいて実施した。簡単に説明すると、Fc−スルビビン融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクションした細胞は通常、ローラーボトル内でMTX0.1μMを補給したH−SFM中で増殖させ、融合タンパク質を含有する細胞上清を予め平衡化した(リン酸化ナトリウム50mM、NaCl150mM、0.01%Tween80、中性pH)プロテインAセファロースファストフローカラムに添加した。カラムをこの緩衝液で徹底的に洗浄して、結合したタンパク質をpHの低い(pH2.5)前記と同様の緩衝液で溶出し、画分は1Mトリス塩基pH11でpH6.7にした。
【0146】
プロテインAセファロース−精製したFc−スルビビン融合タンパク質は、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析し、一般的に物質の大部分が凝集した状態であることが発見された。この結果は、スルビビンは通常細胞質タンパク質であるので予期できないことではなかった。理論に結びつけることは望まないが、スルビビンがFc−スルビビン融合タンパク質のFc部分によって強制的に分泌経路に入ると、特にスルビビンはジスルフィド結合で結合することができるシステインを数多く含有しているので、スルビビンの折り畳み構造は緩む。この凝集は、生物学的活性を妨げる可能性があるが、タンパク質をワクチンとして使用するとき、凝集は有害ではない。
【0147】
融合タンパク質の状態および純度は、還元SDS−PAGE電気泳動によって確認した。最も強いバンドが約45kDaに見られ、融合タンパク質の予測される大きさであった。多数の第2のバンドがまた存在しており、タンパク質が実際に凝集していることがさらに証明された。
【0148】
C.ELISA法
MTX耐性クローンの上清中および他の試験試料中のFc含有タンパク質生成物の濃度は、抗FcELISAによって測定した。以下に詳細に説明したような標準方法は本質的に以下の通りである。
i.コーティングプレート
ELISAプレートは、PBSに溶かしたAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson Immuno Research Laboratories、West Grove、PA)5μg/mLで、96ウェルプレート(Nunc−ImmunoプレートMxisorp)に100μL/ウェルでコーティングした。コーティングしたプレートを覆って、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートをPBSに溶かした0.05%Tween(Tween20)で4回洗浄し、PBSに溶かした1%BSA/1%ヤギ血清で、200μl/ウェルでブロックした。ブロッキング緩衝液で37℃で2時間インキュベートした後、プレートをPBSに溶かした0.05%Tweenで4回洗浄し、紙タオルに打ちつけて乾燥させた。
ii.試験試料および2次抗体とのインキュベート
試験試料は、適切ならば試料緩衝液(1%BSA/1%ヤギ血清/0.05%TweenのPBS溶液)で希釈した。標準曲線は、濃度がわかっているキメラ抗体(ヒトFcを含む)を使用して作成した。標準曲線を作成するために、試料緩衝液で連続希釈を行い、125ng/mLから3.9ng/mLの範囲の標準曲線を得た。希釈した試料および標準物を100μL/ウェルでプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBSに溶かした0.05%Tweenで8回洗浄した。次に、各ウェルに、試料緩衝液で約1:120000に希釈した2次抗体、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research)100μlを添加した。使用する2次抗体の正確な希釈は、各ロットによって変化させる。37℃で2時間インキュベーションした後、プレートをPBSに溶かした0.05%Tweenで8回洗浄した。
iii.発色
基質溶液をプレートに100μL/ウェルで添加した。基質溶液は、OPD(o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)30mg(1錠)を、新たに添加した過酸化水素0.03%を含有する0.025M クエン酸/0.05M Na2HPO4緩衝液、pH5、15mLに溶解することによって調製した。色を室温で暗所において約30分間発色させた。発色時間は、コーティングしたプレートのロットの違い、2次抗体などに応じて変化させる。反応は、4N硫酸を100μL/ウェルで添加することによって停止させた。490nmおよび650nmの両方に設定し、490nmのODから650nmの背景ODを差し引くように設定されたプレートリーダーでプレートを読み取った。
【0149】
実施例5; ワクチン輸送および腫瘍曝露の方法
C57Bl/6およびBalb/cマウス(7〜8週齢)は、Jackson Laboratories(Bar Harbour、ME)から購入した。マウスは、EMD Lexigen Research Center Corp.、Billerica、MAで飼育し、動物実験は全て、承認された実験動物施設作業手順に従って実施した。
【0150】
サルモネラワクチン試料を調製するために、LB/AMPの培養物5mlを形質転換細菌単一コロニーに接種し、37℃で一晩増殖させ、2000×gで10分間遠心し、PBSで1回洗浄して、その後PBS2mlに再懸濁した。培養物をPBSで1:10に希釈してOD600を測定し、(培養物の連続希釈物をLB/アンピシリンプレートに蒔いて測定したように)1OD600単位は、約109細菌/mlに対応すると仮定して、培養物の濃度をPBSで109細胞/mlに調節した。経口強制投与によるワクチン接種は、胃に通した20G×1.5″使い捨て栄養針を装備した1mlシリンジで実施した。マウスは、胃酸を中和するために10%重炭酸ナトリウム0.1mlを経管投与して予め処理し、5分後にマウスにワクチン試料0.1ml(細菌108個)を投与した。
【0151】
ワクチンの効果は、哺乳類スルビビンを発現し、MHCにスルビビン由来抗原を提示する腫瘍細胞系で測定した。以下の実施例で使用した腫瘍細胞系は、マウス肺癌細胞系D121、マウスリンパ腫細胞系A20、マウス乳癌細胞系4T1、マウスルイス肺癌細胞系LLC、マウス結腸癌細胞系CT26およびマウス黒色腫細胞系B16であるが、哺乳類スルビビンを発現し、スルビビン由来抗原を提示しているその他の細胞系を使用することもできた。いくつかの実施形態では、「KSA」(例えば、LLC/KSA)と称されるヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように操作された腫瘍細胞系を使用した。スルビビン発現は、ウェスタンブロット、標準的方法によって便利に評価される。ヒトおよびマウススルビビンに対するウサギポリクローナル抗体(AHP604、Serotec、Raleigh、NC)は、1:500に希釈して使用した。
【0152】
以下の実施例で使用した腫瘍細胞系は、以下の培地で維持した。D121は、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)、1%L−グルタミン、1%ピルビン酸Naおよび1%非必須アミノ酸を補給した10%牛胎児血清(FBS)を含むDMEM中で増殖させた。A20および4T1は、10%FBS、1%P/S、1%L−グルタミンを含むRPMI中で増殖させた。LLCは、10%FBS、1%P/S、1%L−グルタミンを含むDMEM中で増殖させた。CT26は、10%FBS、1%P/S、1%L−グルタミンおよび1%ビタミンB16媒体を含むDMEM中で増殖させた。CT26/KSA培地はまた、1%ピルビン酸Naおよび1%非必須アミノ酸を含んだ。さらにEpCAMを発現する細胞系の培地はまた、G4181μg/mlを含有した。
【0153】
ワクチンのマウス生存率または処理したマウスの肺腫瘍罹患に対する効果を評価するために、腫瘍細胞を静脈内に投与した。腫瘍細胞系をPBSで洗浄して、3分間トリプシン処理して、トリプシンを調整培地で中和した。細胞をペレットにして、PBSで、またはD121細胞の場合は、PBS、1%牛血清アルブミン、EDTA50μMで2回洗浄した。単一細胞の懸濁液は、複数の使い捨て100μMナイロンメッシュの篩(BD Falcon)上に再懸濁した細胞を添加することによって得た。マウスの尾静脈に、27ゲージの針を使用してマウス1匹当たり200μlの量の細胞懸濁液を静脈内注射した。肺を取り出し、重量を測定して、罹患した転移腫瘍と比較するために、腫瘍によって覆われている肺の領域割合を評価することによって記録した。
【0154】
実施例6; ニワトリスルビビンをコードするDNAで免疫すると哺乳類スルビビンと交差反応する抗体が生じる
ニワトリスルビビンをコードする核酸をワクチン接種すると哺乳類スルビビンと交差反応する抗体が生じ得るかどうかを試験するために、以下の実験を実施した。Davis((1996)Adv.Drug Delivery Reviews 21:33)に記載された免疫方法を実験の基礎として使用した。7〜8週齢メスBalb/cマウス(処理群当たりn=2)を、野生型ニワトリスルビビン(ChSur)またはmuFc−ChickenSurvivin(FcChSur)をコードする発現プラスミドあるいはmuFc−癌胎児抗原(CEA)(FcCEA)をコードする対照発現プラスミドで1回(1日目)または3回(1、21および46日目)免疫した。マウスの前脛骨筋に心臓毒の10μM溶液を100μl注射し、注射して5日後にプラスミドDNA100μgを注射した。62日目に、マウスから採血し、血清のマウススルビビンに対する抗体を測定した。連続希釈した血清を、muFc−muSurvivin融合タンパク質でコーティングしたELISAプレートに添加して、このプレートを洗浄して、試料をペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG2a抗体とインキュベートした。ELISAは、比色測定法によって陰性対照の未処理のマウスと比較して抗スルビビン抗体の存在を検出した。表2に示した結果は、スルビビンDNAワクチンがマウススルビビンに対する抗体反応を惹起するのに効果的であるが、一方対照DNAワクチンは効果的ではないことを示している。
【0155】
【表2】
【0156】
マウス抗スルビビン抗体をウェスタンブロットまたはELISAのいずれかでヒトスルビビンに対する交差反応性をさらに試験する。ニワトリスルビビンワクチン組成物でマウスをワクチン接種することによって得られたマウススルビビン抗体はまた、ヒトスルビビンタンパク質に結合すると予測される。
【0157】
実施例7; スルビビンをコードするDNAを哺乳類にワクチン接種すると、癌細胞に対するT細胞免疫応答が惹起される
サルモネラをベースにしたスルビビンワクチンが癌細胞に対するT細胞応答を刺激する能力を測定するために、以下の実験を実施した。Balb/cマウスに、実施例5で説明したように、AroA変異(Medina他(1999)Infection and Immunity、pp.1093〜1099)、およびマウススルビビン(n=2)または野生型ニワトリスルビビン(n=2)をコードする哺乳類発現ベクターも有するSL7207サルモネラ株を0日目および14日目にワクチン接種した。未処理の免疫していないマウス(n=2)をこの実験の陰性対照として使用した。
【0158】
1回目のワクチン接種の1ヵ月後に、各群の脾細胞を取り出し、収集した。CD8+T細胞を精製し、本質的に以下に説明したように、マウスIFNγELISpot測定の反応体として使用した。この測定において、A20および4T1腫瘍細胞系をエフェクター細胞として使用した(図6)。4T1細胞は、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように操作したが、これは実験に関係ないと考えられた。対照動物よりもワクチン接種したマウスには著しく多くのIFNγ反応性T細胞が存在した。マウスまたはニワトリスルビビン発現プラスミドを含有するサルモネラによるワクチン接種は、様々な腫瘍細胞系に応答してIFNγを分泌する前駆体T細胞の数の増加と相関した。
【0159】
同様のワクチン接種プロトコールをC57Bl/6マウスでも実施した。マウスIFNγElispot測定では、これらのマウスの脾臓のCD8+T細胞をルイス肺癌細胞(LLC)またはB16黒色腫細胞と共にインキュベートした。LLCおよびB16細胞は、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように操作したが、これは実験に関係ないと考えられた。両方のワクチンは、未処理C57Bl/6動物と比較して、MHCクラスIの場合に発現した標的抗原のペプチドに特異的な反応性T細胞の相対数の増加をもたらした(図5)。SL7207ニワトリスルビビンをワクチン接種したマウスでは、SL7207マウススルビビンを接種したマウスよりも、LLC腫瘍細胞およびB16細胞の両方に対して産生したIFNγ分泌細胞が著しく多かった。
【0160】
考え合わせると、これらの結果は、両方のワクチン接種の取り組みは、MHCクラスIエピトープの場合に、哺乳類スルビビンペプチドを提示する癌細胞と反応するCD8+T細胞前駆体の数の増加を導くことを示している。これらの所見はまた、ニワトリスルビビンによる免疫は、耐性の破壊および哺乳類スルビビンを発現する標的細胞に特異的な免疫応答の発生についてより効力があり得ることを示唆している。
【0161】
この実施例および以下の実施例のいくつかにおいて、サルモネラチフィムリウムSL7207株を使用したが、サルモネラチフィなどのその他のサルモネラ株を使用することができた。ヒトにおいてサルモネラチフィでヒトを治療するとき、一般的に、場合によってその他の弱毒化変異を有する栄養要求体を使用することが好ましい。
【0162】
マウスIFNγELISpot測定プロトコール
ELISpot測定法は、本質的にPower他に記載されたように実施した(Power他、(1999)J.Immunol.Meth.227:99〜107)。CD8+T細胞は、MiltenyiCD8+T細胞単離キット(Miltenyi Biotech、Auburn、CA)を使用して脾細胞から単離し、製造業者の指示に従ってAutomacs磁気ビーズ選別装置で選別した。CD8+T細胞は、IL−2(R&D Systems)0.7ng/mlを補給したRPMI中で維持した。24時間以内に、生細胞をLympholyte(登録商標)勾配で精製し、最終濃度106細胞/mlになるように再懸濁した。CD8+T細胞を105細胞/ウェルから連続的に希釈して、抗マウスIFNγ抗体5μg/mlで予めコーティングしたマウスIFNγELISpotプレート(BD Biosciences、San Jose、CA)に蒔いた。全腫瘍細胞系を5×104細胞/ウェルの濃度で添加した。18〜24時間後、細胞を除去し、抗IFNγコーティング膜をPBSに溶かした0.05%Tweenで洗浄して、2%牛胎児血清を含むPBSに溶かしたIFNγに対する2次ビオチン化抗体とインキュベートし、結合した2次抗体をストレプトアビジン結合HRPおよびAEC(3−アミノ−9−エチルカルバゾール)酢酸溶液に曝露することによって視覚化した。IFNγ分泌CD8+T細胞に対応するスポットは、Zeiss KS ELISpotシステム(Muenchen−Hallergmoss、Germany)を使用して定量した。
【0163】
実施例8; ヒト由来免疫細胞のニワトリスルビビンによるin vitro免疫
非哺乳類スルビビン配列、例えば、ニワトリスルビビン配列がヒトにおいて抗スルビビン応答を惹起する能力を確かめるために、in vitroにおける免疫測定法を、患者の末梢血細胞(huPBMC)を使用して実施する。根本的に、樹状細胞(DC)およびT細胞はhuPBMCから精製し、DCに選択した抗原を負荷して、T細胞と共にインキュベートし、当業者によく知られている標準的方法を使用して、例えば、ヒトスルビビンを発現する標的細胞の形態で、スルビビンペプチドへの曝露に対するT細胞の応答を測定する。
【0164】
例えば、(HLA−A2+患者のhuPBMC由来で、IL−4およびGM−CSFを使用して得られた)DCをHLA−A2+対立遺伝子のエピトープであることが知られている対照スルビビンペプチド配列、例えば、LMLGEFLKL(配列番号6)でパルス標識するか、実験用ペプチド、例えば、(i)30マーニワトリスルビビン由来ペプチドGCAFAALQKDPSELMLGEFLKLDRERAKNV(配列番号32)、(ii)野生型ニワトリスルビビンペプチド、あるいは(iii)ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)(配列番号12)などの変異ニワトリスルビビンペプチドでパルス標識する。あるいは、これらの配列を発現するDNA構築物をDCに導入する。ペプチドもしくはタンパク質とのインキュベーション、または導入したDNAの発現の後で、DCを照射し、外部から添加した過剰なペプチドを除去するために洗浄し、次いでIL−7およびIL−2の存在下で合成T細胞と混合する。培養したT細胞を新たに処理し、照射したDCと共に混合することによって、T細胞を週1回の頻度で刺激する。
【0165】
一測定において、スルビビン反応T細胞の存在は、基本的に実施例7に説明したように、IFNγELISpot測定法によって検出する。あるいは、従来の[51Cr]放出測定法を使用して、MHCクラスI分子の場合においてスルビビンペプチドを提示している標的腫瘍細胞に[51Cr]を負荷し、これらのT細胞とインキュベートして、腫瘍細胞溶解物を[51Cr]放出によって定量して、これらの細胞の機能的活性を評価する。スルビビンを発現しない対照標的細胞系は、陰性対照として使用する。実験用調製物は、スルビビンに応答するT細胞の生成において少なくとも対照調製物と同様に有効であることが予測され、ニワトリスルビビン由来配列は、ヒトスルビビンを発現する細胞に対する特異的免疫応答を対象とするエピトープとして役立ち得ることを示している。
【0166】
実施例9; 肺癌に対するワクチンの効果
腫瘍罹患後まで2度目の治療を遅延させた場合、ワクチンによって惹起された免疫応答が転移腫瘍の増殖を阻害できるかどうかを決定するために、以下の実験を実施した。
【0167】
0日目に、C57Bl/6マウス(治療条件当たりn=5)に、10%重炭酸ナトリウム100μl、続いて変異ニワトリスルビビンをコードするプラスミド(ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G))、muFc−ChickenSurvivinをコードするプラスミド、または2個の転写単位、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするものとアジュバントとして融合タンパク質muFc−muIL2をコードするものを有するプラスミドを含有するSL7207サルモネラ108個を経口的にワクチン接種した。対照マウスはPBSで治療した。
【0168】
マウスに経口的に10%重炭酸ナトリウム100μLを予め投与し、SL7207サルモネラをPBSに溶かして投与した(前述のように調製した)。初回ワクチン接種の10日後に、マウスにPBS200μlに溶かしたLCC/KSA細胞1×106個の単一細胞懸濁液を静脈注射して、同濃度のサルモネラを使用して2回目の経口ワクチン接種を行い追加免疫した。マウスを32日目に殺処分した。
【0169】
一般的な結果を以下の表に示す(表3)。この結果は、どちらのニワトリスルビビン構築物の発現ベクターを有しているサルモネラでワクチン接種しても、転移性肺癌に対して同様の防御が得られることを示している。
【0170】
【表3】
【0171】
表3では、(*)腫瘍罹患は、0〜3(0=肺に腫瘍がない、1=腫瘍罹患<5%、2=腫瘍罹患5〜50%、3=肺の>50%が腫瘍に覆われている)の等級で得点付けした。イタリック体および太字の腫瘍の得点は、尾の基部に肺以外の腫瘍の所見があるマウスを示している。
【0172】
実施例10; SL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種すると死亡時期が著しく遅延する
スルビビン発現プラスミドを有するサルモネラSL7207によるワクチン接種が腫瘍罹患を減少させ、生存率を増加させるかどうかを決定するために、Balb/cマウス(治療条件当たりn=5)に、PBS、マウススルビビン発現プラスミドを有するSL7207サルモネラ、または野生型ニワトリスルビビン発現プラスミドを有するSL7207サルモネラを、前述のように経口的な経管投与によって2週間間隔で2回投与した。2度目のワクチンを接種してから2週間後に、マウスにCT26/KSA同系細胞(ヒトEpCAMタンパク質も発現していたが、実験には関係ないと考えられた)5×105細胞/mlのPBS懸濁液200μlを静脈注射した。マウスの生存率をモニターした。図7に例示したように、PBSまたはSL7207マウススルビビンによる治療と比較して、SL7207ニワトリスルビビンで治療したマウスにおける生存特性は延長した。
【0173】
実施例11; スルビビン発現ベクターを有するサルモネラでワクチン接種した結果としての、癌転移を有する哺乳類の生存期間の延長
既に癌が存在している哺乳類にスルビビン発現プラスミドを有するサルモネラをワクチン接種することができるかどうかを解決するために、以下の実験を実施した。この実験では、0日目に、C57Bl/6マウスを10%重炭酸ナトリウム0.1mlで予め治療して、次に(前述のように調製した)PBSに溶かしたマウススルビビン(n=5)またはChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)(n=5)のベクターを含有するSL7207サルモネラ約1億個を経口的にワクチン接種した。対照マウスには、重炭酸ナトリウムおよびPBS(n=5)を経管投与した。初回ワクチンを接種してから10日後に、マウスにLLC/KSA細胞(ヒトEpCAMタンパク質も発現していたが、実験には関係ないと考えられた)1×106細胞のPBS懸濁液200μlを静脈注射した。腫瘍を注射してから4時間後に、免疫応答を刺激するために投与した同濃度のサルモネラを使用して、全マウスに2度目の経口ワクチン接種を追加投与した。
【0174】
腫瘍曝露後12週間にわたって生存を追跡した。対照マウスは全て、腫瘍投与後35日以内に死亡した。スルビビン構築物の1種でワクチン接種したマウスは全て、35日目でもまた生きていた。SL7207ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)治療群のマウスは全て、LLC/KSAを注射して10週間以内に死亡した。SL7027マウススルビビンで治療した群では、3ヵ月後も生存した動物が1匹いた。2つの治療群の間には生存期間の有意差はなかった(p=0.243)。
【0175】
図8に、LLC/KSA細胞による腫瘍曝露に対するワクチン接種の生存曲線を示した。
【0176】
実施例12; スルビビン配列における置換を評価するための予測アルゴリズムの使用
本発明のスルビビン変種が潜在的抗原エピトープを損なうかどうか、または逆に、準優位な抗原エピトープが潜在的に改善され得るかどうかを評価するために、予測アルゴリズムを使用することができる。例えば、huSurvivin変種huSur(R18E、H77A、C84A、A128P)(配列番号84)を、タンパク質分解酵素切断部位予測のために公的に使用できるデータベース、例えば、NetChop(www.cbs.dtu.dk/NetChop)および主要MHCIHLAスーパータイプのエピトープ予測のためのデータベース、例えば、SYFPEITHI(www.syfpheithi.de)を使用して分析した。NetChopを使用すると、切断パターンはR18E、H77A、C84A、A128Pの置換をヒトスルビビンに導入しても(「S」は、閾値0.8を上回る潜在的切断部位を示す)、以下のように、大幅には変化しないことがわかる。
【0177】
【表4】
【0178】
HLA−A0201サブタイプに結合することが既に同定された抗原エピトープは、太字および下線で示してあり、NetChopでこのエピトープのC末端切断部位を予測する。
【0179】
SYFPEITHIを使用して、ヒト集団の少なくとも約85%に及ぶHLAスーパータイプA2、A3およびB7に結合するエピトープについてhuSur(R18E、H77A、C84A、A128P)(配列番号84)配列を分析する(Sette他、(1999)Immunogen.50:201〜212)。野生型huSurvivinと比較した場合、上位の順位付けされるエピトープはHLA−A0201およびHLA−A03では同一であったが、HLA−B0702では同一ではなく、このスルビビン変種配列は、H77Aの置換によってより好ましいC末端アンカー残基が実現するため、上位に順位付けされるエピトープを生じる。したがって、ペプチドEPDDDPIEEA(配列番号33)は、ペプチドEPDDDPIEEH(配列番号34)より好ましい抗原ペプチドであり得る。
【0180】
NetChop分析から示唆されるように、P47LおよびQ56Lなどの置換をさらにhuSur(R18E、H77A、C84A、A128P)に導入することができ、この配列を上記のようにSYFPEITHIによって再分析することができる。HumanSurvivinの配列(R18E、H77A、C84A、A128P)を配列番号84に示す。HumanSurvivinの配列(R18E、P47L、Q56L、H77A、C84A、A128P、I135P)を配列番号56に示す。具体的に、変異P47Lは、CPTENEPDL(配列番号2)のアンカー位置2を強化し、CLTENEPDL(配列番号35)に変化させる。
【0181】
同様に、置換Q56Lによって、AQCFFCFKEL(配列番号37)と比較して2番目の位置が好ましいアンカー残基であり、HLA−A0201に対する結合力がかなり弱いことが予測されるペプチドALCFFCFKEL(配列番号36)が生成する。野生型huSurvivinと比較すると、Q56L変種スルビビン配列は、確認されているhuSurvivin抗原ペプチドELTLGEFLKL(配列番号38)と同じ強さの抗原であることが予測されるペプチドを生じる(Andersen他、(2001)Cancer Res.61:869〜872)。
【0182】
本発明では、このような分析は、例えば、準優位なエピトープに対する応答を促進することによって、CTLが寛容化されにくい抗原性の強いペプチドを含有するスルビビン配列をもたらすことができる。
【0183】
実施例13; 非哺乳類スルビビンを発現するベクターを含有するワクチンによるヒト癌患者の治療
本発明では、癌を有するヒトを以下のように本発明のワクチンで治療する。まず、治療のための候補者を、癌細胞がスルビビンを過剰発現しているかどうかを試験する診断薬で場合によって分類する。例えば、腫瘍試料は、抗スルビビン抗体による免疫蛍光法によって分析することができる。あるいは、候補患者の腫瘍試料は、逆転写酵素PCRによってスルビビンmRNAレベルを検出する遺伝子チップとのハイブリダイゼーション、またはスルビビンmRNAまたはタンパク質レベルを検出するその他の任意の方法によって分析することができる。患者はまた、その他の診断試験、例えば、MHC発現レベル、T細胞媒介性の死滅に関与することが知られているシグナル伝達分子のレベル、または機能は知られていないが、免疫療法に対する応答性と関連することが経験的に知られている分子のレベルの試験に基づいた応答の可能性で分類することができる。
【0184】
腫瘍のほとんどの手術切除を行ったヒト患者を選択することは特に有用である。これによって、前述のように腫瘍の診断分析が可能になる。さらに、理論に結びつけることは望まないが、大きくて、嵩のある腫瘍は単純に免疫系を徐々に高める可能性があるので、手術によって切除した後、治療することが有利である。さらに、腫瘍は、小さな転移より大きな塊において高濃度をもたらす拡散性の免疫抑制因子を分泌する。
【0185】
治療のために選択された患者は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、神経膠芽腫、頭部および頚部癌およびその他の癌を有する。
【0186】
適切に診断して患者を選択した後、非哺乳類スルビビン発現ベクター(哺乳類細胞で非哺乳類スルビビンを発現するベクター)を有するサルモネラ株で患者を治療する。例えば、患者に、哺乳類プロモーターからニワトリスルビビンを発現するプラスミドを有する生きたサルモネラLT2約109個から1013個を投与することができる。好ましくは、約1010〜1012個の細菌を使用し、より好ましくは約2×1011個のサルモネラを投与する。サルモネラ株は好ましくは栄養要求性であり、実施例で触れた株のいずれも使用することができる。
【0187】
胃の酸性環境におけるサルモネラ細菌の生存問題を解決するために、2種類の他の方法を使用する。第1の方法では、患者はまず、安全かつ有効な量の重炭酸ナトリウムを摂取して、胃酸を中和する。第2の方法では、胃を通過して、小腸で溶解するように腸溶性コーティングされた丸剤としてサルモネラ細菌を製剤化する。
【0188】
副作用には、サルモネラチフィムリウム株を使用するときの軽い下痢が含まれ、サルモネラチフィムリウムは天然ではマウスの病原体であり、通常ヒトには病原性を持たない。このような軽い下痢を対症療法的に治療することが好ましいが、抗生物質で治療することはワクチン作用を無効にする可能性があるので、好ましくない。
【0189】
実施例14; 腫瘍曝露に対するワクチン接種の時期
腫瘍曝露の時間に対するニワトリスルビビンのワクチン接種の時期の重要性を試験するために実験を実施した。マウスに、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするプラスミドを含有するサルモネラを経口から経管投与した。投与計画を図9に示す。図示したように、10日目のLLC/KSA細胞の静脈内曝露および29日目の肺癌罹患の評価に対して、経口からの経管投与を1日目および13日目、7日目および13日目、10日目および18日目、または13日目および21日目に実施した。図10に示したように、ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするプラスミドを含有するサルモネラの経口からの経管投与は、使用した投与計画に関係なく肺癌罹患の減少に有効であった。ワクチンの効果は、初回ワクチンを腫瘍曝露の3日より前に投与したとき、より顕著であった。
【0190】
肺転移に対する様々な投与計画の効果も評価した。肺の転移は以下のように採点した。肺表面の50%超が腫瘍に覆われているマウスのスコアは3であり、肺表面の5〜50%が腫瘍に覆われているマウスのスコアは2であり、肺表面の5%未満が腫瘍に覆われているマウスのスコアは1であり、肺に腫瘍のコロニーが視認できないマウスのスコアは0であった。図10に示したように、腫瘍曝露前の最初の投与を含む投与計画は、後に投与する計画またはChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)で経口的に免疫されていないマウスと比較して、肺転移のスコアが減少する傾向があった。
【0191】
実施例15; スルビビンワクチンと化学療法の併用治療
スルビビンに対するワクチンと化学療法の組み合わせの効果も評価した。試験方法を図11に示す。図に示したように、完全な治療を受けたマウスを、野生型ニワトリスルビビンをコードするプラスミドを有するサルモネラで1日目に刺激した。LLC/KSA細胞を4日目に静脈内に導入(曝露)した。シクロホスファミド(CTX)を11日目に腹腔内投与して、インドメタシンを12〜15日目に投与した。15日目に、マウスに野生型ニワトリスルビビンプラスミドを有するサルモネラで2回目の経口による経管投与(追加免疫)を行い、肺癌罹患を28日目に評価した。
【0192】
その他のマウスは治療の一部のみを受けた。例えば、初回免疫、曝露、および追加免疫のみを受けた(PCB)、曝露、CTXおよびインドメタシンは受けたが初回または追加免疫は受けなかった(C(CI))、初回、曝露、CTXおよびインドメタシンは受けたが追加免疫は受けなかった(PC(CI))、または曝露、CTX、インドメタシン、および追加免疫は受けたが初回免疫は受けなかった(C(CI)B)。
【0193】
図12に示したように、初回免疫、曝露および追加免疫のみを受けたマウスは腫瘍罹患の軽減を示し、陰性対照と比較して肺転移スコアが減少した。CTXおよびインドメタシンは肺転移スコアに対して同様の効果を有し、腫瘍罹患がより全体的に軽減した。最低の腫瘍罹患および最低の肺転移が、少なくとも初回免疫およびCTXおよびインドメタシンを受けたマウスで認められ、ワクチン治療および化学療法が協同して腫瘍罹患および肺転移を軽減し得ることを示している。
【0194】
実施例16; 非哺乳類スルビビンをコードするDNAによるサルモネラをベースにしたワクチン接種は、活性化された記憶表現型のT細胞の出現と相関する
末梢血リンパ球は、以前の実施例で説明したPCB、CI、PC(CI)、C(CI)Bまたは完全な(PC(CI)B)治療を受けたマウスから単離した。この治療が活性化した記憶T細胞の出現を誘導したかどうかを決定するために、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。記憶T細胞の有無は、CD44の発現が多く、CD3の発現が少ない細胞(CD4明CD3低)をモニターすることによって決定した。図13に示したように、初回免疫−曝露−追加免疫(PCB)プロトコールで治療されたマウスは、活性化した記憶T細胞の出現を示すCD44明発現プロファイルを有するT細胞を示した。ニワトリスルビビンをコードするプラスミドを有するサルモネラによる免疫を含むプロトコールのそれぞれにおいて、同様のプロファイルが認められたが、化学療法のみで治療されたマウス(および陰性対照のマウス)では認められなかった。
【0195】
実施例17; 免疫サイトカインと非哺乳類スルビビンをコードするDNAによるワクチン接種との併用治療
非哺乳類スルビビンを使用したワクチン接種が免疫サイトカインをベースにした腫瘍の治療の効果を増強するかどうかを測定するために、1日目にマウスの皮下にLLC/KSA細胞を曝露し、図14に示した計画に従って治療した。ChickenSurvivin(N97E、T99M、V100L、Q101G)をコードするプラスミドを含むサルモネラを経口的に経管投与されたマウスは、4、11、18および25日目に投与された。この実験で使用するために選択された免疫サイトカインは、米国特許出願公開第2003−0157054号明細書に記載されているように、IL−2と脱免疫された抗EpCAM抗体との融合物であった。免疫サイトカインを投与されたマウスは、8、9および10日目に免疫サイトカイン20μgを静脈内に投与された。
【0196】
経時的に得られた腫瘍体積を図15に示す。ワクチン接種も免疫サイトカインによる治療も経時的な腫瘍増殖を遅らせるのに十分であった。ワクチンおよび免疫サイトカインの両方を投与されたマウスはさらに良好で、ワクチン接種単独または免疫サイトカイン治療単独と比較して腫瘍増殖速度のさらなる抑制が示された。
【0197】
実施例18; 本発明のスルビビン構築物の生物学的活性の評価
本発明のある種のスルビビン変種は、生物学的に不活性であるように設計されている。したがって、このタンパク質自体は、細胞内において、野生型スルビビンタンパク質によって妨害され得るアポトーシスを通常は誘導する条件下で発現しても、アポトーシス阻害活性を示さない。同様に、このタンパク質は、アポトーシス誘導剤の作用から細胞を防御する内在性野生型スルビビンの活性を妨害しない。
【0198】
スルビビンタンパク質が生物学的に不活性であることは、BaF3リンパ球前駆細胞を使用して試験することができる。BaF3細胞は、増殖のためにIL−3に依存しており、増殖因子を除去するとアポトーシスを受けるが、スルビビンの活性によって対抗することができる(例えば、Ambrosini他(1997)Nat.Med.3:917〜921)。BaF3細胞を、本発明のスルビビン構築物、野生型スルビビンタンパク質または空の挿入物、および外部から導入されたDNAを発現する細胞をモニターできるようにGFPなどのマーカータンパク質を追加的にコードしているプラスミドでトランスフェクションする。トランスフェクションから回復した後、IL−3を培地から除去し、BaF3細胞のアポトーシスを、例えば、1、2、3および4日目に%生存率を評価するか、または当業者によく知られているアポトーシスを示す測定法、例えば、核形態学(DNA凝縮および断片化)によってモニターする。野生型スルビビンをトランスフェクションされたBaF3細胞のほとんどが4日間生存する一方、空のプラスミドまたは本発明のスルビビン変種をトランスフェクションされたBaF3細胞の生存は維持されず、ほとんどがアポトーシスの指標となる核形態を示した。
【0199】
本発明のスルビビン構築物が生物学的に不活性であることはまた、HeLa細胞を使用して試験することができる。HeLa細胞は、著しいレベルで内因性スルビビンを発現し、特定の変異体、例えばhuSurvivin(C84A)はスルビビンのドミナントネガティブ型(DNスルビビン)として作用し、これらの細胞でアポトーシスを誘導することが知られている(例えば、Li他(1999)Nat.Cell Biology 1:461〜466参照)。HeLa細胞を、外来から導入されたDNAを発現する細胞をモニターできるように、GFPなどのマーカータンパク質に加えて、DNスルビビンまたは本発明のスルビビン構築物をコードするプラスミドでトランスフェクションする。トランスフェクションから回復した後、HeLa細胞を48時間増殖させ、固定し、核をDAPIで染色して、細胞の核形態を免疫蛍光顕微鏡によって分析する。DNスルビビンをトランスフェクションされたHeLa細胞が一般的にアポトーシスを受けた特徴、例えば、凝縮し、断片化した核を有する一方、本発明のスルビビン構築物をトランスフェクションされたHeLa細胞は正常に増殖することが発見されている。
【0200】
実施例19; 本発明のスルビビン構築物の安定性の評価
スルビビン構築物の安定性を評価するために、発現したスルビビンタンパク質の量を標準に対して測定できるように、GFPなどのマーカータンパク質を追加的に発現するベクターから発現させることができる。BHK細胞などの組織培養細胞を一時的にトランスフェクションして、スルビビン構築物の発現レベルを、マーカー発現で正規化したウェスタンブロットで測定する。使用可能な抗スルビビン抗体がこのタンパク質を認識しないならば、これらの変種のC末端にタグ付けしたものを使用することができる。野生型スルビビンと比較して、本発明のある種の好ましい改変されたスルビビン構築物、例えば、多重不安定化変異を有するものは、はるかに少ないレベルで検出されることが発見された。
【0201】
安定状態レベルの評価に加えて、分解速度を経時変化実験で評価することができる。翻訳阻害剤シクロヘキシミドを細胞に0時に添加し、細胞を4時間インキュベートする。0、2、5、10、20、60および240分後に試料を取り出し、ウェスタンブロット分析する。改変されたスルビビン構築物と野生型スルビビンとの間の速度を比較するために、量を0時点で正規化する。本発明のある種の好ましい改変されたスルビビン構築物は、野生型スルビビンよりも迅速に分解することがわかる。
【0202】
プロテアソーム媒介経路によって分解が進行するかどうかを評価するために、細胞をプロテアソーム阻害剤、例えば、ラクタシスチン(2時間、100μM)の存在下または非存在下で場合によってインキュベートし、スルビビンレベルをウェスタンブロットによって再度測定する。ラクタシスチンの存在下では、本発明のスルビビン変種および野生型huSurvivinは同レベルで検出されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】スルビビン相同体のタンパク質配列のアラインメントを示す図である。
【図2】様々なスルビビン相同体のBIRドメインを比較するためのアミノ酸のパーセント同一性を示した図である。
【図3】無脊椎動物のBIRドメイン配列とヒトスルビビンとのアラインメントを示す図である。
【図4】スルビビンポリペプチドをコードしているプラスミドを有するサルモネラによるDNAワクチン接種の方法を示す概略図である。
【図5】癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。
【図6】癌細胞に曝露したスルビビンワクチン接種マウスから単離されたT細胞からのIFNγ放出を示した棒グラフである。
【図7】サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。
【図8】サルモネラSL7207ニワトリスルビビンまたはマウススルビビンでワクチン接種したマウスの生存プロットである。
【図9】腫瘍曝露10日目に対するワクチン接種時期の効果を評価するための投与計画の概略図である。
【図10】異なる経過時間後にワクチン接種を受けたマウスあるいはPBSを受けたマウスの肺の重量を示した図である。
【図11】ワクチン接種、LLC/KSA細胞による静脈内への腫瘍曝露、腹腔内のシクロホスファミド(CTX)、インドメタシン処理に関する投与計画の概略図である。
【図12】ワクチン接種後に腫瘍曝露したマウスの肺重量を示した図である。
【図13】非哺乳類スルビビンのワクチン接種した後のマウスにおけるCD44明、CD3低細胞の新規集団の外観を示す図である。
【図14】皮下腫瘍曝露、非哺乳類スルビビンによるサルモネラ媒介ワクチン接種、ならびに静脈内免疫サイトカイン処理を含む投与計画の概略図である。
【図15】PBS、免疫サイトカイン、非哺乳類スルビビン、または免疫サイトカインおよび哺乳類スルビビンで処理したマウスの経時的腫瘍体積を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける腫瘍および腫瘍関連疾患の治療に使用するためのワクチンであって、
(a)ヒトスルビビンのAsp16からLeu87にわたるBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%と90%との間であるBIRドメインを含む非哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、または
(b)BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、および
(c)場合によってアジュバントを含み、
ヒトにおいてヒトスルビビンに対する免疫応答を惹起するワクチン。
【請求項2】
ワクチンによって引き起こされた前記免疫応答が、ヒトスルビビンを発現する細胞を攻撃するCD8+T細胞を生じさせる、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記ペプチドが非哺乳類スルビビン由来である、請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記BIRドメインの前記ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%と80%との間である、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記非哺乳類スルビビンが鳥類、魚類、は虫類または両生類由来である、請求項3または4に記載のワクチン。
【請求項6】
前記非哺乳類スルビビンがニワトリ由来である、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
非哺乳類スルビビン由来の前記ペプチドが、MHC分子に結合することによってT細胞抗原提示を促進する1個または複数の変異を含む、請求項3から6のいずれかに記載のワクチン。
【請求項8】
前記非哺乳類スルビビンがニワトリのものであり、前記変異がニワトリスルビビンのAsn97、Thr99、Val100またはGln101の位置の1個または複数でのアミノ酸置換である、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記変異が以下の、N97E、T99M、V100LまたはQ101Gの1個または複数である、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記変異がN97E、T99M、V100LおよびQ101Gであり、配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
前記非哺乳類スルビビンが、BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む、請求項3から10のいずれかに記載のワクチン。
【請求項12】
消失する前記生物学的活性がアポトーシスである、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
非哺乳類スルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84に対応する位置の1個または複数にアミノ酸置換を含有する、請求項11または12に記載のワクチン。
【請求項14】
MHC分子と結合したとき、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる、請求項3から13のいずれかに記載のワクチン。
【請求項15】
前記ヒトスルビビンペプチド配列がLTLGEFLKL、CPTENEPDLおよびEPDLAQCFFからなるペプチドの群から選択された、請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
前記ペプチドが、改変された哺乳類スルビビン由来である、請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項17】
前記改変された哺乳類スルビビンがヒトスルビビンである、請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
改変されたヒトスルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84の位置の1個または複数にアミノ酸置換を含有する、請求項17に記載のワクチン。
【請求項19】
改変された哺乳類スルビビン由来である前記ペプチドが、改変されたヘリカルドメインを含む、請求項16から18のいずれかに記載のワクチン。
【請求項20】
改変されたヒトスルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのLys122、Ala128およびIle135の位置の1個または複数にアミノ酸置換を含有する、請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
前記変異が以下の、Ala128PおよびIl2135Pの1個または複数である、請求項20に記載のワクチン。
【請求項22】
以下の変異、R18E、P47L、Q56L、H77A、C84A、A128PおよびI135Pを有する改変されたヒトスルビビンおよび配列番号56に記載されたアミノ酸配列を含む、請求項17から21のいずれかに記載のワクチン。
【請求項23】
前記改変された哺乳類スルビビンペプチドが、アミノ酸配列LTLGEFLKLまたはLMLGEFLKLを含む、請求項16または17に記載のワクチン。
【請求項24】
非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドがFc部分と融合している、請求項1から23のいずれかに記載のワクチン。
【請求項25】
エフェクター分子由来のペプチドをさらにコードするか、または含む、請求項1から24のいずれかに記載のワクチン。
【請求項26】
前記エフェクター分子がIL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23およびGM−CSFからなる群から選択されたサイトカインである、請求項25に記載のワクチン。
【請求項27】
非哺乳類スルビビンまたは改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする前記核酸が哺乳類プロモーターを含む、請求項1から26のいずれかに記載のワクチン。
【請求項28】
前記核酸が裸DNAである、請求項27に記載のワクチン。
【請求項29】
前記核酸が、哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化された、請求項1から28のいずれかに記載のワクチン。
【請求項30】
前記核酸がウイルス粒子の一部である、請求項1から29のいずれかに記載のワクチン。
【請求項31】
前記ウイルス粒子がアデノウイルス粒子である、請求項30に記載のワクチン。
【請求項32】
前記ワクチンが前記核酸を含む細菌を含む、請求項1から31のいずれかに記載のワクチン。
【請求項33】
前記細菌が腸内細菌である、請求項32に記載のワクチン。
【請求項34】
前記細菌がサルモネラである、請求項33に記載のワクチン。
【請求項35】
請求項1から34のいずれかに記載のワクチンを、許容される担体、希釈剤または賦形剤と場合によって一緒に含む、スルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対してヒトを免疫するための医薬組成物。
【請求項36】
ヒトスルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対して患者を免疫するための医薬品を製造するための、請求項1から34のいずれかに記載のワクチンの使用。
【請求項1】
ヒトにおける腫瘍および腫瘍関連疾患の治療に使用するためのワクチンであって、
(a)ヒトスルビビンのAsp16からLeu87にわたるBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%と90%との間であるBIRドメインを含む非哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、または
(b)BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸、および
(c)場合によってアジュバントを含み、
ヒトにおいてヒトスルビビンに対する免疫応答を惹起するワクチン。
【請求項2】
ワクチンによって引き起こされた前記免疫応答が、ヒトスルビビンを発現する細胞を攻撃するCD8+T細胞を生じさせる、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記ペプチドが非哺乳類スルビビン由来である、請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記BIRドメインの前記ヒトスルビビンBIRドメインとのアミノ酸同一性が50%と80%との間である、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記非哺乳類スルビビンが鳥類、魚類、は虫類または両生類由来である、請求項3または4に記載のワクチン。
【請求項6】
前記非哺乳類スルビビンがニワトリ由来である、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
非哺乳類スルビビン由来の前記ペプチドが、MHC分子に結合することによってT細胞抗原提示を促進する1個または複数の変異を含む、請求項3から6のいずれかに記載のワクチン。
【請求項8】
前記非哺乳類スルビビンがニワトリのものであり、前記変異がニワトリスルビビンのAsn97、Thr99、Val100またはGln101の位置の1個または複数でのアミノ酸置換である、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記変異が以下の、N97E、T99M、V100LまたはQ101Gの1個または複数である、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記変異がN97E、T99M、V100LおよびQ101Gであり、配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
前記非哺乳類スルビビンが、BIRドメインに備わっている生物学的活性を実質的に消失するBIRドメイン内の変異を含む、請求項3から10のいずれかに記載のワクチン。
【請求項12】
消失する前記生物学的活性がアポトーシスである、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
非哺乳類スルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84に対応する位置の1個または複数にアミノ酸置換を含有する、請求項11または12に記載のワクチン。
【請求項14】
MHC分子と結合したとき、ヒトスルビビンペプチド配列を認識するT細胞を活性化することができる、請求項3から13のいずれかに記載のワクチン。
【請求項15】
前記ヒトスルビビンペプチド配列がLTLGEFLKL、CPTENEPDLおよびEPDLAQCFFからなるペプチドの群から選択された、請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
前記ペプチドが、改変された哺乳類スルビビン由来である、請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項17】
前記改変された哺乳類スルビビンがヒトスルビビンである、請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
改変されたヒトスルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのArg18、Pro47、Cys57、Cys60、His77およびCys84の位置の1個または複数にアミノ酸置換を含有する、請求項17に記載のワクチン。
【請求項19】
改変された哺乳類スルビビン由来である前記ペプチドが、改変されたヘリカルドメインを含む、請求項16から18のいずれかに記載のワクチン。
【請求項20】
改変されたヒトスルビビン由来の前記ペプチドが、ヒトスルビビンのLys122、Ala128およびIle135の位置の1個または複数にアミノ酸置換を含有する、請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
前記変異が以下の、Ala128PおよびIl2135Pの1個または複数である、請求項20に記載のワクチン。
【請求項22】
以下の変異、R18E、P47L、Q56L、H77A、C84A、A128PおよびI135Pを有する改変されたヒトスルビビンおよび配列番号56に記載されたアミノ酸配列を含む、請求項17から21のいずれかに記載のワクチン。
【請求項23】
前記改変された哺乳類スルビビンペプチドが、アミノ酸配列LTLGEFLKLまたはLMLGEFLKLを含む、請求項16または17に記載のワクチン。
【請求項24】
非哺乳類スルビビン由来のペプチドおよび改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドがFc部分と融合している、請求項1から23のいずれかに記載のワクチン。
【請求項25】
エフェクター分子由来のペプチドをさらにコードするか、または含む、請求項1から24のいずれかに記載のワクチン。
【請求項26】
前記エフェクター分子がIL−2、IL−7、IL−12、IL−18、IL−21、IL−23およびGM−CSFからなる群から選択されたサイトカインである、請求項25に記載のワクチン。
【請求項27】
非哺乳類スルビビンまたは改変された哺乳類スルビビン由来のペプチドをコードする前記核酸が哺乳類プロモーターを含む、請求項1から26のいずれかに記載のワクチン。
【請求項28】
前記核酸が裸DNAである、請求項27に記載のワクチン。
【請求項29】
前記核酸が、哺乳類細胞へのトランスフェクションを促進する試薬とともに製剤化された、請求項1から28のいずれかに記載のワクチン。
【請求項30】
前記核酸がウイルス粒子の一部である、請求項1から29のいずれかに記載のワクチン。
【請求項31】
前記ウイルス粒子がアデノウイルス粒子である、請求項30に記載のワクチン。
【請求項32】
前記ワクチンが前記核酸を含む細菌を含む、請求項1から31のいずれかに記載のワクチン。
【請求項33】
前記細菌が腸内細菌である、請求項32に記載のワクチン。
【請求項34】
前記細菌がサルモネラである、請求項33に記載のワクチン。
【請求項35】
請求項1から34のいずれかに記載のワクチンを、許容される担体、希釈剤または賦形剤と場合によって一緒に含む、スルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対してヒトを免疫するための医薬組成物。
【請求項36】
ヒトスルビビンを過剰発現している腫瘍細胞に対して患者を免疫するための医薬品を製造するための、請求項1から34のいずれかに記載のワクチンの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−509991(P2009−509991A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532655(P2008−532655)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009359
【国際公開番号】WO2007/039192
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009359
【国際公開番号】WO2007/039192
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
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