説明

セクションインシュレータ

【課題】 絶縁部材の摺動面へのカーボン粉の付着を最小限に止め、また付着したカーボン粉の除去が容易なセクションインシュレータを提供する。
【解決手段】 電車線路用セクションインシュレータ1は、絶縁部材2に、カーボン粉難付着性樹脂で形成された難付着部材5が、その表面をカーボン摺板との摺動面2aと一致させて埋設される。難付着部材5は、細長板状に構成され、絶縁部材2の軸線に対して傾斜して、複数が互いに平行に相互間隔を置いて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電車線路用のトロリ線における2つの異なる電気区間を互いに電気的に絶縁しつつ、引き止めて連結するセクションインシュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車線路用のセクションインシュレータとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。これは、電気系統の異なる2本のトロリ線の相互間を電気的に絶縁しつつ引き止めて連結するものであり、電車のパンタグラフのカーボン摺板を連続的に摺動させるためにトロリ線間に渡される絶縁部材と、それの両端に固着されるトロリ線接続金具とを具備する。絶縁部材は角棒状で、電車のカーボン摺板との摺動面に、カーボン粉の付着を遮断するための凹部が設けられる。この凹部4内に、カーボン粉難付着性樹脂であるポリテトラフルオロエチレンの難付着プレートが固定される。カーボン摺板から削られて絶縁部材の摺動面に付着するカーボン粉の連続が、凹部の縁で遮断され、絶縁破壊が防止される。
【特許文献1】特開2004−299450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のセクションインシュレータにおいては、長期使用により、なお難付着プレートの表面へのカーボン粉の付着を免れず、難付着プレートで覆われていない凹部の表面に付着するカーボン粉が、難付着プレートの端縁との段部に集中して積層されて、ついには難付着プレートの表面上のカーボン粉に架橋され、絶縁破壊を生じるおそれがある。このため、セクションインシュレータは、定期的に絶縁部材の摺動面を清掃して付着したカーボンを除去する必要がある。しかし、FRP製の絶縁部材に付着したカーボンの除去は容易でない。
したがって、この出願に係る発明は、絶縁部材の摺動面へのカーボンの付着を最小限に止めることができ、また清掃時に摺動面に付着したカーボンの除去が容易なセクションインシュレータを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するためのこの出願の発明に係る電車線路用セクションインシュレータ1は、絶縁部材2に、カーボン粉難付着性樹脂で形成された難付着部材5が、その表面をカーボン摺板との摺動面2aと一致させて埋設される。
難付着部材5は、細長板状に構成され、絶縁部材2の軸線に対して傾斜して、複数が互いに平行に相互間隔を置いて配置される。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明の電車線路用セクションインシュレータ1によれば、絶縁部材2におけるカーボン摺板との摺動面2aに、カーボン粉難付着性樹脂で形成された難付着部材5が、その表面を摺動面2aと一致させて埋設されるため、絶縁部材2の摺動面2aにおける難付着部材5の表面5aへのカーボンの付着を最小限に止めることができ、また清掃時に難付着部材5の表面5aに付着したカーボンの除去が容易である。
難付着部材5が、細長板状に構成され、絶縁部材2の軸線に対して傾斜して、複数が互いに平行に相互間隔を置いて配置されるので、パンタグラフのカーボン摺板が、難付着部材5のみに接触することがなく、常時絶縁部材2それ自身にも同時に接触することとなるから、比較的高価で摩耗されやすい難付着部材5の耐用期間を実質的に延長し、経済性を高めることができる。
以上添付図面の符号を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1はセクションインシュレータの正面図、図2はセクションインシュレータの底面図、図3はセクションインシュレータの部分拡大断面図である。
【0007】
図1,2において、セクションインシュレータ1は、電車線路の延線方向に隣接して架設された2つのトロリ線T1,T2の隣接端部間を絶縁部材2で電気的に絶縁しつつ、接続金具3で引き止める。接続金具3には、アークホーン4が取り付けられる。
【0008】
絶縁部材2は断面矩形のFRP製の棒状体で構成される。この絶縁部材2におけるパンタグラフのカーボン摺板が摺動する摺動面2a側には、カーボン粉難付着性樹脂製の難付着部材5が埋設される。難付着部材5の表面5aは、摺動面2aと一致している。
【0009】
アークホーン4は、絶縁部材2の両端部の所定長さ部分まで、絶縁部材2と共にカーボン摺板に接触し、途上から上方へ湾曲してカーボン摺板から離れるよう構成される。
【0010】
難付着部材5の素材としては、パンタグラフのカーボン摺り板が摺動により削られて生ずるカーボン粉が付着しにくい樹脂、例えば、電気絶縁性、耐アーク性、耐摩擦性、耐熱性などに優れたフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン樹脂が最適である。
【0011】
難付着部材5は、図2に示すように、細長板状に構成され、絶縁部材2の軸線に対して傾斜して、複数が互いに平行に相互間隔を置いて配置される。
【0012】
図3に示すように、絶縁部材2の摺動面2a側には、軸線に対して傾斜して延びるように、アリ溝2bが形成される。難付着部材5は、このアリ溝2bに嵌合する断面鳩尾状に形成される。難付着部材5は、アリ溝2bに嵌合され、アリ溝2b内で絶縁部材2に接着剤を介して接着される。
【0013】
トロリ線T1の下面を摺動しながら進行してきた電車のカーボン摺板が、セクションインシュレータ1において難付着部材5に移行すると、難付着部材5は、ほぼ常時絶縁部材2の摺動面2aと共に、カーボン摺板に接触する。したがって、難付着部材5が偏摩耗することがない。カーボン摺板から削り出されたカーボン粉は、難付着部材5に付着しにくいから摺動面2a上に付着するカーボン粉の連続は、難付着部材5で遮断される。長期使用により、難付着部材5の表面5aへのカーボン粉の付着は免れない。したがって、定期的清掃が必要である。定期的清掃時に、難付着部材5の表面5aへ付着したカーボン粉は、容易に拭き取り除去することができる。難付着部材5は、常時絶縁部材2の摺動面2aと共に、カーボン摺板に接触するから、絶縁部材2と摩耗進度が一致する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】セクションインシュレータの正面図である。
【図2】セクションインシュレータの底面図である。
【図3】セクションインシュレータの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 セクションインシュレータ
2 絶縁部材
2a 摺動面
2b アリ溝
3 接続金具
4 アークホーン
5 難付着部材
5a 表面
T1 トロリ線
T2 トロリ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線路の延線方向に隣接して架設された2本のトロリ線の隣接端部間を電気的に絶縁しつつ引き止め、トロリ線に代わってパンタグラフのカーボン摺板を連続的に摺動させるように2本のトロリ線の隣接端部間に介設される絶縁部材を具備し、
前記絶縁部材には、カーボン粉難付着性樹脂で形成された難付着部材が、その表面をカーボン摺板との摺動面と一致させて埋設され、
前記難付着部材は、細長板状で、前記絶縁部材の軸線に対して傾斜して、複数が互いに平行に相互間隔を置いて配置されることを特徴とする請求項1に記載の電車線路用セクションインシュレータ。
【請求項2】
前記絶縁部材の摺動面側にアリ溝が形成され、前記難付着部材が、当該アリ溝に嵌合する断面鳩尾状であることを特徴とする請求項1に記載の電車線路用セクションインシュレータ。
【請求項3】
前記難付着部材が、前記アリ溝に嵌合され、当該アリ溝内で前記絶縁部材に接着されることを特徴とする請求項2に記載の電車線路用セクションインシュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−12812(P2010−12812A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172064(P2008−172064)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)