説明

セッション制御方法及びセッション制御装置

【課題】セッションを切断することなく、呼情報に記録されている帯域要求量と帯域情報を整合させる。
【解決手段】帯域情報を格納する2面のメモリ12A,12Bを用意し、通常時は、メモリ12Aの帯域情報のみを使用し、帯域情報整合処理中は、帯域情報整合処理前から存在する呼情報についてフラグを立てるとともに、メモリ12Aの帯域情報を用い、帯域情報整合処理中に着信した呼についてはメモリ12Bの帯域情報を用いて積み上げ処理、積み下げ処理を行い、フラグの立てられた呼情報がなくなり帯域情報整合処理終了したときに、メモリ12Bの帯域情報をメモリ12Aに移動する。これにより、通信中のセッションを切断することなく、帯域情報を正しい値に整合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯域情報を管理している通信システムにおいて帯域情報を実際の値と整合させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信品質を保証するネットワーク(例えば、NGN(Next Generation Network))には、帯域を管理しつつセッション制御を行うセッション制御サーバが配置される。セッション制御サーバは、呼処理機能(例えば、CSCF(Call Session Control Function))とリソース管理・受付制御機能(例えば、RACF(Resource and Admission Control Function))を有する。呼処理機能は、端末からの信号、例えばSIP(Session Initiation Protocol)による信号に基づき、発信者、着信者を確認し、セッション確立・解放の処理を行う。リソース管理・受付制御機能は、転送系ネットワークでの通信に割り当てた帯域量を管理し、受付判定機能やQoS(Quality of Service)制御機能を実現する。
【0003】
セッション制御サーバでは、帯域情報として、呼処理機能により確立したセッションに割り当てた帯域量を管理・保持している。また、設定中のセッションの情報として、発着端末情報、要求帯域量、セッション状態などの呼情報を管理・保持している。
【0004】
セッション制御サーバが新たなセッション確立要求を受け付けてセッションを確立すると、保有する計算式に従って、そのセッションが要求した帯域量を現在管理している帯域情報に加える。このことを帯域の積み上げ処理と呼ぶ。なお、セッション途中において、利用帯域の増減などを変更する要求に応じた処理も、積み上げ処理と呼ぶこととする。一方、確立中のセッションを解放する際には、保有する計算式に従って、そのセッションが要求していた帯域量を現在管理している帯域情報から減ずる。このことを帯域の積み下げ処理と呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ITU−T勧告 Y.2012
【非特許文献2】ITU−T勧告 Y.2111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セッション制御サーバで保持している帯域情報と実際に確保された帯域の値とのズレが発生するなどの異常が生じることがある。特に、各呼情報に記録されている帯域要求量の総計と帯域情報にズレが生じることがある。帯域情報にズレが生じたまま運用を続けると、リソース管理・受付制御機能が本来のように働かず、QoSが維持できなくなるという問題がある。
【0007】
従来は、帯域情報に異常が生じた場合、セッション制御サーバを再起動させ、帯域情報、呼情報をクリアし、初期設定に戻す方法がとられていた。しかしながら、セッション制御サーバを再起動すると、通信中の全セッションが解放されるため、サービス信頼性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、セッションを切断することなく、呼情報に記録されている帯域要求量と帯域情報を整合させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明に係るセッション制御方法は、端末間のセッションを確立するとともに、そのセッションで使用する帯域を確保し、確保した帯域の帯域情報を管理するセッション制御方法であって、前記帯域情報の整合をとる整合処理をするステップと、通常時は、確立したセッションについての帯域処理は第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中は、整合処理前から存在するセッションについての帯域処理は引き続き前記第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中に確立したセッションについての帯域処理は第2の記憶手段に格納した帯域情報を用いるステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
上記セッション制御方法において、前記整合処理の終了後に、前記第2の記憶手段に格納した帯域情報を前記第1の記憶手段に移動するステップを有することを特徴とする。
【0011】
第2の本発明に係るセッション制御装置は、端末間のセッションを確立するとともに、そのセッションで使用する帯域を確保し、確保した帯域の帯域情報を管理するセッション制御装置であって、前記帯域情報を格納する第1、第2の記憶手段と、前記帯域情報の整合をとる整合処理をする整合処理手段と、通常時は、確立したセッションについての帯域処理は前記第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中は、整合処理前から存在するセッションについての帯域処理は引き続き前記第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中に確立したセッションについての帯域処理は前記第2の記憶手段に格納した帯域情報を用いる呼処理手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セッションを切断することなく、呼情報に記録されている帯域要求量と帯域情報を整合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態におけるセッション制御サーバを含む全体構成図である。
【図2】本実施の形態におけるセッション制御サーバの帯域情報整合処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1に、本実施の形態におけるセッション制御サーバを含む全体構成図を示す。セッション制御サーバ1は、端末3から信号を受信して端末3間のセッションを確立するとともに、エッジノード2間で帯域を確保して端末3間で通信が行えるようにする装置である。また、セッション制御サーバ1は、セッションに割り当てた帯域量を含む帯域情報を管理・保持している。以下、セッション制御サーバ1の構成について説明する。
【0016】
図1に示すセッション制御サーバ1は、呼処理部11、2面のメモリ12A,12B、および帯域情報整合処理部13を備える。セッション制御サーバ1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムはセッション制御サーバ1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0017】
呼処理部11は、セッションの確立、解放、セッションに必要な帯域の積み上げ処理、積み下げ処理など呼制御に関する処理を行い、積み上げ処理、積み下げ処理によりメモリ12A,12Bに格納された帯域情報の帯域量を増減させる。呼処理部11は、通常時か帯域情報整合処理中かによってメモリ12A,12Bを使い分ける。帯域情報整合処理とは、メモリ12Aに格納された帯域情報と各呼情報の帯域要求量の総計との整合をとる処理である。呼処理部11は、通常時は、メモリ12Aのみを使用して呼制御処理を行い、帯域情報整合処理中は、メモリ12A,12Bの両方を使用する。
【0018】
呼処理部11によるメモリ12A,12Bの使い分けを具体的に説明すると、帯域情報整合処理開始時に確立されているセッションの呼情報については、メモリ12Aに格納された帯域情報を使用し、帯域情報整合処理中に確立されたセッションの呼情報については、メモリ12Bに格納された帯域情報を使用する。帯域情報整合処理中に確立されたセッションの呼情報であるか否かは、呼情報のフラグにより判定する。本実施の形態では、帯域情報整合処理開始時に存在する呼情報にフラグを立てることで、帯域情報整合処理開始時に確立されているセッションの呼情報か、帯域情報整合処理中に確立されたセッションの呼情報であるのか判定する。呼情報には、発着端末情報、要求帯域量、セッション状態などが含まれ、呼処理部11の備えるメモリ等の記憶装置に格納される。
【0019】
メモリ12A,12Bは、物理的に別のメモリ装置に分けて用意してもよいし、物理的には同一のメモリ装置内で、領域として2面を用意してもよい。
【0020】
帯域情報整合処理部13は、保守者による保守装置4からのコマンド投入時やセッション制御サーバ1が2重化された場合の系切替時に、帯域情報整合処理を行う。
【0021】
次に、本実施の形態におけるセッション制御サーバの処理の流れについて説明する。ここでは呼情報に記録されている各セッションの帯域要求量と帯域情報との整合をとる処理について説明する。
【0022】
図2は、本実施の形態におけるセッション制御サーバの帯域情報整合処理の流れを示すフローチャートである。
【0023】
帯域情報整合処理部13が帯域情報整合処理を開始すると、呼処理部11は、帯域情報整合処理開始時に存在する呼情報にフラグを立てる(ステップS11)。この時点では、メモリ12Aのみに帯域情報が存在し、帯域情報にズレが生じていなければ、その帯域情報は各呼情報に記録されている帯域要求量の総計と等しい。
【0024】
セッション制御サーバ1は、帯域情報整合処理中も信号を受け付ける(ステップS12)。
【0025】
受信した信号がフラグの立てられた呼情報に関する帯域処理を指示する信号である場合は、メモリ12Aの帯域情報を用いて積み上げ処理、積み下げ処理を行う(ステップS13)。受信した信号によりセッションが解放される場合は、メモリ12Aの帯域情報を用いて該当する呼情報が要求した帯域の積み下げ処理が行われ、その呼情報は削除される。
【0026】
一方、受信した信号が帯域情報処理開始後に着信した呼に関する帯域処理を指示する信号である場合は、メモリ12Bの帯域情報を用いて積み上げ処理、積み下げ処理を行う(ステップS14)。帯域情報整合処理中に新たにセッションを確立する場合は、そのセッションに関する呼情報の帯域要求量をメモリ12Bの帯域情報に加える。帯域情報整合処理中に確立したセッションの呼情報、つまり、フラグが立っていない呼情報についての積み上げ処理、積み下げ処理は、メモリ12Bの帯域情報を用いる。
【0027】
フラグの立てられた呼情報について積み上げ処理、積み下げ処理を行った後は、フラグの立てられた呼情報の残りが存在するか否か判定する(ステップS15)。まだフラグの立てられた呼情報が存在する場合は、ステップS12に戻り信号を待ち受ける。
【0028】
フラグの立てられた呼情報が存在しない場合は、メモリ12Bの帯域情報をメモリ12Aにコピーするとともにメモリ12Bをクリアし、帯域情報整合処理を終了する(ステップS16)。フラグの立てられた呼情報がすべて解放されたときに、メモリ12Bの帯域情報は、帯域情報整合処理開始後に積み上げ処理、積み下げ処理が行われたものであり、その時点での正しい帯域の値となっている。帯域情報整合処理終了後は、メモリ12Bの帯域情報をメモリ12Aにコピーして通常の状態に戻り、メモリ12Aの帯域情報のみを用いる。なお、帯域情報整合処理終了時に、メモリ12Bの呼情報をメモリ12Aにコピーするのではなく、メモリ12A,12Bの役割を論理的に入れ替え、つまり、通常時にメモリ12Bの帯域情報のみを使用するようにしてもよい。
【0029】
このように、帯域情報整合処理中は、メモリ12Aの帯域情報には新たなセッションについての積み上げ処理を行わないため、帯域情報整合処理前から存在しているセッションが解放されるにつれ、メモリ12Aの帯域情報で管理している呼数および帯域量は減っていく。なお、帯域情報整合処理中は、メモリ12A,12Bそれぞれの帯域情報の帯域量を合計したものが確保された総帯域量となる。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態によれば、帯域情報を格納する2面のメモリ12A,12Bを用意し、通常時は、メモリ12Aの帯域情報のみを使用し、帯域情報整合処理中は、帯域情報整合処理前から存在する呼情報についてフラグを立てるとともに、メモリ12Aの帯域情報を用い、帯域情報整合処理中に着信した呼についてはメモリ12Bの帯域情報を用いて積み上げ処理、積み下げ処理を行い、フラグの立てられた呼情報がなくなり帯域情報整合処理終了したときに、メモリ12Bの帯域情報をメモリ12Aに移動することにより、通信中のセッションを切断することなく、帯域情報を正しい値に整合させることができる。その結果、QoSが確保されるとともに、サービス信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0031】
1…セッション制御サーバ
11…呼処理部
12A,12B…メモリ
13…帯域情報整合処理部
2…エッジノード
3…端末
4…保守装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末間のセッションを確立するとともに、そのセッションで使用する帯域を確保し、確保した帯域の帯域情報を管理するセッション制御方法であって、
前記帯域情報の整合をとる整合処理をするステップと、
通常時は、確立したセッションについての帯域処理は第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中は、整合処理前から存在するセッションについての帯域処理は引き続き前記第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中に確立したセッションについての帯域処理は第2の記憶手段に格納した帯域情報を用いるステップと、
を有することを特徴とするセッション制御方法。
【請求項2】
前記整合処理の終了後に、前記第2の記憶手段に格納した帯域情報を前記第1の記憶手段に移動するステップを有することを特徴とする請求項1記載のセッション制御方法。
【請求項3】
端末間のセッションを確立するとともに、そのセッションで使用する帯域を確保し、確保した帯域の帯域情報を管理するセッション制御装置であって、
前記帯域情報を格納する第1、第2の記憶手段と、
前記帯域情報の整合をとる整合処理をする整合処理手段と、
通常時は、確立したセッションについての帯域処理は前記第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中は、整合処理前から存在するセッションについての帯域処理は引き続き前記第1の記憶手段に格納した帯域情報を用い、整合処理中に確立したセッションについての帯域処理は前記第2の記憶手段に格納した帯域情報を用いる呼処理手段と、
を有することを特徴とするセッション制御装置。
【請求項4】
前記呼処理手段は、前記整合処理の終了後に、前記第2の記憶手段に格納した帯域情報を前記第1の記憶手段に移動することを特徴とする請求項3記載のセッション制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−9250(P2013−9250A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141830(P2011−141830)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】