説明

スローダウン方式の洗浄手段を備えた自然平衡形ろ過装置

【課題】既設のほぼすべてのろ過池への機能付加が簡単で、かつ、スローダウン時の洗浄排水が均一に集水可能な自然平衡形ろ過装置を提供する。
【解決手段】ろ材層3と該3の上方に配置された排水トラフ4とを有するろ過池10と、該10の下方に設けられた連通路1と、該1に接続したろ過水渠11と、10に隣接して4より高い位置で10に連通する排水ガリット13と、該13に接続する排水渠14とを有すると共に、10内の水を13内を通過させ14に導いて、10をろ過水により逆流して洗浄を行う自然平衡形ろ過装置において、10内に、4より上部の位置で11の水面より下方の位置に、水を均一に集水して10内の水をスローダウン方式で排水できる排水装置を設け、排水装置を14と排水管17で接続し、該17に小排水弁16を設置したものであり、排水装置は、小排水トラフ15、小排水堰又はラッパ管であり、上部の位置を調整する調整機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、工業用水、その他の民間用水等の分野における「水」をろ過する際に使用される自然平衡形ろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水道施設では、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原微生物の問題が発生して以来、ろ過水の濁度管理の厳格化が求められるようになった。
1996年10月に厚生省(現 厚生労働省)より、「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」が通知された。その後、厚生労働省令が平成19年3月30日に改正され、「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」(以下「クリプト対策指針」)が平成19年4月1日より適用となった。
クリプト対策指針における厚生労働省の考え方は、急速ろ過池操作について以下となる。
(1) ろ過速度を急激に変更してはならない。
(2) 目詰まりの発生が少ない場合でも適切な間隔で洗浄を行うこと。
(3) 洗浄は適正な逆洗速度で行うこと。
【0003】
(4) 洗浄排水の最終濁度が2度以下を目標とすること。
また、洗浄の終了時には逆洗洗浄速度を段階的に減少すること。
(5) ろ過池出口の濁度が0.1度以下になるまでの捨水を行うこと等により、ろ過池出口の水の濁度が0.1度以下を維持できるようにすること。
以上の5項目は、いずれも操作の目的をろ過水濁度を常時0.1度以下に維持することにある。(1)〜(3)は、通常、自然平衡形ろ過池であれば満足しているが、(4)、(5)は、従来の自然平衡形ろ過池では機能的に実施できず改造が必要となる。
(4)は、逆洗洗浄速度を段階的に減少する「スローダウン」と呼ばれている方法であり、(5)は、「捨水」と呼ばれている方法である。
【0004】
(捨水の導入について)
既設の自然平衡形ろ過池の場合、捨水方式が導入できないことがある。
例えば、急速ろ過池は、通常8池程度の池がろ過水渠で連通して構成されており、集水装置とろ過水渠の間に自動弁等の仕切る手段がないシンプルな躯体となっている場合がある。
そのため、ろ過池連通弁又は連通ゲート等でろ過水渠とろ過池を遮断する機器を設置することが困難であり、各ろ過池をろ過水渠から独立させることができない。
捨水方式を採用するためには、ろ材層を通過した水をろ過水渠から遮断し、別ルートを設置して捨水しなければならないため、捨水方式の導入は実施が困難となる。
よって、そのような場合に可能なクリプトスポリジウム対策としては、前記(5)のスローダウンの機能追加が必要となる。
【0005】
(スローダウン方式の導入について)
通常洗浄(スローダウンがない)の場合、洗浄排水濁度が2度以下に低下するまで十分洗浄しても、洗浄終了時の残留濁質がろ材層内に存在し、その状態にてろ過を行うと、ろ過側に残留濁質を含むろ過水が流出する。スローダウンは、これを極力防止するため、通常洗浄後に、ろ材が流動しない速度(0.15〜0.30m/min)で押し出し流れによってろ材層内の濁質を排水する。
これにより、砂層内の濁質はゆっくりと押し出され、池内残留水は十分、洗浄水(ろ過水)に置換されるため、ろ過再開後の初期ろ過水の濁度は、目標の0.1度を達成することができる。
従来、自然平衡形ろ過装置において、クリプトスポリジウム対策を行う場合で、スローダウン方式を導入する際は、以下の手法にて実施していた。
サイフォンを利用した自己逆流洗浄型急速ろ過池を例に説明する。
【0006】
ろ過池連通弁あるいは連通ゲートを電動化した例を図4を用いて説明する。
(1) 逆洗時間のタイムアップ後、排水サイフォン5を形成させた状態で、電動化された連通弁23を寸開とし、逆洗流速を逆洗時の0.6〜0.9m/minから0.15〜0.30m/minに低下させる。
(2) 0.15〜0.30m/minの逆洗流速では、ろ材層3は流動化せず静止状態となっている(スローダウン)。
(3) このゆっくりとした逆洗流速で、ろ材層3に残留した濁質分を、排水トラフ4から排水ガリット13へ排水し、排水サイフォン5にて、排水渠14へ排出する。
このとき、水位差(ha)で、洗浄している。
(4) スローダウンのタイムアップ後、排水サイフォン5を切り、かつ、流入サイフォン6を起動し、沈殿処理水を、流入渠9から、流入サイフォン6及び流入堰7を通って、流入させ、池内水位の上昇を計る。
(5) 池内水位が、ろ過水渠11と同一水位以上となった時点で、水位上昇工程を終了する。
(6) 水位上昇工程後、連通弁23の開度を全開とし、ろ過工程に移行する。
【0007】
次に、排水サイフォンを二重化した例を図5を用いて説明する。
(1) 大逆洗用大排水サイフォン5b(逆洗速度0.6〜0.9m/minのもの)と、スローダウン用小排水サイフォン5a(逆洗速度0.15〜0.30m/minのもの)の2種類の排水サイフォン5a,5bを設ける。
(2) 逆洗時は両方の排水サイフォン5a,5bを用いて行い、通常逆洗終了後に大逆洗用大排水サイフォン5bを切り、スローダウン用小排水サイフォン5a単独での逆洗工程を行う。
池外への排水量が小排水サイフォン5aの流量に制限されるため、逆洗流量を0.15〜0.30m/minに落とすことが出来る。
(3) スローダウン時は、逆洗流速が0.15〜0.30m/min とし、φ0.6mmのろ過砂が流動化しない速度とする。
この流速でろ材層3中に残留した汚濁物質を静かに洗い流して、初期ろ過水濁度の改善を行う。
【0008】
しかし、これらの方法では、いくつかの問題がある。
(1) ろ過池連通弁あるいは連通ゲートの電動化の問題
・ろ過池の躯体構造上、ろ過池連通弁あるいは連通ゲートがない場合があり、
そのような場合、採用できない。
・大型弁の自動化が必要であり、費用が高い。
・ろ過水渠は設備全体で共通であるのが通常であり、浄水場など24時間運転している設備では、水運用の関係上、施工できない場合がある。
(2) 排水サイフォンの二重化における問題
・スローダウン時にろ過池内水位が排水トラフよりも上部まで上昇するため、ろ過池全面から均一に集水できない形状のろ過池も存在する。そのことにより、偏流ができ、洗浄排水の一部が池内に滞留する。
・躯体の構造上、小排水サイフォンが設置できない場合がある(排水サイフォン設置箇所のスペースが狭く、小排水サイフォン設置スペースがない)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−252506号明細書
【特許文献2】特開2002−126415号明細書
【非特許文献1】平成14年6月水道協会雑誌第71巻第6号、「東京水道における濁度管理強化対策」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記既知技術の問題点を解消し、既設のほぼすべてのろ過池への機能付加が簡単で、かつ、スローダウン時の洗浄排水が均一に集水可能なスローダウン方式の洗浄手段を備えた自然平衡形ろ過装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明では、ろ材層と該ろ材層の上方に配置された排水トラフとを有するろ過池と、該ろ過池のろ材層下方に設けられた連通路と、該連通路に接続した上方を流出堰で浄水渠に連通したろ過水渠と、前記ろ過池に隣接して前記排水トラフより高い位置でろ過池に連通する排水ガリットと、該排水ガリットに接続する排水渠とを有すると共に、前記ろ過池内の水を前記排水ガリット内を通過させ前記排水渠に導いて、前記ろ材層をろ過水により逆流して洗浄を行う自然平衡形ろ過装置において、前記ろ過池内に、前記排水トラフより上部の位置で前記ろ過水渠の水面より下方の位置に、水を均一に集水してろ過池内をスローダウン方式で洗浄できる排水装置を設け、該排水装置を排水渠と排水管で接続し、該排水管に小排水弁を設置したことを特徴とした自然平衡形ろ過装置としたものである。
前記本発明の自然平衡形ろ過装置において、排水装置は、小排水トラフ、小排水堰又はラッパ管とすることができ、上部の位置を調整する調整機構を有するのがよく、また、その設置位置は、スローダウン時の逆洗流速が、ろ材が流動しない速度の0.15〜0.30m/minとなる位置とするのがよい。
【発明の効果】
【0012】
従来の技術との関連において、本発明が有する有利な効果を記載する。
(1) 既設浄水場において、連通弁が設置されていないため、連通弁の電動化によるスローダウン方式を導入できない場合でも、小排水トラフ等の排水装置を設置することによりスローダウン方式を導入することができる。
(2) スローダウン時に、逆洗排水がろ材面に対して均一に集水できる。
(3) 連通弁と比較した場合、小排水弁の方が自動弁の駆動用動力が小さいことから、電気設備費用の低減、ランニングコストの低減が図れる。
(4) 既設の土木躯体の構造上、排水サイフォンの二重化によるスローダウン方式を導入出来ない場合でも、小排水トラフ等の排水装置を設置することによりスローダウン方式を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の自然平衡形ろ過装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明の自然平衡形ろ過装置の他の例を示す概略構成図。
【図3】本発明の自然平衡形ろ過装置の他の例を示す概略構成図。
【図4】公知の自然平衡形ろ過装置の一例を示す概略構成図。
【図5】他の公知の自然平衡形ろ過装置の一例を示す概略構成図。
【図6】本発明の小排水堰レベル調整機構の一例を示す概略構成図。
【図7】本発明のラッパ管レベル調整機構の一例を示す概略構成図。
【図8】本発明のラッパ管レベル調整機構の他の例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、ろ過池内にスローダウン用の小排水トラフ、小排水堰又はラッパ管等の排水装置と、スローダウンの排水を行える様に排水渠に接続する排水管に小排水弁とを設置する。排水装置は、排水トラフ上部に設置することにより逆洗速度を小さくしてスローダウンを実施する。
運転工程としては、ろ過池の逆洗単独洗浄終了後に、小排水弁を開けてスローダウン水頭差により低速での逆洗を行い、設定時間経過により小排水弁を全閉として終了する。
本発明の小排水トラフ等の排水装置の設置レベルは、連通管の損失、集水装置の損失、砂利の損失、ろ砂の損失、排水装置の越流水深より、スローダウン時の損失を計算して決定する。ろ過水渠の水面である流出堰レベルに越流水深を足したレベルより、スローダウン時の損失を引いたレベルを、本発明の排水装置上端のレベルとする。
本発明の小排水トラフ等の排水装置の設置高さと間隔は、洗浄排水が、均一に集水できるように、接近流速より、排水装置の高さと間隔を決定する。
本発明の小排水装置の大きさは、洗浄排水が、均一に集水できるように、限界水深より、排水装置の大きさを決定する。
【0015】
本発明の排水装置に集水された洗浄排水は、排水管へ流入させ、その排水管は、排水渠の壁を貫通させ、自然流下により、排水渠へ送水する。その際、排水管途中に、小排水弁を設置する。
本発明の排水装置は、実設備の据付後試運転の段階でスローダウン流量を微調整するため、以下4つの方法で、レベル調整することも可能である。
(1) 小排水トラフ及び小排水堰のレベル調整は、小排水トラフ及び小排水堰を、サポートで支持する場合は、スペーサあるいは、ナットでレベルを調節する。
(2) 小排水トラフ及び小排水堰の越流部に、堰を設置する方法がある。その場合、堰は、長穴などで高さが調節可能な形状とし、小排水トラフ及び小排水堰のレベル調整を行う。
(3) 小排水トラフ及び小排水堰を排水管で支持する場合は、配管にストラブカップリングを設置し、それにて、小排水トラフ及び小排水堰のレベル調整を行う。
(4) ラッパ管方式の場合、フランジにシムを挿入する。あるいは、ラッパ管にレベル調整用パッキン等を設け、レベル調整を行う。
また、本発明において、スローダウンが行われているかを確認するために、ろ過池内に電極を設置することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る自然平衡形ろ過装置の一例を示す概略構成図である。
本形態の実施例では、本発明に係る浄水設備の自然平衡形急速ろ過装置でのスローダウン方式について説明する。
浄水処理設備には、通常一つの系列に急速ろ過池が数基〜数十基程度配置されており、流入する流入水は、流入渠9に流入し、該流入渠9から各急速ろ過池10に均等に配分されるようになっている。流入渠9に流入した水は、流入サイフォン6を通り、流入堰7よりろ材層3に流入し、該ろ材層3でろ過され、一旦、ろ過水渠11に貯留され、その後、流出堰8を越流して、本水処理装置の浄水渠12へ流入する。
それを数十時間継続後、ろ材洗浄のため、逆流洗浄を行う。この時、洗浄する洗浄水は、ろ過水渠11から、集水装置2、ろ材層3を通過し、排水トラフ4に流入し、一旦、排水ガリット13に貯留され、その後、排水サイフォン5を通って、排水渠14へ排水される。
【0017】
その後、本発明によるスローダウンを行う際は、排水サイフォン5を停止させ、排水管17に設けた小排水弁16を開にする。この時、ろ過水渠11から流入した洗浄水により、ろ過池10内の水位が上昇する。そして、小排水トラフ15に洗浄排水が流入し、小排水弁(自動弁)16及び排水管17を通って、排水渠14へ排水される。
この時、水位差(hb)により生じる圧力によって洗浄している。水位差(hb)は、水温やスローダウン流速にもよるが、通常400mm程度必要となる。スローダウン時の排水は、小排水トラフの水平な堰から集水されるため、池内から均一に集水することができる。
なお、小排水弁(自動弁)16は、排水管17のいずれの位置でも設置でき、排水渠14の位置でも設置してもよい。スローダウン時の流速は、0.15〜0.30m/minとする。理由は、以下の通りである。
【0018】
スローダウンには、最適速度がある。
スローダウンの下限速度は、濁質(粒子)が排出される最低の速度とする。
ろ過池に流入する粒子径は、表1より最大12μmとすると、99.8%と粒子の殆どを占め、これより余裕を考慮し20μmとする。
【表1】


20μm粒子の沈降速度は、藤田らの求めた実験式(出典:内藤幸穂、藤田賢二、改訂上水道工学演習 株式会社学献社 1998年2月改訂7版発行 P.181)より算出すると、0.15m/minである。
よって、ろ過池内に流入した粒子が排出される最低速度 0.15m/minを、スローダウンの下限速度とする。
【0019】
一方、上限は、ろ材が流動化しない速度とする。
篠原らの求めた粒状層の膨張の実験(出典:篠原紀、時岡重行,第31回全国水道研究発表会講演集 日本水道協会発行 (5−26)粒状層の膨張式 P.394〜396)より、発明者らが求めたところ、一般的なろ材構成の一つである本条件(有効径 0.6mm、水温 5℃、均等係数 1.4のろ過砂)のとき、ろ材が流動化しない最大速度は、0.29m/minと算出される。
以上より、河川水におけるスローダウン速度は、0.15〜0.30m/minとすることができる。
スローダウン終了後は、小排水弁16を閉とし、流入サイフォン6より流入水を流入させ、再びろ過を開始する。
小排水トラフの上端設置レベルは、以下に示す計算式1により、圧力損失から決定する。通常は、ろ過水渠の水面より400mm程度下で、ろ材上面より、1,100mm程度上方となり、排水トラフよりも400mm程度上方となる。(実際の設計では、水理計算により決定する。)
【0020】
【数1】

連通管の圧力損失 H
集水装置の圧力損失 H
支持砂利の圧力損失 H
ろ材の圧力損失 H
小排水トラフ越流水深 H
ろ過水渠の流出堰レベル H
その越流水深 H
小排水トラフ据付レベル H
また、小排水トラフの堰負荷は、ろ材の流出と濁質の排出に影響を与える。
スローダウン洗浄は、非流動化逆流洗浄方式のため、ろ材の流出は考慮しなくて良い。
これより、小排水トラフの間隔と高さは、以下式で求められる。
【0021】
【数2】

μ : 終端速度(m/s)
μ : 洗浄速度(m/s)
S : トラフの間隔(m)
Lw : トラフの上縁から流動ろ材面までの距離(m)
【0022】
上述の通り、本発明では、ろ材の流出は考慮に入れなくて良いため、濁質の排出のみ考えれば良い。通常は、小排水トラフは1本あれば充分であるが、複数本あることを妨げるものではない。
小排水トラフの大きさは、Miller式、Thomas−Camp式、中川式の方法で計算することかできる。
その中のThomas−Camp式の場合、以下計算により算出する。
【数3】

【0023】
小排水トラフは、洗浄排水が均一に集水出来るように、1本であれば排水トラフと平面直角の方向に設置することが望ましい。複数本設置する場合は、その限りではない。
小排水トラフに集水された洗浄排水は、排水管を通って排水させる。その排水管は、集水された洗浄排水をすべて排水渠に排水できる口径とする。
小排水トラフは、計算上の必要水位差と、実際に必要な水位差の誤差を調整する目的で、以下方法により小排水トラフ上端レベルの調整が可能なものが望ましい。これにより、スローダウン流量の微調整を行うことができるものである。方法としては、小排水トラフサポートに、スペーサあるいはナットを挿入する。
排水渠は、逆洗時に排出された排水量及びスローダウン時に排出された排水量を受け入れることができる容量とする。
このようにして、小排水トラフを使用しスローダウンを行った場合、動力は比較的小型の小排水弁のみである。一方、連通弁を電動化しスローダウンを行った場合、大型の連通弁を電動化する必要がある。そのため、本発明である小排水トラフを使用しスローダウンを行った場合は、連通弁を電動化しスローダウンを行った場合と比較し、ランニングコストの低減が図れる。
【0024】
小排水トラフ15の代わりに、小排水堰18を用いる方法がある。
図2は、本発明に係る自然平衡形ろ過装置の他の例を示す概略構成図である。
ろ過池内の側壁に、小排水トラフ15と同様の設置レベルで、小排水堰18を設置する。小排水堰18は、レベル調整穴20(図6)が開いており、小排水堰枠とボルト・ナットで取り付けられている。これにより、小排水堰18のレベルを調整することができ、スローダウン流量の変更を行うことができるものである。
浄水処理設備には、一つの系列に急速ろ過池が数基〜数十基程度配置されており、流入する流入水は、流入渠9に流入し、該流入渠9から各急速ろ過池10に均等に配分されるようになっている。流入渠9に流入した水は、流入サイフォン6を通り、流入堰7よりろ材層3に流入し、該ろ材層3でろ過され、一旦、ろ過水渠11に貯留され、その後、流出堰8を越流して、本水処理装置の浄水渠12へ流入する。
【0025】
それを数十時間継続後、ろ材洗浄のため、逆流洗浄を行う。この時、洗浄する洗浄水は、ろ過水渠11から、集水装置2、ろ材層3を通過し、排水トラフ4に流入し、一旦、排水ガリット13に貯留され、その後、排水サイフォン5を通って、排水渠14へ排水される。
その後、本発明によるスローダウンを行う際は、排水サイフォン5を停止させ、小排水弁16を開にする。この時、ろ過水渠11から流入した洗浄水により、ろ過池10内の水位が上昇する。そして、小排水堰18に洗浄排水が流入し、小排水弁16及び排水管17を通って、排水渠14へ排水される。
スローダウン終了後は、小排水弁16を閉とし、流入サイフォン6より流入水を流入させ、再びろ過を開始する。
【0026】
小排水トラフ15の代わりに、ラッパ管19を用いる方法がある。
図3は、本発明に係る自然平衡形ろ過装置の他の例を示す概略構成図である。
ろ過池内に、小排水トラフ15と同様の設置レベルで、ラッパ管19を設置する。ラッパ管19は、フランジ部に挟み込んだレベル調整シム21(図7)、あるいは、テレスコープ弁と同じ構造を持つレベル調整パッキン22(図8)により上下調整か可能な構造になっている。これにより、ラッパ管19のレベルを調整することができ、スローダウン流量の変更を行うことができるものである。
浄水処理設備には、一つの系列に急速ろ過池が数基〜数十基程度配置されており、流入する流入水は、流入渠9に流入し、該流入渠9から各急速ろ過池10に均等に配分されるようになっている。流入渠9流入した水は、流入サイフォン6を通り、流入堰7よりろ材層3に流入し、該ろ材層3でろ過され、一旦、ろ過水渠11に貯留され、その後、流出堰8を越流して、本水処理装置の浄水渠12へ流入する。
【0027】
それを数十時間継続後、ろ材洗浄のため、逆流洗浄を行う。この時、洗浄する洗浄水は、ろ過水渠11から、集水装置2、ろ材層3を通過し、排水トラフ4に流入し、一旦、排水ガリット13に貯留され、その後、排水サイフォン5を通って、排水渠14へ排水される。
その後、本発明によるスローダウンを行う際は、排水サイフォン5を停止させ、小排水弁16を開にする。この時、ろ過水渠11から流入した洗浄水により、ろ過池10内の水位が上昇する。そして、ラッパ管19に洗浄排水が流入し、小排水弁16及び排水管17を通って、排水渠14へ排水される。
スローダウン終了後は、小排水弁16を閉とし、流入サイフォン6より流入水を流入させ、再びろ過を開始する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:連通路、2:集水装置、3:ろ材層、4::排水トラフ、5:排水サイフォン、5a:小排水サイフォン、5b:大排水サイフォン、6:流入サイフォン、7:流入堰、8:流出堰、9:流入渠、10:ろ過池、11:ろ過水渠、12:浄水渠、13:排水ガリット、14:排水渠、15:小排水トラフ、16:小排水弁、17:排水管、18:小排水堰、19:ラッパ管、20:レベル調整穴、21:レベル調整シム、22:レベル調整パッキン、23:ろ過池連通弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ材層と該ろ材層の上方に配置された排水トラフとを有するろ過池と、該ろ過池のろ材層下方に設けられた連通路と、該連通路に接続した上方を流出堰で浄水渠に連通したろ過水渠と、前記ろ過池に隣接して前記排水トラフより高い位置でろ過池に連通する排水ガリットと、該排水ガリットに接続する排水渠とを有すると共に、前記ろ過池内の水を前記排水ガリット内を通過させ前記排水渠に導いて、前記ろ材層をろ過水により逆流して洗浄を行う自然平衡形ろ過装置において、前記ろ過池内に、前記排水トラフより上部の位置で前記ろ過水渠の水面より下方の位置に、水を均一に集水してろ過池内をスローダウン方式で洗浄できる排水装置を設け、該排水装置を排水渠と排水管で接続し、該排水管に小排水弁を設置したことを特徴とした自然平衡形ろ過装置。
【請求項2】
前記排水装置は、小排水トラフ、小排水堰又はラッパ管であることを特徴とする請求項1記載の自然平衡形ろ過装置。
【請求項3】
前記排水装置は、上部の位置を調整する調整機構を有することを特徴とする請求項2記載の自然平衡形ろ過装置。
【請求項4】
前記排水装置の設置位置は、スローダウン時の逆洗流速が、ろ材が流動しない速度の0.15〜0.30m/minとなる位置であることを特徴とした請求項1、2又は3記載の自然平衡形ろ過装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−45459(P2012−45459A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188206(P2010−188206)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【Fターム(参考)】