説明

スルフィド含有ポリチオール

本発明は、スルフィド含有ポリチオールおよびこれらの調製方法に関する。スルフィド含有ポリチオールは、種々の用途および適用を有し得る。本発明のスルフィド含有ポリチオールは、眼科用レンズの製造のためのポリウレタン組成物において特に有用である。非限定的な実施形態において、本発明のスルフィド含有ポリチオールは、1,3−ジチオランおよび1,3−ジチアンを含有し得る。1,3−ジチオランまたは1,3−ジチアンを含有するスルフィド含有ポリチオールは、非対称ジクロロアセトンとポリメルカプタンとを反応させ、次いで、ポリメルカプトアルキルスルフィド、ポリメルカプタン、またはこれらの混合物と上記の反応生成物を反応させることによって調製され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフィド含有ポリチオールおよびそれらの調製方法に関する。本出願は、出願番号第60/435,537号を有する仮特許出願(2002年12月20日出願)からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
スルフィド含有ポリチオールは、種々の用途および適用を有し得る。本発明のスルフィド含有ポリチオールは、眼科用レンズの製造のためのポリウレタン組成物において特に有用である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書の目的で、他で示されない限り、本明細書中および特許請求の範囲中で用いられる成分、反応条件等の量を表現する全ての数は、あらゆる場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲の中で示される数値パラメーターは、本発明により得られると考えられる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。非常に少なくとも、および特許請求の範囲に対して均等論の原則の適用を制限することは意図しないが、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効数字の数に照らして、かつ通常の切り上げ切捨て技術を適用することによって、解釈されるべきである。
【0004】
本発明の広い範囲を示している数値範囲および数値パラメーターは近似値であるにも拘らず、特定の実施例で示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、これらの各試験測定で見出される標準偏差から必然的にもたらされる、特定の誤差を本質的に含む。
【0005】
本発明は、以下の構造式:
【0006】
【化10】

によって表される物質から選択される一以上のスルフィド含有ポリチオールを含有する組成物、およびこれらの調製方法を提供する。
【0007】
本発明は、以下の構造式:
【0008】
【化11】

によって表されるスルフィド含有オリゴマー性ポリチオールを含有する組成物であって、ここでnは1〜20の整数を表し得る、組成物、およびその調製方法をさらに提供する。
【0009】
非限定的な実施形態において、本発明のスルフィド含有ポリチオールは、1,3−ジチオランおよび1,3−ジチアンを含有し得る。1,3−ジチオランを含有するスルフィド含有ポリチオールの非限定的な例としては、上述の構造式IV’aおよびIV’bによって表される物質が挙げられ得る。1,3−ジチアンを含有するスルフィド含有ポリチオールの非限定的な例としては、上述の構造式IV’cおよびIV’dによって表される物質が挙げられ得る。
【0010】
1,3−ジチオランまたは1,3−ジチアンを含有するスルフィド含有ポリチオールは、非対称ジクロロアセトンとポリメルカプタンとを反応させ、次いで、ポリメルカプトアルキルスルフィド、ポリメルカプタン、またはこれらの混合物と上記の反応生成物を反応させることによって調製され得る。
【0011】
非対称ジクロロアセトンとの反応での使用に適切なポリメルカプタンは、以下の構造式:
【0012】
【化12】

によって表される物質であって、ここで、YはCHまたは(CH−S−CH)を表し得、かつ、nは0〜5の整数であり得る、物質が挙げられるが、限定はされない。非限定的な実施形態において、本発明における非対称ジクロロアセトンとの反応のためのポリメルカプトンは、エタンジチオール、プロパンジチオール、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0013】
上述の反応を実行するのに適切な非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプタンの量は、変化し得る。非限定的な実施形態において、非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプタンは、反応混合物中、ポリメルカプタンに対するジクロロアセトンのモル比が1:1〜1:10であり得るような量で存在し得る。
【0014】
非対称ジクロロアセトンとポリメルカプタンとを反応させるのに適切な温度は、変化し得る。非限定的な実施形態において、非対称ジクロロアセトンとポリメルカプタンとの反応は、0℃〜100℃の範囲内の温度で実行され得る。
【0015】
非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプタンの反応生成物との反応における使用に適切なポリメルカプタンの非限定的な例としては、上述の構造式1によって表される物質、芳香族ポリメルカプタン、シクロアルキルポリメルカプタン、複素環式ポリメルカプタン、分枝ポリメルカプタン、およびこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定はされない。
【0016】
非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプタンの反応生成物との反応における使用に適切なポリメルカプトアルキルスルフィドの非限定的な例としては、以下の構造式:
【0017】
【化13】

によって表される物質であって、ここで、XはO、S、またはSeを表し得、nは0〜10の整数であり得、mは0〜10の整数であり得、pは1〜10の整数であり得、qは0〜3の整数であり得、ただし(m+n)は1〜20の整数である、物質が挙げられ得るが、限定はされない。
【0018】
本発明における使用に適切なポリメルカプトアルキルスルフィドの非限定的な例としては、分枝ポリメルカプトアルキルスルフィドが挙げられ得る。非限定的な実施形態において、本発明における使用のためのポリメルカプトアルキルスルフィドは、ジメルカプトエチルスルフィドであり得る。
【0019】
非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプタンの反応生成物と反応させるのに適切なポリメルカプタン、ポリメルカプトアルキルスルフィド、またはこれらの混合物の量は、変化し得る。非限定的な実施形態において、ポリメルカプタン、ポリメルカプトアルキルスルフィド、またはこれらの混合物は、反応混合物中、ポリメルカプタン、ポリメルカプトアルキルスルフィド、またはこれらの混合物に対する反応生成物の当量比が1:1.01〜1:2であり得るような量で、存在し得る。さらに、この反応を実行するのに適切な温度は、変化し得る。非限定的な実施形態において、反応生成物とポリメルカプタン、ポリメルカプトアルキルスルフィド、またはこれらの混合物との反応は、0℃〜100℃の範囲内の温度で実行され得る。
【0020】
非限定的な実施形態において、非対称ジクロロアセトンとポリメルカプタンとの反応は、酸触媒存在下で実行され得る。酸触媒は、当該分野で公知の広範な種類(例えば、ルイス酸およびブロンステッド酸があるが、これらに限定はされない)から選択され得る。適切な酸触媒の非限定的な例としては、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,1992,Volume A21,pp.673〜674に記載されるものが挙げられ得る。さらなる代替の非限定的な実施形態において、酸触媒は、三フッ化ホウ素エーテル化合物、塩化水素、トルエンスルホン酸、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0021】
酸触媒の量は、変化し得る。非限定的な実施形態において、酸触媒の適切な量は、反応混合物の0.01〜10重量パーセントであり得る。
【0022】
別の非限定的な実施形態において、非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプタンの反応生成物は、塩基の存在下、ポリメルカプトアルキルスルフィド、ポリメルカプタンまたはこれらの混合物と反応され得る。塩基は、当該分野で公知の広範な種類(例えば、ルイス塩基およびブロンステッド塩基があるが、これらに限定はされない)から選択され得る。適切な塩基の非限定的な例としては、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,1992,Volume A21,pp.673〜674に記載されるものが挙げられ得る。さらなる代替の非限定的な実施形態において、塩基は、水酸化ナトリウムであり得る。
【0023】
塩基の量は、変化し得る。非限定的な実施形態において、第一の反応の反応生成物に対する塩基の適切な当量比は、1:1〜10:1であり得る。
【0024】
別の非限定的な実施形態において、これらのスルフィド含有ポリチオールの調製は、溶媒の使用を包含し得る。溶媒は、当該分野で公知の広範な種類から選択され得る。
【0025】
さらなる非限定的な実施形態において、非対称ジクロロアセトンとポリメルカプタンとの反応は、溶媒の存在下で実行され得る。溶媒は、広範な種類の公知物質から選択され得る。非限定的な実施形態において、溶媒は、有機不活性溶媒を含む有機溶媒から選択され得るが、限定はされない。適切な溶媒の非限定的な例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、酢酸およびこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定はされない。なおさらなる実施形態において、ポリメルカプタンと非対称ジクロロアセトンとの反応は、溶媒としてトルエンの存在下で実行され得る。
【0026】
別の実施形態において、非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプタンの反応生成物は、溶媒の存在下、ポリメルカプトアルキルスルフィド、ポリメルカプタンまたはこれらの混合物と反応され得、ここでこの溶媒は、有機不活性溶媒を含む有機溶媒から選択され得るが、限定はされない。適切な有機溶媒および有機不活性溶媒の非限定的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびプロパノールであるが、これらに限定はされない);芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンであるが、これらに限定はされない);ケトン(例えば、メチルエチルケトンであるが、これに限定はされない);水およびこれらの混合物が挙げられ得る。さらなる非限定的な実施形態において、この反応は、溶媒系としてトルエンおよび水の混合物の存在下で実行され得る。別の非限定的な実施形態において、この反応は、溶媒としてエタノールの存在下で実行され得る。
【0027】
溶媒の量は、広範に変化し得る。非限定的な実施形態において、溶媒の適切な量は、反応混合物の0〜99重量パーセントであり得る。さらなる非限定的な実施形態において、反応は、ニート;すなわち溶媒なしで実行され得る。
【0028】
別の非限定的な実施形態において、非対称ジクロロアセトンとポリメルカプタンとの反応は、脱水剤の存在下で実行され得る。脱水剤は、当該分野で公知の広範な種類から選択され得る。この反応での使用に適切な脱水剤としては、硫酸マグネシウムが挙げられ得るが、これに限定はされない。脱水剤の量は、脱水剤の化学量論に従って広範に変化し得る。
【0029】
非限定的な実施形態において、1,1−ジクロロアセトンは、酸触媒の存在下、1,2−エタンジチオールと一緒に導入され得、以下に示される2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランを生成する。
【0030】
【化14】

さらなる非限定的な実施形態において、1,1−ジクロロアセトンは、酸触媒の存在下、1,3−プロパンジチオールと一緒に導入され得、以下に示される2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチアンを生成する。
【0031】
【化15】

別の非限定的な実施形態において、2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランは、塩基の存在下、ジメルカプトエチルスルフィドと一緒に導入され得、以下に示される本発明のジメルカプト1,3−ジチオランポリチオールを生成する。
【0032】
【化16】

別の非限定的な実施形態において、2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランは、塩基の存在下、1,2−エタンジチオールと一緒に導入され得、以下に示される本発明のジメルカプト1,3−ジチオランポリチオールを生成する。
【0033】
【化17】

別の非限定的な実施形態において、2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチアンは、塩基の存在下、ジメルカプトエチルスルフィドと一緒に導入され得、以下に示される本発明のジメルカプト1,3−ジチアンポリチオールを生成する。
【0034】
【化18】

別の非限定的な実施形態において、2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチアンは、塩基の存在下、1,2−エタンジチオールと一緒に導入され得、以下に示される本発明のジメルカプト1,3−ジチアンポリチオールを生成する。
【0035】
【化19】

本発明の別の非限定的な実施形態において、以下の構造式:
【0036】
【化20】

のスルフィド含有オリゴマー性ポリチオールであって、ここで、nは1〜20の整数であり得る、スルフィド含有オリゴマー性ポリチオールは、塩基の存在下、ポリメルカプトアルキルスルフィドと一緒に非対称ジクロロアセトンを導入することによって調製され得る。
【0037】
この反応における使用に適切なポリメルカプトアルキルスルフィドの非限定的な例としては、本明細書中で以前に列挙された一般式2によって表される物質が挙げられ得るが、それらに限定はされない。
【0038】
本発明における使用に適切なポリメルカプトアルキルスルフィドのさらなる非限定的な例としては、分枝ポリメルカプトアルキルスルフィドが挙げられ得る。非限定的な実施形態において、ポリメルカプトアルキルスルフィドは、ジメルカプトエチルスルフィドであり得る。
【0039】
この反応における使用に適切な塩基としては、本明細書中で以前に列挙されたものが挙げられ得る。
【0040】
別の非限定的な実施形態において、非対称ジクロロアセトンとポリメルカプトアルキルスルフィドとの反応は、相転移触媒の存在下で実行され得る。本発明における使用に適切な相転移触媒は、公知であり、そして多様である。非限定的な例としては、テトラアルキルアンモニウム塩およびテトラアルキルホスホニウム塩が挙げられ得るが、これらに限定はされない。さらなる非限定的な実施形態において、この反応は、相転移触媒として臭化テトラブチルホスホニウムの存在下で実行され得る。相転移触媒の量は、広範に変化し得る。非限定的な実施形態において、相転移触媒の量は、ポリメルカプトスルフィド反応物に対して0〜50当量パーセント、または0〜10当量パーセント、または0〜5当量パーセントであり得る。
【0041】
別の非限定的な実施形態において、本発明のポリチオエーテルオリゴマー性ジチオールの調製は、溶媒の使用を包含し得る。適切な溶媒の非限定的な例としては、本明細書中で以前に列挙されたものが挙げられ得る。
【0042】
非限定的な実施形態において、「n」モルの1,1−ジクロロアセトンは、「n+1」モルのポリメルカプトエチルスルフィドと反応され得(ここで、nは1〜20の整数を表し得る)、以下のように、本発明のポリチオエーテルオリゴマー性ジチオールを生成する。
【0043】
【化21】

非限定的な実施形態において、本発明のポリチオールは、光学適用および眼科適用に適切であり得る。
【0044】
本発明は、非限定的な実施形態に関して記載されている。本発明者ら以外は、詳細な説明を読み、理解することによって、明らかな改変および変更を思い付き得る。
【実施例】
【0045】
(実施例1:2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランの合成)
磁気撹拌器を備え付け、入り口および出口に窒素ブランケットを有する三つ首フラスコの中に、200mlのトルエンに入った、13.27グラム(0.106モル)の1,1−ジクロロアセトン、11.23グラム(0.119モル)の1,2−エタンジチオール、20グラムの無水MgSO、および(Aldrich Chemicalから得た)5グラムのモンモリロナイトK−10を加えた。この反応混合物を、24時間室温で撹拌した。不溶物を濾過して除去し、トルエンを、Buchi Rotaevaporatorを用いて真空下で蒸発させ、17.2グラム(収率80%)の2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランを得た。次いで、生成物を、102〜112℃の範囲内の温度で、12mmHgの圧力で、真空蒸留した。次いで、NMR分析を、Varian Unity Plus Machineを用いて行った。このNMR結果は、以下の通りである:H NMR(CDCL、200MHz):5.93(s、1H);3.34(s、4H);2.02(s、3H);13C NMR(CDCl、50MHz):80.57;40.98;25.67。
【0046】
(実施例2:(机上の実験例のみ;実施例を、実際には行わなかった)2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチアンの合成)
磁気撹拌器を備え付け、入り口および出口に窒素ブランケットを有する三つ首フラスコの中に、13.97グラム(0.11モル)の1,1−ジクロロアセトン、10.8グラム(0.10モル)の1,3−プロパンジチオール、および50mlのクロロホルムを加える。この反応混合物を、0℃まで冷却する。次いで、緩流の塩化水素ガスを、約5分間、溶液に通して泡立たせる。反応混合物が飽和に達している状態で、この混合物を、約30分間、室温に置かせる。次いで、溶媒を蒸発させ、そして、粗2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチアン誘導体が約80〜90%の収率で予期される。
【0047】
(実施例3:(机上の実験例のみ;実施例を、実際には行わなかった)2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランと2−メルカプトエチルスルフィドとの反応)
磁気撹拌器を備え付け、入り口および出口に窒素ブランケットを有する三つ首フラスコの中に、20.30グラム(0.1モル)の2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチロラン、30.86グラム(0.2モル)の2−メルカプトエチルスルフィド、および100mlのエタノールを加える。この2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチロランは、上記の実施例1に記載されるように調製される。この反応混合物に、35〜40℃の温度で、滴下法で16.3グラム(0.2モル)の49%水酸化ナトリウム(NaOH)を加える。次いで、温度を50℃まで上昇させ、そして反応混合物を50℃で2時間置かせる。次いで、この混合物を室温まで冷却し、沈殿した塩化ナトリウム(NaCl)を、濾過によって除去する。エタノールおよび水を、真空下で蒸発させ、約60〜70%の予期される収率で、ジメルカプトポリスルフィドを得る。
【0048】
(実施例4:nが1である、オリゴマー性ポリチオエーテルジチオール(PTEジチオール1)の合成)
350mlの水の中に、44.15グラム(1.01モル)のNaOHを溶解した。この溶液を室温まで冷却し、500mlのトルエンを加え、続いて159.70グラム(1.04モル)のジメルカプトエチルスルフィドを加えた。この混合物を40℃まで温め、撹拌して室温まで冷却した。250mlのトルエンに溶解させた66.35グラム(0.52モル)の1,1−ジクロロアセトンを、混合物へ滴下法で加えた。この混合物を、さらに20時間、室温で、撹拌した。混合物の温度を20〜25℃の間に維持した。有機層を分離し、2×100mlのHO、1×100mlのブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させた。乾燥剤を濾過して除去し、トルエンをBuchi Rotaevaporatorを用いて蒸発させた。濁った残渣を、Celite(登録商標)に通して濾過し、無色透明油状液体として182グラム(すなわち、収率96%)のPTEジチオールを生成した。
【0049】
マススペクトル分析を、Mariner Bio Systems装置を用いて生成物サンプルに関して行った。結果は以下の通りであった:ESI−MS:385(M+Na)。従って、分子量は362であった。
【0050】
NMR分析を、Varian Unity Plus装置を用いて、生成物サンプルに関して行った。結果は以下の通りであった:H NMR(CDCl、200MHz):4.56(s、1H);2.75(m、16H);2.38(s、3H)、1.75(m、1.5H)。
【0051】
生成物の中のSH基を、以下の手順を用いて定量(determine)した。サンプルサイズ(0.1mg)の生成物を、50mLのテトラヒドロフラン(THF)/プロピレングリコール(80/20)と混合し、サンプルが実質的に溶解するまで室温で撹拌した。撹拌の間、(Aldrich 31、8898−1から購入した)25.0mLの0.1Nヨウ素溶液を、この混合物に加え、次いで5〜10分の時間反応させた。この混合物に、2.0mLの濃HClを加えた。次いで、混合物を、ミリボルト(mV)モードで、0.1Nチオ硫酸ナトリウムで、電位差滴定で滴定した。生成物サンプルで行ったのと様式で、チオ硫酸ナトリウムで(1mLの濃塩酸を含む)25.0mLのヨウ素を滴定することによって、ブランク値を最初に得た。
【0052】
【数1】

以下の結果を得た:13.4%のSH。
【0053】
屈折率(e−line)およびアッベ数を、ATAGO Co.,Limitedによって製造された複数波長Abbe Refractometer Model No.DR−M2を用いて、ASTM542−00に従って、測定した。屈折率は1.618(20℃)であり、アッベ数は35であった。
【0054】
(実施例5:nが3である、オリゴマー性ポリチオエーテルジチオール(PTEジチオール2)の合成)
NaOH(23.4g、0.58モル)を、54mlのHOに溶解した。この溶液を室温まで冷却し、そしてジメルカプトエチルスルフィド(30.8g、0.20モル)を加えた。この混合物を撹拌している状態で、温度を20〜25℃に維持しながら、ジクロロアセトン(19.0g、0.15モル)を滴下法で加えた。ジクロロアセトンの添加を終えた後、この混合物を、さらに2時間、室温で、撹拌した。混合物を、10%のHClでpH9未満まで酸性化し、次いで100mlのジクロロメタンを加え、そしてこの混合物を撹拌した。相分離に続いて、有機層を100mlのHOで洗浄し、無水MgSOで乾燥させた。乾燥剤を濾過して除去し、溶媒をBuchi Rotaevaporatorを用いて蒸発させ、38cPの粘度(73℃)を有する透明な液体である、35グラム(90%)の粘液を得た。屈折率、アッベ数およびSH基を、実施例4に列挙されるように測定し、以下の結果を得た:1.622(20℃)の屈折率(e−line)、36のアッベ数、8.10%のSH基分析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】

によって表される物質から選択される、一以上のスルフィド含有ポリチオールを含有する組成物。
【請求項2】
以下の構造式:
【化2】

【化3】

によって表されるスルフィド含有ポリチオールを調製する方法であって、
以下の工程:
(a)ポリメルカプタンと一緒に非対称ジクロロアセトンを導入する工程;および
(b)ポリメルカプトアルキルスルフィド、ポリメルカプタン、およびこれらの混合物から選択される物質と共に(a)の反応生成物を導入する工程、
を包含する方法。
【請求項3】
(a)が、酸触媒の存在下で実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(b)が、塩基の存在下で実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(a)および工程(b)の反応のうちの少なくとも一つが、溶媒の存在下で実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記非対称ジクロロアセトンが、1,1−ジクロロアセトンである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
(a)における前記ポリメルカプタンが、以下の構造式:
【化4】

によって表される物質であって、ここで、YがCHまたは(CH−S−CH)であり、かつ、nが0〜5の整数である、物質、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
(a)における前記ポリメルカプタンが、エタンジチオール、プロパンジチオール、およびこれらの混合物から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法であって、(b)における前記ポリメルカプタンが、芳香族ポリメルカプタン、シクロアルキルポリメルカプタン、複素環式ポリメルカプタン、分枝ポリメルカプタン、以下の一般式:
【化5】

によって表される物質であって、ここで、YがCHであり、かつ、nが0〜5の整数である、物質、ならびにこれらの混合物から選択される、方法。
【請求項10】
構造式IV’aおよびIV’bを調製するための、(a)における前記ポリメルカプタンが、エタンジチオールである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
構造式IV’cおよびIV’dを調製するための、(a)における前記ポリメルカプタンが、1,3−プロパンジチオールである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
構造式IV’aおよびIV’cを調製するための、(b)における前記ポリメルカプタンが、1,2−エタンジチオールである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
請求項2に記載の方法であって、(b)における前記ポリメルカプトアルキルスルフィドが、以下の一般式:
【化6】

で表される物質であって、ここで、XがO、S、またはSeを表し、nが0から10の整数であり、mが0から10の整数であり、pが1から10の整数であり、そして、qが0から3の整数であり、(m+n)が1から20の整数である、物質、およびこれらの混合物から選択される、方法。
【請求項14】
構造式IV’bおよびIV’dを調製するための、(b)における前記ポリメルカプトアルキルスルフィドが、ジメルカプトエチルスルフィドである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)において、ポリメルカプタンに対する非対称ジクロロアセトンの当量比が、1:1〜1:10である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
(b)において、ポリメルカプタン、ポリメルカプトアルキルスルフィド、またはこれらの混合物から選択される物質に対する(a)の反応生成物の当量比が、1:1.01〜1:2であり得る、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
以下の構造式:
【化7】

によって表される物質であって、ここで、nが1〜20の整数を表す、物質から選択される、少なくとも一つのスルフィド含有オリゴマー性ポリチオールを含有する組成物。
【請求項18】
以下の構造式:
【化8】

によって表されるスルフィド含有オリゴマー性ポリチオールであって、ここで、nが1〜20の整数を表す、スルフィド含有オリゴマー性ポリチオールを調製する方法であって、ポリメルカプトアルキルスルフィドと一緒に非対称ジクロロアセトンを導入する工程を包含する、方法。
【請求項19】
前記反応が、塩基の存在下で実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応が、溶媒の存在下で実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記非対称ジクロロアセトンが、1,1−ジクロロアセトンである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であって、前記ポリメルカプトアルキルスルフィドが、以下の一般式:
【化9】

によって表される物質であって、ここで、XがO、S、またはSeを表し、nが0から10の整数であり、mが0から10の整数であり、pが1から10の整数であり、qが0から3の整数であり、そして、(m+n)が1から20の整数である、物質から選択される、方法。
【請求項23】
前記ポリメルカプトアルキルスルフィドが、ジメルカプトエチルスルフィドである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
「n」モルの非対称ジクロロアセトンおよび「n+1」モルのポリメルカプトアルキルスルフィドであって、ここで、nが1〜20の整数である、非対称ジクロロアセトンおよびポリメルカプトアルキルスルフィドが、前記反応中に存在する、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2006−512414(P2006−512414A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508549(P2005−508549)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/038319
【国際公開番号】WO2004/060971
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】