説明

セグメントとその製造方法

【課題】セグメント高さの寸法管理がより容易で安価な安定した性能を有するトンネル覆工用のセグメントを提供すること。
【解決手段】
1枚のウェブ部材7と少なくとも1枚のフランジ部材8とを有する少なくとも1対の主桁2および地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレート3、4を備えたセグメントであって、前記ウェブ部材7におけるセグメント内側面に、少なくとも1枚の前記フランジ部材8の一側端面における板厚方向の一端側が当接されると共に他端側がウェブ部材7よりトンネル半径方向に突出するよう前記フランジ部材8が配置されて相互が固着され、前記主桁は、略断面コ字状、もしくは略断面L字状の主桁断面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法等によりトンネル等を構築する場合に使用されるセグメントとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメントにおける主桁として、図17に示すように、フランジ部材8とウェブ部材7とを備えた主桁20が知られていると共に、主桁20の断面形状として、フランジ部材8がウェブ部材7からトンネル軸方向外側に突出する構造の主桁20が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−264661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の場合は、フランジ部材8がウェブ部材7からトンネル軸方向外側に突出する構造であるため、図15(b)に示すように、(1)シールド工法によるジャッキ推力Pが矢印Yで示すように集中する傾向があり、合成セグメントにおいては、中詰めコンクリート5の局所的な応力集中に対応するために、フランジ端面の角落とし処理をしたり、コンクリートの高強度化を図る必要がある。(2)また、上記応力集中を緩和するために、ジャッキ推力Pを矢印Xで示すようにフランジ部材8先端からウェブ部材7に伝達する必要性から、フランジ部材8とウェブ部材7との溶接Wの溶接仕様を大きく確保する必要があるという問題がある。
さらに、ウェブ部材7をフランジ部材8で挟み込む構造であるため、図17に示すように、トンネル半径方向のセグメント部材高さ寸法Hを管理する場合に、セグメント製作時におけるスキンプレート3(4)の板厚寸法Sの公差S1と、フランジ部材8の板厚寸法Fの公差F1と、ウェブ部材7の高さ寸法Vの公差V1との影響を相乗的に受けて、セグメント部材高さHは、H=S+(±S1)+F+(±F1)+V+(±V1)となるため、セグメント部材高さHにバラツキが発生し、セグメントの断面性能が安定せず、そのため、寸法管理およびセグメントにおける鋼殻の矯正を含む製造管理を厳格に行う手間が必要となり、その分、セグメントの製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
前記のような課題があるために、ウェブ部材7とフランジ部材8と主桁20とを組み立てる形態のセグメントの場合には、次の(1)〜(2)の両方を満足するようなセグメントが望まれることになる。
【0006】
(1)ジャッキ推力に対して合理的に対処可能なセグメントの構造仕様とした上で、セグメントの製造コストの削減を図る。
(2)トンネル半径方向のセグメント部材高さHのバラツキを最小限にして、部材性能の安定化と製造コスト削減を図る。
本発明者は、これらの課題について、種々検討した結果、セグメントにおけるウェブ側面にフランジ部材の板厚方向の一端側が当接されると共に他端側がウェブ部材よりトンネル半径方向で突出するように配置して固定する構造とすることで、前記の課題を有利に解決可能であることを、本発明者は知見し本発明を完成させた。
本発明は前記の課題を有利に解消し、従来の場合に比べて、トンネル半径方向のセグメント高さの寸法管理がより容易で安価な安定した性能を有するトンネル覆工用等のセグメントとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のセグメントでは、1枚のウェブ部材と少なくとも1枚のフランジ部材とを有する少なくとも1対の主桁および地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレートを備えたセグメントであって、前記ウェブ部材におけるセグメント内側面に、少なくとも1枚の前記フランジ部材の一側端面における板厚方向の一端側が当接されると共に他端側がウェブ部材よりトンネル半径方向に突出するように前記フランジ部材が配置されて相互が固着され、前記主桁は、略断面コ字状、もしくは略断面L字状の主桁断面に形成されていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明のセグメントにおいて、前記スキンプレートが前記フランジ部材に固着されていることを特徴とする。
第3発明では、第1又は第2発明のセグメントにおいて、前記スキンプレートのトンネル半径方向の外側面は前記ウェブ部材のトンネル半径方向の外端面よりも外側に配置され、もしくは前記ウェブ部材のトンネル半径方向の内端面よりも内側となるように配置されて相互に固着されていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかのセグメントにおいて、前記主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結されていることを特徴とする。
第5発明では、第4発明のセグメントにおいて、前記ウェブ部材と前記フランジ部材との溶接による接合は、前記ウェブ部材と前記フランジ部材とにより形成されるコーナー部の出隅部の隅肉溶接により接合されていると共にその溶接量を出隅部隅肉溶接量(S1)とした場合に、前記コーナー部の内隅部の隅肉溶接量(S)を、ゼロ又は前記の出隅部隅肉溶接量(S1)の1/2以下としたことを特徴とする。
第6発明のでは、第4発明又は第5発明のセグメントにおいて、前記補剛材が相対する主桁間で連結部材により連結されていることを特徴とする。
第7発明では、第4発明又は第5発明のセグメントにおいて、相対する主桁は補剛材により連結されていることを特徴とする。
第8発明では、第1発明〜第7発明のいずれかのセグメントにおいて、前記主桁と継手板および前記スキンプレートを備えた鋼殻の内側に中詰めコンクリートが充填・硬化されていることを特徴とする。
第9発明では、第8発明のセグメントにおいて、前記鋼殻の内側面にずれ止めが設けられていることを特徴とする。
第10発明では、第9発明のセグメントにおいて、前記フランジ部材に設けたずれ止めが、前記主桁同士間に渡って設置された棒状部材であることを特徴とする。
第11発明では、第8発明〜第10発明のいずれかのセグメントにおいて、前記中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋が埋め込み配置されていることを特徴とする。
第12発明では、第8発明〜第11発明のいずれかのセグメントにおいて、主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結され、前記補剛材が相対する主桁間で連結部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う連結部材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする。
第13発明では、第8発明〜第11発明のいずれかのセグメントにおいて、主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結され、相対する主桁は前記補剛材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う補剛材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする。
第14発明のセグメントの製造方法においては、第4発明〜第13発明のいずれかのセグメントを製造するにあたり、前記主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材を仮溶接し、前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくはフランジ部材同士間の相互を前記補剛材で連結した後に前記主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材を連続本溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によると、ウェブ部材とフランジ部材とを有する主桁を備えたセグメントであって、前記ウェブ部材におけるセグメント内側面に、少なくとも1枚の前記フランジ部材の一側端面における板厚方向の一端側が当接されると共に他端側がウェブ部材よりトンネル半径方向に突出するように前記フランジ部材が配置されて、前記主桁は、略断面コ字状、もしくは略断面L字状の主桁断面に形成されているので、次のような効果が得られる。
(1)トンネル軸方向外側両端面がウェブ部材の平坦面により平滑に形成されるので、シールド掘進機における伸縮ジャッキによりジャッキ推力をセグメントに作用させた場合に、従来のようにジャッキ推力がフランジ部材先端に局所的に負荷することなく、ウェブ部材に直接載荷されるため、セグメントへの応力伝達がスムーズになって、フランジ部材とウェブ部材との溶接を少なくでき、さらにはコンクリートへの局所的な応力集中も回避できるためにコンクリート強度が低くできるので、セグメント製造コストの削減を図ることができる。
(2)本発明の主桁は、ウェブ部材の側面に少なくとも1枚のフランジ部材が固定される構造であり、従来のようにウェブ部材をフランジ部材で挟み込む構造断面でないので、セグメント製作時における主桁構成部材の寸法誤差の影響が回避されることから、寸法管理が容易になると共に、セグメント部材高さのバラツキが少なくなり、セグメントの断面性能が安定する。
特に、本発明では、セグメント製造時におけるセグメント高さは、ウェブ部材のセグメント内側面に対するフランジ部材の取り付け位置を調節することのみで管理できるので、セグメント構成部材(ウェブ部材、フランジ部材、スキンプレート)の寸法誤差の影響から回避することができる。
(3)その結果、セグメントの製造管理を緩和できることから、セグメントの製造コスト削減を図ることができる。
また、前記主桁は、略断面コ字状、もしくは略断面L字状の主桁断面に形成されているので、簡単な断面形態の主桁を用いて、合理的な主桁とすることができる等の効果が得られる。
第2発明によると、スキンプレートがフランジ部材に固着されているので、スキンプレートの溶接による固定を容易に行うことができ、また、スキンプレートのトンネル軸方向の巾寸法の精度を低くすることができるので、スキンプレートのトンネル軸方向の寸法管理が容易である等の効果が得られる。
第3発明によると、スキンプレートのトンネル半径方向の外側面が、ウェブ部材のトンネル半径方向の外端面よりも外側、またはウェブ部材のトンネル半径方向の内端面よりも内側となるように配置されているので、位置調整されたフランジ部材の外側に固定して鋼殻の剛性を高めることができる。また、ウェブ部材を設計上のセグメント高さよりも低くして、経済的な主桁とすることができ、さらにセグメント構成部材におけるウェブ部材、フランジ部材およびスキンプレートの寸法公差を考慮しないでよいので、寸法管理が極めて容易である等の効果が得られる。
第4発明によると、主桁を構成するフランジ部材とウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結されているので、フランジ部材とウェブ部材、フランジ部材同士または内空側フランジ部材とスキンプレートを補剛部材により補強しながら連結することができると共に、コンクリートが中詰めされている場合には、補剛部材をずれ止めとして機能させることができ、中詰めコンクリートがトンネル周方向等にずれるのを防止して、鋼殻と中詰めコンクリートとの一体化を高めることができる等の効果が得られる。また、ウェブ部材とフランジ部材との本溶接時における主桁の溶接変形を抑制することができるので、形状寸法管理が極めて容易になる効果が得られる。更に、トンネル周方向に円弧状に配置される内空側フランジ部材を備えたセグメントでは、内空側フランジ部材が補剛材により補剛されているため、フランジ部材にトンネル周方向の引張軸力が作用した場合に、内空側フランジ部材がトンネル内空側に鉛直変位するのを抑制することができ、これによりセグメントの構造性能の向上を図ることができ等の効果が得られる。特に、コンクリートが中詰めされている場合には、コンクリートのひびわれ、あるいはフランジ部材とコンクリートとの剥離を抑制し、耐久性能の向上を図ることができるという効果も得られる。
第5発明によると、ウェブ部材とフランジ部材との溶接による接合は、前記ウェブ部材と前記フランジ部材とにより形成されるコーナー部の出隅部の隅肉溶接により接合されていると共にその溶接量を出隅部隅肉溶接量(S1)とした場合に、前記コーナー部の内隅部の隅肉溶接量(S)を、ゼロ又は前記の出隅部隅肉溶接量(S1)の1/2以下としたので、次のような効果が得られる。
ウェブ部材とフランジ部材との溶接部が、フランジ部材が補剛材により補剛されて、フランジ部材がトンネル半径方向への面外変形が防止されている状態で、ウェブ部材とフランジ部材とにより形成されるコーナー部の外側から出隅部の隅肉溶接量を大にして溶接接合でき、しかも前記コーナー部の内隅部の隅肉溶接量をゼロにしたり、又は出隅部溶接量に比べて1/2以下に格段に少なくすることができ、内隅部の隅肉溶接が格段に少なくなる分内隅部の隅肉溶接による変形を格段に抑制でき、また、内隅部の溶接が格段に少なくなる部分、溶接作業及び溶接作業効率を向上させることができる。
第6発明によると、補剛材が相対する主桁間で連結部材により連結されているので、セグメントにおけるフランジ部材にトンネル周方向の引張軸力が作用した場合に腹圧力が作用しても、各主桁における内空側のフランジ部材がトンネル半径方向内側に変位する鉛直変位を抑制することができると共に、内空側フランジ部材の回転変位も抑制することができる等の効果が得られる。また、トンネル軸方向の圧縮力および引張力を伝達するという鋼製補強リブの機能を兼ねることができるので、鋼製補強リブを省略して部材数を低減することができる等の効果が得られる。
第7発明によると、相対する主桁は補剛材により連結されているので、第6発明と同じ効果を少ない部材で実現できるので、製造コストを削減できる等の効果が得られる。
第8発明によると、主桁と継手板とスキンプレートを備えた鋼殻の内側に中詰めコンクリートが充填・硬化されていると、中詰めコンクリートが充填硬化されて鋼殻と一体化された剛性および耐荷性のある合成セグメントとすることができる等の効果が得られる。
第9発明によると、前記鋼殻の内側面にずれ止めが設けられているので、中詰めコンクリートと鋼殻との一体化を高めることができると共に、中詰めコンクリートが鋼殻からトンネル周方向あるいはトンネル半径方向内側に剥離するのを防止することができる等の効果が得られる。
第10発明によると、フランジ部材に設けたずれ止めが、主桁同士間に渡って設置された棒状部材であるので、鋼殻と中詰めコンクリートとの合成構造を高めることができ、セグメントリングに土水圧が作用し、トンネル内空側への正曲げモーメントが卓越する部分に使用した場合等では、トンネル半径方向内空側に中詰めコンクリートが膨出するのを防止することができる等の効果が得られる。
第11発明によると、中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋が埋め込み配置されているので、中詰めコンクリートと周方向補強鉄筋とによる、鉄筋コンクリート構造とすることができ、鋼殻と鉄筋コンクリート製中詰めコンクリートとの合成構造とすることができ、合成構造セグメントの剛性および耐力を一層高めることができる等の効果が得られる。
第12発明によると、主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結され、前記補剛材が相対する主桁間で連結部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う連結部材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されているので、セグメントにおける内空側フランジ部材および内空側補強鉄筋に引張軸力が作用した場合の腹圧力による内空側フランジ部材及び周方向の補強鉄筋の変位(鉛直変位及び回転変位)を抑制できる等の効果が得られる。また、前記補剛材は周方向補強鉄筋を有する合成構造部材のせん断補強鋼板の機能も発揮するので、周方向補強鉄筋を多量に配置することが可能となり、合成構造セグメントの耐力を更に一層高めることができる等の効果が得られる。
第13発明によると、主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結され、相対する主桁は前記補剛材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う補剛材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されているので、一体となった補剛材により、第12発明と同じ効果を少ない部材で実現できるので、製造コストを削減できる等の効果が得られる。
第14発明によると、主桁製造時における溶接熱変形を抑制することができるため、変形後セグメントの矯正作業が縮小(矯正作業が少なく)され、セグメントの製造コストおよび製造工期を少なくできる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】(a)は図1に示すセグメントの縦断正面図、(b)はスキンプレートを広幅とした形態の場合の(a)図に相当する縦断正面図である。
【図3】図2に示す第1実施形態の主桁および地山側のスキンプレートまたは内空側のスキンプレート付近を拡大して示す縦断正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図5】図4に示すセグメントの縦断正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図7】本発明の第4実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図8】図7に示すセグメントの縦断正面図である。
【図9】本発明の第5実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図10】本発明の第6実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図11】本発明の第7実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図12】本発明の第8実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図13】図12に示すセグメントの縦断正面図である。
【図14】本発明の第9実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントの縦断正面図である。
【図15】本発明のセグメントの場合のジャッキ推力の伝達状況と、従来のセグメントの場合のジャッキ推力の伝達状況の説明図である。
【図16】(a)は本発明のセグメントを製造する場合の主桁の変形を説明するための説明図、(b)は主桁溶接部を通過する応力の流れを説明するための説明図である。
【図17】従来のセグメントの場合の主桁およびスキンプレート付近を拡大して示す縦断正面図である。
【図18】本発明の第10実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントの縦断正面図である。
【図19】(a)はウェブ部材とフランジ部材との溶接形態を示すものであって、本発明の第11実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントの一端側を示す縦断正面図、(b)はウェブ部材とフランジ部材との溶接形態の変形形態を示す縦断正面図である。
【図20】本発明の第11実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図21】本発明の第12実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図22】本発明の第13実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図23】本発明の第14実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図24】本発明の第15実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図25】本発明の第16実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図26】本発明の第17実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図27】本発明の第18実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図28】本発明の第19実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図29】本発明の第20実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図30】本発明の第21実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断側面図である。
【図31】本発明の第21実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
【図32】(a)はトンネル周方向に円弧状の形状とされている主桁におけるフランジに引張軸力が作用している場合にウェブと反対側のフランジ先端部がトンネル半径方向に変形している状態を示す概略側面図、(b)は腹圧力によりフランジ部材が変形している状態を示す縦断正面図である。
【図33】(a)はトンネル内空側のフランジ部材に一体に接続している補剛部材を主桁に設けることで、フランジ部材の鉛直変位を抑制していることを示す説明図、(b)はトンネル内空側のフランジ部材に一体に接続している補剛部材を主桁に設けると共に主桁間を接続する補剛部材とすることで、トンネル内空側のフランジ部材の鉛直変位及び回転変位を抑制していることを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメント1を示すものであって、図1はセグメント1の一部切り欠き斜視図、図2(a)は、図1に示すセグメント1の縦断正面図、同図(b)はスキンプレートを広幅とした形態を示す縦断正面図、図3は、図2に示す第1実施形態の主桁2および地山側のスキンプレート3または内空側のスキンプレート4付近を拡大して示す縦断正面図である。
【0012】
図示の形態では、コンクリート5がセグメント内に充填・硬化され、鋼殻6と中詰めコンクリート5とが合成一体化された合成セグメント1を示しているが、本発明では、トンネル覆工用のセグメント1は、中詰めコンクリート5がセグメント内に充填されていない鋼製セグメントでも、中詰めコンクリート5がセグメント内に充填・硬化されたセグメントでもよい。
【0013】
この形態では、セグメント1におけるトンネル周方向に延長するように配置されている鋼製の主桁2は、ウェブ部材7とフランジ部材8とを有するコ字状断面(または溝形断面)の主桁2で、ウェブ部材7に対してフランジ部材8を片側(トンネル軸方向の片側)に張り出すように設けた片フランジ式の主桁2を備えたセグメント1である。
そして、本発明の実施形態では、セグメント鋼殻6内側面等、セグメント内側面であって、前記ウェブ部材7におけるセグメント内側面に、前記フランジ部材8の一側端面の板厚方向の一端側が当接されると共に他端側がウェブ部材7よりトンネル半径方向に突出するように前記フランジ部材8がウェブ部材7に対して直角に配置され、フランジ部材8は、ウェブ部材7に、セグメント内外の2つのトンネル周方向に連続した隅肉溶接Wにより固定されている。
特に、本発明では、セグメント製造時におけるトンネル半径方向のセグメント高さHは、ウェブ部材7のセグメント内側面に対するフランジ部材8のトンネル半径方向の取り付け位置を調節することのみで管理できるので、セグメント構成部材(ウェブ部材、フランジ部材、スキンプレート)の寸法誤差の影響から回避することができる。フランジ部材8の一側端面の板厚方向の一端側がウェブ部材7に当接されることから、フランジ部材8のトンネル軸方向の位置決めが容易になる。
フランジ部材8の板厚寸法F内において、ウェブ部材7のトンネル半径方向の端面から、地山側に配置のフランジ部材8では、トンネル半径方向外側(地山側)に突出するように配置し、内空側に配置のフランジ部材8では、トンネル半径方向内側(内空側)に突出するようにそれぞれ配置して溶接Wにより固定される。フランジ部材8の板厚寸法F内におけるトンネル半径方向外側あるいは内側への突出寸法Tが大きいと、溶接代を大きくとれ(例えば、トンネル半径方向で、溶接脚長が最大ほぼフランジ部材8の板厚寸法にできる。また、トンネル軸方向で、溶接脚長がウェブ部材7の板厚寸法にできる。)、溶接サイズ(溶接脚長、あるいはのど厚)が大きくなることから、強固に固定された剛性の高い主桁2とすることができ、剛性の高いセグメント性能とすることができる。
【0014】
より具体的には、ウェブ部材7とフランジ部材8との隅肉溶接Wによる接合は、ウェブ部材7とフランジ部材8とにより形成されるコーナー部の内隅部の隅肉溶接Wにより接合されていると共に前記コーナー部の出隅部の隅肉溶接Wにより接合され、前記各隅肉溶接の脚長又はのど厚が、ほぼ同じ寸法にされている。
このように、ウェブ部材7にフランジ部材8が傾斜または直角に配置されることにより形成されるコーナー部における、セグメント内側の内隅部および外側の出隅部の両方において、しかも、内外における溶接Wの溶接長あるいはのど厚が、ほぼ同じ寸法とされていることにより、内側の溶接Wによる熱変形と外側の溶接Wによる熱変形がほぼ打ち消しあうことになるため、図16(a)に一点鎖線Aで示すように、主桁(またはセグメント)製造時における熱変形を大幅に緩和することができ、矯正する場合では簡易な手段でできることから、主桁2あるいはセグメント1の製造コスト削減を大きく図ることができる。
また、溶接部Wがウェブ部材7の片側(トンネル軸方向のセグメント内側面、あるいはトンネル半径方向の端面)に偏在せず、フランジ部材8を両側面(トンネル半径方向の内側面とトンネル軸方向の端面)から溶接するため、図16(b)に矢印B1,B2で示すように、フランジ部材8とウェブ部材7との溶接Wを介した応力伝達が良好になり、その結果、セグメント1の性能が向上するようになる。
さらに、前記のように、トンネル半径方向のウェブ端面の大きなスペースに溶接Wするので、溶接サイズを大きく出来、剛性の高いセグメント性能が得られる。
【0015】
しかも、前記のように、ウェブ部材7の内側面にフランジ部材8を配置して固定することで、図15(a)に示すように、ウェブ部材7の平坦な外側面のほぼ全面を、シールド掘進機(図示省略)における掘進用ジャッキ(図示省略)に連結された押圧係合部材10の後面に面タッチさせることができるため、ジャッキ推力(押圧力)による主桁2に作用する圧縮応力を低減させて、主桁2を介してセグメント本体側に伝達することができる。中詰めコンクリート5を充填する形態の合成セグメント1では、主桁2、特にウェブ部材7内側面から中詰めコンクリート5に均等に圧縮応力を伝達することができる。また、ウェブ部材7から、フランジ部材8と、地山側または内空側のスキンプレート4と、継手板9と、鋼製補強リブ11とに伝達することもでき、これらの点で、ジャッキ推力に対して合理的に対処可能なセグメントの構造仕様とすることができる。
【0016】
また、前記の中詰めコンクリート5を充填しない形態の鋼製セグメント1では、ウェブ部材7から、フランジ部材8と、地山側のスキンプレート3または内空側のスキンプレート4と、継手板9と、鋼製補強リブ11とに伝達することができ、これらの点で、ジャッキ推力に対して合理的に対処可能なセグメントの構造仕様とすることができる。
反対に、図15(b)に示すように、ウェブ部材7の上下にフランジ部材8を固定し、フランジ部材8をウェブ部材7から突出するように配置する従来の形態では、フランジ部材8にジャッキ推力が集中して作用するようになり、また、ウェブ部材7とフランジ部材8との溶接を十分確実に行う必要があるため、製造コストが高くなる。
【0017】
前記のように、本発明では、ウェブ部材7のセグメント内側面に、フランジ部材8の板厚寸法Fの一部が収まるように取り付ける構造であるため、例えば、図1〜図3に示す形態では、セグメント1のトンネル半径方向の高さ寸法H内に収める場合に、ウェブ部材7のトンネル半径方向の巾寸法Vを、例えば、前記寸法Hよりもフランジ部材7の板厚の一部および地山側のスキンプレート3(または内空側のスキンプレート4)を突出させる程度小さくしておけばよく、ウェブ部材7のトンネル半径方向の巾寸法Vと、フランジ部材8の板厚寸法Fと、地山側のスキンプレート3(または内空側のスキンプレート4)の板厚寸法Sの公差を考慮することなく、ウェブ部材7に対するフランジ部材8の取り付け位置を調節することにより、セグメント1のトンネル半径方向のセグメント高さHが管理できるため、これらの部材の寸法誤差の影響を回避できる。また、前記のようにセグメント高さHを容易に管理してセグメントを製造することができるため、セグメントの製作も容易で、セグメントのトンネル半径方向のセグメント高さHのばらつきもなくなり、その分、安価なセグメント1を製造することができる。なお、継手板9のトンネル半径方向の幅寸法は、ウェブ部材7の幅寸法Vと同じ寸法または僅かに小さい寸法に設定される。
図1〜図3に示す形態では、主桁2は、ウェブ部材7と、2枚のフランジ部材8とにより構成され、このような主桁2を2枚と、1枚の地山側のスキンプレート3(または内空側のスキンプレート4)と、トンネル軸方向の両端に配置され、前記各主桁2と地山側のスキンプレート3(または内空側のスキンプレート4)に連続した溶接により一体に固定される2枚の継手板9により、5面鋼殻が構成され、その5面鋼殻の内側に主桁2間に亘って鋼製補強リブ11が設けられて、適宜、継手板9および主桁2に雄継手12または雌継手13が設けられて、鋼製セグメント1が構成され、そのような鋼製セグメント1内に、中詰めコンクリート5が充填・硬化されて、鋼製セグメント1と中詰めコンクリート5とが一体化された合成構造のセグメント1とされている。地山側のスキンプレート3(または内空側のスキンプレート4)のトンネル軸方向の巾寸法としては、図2(a)に示すように、フランジ部材8の中央部に溶接により固定してもよく、図2(b)に示すように、フランジ部材8の端部(主桁7寄りの基端部、または反対にフランジ部材8の先端部)に溶接により固定してもよく、スキンプレート3(4)のトンネル軸方向の巾寸法は適宜設定される。
本発明のセグメント1では、1枚のウェブ部材7と少なくとも1枚のフランジ部材8とを有する少なくとも1対の主桁(2枚の主桁2)および地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレート3を備えたセグメントであって、前記ウェブ部材7におけるセグメント内側面に、少なくとも1枚の前記フランジ部材8の一側端面における板厚方向の一端側が当接されると共に他端側がウェブ部材7よりトンネル半径方向に突出するように前記フランジ部材8が配置されて相互が固着され、前記主桁2は、略断面コ字状、もしくは略断面L字状の主桁断面に形成されているセグメントである。
【0018】
なお、ウェブ部材7とフランジ部材8を溶接する場合には、図16(a)に示すように、トンネル半径方向におけるフランジ部材8をウェブ部材7に溶接により固定する場合の内側の溶接Wの溶接サイズ(溶接長、のど厚寸法)と、外側の溶接W1の溶接量を極力、同じ溶接サイズとするほうが、矢印X,X2で示すような溶接部の熱収縮による圧縮力の差が生じないため、フランジ部材8が鎖線Aで示すような製造時の変形を少なくすることができるので好ましい。
前記の内側の溶接Wの溶接サイズが、外側の溶接W1の溶接サイズとほぼ同じ場合に、フランジ部材8とウェブ部材7との間の応力伝達の流れは、図16(b)に矢印B1,B2で示すように、フランジ部材8とウェブ部材7との応力伝達が良好になる。なお、外側の溶接W1の溶接サイズが少ないと、より内側の溶接Wの溶接量が多い方から応力が伝達されるようになる傾向にある。
【0019】
図4および図5は、本発明の第2実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示すものであって、図4は、セグメント1の一部切り欠き斜視図、図5は、図4に示すセグメント1の縦断正面図である。前記の第1実施形態および第2実施形態は、トンネル半径方向の地山側または内空側の一方にスキンプレート3(4)を有する形態であるが、本形態は、両方にスキンプレート3,4を有する形態である点が相違している。
【0020】
図4〜図5に示す形態では、トンネル地山側のスキンプレート3に加えて、内空側のスキンプレート4が、内空側のフランジ部材8に配置されて、トンネル周方向に連続した溶接Wにより固定されている。この形態の場合には、継手板9のトンネル半径方向の幅寸法は、ウェブ部材7の幅寸法と同じ寸法又は僅かに小さい寸法に設定される。
その他の構成は前記実施形態の場合と同様である。
【0021】
図6は、本発明の第3実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメント1を示す縦断正面図である。
この形態では、主桁2の断面形態が、L字状断面でもよいことを示す代表形態である。そして、この形態では、ウェブ部材7のトンネル半径方向の地山側(または内空側)のセグメント内側面に、フランジ部材8が、その板厚寸法内において、トンネル半径方向にウェブ部材7の端面からトンネル半径方向に突出するように配置されている。
この形態では、トンネル半径方向のセグメント高さHは、ウェブ部材7のトンネル半径方向の一端側と、ウェブ部材7のトンネル半径方向の他端側に配置された地山側又は内空側のフランジ部材8のトンネル半径方向の地山側の外面(または内空側の外面)位置と、スキンプレート4のトンネル半径方向の地山側の外面(または内空側の外面)位置により、設定されることになる。この場合も、前記実施形態と同様に、フランジ部材8のウェブ部材7に対するトンネル半径方向の位置を調節することにより、セグメント高さHを設定することができる。
この場合も、ウェブ部材7のトンネル半径方向の巾寸法Vに重ねるようにフランジ部材8又はスキンプレート3を配置していないので、ウェブ部材7の巾寸法Vの公差V1と、フランジ部材8の板厚寸法Fとのその公差F1と、スキンプレート3(4)の板厚寸法Sとその公差S1のすべてを考慮しなくてもよく、フランジ部材8の位置調節してセグメント高さHを設定することができるので、その分、寸法管理および製作面で容易になる。
なお、この形態では、継手板のトンネル半径方向の幅寸法は、ウェブ部材7の幅寸法と同じ寸法又は僅かに小さい寸法に設定される(以下の実施形態でも同様である)。
【0022】
図7および図8は、本発明の第4実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示すものであって、図7は、セグメントの一部切り欠き斜視図、図8は、図7に示すセグメントの縦断正面図である。
この形態は、フランジ部材8にずれ止め14を設けてもよいことを示す代表形態である。トンネル軸方向に間隔をおいて平行に対向するように配置されたフランジ部材8にずれ止め14が設けられ、かつずれ止め14が、主桁2同士間に渡って配置されて溶接により固定されて設置された異形棒鋼あるいは平鋼等の棒状部材14aを設置して形成された形態が示されている。また、図示の形態では、トンネル周方向に間隔をおいて、複数のずれ止め14が設けられている。
このように、主桁2間に渡ってずれ止め14を設けた合成セグメント1とすることにより、トンネル覆工を構築した場合で、地山側から土水圧が作用し正曲げモーメントが作用するような場合には、中詰めコンクリート5がトンネル半径方向内空側あるいはトンネル周方向にずれるのを確実に防止して、鋼製セグメント1と中詰めコンクリート5とが確実に一体化した合成セグメント1とすることができる。
【0023】
図9は、本発明の第5実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す断面図である。
この形態では、ウェブ部材7またはフランジ部材8あるいはスキンプレート3(4)のセグメント内側面に、トンネル軸方向及び/またはトンネル半径方向に間隔をおいて複数または多数のずれ止め14を設けてもよいことを示した代表形態である。また、この形態では、頭付きスタッドの基端部が溶接により固定されている。
このように、ずれ止め14を設けることにより、中詰めコンクリート5のトンネル周方向あるいはトンネル半径方向のずれ止めを図り、主桁2あるいは鋼殻6若しくは鋼製セグメント1と中詰めコンクリート5との付着一体化を高めた合成構造とし、ずれ止め14も棒状部材であることからしてコンクリートに空隙が形成されることはなく、コンクリートの充填性もよい。
【0024】
図10は、本発明の第6実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
この形態では、ウェブ部材7とフランジ部材8とを、溶接により仮止めた段階で、各主桁2側の間隔をおいて並行(または平行)な対向するフランジ部材8の先端部に渡って鋼製の棒状間隔保持部材15を固定して、ウェブ部材7とフランジ部材8の本溶接時における主桁2の溶接時の変形を防止するようにした形態である。棒状間隔保持部材15としては、棒鋼、あるいは狭巾の鋼板を、本溶接に支障のない適宜の間隔をおいて設置するとよい。前記の棒状間隔保持部材15は、主桁2と中詰めコンクリート5とのずれ止め14としての機能も有する。
【0025】
図11は、本発明の第7実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す縦断正面図である。
この形態では、ウェブ部材7とフランジ部材8とを、溶接により仮止めした段階で、ウェブ部材7とフランジ部材8のコーナー部に鋼製の補剛部材16を固定して、ウェブ部材7とフランジ部材8の本溶接時における主桁2の溶接時の変形を防止するようにした形態である。補剛部材16としては、狭巾の鋼板を、本溶接に支障のない適宜の間隔をおいて設置するとよい。前記の補剛部材16は、主桁2と中詰めコンクリート5とのずれ止め14としての機能も有する。また、前記の補剛部材16により、ウェブ部材7とフランジ部材8とを補剛して連結された主桁2とされている。
本発明の第6実施形態もしくは第7実施形態において、主桁2を形成する場合、ウェブ部材7とフランジ部材8の仮止め段階とは断続溶接により相互を固定するものであり、本溶接による変形は殆ど発生しない。しかしながら、ウェブ部材7とフランジ部材8とを連続溶接により本溶接する場合は入熱量が格段に大きく、溶接熱変形が大きく発生する。そこで本溶接を行う前にフランジ部材8の先端部に渡って鋼製の棒状間隔保持部材15を固定する、もしくはウェブ部材7とフランジ部材8のコーナー部に鋼製の補剛部材16を固定する製造方法を採用することで本溶接時の溶接熱変形が抑制される。それによって後工程の熱矯正を格段に抑えることができ、セグメントの製造コストや製造工期を少なくすることができる。前記棒状間隔保持部材15および前記補剛部材16を併用することにより、本溶接時の溶接熱変形を一層抑制することが可能である。
【0026】
図12は、本発明の第8実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示すのであって、図12はセグメントの一部切り欠き斜視図、図13は図12に示すセグメントの縦断正面図である。
この形態では、主桁2間に架設されたずれ止め14としての棒状部材14aに、トンネル周方向に延長する周方向補強鉄筋17を載置するようにセグメント内側に架設して、中詰めコンクリート5を周方向補強鉄筋17により補強した形態である。このような周方向補強鉄筋17を設けると、中詰めコンクリート5が2方向の版状に補強されることにより、合成構造セグメントの剛性および耐力を一層高めることができる等の効果が得られる。
【0027】
図14は、本発明の第9実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントの縦断正面図である。
この形態では、主桁2間に架設されたずれ止め14としての棒状部材14aを省略して、トンネル周方向に延長する周方向補強鉄筋17をセグメント内側に内部鉄筋等に溶接により固定するように架設して、中詰めコンクリート5を周方向補強鉄筋17により補強した形態である。
【0028】
図18は、本発明の第10実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す断面図である。
この形態では、ウェブ部材7とフランジ部材8とを、溶接により仮止めた段階で、ウェブ部材7とフランジ部材8とを板状間隔保持材15で固定し、ウェブ部材7とフランジ部材8の本溶接時における主桁2の溶接時の変形を防止した主桁2を有するセグメントにおいて、ウェブ部材7またはフランジ部材8あるいはスキンプレート3(4)のセグメント内側面に、トンネル軸方向及び/またはトンネル半径方向に間隔をおいて複数または多数のずれ止め14を設けてもよいことを示した代表形態である。また、この形態では、頭付きスタッドの基端部が溶接により固定されている。前記の板状間隔保持材15は、主桁2と中詰めコンクリート5とのずれ止め14としての機能も有する。また、前記の板状間隔保持部材15は補剛部材16としての機能も有する。
このように、板状間隔保持材15およびずれ止め14を設けることにより、中詰めコンクリート5のトンネル周方向あるいはトンネル半径方向のずれ止めを図り、主桁2あるいは鋼殻6若しくは鋼製セグメント1と中詰めコンクリート5との付着一体化をより一層高めた合成構造とすることが可能となる。
【0029】
図19(a)(b)及び図20は、本発明の第11実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す断面図である。
この形態では、例えば、下記(1)〜(5)のように、セグメント1における各主桁2におけるトンネル内空側のフランジ部材8のトンネル内空側への面外変形が防止又は抑制されている場合に好適な、フランジ部材8とウェブ部材7の溶接接合形態を示すものである。この実施形態以後の実施形態あるいは変形形態の溶接形態を前記各実施形態に適用してもよい。
(1)図11に示すようなトンネル内空側のフランジ部材8とウェブ部材7とが補剛部材16により一体化されて補剛されている場合。
(2)トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8とが補剛部材あるいは図10に示すような棒状間隔保持部材15により一体に連結されて補剛されている場合。
(3)トンネル内空側のフランジ部材8又はこれと地山側のフランジ部材8と、地山側のスキンプレート3とが補剛部材により一体に連結されて補剛されている場合。
(4)トンネル内空側のフランジ部材8及びトンネル地山側のフランジ部材8とウェブ部材7とが補剛部材により一体に連結されて補剛されている場合。
(5)トンネル内空側のフランジ部材8と、ウェブ部材7と地山側のスキンプレート3とが補剛部材により一体に連結されて補剛されている場合。
【0030】
前記(1)〜(5)の場合のように、主桁2におけるトンネル内空側のフランジ部材8のトンネル内空側への面外変形が防止、或は抑制されている場合には、ウェブ部材7とフランジ部材8とを、セグメントのトンネル半径方向の外側において溶接又は主として溶接するのが好ましい。
すなわち、ウェブ部材7とフランジ部材8とにより形成されるコーナー部(出隅部又はその内側隅部)を溶接により一体化する場合に、前記ウェブ部材のトンネル半径方向の端面とフランジ部材のトンネル軸方向の端面におけるトンネル半径方向地山側の一部(又はトンネル半径方向の内空側の一部)による出隅部外側面の隅肉溶接により接合されていると共にその溶接量を出隅部隅肉溶接量(S)とした場合に、前記コーナー部の内隅部(内側隅部)の隅肉溶接量(S1)を、ゼロ又は前記の出隅部隅肉溶接量(S)の1/2以下とするとよい。
図19(a)及び図20は、ウェブ部材7のトンネル半径方向の端面とフランジ部材8のトンネル軸方向の端面との溶接(出隅部隅肉溶接W1)における外側溶接量S(のど厚×溶接長)に対して、ウェブ部材7のトンネル軸方向のセグメント内側面とフランジ部材8のトンネル半径方向のセグメント内側とのセグメント内空側の内隅部の溶接(W)における内側溶接量S1(のど厚×溶接長)を、前記外側溶接量Sの1/2以下とされている形態を示す代表形態であり、内側溶接量S1による主桁2の変形を無視して、外側溶接量Sによる変形のみを考慮すればよくなる。
前記の内側溶接量S1(のど厚×溶接長)を、前記外側溶接量Sの1/2以下とする場合に、のど厚と溶接長(トンネル周方向の溶接長)のいずれか一方又は両方を、外側溶接量Sののど厚又は溶接長よりも小さくすることで、調整すればよいので、セグメントの外側からの溶接が主となり、溶接作業が容易になると共に短工期で製作でき、安価にセグメントを製作することができる。
また、図19(b)は、第11実施形態の変形形態で、ウェブ部材7とフランジ部材8とのセグメント内空側の内隅部の溶接をなくした代表形態である。強固な補剛部材16により、トンネル内空側のフランジ部材8の面外変形が充分に防止又は抑制されている場合には、トンネル内空側のフランジ部材8及び/又は地山側のフランジ部材8とウェブ部材7との各内側溶接量S1をなくし、外側溶接量Sのみにより、フランジ部材8とウェブ部材7の一体化を図るようにしてもよく、このようにすると、内側溶接が一層少なくなるから、溶接作業が容易になると共に短工期で製作でき、安価にセグメントを製作することができる。
【0031】
次に、前記の形態のように、外側溶接量Sを主として、内側溶接量S1を少なくした各主形態について説明する。
【0032】
図21は、本発明の第12実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す断面図である。
この形態では、ウェブ部材7とフランジ部材8とを、溶接により仮止めした段階で、上下のフランジ部材8にわたる鋼製(鋼板製)の補剛部材16を上下のフランジ部材8に溶接により固定したり、或は、ウェブ部材7と上下のフランジ部材8にわたる鋼製(鋼板製)の補剛部材16をウェブ部材7と上下のフランジ部材8に溶接により固定して、ウェブ部材7と上下のフランジ部材8の本溶接時における主桁2の溶接時の変形を防止すると共に、図32(a)に示すようにトンネル周方向の引張軸力Tが作用した場合に、腹圧力による変位を抑制可能にした形態である(詳細は後記する)。
【0033】
補剛部材16としては、狭巾の鋼板を、本溶接に支障のない適宜の間隔をおいて設置するとよい。前記の補剛部材16は、主桁2と中詰めコンクリート5とのずれ止め14としての機能も有する。また、前記の補剛部材16により、上下のフランジ間が連結一体化されていると共に、ウェブ部材7とフランジ部材8とを補剛して連結された主桁2とされている。
本発明の第12実施形態においても、ウェブ部材7とフランジ部材8の本溶接を行う前に、フランジ部材8の先端部に渡って鋼製の棒状間隔保持部材15を固定する、もしくはウェブ部材7と上下のフランジ部材8に鋼製の補剛部材16を固定する製造方法を採用することで本溶接時の溶接熱変形が抑制される。それによって後工程の熱矯正を格段に抑えることができ、セグメントの製造コストや製造工期を少なくすることができる。
また、セグメント1におけるフランジ部材8は、トンネル周方向で円弧状とされているため、トンネル内空側のフランジ部材8に図32(a)に矢印で示す引張軸応力Tが作用した場合、図32(b)に矢印で示す見かけ上の腹圧力Cが作用し、ウェブ部材7が腹圧力Cに抵抗するが、トンネル内空側のフランジ部材8のウェブ部材7から離れた部分は比較的拘束力のない曲面板で腹圧力Cに抵抗することになり、同図に点線で示すように、トンネル内空側に面外変形を生じ、セグメントの構造性能が低下する恐れがある。
このようなトンネル内空側のセグメント部材8の面外変形が生じると、フランジ部材8とその変形に追従できない中詰めコンクリート5との間に隙間Gが発生する、あるいはコンクリートにひびわれ等の破損を生ずることになるから、土圧や地下水圧等の外荷重を、地山側のスキンプレート3及び中詰めコンクリート5を介して、フランジ部材8或はウェブ部材7等の主桁2等へ荷重伝達する性能が低下する。また、前記隙間Gの部分への水の浸入等により、フランジ部材8を含むセグメントを構成する鋼材の腐食を生じるようになり、セグメントを構成する鋼材の防食性能の低下を引き起こし、セグメントの耐久性能が低下することになる。
これに対して、トンネル内空側のフランジ部材8が、セグメント1における他の部分に一体に連結するように前記補剛部材16により連結されていることにより補剛されている形態では、前記のトンネル内空側のセグメント部材8のトンネル内空側への面外変形を防止あるいは少なくとも抑制することができるため、前記のような荷重伝達性能の低下を防止又は抑制することができ、更にセグメントを構成する鋼材の腐食を防止又は抑制することができ、セグメントの構造性能及び耐久性能が向上する。
また、上下のフランジ部材8が補剛部材16により連結し一体化されている(内空側フランジ部材8に一体に接続した補剛部材16が設けられている)ことで、内空側フランジ部材8にトンネル周方向の引張軸力Tによる腹圧力Cが作用しても、補剛部材16の図33(a)に矢印で示す吊上げ力Dにより抵抗し、点線で示すように内空側フランジ8がトンネル半径方向内空側に面外変形するのを抑制することができる。
【0034】
図22及び図23は、本発明の第13実施形態及び第14実施形態のトンネル覆工用の合成構造のセグメントを示す断面図である。図22に示す形態では、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のスキンプレート3とウェブ部材7とに渡って鋼板製の補剛部材16をトンネル周方向に間隔をおいて配置して、補剛部材16を溶接により固定して、補剛部材16により連結して一体化した形態であり、図23では、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のスキンプレート3とに渡って、トンネル周方向に間隔をおいて補剛部材16を配置して溶接により一体に固定して、補剛部材16によりフランジ部材8と地山側のスキンプレート3とを溶接により連結して一体化した形態である。
図22及び図23に示す形態は、主桁2の断面が、主として、フランジ部材8とウェブ部材7とからなる略断面L形形態の場合である。なお、この形態の場合には、スキンプレート3の一部あるいは全てを主桁の一部として見込める場合もある。特に、スキンプレートのセグメント内側面に図8に示すようなずれ止め14を設けることにより、スキンプレート3にフランジ部材8と同様の構造性能を発揮させることが可能になる。
なお、補剛部材16のコーナー部には、適宜、隅部にスカラップ(切り欠き)を設けて、内隅部の溶接が連続するようにしても良い。
【0035】
図24〜図31は、間隔をおいて対向するように隣り合う各主桁2相互を、曲げ剛性のある鋼板等によるトンネル周方向に間隔をおいて配置された補剛部材16により連結一体化してもよいことを示した第15実施形態から第21実施形態を示したもので、これらの形態のように、主桁2相互が一体成形された1枚ものの補剛部材16又は複数の鋼材の組み立て体からなる補剛体16bにより連結一体化されていることで、補剛部材16あるいは補剛体16bと主桁からなる全体構造の曲げ剛性を高めることができ、前記の腹圧力による内空側フランジ部材8の変形抑制効果を向上させることができる。
図33(a)に示すように、内空側フランジ部材8と地山側フランジ部材8(又は地山側スキンプレート3あるいはウェブ部材7等)を補剛部材16で連結一体化した場合には、点線で示す、トンネル内空側のフランジ部材8の鉛直変位に対して矢印で示す吊上げ力Dにより抵抗可能になるが、さらに主桁2相互を補剛部材16により連結すると、図33(b)に矢印で示す抵抗曲げモーメントEによって、トンネル内空側のフランジ部材8を含む主桁2のトンネル内空側への回転変位に対しても、抵抗可能な構造になるので望ましい。以下、図24〜図31に示す形態を簡単に説明する。
【0036】
図24に示す第15実施形態では、内空側のフランジ部材8に寄せて、幅狭の鋼製板からなる補剛部材16を、ウェブ部材7とトンネル内空側のフランジ部材8に渡って配置して、溶接により、主桁2相互を連結一体化した形態である。なお、補剛部材16は、中詰めコンクリート5を設ける形態では、これに埋め込み配置する形態として防食性能としての所要のコンクリート被りを確保できない場合は補剛部材16の防錆を図るようにする。補剛部材16としては鋼板等の鋼製部材を用いると安価な部材を用いて補剛することができる。補剛部材16と鋼製補強リブ11とは、トンネル周方向に位置をずらして設けるようにした形態である。なお、中詰めコンクリート5を設ける形態では、鋼製補強リブの代わりに補剛部材16を用いて、全て補剛部材16により主桁2相互を連結一体化しても良い。
【0037】
図25に示す第16実施形態では、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8間の幅寸法の鋼板製の補剛部材16を、主桁2間に渡って配置して、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8とウェブ部材7に溶接により固定して、主桁2相互を補剛部材16により連結一体化した形態である。この形態では、補剛部材16の剛性が前記形態より格段に大きくなるから、フランジ部材8等の面外変形および回転変形を格段に防止することができる。本形態では、補剛部材16が前記形態の鋼製補強リブ11の機能を兼ねるので、鋼製補強リブ11は全て補剛部材16に置き換えることが可能である。
【0038】
図26に示す第17実施形態では、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8間の幅寸法の鋼板製の補剛部材16で、ウェブ部材7間より長さ寸法の短い補剛部材16を、主桁2間に渡って配置して、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8に溶接により固定して、主桁2相互を補剛部材16により連結一体化した形態である。この形態では、補剛部材16を短くより安価にすると共に内隅部の溶接を容易にし、中詰めコンクリート5が補剛部材16の長手方向の両端部における主桁2内においてトンネル周方向に接続一体化できるようにし、コンクリート充填作業性を向上させた形態である。
【0039】
図27に示す第18実施形態では、補剛部材16のトンネル軸方向(主桁間方向)の両端側の幅寸法が、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8間の幅寸法で、中間部がスキンプレート3に溶接可能な広幅とされた鋼板製の補剛部材16を、主桁2間に渡って配置して、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8とウェブ部材7及びスキンプレート3に隅肉溶接により固定して、主桁2相互を補剛部材16により連結一体化した形態である。この形態では、第16および第17実施形態に比べ、補剛部材16の剛性が更に大きくなるから、フランジ部材8等の面外変形および回転変形を一層防止することができる。また、補剛部材16は、スキンプレートの面外変形を抑えるとともに、スキンプレートとコンクリートとの間のずれ止めとなるので、スキンプレートと中詰めコンクリートとの一体性が向上し、合成構造セグメントの剛性および耐力を一層高めることができる。
【0040】
図28に示す第19実施形態では、補剛部材16のトンネル軸方向(主桁間方向)の両端側の幅寸法が、トンネル内空側のフランジ部材8と地山側のフランジ部材8間の幅寸法より狭く、かつ対向する主桁2におけるウェブ部材7間の幅寸法より長さを短くフランジ部材間より幅を狭くした形態で、中間部がスキンプレート3に溶接可能な広幅とされた鋼板製の補剛部材16を、主桁2間に渡って配置して、トンネル内空側のフランジ部材8とスキンプレート3とに溶接により固定して、主桁2相互を補剛部材16により連結一体化した形態である。この形態では、腹圧力による内空側フランジ部材8の面外変形および回転変形を抑制するとともに、スキンプレートと中詰めコンクリートとの一体性が向上し、合成構造セグメントとしての剛性および耐力を高めることができる。また、主桁2内へのコンクリート充填が容易になる。
【0041】
図29に示す第20実施形態では、各主桁2におけるトンネル内空側のフランジ部材8を補剛する補剛部材16相互に渡って、鋼板等よりなる連結部材16aを配置して、溶接(又はボルト・ナット)等により固定することにより、補剛部材16相互を連結一体化した補剛体16bとすることで、主桁2相互を連結してもよいことを示す代表形態である。前記の補剛部材16と前記の連結部材16aの固定形態として、図示のように溶接により一体化するほうが、工場では製作が容易であるが、溶接以外にも、図示を省略するが、ボルト・ナットによる場合には、適宜補剛部材16及び連結部材16aにそれぞれボルト挿通孔を設けて、これらにボルト軸部を挿通し、ボルトにナットをねじ込んで、補剛部材16と連結部材16aを固定し、主桁2相互を連結一体化する。
なお、各トンネル内空側のフランジ部材8を補剛する形態は、前記実施形態(例えば、図21〜図23に示す形態)の補剛部材16相互を、前記の連結部材16aにより連結する形態でもよい。また、図18に示す各主桁2の2枚の補剛部材16の計4枚の補剛部材16を、1枚の連結部材により連結することで、主桁2相互を連結一体化するようにしてもよい。
【0042】
図30及び図31に示す第21実施形態では、セグメント1内に、トンネル周方向に延長するように、周方向補強鉄筋17を中詰めコンクリート5に埋め込み配置する場合には、腹圧力による変形は、内空側フランジ部材8の変形のみならず、内空側の前記の周方向補強鉄筋17も同様に変形するため、前記のような内空側周方向補強鉄筋17の変形を防止するために、主桁2間を連結する補剛部材16(又は補剛部材16相互を連結する連結部材16a)に、トンネル周方向の中心軸線を有する挿通孔を、トンネル軸方向及び又トンネル半径方向に間隔をおいて設けて、各補剛部材16に渡って周方向補強鉄筋17を挿通配置することで、腹圧力によるトンネル内空側のフランジ部材8の変形を防止又は抑制すると共に、内空側の周方向補強鉄筋17のトンネル内空側への変形を、補剛部材16を利用して、防止又は抑制することができる。また、補剛部材16は周方向補強鉄筋を有する合成構造体(合成構造セグメント)のせん断補強鋼板の機能および配力筋の機能を有するので、腹圧力による変形防止効果と相まって、周方向補強鉄筋を多量に配置することが可能となり、合成構造セグメントの耐力を格段に増加させることができる。
なお、前記の周方向補強鉄筋17を、補剛部材16に挿通すると共に、補剛部材16に溶接等により固定するようにしてもよい。
なお、前記のように主桁2間を連結する補剛部材16は、鋼製補強リブ11の機能と同様にトンネル軸方向のジャッキ推力による圧縮力および地震時等に作用するトンネル軸方向引張力も伝達可能な部材となっている。
【0043】
以上、図24〜図31に示した第15〜第21実施形態における各主桁2相互をトンネル周方向に間隔をおいて連結一体化するように配置された補剛部材16は、(1)主桁2の溶接変形抑制機能、(2)腹圧力によるトンネル内空側フランジ部材8の変形抑制機能、(3)コンクリートが中詰めされている場合の鋼殻とコンクリートとの一体化機能に加えて、(4)鋼製補強リブ11の有するトンネル軸方向圧縮力および引張力の伝達機能等を有している。したがって、全ての鋼製補強リブ11を前記補剛部材16に置き換え、更に、前記(1)(2)(3)の性能を十分に発揮するように、前記補剛部材16を追加しても良い。ただし、前記補剛部材16は材料使用量も多く、製造コストも高いので、前記(4)の機能が不要な補剛部材は、図13の棒状間隔保持材15、あるいは図14の補剛部材16、あるいは図28〜図30のいずれかの補剛部材16のいずれかの形態を選択して置き換え、適材適所に併用することにより必要な性能を低い製造コストで実現することが好ましい。
【0044】
図示の実施形態では、主として、中詰めコンクリート5が充填された合成構造のセグメントの形態を示したが、本発明を実施する場合、中詰めコンクリート5を充填しない鋼製セグメントあるいは鋼殻に適用するようにしてもよい。
また、本発明を実施する場合、地下構造物あるいは地下空間を形成するための構造物にも適用するようにしてもよい。
【0045】
図示の形態では、平板状の鋼製補強リブ11を示したが、中詰めコンクリート5を充填する形態あるいは充填しない形態にかかわらず、鋼製補強リブ11の断面形態としては、略断面L形あるいは断面溝形若しくは断面J形あるいは断面く字形等の鋼製補強リブ11としてもよい。
【0046】
なお、セグメント1としては、好ましくは少なくともトンネル軸方向両端に位置する1対の主桁2(主桁2間に中主桁を配置する場合には、)に、トンネル周方向両端の継手板9を溶接により固定し、地山側のスキンプレート3の周縁部をフランジ部材8および/またはウェブ部材7並びに継手板9に溶接により固定し、鋼製補強リブ11を主桁2および地山側のスキンプレート3に隅肉溶接により固定して5面鋼殻の鋼製セグメントとする場合と、さらに必要なずれ止めあるいは棒状部材等の配筋を行った後、コンクリートを充填して中詰めコンクリート5を形成して5面鋼殻の合成セグメントとする場合、内空側のスキンプレート4の周縁部をフランジ部材8および/またはウェブ部材7並びに継手板9に溶接により固定して6面鋼殻の鋼製セグメントとする場合と、さらにコンクリートを充填して中詰めコンクリート5を形成して6面鋼殻の合成セグメントとする場合とがある。
【符号の説明】
【0047】
1 セグメント
2 主桁
3 地山側のスキンプレート
4 内空側のスキンプレート
5 中詰めコンクリート
6 鋼殻
7 ウェブ部材
8 フランジ部材
9 継手板
10 押圧係合部材
11 鋼製補強リブ
12 雄継手
13 雌継手
14 ずれ止め
14a 棒状部材
15 棒状間隔保持部材(または板状間隔保持部材)
16 補剛部材
16a 連結部材
16b 補剛体
17 周方向補強鉄筋
20 主桁
F1 ジャッキ推力
Hトンネル半径方向のセグメント高さ
V ウェブ部材のトンネル半径方向の巾寸法
F フランジ部材のトンネル半径方向の板厚寸法
S スキンプレートのトンネル半径方向の板厚寸法
T フランジ部材のウェブ部材からのトンネル半径方向突出寸法
W 溶接
W1 フランジ〜ウェブ間のセグメント外側の溶接(出隅部の溶接)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のウェブ部材と少なくとも1枚のフランジ部材とを有する少なくとも1対の主桁および地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレートを備えたセグメントであって、前記ウェブ部材におけるセグメント内側面に、少なくとも1枚の前記フランジ部材の一側端面における板厚方向の一端側が当接されると共に他端側がウェブ部材よりトンネル半径方向に突出するよう前記フランジ部材が配置されて相互が固着され、前記主桁は、略断面コ字状、もしくは略断面L字状の主桁断面に形成されていることを特徴とするセグメント。
【請求項2】
前記スキンプレートが前記フランジ部材に固着されていることを特徴とする請求項1に記載のセグメント。
【請求項3】
前記スキンプレートのトンネル半径方向の外側面は、前記ウェブ部材のトンネル半径方向の外端面よりも外側に配置され、もしくは前記スキンプレートのトンネル半径方向の内側面は、前記ウェブ部材のトンネル半径方向の内端面よりも内側となるように配置されて相互に固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセグメント。
【請求項4】
前記主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項5】
前記ウェブ部材と前記フランジ部材との溶接による接合は、前記ウェブ部材と前記フランジ部材とにより形成されるコーナー部の出隅部の隅肉溶接により接合されていると共にその溶接量を出隅部隅肉溶接量(S1)とした場合に、前記コーナー部の内隅部の隅肉溶接量(S)を、ゼロ又は前記の出隅部隅肉溶接量(S1)の1/2以下としたことを特徴とする請求項4に記載のセグメント。
【請求項6】
前記補剛材が相対する主桁間で連結部材により連結されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のセグメント。
【請求項7】
相対する主桁は補剛材により連結されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のセグメント。
【請求項8】
前記主桁と継手板および前記スキンプレートを備えた鋼殻の内側に中詰めコンクリートが充填・硬化されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項9】
前記鋼殻の内側面にずれ止めが設けられていることを特徴とする請求項8に記載のセグメント。
【請求項10】
前記フランジ部材に設けたずれ止めが、前記主桁同士間に渡って設置された棒状部材であることを特徴とする請求項9に記載のセグメント。
【請求項11】
前記中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋が埋め込み配置されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項12】
主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結され、前記補剛材が相対する主桁間で連結部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う連結部材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項13】
主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくは前記フランジ部材同士間、もしくは前記内空側フランジ部材と前記スキンプレート相互が補剛材で連結され、相対する主桁は前記補剛材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う補剛材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項14】
請求項4〜13のいずれか1項に記載のセグメントを製造するにあたり、前記主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材を仮溶接し、前記フランジ部材と前記ウェブ部材間、もしくはフランジ部材同士間の相互を前記補剛材で連結した後に前記主桁を構成する前記フランジ部材と前記ウェブ部材を連続本溶接することを特徴とするセグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−47266(P2011−47266A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172677(P2010−172677)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】