説明

スルファニル誘導体、及び合成中間体としてのその使用

本出願は、式(I)のスルファニル誘導体と、特に薬学的に活性な化合物メスナを調製するための合成中間体としての、その使用とに関する。式(I)において、Xは、O又はN−C(NH)NHであり;Mは、水素、ナトリウム、二ナトリウム、カリウム、二カリウム、アンモニウム(NH、二アンモニウム、第4級アンモニウム、カルシウム、又はマグネシウムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいスルファニル誘導体と、特に薬学的に活性な化合物を調製するための、合成中間体としてのその使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
メスナ(2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)という一般名でも知られている2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩(1:1)(HSCHCHSONa)は、いくつかの疾患を治療するための治療薬として有用であることが証明されており、粘液溶解活性(米国特許第3,576,835号)を有するものとして知られているが、抗ウイルス薬、特に抗インフルエンザ薬としても知られている(特許EP1596851B)。組織の切開が行われる外科的処置でのメスナの局所使用が、知られている(特許EP0930878B)。メスナ(mesna)は、イホスファミドでの腫瘍疾患の治療の際、尿路を尿毒症状から保護する(米国特許第6,322,812号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、メスナを調製するための代替方法を今回見出した。
【0004】
本発明者らは、安全で経済的な経路を使用してメスナを調製するための、改善された方法を今回見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、式(I)の化合物及びその塩に関する
【化1】


(式中、
Xは、O又はN−C(NH)NHであり;
は、水素、ナトリウム、二ナトリウム、カリウム、二カリウム、アンモニウム(NH、二アンモニウム、第4級アンモニウム、カルシウム、又はマグネシウムである)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
通常、Mは、水素、ナトリウム、又は二ナトリウムである。
【0007】
通常、本発明の化合物は、2−(2−スルホ−エチルスルファニルグアニジノスルファニル)−エタンスルホン酸及びその塩である。通常、本発明の化合物は、2−(2−スルホ−エチルスルファニルカルボニルスルファニル)−エタンスルホン酸及びその塩でもある。
【0008】
本発明の好ましい化合物は、2−(2−スルホ−エチルスルファニルグアニジノスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩である((C11Na)。
【0009】
本発明の別の好ましい化合物は、2−(2−スルホ−エチルスルファニルカルボニルスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩である((CNa)。
【0010】
式(I)の化合物は、塩、任意の薬学的に許容される塩;通常はアルカリ塩;好ましくはナトリウム、二ナトリウム、カリウム、二カリウム、アンモニウム(NH、二アンモニウム、第4級アンモニウム、カルシウム、マグネシウムの塩の形をとることができる。より好ましくは、式(I)の化合物は、二ナトリウム塩の形をとる。
【0011】
式(I)の化合物は、下記の通りである。
【化2】

【0012】
式(I)の化合物は、本発明の範囲内に含まれる溶媒和物の形をとることができる。そのような溶媒和物には、例えば水和物やアルコキシドなどが含まれる。
【0013】
式(I)の化合物は、非常に安定であり、合成中間体として使用することができる。特に本発明の化合物の加水分解は、メスナ及びジメスナ(dimesna)をもたらす。
【0014】
本発明の化合物は、(キサントゲン酸エチル)O−エチルエステルカルボノジチオ酸、カリウム塩と、(2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム)2−ブロモ−エタンスルホン酸ナトリウム塩とのカップリングによって、エチル−2−スルホエチルエステルキサントゲン酸ナトリウム塩を得た後、ラジカル反応によって2−(2−スルホ−エチルスルファニルカルボニルスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩を生成することにより、得ることができる。2−(2−スルホ−エチルスルファニルグアニジノスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩を得るには、グアニジンを上述の反応媒体に添加する。
【0015】
別の態様では、本発明は、特に薬学的に活性な化合物を調製するための、一般式(I)の化合物の、合成中間体としての使用に関する。
【0016】
第1の実施形態によれば、式(I)の化合物は、メスナの合成に使用される。
【0017】
メスナは、式(I)の化合物の加水分解の後、単離することによって得ることができる。
【0018】
合成中間体として一般式(I)の化合物を使用することにより、メスナは、短く単純な経路及び主に安全で経済的でもある経路を使用して、高収率(少なくとも80%)及び高純度(少なくとも85%、通常は90%超、好ましくは95%超)で生成される。
【0019】
本発明は、発明を例示するためのみの働きをする以下の実施例から、より良く理解されよう。当業者なら、本発明の精神又は範囲を超えることなく、以下の実施例の通常の変更及び修正を行うことができることが理解されよう。
【実施例】
【0020】
(例1)
エチル−2−スルホエチルエステルキサントゲン酸ナトリウム塩の調製
O−エチルキサントゲン酸カリウム(3×95mg、0.60mmol)を、1.5時間ごとに少量ずつ、2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム(0.42g、2.00mmol)をアセトニトリル(15ml)に溶かした溶液に添加する。反応混合物を、窒素雰囲気下、合計で6時間、85℃に加熱する。冷却後、懸濁液を濾過し、アセトニトリルで洗浄し、空気乾燥することによって、オフホワイトの固体が得られる。
H NMR(DMSO d6)δ(ppm)4.67(q,2H)、3.40(2H,m)、3.26(m,2H)、1.39(t,3H)。
【0021】
(例2)
2−(2−スルホ−エチルスルファニルカルボニルスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩の調製
例1で得られたエチル−2−スルホエチルエステルキサントゲン酸ナトリウム塩(0.20g、0.79mmol)を、1,2−ジクロロエタン(5ml)に添加し、加熱還流(85℃)する。次いで過酸化ラウロイルを少量ずつ(8×157mg、0.40mmol)、3日間にわたって反応混合物に添加する。冷却後、得られた固体を濾過し、1,2−ジクロロエタンで洗浄し、その後、ジクロロメタンで洗浄し、次いで空気乾燥する。
【0022】
上述の固体(100mg、0.28mmol)をエタノール(5ml)に懸濁し、穏やかに加熱還流する(H NMR分析により化合物は安定)。次いで水(約0.5ml)を添加することにより、完全な溶液とし、還流を2時間継続する(H NMR分析により化合物は安定)。溶液を一晩冷やすことにより、懸濁液が得られ、これを濾過する。白色固体を冷エタノール(1mL)で洗浄し、吸引乾燥することにより、精製された化合物75mg(75%回収)が得られる。化合物は、H NMR分析により純粋である。
融点:284.8℃
1H NMR(DMSO d6)δ(ppm)3.26(4H,m)、3.08(4H,m)
13C NMR(DMSO d6)δ(ppm)51.4、26.8
【0023】
(例3)
例2で得られた化合物からのメスナの調製
例2で得られた化合物(2g、5.65mmol)を、1N水酸化ナトリウム水溶液(20ml、20mmol)に溶解し、窒素雰囲気下室温で撹拌する。得られた反応混合物を、80℃で3時間加熱する。この時間の後、反応混合物を冷やし、その後、過剰な溶媒を、減圧下で蒸発させることによって除去する。次いで得られた白色固体を、窒素雰囲気下、エタノール(40ml)で摩砕することにより、白色懸濁液が得られ、次いでこれに氷酢酸(2.4ml)を添加する。次いで5分間撹拌した後、懸濁液を素早く濾過し、エタノール(20ml)で洗浄し、短時間吸引乾燥する。次いで得られた白色固体を30分間真空乾燥(40℃)し、その結果、メスナは、H NMRによれば少量の不純物(0.1%未満)しか含有しない白色固体2.0gとして得られる。
【0024】
この方法は、高純度プロファイルの活性成分、メスナをもたらす。
【0025】
出発材料(エチル−2−スルホエチルエステルキサントゲン酸ナトリウム塩)は、安全で、使用が容易である。実際、この材料は爆発性化合物ではないので、この材料の使用は特定の予防措置を必要としない。主にこの方法によれば、チオ尿素やスルホ−エチル−チオ尿素などの危険な合成中間体の使用を回避することが可能になる。
1H NMR(DMSO d6)δ(ppm)3.26(4H,m)、3.08(4H,m)。
【0026】
(例4)
2−(2−スルホ−エチルスルファニルグアニジノスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩の調製
例1で得られたキサントゲン酸ナトリウム塩(0.20g、0.79mmol)を、1,2−ジクロロエタン(5ml)に添加し、加熱還流する(85℃)。次いでグアニジン(1.25当量)を添加する。次いで過酸化ラウロイルを少量ずつ(8×157mg、0.40mmol)、3日間にわたって反応混合物に添加する。冷却後、得られた固体を濾過し、1,2−ジクロロエタンで洗浄し、その後ジクロロメタンで洗浄し、次いで空気乾燥する。
【0027】
(例5)
例4で得られた化合物からのメスナの調製
例4で得られた化合物を、例2に記述された方法によって再結晶させる。得られた化合物は、例3に記述された調製方法により、メスナをもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、及びその塩
【化1】


(式中、
Xは、O又はN−C(NH)NHであり;
は、水素、ナトリウム、二ナトリウム、カリウム、二カリウム、アンモニウム(NH、二アンモニウム、第4級アンモニウム、カルシウム、又はマグネシウムである)。
【請求項2】
XがN−C(NH)NHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
2−(2−スルホ−エチルスルファニルグアニジノスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
2−(2−スルホ−エチルスルファニルカルボニルスルファニル)−エタンスルホン酸の二ナトリウム塩である、請求項1又は3に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−535168(P2010−535168A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518607(P2010−518607)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059396
【国際公開番号】WO2009/019119
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】