説明

セパレータ、セパレータを含む電気化学セル、およびセパレータの製造方法

【課題】 複合材料またはハイブリッド材料の化学安定性および熱安定性を向上させる。
【解決手段】 セパレータは、主体部分10bと表面部分10aを有する基材10であって、表面部分10aが、正味の電荷12を有する多孔質区域を少なくとも1つ有するものである基材10;および少なくとも1つの多孔質区域の少なくとも一部分に結合したイオン粒子14であって、少なくとも1つの多孔質区域の正味の電荷12と反対の符号の正味の電荷を有するイオン粒子14;を有してなる。少なくとも1つの多孔質区域の一部分とイオン粒子14との間の結合により、セパレータの良好な電気化学的性能、化学安定性、熱安定性、湿潤性、および機械的強度の内の少なくとも1つがもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド材料およびハイブリッド材料を製造する方法と使用する方法に関する。特に、この開示は、高分子およびイオンナノ粒子を有するハイブリッド材料並びに電池および電気化学セルなどにおけるハイブリッド材料の様々な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途には、単一のモノリス材料において満たすのが、費用がかかる、難しい、または不可能なことのある材料要件がある。例えば、ある用途では、セラミック材料の化学安定性および/または熱安定性が要求され、またいくつかの高分子材料において見られる機械的柔軟性およびある種の加工(例えば、押出し、回転塗布など)に対する加工適性も要求される。そのような場合、2種類以上の異なる材料を組み合わせてなる複合材料および/またはハイブリッド材料が用いられることがある。その例は、電気化学セル、航空宇宙工学および装甲板を含む、多種多様な分野と用途に及ぶ。
【0003】
ハイブリッド材料の用途の一例には、電池のセパレータまたは電気化学セルのセパレータに使用されるハイブリッド材料があり、これは、適用範囲を制限するものではない。電池または電気化学セルのセパレータは、電極を互いに隔離しなければならないが、十分な程度のイオン伝導率を維持するであろう。そのセパレータは、機械的強度が良好な、薄く多孔質の絶縁材料であってよい。高い機械的強度および高気孔率を導入する加工技法などの加工技法に対する加工適性のために、高分子セパレータがしばしば使用される。電池のセパレータに一般に使用される高分子の例としては、有機ポリオレフィンおよび複合材料、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンなどが挙げられる。しかしながら、ある種の従来の高分子材料は、熱安定性、化学安定性、またはその両方が欠如しているであろう。このために、高分子材料は、化学的腐食性環境または高温への曝露(その内の一方または両方は高性能電池において生じるであろう)などのある用途にとって決して理想的なものではなくなるであろう。この理由のために、高性能電池では、腐食性の非高分子電解質により適した無機セパレータ(例えば、ガラスセパレータおよびセラミックセパレータ)が使用される傾向にある。ある種の無機セパレータには、脆性または加工工程における難題などの不都合があるであろう。
【0004】
図1Aは、従来技術において電池のセパレータとして使用されるセラミック/高分子複合材料10を示している。図1Aに示されるように、典型的に高分子である基板2が酸化物基4により官能化されている。基板2は多孔質であってよく、これによりイオン交換のための表面積が増加する。表面の官能化4により、基板2を材料6の層で被覆して、熱安定性、化学安定性および湿潤性などの性質を改善することができる。電解質の湿潤性が低いセパレータは電池の効率を劣化または低下させ得るので、電池用途に使用される様々な電解質による湿潤性は特別な関心事である。多くの例において、材料6は、セラミック、ガラスおよび/または金属酸化物の組成の粒子6aを含む。そのような粒子6aは、ゾルゲル法または湿性堆積などの様々な様式で基板2に堆積される。一般に、材料6を無傷のままにするために、ある種の結合剤6bを使用して粒子6aを互いに結合させる必要がある。材料6を表面に固定するまたは留まらせるために、セラミック粒子6aを焼結するのに十分に高い温度でその材料を加熱する必要もあるかもしれない。焼結により、粒子6aのいくつかにおいて他の粒子6aとのまたは結合剤6bとの化学結合が生じるであろう。例えば、焼結は、粒子6a−結合剤6b−粒子6aおよび/または粒子6a−結合剤6b−基板2の間の化学的架橋を活性化させるであろう。ある場合には、焼結は、粒子6aをある程度または完全に互いに融着しさえするかもしれない。しかしながら、焼結工程の高熱により基板2が劣化してしまうかもしれない。さらに、結合剤6bの使用には、材料中の粒子6aの密度に固有の制限を与えること、並びに電気化学セルの厳しい化学的環境において浸出したり劣化したりする化学薬剤を複合材料10に導入することを含む、重大な不都合がある。
【0005】
図1Bは、例示の基板の電子顕微鏡写真である。図1Bは、非特許文献1から転載したものである。図1Bは、不織布基材15bを示している。具体的に、図1Bは、粒子6aの添加前の不織布基材15bの平面画像を示している。図1Bは、いくつかの繊維15aを有する不織布基材15bを示している。
【0006】
図1Cは、市販の基材の表面上に微粒子、金属酸化物および結合剤の被覆630を堆積させることによって製造したセラミック/不織布セパレータの電子顕微鏡の平面図を示している。図1Cは、非特許文献1から転載したものである。図1Cは、例えば、いくつかの金属酸化物粒子614を示している。結合剤616(図1Cにおいては見えない)も酸化物粒子614の間に存在する。図1Cは、例えば、いくつかの金属酸化物粒子614並びに粒子614の間の結合剤616を示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S.S. Zhang, “A review on the separators of liquid electrolyte Li-ion batteries,” Journal of Power Sources, Volume 164, Issue 1, 2007, page 351
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの例の各々において、保護セラミック層は比較的厚い(例えば、約数マイクロメートル)。さらに、ある用途またはプロセスにおいて、保護層は、基材、保護層またはその両方の性質を劣化させるまたは制限するかもしれない結合剤および/または高温焼結を使用して施される。いずれの場合においても、その複合材料またはハイブリッド材料の化学安定性および熱安定性が損なわれてしまうであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある例示の実施の形態において、本開示は、セパレータにおいて、主体部分と表面部分を有する基材であって、表面部分が、正味の電荷を有する少なくとも1つの多孔質区域を有するものである基材;および前記少なくとも1つの多孔質区域の少なくとも一部に結合したイオン粒子であって、その少なくともいくつかが、少なくとも1つの多孔質区域の正味の電荷と反対の符号の正味の電荷を有するものであるイオン粒子を含むセパレータに関する。この実施の形態のある変更例において、他のイオン粒子が、少なくとも1つの多孔質区域の正味の電荷と同じ符号の電荷を有してもよい。少なくとも1つの多孔質区域の前記一部と、イオン粒子との間の結合により、セパレータの化学安定性および機械的強度の内の少なくとも一方がもたらされる。
【0010】
別の例示の実施の形態において、本開示は、セパレータを含む電気化学セルに関する。このセパレータは、主体部分と表面部分を有する基材、およびその表面部分の少なくとも一部を被覆する層を備えている。この表面部分の被覆部は多孔質であり、前記層は表面部分の被覆部にイオン結合されている。この少なくとも1つの多孔質区域の部分とイオン粒子との間の結合により、セパレータの基材の電気化学的性能、化学安定性、熱安定性、湿潤性、および機械的強度の内の少なくとも1つがもたらされる。
【0011】
別の例示の実施の形態において、本開示は、セパレータを製造する方法に関する。この方法は、基材を処理して、この基材上に正味の電荷を有する表面部分を生成させ、この表面部分の少なくとも一部にイオン粒子を結合させる各工程を有してなる。イオンナノ粒子は、この表面部分の正味の電荷とは反対の正味の電荷を有し、少なくとも1つの多孔質区域とイオン粒子との間の結合により、セパレータの基材の良好な電気化学的性能、化学安定性、熱安定性、湿潤性、および機械的強度の内の少なくとも1つがもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】従来技術において電池のセパレータとして使用される種類の典型的なセラミック/高分子複合材料の概略図
【図1B】非特許文献1から転載した例示の基材の電子顕微鏡写真
【図1C】非特許文献1から転載したセラミック/不織布セパレータの電子顕微鏡写真
【図2A】開示された実施の形態に合致するイオン粒子を使用したセパレータの例示の構造とアセンブリの概略図
【図2B】開示された実施の形態に合致するイオン粒子を使用したセパレータの例示の構造とアセンブリの概略図
【図2C】開示された実施の形態に合致するイオン粒子を使用したセパレータの例示の構造とアセンブリの概略図
【図2D】開示された実施の形態に合致する例示の基材の電子顕微鏡写真
【図3A−1】開示された実施の形態に合致するイオンナノ粒子の合成の説明図
【図3A−2】開示された実施の形態に合致するイオンナノ粒子の合成の説明図
【図3A−3】図3A−2に示された合成技法と共に使用してよい高分子電解質の例を示す化学式
【図3A−4】図3A−2に示された合成技法と共に使用してよい高分子電解質の別の例を示す化学式
【図3B】開示された実施の形態に合致する図3A−1に示された合成にしたがって合成されるイオンナノ粒子の1つのタイプを説明する拡大断面図
【図3C−1】図3A−1に示されたイオンナノ粒子、および開示された実施の形態に合致した処理済み高分子基材を使用したハイブリッド材料からなるセパレータの合成を示す概略図
【図3C−2】図3A−2に示されたイオンナノ粒子、および開示された実施の形態に合致した処理済み高分子基材を使用したハイブリッド材料からなるセパレータの合成を示す概略図
【図3D】開示された実施の形態に合致した図3C−1のハイブリッド材料からなるセパレータの概略図
【図4A】開示された実施の形態に合致する荷電された基材上に堆積したイオン粒子の二重層の概略図
【図4B】開示された実施の形態に合致する荷電された基材上に堆積したイオン粒子の二重層の顕微鏡写真
【図5A】図2A〜2Cに示された各工程に対応するイオン粒子および従来の高分子セパレータ材料を使用したセパレータの構造およびアセンブリの外観を示す顕微鏡写真
【図5B】図2A〜2Cに示された各工程に対応するイオン粒子および従来の高分子セパレータ材料を使用したセパレータの構造およびアセンブリの外観を示す顕微鏡写真
【図5C】図2A〜2Cに示された各工程に対応するイオン粒子および従来の高分子セパレータ材料を使用したセパレータの構造およびアセンブリの外観を示す顕微鏡写真
【図5D】図2A〜2Cに示された各工程に対応する比較的大きなイオン粒子および従来の高分子セパレータ材料を使用したセパレータの構造およびアセンブリの外観を示す顕微鏡写真
【図5E】図2A〜2Cに示された各工程に対応する比較的大きなイオン粒子および従来の高分子セパレータ材料を使用したセパレータの構造およびアセンブリの外観を示す顕微鏡写真
【図6A】開示された実施の形態に合致したイオンナノ粒子上の相対的な電荷密度に基づく多孔質高分子基材上のイオンナノ粒子の表面層を形成するための機構を示す説明図
【図6B】開示された実施の形態に合致したイオンナノ粒子上の相対的な電荷密度に基づく多孔質高分子基材上のイオンナノ粒子の表面層を形成するための機構を示す説明図
【図6C】開示された実施の形態に合致したイオンナノ粒子上の相対的な電荷密度に基づく多孔質高分子基材上のイオンナノ粒子の表面層を形成するための機構を説明するための顕微鏡写真
【図6D】開示された実施の形態に合致したイオンナノ粒子上の相対的な電荷密度に基づく多孔質高分子基材上のイオンナノ粒子の表面層を形成するための機構を説明するための顕微鏡写真
【図6E】開示された実施の形態に合致したイオンナノ粒子上の相対的な電荷密度に基づく多孔質高分子基材上のイオンナノ粒子の表面層を形成するための機構を示す説明図
【図6F】図6Eのプロセスに対応するセパレータ材料の透過型顕微鏡写真
【図7A】開示された実施の形態に合致する、多孔質ポリプロピレン(PP)を含む1つのハイブリッド型セパレータの透過型電子顕微鏡写真
【図7B】開示された実施の形態に合致する、多孔質ポリプロピレン(PP)を含む別のハイブリッド型セパレータの透過型電子顕微鏡写真
【図7C】図7Bにも示されている、イオン粒子514による細孔壁510dの被覆を示す説明図
【図8】図1Cにおける市販のセパレータと類似の市販のセパレータの表面上にイオンナノ粒子を堆積させることによって、本開示の態様により製造されたセパレータ電子顕微鏡写真
【図9】市販の電解質である炭酸プロピレン(PC)による高分子基材の湿潤性へのイオンナノ粒子の影響を示す図
【図10】開示された実施の形態に合致したイオンナノ粒子による被覆の前後の高分子セパレータの充電/放電の特徴を表すデータを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2A〜2Cは、開示された実施の形態によるイオン粒子を使用したセパレータの構造とアセンブリの概要を示している。図2Aは、処理前の例示の基材10を示している。図2Bは、基材10の表面区域10aに正味の負の電荷を残す例示の表面処理後の基材10を示している。図2Cは、反対に帯電したイオン材料14に曝露された後の基材10を示している。図2Bは負に帯電した基材10を示しているが、これは単に例示である。以下に記載するように、このプロセスは、例えば、正に帯電した基材10および負に帯電したイオン材料14によって、異なるように進めても差し支えない。
【0014】
図2Aは基材を示している。一例として、基材10は、表面区域10aまたはその一部の上に正味の表面電荷12を保持するように非導電性である。しかしながら、ある実施の形態においては、基材10は、電気を通すおよび/または熱伝導性である部分を有してもよい。基材10は、様々な用途に適した数多くの材料を含んでもよい。例えば、基材10は、有機ポリオレフィンなどの高分子材料、複合材料(例えば、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンなど)、および電気化学セルに一般に用いられる他の材料(例えば、セルロース、PVC、PET、PVDF)を含んでもよい。基材10は、また、以下に限られないが、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフルオロポリマー、および様々な他の高分子材料を含む、他のタイプの高分子材料および/または複合材料を含んでもよい。基材10は、高分子材料以外に、主成分として、複合体において、またはその両方のいずれかとして、様々な無機材料、金属材料または他の有機材料の1種類以上であるかまたはそれらを含んでよい。
【0015】
基材10は、多孔質または実質的に多孔質の領域を含んでよい。例えば、基材10は、主体部分10bおよび表面区域10aの全体に亘り細孔を有してもよい。あるいは、基材10の表面区域10aおよび/または主体部分10bのある部分が実質的に多孔質であり、基材10の表面区域10aおよび/または主体部分10bの他の部分がそうではなくてもよい。例えば、表面区域10aおよび/または主体部分10bのいくつかの部分で、構造的健全性を維持するために、細孔がないまたは細孔が少なくてもよい。基材を、厳しい化学的環境において使用すべき場合、表面区域10aおよび/または主体部分10bのいくつかの部分は、基材10のいくつかの部分および/または他の構成部材を電気化学セルに使用される電解質などの周囲の化学物質から保護するために、細孔がなくてもよい。これらの他の用途について、基材10は、多孔質領域と非多孔質領域の両方および/または細孔の他の変種を含んでもよい。
【0016】
図2Aの円柱形状にある基材10の説明図は単なる例示であり、基材10は、セパレータまたは他の用途のために様々な形状を有してよい。例えば、基材10は、直方柱の形状であるおよび/または一方の側が他方の側よりも著しく長い(例えば、壁形)ようなアスペクト比を有していてもよい。あるいは、基材10は、数多くの異なる断面形状(例えば、正方形、円形、三角形、様々な台形など)の内の1つを有する管状または細長い形状を有してもよい。基材10は、その製造により規則的または不規則な形状を含んでもよく、例えば、基材10は、規則的または不規則な形状の原因となるクロスプライの繊維の部分を含んでもよい。あるいは、基材10は、特別な用途に適した不規則なまたは他の形状を有してもよい。
【0017】
図2Dは、本開示と共に使用してよい、微細多孔質高分子基材15cである例示の基材の電子顕微鏡写真を示している。図1Bに示された従来技術の基材15bを本発明と共に使用してもよいことに留意されたい。特に、図2Dは、イオン粒子の添加前に、微細多孔質高分子基材15cの平面図を示している。図2Dは、細孔15dを有する微細多孔質高分子基材15cを示している。
【0018】
図2Bは、イオン材料の添加前の基材10の処理を示している。一般に、この処理は、基材10の表面区域10aの表面処理を含む。例示の実施の形態において、この処理により、図2Bに示される表面区域10aの少なくとも1つの区域に正味の電荷が与えられる。例えば、この処理により、表面区域10a上の負の電荷12により表されるように、表面区域10aの全体に正味の負の電荷を与えてもよい。この処理は、正味の電荷を全表面区域10aに与える必要はなく、ある用途においては、表面区域10aのわずかな部分に正味の電荷を与えることが都合よいであろう。ある場合には、表面区域10aの特定の物理的特徴または形状に基づくなどの、特定のパターンで表面処理を行うことが都合よいであろう。例えば、表面区域10aの凹面部分に正味の表面電荷が与えられてもよい。表面区域10aに特定のパターンの正味の電荷を与えるために使用してよい技法の例としては、フォトリソグラフィーが挙げられる。実際に、特定のフォトリソグラフィー技法により、表面区域10a上の処理または帯電部分の寸法、位置、形状、および量の設計が可能になるであろう。
【0019】
基材の表面区域10aに施される処理は、表面区域10aのある部分に電荷を与えるのに適した数多くの処理の内の1つ以上であってよい。その例としては、表面区域10aをプラズマに曝露することなどの、表面区域10aの高エネルギーへの曝露が挙げられる。プラズマ処理により、基材10の主体部分の性質を犠牲にせずにすなわち実質的に変えずに、帯電した表面基が形成されるであろう。プラズマ処理は、任意の適切なパラメータを有する任意の適切なプラズマを含んでよい。例えば、マイクロ波酸素プラズマを、室温において50Wの出力で5分間に亘り基材10に印加してもよい。プラズマのパラメータは、正味の表面電荷12を形成するのに必要なまたは望ましいように調節されるであろう。このプラズマ処理は、基材10の複数の表面区域10aに施しても施さなくてもよい。例えば、ポリプロピレンを含む基材10は、紫外線(UV)および/またはプラズマに曝露して差し支えなく、これにより、基材10の表面基に正味の電荷12を与えることができる。正味の電荷12は、正、負またはその2つの組合せ(例えば、表面区域10aの異なる部分がプラズマに曝露されたときに、プラズマのパラメータが変化または変更された場合、それによって、表面区域10aの異なる部分に、異なる正味の電荷を有する異なる表面基が与えられる)であってもよい。
【0020】
前記処理は、化学処理、UV照射への曝露などを含む、数多くの他の処理の内の1つを含んでもよい。ある場合には、溶液、真空またはガス状環境のいずれかからの帯電基の表面堆積が適切であるかもしれない。正味の電荷を表面区域10aのある部分に与えるための任意の適切な方法を、本開示の範囲内で利用してよい。
【0021】
正味の表面電荷12は、図2Bに示されるように負であっても、ある他の実施の形態において、正であってもよい。正味の表面電荷12は、表面区域10aの全ての部分にとって同じである必要はない。例えば、ある用途において、表面区域10aのいくつかの部分に、正味の負の電荷を与え、表面区域10aの他の部分に正味の正の表面電荷を与えることが都合よいであろう。ある場合には、表面区域10aの全部に亘る正味の表面電荷12の全体の分布は、正味の中性であってよい。
【0022】
図2Cは、図2Bに示された処理済みの表面区域10aへのイオン粒子14の添加を示している。一般に、イオン粒子14は、それ自体、正味の表面電荷16を有している。イオン粒子14の正味の表面荷電16は、表面区域10aの一部の上の正味の表面荷電12と符号が反対であろう。この場合、イオン粒子14は、イオン粒子14の正味の電荷16と反対の正味の電荷12を有する表面区域10aの部分に引きつけられるであろう。図2Cは、イオン粒子14の正の正味の表面電荷16を示しているが、これは、単なる例示であることを意味している。他の構成において、イオン粒子14の正味の表面電荷16は負であっても差し支えない。さらに他の構成において、イオン粒子14のいくつかの正味の表面電荷16は正であり、イオン粒子14の他のものの正味の表面電荷16は負であって差し支えない。イオン粒子14の正味の電荷の大きさは、粒子毎に様々であってよい。
【0023】
ある変更例において、均一な正味の表面電荷16を有するイオン粒子14を有することが都合よいであろう。そのような用途としては、均一なまたはほぼ均一な表面被覆が要求される用途が挙げられる。他の用途では、正味の表面電荷16に関して、イオン粒子14の二峰性、三峰性または多峰性分布が求められるであろう。例えば、ある変更例において、不均一な表面区域10aの面(例えば、凹部および/または細孔)に付着するために、特に低い正味の表面電荷16を有するあるイオン粒子14を含むことが都合よいであろう。これらと他の変更例において、表面区域10aの他の部分を被覆するために、比較的低い正味の表面電荷16を有するイオン粒子14を含むことも都合よいであろう。さらに他の変更例において、多くが異なる正味の表面電荷16を有するイオン粒子14の組を用いて、同様のまたは追加の効果を達成してもよい。
【0024】
イオン粒子14はサイズが様々であってもよい。ある実施の形態において、イオン粒子14は、約1nmから500nmの範囲にある直径などのナノメートル範囲の直径のものであってよい。別の実施の形態において、イオン粒子14は、約10nmから30nmの中央直径を有してもよい。他の実施の形態において、イオン粒子14はサイズが著しく大きくてもよい。さらに他の実施の形態において、イオン粒子14のいくつかは、数十マイクロメートルより大きい直径を有してもよい。イオン粒子14のサイズ分布は、イオン粒子14が、図2Cに示されるように、効果的にまたは適切に単分散しているように小さくてよい。他の変更例において、イオン粒子14は、特に大きなサイズ分布および数桁の直径の大きさの変動を含む均一なサイズ分布を有してもよい。これらと他の用途は、特定の用途に適した二峰性、三峰性または他の多峰性のサイズ分布のイオン粒子14を有してもよい。例えば、より大きなイオン粒子14は、特定の正味の表面電荷16を有し、より小さなイオン粒子14は同じまたは異なる正味の表面電荷16を有してもよい。前記二峰性、三峰性または他の多峰性のサイズ分布は、イオン粒子14のサイズが正味の表面電荷16と相関する(例えば、より大きなイオン粒子14がより大きな正味の表面電荷16を有するであろう)ようなものであってよい。しかしながら、同一の正味の表面電荷16を有するイオン粒子14の二峰性、三峰性または他の多峰性のサイズ分布を有することも可能である。
【0025】
イオン粒子14は、図2Cにおいて球形状を有するものとして表されているが、これは単なる例示である。本出願の文脈内のイオン粒子14は、幾何学的、円形、部分円形または不完全形状を含む、任意の適切な形状を有してもよい。イオン粒子14は、完全に規則的な形状を有する晶子であっても、または部分的に結晶質および/または非晶質であってもよい。イオン粒子14は、完全にまたは部分的に不規則な形状を有しても、または細長いまたは潰れていても、もしくは任意の他の適切な形状を有してもよい。
【0026】
イオン粒子14は、イオン粒子14の正味の表面電荷16と反対の正味の電荷12を有する基材の表面区域10aの部分に引きつけられるであろう。この引力により、ある場合には、イオン粒子14と、反対の正味の電荷12の表面区域10aの部分との間でイオン結合がもたらされるであろう。イオン結合の強度が十分であれば、ある場合には、そのプロセスにより、図2Cに示される被覆基材100が形成される。より詳しくは、イオン粒子14と表面区域10aの部分との間のイオン結合により、表面区域10aの少なくとも一部分を被覆する、イオン粒子14の表面層18が形成される。ある変更例において、イオン粒子の表面層18が表面区域10aの全体を被覆することが都合よい。他の用途において、層18が表面区域10aの一部分のみしか被覆しないことが都合よいかもしれない。
【0027】
図3A−1および3A−2は、開示された実施の形態によるたイオン粒子、特に、イオンナノ粒子の合成の説明図である。図3Bは、開示された実施の形態による図3A−1に示された合成にしたがって合成されるイオンナノ粒子の1つのタイプを説明する拡大断面図である。イオン粒子のコア14a(図3Aおよび3B)は、金属酸化物などの無機材料を含んでよい。図3A−3および3A−4は、図3A−2に示された合成技法と共に使用される高分子電解質の例を示している。
【0028】
この開示は、コア14aに関して特に制限されず、化学的に安定かつ耐性のある材料から製造されたコアを用いてよい。例えば、化学安定性を有する金属酸化物(例えば、リチウムおよび/または電解質および電解質添加剤を含有する環境における化学安定性)がコア14aの材料に適している。そのようなリチウム含有環境の例としては、リチウムイオン、酸化リチウム、リン酸リチウム、フッ化リチウムまたはリチウム炭素化合物が挙げられる。そのようなコア14aを使用することにより、それから製造されるハイブリッド材料構成部材のリチウムおよびリチウム含有化合物に対する化学安定性が改善され、このことは、あるリチウムイオン電池用途にとって適しているであろう。コア14aの金属酸化物の適切な例としては、以下に限られないが、SiO2、ZnO、SnO2、TiO2、ZrO2、Al23、BaTiO3、Y23、MgO、NiO、CaO、Ti25およびそれらの組合せが挙げられる。それに加え、酸化物または他の材料の中空球をコア14aとして使用してもよい。コア14aは、セラミック、ガラス、シリコンおよび/または金属などの、さらに他のタイプの無機材料であっても、あるいはそれらを含んでもよい。コア14aは、有機材料および/または炭素系材料を含んでも、または完全にそれから製造されてもよい。コア14aは、その用途に適した任意の適切な技法により製造されてもよい。例えば、コア14aは、沈降技法、ゾルゲル技法もしくはマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョン技法によって製造してもよい。コア14aは、焼結または他のプロセスにおいて無機ナノ結晶または他のナノ結晶から製造されてもよい。熱安定性材料を使用したコア14aを使用してもよい。例えば、ある用途において、150℃辺りまたはそれより高い温度での熱安定性が都合よいであろう。そのような熱安定性を有する適切なコア14aとしては、適切な熱安定性を有する、上述したコアの任意のもの、並びに無機または有機の追加の材料が挙げられる。例えば、高分子または他の基材10よりも熱安定性の増加した金属酸化物のコアを選択してもよい。これと他の場合において、例示の金属酸化物から製造されたコア14aを有するイオン粒子14を含むイオン粒子層30により、セパレータ100全体の熱安定性が改善されるであろう。
【0029】
ある用途において、基材10の湿潤性よりも増加した湿潤性を有するコア14aが都合よいであろう。言い換えれば、上述した金属酸化物、ここに論じた他の材料または含意により含まれる他の材料の内の1つから選択される適切なコア14aの材料により、例えば、同じ電解質による湿潤性の低い材料を含む基材10を含む、電解質によるセパレータ100の湿潤性が改善されるであろう。例えば、高分子基材10よりも増加した電解質の湿潤性を有する金属酸化物コアを選択してもよい。これと他の場合において、その金属酸化物から製造されたコア14aを有するイオン粒子14を含むイオン粒子層30により、セパレータ100全体の湿潤性が改善されるであろう。
【0030】
ある用途において、基材10の機械的安定性より増加した機械的安定性を有するコア14aが都合よいであろう。言い換えれば、上述した金属酸化物、ここに論じた他の材料または含意により含まれる他の材料の内の1つから選択される適切なコア14aの材料により、例えば、機械的安定性の低い材料を含む基材10を含むセパレータ100の機械的安定性が改善されるであろう。例えば、高分子基材10よりも増加した機械的安定性を有する金属酸化物コアを選択してもよい。これと他の場合において、その金属酸化物から製造されたコア14aを有するイオン粒子14を含むイオン粒子層30により、セパレータ100全体の機械的安定性が改善されるであろう。多くの場合、イオン粒子14内部に亘り短絡を避けるまたは減少させるために、金属酸化物などの、実質的に絶縁性または非導電性のコア14aの材料を選択することが都合よい。ある用途において、基材10の湿潤性より優れた湿潤性、特に、電解質に対する湿潤性を有するコア14aも都合よいであろう。言い換えれば、上述した金属酸化物、ここに論じた他の材料または含意により含まれる他の材料の内の1つから選択される適切なコア14aの材料により、ある電解質湿潤性を有する材料を含む基材10を含むセパレータ100の電解質湿潤性が改善されるであろう。例えば、高分子基材10よりも増加した電解質湿潤性を有する金属酸化物コアを選択してもよい。これと他の場合において、その金属酸化物から製造されたコア14aを有するイオン粒子14を含むイオン粒子層30により、セパレータ100全体の電解質湿潤性が改善されるであろう。電池用途を含む様々な用途に使用される電解質または任意の流体に対する湿潤性が増加したコア14aの材料を選択してもよい。適切な電解質の例としては、以下に限られないが、炭酸プロピレン(PC)並びに他の市販の電解質と市販されていない電解質が挙げられる。
【0031】
コア14aの材料は、セパレータ100が良好な電気化学的性能または性質を有するように選択してもよい。そのような性質の例としては、セパレータ100がより低い抵抗、良好な電解質保持、および中程度のイオン輸率を有することが挙げられる。これらと他の実施の形態において、コア14aの材料は、セパレータ100がより速い放電および/または充電性能を有するように選択してよい。コア14aの材料は、セパレータ100が使用される電池が、より高速/低速の充放電速度で、より高いエネルギー伝達または供給効率を有するように選択してもよい。
【0032】
図3Bに示されるように、コア14aは、コア14aと結合したグラフト剤および/または固定基14bを使用した活性化させてもまたは処理してもよい。コア14aに結合する任意の適切なグラフト剤14bを使用してもよい。適切なグラフト剤14bの例としては、以下に限られないが、トリアルコキシシラン、ホスホネート、スルホネートおよび/または他の二座配位子が挙げられる。適切なグラフト剤14bの追加の例としては、第一級アミン含有シラン、第二級アミン含有シラン、第三級アミン含有シラン、第四級アミン含有シラン、カルボキシル基含有シラン、スルホン酸基含有シランまたはリン酸基含有シランが挙げられる。適切なグラフト剤14bは、少なくとも1種類の多官能性(n≧2)末端および少なくとも1つの以下の元素:N、S、B、P、C、SiおよびOを含む。
【0033】
グラフト剤14bは、図3A−1に示されるように、正味の電荷16を有する官能基18をさらに含んでもよい。適切な官能基18の例としては、以下に限られないが、図3Bに示されるように、1つの正の電荷を有する窒素含有官能基18が挙げられる。後者の例としては、NR4+基(ここで、Rは、水素を含む多数の元素であって差し支えない)、アンモニウム基(NH4+)などが挙げられる。しかしながら、任意の適切な官能基は、正または負の正味の電荷を有し、グラフト剤14bと共に使用してよい。図3Bは陰イオンとしてCl-を示しているが、これは単なる例示である。任意の適切な陰イオンを使用してよい。他の適切な陰イオンとしては臭素イオン、フッ素イオン、ヨウ素イオンおよび他の適切な陰イオンが挙げられる。
【0034】
あるいは、もしくはグラフト剤14bを使用することに加え、当該技術分野において公知の数多くの技法で高分子電解質を使用して、コア14aを修飾してもよい。適切な技法の例としては、シリカナノ粒子およびポリマーをコロイド上に連続して集合させ、その後、か焼または溶媒への曝露の際の分解いずれかによって、鋳型のコロイドを除去することが挙げられる。例えば、Frank Caruso, Science, 282, 1111 (1998)を参照のこと。図3A−2に示されるように、高分子電解質24bを使用したイオン粒子24の合成は、図3A−1に示されるようなグラフト剤14bを使用したイオン粒子14の合成と実質的に似ているであろう。図3A−2に示されたプロセスは、中でも、高分子電解質24bとコアとの間に共有結合がないという点で、図3A−1に示されたプロセスとは異なる。しかしながら、図3A−2に示されたプロセスを使用して合成されたイオン粒子24は、ここに記載されたイオン粒子14の脈絡において論じた性質、属性および特徴の実質的に全てを含むであろうと理解すべきである。言い換えれば、以下のイオン粒子14の議論は、図3A−2に示されたプロセスにより合成されたイオン粒子24に同等にうまく適用される。さらに、イオン粒子14に関してここに論じられた実施例および用途のいずれも、イオン粒子24に同等にうまく適用される。
【0035】
図3A−2に示されたプロセスに使用される適切な高分子電解質24bの例としては、正または負の正味の電荷を有する高分子電解質が挙げられる。図3A−3および3A−4は、図3A−2に示された合成技法と共に使用してよい高分子電解質の例を示している。図3A−3は、例示の陽イオン高分子電解質である、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)を示している。図3A−4は、例示の陰イオン高分子電解質である、ポリ(4−スチレンスルホン酸)リチウムを示している。しかしながら、任意の適切な高分子電解質を使用してよいことが理解されよう。適切な高分子電解質の他の例としては、ポリ(塩化水素アリルアミン)、ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)、ポリ(p−キシレンテトラヒドロチオフェニウムクロライド)、およびポリ(アクリル酸ナトリウム塩)が挙げられる。適切な高分子電解質は、イオン粒子24の表面に正味の電荷26を与えるために、任意の適切な電荷28を有してもよい。電荷28および26は正であっても負であってもよい。その上、正および負の電荷28および26の組合せを使用してもよい。
【0036】
図3A−2に示されたプロセスの例としては、特定のpH値でのコロイド粒子14上の反対に帯電した高分子電解質24bの堆積が挙げられる。この場合、主に静電相互作用により、高分子電解質24bの層がコロイド粒子14上に「蓄積する」または積み重なる。この積重ねにより、イオン粒子24が形成される。過剰な高分子電解質24bは、遠心分離または濾過によって除去することができる。過剰な堆積した高分子電解質24bの陽イオン(陰イオン)基は、一般的であり、コロイド粒子14の表面と利用されていない帯電基と相互作用するであろう。これにより、電荷の過補償が生じ、多数の高分子電解質24bの層のコロイド粒子14への静電結合が支援されるであろう。図3C−1および3C−2は、それぞれ、図3A−1および3A−2に示されたイオンナノ粒子、および開示された実施の形態による処理済み高分子基材を使用した、ハイブリッド材料からなるセパレータの合成を示す概略図である。図3Dは、図3C−1のハイブリッド材料からなるセパレータの概略図である。図3A−1および3Bまたは図3A−2に照らして記載されたように合成されたイオン粒子14は、例えば、溶液20中に懸濁させてもよい。次いで、溶液20を基材10、より詳しくは、正味の電荷12を有する表面区域10aと接触させる。溶液20とイオン粒子14またはイオン粒子24を基材10に曝露するのに適切な方法としては、イオンナノ粒子の表面部分への浸漬被覆、吹き付け塗り、スロット・ダイ・コーティング、流し塗り、グラビア・コーティング、インクジェット・プリントが挙げられる。表面区域10aの正味の電荷12とイオン粒子14の正味の電荷16またはイオン粒子24の正味の電荷26の符号が反対である(図解と実例の目的で、それぞれ、負と正として図3C−1および3C−2に示されている)場合、イオン粒子14または24と表面区域10aとの間にイオン結合が生じるであろう。この場合、イオン粒子14または24は表面区域10aと結合して、図3Dに示されるように、セパレータ10上にイオン粒子14または24の層30を形成するであろう。図4Bは、開示された実施の形態による図3Aに示されたプロセスにしたがって合成されたイオンナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。同様に、イオン粒子24は表面区域10aと結合して、セパレータ100上にイオン粒子24の層30を形成するであろう。
【0037】
溶液20は、イオン粒子14または24を堆積させるための数多くの適切な溶液の内の1つであってよい。適切な溶液の例としては、水(精製水、脱イオン水および/または添加剤または他の添加物を含む水)、様々な適切な有機溶媒(例えば、エタノール、アセトン)またはそれらと他の溶液の混合物が挙げられる。数多くの異なる溶液20を使用してよいが、重要な特徴としては、溶液20中のイオン粒子14または24のゼータ電子(ζ)が挙げられ、これは、溶液20中のイオン粒子14または24によって取得される全体の電荷に関連し得る。溶液20中において比較的低いζ(例えば、−30mV<ζ<30mV)を有するイオン粒子14または24は、弱いまたは低い正味の表面電荷12をもたらし、したがって、粒子の凝集をもたらすであろう。ζの大きさは、イオン粒子14または24間の斥力に比例し、したがって、イオン粒子14または24の凝集するまたは塊になる傾向に反比例するであろう。溶液20中において比較的高いζ(例えば、−30mV>ζ、またはζ>30mV)を有するイオン粒子14または24は、高い正味の表面電荷12をもたらし、したがって、強力な粒子−粒子の斥力をもたらすであろう。低い表面電荷12を有するイオン粒子14または24は凝集する傾向にあるであろう。比較的高い表面電荷12を有するイオン粒子は、表面区域10aの効率的な被覆が妨げられるまたは損なわれるような強力な反発相互作用を経験するであろう。pHなどの溶液20の特徴を変えることによって、イオン粒子14または24の特定の組のζが変わり、それに対応して、堆積特徴が変わるであろう。例えば、溶液20中において比較的大きい正のζを有するイオン粒子14または24により、ポリプロピレンなどのある表面がつぎはぎに被覆されるであろう。ζを減少させると、被覆がより均一になるであろう。この用途においてある範囲のpHを使用してよいが、特定の用途にイオン粒子14または24のpH、ζおよび表面電荷を調整することが都合よいであろう。一般に、1〜10の範囲にあるpHが適しているが、ある用途においては、この範囲の外のpHを使用することが都合よいかもしれない。一般に、−70mVから70mVのζの範囲が、高分子基材10上にイオン粒子14または24の比較的均一な安定な層を形成するのに適している。しかしながら、ここに記載された技法を任意の適切なζに適用してもよく、実際に、ζは、表面区域10aの所望の被覆状態をていきょうするために調節または変更してよい。
【0038】
図3Dは、層30を基材10上のイオン粒子14の均一な分布として示しているが、これは単なる例示である。実際に、イオン粒子14は、上述したように、基材10の表面区域10aの異なる部分に群がる、被覆するおよび/または付着してもよい。
【0039】
図4Aおよび4Bは、開示された実施の形態による帯電基材上に堆積したイオン粒子の二重層の、それぞれ、概略図および顕微鏡写真である。図4Aは、負に帯電した基材10上に堆積した正に帯電したイオンナノ粒子44aの第1の層42を示す断面図である。第1の層42の堆積手法は、イオン粒子14および層30に照らして上述した手法にしたがうものであってよい。一旦、第1の層42を堆積させたら、単層または多層として、図4Aに示されるように、負に帯電したイオン粒子44bの第2の層46を第1の層42の上面に堆積させてよい。図4Aおよび4Bの両方が負に帯電したイオン粒子44bを正に帯電したイオン粒子44aより実質的に大きいものとして示しているが、これは単なる例示である。粒子44aおよび44bはいかなる適切なサイズの構成を有していてもよい(例えば、44aは44bより大きくても、その逆であっても、もしくは同じサイズであってもよいなど)。さらに、特定の電荷の構成も単なる例示である。例えば、基材10が正に帯電し、イオン粒子44aが負に帯電し、イオン粒子44bが正に帯電してもよい。当業者には、本発明の変更例と考えるべき、明白に述べられた、含蓄された、示唆された、または明白には述べられていない他の組合せが認識されよう。
【0040】
図4Bは二重層の堆積の結果を示している。図4Bに示されるように、2つの層42および46ははっきりと識別される。図4Bは部分的な二重層を示しているが、任意の適切なパターンが本発明の範囲に含まれることが理解されよう。例えば、層46は、イオン粒子44bの島、縞または他のパターンを形成するような様式で、層42上にパターンを形成してもよい。当業者には、これらの層42と46の様々な構成、様々なパターンなどが本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0041】
図5A〜Cは、図2A〜Cに示された工程に対応するイオン粒子および従来の高分子セパレータ材料を使用したセパレータの構造およびアセンブリの概要を与える顕微鏡写真である。図5Aにおいて、基材210は電気化学セルのための市販の高分子セパレータ(Celgard 2320)である。図5Aに示されるように、基材210は、顕微鏡写真で明らかに見える多数の細孔210cを有し、多孔質である。図5Bは、表面区域210aが正味の負の電荷を保持するようなプラズマ処理後の図5Aの基材210を示している。細孔210cは、図5Bに示されるように、処理済み表面区域210aにおいてまだ見える。図5Cは、シリカコア214aおよび正に荷電したアンモニウムを含むグラフト剤214bからなるイオンナノ粒子214に曝露された後の表面区域210aを示している。図5Cは、表面区域210aを被覆するイオンナノ粒子214の大雑把に言って均一で均質な層230を示している。さらに、図5Cに見えるように、基材210に存在する細孔210cの多くは、イオン粒子の層230によって実質的に遮られていない。
【0042】
図5D〜5Eは、図2A〜2Cに示された工程に対応する比較的大きいイオン粒子および従来の高分子セパレータ材料を使用したセパレータの構造およびアセンブリの概要を与える顕微鏡写真である。図5Dにおいて、基材310は、表面区域310aが正味の負の電荷を保持するようなプラズマ処理後の電気化学セルのための市販の高分子セパレータ(Celgard 2320)である。図5Dに示されるように、基材310は、顕微鏡写真で明らかに見える多数の細孔310cを有し、多孔質である。図5Eは、TiO2コア314aおよび正に帯電したアンモニウムを含むグラフト剤314bからなるイオンナノ粒子314に曝露された後の表面区域310aを示している。図5Eは、表面区域310aを被覆するイオンナノ粒子314の大雑把に言って均一な層330を示している。さらに、図5Eにおいて分かるように、基材310に存在する細孔310cの多くは、イオン粒子の層330によって被覆されたときにでさえもまだ見える。イオン粒子の層330のイオンナノ粒子314は、図5Cに示されるようにイオンナノ粒子214よりも著しく大きい。さらに、イオンナノ粒子314は、イオンナノ粒子214よりも形状とサイズ分布が著しくより不規則である。これらの結果は、粒子のコア、堆積パラメータおよび層のパターン形成を変えることによって可能な著しい変更例の内のいくつかを示している。
【0043】
図6Aおよび6Eは、開示された実施の形態によるイオンナノ粒子上の相対的電荷密度に基づいて多孔質高分子基材上にイオンナノ粒子の表面層を形成するための2つの異なる機構を示している。図6Aおよび6Eは、表面区域10aにおける細孔10cを示している。ある例において、イオン粒子14による表面区域10aの被覆状態は、イオン粒子14の正味の表面電荷12を調節することによって調節されるであろう。図6Aに示された細孔10c、並びにここに論じられた任意の他の細孔は、図6Aに示されるようには表面10aで必ずしも閉じられていないことに留意されたい。例えば、細孔10c、およびここに論じられた任意の他の細孔は、図6Bに示されるように、開いていてもよい。図6Bに示されるようなそのような開いた細孔10cの例としては、基材の表面区域10aまたは主体部分10bにおける細孔の網状構造が挙げられる。実際に、電池用途のためのセパレータとして使用される基材10における多くの細孔10cは、表面区域10aを超えて貫通するおよび/または基材10の主体部分10b内に細孔10cの網状構造を形成する。
【0044】
図6Aにおいて、イオン粒子14は、比較的高い正味の表面電荷12を有する。図6Dは、図6Aにおけるプロセスに対応するセパレータ材料の透過型電子顕微鏡写真を示している。図6Dは、比較的高い正味の表面電荷12、イオン粒子14の比較的薄い表面層30および細孔10cのイオン粒子14による比較的良好な被覆状態を示している。高い正味の表面電荷12は、例えば、堆積溶液20中の粒子14が、比較的大きい大きさのζを有するときに生じるであろう。比較的大きいζは、イオン粒子14の高い正味の表面電荷12のように、正または負のいずれであってもよい。比較的高い正味の表面電荷12は、図6Aに示されるように、イオン粒子14間で相当な正味の斥力F1を生じるであろう。ある場合には、相当な正味の斥力F1は、図6A、6Cおよび6Dに示されるように、イオン粒子14を表面区域10aの細孔10c中に追い込むほど十分な大きさのものであろう。図6Aおよび6Dに示されるように、イオン粒子14による表面区域10aの被覆状態は、細孔10cにおいて、および表面区域10aの外縁10dにおいて実質的に均一であろう。
【0045】
しかしながら、図6Aおよび6Dにおける表面区域10aの被覆状態は単なる例示である。実際に、イオン粒子14の正味の表面電荷12は、表面区域10aを被覆する数多くの異なる可能な様式のために調節されるであろう。例えば、イオン粒子14の正味の表面電荷12は、表面区域10aの外縁10dがイオン粒子14のいくつかの層を保持するのに対し、細孔10cがイオン粒子14の単層またはイオン粒子14の単層未満を保持するように調節されるであろう。後者はおおよそ、図6Cに示される被覆状態に相当する。図6Cは、比較的中程度の正味の表面電荷12、イオン粒子14の比較的厚い表面層30および細孔10cのイオン粒子14による比較的良好な被覆状態の場合に相当する。あるいは、イオン粒子14の正味の表面電荷12は、表面区域10aの外縁10dがイオン粒子14の単層または単層未満を保持するのに対し、細孔10cがイオン粒子14の単層以上を保持するように調節されるであろう。さらに他の変更例において、異なる正味の表面電荷12を有するイオン粒子14を同時に使用して、表面区域10aの外縁10dの部分、細孔10cの部分またはその両方を被覆してもよい。
【0046】
図6Eにおいて、イオン粒子14は比較的低い正味の表面電荷12を有する。図6Fは、図6Eにおけるプロセスに対応するセパレータ材料の透過型電子顕微鏡写真を示している。図6Fは、比較的低い正味の表面電荷12、イオン粒子14の比較的厚い表面層30および細孔10cのイオン粒子14による比較的まばらな被覆状態または実質的に被覆されていない状態の場合に相当する。この低い正味の表面電荷12は、例えば、堆積溶液20中の粒子14が、比較的小さい大きさのζを有する場合に生じるであろう。比較的小さいζは、イオン粒子14の低い正味の表面電荷12のように、正または負のいずれであってもよい。
【0047】
比較的低い正味の表面電荷12は、例えば、イオン粒子14間の斥力を、例えば、分極効果のために、粒子間の引力より弱くするであろう。このことが生じると、図6Eに示されるように、イオン粒子14間の実質的な正味の引力F2が生じるであろう。ある場合には、実質的な正味の引力F2は、図6Eに示されるように、表面区域10aの細孔10c中にイオン粒子14が侵入するのを防ぐのに十分であろう。さらに、ある場合には、実質的な正味の引力F2により、細孔10cを実質的に被覆するイオン粒子14の表面層30が形成されるであろう。しかしながら、図6Eにおける表面区域10aの被覆状態は単なる例示である。実際に、イオン粒子14の正味の表面電荷12は、表面区域10aを被覆する数多くの異なる可能な様式のために調節してもよい。例えば、イオン粒子14の正味の表面電荷12は、表面区域10aの外縁10dがイオン粒子14のいくつかの層を保持するのに対し、細孔10cが、イオン粒子14の表面層30により被覆されているかまたは被覆されていないように調節してもよい。さらに他の変更例において、異なる正味の表面電荷12を有するイオン粒子14を同時に使用して、表面区域10aの外縁10dの部分、細孔10cの部分またはその両方を被覆してもよい。
【0048】
図7A〜7Bは、多孔質ポリプロピレン(PP)を含む、開示された実施の形態による2つの他のハイブリッド型セパレータの透過型電子顕微鏡写真を示している。特に、図7Aおよび7Bは、どのように異なる堆積パラメータにより、実質的に同じ例示の基材を異なるように被覆するかを示している。
【0049】
図7Aに示されるように、セパレータ400の基材410は、細孔410c、並びに他の特徴を示している。イオン粒子414は、細孔410c中に、並びに基材410の表面区域410a上のイオン粒子層430として、存在する。このイオン粒子層430は、いくつかのイオンナノ粒子414の厚さを有するようである。細孔410c中に存在するイオン粒子414は、細孔壁410dを少なくともイオン粒子414の単層で被覆したようである。実際に、細孔410cのある領域415は、単層より著しく大きい厚さを有するイオン粒子414の層を有するようである。さらに、図7Aによれば、細孔410cの多くが、基材410の表面区域410aでイオン粒子層430によって被覆されているようである。
【0050】
図7Bに示されるように、セパレータ500の基材510は細孔510c、並びに他の特徴を含む。図7Cは、これも図7Bに示されるような、イオン粒子514による細孔壁510dの被覆状態の説明図である。510eは高分子のポリプロピレンの区域である。イオン粒子514は、図7Bおよび7Cに示されるように、細孔510c中に、並びに基材510の表面区域510a上のイオン粒子層530として存在する。イオン粒子層530は、イオン粒子層430と厚さは同様である。細孔510c中に存在するイオン粒子514は、細孔壁510dの表面をほぼ完全に被覆するような様式で、細孔壁510dをイオン粒子514のほぼ単層で被覆したようである。
【0051】
比較例1
図8は、図1Cにおける市販のセパレータ600と同様な市販のセパレータの基材710の表面にイオンナノ粒子層730を堆積させることによって、本開示の態様により製造されたセパレータ700の電子顕微鏡写真を示している。図8は、基材710における細孔710cが、イオンナノ粒子層730により被覆された後でさえ、曝露されたままであることを示している。
【0052】
図8と図1Cのサイズの倍率は同程度である。図8と図1Cの比較により、イオンナノ粒子層730は、セラミック/不織布のセパレータ600の粒子614よりもかなり均一であることが示される。このことは、他にも理由があるが、イオンナノ粒子714が数桁小さいために予測され、それゆえ、ある場合には、均一な被覆層を形成する能力を向上させる。さらに、イオンナノ粒子層730は、基材710の下にある細孔710cの少なくともある程度を保存する。反対に、結合剤616および粒子614は、下にある基材610中にどの細孔も完全に被覆するようである。
【表1】

【0053】
表1は、図1Cに示される種類の例示のセラミック/不織布セパレータの特徴と性質を、図8に示される本開示の態様によるセパレータ700のものと比較したものである。表1に示されるように、下にある基材710の充填率は、典型的なセラミック/不織布セパレータと比べて40〜60倍低い。これと他の理由のために、セパレータ700は、比較的軽い質量でありながら、電気化学的性質、湿潤性、化学安定性、熱安定性および機械的安定性および/または基材710の強度を改善することができる。セパレータのイオン粒子層730は結合剤を必要としないのに対し、典型的なセラミック/不織布セパレータは、セパレータ全体の約15質量%を占める結合剤を必要とする。さらに、セパレータ700の結合機構はイオン性であるので、イオン粒子層730の基材710への付着力は、典型的なセラミック/不織布セパレータにおけるセラミック層の基材への付着力より相当強いと予測される。その上、任意の所望の厚さのイオン粒子層730の多層被覆を形成することが可能であるが、イオン粒子層730は数ナノメートルほど薄くてもよい。セラミック/不織布セパレータにおける典型的なセラミック層は、例えば、ほぼセラミック粒子のサイズ、例えば、マイクロメートルの最小厚を有する。
【0054】
比較例2
図9は、市販の電解質である炭酸プロピレン(PC)による高分子基材の湿潤性へのイオンナノ粒子の影響を示している。図9Aは、4種類の異なる表面である、市販の高分子セパレータの表面(Calgard 2320、以後「未処理のセパレータ900」と称する)、プラズマ処理された後のこのセパレータの表面(MW−プラズマ処理済みCelgard 2320、以後「プラズマ処理済みセパレータ910」と称する)、単層のイオンナノ粒子で被覆された後のプラズマ処理された市販の高分子セパレータの表面(HS30−シラン3単層被覆されたMW−プラズマ処理済みCelgard 2320、以後「単層セパレータ920」と称する)、および多層のイオンナノ粒子により被覆された後のプラズマ処理された市販の高分子セパレータの表面(HS30−シラン3多層被覆されたMW−プラズマ処理済みCelgard 2320、以後「多層ハイブリッド型セパレータ930」と称する)に関して測定したPCの前進接触角(以後「接触角」と称する)を示している。図9Bは、図9Aの4種類の異なる表面の各々に関する接触角を表す図を示している。
【0055】
接触角は、PCによる表面の湿潤性の尺度である。一般に、電池のセパレータが、電解質に関する湿潤性を増加させるまたはさらには最大にする外表層を有することが都合よい。このことは、リチウムイオン電池などの特に腐食性の環境を有する電池に使用されるセパレータに特に当てはまる。しかしながら、ある用途にとっては、湿潤性がそれほど極端ではないことが都合よいかもしれない。多くの状況において、セパレータの湿潤性を調節する能力は都合よい。
【0056】
図9Aにより示されるように、接触角が、単に、Celgard 2320をプラズマ処理することによって、約65度から約30度へと最大に減少する。プラズマ処理によるPC湿潤性の増加は、その技法中に表面に与えられた正味の表面電荷(および極性)に関連するようである。PCによるセパレータの湿潤性は、イオン粒子の層が加えられるとさらに増加する。図9Aに示されるように、イオンナノ粒子の層を加えると、接触角は単調に(例えば、セパレータ900または910上のイオンナノ粒子の層がない状態から、セパレータ920の一層とセパレータ930の多層まで)減少する。
【0057】
図9Aに示されるように、多層のハイブリッド型セパレータ930は実質的にゼロの接触角を有する。これは、図9Bの図に反映されているように、PCがセパレータ930の表面を完全に濡らすことを示す徴候である。他方で、セパレータ920の接触角は約10度±2度である。この大きい接触角は小さい湿潤性を示すであろうが、これをセパレータ930について測定した接触角と比較すると、1)この条件下では、湿潤性は、イオン粒子の層を増加させるにつれて、増加するようであること、および2)この特別な実施例は、イオン粒子の堆積層の数を管理することによって、HS30−シラン3多層被覆されたMW−プラズマ処理されたCelgard 2320について湿潤性を調節できること、が示される。
【0058】
比較例3
図10は、開示された実施の形態によるイオンナノ粒子による被覆の前後の高分子セパレータの充電/放電特徴を示すデータを表している。図10に示されるように、イオンナノ粒子「ハイブリッド型」セパレータを含むシステムの比放電容量、並びにDEC電解質を含むシステムの比放電容量は、繰返しにより減少する。しかしながら、図10は、ハイブリッド型セパレータの比放電容量は、40サイクル以上の後で、DEC電解質を含むシステムよりも相当高いことを示している。このことは、ハイブリッド型セパレータのサイクル寿命が他の市販の代替品よりも相当改善されることを表す徴候であろう。
【0059】
例示された材料または技法により、質量を実質的に増加させずに、電池用セパレータなどのデバイスの電気化学的性能、化学的強度、熱的強度または機械的強度が向上するであろう。それゆえ、デバイスは、その機能に関する他の重要な性質を犠牲にせずに、より堅牢に製造することができる。
【0060】
いくつかの実施の形態を、電池用セパレータおよび他の電池用途に照らして議論してきたが、それらは例示であり、開示された基材の用途を電池用途に制限するものではない。例えば、その材料または技法を、ある製品の機械的耐久性、化学的耐久性または熱的耐久性を改善するために使用される軽量用途または他の被覆技術に使用してもよい。
【0061】
開示したプロセスにおける工程の特定の順序または順列は、例示の手法の説明である。設計の嗜好、製造設備、および他の検討事項に基づいて、工程の順序または順列を変えてもよい。したがって、添付の方法の請求項は、特定の順序または順列を、提示された要素の順序に制限するものではない。
【0062】
開示された方法および材料に様々な改変および変更を行えることが当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単なる例示と考えられ、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその同等物によって示されることが意図されている。
【符号の説明】
【0063】
10 基材
10a,210a,310a,410a,510a 表面区域
10b 主体部分
14,24,44a,44b イオン粒子
14a コア
14b 固定基、グラフト剤
16 表面電荷
18 表面層、官能基
20 溶液
24b 高分子電解質
26 正味の電荷
28 電荷
30,230,730 イオン粒子層
100,600,700 被覆基材、セパレータ
210,310,410,510 基材
210c,310c,410c,510c,710c 細孔
214,314 イオンナノ粒子
214a シリカコア
214b グラフト剤
616 結合剤
630 被覆
900 未処理のセパレータ
910 プラズマ処理済みセパレータ
920 単層セパレータ
930 多層ハイブリッド型セパレータ
F1 斥力
F2 引力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータにおいて、
主体部分と表面部分を有する基材であって、該表面部分が、正味の電荷を有する多孔質区域を少なくとも1つ有するものである基材、および
前記少なくとも1つの多孔質区域の少なくとも一部分に結合したイオン粒子であって、該少なくとも1つの多孔質区域の正味の電荷と反対の符号の正味の電荷を有するイオン粒子、
を有してなり、
前記少なくとも1つの多孔質区域の前記一部分と前記イオン粒子との間の結合により、前記セパレータの電気化学的性能、化学安定性、熱安定性、湿潤性、および機械的強度の内の少なくとも1つがもたらされることを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記イオン粒子が、リチウム、電解質および電解質への添加剤の内の少なくとも1つに曝露されたときの、前記基材および前記セパレータの化学安定性よりも高い化学安定性、および前記基材の機械的強度よりも大きい機械的強度を有するイオン粒子層を少なくとも1つ形成することを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
前記イオン粒子が、約1nmから約500nmの範囲にあるサイズを有するナノ粒子を含むことを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項4】
前記基材が高分子を含むことを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項5】
前記イオン粒子が、SiO2、ZnO、SnO2、TiO2、ZrO2、Al23、BaTiO3、Y23、MgO、NiO、CaO、Ti25の内の少なくとも1つである金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項6】
前記イオン粒子の少なくともいくつかが、約−70mVから約70mVの範囲にあるゼータ電位を有することを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項7】
前記イオン粒子と結合したグラフト剤をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項8】
前記グラフト剤が、第一級アミン含有シラン、第二級アミン含有シラン、第三級アミン含有シラン、第四級アミン含有シラン、カルボキシル基含有シラン、スルホン酸基含有シラン、リン酸基含有シランおよび多官能化(n≧2)末端の内の少なくとも1つ、並びにN、S、B、P、C、SiおよびOの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7記載のセパレータ。
【請求項9】
前記基材が少なくとも1つの高分子電解質を含むことを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの高分子電解質が、N、S、B、P、C、SiおよびOの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9記載のセパレータ。
【請求項11】
前記イオン粒子層の厚さが約1nmおよび約10マイクロメートルの間にあることを特徴とする請求項2記載のセパレータ。
【請求項12】
前記イオン粒子層の、電解質を含む液体に対する湿潤性が、前記基材の該液体に対する湿潤性よりも大きいことを特徴とする請求項2記載のセパレータ。
【請求項13】
前記セパレータが電気化学セルのセパレータであることを特徴とする請求項12記載のセパレータ。
【請求項14】
セパレータを含む電気化学セルにおいて、該セパレータが、
主体部分と表面部分を有する基材、
前記表面部分の少なくとも一部分を被覆する層であって、該表面部分の被覆された一部分が多孔質であり、該表面部分の被覆された一部分にイオン結合している層、
を有してなり、
前記表面部分の多孔質の被覆された一部分と前記層との間の結合により、前記セパレータの電気化学的性能、化学安定性、熱安定性、湿潤性、および機械的強度の内の少なくとも1つがもたらされることを特徴とする電気化学セル。
【請求項15】
前記基材が高分子を含み、前記層が、金属酸化物粒子の各々が正味の電荷を保持するように、グラフト剤または高分子電解質により修飾された該粒子をさらに含むことを特徴とする請求項14記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記層の電解質に対する湿潤性が、前記基材の該電解質に対する湿潤性より大きいことを特徴とする請求項14記載の電気化学セル。
【請求項17】
セパレータを製造する方法において、
基材を処理して、該基材上の表面部分に正味の電荷を生成する工程、および
前記表面部分の少なくとも一部分にイオンナノ粒子を結合させる工程であって、前記イオンナノ粒子が、前記表面部分上の正味の電荷と反対の正味の電荷を有するものである工程、
を有してなり、
前記表面部分の少なくとも一部分と前記イオンナノ粒子との間の結合により、前記セパレータの良好な電気化学的性能、化学安定性、熱安定性、湿潤性、および機械的強度の内の少なくとも1つがもたらされることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記結合により、リチウム、電解質および電解質への添加剤の内の少なくとも1つに曝露されたときの、前記基材の化学的安定性よりも高い化学安定性、および前記基材の機械的強度よりも大きい機械的強度を有するイオン粒子層が少なくとも1つ形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記リチウムが、リチウムイオン、酸化リチウム、リン酸リチウム、フッ化リチウム、およびリチウム炭素化合物の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記処理工程が、前記表面部分をプラズマに曝露する工程を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記処理工程が、前記表面部分の化学処理を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記処理工程が、前記表面部分を紫外線に曝露する工程を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記基材が高分子材料を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記結合工程が、前記基材を、前記イオンナノ粒子を含有する溶液に曝露する工程を含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記曝露工程が、前記表面部分への前記イオンナノ粒子の浸漬被覆、吹き付け塗り、スロット・ダイ・コーティング、流し塗り、グラビア・コーティング、インクジェット・プリントの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記溶液が約1から約10のpHを有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
金属酸化物ナノ粒子を修飾するためのグラフト剤を選択し、
該グラフト剤を使用して、前記金属酸化物ナノ粒子を修飾する、
ことによって、前記イオンナノ粒子を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項28】
前記選択工程が、前記イオンナノ粒子が、前記表面部分の所望の被覆状態に対応する電荷密度を有するように前記グラフト剤を選択する工程を含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記電荷密度が高電荷密度であり、前記所望の被覆状態が、前記イオンナノ粒子による前記基材の細孔の侵入を含むことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記電荷密度が低電荷密度であり、前記所望の被覆状態が、前記イオンナノ粒子による前記基材の細孔の被覆を含むことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記グラフト剤が、第一級アミン含有シラン、第二級アミン含有シラン、第三級アミン含有シラン、第四級アミン含有シラン、カルボキシル基含有シラン、スルホン酸基含有シラン、リン酸基含有シランおよび多官能化(n≧2)末端の内の少なくとも1つ、並びにN、S、B、P、C、SiおよびOの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記イオン粒子層の厚さが約1nmおよび約10マイクロメートルの間にあることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項33】
金属酸化物ナノ粒子を修飾するための高分子電解質を選択し、
該高分子電解質を使用して、前記金属酸化物ナノ粒子を修飾する、
ことによって、前記イオンナノ粒子を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項34】
前記選択工程が、前記イオンナノ粒子が、前記表面部分の所望の被覆状態に対応する電荷密度を有するように前記高分子電解質を選択する工程を含むことを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記電荷密度が高電荷密度であり、前記所望の被覆状態が、前記イオンナノ粒子による前記基材の細孔の侵入を含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記電荷密度が低電荷密度であり、前記所望の被覆状態が、前記イオンナノ粒子による前記基材の細孔の被覆を含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記高分子電解質が、N、S、B、P、C、SiおよびOの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項33記載の方法。

【図1A】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A−1】
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【図3A−2】
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【図3A−3】
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【図3A−4】
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【図3B】
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【図3C−1】
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【図3C−2】
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【図3D】
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【図4A】
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【図7C】
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【図10】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2D】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−142256(P2012−142256A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90743(P2011−90743)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(507084073)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティテュート (22)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】