説明

セット不良検知機能付下部電極装置

【課題】セット不良を確実に検知することができるセット不良検知機能付下部電極装置を提供する。
【解決手段】ストレートホルダー51と、ストレートホルダー51の上端に取り付けられた下部電極52と、ストレートホルダー51内に配設されたシャフト54と、シャフト54の上端に配設され、ウェルドナット又はウェルドナットを保持する保持部材53と、シャフト54に取り付けられた検知ブロック56と、検知ブロック56を検知する第1近接センサー61及び第2近接センサー62を有し、加圧時において、第1近接センサー61は検知ブロック56が検知される上限に配置され、第2近接センサー62は検知ブロック56が検知される下限に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接機でワークにウェルドナットやウェルドボルトをスポット溶接する際に、ワーク、ウェルドナット、ウェルドボルトのセット不良を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークにウェルドナットをスポット溶接するには、センターピンが突出した下部電極上にワークを載置し、ウェルドナットをセンターピンにセットした後に、上部電極によりウェルドナットがワークに加圧された状態で上部電極と下部電極間に通電させることにより行われる。このようなスポット溶接は、スポット溶接機のシーケンス制御により自動的に行われる。なお、ウェルドナットは、ナットフィーダにより連続的・自動的に供給されるのが一般的である。
【0003】
ナットフィーダ内に規定サイズ以外のナット(以下規定外ナットと略す)が混入している場合であっても、前記シーケンス制御により、前記規定外ナットがワークに溶接されてしまい、不良品を生産してしまうという問題があった。更に、当該不良品が下工程に流通してしまうと、規定外ナットにはボルトを螺合させることができないので、製品を組み付けることができず、半製品の全てを廃棄しなければならず、損害が大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
ウェルドナットの下面には、溶接電流を集中させて、確実にウェルドナットをワークに溶接させるためのプロジェクションが設けられている。ウェルドナットが裏向きにセットされた場合には、溶接電流が集中しないので、ナットとワークの溶融が不十分となり、ウェルドナットがワークから剥がれ落ちてしまうという問題があった。上記問題以外に、ナットが無い状態でスポット溶接機を作動させてしまう問題や、ワークが2枚重なった状態でスポット溶接機を作動させてしまうという問題があり、いずれの場合にも溶接不良となってしまう。
【0005】
そこで、前述したようなウェルドナットのセット不良を検知するために、特許文献1に示されるようなセット不良検知機能付のスポット溶接機が提案されている。この特許文献1に示されるスポット溶接機は、センターピンに接続されるシャフトの下端に被検知体が取り付けられ、この被検知体と対向する位置に近接センサーが取り付けられている。そして、前記近接センサーにより被検知体の近接を検知することにより、センターピンの降下位置を検知し、当該降下位置が規定の範囲外にある場合に、ワークやウェルドナットのセット不良が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−295162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されるようなスポット溶接機では、センターピンの降下位置を単一の近接センサーで検知していることから、センターピンの正確な位置を検知することができず、実際には、セット不良であっても正常と判断され、逆に正常であってもセット不良と判断されることが頻発していた。また、ワークやウェルドボルトのセット不良も問題となっていた。
【0008】
本発明は、上記問題を解決し、セット不良を確実に検知することができるセット不良検知機能付下部電極装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
円筒形状のストレートホルダーと、
前記ストレートホルダーの上端に取り付けられた下部電極と、
前記ストレートホルダー内に配設されたシャフトと、
前記シャフトの上端に配設され、ウェルドナット又はウェルドボルトを保持する保持部材と、
前記シャフトに取り付けられた検知ブロックと、
前記検知ブロックを検知する第1近接センサー及び第2近接センサーを有し、
加圧時において、前記第1近接センサーは前記検知ブロックが検知される上限に配置され、前記第2近接センサーは前記検知ブロックが検知される下限に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加圧時において、第1近接センサーを検知ブロックが検知される上限に配置し、第2近接センサーを検知ブロックが検知される下限に配置したので、検知ブロックが正規寸法に不足して或いは正規寸法よりも余分に降下した場合に、第1近接センサー及び第2近接センサーの一方が検知ブロックを検知することなく、セット不良が検出される。このため、セット不良を確実に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スポット溶接システムの全体図である。
【図2】下部電極装置の全体図である。
【図3】センターピン及びウェルドナットの説明図である。
【図4】ウェルドナットがセンターピンに正常にセットされた状態を表した説明図である。
【図5】検知ブロックと第1近接センサー及び第2近接センサーとの位置関係を表した説明図である。
【図6】セット不良検知のフロー図である。
【図7】スポット溶接時の上部電極位置と経過時間との関係を表したグラフである。
【図8】セット不良検知機能付下部電極装置の回路図である。
【図9】セット不良となる例の説明図である。
【図10】ウェルドボルトスポット用の下部電極装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(スポット溶接機の説明)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。図1に示されるように、スポット溶接機100は、本体10、加圧機構20、上部電極30、下部電極装置50から構成されている。スポット溶接機100には制御部200が取り付けられている。加圧機構20は、本体10の上部に取り付けられている。加圧機構20は、上下方向に摺動するシリンダー20aを有している。加圧機構20には、電動式及びエア式の両方が含まれる。加圧機構20には上部電極30が取り付けられている。上部電極30は円柱形状であり、図4の(B)に示されるように、上部電極30の下端には、センターピン侵入穴30aが上下方向に形成されている。加圧時にはセンターピン53の先端がセンターピン侵入穴30aに侵入する。
【0013】
加圧機構20は、溶接制御部90(図8に示す)によりシーケンス制御され、フットスイッチ301が踏まれた状態が維持されると(フットスイッチ301のON状態が維持されると)、上部電極30は、図7に示されるスポット溶接のシーケンスに従って上下方向に移動する。なお、フットスイッチ301が踏まれた後で通電が開始しない間にフットスイッチ301が離されると、スポット溶接が中止される。なお、フットスイッチ301の代わりに、押しボタン式等のスイッチを用いても差し支え無い。
【0014】
300はスポット溶接機100の側方に設置されたフィーダー装置であり、フットスイッチ301が踏まれると、ウェルドナット999が下部電極装置50に供給され、図4の(A)に示されるように、ウェルドナット999がセンターピン53にセットされる。
【0015】
(下部電極装置の説明)
下部電極装置50(ストレートホルダー51)は、本体10から延出するアーム11に取り付けられ、上部電極20の下側に対向して配設されている。
【0016】
図2を用いて、下部電極装置50の説明をする。図2に示されるように、下部電極装置50は、ストレートホルダー51、下部電極52、センターピン53、シャフト54、ケース55、検知ブロック56、ボールプランジャー59、ノブ58を有している。ストレートホルダー51は円柱形状である。下部電極52はストレートホルダー51の上端に取り付けられている。下部電極52は扁平円柱形状であり、その中央にセンターピン挿通穴52aが形成されている。ストレートホルダー51及び下部電極52は、クロム銅やベリリウム銅等の強靱で電気伝導率が良好な銅合金で構成されている。ストレートホルダー51内にはシャフト54が上下方向摺動可能に配設されている。
【0017】
シャフト54の上端には、センターピン53(特許請求の範囲における「保持部材」)が載置されて配設されている。センターピン53は、セラミックスやKCF(ステンレス系の金属で、その表面に酸化アルミニウム等のセラミックスによる絶縁被膜処理を施したもの)等の絶縁物で構成されている。図3の(A)に示されるように、センターピン53は、下側から上側に、フランジ部53a、当接部53f、軸部53b、ナット保持部53c、ネジ穴挿通部53d、導入部53eとなっていて、これらが同軸一体に形成されている。
【0018】
センターピン53は、下部電極52のセンターピン挿通穴52a内に挿通された状態で上下方向摺動自在に配設されている。ナット保持部53c、ネジ穴挿通部53d、及び、導入部53eが、下部電極52の上面から突出している。ナット保持部53cは、上方に向かって徐々に外径が小さくなっている。ネジ穴挿通部53dは円柱形状である。
【0019】
図2に示されるように、ストレートホルダー51の下端には、箱形のケース55が取り付けられている。シャフト54は、ケース55内に挿通し、ケース55の下端から突出している。検知ブロック56は、ブロック状の金属である。検知ブロック56には、上下方向に連通するネジ穴56aが形成されている。シャフト54の下部には、ネジ山54aが形成されている。シャフト54の下部が、検知ブロック56のネジ穴56aを貫通し、ネジ穴56aとネジ山54aが螺合して、検知ブロック56がシャフト54の下部に取り付けられている。
【0020】
検知ブロック56の下側のシャフト54にはコイルスプリング57が取り付けられている。コイルスプリング57の上端は検知ブロック56と当接し、コイルスプリング57の下端はケース55と当接し、シャフト54が上方に付勢されている。
【0021】
ケース55の下部には、挿通穴55aが形成されている。シャフト54の下端には、ノブ58が取り付けられている。ノブ58を回転させると、検知ブロック56が上下方向に移動する。ノブ58には、縦方向に係合溝58aが形成されている。ケース55の下端には、ノブ58の係合溝58aと係合するボールプランジャー59が取り付けられている。このように、係合溝58aとボールプランジャー59が係合しているので、ノブ58が不用意に回転しないようになっている。
【0022】
図2に示されるように、ケース55には、検知ブロック56の近接を検知する第1近接センサー61、第2近接センサー62が取り付けられている。本実施形態では、第1近接センサー61及び第2近接センサー62は、高周波磁界により金属の近接を検知するセンサーである。第1近接センサー61及び第2近接センサーは、静電容量型、超音波型、電磁波型、赤外線型の近接センサーであっても差し支え無い。
【0023】
第1近接センサー61及び第2近接センサー62の先端の検知部61a、62aは、検知ブロック56と対向するように、ケース55内に露出している。本実施形態では、第1近接センサー61はブラケット63を介してケース55に取り付けられ、第2近接センサー62はブラケット64を介してケース55に取り付けられている。なお、ブラケット64はケース55に対して上下方向に移動させて取り付けることができ、第2近接センサー62の上下方向位置を調整することができる。
【0024】
(ワークとウェルドナットのセット状態の説明)
ネジ穴挿通部53dの外径は、ウェルドナット999のネジ穴999bの内径よりも僅かに小さくなっている。導入部53eは、上方に向かって徐々に外径が小さくなっている。図4の(A)に示されるように、プロジェクション999aが下側に向けられ、ネジ穴999bにネジ穴挿通部53dが挿通されて、ウェルドナット999がセンターピン53にセットされる。この状態では、図4の(A)に示されるように、プロジェクション999aとワーク998上面とは、正規寸法aだけ離間している。ウェルドナット999がセンターピン53にセットされた状態では、ネジ穴999bの下端は、ナット保持部53cと当接している。ネジ穴999の下端が、ナット保持部53cと当接しているので、溶接時には、ウェルドナット999が上部電極30に押圧されて、センターピン53の軸心にセンタリングされる。ウェルドナット999が上部電極30に押圧されると、センターピン53、シャフト54、及び、検知ブロック56が正規寸法aだけ降下する。
【0025】
(本発明のセット不良検知の構造の説明)
図5を用いて本発明のセット不良検知の構造を説明する。図4の(A)に示されるように、ワーク998が下部電極52上に載置され、ウェルドナット999がセンターピン53にセットされ、上部電極30が下部電極52に対して離間した加圧前の状態では、図5の(A)に示されるように、第1近接センサー61の検知部61aは検知ブロック56の上部に対向している。一方で、第2近接センサー62の検知部62aは、検知ブロック56に対向しておらず、上下方向に関し、検知ブロック56の下方に位置している。
【0026】
図4の(B)に示されるように、上部電極30が降下した加圧状態では、図5の(b)に示されるように、検知ブロック56が正規寸法a降下する。この状態では、第1近接センサー61の検知部61aは、検知ブロック56の上端に対向し、第2近接センサー62の検知部62aは、検知ブロック56の下端に対向している。
【0027】
加圧時に第1近接センサー61及び第2近接センサー62の両方が検知ブロック56を検知している場合には、スポット溶接のシーケンスが進行し、加圧状態が維持されたまま上部電極30と下部電極52間で通電し、ウェルドナット999がワーク998に溶接される。一方で、加圧時に第1近接センサー61及び第2近接センサー62の少なくとも一方が検知ブロック56を検知しない場合には、スポット溶接のシーケンスが中止される。これにより、溶接不良が防止される。
【0028】
本発明では、正規にワーク998及びウェルドナット999がセットされた場合において、加圧時に、第1近接センサー61は検知ブロック56が検知される上限に位置し、第2近接センサー62は検知ブロック56が検知される下限に位置している。これにより、加圧時に、検知ブロック56が正規寸法aよりも余分に降下した場合には、第1近接センサー61が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。また、加圧時に、検知ブロック56が正規寸法aに不足して降下した場合には、第2近接センサー62が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。このため、精度高くセット不良を検知することが可能となり、確実に溶接不良が防止される。
【0029】
なお、第1近接センサー61を検知ブロック56が検知される上限に位置させ、第2近接センサー62を検知ブロック56が検知される下限に位置させる初期設定を行うには、ブラケット64の上下方向位置を調整させるとともに、ノブ58を回転させて検知ブロック56の上下方向位置を調整させることにより行う。なお、ブラケット63をケース55に対して上下方向に移動可能とし、第1近接センサー61の上下方向位置を調整することにしても差し支え無い。初期設定を行った後に、ウェルドナット999を変更する場合には、下部電極52及びセンターピン53を変更するとともに、ノブ58を回転させて検知ブロック56の上下方向位置を調整させる。また、ワーク998を変更する場合には、ノブ58を回転させて検知ブロック56の上下方向位置を調整させる。
【0030】
(回路の説明)
図8を用いて回路図の説明をする。なお、リレーコイルに電流が印加された時に閉じる接点をA接点とし、リレーコイルに電流が印加された時に開く接点をB接点とする。
【0031】
なお、溶接制御部90の接点90a、90bが直結状態となると、図7に示されるスポット溶接のシーケンスが開始される。また加圧時間が経過しない間に、溶接制御部90の2つの接点90a、90bの直結状態が解除されると、スポット溶接のシーケンスが途中で終了する。接点90aと接点90b間には、A接点R3−2及びB接点R4が直列に接続されている。
【0032】
図8に示されるように、電源電圧(本実施形態では24V)と接地電圧(0V)の間に、複数の要素が並列に接続されている。電源電圧と接地電圧間には、リレーコイルR3とフットスイッチ301が直列に接続されている(フットスイッチ部)。また、電源電圧と接地電圧間には、リレーコイルR1と第1近接センサー61が直列に接続されている(検知部)。更に、電源電圧と接地電圧間には、リレーコイルR2と第1近接センサー62が直列に接続されている(検知部)。更に、電源電圧と接地電圧間には、タイマーT1とA接点R3−1が直列に接続されている(判定開始タイマー部)。更に、電源電圧と接地電圧間には、リレーコイルR4、A接点T1−1、及び、並列に接続されたB接点R1−1、B接点R2−1が直列に接続されている。
【0033】
(セット不良検知の説明)
図6の(A)に示されるように、作業者はワーク998を下部電極52上に載置する。作業者がフットスイッチ301を踏むと、リレーコイルR3に電流が印加し、A接点R3−2が閉じる(図8の(1))。すると、接点90a及び接点90bが直結状態となり、溶接制御部90により、スポット溶接のシーケンスが開始される。また、リレーコイルR3に電流が印加すると、A接点R3−1が閉じ(図8の(2))、タイマーT1が作動する。本実施形態では、フィーダー装置300によりウェルドナット999が供給され、ウェルドナット999がセンターピン53にセットされる(図6の(B))。スポットのシーケンスが開始されると、溶接制御部90により加圧機構20が作動し、上部電極30が降下して、ウェルドナット999がワーク998に加圧される(図6の(C))。
【0034】
タイマーT1の設定時間(例えば0.4秒)が経過すると(図6の(D))、タイマーT1により、A接点T1−1が閉じる(図8の(3))。この際に、第1センサー61及び第2センサー62の両方が検知ブロック56を検知している場合には、リレーコイルR1及びリレーコイルR2に電流が印加され、B接点R1−1及びB接点R2−1が開き(図8の(4)、(5))、リレーコイルR4に電流が印加されないので、B接点R4が開くこと無く、溶接制御部90の接点90a及び接点90bの直結状態が維持され、スポット溶接のシーケンスが進行する(図6の(E)、(F))。
【0035】
一方で、ワーク998及びウェルドナット999の少なくともいずれか一方が正常にセットされていない場合には、第1センサー61及び第2センサー62の一方が検知ブロック56を検知しないので、B接点R1−1及びB接点R2−1の一方の閉じた状態が維持され、リレーコイルR4に電流が印加されて、B接点R4が開き(図8の(6))、溶接制御部90の接点90a及び接点90bの直結状態が解除され、スポット溶接のシーケンスが中止される(図6の(G)、(H))。
【0036】
図7に示されるように、タイマーT1の設定時間(判定開始時間)は、降下時間よりも長く、降下時間と加圧時間の合計よりも短い時間に設定されている。
【0037】
(セット不良となる場合の説明)
図9を用いて、セット不良となる場合について説明する。なお、図9の(A)は、正常にワーク998及びウェルドナット999がセットされている状態であり、この場合には、加圧時に検知ブロック56が正規寸法aだけ降下し、図5の(B)に示されるように、第1近接センサー61及び第2近接センサー62の両方で検知ブロック56が検知され、スポット溶接のシーケンスが進行する。
【0038】
図9の(B)に示されるように、ウェルドナット999が正規のサイズよりも大きい場合には、ウェルドナット999のネジ穴999b内に、センターピン53の軸部53bが挿通してしまうため、加圧時にセンターピン53が正規寸法aに不足して降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aに不足して降下し、第2近接センサー62が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0039】
図9の(C)に示されるように、ウェルドナット999が正規のサイズよりも小さい場合には、ウェルドナット999のネジ穴999b内に、センターピン53のネジ穴挿通部53dが挿通することなく、加圧時にセンターピン53が正規寸法aよりも余分に降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aよりも余分に降下し、第1近接センサー61が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0040】
図9の(D)に示されるように、ウェルドナット999が裏側にセットされた場合には、加圧時にプロジェクション999aの高さ分だけセンターピン53が正規寸法aよりも余分に降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aよりも余分に降下し、第1近接センサー61が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0041】
図9の(E)に示されるように、ワーク998が無い場合には、加圧時にワーク998の厚さ分だけセンターピン53が正規寸法aよりも余分に降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aよりも余分に降下し、第1近接センサー61が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0042】
図9の(F)に示されるように、ウェルドナット999が無い場合には、センターピン53が上部電極30のセンターピン侵入穴30a内に侵入して、加圧時にセンターピン53が下側に押し込まれない。このため、検知ブロック56が降下することなく、第2近接センサー62が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0043】
図9の(G)に示されるように、ワーク998が2枚以上重ねられてセットされた場合には、加圧時に余分に重ねられたワーク998の厚さ分だけセンターピン53が正規寸法aに不足して降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aに不足して降下し、第2近接センサー62が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0044】
図9の(H)に示されるように、ワーク998がセンターピン53に対して水平方向ズレてセットされた場合には、センターピン53の軸部53bがワーク998のセット穴998aに挿通できずに、加圧時にワーク998がセンターピン53を下側に押し込んでしまい、センターピン53が正規寸法aよりも余分に降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aよりも余分に降下し、第1近接センサー61が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0045】
図9の(I)に示されるように、加圧時にウェルドナット999がセンタリングされず、ウェルドナット999がセンターピン53に対して水平方向ズレた場合には、加圧時にウェルドナット999がセンタリングされなかった分だけセンターピン53が下側に余分に押し込まれるので、センターピン53が正規寸法aよりも余分に降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aよりも余分に降下し、第1近接センサー61が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0046】
従来では、ナット芯ズレが発生し、ウェルドナット999がセンタリングされなかった分だけセンターピン53が押し込まれる僅かな違いを検知することができなかった。しかし、本発明では、前述したように、検知ブロック56が正規寸法aに不足して或いは正規寸法aよりも余分に降下した場合には第1近接センサー61及び第2近接センサー62の一方が、検知ブロック56を検知すること無く、スポット溶接のシーケンスが中止され、確実に溶接不良が防止される。
【0047】
図9の(J)に示されるように、プロジェクション999aがつぶれている場合、若しくは、加圧時にプロジェクション999aがつぶれた場合には、プロジェクション999aのつぶれ分だけセンターピン53が下側に余分に押し込まれ、センターピン53が正規寸法aよりも余分に降下する。このため、検知ブロック56もまた正規寸法aよりも余分に降下し、第1近接センサー61が検知ブロック56を検知しないので、スポット溶接のシーケンスが中止される。
【0048】
このように、本発明では、正常にワーク998及びウェルドナット999がセットされた場合において、第1近接センサー61を検知ブロック56が検知される上限に配置し、第2近接センサー62を検知ブロック56が検知される下限に配置したので、精度高くセット不良を検知することが可能となり、溶接不良を確実に防止することが可能となった。
【0049】
(ウェルドボルト溶接用の下部電極装置の説明)
図10を用いて、ウェルドボルト溶接用の下部電極装置90について、ウェルドナットをスポット溶接する下部電極装置50と異なる点について説明する。図10に示されるように、ストレートホルダー51の上端には、ウェルドボルト溶接用の下部電極91が取り付けられている。図10に示されるように、下部電極91の中心には、挿通穴91aが連通形成されている。挿通穴91a内には、円筒形状の絶縁部材92が配設されている。この絶縁部材92は、ベークライト、KCF、セラミックス等の絶縁体でできている。絶縁部材92は、スポット溶接時に、ウェルドボルト997のネジ部997aを保護するためのものである。
【0050】
図10に示されるように、シャフト54の上端には、保持部材93が配設されている。保持部材93の先端には、円錐形状に凹陥したセンタリング凹部93aが形成されている。
【0051】
次に、ウェルドボルト997のスポット溶接について説明し、併せて、セット不良検知について説明する。図10に示されるように、ネジ挿通穴998aが形成されたワーク998を、ネジ挿通穴998aを絶縁部材92の開口部に合わせて下部電極91上に載置する。次に、ウェルドボルト997のネジ部997を、絶縁部材92(挿通孔91a)内に挿通させると、ウェルドボルト997のネジ部997aの先端が、保持部材93のボルト保持部93bで保持され、ウェルドボルト997の頭部997bに形成されたプロジェクション997bとワーク998上面とが、正規寸法bだけ離間する。
【0052】
ウェルドボルト997の頭部997aが上部電極30で押圧されると、保持部材93が正規寸法bだけ降下する。ウェルドナットの実施形態と同様に、正常にワーク998及びウェルドボルト997がセットされた場合において、第1近接センサー61を検知ブロック56が検知される上限に配置し、第2近接センサー62を検知ブロック56が検知される下限に配置している。このため、検知ブロック56が少しでも正規寸法bに不足して或いは正規寸法bよりも余分に降下した場合には第1近接センサー61及び第2近接センサー62の一方が、検知ブロック56を検知すること無く、スポット溶接のシーケンスが中止され、確実に溶接不良が防止される。
【0053】
ウェルドナットの実施形態と同様に、本実施形態でも、ウェルドボルト997のサイズが違う場合、ワーク998がセットされていない場合、ウェルドボルト997がセットされていない場合、ウェルドボルト997のプロジェクション997cがつぶれている場合には、加圧時の、保持部材93(検知ブロック56)の降下量が、前述した正規寸法bと異なるので、セット不良が検出される。
【符号の説明】
【0054】
10 本体
20 加圧機構
20a シリンダー
30 上部電極
50 下部電極装置
51 ストレートホルダー
52 下部電極
52a センターピン挿通穴
53 センターピン(保持部材)
53a フランジ部
53b 軸部
53c ナット保持部
53d ネジ穴挿通部
53e 導入部
53f 当接部
54 シャフト
55 ケース
56 検知ブロック
57 コイルスプリング
58 ノブ
58a 係合溝
59 ボールプランジャー
61 第1近接センサー
61a 検知部
62 第2近接センサー
62a 検知部
100 スポット溶接機
200 制御部
300 フィーダー装置
301 フットペダル
999 ウェルドナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のストレートホルダーと、
前記ストレートホルダーの上端に取り付けられた下部電極と、
前記ストレートホルダー内に配設されたシャフトと、
前記シャフトの上端に配設され、ウェルドナット又はウェルドボルトを保持する保持部材と、
前記シャフトに取り付けられた検知ブロックと、
前記検知ブロックを検知する第1近接センサー及び第2近接センサーを有し、
加圧時において、前記第1近接センサーは前記検知ブロックが検知される上限に配置され、前記第2近接センサーは前記検知ブロックが検知される下限に配置されていることを特徴とするセット不良検知機能付下部電極装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−6192(P2013−6192A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139695(P2011−139695)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(392014760)新光機器株式会社 (50)
【出願人】(506332937)株式会社フィーダシステム (10)