説明

ズボンのずり落ち防止構造

【課題】 バンドの使用、不使用にかかわらず良好なズボンずり落ち防止機能を発揮するとともに、スナップピンによる見苦しい孔を生じることがなく、かつ取り付けの手間等も不要である。
【解決手段】 ワイシャツ1の前側下部表面に上下方向へ間隔を置いて複数のボタン孔15を設けるとともに、ズボン2の前側上部裏面にボタン孔15の一つに係止されるボタン25を設ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案はズボンのずり落ち防止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
腹が出た肥満体の人が屈んだり立ったりを繰り返すと次第にズボンがずり落ちて、ズボン内に入れたシャツの裾がはみ出し、見苦しくなる。そこで、従来は肩に回したサスペンダの両端をズボンの前後の上縁に止めて、ズボンのずり落ちを防止しているが、サスペンダは外見のスマートさに欠けるとともに、用を足すためにサスペンダの一端を外すとこれが下方に垂れて扱いに難渋する等の問題がある。
【0003】
そこで、例えば実開平7−24933号公報には、図3に示すように、シャツ3の前面下部の両側にスナップピン41でブロック状の本体4を取り付け、この上からズボン5のバンド51を締めて当該バンド51の下部内側を上記本体4に係止することによって、ズボン5のずり落ちを防止するものが提案されている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上記公報で提案されたずり落ち防止具は、バンドを着用しないとその機能が発揮されないという問題があるととともに、スナップピンの針を刺す際にシャツに見苦しい孔が開き、あるいは、洗濯する場合等にはスナップピンを取り外す必要があるため、その都度、取り外しや再取り付けの手間を要するという問題がある。
【0005】
そこで、本考案はこのような問題を解決するもので、バンドの使用、不使用にかかわらず良好なズボンずり落ち防止機能を発揮するとともに、スナップピンによる見苦しい孔を生じることがなく、かつ取り付けの手間等も不要なズボンのずり落ち防止構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1考案では、上着(1)の前側下部に第1の係止具(15)を少なくとも一つ設けるとともに、ズボン(2)の前側上部に前記第1の係止具(15)に係止される第2の係止具(25)を設ける。
【0007】
本第1考案においては、ズボンの前側上部に設けた第2の係止具を上着に設けた第1の係止具に係止することによってズボンを上着に止めているから、バンドを使用しなくてもズボンのずり落ちが確実に防止される。そして、第1および第2の係止具を予めズボンおよび上着にそれぞれ固着しておけば、従来のようにスナップピンによる見苦しい孔が生じないとともに、取付けの手間も要しない。
【0008】
本第2考案では、上着(1)の前側下部にボタン孔(15)を設けるとともに、ズボン(2)の前側上部にボタン孔(15)に係止されるボタン(25)を設ける。
【0009】
本第2考案においては、上記第1考案と同様の作用効果が得られるとともに、ボタン孔とボタンを使用しているから、ズボンや上着に設けた時の違和感が少ないとともに、縫製工程において容易に設けることができるから、取り付けの手間を全く要しない。
【0010】
本第3考案では、上記ボタン孔(15)を上着(1)の上下方向へ所定間隔をおいて複数設ける。これによれば、ズボンを止める位置を上下に調整することができる。
【0011】
本第4考案では、上記上着(1)は、その裾部(16)をズボン(2)内に入れるシャツであり、上記ボタン孔(15)をシャツ(1)の前側表面下部に設けるとともに、上記ボタン(25)をズボン(2)の前側裏面上部に設ける。これによれば、シャツの裾をズボン内に入れて、互いに係止されたボタンとボタン孔をスボン内に隠すことができるから、外観を損なうことがない。また、シャツが常に下方へ引かれるから、襟元をスッキリ見せることができる。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
【考案の実施の形態】
(第1実施形態)
図1には本考案を適用したワイシャツ1とズボン2の組を示す。図1(A)に示すワイシャツ1では、左右を合わせた左半身13の前立て131の表面上半部に、上下に間隔をおいて三ヶ所に縦長のボタン孔12が設けられ、これらボタン孔12に右半身11の前立ての上半部に設けられたボタン14が挿入されてワイシャツ1の左右開放縁が止められている。そして、上記前立て131の下半部には、さらに上下に間隔をおいて三ヶ所にボタン孔15が設けられ、これらボタン孔15は縦長に形成されるとともに、その下端部には円形のハト目151が形成されている。
【0014】
一方、図1(B)に示すズボン2では、右半身21上へ左半身22から止着片23が延びており、この止着片23に形成されたボタン孔231に上記右半身21の上端部に設けたボタン24が挿入されてズボン2上端部の左右開放縁が止められている。そして、スボン2の右半身21の前面上端部の裏面にはさらにボタン25が設けられている。このボタン25には大きな荷重に耐えられるように、いわゆる根巻きが施してある。
【0015】
このような構造において、ワイシャツ1の裾16をスボン2内に入れ、この状態でズボン2の上端部裏面に設けた上記ボタン25を、ワイシャツ1の前立て131下半部に設けた上記ボタン孔15のうちの適当なもの(例えば図2は最下位置のボタン孔15を選択した場合を示す)の中に挿入し係止する。ボタン25の基部は根巻きで太くなっているが、ボタン孔15には大径のハト目151が形成されているから、この中へボタン25が良好に挿入係止される。
【0016】
この状態で、腹の出た肥満体の人が屈んだり立ったりを繰り返しても、ズボン2の前側上部はボタン25とボタン孔15とによってワイシャツ1の前側下部に係止されているから、ズボン2がずり落ちることはなく、ワイシャツ1の裾がズボン2からはみ出て見苦しい状態となることが避けられる。また、ワイシャツ1は前面が常に下方へ引っ張られているから、襟元をスッキリ見せることができる。
なお、この場合図2に示すように、残る二つのボタン孔15はズボン2から上方へ露出するが、これらボタン孔15はワイシャツ1の一般部と同色であるから違和感を生じることは少なく、また、ネクタイを着用すればこれに隠れて全く違和感を生じることはない。
【0017】
上記実施形態では、ズボン2のボタン25を係止するワイシャツ1のボタン孔15を複数設けたが、一つとしてももちろん良い。また、上記実施形態ではワイシャツ1のボタン孔15を縦長としたが、横長とすることもでき、これによると、上下方向の間隔を小さくしてボタン孔をより多く設けることができるから、ズボンの上下位置の調整を容易に行うことができる。
【0018】
上記実施形態では一例として本考案をワイシャツに適用した場合について説明したが、ワイシャツに限られるものではなく、カッターシャツ等の前立てのある他のシャツ類であっても良い。また、上着としてはシャツ類に限らず、ジャケット等でも良く、この場合はズボンの上部を覆うジャケットの裾部の裏面にボタン孔を設けるとともに、ズボン上部の表面にボタンを設ける。さらに、この場合に、ジャケットの裾部の裏面にボタンを設け、ズボンの上部表面にボタン孔を設けるようにしても良い。また、必ずしもボタンとボタン孔に限られず、例えば互いに係合するフック等を上着とズボンに設けるようにしても良い。
【0019】
【考案の効果】
以上のように、本考案のズボンのずり落ち防止構造によれば、バンドの使用、不使用にかかわらず良好なズボンずり落ち防止機能が発揮されるとともに、スナップピンによる見苦しい孔を生じることがなく、しかも取り付けの手間等も不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施形態を示す上着とズボンの斜視図である。
【図2】上着とズボンを着用した状態の斜視図である。
【図3】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…ワイシャツ、15…ボタン孔、2…ズボン、25…ボタン。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 上着の前側下部に第1の係止具を少なくとも一つ設けるとともに、ズボンの前側上部に前記第1の係止具に係止される第2の係止具を設けたことを特徴とするズボンのずり落ち防止構造。
【請求項2】 上着の前側下部にボタン孔を設けるとともに、ズボンの前側上部に前記ボタン孔に係止されるボタンを設けたことを特徴とするズボンのずり落ち防止構造。
【請求項3】 前記ボタン孔を上着の上下方向へ所定間隔をおいて複数設けた請求項2に記載のズボンのずり落ち防止構造。
【請求項4】 前記上着は、その裾部を前記ズボン内に入れるシャツであり、前記ボタン孔を前記シャツの前側表面下部に設けるとともに、前記ボタンを前記ズボンの前側裏面上部に設けた請求項2又は3に記載のズボンのずり落ち防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3057981号
【登録日】平成11年(1999)3月10日
【発行日】平成11年(1999)6月8日
【考案の名称】ズボンのずり落ち防止構造
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平10−7404
【出願日】平成10年(1998)9月25日
【出願人】(598130859)