スレッド、それを用いた偽造防止用紙および偽造防止印刷物
【課題】マイクロ文字を形成したスレッドを用紙に抄き込んだときに、スレッドの抄き込まれた位置が表面側または裏面側に偏っていても、用紙の表面または裏面から視認した際にマイクロ文字が同一の見え方で見えるようにする。
【解決手段】偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、透明なベースフィルム(1)と、前記透明なベースフィルム(1)上に形成された偽造防止層(2)と、前記透明なベースフィルム(1)の一面または両面に、少なくとも前記偽造防止層(2)に対応して形成された光透過抑制層(3)とを有することを特徴とするスレッド。
【解決手段】偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、透明なベースフィルム(1)と、前記透明なベースフィルム(1)上に形成された偽造防止層(2)と、前記透明なベースフィルム(1)の一面または両面に、少なくとも前記偽造防止層(2)に対応して形成された光透過抑制層(3)とを有することを特徴とするスレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止が要望される分野に好適に用いられるスレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片などとも称される)と、そのスレッドを抄き込んだスレッド入り紙でなる偽造防止用紙、およびそれらを利用した有価証券類、紙幣類などの偽造防止印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙層内に、スレッドと呼ばれる糸状物を抄き込んだ「スレッド入り紙」は、偽造防止用紙の一形態としてよく知られている。このスレッドは、周知のように、ベースフィルムの表面に、ホログラム層、金属蒸着層、磁気層、マイクロ文字層、マイクロ画像層、サーモクロミック層、紫外蛍光発色層、干渉色発現層などの偽造防止層を設け、マイクロスリッター加工により製造される。前記スレッド入り紙は製造に極めて高度な技術を必要とするので偽造防止に大きな効果があり、周知のように各国の紙幣などに多用されている。
【0003】
前記スレッド入り紙は大きく2種類に分類される。その一つはスレッドが用紙内部に抄き込まれ、用紙表面に露出しないものである。もう一つはスレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と呼ばれるものである。
【0004】
前者の用紙を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献3)などが提案されている。
【0005】
後者の「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献4)や、円網抄紙機を使用して多層抄き合わせ紙を製造する際に、最外層に窓空き部を形成した紙層が位置するようにし、他の紙層は窓空き部を形成しない紙層が位置するようにして抄き合わせ、抄き合わせる際に窓空き部にスレッドが露出するようにスレッドを抄き込む製造方法(たとえば特許文献5)が代表的な製造方法である。
【0006】
以下、スレッドの代表例として、ベースフィルムの表面に偽造防止層としてマイクロ文字を形成したマイクロ文字入りスレッドについて説明する。その理由は、マイクロ文字入りスレッドを用いた偽造防止用紙において本発明の効果が最大限に発揮できるからである。
【0007】
マイクロ文字入りスレッドは、着色インクを用いてプラスチックフィルムにマイクロ文字印刷を施してスレッド化する方法や、プラスチックフィルムにマイクロ文字を直接箔押しする方法や、真空蒸着装置においてマスクまたはテンプレートを使用して選択的に金属化する方法、金属化した後に腐食によりデメタライジング加工する方法が知られている(たとえば特許文献6)。これらのうち、着色インキによりマイクロ文字を形成したスレッドや、「デメタライジング加工」によりマイクロ文字を形成したスレッドは、紙幣用紙、パスポート用紙、商品券用紙などに多用されている。
【特許文献1】特開昭51−130309号公報
【特許文献2】特開平2−169790号公報
【特許文献3】特公平5−40080号公報
【特許文献4】米国特許第4462866号公報
【特許文献5】特許第2845197号
【特許文献6】特公平6−062030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
紙は厚みが薄い場合には光を多く透過するが、厚みが増すに従って光を透過しにくくなる。処方によっても異なるが、たとえば坪量90g/m2のパスポート冊子の本文用紙に使用される偽造防止用紙で、不透明度(JIS P8149に規定)は80〜90%の値を示すことが多い。用紙の不透明度がこの程度であれば、透明なベースフィルム上にマイクロ文字を形成したスレッドを用紙に抄き込んだ場合、用紙の表面および裏面からマイクロ文字を読むことができる。ただし、スレッドが紙の厚み方向に対してほぼ中央に抄き込まれていないと、用紙の表から見た場合と裏から見た場合とで、マイクロ文字の見え方が同一ではなく、かなり異なった見え方になる。しかし、たとえばパスポート冊子の本文用紙のように表裏両面を利用するような用途においては、各頁の表側と裏側でスレッドに形成されたマイクロ文字の見え方が同一でないと不都合を生じる。
【0009】
また、偽造防止用紙はスレッドの抄き込みのほかに種々の偽造防止技術を採用することが多い。その代表的な技術に「透かし」がある。透かしは周知のように、円網抄紙機の円網シリンダーや、長網抄紙機のダンディーロールの上網に、(1)金属やプラスチック製の型を貼り付けたり、(2)上網の目を部分的に樹脂などで塗りつぶしたり、(3)上網に凹凸加工を施した網を使用して製造されている。
【0010】
上記(1)、(2)の方法では、型の部分の網目が塞がれているので紙料の通過が抑制され、この部分には紙層が形成されないか形成されても薄くなるため、透かしが発現する。(3)の方法では、透かし模様を網の凹凸として打ち出すが、網の目は塞がれていない。透かし模様は網の凹凸の大きさ、網の斜面の角度などにより繊維の堆積に差が生じて透かしが発現する。
【0011】
透かし入りの用紙は、単層抄きの用紙、多層抄き合せの用紙のいずれにおいても製造されている。多層抄き合せの透かし入り用紙においては、透かしの効果を最大限に発揮させるために必ずしも各層を同じ重量に抄き合わせるとは限らないし、奇数の紙層を抄き合わせる場合もある。たとえば100g/m2の透かし入りの用紙を3層抄き合わせで製造するとして、表面層および裏面層を30g/m2ずつとし、中間層を40g/m2として、中間層に透かしを入れるようなことが行われる。また、透かしを入れなくても、紫外蛍光発色繊維を3層抄き合わせ紙の中間層に抄き込み、この用紙にマイクロ文字入りのスレッドを抄き込む場合もある。このような場合、表面層の紙層と中間層の紙層との間、または裏面層の紙層と中間層の紙層との間のどちらかにスレッドを挿入することになる。
【0012】
仮に前者の構成で用紙を製造したとすると、表面からは30g/m2の紙層を通して、裏面からは70g/m2の紙層を通してスレッドに形成されたマイクロ文字を読むことになる。30g/m2の紙層と70g/m2の紙層では、当然のことながら、光の透過率は30g/m2の方が大きいので、表面から見たときの方が裏面から見たときよりマイクロ文字が鮮明に見えることになる。このため、前述したように、パスポート冊子の本文用紙のように表裏両面を利用するような用途においては、表裏両面からマイクロ文字が同一の見え方で見えることが要求されるにもかかわらず、裏面からはマイクロ文字が見えにくいという不都合を生じる。
【0013】
本発明の目的は、マイクロ文字を形成したスレッドを用紙に抄き込んだときに、スレッドの抄き込まれた位置が表面側または裏面側に偏っていても、用紙の表面または裏面から視認した際にマイクロ文字が同一の見え方で見えるようなスレッド、このようなスレッドを用いた偽造防止用紙および偽造防止印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、透明なベースフィルムと、前記透明なベースフィルム上に形成された偽造防止層と、前記透明なベースフィルムの一面または両面に、少なくとも前記偽造防止層に対応して形成された光透過抑制層とを有することを特徴とするスレッドである。
【0015】
請求項2の発明は、偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、光の透過を抑制するベースフィルムと、前記光の透過を抑制するベースフィルム上に形成された偽造防止層とを有することを特徴とするスレッドである。
【0016】
請求項3の発明は、前記光透過抑制層の光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項1に記載のスレッドである。
【0017】
請求項4の発明は、前記光の透過を抑制するベースフィルムの光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項2に記載のスレッドである。
【0018】
請求項5の発明は、前記偽造防止層が、所望のパターンを形成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスレッドである。
【0019】
請求項6の発明は、前記パターンが、有彩色もしくは無彩色のインキで形成されたマイクロ文字、またはデメタライジングにより形成されたマイクロ文字であることを特徴とする請求項1乃至5項のいずれか1項に記載のスレッドである。
【0020】
請求項7の発明は、前記光透過抑制層がデメタライジングのための保護層であることを特徴とする請求項6に記載のスレッドである。
【0021】
請求項8の発明は、前記マイクロ文字がベースフィルムの一面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッドである。
【0022】
請求項9の発明は、前記マイクロ文字がベースフィルムの両面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッドである。
【0023】
請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のスレッドが抄き込まれた偽造防止用紙であって、それぞれ偽造防止用紙の表面および裏面から前記スレッドの偽造防止層までの厚み方向の距離が互いに異なることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0024】
請求項11の発明は、請求項10に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷部が設けられていることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスレッドによれば、透明なベースフィルム上に形成された偽造防止層に対応して光透過抑制層を形成するか、または光の透過を抑制するベースフィルム上に偽造防止層を形成したことにより、マイクロ文字を形成したスレッドを用紙の厚み方向において中央からずれた位置に抄き込んだとしても、用紙の表面または裏面から視認した際にマイクロ文字が実質的に同一の見え方で見えるようになる。ここで、マイクロ文字が実質的に同一の見え方で見えるとは、マイクロ文字の色相、濃度、彩度が同一かほぼ同一に見えることを意味する(以下、本明細書では、特に断りのない限り、「同一かほぼ同一」を「ほぼ同一」という)。
【0026】
また、本発明において、光透過抑制層をスレッドの表面の全面に設けたスレッドまたは光の透過を抑制するベースフィルムを使用したスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙は、用紙を光に透かすとマイクロ文字が明瞭に見えるのは無論であるが、スレッド自体が光の透過を抑制するのでスレッド部分が暗く見え、スレッドが抄き込まれていることが明らかにわかる。これは、偽造を試みる者にとって偽造を困難にする。すなわち、偽造者は通常、印刷手段を用いて用紙の表面にマイクロ文字を印刷することで偽造を試みる。しかし、こうして偽造された用紙は光に透かしてもただマイクロ文字が見えるだけであり、本発明に係る偽造防止用紙のようにスレッドが抄き込まれているようには視認されないので、容易に偽造を見破ることができる。一方、光に透かしたときにあたかもスレッドが抄き込まれているかのように見えるように偽造する手段として、用紙の表面に二酸化チタンなどを主成分としたインキでスレッドに相当する印刷を施し、その上にマイクロ文字を印刷することが考えられる。しかし、このような用紙は、表面にスレッド状に印刷されたインキが周囲とは全く異なった状態(一般的には光沢に差がある状態)で視認されるので、本発明のようなスレッド抄き込み偽造防止用紙ではなく偽造であることを見破ることができる。
【0027】
本発明の偽造防止用紙は、このような特長を有するので、特に表裏両面を使用する用途、たとえばパスポート冊子の本文用紙、紙幣、商品券、身分証明用冊子などに好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係るスレッドにおいて、ベースフィルム上に形成される偽造防止層は、何らかの偽造防止効果を有する層であれば、どのような形態のものでも使用できる。たとえば、着色染料や着色顔料と接着剤を主原料とした塗料をベースフィルム上に形成した形態、透明または半透明の着色フィルムそのものをベースフィルムとして使用する形態、磁気粉末と接着剤を主成分とした塗料をベースフィルム上に形成した形態、磁性金属の蒸着層やスパッタリング層をベースフィルム上に形成した形態、ホログラム層をベースフィルム上に形成した形態、マイクロ文字や画像の印刷層をベースフィルム上に形成した形態、デメタライジング加工によるマイクロ文字や画像の層をベースフィルム上に形成した形態、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0029】
特に本発明の効果を最大限に発揮できるスレッドの形態は、本出願人がPCT/JP2006/313855において提案したものであることが好ましい。具体的には、基材の片側の面に所望のパターン状に形成された1以上の金属薄膜層、および該金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された着色樹脂層を備え、該金属薄膜層が有る領域と、該金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の該金属薄膜層および着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の着色樹脂層を視認できることを特徴とするスレッドが好ましい。さらに、前記基材の反対側の面に、所望のパターン状に形成された1以上の金属薄膜層、及び、該金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された着色樹脂層を備えたスレッドも好ましい。
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、偽造防止層としてマイクロ文字を形成したスレッドを代表例として説明する。
【0031】
図1はスレッドの斜視図である。図1に示すように、短冊状のベースフィルム1上に偽造防止層としてたとえばマイクロ文字2が形成されている。
【0032】
図2は従来のスレッドの断面図である。図2に示すように、このスレッド20は透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成したものである。図2のように、ベースフィルム1が透明である場合、スレッド20の表面から見た場合でも裏面から見た場合でも、マイクロ文字2の見え方は実質的に同じになる。
【0033】
図3は図2のスレッド20を3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図であり、図4は図2のスレッド20を2層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図である。
【0034】
図3において、3層抄き合わせ紙の紙層11、12、13の抄き合わせ比率は同一で1:1:1であるものとする。この場合、用紙の表面から見たときと裏面から見たときで、マイクロ文字の見え方が異なる。すなわち、表面から見たときには1層の紙層11を通してスレッド20上のマイクロ文字2を見ることになるのでマイクロ文字2の見え方が鮮明であるが、裏面から見たときには2層の紙層13、12を通してスレッド20上のマイクロ文字2を見ることになるので、マイクロ文字2の見え方が不鮮明になる。
【0035】
図4において、2層抄き合わせ紙の紙層14、15の抄き合わせ比率は同一で1:1であるものとする。この場合、用紙の表面から見たときと裏面から見たときで、それぞれほぼ同一厚さの紙層14または紙層15を通してスレッド20上のマイクロ文字2を見るので、マイクロ文字2の見え方はほぼ同一になる。
【0036】
本発明に係るスレッドは、図3に示したようにそれぞれ偽造防止用紙の表面および裏面からスレッドの偽造防止層までの厚み方向の距離が互いに異なっている場合に、用紙の表面から見ても裏面から見てもマイクロ文字の見え方がほぼ同一の見え方になるようにするものである。
【0037】
図5は本発明の一実施形態に係るスレッド10の断面図である。図5に示すように、このスレッド10は、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されている面の全面に光透過抑制層3を形成したものである。
【0038】
図6は図5のスレッド10を3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図である。図6に示すように、スレッド10は3層の紙層11、12、13のうち、紙層11と紙層12との間に抄き込んでいる。この場合、表面からは1層の紙層11を通して、裏面からは2層の紙層13、12を通して、それぞれスレッド10上のマイクロ文字2を見ることになるが、表面側ではマイクロ文字2上に形成された光透過抑制層3が光の透過を抑制するので、スレッド10上のマイクロ文字2の見え方は用紙の表面および裏面のいずれからでもほぼ同一になる。
【0039】
本発明者らが種々検討した結果、表面からでも裏面からでもマイクロ文字がほぼ同一に見えるためには、表面および裏面のそれぞれで観察される文字部の光線反射率の差が5%以内であることが好ましく、2%以内であることがより好ましいことが判明した。
【0040】
光透過抑制層3の光線透過率は、抄き合わせる紙層(11、12、13など)の厚みや不透明度などの特性によって適宜変化させるが、通常はJIS B9620−1に規定される方法で測定した光線透過率が20%〜60%であることが好ましい。
【0041】
本発明のスレッドは紙に抄き込まれた際に所定の効果を発揮するが、偽造防止用紙として通常想定される坪量50g/m2〜150g/m2の用紙に抄き込んだ際に、光線透過率が60%を超える場合には光の透過を抑制する層としての効果が得られず、逆に光線透過率が20%未満の場合には光を抑制しすぎて目的とする効果が得られなくなる。
【0042】
光透過抑制層3は、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウムや、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのプラスチックピグメントなどの白色顔料の1種類以上と、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロースなどの合成樹脂の1種類以上と、必要に応じて分散剤、流動性向上剤などの添加剤とを水若しくは有機溶剤に分散させた塗工液を塗工または印刷することによって得られる。顔料の割合は、通常、1質量%〜20質量%程度であることが好ましい。この塗工液をロールコーター、グラビアコーター、ワイヤバーコーターなどの塗工機やグラビア印刷機などで塗工または印刷することで、通常、厚み2〜20μmの塗工膜を形成する。顔料の割合と塗工厚を適宜変化させることで、光線透過率が20%〜60%である光透過抑制層3を形成することができる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態に係るスレッドについて説明する。
図7のスレッドは、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されていない面の全面に光透過抑制層3を形成したものである。このスレッドを図6のように紙層11と紙層12との間に抄き込む場合、スレッドの表裏を図6の場合と逆にして(反転させて)抄き込む。
【0044】
図8のスレッドは、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、マイクロ文字2上に光透過抑制層3を形成したものである。この構成のスレッドは、デメタライジング方式のマイクロ文字を形成する際に、レジスト材に前述した白色顔料を併用することで製造することができる。
【0045】
図9のスレッドは、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されている面の全面に光透過抑制層3aを形成するとともに、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されていない面の全面に光透過抑制層3bを形成したものであるが、裏面側の光透過抑制層3bは表面側の光透過抑制層3aより薄く形成されている。
【0046】
図10のスレッドは、光の透過を抑制するベースフィルム5上にマイクロ文字2を形成したものである。
【0047】
図11のスレッドは、光の透過を抑制するベースフィルム5上にマイクロ文字2を形成し、マイクロ文字2上に光透過抑制層3を形成したものである。光透過抑制層3は光の透過を抑制するベースフィルム5より薄く形成されている。
【0048】
図10および図11のように光の透過を抑制するベースフィルム5を用いる場合、光透過抑制層3の場合と同様に、JIS B9620−1に規定される方法で測定したベースフィルム5の光線透過率が20%〜60%であることが好ましい。
【0049】
マイクロ文字の形成手段としては、印刷とデメタライジング加工が代表例として知られている。
【0050】
印刷法によってマイクロ文字を形成する場合に使用するインキは、バインダー樹脂、着色顔料、白色顔料の他に、硬化剤、流動性改良剤、ブロッキング防止剤、静電防止剤、可塑剤、界面活性剤などの各種の助剤を必要に応じて配合することによって調製する。着色顔料としては、周知の有機または無機着色顔料を用いる。有機顔料としてはフタロシアニン系、アゾ系、アンスラキノン系など、無機顔料としてはカーボンブラック系、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、アルミニウムなどの金属粉末など、白色顔料としては前記顔料を使用することができる。
【0051】
デメタライジング加工によるマイクロ文字を形成する場合、公知の方法を用いることができる(特表2005−13585号公報など参照)。たとえば、金属アルミニウムを真空蒸着したベースフィルムに耐アルカリ性や耐酸性を有する樹脂インキでマイクロ文字を印刷して樹脂印刷層を形成した後、アルカリ性水溶液や酸性水溶液で印刷部以外のアルミニウムなどの蒸着層を洗い流す方法が用いられる。また、フォトレジストを蒸着層表面に塗布し、マイクロ文字パターンを露光し、レジストを硬化させた後にエッチング処理する方法も用いられる。これらの処理により印刷部または硬化レジスト部にアルミニウムなどの蒸着層を残し、印刷部以外または硬化レジスト部以外の個所ではベースフィルムを露出させる。デメタライジング加工の種々の変形例としては、本出願人がPCT/JP2006/313855において提案した方法が挙げられる。
【0052】
蒸着層に用いられる金属としては、アルミニウムが代表的であるが、この他にスズ、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルトなどの金属の単体や合金を使用できる。マイクロ文字列の少なくとも一部を、たとえばニッケル−コバルトのような磁性体の蒸着膜にすることで、磁気情報に基づく偽造防止手段とすることができる。金属蒸着層の厚みは通常25〜100nmが適切である。
【0053】
図12のスレッドは、透明なベースフィルム1の両面にデメタライジング加工によるマイクロ文字2Bを形成し、ベースフィルム1の一方の面の全面に光透過抑制層3を形成したものである。
【0054】
以下、本発明に係るスレッドの製造方法をより詳しく説明する。以下の記載において、g/m2、質量%、質量部はいずれも乾燥換算の値を示す。
【0055】
本発明において、ベースフィルムとしては、セロファン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレンなどの半合成または合成樹脂フィルムを単層または積層体の形態で使用できる。ベースフィルムは、抄紙機の乾燥ゾーンで融解または軟化せず、90〜110℃で粘着性を帯びないことが好ましい。ベースフィルムの厚みは、薄すぎると各種の加工が困難となり、厚すぎるとスレッドを紙層間に抄き込んだ場合に部分的に厚みが増して種々の問題点を引き起こすので、通常5μm〜25μmとすることが好ましい。
【0056】
ベースフィルムは、スレッドが紙層間に抄き込まれた偽造防止用紙や偽造防止印刷物の状態では、外観からその存在を視認できないことが好ましい。この条件を満たすフィルムとして無彩色のフィルムが挙げられる。ごく淡く着色した有彩色のフィルムでも、上記目的を達成できれば使用することができる。本発明においては、ベースフィルムの代表例として、物理的な強度が大きく、化学的にも安定なポリエステルフィルムが好適に使用できる。
【0057】
ベースフィルムは、紫外線を吸収する性質をもつことが好ましい。その理由は、接着剤に紫外線の照射によって発光する染料や顔料を併用し、用紙製造中に紫外線をスレッドに照射してスレッドの表裏を判定する方法を用いることが困難になるためである。すなわち、ベースフィルムが紫外線を吸収しないと、マイクロ文字を形成していない部分で紫外線がフィルムを透過するのでスレッドの両面で発光が観察され、スレッドの表裏を判定することが困難になる。ベースフィルムにこのような性質を与えるには、基材製造時に紫外線吸収剤を練り込むか、または基材の表面に紫外線を吸収する塗工層を設けるかのいずれかの周知の手段を採用できる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、トリアジン系、トリアゾール系、サリチル酸系、ハイドロキノン系、アミン系、酸化亜鉛や酸化チタンなどの超微粒子金属酸化物系などの材料を使用することができる。紫外線吸収剤の添加量は基材に対して通常0.01〜5質量%である。
【0058】
次に、ベースフィルム上に、印刷法やデメタライジング法によってマイクロ文字を形成する。必要に応じてベースフィルムの一面または両面に接着剤を塗工する。接着剤としては、抄紙機のドライヤーで軟化または溶融して、用紙と強固に接着する性能を有するものを使用する。具体的には、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系などの接着剤を水系または溶剤系の塗料とし、ロールコーターやグラビアコーターなどの塗工機を用いて基材の表面に塗工することにより形成できる。接着剤の塗工量は、通常0.1〜10g/m2である。接着剤には必要に応じて、ブロッキング防止剤、潤滑剤、着色剤、紫外蛍光発色剤などを添加してもよい。前述したように、スレッドの表裏を判定する場合には、ベースフィルムとして紫外線を吸収するベースフィルムを使用し、接着剤に紫外蛍光発色剤を添加して、一面だけにこの接着剤を塗工したスレッドを製造し、紫外線の照射による発光の有無に基づいてスレッドの表裏を判定する。
【0059】
ベースフィルムは、透明なベースフィルム1でも、光の透過を抑制するやや不透明なベースフィルム5でもよい。光の透過を抑制するベースフィルム5は、透明フィルムの表面をサンドブラスト加工したり、透明フィルムに白色顔料を練り込んだりすることによって作製することができる。
【0060】
次いで、マイクロスリッター装置を使用して、常法に従い所定の巾でベースフィルムをスリットすることにより本発明のスレッドを製造することができる。スレッドの巾は、通常0.5mm〜10mmである。スレッド上のマイクロ文字は、1列以上の正文字や正模様のパターンが視認できるように形成する。
【0061】
次に、本発明の偽造防止用紙の製造方法の一例を説明する。
まず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプを主体とし、ビーターやディスクリファイナーなどを使用して叩解処理し、これに白土、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの各種填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、定着剤などを適宜併用し紙料を調製する。
【0062】
本発明の偽造防止用紙は、従来公知の方法を使用して製造できる。たとえば、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(特許文献3)などを採用できる。本発明の偽造防止用紙は、これら以外の方法を採用して製造してもよい。
【0063】
また、抄紙中に紙面にポリアクリルアマイド樹脂、澱粉、ポリビニルアルコールなどを塗工してもよい。必要に応じて、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。用紙の坪量は、通常50〜150g/m2である。
【0064】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
[実施例1]
[印刷法によるマイクロ文字入りスレッドの製造例]
ベースフィルムとして厚み12μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラー(商品名))の巻き取りを用意した。このベースフィルムの一面に黒インキを使用してマイクロ文字を印刷した。このマイクロ文字は、「SECURITY」の正文字と逆文字(フィルムを裏返して見た時に「SECURITY」の正文字に見える)との繰り返しパターンになっている。マイクロ文字の大きさは2.5ポイント(ポイント数はアメリカ式ポイント数を意味し、1ポイントは約0.35mm)、文字と文字の間隔は0.3mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。ベースフィルムのマイクロ文字が印刷されている面の全面に、二酸化チタン10質量部、ポリアクリル酸エステル系樹脂30質量部、シクロヘキサノン30質量部、芳香族炭化水素30質量部よりなる塗料を10μmの厚みで塗工し、光透過抑制層を形成した。ベースフィルムの透明な個所の透過率(光透過抑制層の透過率に相当する)を、JIS B−9620−1に準拠してマクベス濃度計TD−904で測定したところ、29%であった。
【0065】
ベースフィルムの裏面に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を自己架橋型のポリエステルアクリル酸エステル樹脂に混合した紫外線吸収層を2μmの厚みで形成した。さらにこの面に、2.5質量%のオキサゾール系蛍光発色剤を添加したエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚みで塗工して接着剤層を形成した。次いで、マイクロスリッターを使用して巾2.4mmのスレッドを製造した。
【0066】
[実施例2]
[デメタライジング加工による両面マイクロ文字入りスレッドの製造例]
図13に本実施例の両面マイクロ文字入りスレッドの平面図を示す。ベースフィルムとして厚み12μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラー(商品名))の巻き取りを用意した。真空蒸着機を使用して常法に従い、このベースフィルムの両面に金属アルミニウムを50nm(ナノメートル)ずつ蒸着した。この両面に、グラビア印刷機を使用し、青色に着色した耐アルカリ性樹脂インキ(デメタライジング加工用アクリル系樹脂100質量部に青色染料オレオゾールブルー(住友化学工業社製)を20質量部配合したもの)で着色した樹脂印刷層(マイクロ文字印刷層)を形成した。このマイクロ文字は、「★ABCD」の正文字と逆文字との繰り返しパターンになっている。マイクロ文字の大きさは2.5ポイント、文字と文字の間隔は0.4mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。図13に示すように、文字列はスレッドの長さ方向に対して18度傾斜して印刷されている。常法に従い、水酸化アルミニウム水溶液を使用して、デメタライジング加工を施し、水洗、乾燥してロールに巻き取った。ベースフィルムの表面側に、二酸化チタン10質量部、ポリアクリル酸エステル系樹脂30質量部、シクロヘキサノン30質量部、芳香族炭化水素30質量部よりなる塗料を10μmの厚みで塗工し、光透過抑制層を形成した。ベースフィルムの透明な個所の透過率(光透過抑制層の透過率に相当する)を、JIS B−9620−1に準拠してマクベス濃度計TD−904で測定したところ、29%であった。
【0067】
ベースフィルムの裏面側に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を自己架橋型のポリエステルアクリル酸エステル樹脂に混合した紫外線吸収層を2μmの厚みで形成した。さらにこの面に、2.5質量%のオキサゾール系蛍光発色剤を添加したエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚みで塗工して接着剤層を形成した。次いで、マイクロスリッターを使用して巾2.4mmのスレッドを製造した。
【0068】
[実施例3]
[偽造防止用紙の製造]
NBKP25質量部、LBKP75質量部をフリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部、二酸化チタン5質量部、紙力増強剤(荒川化学工業社製、ポリストロン(商品名))0.4質量部、サイズ剤(荒川化学工業社製、サイズパインE(商品名))1.0質量部、硫酸バンドを適量加え、紙料を調製した。
【0069】
3槽式円網抄紙機の各槽でそれぞれ坪量33.3g/m2の紙匹を抄造し、3層を抄き合わせる際に、紙層間に実施例1で製造したスレッドを抄き込んだ。この際、厚みの薄い(1層の紙層に相当)側にスレッドの光透過抑制層が位置するようにスレッドを抄き込んだ。スレッドを紙層間に抄き込んだ直後に紫外蛍光ランプを照射し、スレッドが紫外蛍光発色するか否かでスレッドの表裏を判定し、スレッドが反転していた場合は正常な面が抄き込まれるようにスレッドを挿入し直した。その後、常法に従い乾燥して偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙を反射光でそれぞれ表面および裏面から観察すると、どちらの面からも黒色のマイクロ文字の見え方がほぼ同一であった。このとき、表面および裏面での文字部の光線反射率の差は2%以内であった。
【0070】
[実施例4]
〔偽造防止用紙の製造〕
実施例2で得られたスレッドに用いた以外は実施例3と同様にして偽造防止用紙を製造した。スレッドを紙層間に抄き込んだ直後に紫外蛍光ランプを照射し、スレッドが紫外蛍光発色するか否かでスレッドの表裏を判定し、スレッドが反転していた場合は正常な面が抄き込まれるようにスレッドを挿入し直した。得られた偽造防止用紙を反射光でそれぞれ表面および裏面から観察すると、どちらの面からも青色のマイクロ文字の見え方がほぼ同一であった。このとき、表面および裏面での文字部の光線反射率の差は2%以内であった。
【0071】
[実施例5]
〔偽造防止印刷物の製造〕
図14に示すように、実施例3の偽造防止用紙を使用し、商品券の図柄など印刷部30を印刷して偽造防止印刷物40を製造した。
【0072】
この偽造防止印刷物40をそれぞれ表面および裏面から反射光で観察すると、抄き込まれたスレッドのマイクロ文字(「SECURITY」の正文字と逆文字)の見え方がほぼ同一であった。
【0073】
[実施例6]
〔偽造防止印刷物の製造〕
図14に示すように、実施例4の偽造防止用紙を使用し、商品券の図柄など印刷部30を印刷して偽造防止印刷物40を製造した。
【0074】
この偽造防止印刷物40をそれぞれ表面および裏面から反射光で観察すると、抄き込まれたスレッドの青色に着色されたマイクロ文字はいずれも正文字「★ABCD」として視認され、金属蒸着層は左右逆向きの文字としてごく薄く視認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】スレッドの斜視図。
【図2】従来のスレッドの断面図。
【図3】図2のスレッドを3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図。
【図4】図2のスレッドを2層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るスレッドの断面図。
【図6】図5のスレッドを3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図8】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図9】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図10】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図13】実施例2における両面マイクロ文字入りスレッドの平面図。
【図14】実施例5および6における偽造防止印刷物の平面図。
【符号の説明】
【0076】
1…透明なベースフィルム、2、2B…マイクロ文字、3、3a、3b…光透過抑制層、5…光の透過を抑制するベースフィルム、10…スレッド、11、12、13…紙層、20…スレッド、30…印刷部、40…偽造防止用紙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止が要望される分野に好適に用いられるスレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片などとも称される)と、そのスレッドを抄き込んだスレッド入り紙でなる偽造防止用紙、およびそれらを利用した有価証券類、紙幣類などの偽造防止印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙層内に、スレッドと呼ばれる糸状物を抄き込んだ「スレッド入り紙」は、偽造防止用紙の一形態としてよく知られている。このスレッドは、周知のように、ベースフィルムの表面に、ホログラム層、金属蒸着層、磁気層、マイクロ文字層、マイクロ画像層、サーモクロミック層、紫外蛍光発色層、干渉色発現層などの偽造防止層を設け、マイクロスリッター加工により製造される。前記スレッド入り紙は製造に極めて高度な技術を必要とするので偽造防止に大きな効果があり、周知のように各国の紙幣などに多用されている。
【0003】
前記スレッド入り紙は大きく2種類に分類される。その一つはスレッドが用紙内部に抄き込まれ、用紙表面に露出しないものである。もう一つはスレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と呼ばれるものである。
【0004】
前者の用紙を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献3)などが提案されている。
【0005】
後者の「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(たとえば特許文献4)や、円網抄紙機を使用して多層抄き合わせ紙を製造する際に、最外層に窓空き部を形成した紙層が位置するようにし、他の紙層は窓空き部を形成しない紙層が位置するようにして抄き合わせ、抄き合わせる際に窓空き部にスレッドが露出するようにスレッドを抄き込む製造方法(たとえば特許文献5)が代表的な製造方法である。
【0006】
以下、スレッドの代表例として、ベースフィルムの表面に偽造防止層としてマイクロ文字を形成したマイクロ文字入りスレッドについて説明する。その理由は、マイクロ文字入りスレッドを用いた偽造防止用紙において本発明の効果が最大限に発揮できるからである。
【0007】
マイクロ文字入りスレッドは、着色インクを用いてプラスチックフィルムにマイクロ文字印刷を施してスレッド化する方法や、プラスチックフィルムにマイクロ文字を直接箔押しする方法や、真空蒸着装置においてマスクまたはテンプレートを使用して選択的に金属化する方法、金属化した後に腐食によりデメタライジング加工する方法が知られている(たとえば特許文献6)。これらのうち、着色インキによりマイクロ文字を形成したスレッドや、「デメタライジング加工」によりマイクロ文字を形成したスレッドは、紙幣用紙、パスポート用紙、商品券用紙などに多用されている。
【特許文献1】特開昭51−130309号公報
【特許文献2】特開平2−169790号公報
【特許文献3】特公平5−40080号公報
【特許文献4】米国特許第4462866号公報
【特許文献5】特許第2845197号
【特許文献6】特公平6−062030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
紙は厚みが薄い場合には光を多く透過するが、厚みが増すに従って光を透過しにくくなる。処方によっても異なるが、たとえば坪量90g/m2のパスポート冊子の本文用紙に使用される偽造防止用紙で、不透明度(JIS P8149に規定)は80〜90%の値を示すことが多い。用紙の不透明度がこの程度であれば、透明なベースフィルム上にマイクロ文字を形成したスレッドを用紙に抄き込んだ場合、用紙の表面および裏面からマイクロ文字を読むことができる。ただし、スレッドが紙の厚み方向に対してほぼ中央に抄き込まれていないと、用紙の表から見た場合と裏から見た場合とで、マイクロ文字の見え方が同一ではなく、かなり異なった見え方になる。しかし、たとえばパスポート冊子の本文用紙のように表裏両面を利用するような用途においては、各頁の表側と裏側でスレッドに形成されたマイクロ文字の見え方が同一でないと不都合を生じる。
【0009】
また、偽造防止用紙はスレッドの抄き込みのほかに種々の偽造防止技術を採用することが多い。その代表的な技術に「透かし」がある。透かしは周知のように、円網抄紙機の円網シリンダーや、長網抄紙機のダンディーロールの上網に、(1)金属やプラスチック製の型を貼り付けたり、(2)上網の目を部分的に樹脂などで塗りつぶしたり、(3)上網に凹凸加工を施した網を使用して製造されている。
【0010】
上記(1)、(2)の方法では、型の部分の網目が塞がれているので紙料の通過が抑制され、この部分には紙層が形成されないか形成されても薄くなるため、透かしが発現する。(3)の方法では、透かし模様を網の凹凸として打ち出すが、網の目は塞がれていない。透かし模様は網の凹凸の大きさ、網の斜面の角度などにより繊維の堆積に差が生じて透かしが発現する。
【0011】
透かし入りの用紙は、単層抄きの用紙、多層抄き合せの用紙のいずれにおいても製造されている。多層抄き合せの透かし入り用紙においては、透かしの効果を最大限に発揮させるために必ずしも各層を同じ重量に抄き合わせるとは限らないし、奇数の紙層を抄き合わせる場合もある。たとえば100g/m2の透かし入りの用紙を3層抄き合わせで製造するとして、表面層および裏面層を30g/m2ずつとし、中間層を40g/m2として、中間層に透かしを入れるようなことが行われる。また、透かしを入れなくても、紫外蛍光発色繊維を3層抄き合わせ紙の中間層に抄き込み、この用紙にマイクロ文字入りのスレッドを抄き込む場合もある。このような場合、表面層の紙層と中間層の紙層との間、または裏面層の紙層と中間層の紙層との間のどちらかにスレッドを挿入することになる。
【0012】
仮に前者の構成で用紙を製造したとすると、表面からは30g/m2の紙層を通して、裏面からは70g/m2の紙層を通してスレッドに形成されたマイクロ文字を読むことになる。30g/m2の紙層と70g/m2の紙層では、当然のことながら、光の透過率は30g/m2の方が大きいので、表面から見たときの方が裏面から見たときよりマイクロ文字が鮮明に見えることになる。このため、前述したように、パスポート冊子の本文用紙のように表裏両面を利用するような用途においては、表裏両面からマイクロ文字が同一の見え方で見えることが要求されるにもかかわらず、裏面からはマイクロ文字が見えにくいという不都合を生じる。
【0013】
本発明の目的は、マイクロ文字を形成したスレッドを用紙に抄き込んだときに、スレッドの抄き込まれた位置が表面側または裏面側に偏っていても、用紙の表面または裏面から視認した際にマイクロ文字が同一の見え方で見えるようなスレッド、このようなスレッドを用いた偽造防止用紙および偽造防止印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、透明なベースフィルムと、前記透明なベースフィルム上に形成された偽造防止層と、前記透明なベースフィルムの一面または両面に、少なくとも前記偽造防止層に対応して形成された光透過抑制層とを有することを特徴とするスレッドである。
【0015】
請求項2の発明は、偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、光の透過を抑制するベースフィルムと、前記光の透過を抑制するベースフィルム上に形成された偽造防止層とを有することを特徴とするスレッドである。
【0016】
請求項3の発明は、前記光透過抑制層の光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項1に記載のスレッドである。
【0017】
請求項4の発明は、前記光の透過を抑制するベースフィルムの光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項2に記載のスレッドである。
【0018】
請求項5の発明は、前記偽造防止層が、所望のパターンを形成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスレッドである。
【0019】
請求項6の発明は、前記パターンが、有彩色もしくは無彩色のインキで形成されたマイクロ文字、またはデメタライジングにより形成されたマイクロ文字であることを特徴とする請求項1乃至5項のいずれか1項に記載のスレッドである。
【0020】
請求項7の発明は、前記光透過抑制層がデメタライジングのための保護層であることを特徴とする請求項6に記載のスレッドである。
【0021】
請求項8の発明は、前記マイクロ文字がベースフィルムの一面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッドである。
【0022】
請求項9の発明は、前記マイクロ文字がベースフィルムの両面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッドである。
【0023】
請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のスレッドが抄き込まれた偽造防止用紙であって、それぞれ偽造防止用紙の表面および裏面から前記スレッドの偽造防止層までの厚み方向の距離が互いに異なることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0024】
請求項11の発明は、請求項10に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷部が設けられていることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスレッドによれば、透明なベースフィルム上に形成された偽造防止層に対応して光透過抑制層を形成するか、または光の透過を抑制するベースフィルム上に偽造防止層を形成したことにより、マイクロ文字を形成したスレッドを用紙の厚み方向において中央からずれた位置に抄き込んだとしても、用紙の表面または裏面から視認した際にマイクロ文字が実質的に同一の見え方で見えるようになる。ここで、マイクロ文字が実質的に同一の見え方で見えるとは、マイクロ文字の色相、濃度、彩度が同一かほぼ同一に見えることを意味する(以下、本明細書では、特に断りのない限り、「同一かほぼ同一」を「ほぼ同一」という)。
【0026】
また、本発明において、光透過抑制層をスレッドの表面の全面に設けたスレッドまたは光の透過を抑制するベースフィルムを使用したスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙は、用紙を光に透かすとマイクロ文字が明瞭に見えるのは無論であるが、スレッド自体が光の透過を抑制するのでスレッド部分が暗く見え、スレッドが抄き込まれていることが明らかにわかる。これは、偽造を試みる者にとって偽造を困難にする。すなわち、偽造者は通常、印刷手段を用いて用紙の表面にマイクロ文字を印刷することで偽造を試みる。しかし、こうして偽造された用紙は光に透かしてもただマイクロ文字が見えるだけであり、本発明に係る偽造防止用紙のようにスレッドが抄き込まれているようには視認されないので、容易に偽造を見破ることができる。一方、光に透かしたときにあたかもスレッドが抄き込まれているかのように見えるように偽造する手段として、用紙の表面に二酸化チタンなどを主成分としたインキでスレッドに相当する印刷を施し、その上にマイクロ文字を印刷することが考えられる。しかし、このような用紙は、表面にスレッド状に印刷されたインキが周囲とは全く異なった状態(一般的には光沢に差がある状態)で視認されるので、本発明のようなスレッド抄き込み偽造防止用紙ではなく偽造であることを見破ることができる。
【0027】
本発明の偽造防止用紙は、このような特長を有するので、特に表裏両面を使用する用途、たとえばパスポート冊子の本文用紙、紙幣、商品券、身分証明用冊子などに好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係るスレッドにおいて、ベースフィルム上に形成される偽造防止層は、何らかの偽造防止効果を有する層であれば、どのような形態のものでも使用できる。たとえば、着色染料や着色顔料と接着剤を主原料とした塗料をベースフィルム上に形成した形態、透明または半透明の着色フィルムそのものをベースフィルムとして使用する形態、磁気粉末と接着剤を主成分とした塗料をベースフィルム上に形成した形態、磁性金属の蒸着層やスパッタリング層をベースフィルム上に形成した形態、ホログラム層をベースフィルム上に形成した形態、マイクロ文字や画像の印刷層をベースフィルム上に形成した形態、デメタライジング加工によるマイクロ文字や画像の層をベースフィルム上に形成した形態、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0029】
特に本発明の効果を最大限に発揮できるスレッドの形態は、本出願人がPCT/JP2006/313855において提案したものであることが好ましい。具体的には、基材の片側の面に所望のパターン状に形成された1以上の金属薄膜層、および該金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された着色樹脂層を備え、該金属薄膜層が有る領域と、該金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の該金属薄膜層および着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の着色樹脂層を視認できることを特徴とするスレッドが好ましい。さらに、前記基材の反対側の面に、所望のパターン状に形成された1以上の金属薄膜層、及び、該金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された着色樹脂層を備えたスレッドも好ましい。
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、偽造防止層としてマイクロ文字を形成したスレッドを代表例として説明する。
【0031】
図1はスレッドの斜視図である。図1に示すように、短冊状のベースフィルム1上に偽造防止層としてたとえばマイクロ文字2が形成されている。
【0032】
図2は従来のスレッドの断面図である。図2に示すように、このスレッド20は透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成したものである。図2のように、ベースフィルム1が透明である場合、スレッド20の表面から見た場合でも裏面から見た場合でも、マイクロ文字2の見え方は実質的に同じになる。
【0033】
図3は図2のスレッド20を3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図であり、図4は図2のスレッド20を2層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図である。
【0034】
図3において、3層抄き合わせ紙の紙層11、12、13の抄き合わせ比率は同一で1:1:1であるものとする。この場合、用紙の表面から見たときと裏面から見たときで、マイクロ文字の見え方が異なる。すなわち、表面から見たときには1層の紙層11を通してスレッド20上のマイクロ文字2を見ることになるのでマイクロ文字2の見え方が鮮明であるが、裏面から見たときには2層の紙層13、12を通してスレッド20上のマイクロ文字2を見ることになるので、マイクロ文字2の見え方が不鮮明になる。
【0035】
図4において、2層抄き合わせ紙の紙層14、15の抄き合わせ比率は同一で1:1であるものとする。この場合、用紙の表面から見たときと裏面から見たときで、それぞれほぼ同一厚さの紙層14または紙層15を通してスレッド20上のマイクロ文字2を見るので、マイクロ文字2の見え方はほぼ同一になる。
【0036】
本発明に係るスレッドは、図3に示したようにそれぞれ偽造防止用紙の表面および裏面からスレッドの偽造防止層までの厚み方向の距離が互いに異なっている場合に、用紙の表面から見ても裏面から見てもマイクロ文字の見え方がほぼ同一の見え方になるようにするものである。
【0037】
図5は本発明の一実施形態に係るスレッド10の断面図である。図5に示すように、このスレッド10は、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されている面の全面に光透過抑制層3を形成したものである。
【0038】
図6は図5のスレッド10を3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図である。図6に示すように、スレッド10は3層の紙層11、12、13のうち、紙層11と紙層12との間に抄き込んでいる。この場合、表面からは1層の紙層11を通して、裏面からは2層の紙層13、12を通して、それぞれスレッド10上のマイクロ文字2を見ることになるが、表面側ではマイクロ文字2上に形成された光透過抑制層3が光の透過を抑制するので、スレッド10上のマイクロ文字2の見え方は用紙の表面および裏面のいずれからでもほぼ同一になる。
【0039】
本発明者らが種々検討した結果、表面からでも裏面からでもマイクロ文字がほぼ同一に見えるためには、表面および裏面のそれぞれで観察される文字部の光線反射率の差が5%以内であることが好ましく、2%以内であることがより好ましいことが判明した。
【0040】
光透過抑制層3の光線透過率は、抄き合わせる紙層(11、12、13など)の厚みや不透明度などの特性によって適宜変化させるが、通常はJIS B9620−1に規定される方法で測定した光線透過率が20%〜60%であることが好ましい。
【0041】
本発明のスレッドは紙に抄き込まれた際に所定の効果を発揮するが、偽造防止用紙として通常想定される坪量50g/m2〜150g/m2の用紙に抄き込んだ際に、光線透過率が60%を超える場合には光の透過を抑制する層としての効果が得られず、逆に光線透過率が20%未満の場合には光を抑制しすぎて目的とする効果が得られなくなる。
【0042】
光透過抑制層3は、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウムや、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのプラスチックピグメントなどの白色顔料の1種類以上と、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロースなどの合成樹脂の1種類以上と、必要に応じて分散剤、流動性向上剤などの添加剤とを水若しくは有機溶剤に分散させた塗工液を塗工または印刷することによって得られる。顔料の割合は、通常、1質量%〜20質量%程度であることが好ましい。この塗工液をロールコーター、グラビアコーター、ワイヤバーコーターなどの塗工機やグラビア印刷機などで塗工または印刷することで、通常、厚み2〜20μmの塗工膜を形成する。顔料の割合と塗工厚を適宜変化させることで、光線透過率が20%〜60%である光透過抑制層3を形成することができる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態に係るスレッドについて説明する。
図7のスレッドは、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されていない面の全面に光透過抑制層3を形成したものである。このスレッドを図6のように紙層11と紙層12との間に抄き込む場合、スレッドの表裏を図6の場合と逆にして(反転させて)抄き込む。
【0044】
図8のスレッドは、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、マイクロ文字2上に光透過抑制層3を形成したものである。この構成のスレッドは、デメタライジング方式のマイクロ文字を形成する際に、レジスト材に前述した白色顔料を併用することで製造することができる。
【0045】
図9のスレッドは、透明なベースフィルム1上に偽造防止層としてマイクロ文字2を形成し、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されている面の全面に光透過抑制層3aを形成するとともに、ベースフィルム1のマイクロ文字2が形成されていない面の全面に光透過抑制層3bを形成したものであるが、裏面側の光透過抑制層3bは表面側の光透過抑制層3aより薄く形成されている。
【0046】
図10のスレッドは、光の透過を抑制するベースフィルム5上にマイクロ文字2を形成したものである。
【0047】
図11のスレッドは、光の透過を抑制するベースフィルム5上にマイクロ文字2を形成し、マイクロ文字2上に光透過抑制層3を形成したものである。光透過抑制層3は光の透過を抑制するベースフィルム5より薄く形成されている。
【0048】
図10および図11のように光の透過を抑制するベースフィルム5を用いる場合、光透過抑制層3の場合と同様に、JIS B9620−1に規定される方法で測定したベースフィルム5の光線透過率が20%〜60%であることが好ましい。
【0049】
マイクロ文字の形成手段としては、印刷とデメタライジング加工が代表例として知られている。
【0050】
印刷法によってマイクロ文字を形成する場合に使用するインキは、バインダー樹脂、着色顔料、白色顔料の他に、硬化剤、流動性改良剤、ブロッキング防止剤、静電防止剤、可塑剤、界面活性剤などの各種の助剤を必要に応じて配合することによって調製する。着色顔料としては、周知の有機または無機着色顔料を用いる。有機顔料としてはフタロシアニン系、アゾ系、アンスラキノン系など、無機顔料としてはカーボンブラック系、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、アルミニウムなどの金属粉末など、白色顔料としては前記顔料を使用することができる。
【0051】
デメタライジング加工によるマイクロ文字を形成する場合、公知の方法を用いることができる(特表2005−13585号公報など参照)。たとえば、金属アルミニウムを真空蒸着したベースフィルムに耐アルカリ性や耐酸性を有する樹脂インキでマイクロ文字を印刷して樹脂印刷層を形成した後、アルカリ性水溶液や酸性水溶液で印刷部以外のアルミニウムなどの蒸着層を洗い流す方法が用いられる。また、フォトレジストを蒸着層表面に塗布し、マイクロ文字パターンを露光し、レジストを硬化させた後にエッチング処理する方法も用いられる。これらの処理により印刷部または硬化レジスト部にアルミニウムなどの蒸着層を残し、印刷部以外または硬化レジスト部以外の個所ではベースフィルムを露出させる。デメタライジング加工の種々の変形例としては、本出願人がPCT/JP2006/313855において提案した方法が挙げられる。
【0052】
蒸着層に用いられる金属としては、アルミニウムが代表的であるが、この他にスズ、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルトなどの金属の単体や合金を使用できる。マイクロ文字列の少なくとも一部を、たとえばニッケル−コバルトのような磁性体の蒸着膜にすることで、磁気情報に基づく偽造防止手段とすることができる。金属蒸着層の厚みは通常25〜100nmが適切である。
【0053】
図12のスレッドは、透明なベースフィルム1の両面にデメタライジング加工によるマイクロ文字2Bを形成し、ベースフィルム1の一方の面の全面に光透過抑制層3を形成したものである。
【0054】
以下、本発明に係るスレッドの製造方法をより詳しく説明する。以下の記載において、g/m2、質量%、質量部はいずれも乾燥換算の値を示す。
【0055】
本発明において、ベースフィルムとしては、セロファン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレンなどの半合成または合成樹脂フィルムを単層または積層体の形態で使用できる。ベースフィルムは、抄紙機の乾燥ゾーンで融解または軟化せず、90〜110℃で粘着性を帯びないことが好ましい。ベースフィルムの厚みは、薄すぎると各種の加工が困難となり、厚すぎるとスレッドを紙層間に抄き込んだ場合に部分的に厚みが増して種々の問題点を引き起こすので、通常5μm〜25μmとすることが好ましい。
【0056】
ベースフィルムは、スレッドが紙層間に抄き込まれた偽造防止用紙や偽造防止印刷物の状態では、外観からその存在を視認できないことが好ましい。この条件を満たすフィルムとして無彩色のフィルムが挙げられる。ごく淡く着色した有彩色のフィルムでも、上記目的を達成できれば使用することができる。本発明においては、ベースフィルムの代表例として、物理的な強度が大きく、化学的にも安定なポリエステルフィルムが好適に使用できる。
【0057】
ベースフィルムは、紫外線を吸収する性質をもつことが好ましい。その理由は、接着剤に紫外線の照射によって発光する染料や顔料を併用し、用紙製造中に紫外線をスレッドに照射してスレッドの表裏を判定する方法を用いることが困難になるためである。すなわち、ベースフィルムが紫外線を吸収しないと、マイクロ文字を形成していない部分で紫外線がフィルムを透過するのでスレッドの両面で発光が観察され、スレッドの表裏を判定することが困難になる。ベースフィルムにこのような性質を与えるには、基材製造時に紫外線吸収剤を練り込むか、または基材の表面に紫外線を吸収する塗工層を設けるかのいずれかの周知の手段を採用できる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、トリアジン系、トリアゾール系、サリチル酸系、ハイドロキノン系、アミン系、酸化亜鉛や酸化チタンなどの超微粒子金属酸化物系などの材料を使用することができる。紫外線吸収剤の添加量は基材に対して通常0.01〜5質量%である。
【0058】
次に、ベースフィルム上に、印刷法やデメタライジング法によってマイクロ文字を形成する。必要に応じてベースフィルムの一面または両面に接着剤を塗工する。接着剤としては、抄紙機のドライヤーで軟化または溶融して、用紙と強固に接着する性能を有するものを使用する。具体的には、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系などの接着剤を水系または溶剤系の塗料とし、ロールコーターやグラビアコーターなどの塗工機を用いて基材の表面に塗工することにより形成できる。接着剤の塗工量は、通常0.1〜10g/m2である。接着剤には必要に応じて、ブロッキング防止剤、潤滑剤、着色剤、紫外蛍光発色剤などを添加してもよい。前述したように、スレッドの表裏を判定する場合には、ベースフィルムとして紫外線を吸収するベースフィルムを使用し、接着剤に紫外蛍光発色剤を添加して、一面だけにこの接着剤を塗工したスレッドを製造し、紫外線の照射による発光の有無に基づいてスレッドの表裏を判定する。
【0059】
ベースフィルムは、透明なベースフィルム1でも、光の透過を抑制するやや不透明なベースフィルム5でもよい。光の透過を抑制するベースフィルム5は、透明フィルムの表面をサンドブラスト加工したり、透明フィルムに白色顔料を練り込んだりすることによって作製することができる。
【0060】
次いで、マイクロスリッター装置を使用して、常法に従い所定の巾でベースフィルムをスリットすることにより本発明のスレッドを製造することができる。スレッドの巾は、通常0.5mm〜10mmである。スレッド上のマイクロ文字は、1列以上の正文字や正模様のパターンが視認できるように形成する。
【0061】
次に、本発明の偽造防止用紙の製造方法の一例を説明する。
まず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプを主体とし、ビーターやディスクリファイナーなどを使用して叩解処理し、これに白土、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの各種填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、定着剤などを適宜併用し紙料を調製する。
【0062】
本発明の偽造防止用紙は、従来公知の方法を使用して製造できる。たとえば、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(特許文献3)などを採用できる。本発明の偽造防止用紙は、これら以外の方法を採用して製造してもよい。
【0063】
また、抄紙中に紙面にポリアクリルアマイド樹脂、澱粉、ポリビニルアルコールなどを塗工してもよい。必要に応じて、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。用紙の坪量は、通常50〜150g/m2である。
【0064】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
[実施例1]
[印刷法によるマイクロ文字入りスレッドの製造例]
ベースフィルムとして厚み12μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラー(商品名))の巻き取りを用意した。このベースフィルムの一面に黒インキを使用してマイクロ文字を印刷した。このマイクロ文字は、「SECURITY」の正文字と逆文字(フィルムを裏返して見た時に「SECURITY」の正文字に見える)との繰り返しパターンになっている。マイクロ文字の大きさは2.5ポイント(ポイント数はアメリカ式ポイント数を意味し、1ポイントは約0.35mm)、文字と文字の間隔は0.3mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。ベースフィルムのマイクロ文字が印刷されている面の全面に、二酸化チタン10質量部、ポリアクリル酸エステル系樹脂30質量部、シクロヘキサノン30質量部、芳香族炭化水素30質量部よりなる塗料を10μmの厚みで塗工し、光透過抑制層を形成した。ベースフィルムの透明な個所の透過率(光透過抑制層の透過率に相当する)を、JIS B−9620−1に準拠してマクベス濃度計TD−904で測定したところ、29%であった。
【0065】
ベースフィルムの裏面に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を自己架橋型のポリエステルアクリル酸エステル樹脂に混合した紫外線吸収層を2μmの厚みで形成した。さらにこの面に、2.5質量%のオキサゾール系蛍光発色剤を添加したエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚みで塗工して接着剤層を形成した。次いで、マイクロスリッターを使用して巾2.4mmのスレッドを製造した。
【0066】
[実施例2]
[デメタライジング加工による両面マイクロ文字入りスレッドの製造例]
図13に本実施例の両面マイクロ文字入りスレッドの平面図を示す。ベースフィルムとして厚み12μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラー(商品名))の巻き取りを用意した。真空蒸着機を使用して常法に従い、このベースフィルムの両面に金属アルミニウムを50nm(ナノメートル)ずつ蒸着した。この両面に、グラビア印刷機を使用し、青色に着色した耐アルカリ性樹脂インキ(デメタライジング加工用アクリル系樹脂100質量部に青色染料オレオゾールブルー(住友化学工業社製)を20質量部配合したもの)で着色した樹脂印刷層(マイクロ文字印刷層)を形成した。このマイクロ文字は、「★ABCD」の正文字と逆文字との繰り返しパターンになっている。マイクロ文字の大きさは2.5ポイント、文字と文字の間隔は0.4mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。図13に示すように、文字列はスレッドの長さ方向に対して18度傾斜して印刷されている。常法に従い、水酸化アルミニウム水溶液を使用して、デメタライジング加工を施し、水洗、乾燥してロールに巻き取った。ベースフィルムの表面側に、二酸化チタン10質量部、ポリアクリル酸エステル系樹脂30質量部、シクロヘキサノン30質量部、芳香族炭化水素30質量部よりなる塗料を10μmの厚みで塗工し、光透過抑制層を形成した。ベースフィルムの透明な個所の透過率(光透過抑制層の透過率に相当する)を、JIS B−9620−1に準拠してマクベス濃度計TD−904で測定したところ、29%であった。
【0067】
ベースフィルムの裏面側に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を自己架橋型のポリエステルアクリル酸エステル樹脂に混合した紫外線吸収層を2μmの厚みで形成した。さらにこの面に、2.5質量%のオキサゾール系蛍光発色剤を添加したエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚みで塗工して接着剤層を形成した。次いで、マイクロスリッターを使用して巾2.4mmのスレッドを製造した。
【0068】
[実施例3]
[偽造防止用紙の製造]
NBKP25質量部、LBKP75質量部をフリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部、二酸化チタン5質量部、紙力増強剤(荒川化学工業社製、ポリストロン(商品名))0.4質量部、サイズ剤(荒川化学工業社製、サイズパインE(商品名))1.0質量部、硫酸バンドを適量加え、紙料を調製した。
【0069】
3槽式円網抄紙機の各槽でそれぞれ坪量33.3g/m2の紙匹を抄造し、3層を抄き合わせる際に、紙層間に実施例1で製造したスレッドを抄き込んだ。この際、厚みの薄い(1層の紙層に相当)側にスレッドの光透過抑制層が位置するようにスレッドを抄き込んだ。スレッドを紙層間に抄き込んだ直後に紫外蛍光ランプを照射し、スレッドが紫外蛍光発色するか否かでスレッドの表裏を判定し、スレッドが反転していた場合は正常な面が抄き込まれるようにスレッドを挿入し直した。その後、常法に従い乾燥して偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙を反射光でそれぞれ表面および裏面から観察すると、どちらの面からも黒色のマイクロ文字の見え方がほぼ同一であった。このとき、表面および裏面での文字部の光線反射率の差は2%以内であった。
【0070】
[実施例4]
〔偽造防止用紙の製造〕
実施例2で得られたスレッドに用いた以外は実施例3と同様にして偽造防止用紙を製造した。スレッドを紙層間に抄き込んだ直後に紫外蛍光ランプを照射し、スレッドが紫外蛍光発色するか否かでスレッドの表裏を判定し、スレッドが反転していた場合は正常な面が抄き込まれるようにスレッドを挿入し直した。得られた偽造防止用紙を反射光でそれぞれ表面および裏面から観察すると、どちらの面からも青色のマイクロ文字の見え方がほぼ同一であった。このとき、表面および裏面での文字部の光線反射率の差は2%以内であった。
【0071】
[実施例5]
〔偽造防止印刷物の製造〕
図14に示すように、実施例3の偽造防止用紙を使用し、商品券の図柄など印刷部30を印刷して偽造防止印刷物40を製造した。
【0072】
この偽造防止印刷物40をそれぞれ表面および裏面から反射光で観察すると、抄き込まれたスレッドのマイクロ文字(「SECURITY」の正文字と逆文字)の見え方がほぼ同一であった。
【0073】
[実施例6]
〔偽造防止印刷物の製造〕
図14に示すように、実施例4の偽造防止用紙を使用し、商品券の図柄など印刷部30を印刷して偽造防止印刷物40を製造した。
【0074】
この偽造防止印刷物40をそれぞれ表面および裏面から反射光で観察すると、抄き込まれたスレッドの青色に着色されたマイクロ文字はいずれも正文字「★ABCD」として視認され、金属蒸着層は左右逆向きの文字としてごく薄く視認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】スレッドの斜視図。
【図2】従来のスレッドの断面図。
【図3】図2のスレッドを3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図。
【図4】図2のスレッドを2層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るスレッドの断面図。
【図6】図5のスレッドを3層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図8】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図9】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図10】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係るスレッドの断面図。
【図13】実施例2における両面マイクロ文字入りスレッドの平面図。
【図14】実施例5および6における偽造防止印刷物の平面図。
【符号の説明】
【0076】
1…透明なベースフィルム、2、2B…マイクロ文字、3、3a、3b…光透過抑制層、5…光の透過を抑制するベースフィルム、10…スレッド、11、12、13…紙層、20…スレッド、30…印刷部、40…偽造防止用紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、
透明なベースフィルムと、
前記透明なベースフィルム上に形成された偽造防止層と、
前記透明なベースフィルムの一面または両面に、少なくとも前記偽造防止層に対応して形成された光透過抑制層と
を有することを特徴とするスレッド。
【請求項2】
偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、
光の透過を抑制するベースフィルムと、
前記光の透過を抑制するベースフィルム上に形成された偽造防止層と
を有することを特徴とするスレッド。
【請求項3】
前記光透過抑制層の光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項1に記載のスレッド。
【請求項4】
前記光の透過を抑制するベースフィルムの光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項2に記載のスレッド。
【請求項5】
前記偽造防止層が、所望のパターンを形成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスレッド。
【請求項6】
前記パターンが、有彩色もしくは無彩色のインキで形成されたマイクロ文字、またはデメタライジングにより形成されたマイクロ文字であることを特徴とする請求項1乃至5項のいずれか1項に記載のスレッド。
【請求項7】
前記光透過抑制層がデメタライジングのための保護層であることを特徴とする請求項6に記載のスレッド。
【請求項8】
前記マイクロ文字がベースフィルムの一面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッド。
【請求項9】
前記マイクロ文字がベースフィルムの両面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッド。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のスレッドが抄き込まれた偽造防止用紙であって、それぞれ偽造防止用紙の表面および裏面から前記スレッドの偽造防止層までの厚み方向の距離が互いに異なることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項11】
請求項10に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷部が設けられていることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項1】
偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、
透明なベースフィルムと、
前記透明なベースフィルム上に形成された偽造防止層と、
前記透明なベースフィルムの一面または両面に、少なくとも前記偽造防止層に対応して形成された光透過抑制層と
を有することを特徴とするスレッド。
【請求項2】
偽造防止のために用紙の表裏両面から視認できるように用紙に抄き込まれるスレッドであって、
光の透過を抑制するベースフィルムと、
前記光の透過を抑制するベースフィルム上に形成された偽造防止層と
を有することを特徴とするスレッド。
【請求項3】
前記光透過抑制層の光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項1に記載のスレッド。
【請求項4】
前記光の透過を抑制するベースフィルムの光線透過率(JIS B9620−1)が20%〜60%であることを特徴とする請求項2に記載のスレッド。
【請求項5】
前記偽造防止層が、所望のパターンを形成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスレッド。
【請求項6】
前記パターンが、有彩色もしくは無彩色のインキで形成されたマイクロ文字、またはデメタライジングにより形成されたマイクロ文字であることを特徴とする請求項1乃至5項のいずれか1項に記載のスレッド。
【請求項7】
前記光透過抑制層がデメタライジングのための保護層であることを特徴とする請求項6に記載のスレッド。
【請求項8】
前記マイクロ文字がベースフィルムの一面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッド。
【請求項9】
前記マイクロ文字がベースフィルムの両面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスレッド。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のスレッドが抄き込まれた偽造防止用紙であって、それぞれ偽造防止用紙の表面および裏面から前記スレッドの偽造防止層までの厚み方向の距離が互いに異なることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項11】
請求項10に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷部が設けられていることを特徴とする偽造防止印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−106385(P2008−106385A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288840(P2006−288840)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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