説明

セパレーター、セパレーター製造方法及びセパレーター製造装置

【課題】高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターを提供する。
【解決手段】1つのセルロース繊維層110と、セルロース繊維層110の一方の面に配設されたナノ繊維層120と、セルロース繊維層110の他方の面に配設されたナノ繊維層130とを備えるセパレーター100。セルロース繊維層110は、厚さが1μm〜40μmであり、かつ、平均繊維径0.1μm〜10μmのセルロース繊維からなる。セルロース繊維層110は、平均繊維長2.0mm以上のセルロース繊維からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレーター、セパレーター製造方法及びセパレーター製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース繊維を叩解した紙を用いたセパレーターが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されたセパレーターは、セルロース繊維を叩解した紙を原料としているため、従来使用されているポリオレフィン系のセパレーターと比較して高い耐熱性を有するのに加えて高い機械的強度を有する。従って、特許文献1に記載されたセパレーターにおいては、セパレーターを薄くしてイオン伝導性を高くしたとしても、高い機械的強度を維持できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−223196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明の発明者らの研究によれば、特許文献1に記載されたセパレーターにおいては、セパレーターを薄くしてイオン伝導性を高くした場合には、高い機械的強度は維持できるものの絶縁性及びデンドライト耐性が低下するという問題があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターを提供することを目的とする。また、そのようなセパレーターを製造可能なセパレーターの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のセパレーターは、少なくとも1つのセルロース繊維層と、少なくとも1つのナノ繊維層とを備えることを特徴とする。
【0007】
このため、本発明のセパレーターによれば、繊維が細く空隙が微細かつ均一であるという特徴を有するナノ繊維層を備えるため、高い絶縁性及び高いデンドライト耐性を有する。また、ナノ繊維層は空隙率が大きいという特徴も有するため、高い電解液保持特性を有し高いイオン伝導性を有する。
【0008】
また、本発明のセパレーターによれば、セルロース繊維層を備えるため、高い機械的強度を有する。
【0009】
その結果、本発明のセパレーターは、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターとなる。
【0010】
[2]本発明のセパレーターにおいては、前記セルロース繊維層は、厚さが1μm〜40μmであり、かつ、平均繊維径0.1μm〜10μmのセルロース繊維からなることが好ましい。
【0011】
本発明のセパレーターによれば、セルロース繊維層の厚さが40μm以下であるため、薄いセパレーターを製造することが可能となり、電気容量が大きい二次電池やキャパシターを製造することが可能となる。また、セルロース繊維層の厚さが1μm以上であるため、機械的強度が低下することもない。
【0012】
また、本発明のセパレーターによれば、セルロース繊維層が、平均繊維径0.1μm以上のセルロース繊維からなるため、セルロース繊維そのものの強度を保ちやすくなり、それほど厚くすることなく十分な機械的強度を有するセルロース繊維層を構成することができる。一方、セルロース繊維層が、平均繊維径10μm以下のセルロース繊維からなるため、薄いセパレーターを製造することが可能となり、電気容量が大きい非水系電池を製造することが可能となる。
【0013】
[3]本発明のセパレーターにおいては、前記セルロース繊維層は、平均繊維長2.0mm以上のセルロース繊維からなることが好ましい。
【0014】
このような構成とすることにより、セルロース繊維同士が絡まる箇所が多くなるため、それほど厚くすることなく十分な機械的強度を有するセパレーターを構成することが可能となる。
【0015】
[4]本発明のセパレーターにおいては、前記ナノ繊維層は、空孔率が20%〜80%の範囲内にあり、かつ、平均空孔サイズが0.02μm〜2μmの範囲内にあることが好ましい。
【0016】
このような構成とすることにより、ナノ繊維層の空孔率が20%〜80%の範囲内にあるため、高い電解液保持特性を有し、高いイオン伝導性を得ることが可能となる。また、平均空孔サイズが0.02μm〜2μmの範囲内にあり、デンドライトがセパレーターに侵入し難い空孔サイズであるため、高いデンドライト耐性を有する。
【0017】
[5]本発明のセパレーターにおいては、前記セパレーターは、前記セルロース繊維層の両面に前記ナノ繊維層が配設された構造を有することが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、セルロース繊維層の両面でデンドライトの成長を阻止することが可能となり、より一層高いデンドライト耐性を有するセパレーターを構成することが可能となる。
【0019】
[6]本発明のセパレーターにおいては、前記セパレーターは、前記ナノ繊維層の両面に前記セルロース繊維層が配設された構造を有することが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、より一層高い強い機械的強度を有するセパレーターを構成することが可能となる。
【0021】
[7]本発明のセパレーターの製造方法は、本発明のセパレーターを製造するためのセパレーターの製造方法であって、前記セルロース繊維層からなる長尺シートを準備する工程と、搬送されていく前記長尺シートにおける一方の面に前記ナノ繊維層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0022】
このため、本発明のセパレーターの製造方法によれば、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0023】
また、本発明のセパレーターの製造方法によれば、ナノ繊維層が形成されたセルロース繊維層をそのまま製品とすることができる。このため、長尺シートからセパレーターの製品を取り外す工程を省くことができ、より一層生産性を高くすることが可能となる。
【0024】
[8]本発明のセパレーターの製造方法においては、搬送されていく前記長尺シートにおける他方の面に前記ナノ繊維層を形成する工程をさらに含むことが好ましい。
【0025】
このような方法とすることにより、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーターを製造することが可能となる。
【0026】
[9]本発明のセパレーターの製造方法は、本発明のセパレーターを製造するためのセパレーターの製造方法であって、搬送されていく長尺シートにおける一方の面に、前記ナノ繊維層と、前記セルロース繊維層を順次形成することによりセパレーターを製造することが好ましい。
【0027】
このため、本発明のセパレーターの製造方法によっても、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0028】
また、ナノ繊維層及びセルロース繊維層を形成する順序を適宜調整することにより、セルロース繊維層の一方の面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター及びナノ繊維層の両面にセルロース繊維層が配設された構造のセパレーターのいずれのセパレーターも製造することが可能となる。
【0029】
[10]本発明のセパレーター製造装置は、本発明のセパレーターを製造するためのセパレーター製造装置であって、前記セルロース繊維層からなる長尺シートを搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送されていく前記長尺シートにナノ繊維層を形成する電界紡糸装置とを備えることを特徴とする。
【0030】
このため、本発明のセパレーター製造装置によれば、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0031】
また、本発明のセパレーター製造装置によれば、ナノ繊維層が形成されたセルロース繊維層をそのまま製品とすることができる。このため、長尺シートからセパレーターの製品を取り外す工程を省くことができ、より一層生産性を高くすることが可能となる。
【0032】
[11]本発明のセパレーター製造装置は、本発明のセパレーターを製造するためのセパレーター製造装置であって、長尺シートを搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送されていく前記長尺シートにナノ繊維層を形成する電界紡糸装置と、前記搬送装置により搬送されていく前記長尺シートにセルロース繊維層を形成するセルロース繊維層製造装置とを備えることを特徴とする。
【0033】
このため、本発明のセパレーター製造装置によっても、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0034】
また、電界紡糸装置及びセルロース繊維層製造装置を配置する順序を適宜調整することにより、セルロース繊維層の一方の面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター及びナノ繊維層の両面にセルロース繊維層が配設された構造のセパレーターのいずれのセパレーターも製造することが可能となる。
【0035】
[12]本発明のセパレーター製造装置においては、前記セルロース繊維層製造装置は、メルトブロー紡糸装置であることが好ましい。
【0036】
このような構成とすることにより、セルロース繊維層の厚さ、セルロース繊維の繊維長、セルロース繊維層の空孔率や空孔サイズを調整することが可能となり、所望の特性を有するセルロース繊維層を形成することが可能となる。平均繊維径の比較的大きなセルロース繊維からなるセルロース繊維層を形成する場合に適している。
【0037】
[13]本発明のセパレーター製造装置においては、前記セルロース繊維層製造装置は、電界紡糸装置であることが好ましい。
【0038】
このような構成とすることによっても、セルロース繊維層の厚さ、セルロース繊維の繊維長、セルロース繊維層の空孔率や空孔サイズを調整することが可能となり、所望の特性を有するセルロース繊維層を形成することが可能となる。平均繊維径の比較的小さなセルロース繊維からなるセルロース繊維層を形成する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態1に係るセパレーター100の断面図である。
【図2】実施形態1に係るセパレーター製造装置1の断面図である。
【図3】実施形態1に係るセパレーターの製造方法によりセパレーター100が製造されていく様子を示す図である。
【図4】実施形態2に係るセパレーター製造装置2の断面図である。
【図5】実施形態3に係るセパレーター102の断面図である。
【図6】実施形態3に係るセパレーター製造装置3の断面図である。
【図7】実施形態3に係るセパレーターの製造方法によりセパレーター102が製造されていく様子を示す図である。
【図8】実施形態4に係るセパレーター製造装置4の断面図である。
【図9】実施形態5に係るセパレーター製造装置5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明のセパレーター、セパレーター製造装置及びセパレーター製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0041】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るセパレーターの構成
まず、実施形態1に係るセパレーター100の構成を説明する。
図1は、実施形態1に係るセパレーター100の断面図である。
【0042】
実施形態1に係るセパレーター100は、図1に示すように、1つのセルロース繊維層110と、2つのナノ繊維層120,130とを備え、セルロース繊維層110の両面にナノ繊維層120,130が配設された構造を有する。
【0043】
セルロース繊維層110は、厚さが1μm〜40μmであり、かつ、平均繊維径0.1μm〜10μmのセルロース繊維からなる。
【0044】
ナノ繊維層120,130は、空孔率が20%〜80%の範囲内にあり、かつ、平均空孔サイズが0.02μm〜2μmの範囲内にある。
【0045】
セパレーター100は、後述する実施形態1に係るセパレーター製造装置1を用いて、実施形態1に係るセパレーターの製造方法により得られたものである。
【0046】
2.実施形態1に係るセパレーター製造装置1の構成
図2は、実施形態に係るセパレーター製造装置1の断面図である。なお、図2においては、ポリマー溶液供給部の図示を省略している。これは、後述する以下の図についても同様である。図3は、実施形態1に係るセパレーターの製造方法によりセパレーター100が製造されていく様子を示す図である。図3(a)〜図3(c)は各工程図である。
【0047】
実施形態1に係るセパレーター製造装置1は、図2に示すように、長尺のセルロース繊維層110からなる長尺シートを搬送する搬送装置10と、搬送装置10により搬送されていくセルロース繊維層110の一方の面にナノ繊維層120(図3(b)参照。)を形成する電界紡糸装置20aと、他方の面にナノ繊維層130(図3(c)参照。)を形成する電界紡糸装置20bとを備える。電界紡糸装置20a及び電界紡糸装置20bはともに、上向き式のノズルを有する上向き式電界紡糸装置である。
【0048】
搬送装置10は、電界紡糸装置20aから電界紡糸装置20bへ向けて基材層となるセルロース繊維層110を搬送するように構成されている。搬送装置10は、電界紡糸装置20aがナノ繊維層120を形成するとき(後述する図3(b)参照。)にはセルロース繊維層110を第1の方向(図2におけるA1の方向)に搬送し、電界紡糸装置20aの高さ位置から電界紡糸装置20bの高さ位置までセルロース繊維層110を第1の方向と略垂直な第2の方向(A2の方向)に搬送し、電界紡糸装置20bがナノ繊維層130を形成するとき(後述する図3(c)参照。)にはセルロース繊維層110を第1の方向と反対となる第3の方向(A3の方向)に搬送する。
【0049】
搬送装置10は、セルロース繊維層110を繰り出す繰り出しローラー11と、セルロース繊維層110を巻き取る巻き取りローラー12と、セルロース繊維層110の張りを調整するテンションローラー13,18と、セルロース繊維層110を搬送する複数の駆動ローラー14と、電界紡糸装置20aからのセルロース繊維層110の搬送方向を上方に向ける第1反転ローラー16aと、第1反転ローラー16aからのセルロース繊維層110の搬送方向を電界紡糸装置20bの方に向ける第2反転ローラー16bとを備える。
【0050】
このうち、繰り出しローラー11、巻き取りローラー12、テンションローラー13,18及び複数の駆動ローラー14は、セルロース繊維層110を搬送する搬送機構(符号を図示せず。)を構成する。複数の駆動ローラー14は、セルロース繊維層110を搬送する駆動装置である。
【0051】
第1反転ローラー16a及び第2反転ローラー16bは、セルロース繊維層110が搬送されていく途中でセルロース繊維層110の一方面の向きと他方面の向きとが反対になるようにセルロース繊維層110を反転させるセルロース繊維層反転機構15を構成する。セルロース繊維層反転機構15は、電界紡糸装置20bの高さ位置に合わせて、電界紡糸装置20aからのセルロース繊維層110を反転させる。
【0052】
電界紡糸装置20a,20bは、筐体21に絶縁部材25を介して取り付けられ、セルロース繊維110における他方の面側に位置するコレクター24と、セルロース繊維層110における一方の面側におけるコレクター24に対向する位置に位置し、図示しないポリマー溶液供給部から供給されるポリマー溶液をセルロース繊維層110に向けて吐出する複数のノズル23を有するノズルユニット22と、コレクター24とノズルユニット22との間に高電圧(例えば10kV〜80kV)を印加する電源装置29と、セルロース繊維層110が搬送されるのを補助する補助ベルト装置26とを備える。
【0053】
電界紡糸装置20a,20bにおけるノズルユニット22は、複数のノズルとして、ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する複数の上向きノズル23を有する。そして、電界紡糸装置20aは、複数の上向きノズル23の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するように構成されている。
複数の上向きノズル23は、例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。複数の上向きノズル23の数は、例えば、36個(縦横同数に配列した場合、6個×6個)〜21904個(縦横同数に配列した場合、148個×148個)である。
また、本発明のセパレーター製造装置には様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルユニットを用いることができるが、ノズルユニット22は、例えば、上面から見たときに一辺が0.5m〜3mの長方形(正方形を含む)に見える大きさ及び形状を有する。
【0054】
コレクター24は、導電性を有する筐体21に絶縁部材を介して取り付けられている。電源装置29の正極は、コレクター24に接続され、電源装置29の負極は、筐体21及びノズルユニット22に接続されている。
【0055】
補助ベルト装置26は、セルロース繊維層110の搬送速度に同期して回転する補助ベルト27と、補助ベルト27の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー28とを有する。5つの補助ベルト用ローラー28のうち1つ又は2つ以上の補助ベルト用ローラーが駆動ローラーであり、残りの補助ベルト用ローラーが従動ローラーである。コレクター24とセルロース繊維層110との間に補助ベルト27が配設されているため、セルロース繊維層110は、正の高電圧が印加されているコレクター24に引き寄せられることなくスムーズに搬送されるようになる。
【0056】
3.実施形態1に係るセパレーターの製造方法
以下、上記のように構成された実施形態1に係るセパレーター製造装置1を用いてセパレーター100を製造する方法(実施形態1に係るセパレーターの製造方法)について説明する。
【0057】
(a)紡糸準備
2台の電界紡糸装置20a,20bのそれぞれにおいてポリマー溶液を準備し、当該ポリマー溶液をノズルユニット22へ供給する。また、長尺のセルロース繊維層110(図3(a)参照。)を搬送装置10にセットし、その後、セルロース繊維層110を繰り出しローラー11から巻き取りローラー12に向けて所定の搬送速度で搬送する。
【0058】
(b)電界紡糸(1)
次に、電界紡糸装置20aにより、搬送されていくセルロース繊維層110の一方の面にナノ繊維層120を形成する(図3(b)参照。)。
【0059】
(c)長尺シート反転
次に、長尺シート反転機構15(反転ローラー16a,16b)により、セルロース繊維層110の一方の面が下側になるようにセルロース繊維層110の一方面の向きと他方の面の向きとを反転させる。
【0060】
d)電界紡糸(2)
次に、電界紡糸装置20bにより、搬送されていくセルロース繊維層110の他方の面にナノ繊維層130を形成する(図3(c)参照。)。これにより、セルロース繊維層110の両面にナノ繊維層120,130が配設された構造のセパレーター100が完成する。
【0061】
以下に、実施形態1に係るセパレーターの製造方法における紡糸条件を例示的に示す。
【0062】
ナノ繊維の原料となるポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサンなどを用いることができる。
【0063】
ポリマー溶液に用いる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THFなどを用いることができる。複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。ポリマー溶液には、導電性向上剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0064】
セルロース繊維の原料となる植物繊維としては、例えば、針葉樹、マニラ麻、ミツマタ、コウゾなどを用いることができる。複数種類の繊維を混合して用いてもよい。
【0065】
搬送速度は、例えば0.2m/分〜100m/分に設定することができる。コレクター24とノズルユニット22との間に印加する電圧は、10kV〜80kVに設定することができ、50kV付近に設定することが好ましい。
【0066】
紡糸区域の温度は、例えば10℃〜40℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば20%〜60%に設定することができる。
【0067】
4.実施形態1に係るセパレーター100の効果
実施形態1に係るセパレーター100によれば、繊維が細く空隙が微細かつ均一であるという特徴を有するナノ繊維層120,130を備えるため、高い絶縁性及び高いデンドライト耐性を有する。また、ナノ繊維層は空隙率が大きいという特徴も有するため、高い電解液保持特性を有し高いイオン伝導性を有する。
【0068】
また、実施形態1に係るセパレーター100によれば、セルロース繊維層110を備えるため、高い機械的強度を有する。
【0069】
その結果、実施形態1に係るセパレーター100は、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターとなる。
【0070】
また、実施形態1に係るセパレーター100によれば、セルロース繊維層110の厚さが40μm以下であるため、薄いセパレーターを製造することが可能となり、電気容量が大きい非水系電池を製造することが可能となる。また、セルロース繊維層110の厚さが1μm以上であるため、機械的強度が低下することもない。
【0071】
また、実施形態1に係るセパレーター100によれば、セルロース繊維層110が、平均繊維径0.1μm以上のセルロース繊維からなるため、セルロース繊維そのものの強度を保ちやすくなり、それほど厚くすることなく十分な機械的強度を有するセルロース繊維層を構成することができる。一方、セルロース繊維層110が、平均繊維径10μm以下のセルロース繊維からなるため、薄いセパレーターを製造することが可能となり、電気容量が大きい非水系電池を製造することが可能となる。
【0072】
また、実施形態1に係るセパレーター100によれば、セルロース繊維同士が絡まる箇所が多くなるため、それほど厚くすることなく十分な機械的強度を有するセパレーターを構成することが可能となる。
【0073】
また、実施形態1に係るセパレーター100によれば、ナノ繊維層120,130の空孔率が20%〜80%の範囲内にあるため、高い電解液保持特性を有し、高いイオン伝導性を得ることが可能となる。また、平均空孔サイズが0.02μm〜2μmの範囲内にあり、デンドライトがセパレーターに侵入し難い空孔サイズであるため、高いデンドライト耐性を有する。
【0074】
また、実施形態1に係るセパレーター100によれば、セルロース繊維層110の両面でデンドライトの成長を阻止することが可能となり、より一層高いデンドライト耐性を有するセパレーターを構成することが可能となる。
【0075】
5.実施形態1に係るセパレーターの製造方法の効果
実施形態1に係るセパレーターの製造方法によれば、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0076】
また、実施形態1に係るセパレーターの製造方法によれば、ナノ繊維層120,130が形成されたセルロース繊維層110をそのまま製品とすることができる。このため、長尺シートからセパレーターの製品を取り外す工程を省くことができ、より一層生産性を高くすることが可能となる。
【0077】
6.実施形態1に係るセパレーター製造装置1の効果
実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0078】
また、実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、ナノ繊維層120,130が形成されたセルロース繊維層110をそのまま製品とすることができる。このため、長尺シートからセパレーターの製品を取り外す工程を省くことができ、より一層生産性を高くすることが可能となる。
【0079】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係るセパレーター製造装置2の断面図である。
【0080】
実施形態2に係るセパレーター製造装置2は、図4に示すように、基本的には実施形態1に係るセパレーター製造装置1と同様の構成を有するが、電界紡糸装置の構成が実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と異なる。すなわち、実施形態2に係るセパレーター製造装置2においては、図4に示すように、搬送されていくセルロース繊維層110の一方の面にナノ繊維層120を形成する電界紡糸装置20aと、他方の面にナノ繊維層130を形成する電界紡糸装置20cとを備える。電界紡糸装置20cは、下向き式のノズルを有する下向き式電界紡糸装置である。
【0081】
実施形態2に係るセパレーター製造装置2においては、図4に示すように、電界紡糸装置20aと、電界紡糸装置20cとがこの順序でセルロース繊維層110の搬送方向に沿って同一直線上になるよう配置されている。
【0082】
電界紡糸装置20cは、支持台35に絶縁部材を介して取り付けられ、セルロース繊維110における一方の面側に位置するコレクター34と、セルロース繊維層110における他方の面側におけるコレクター34に対向する位置に位置する複数の下向きノズル33を有するノズルユニット32と、電源装置29と、セルロース繊維層110が搬送されるのを補助する補助ベルト装置36とを備える。
【0083】
ノズルユニット32は、筐体31に取り付けられ、複数のノズルとして、ポリマー溶液を吐出口から下向きに吐出する複数の下向きノズル33を有する。
【0084】
コレクター34は、導電性を有する支持台35に絶縁部材を介して取り付けられている。電源装置29の正極は、コレクター34に接続され、電源装置29の負極は、筐体35及びノズルユニット32に接続されている。
【0085】
補助ベルト装置36は、セルロース繊維層110の搬送速度に同期して回転する補助ベルト37と、補助ベルト37の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー38とを有する。
【0086】
このように、実施形態2に係るセパレーター製造装置2は、電界紡糸装置の構成が実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と異なるが、実施形態1に係るセパレーター製造装置1と同様に、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0087】
また、実施形態2に係るセパレーター製造装置2によれば、ナノ繊維層120,130が形成されたセルロース繊維層110をそのまま製品とすることができる。このため、長尺シートからセパレーターの製品を取り外す工程を省くことができ、より一層生産性を高くすることが可能となる。
【0088】
また、実施形態2に係るセパレーター製造装置2によれば、セパレーター製造装置の設置高さをそれほど高くすることなく、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0089】
なお、実施形態2に係るセパレーター製造装置2は、電界紡糸装置の構成以外は実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と同様の構成を有するため、実施形態1に係るセパレーター製造装置1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0090】
[実施形態3]
1.実施形態3に係るセパレーター102の構成
実施形態3に係るセパレーター102の構成を説明する。
図5は、実施形態3に係るセパレーター102の断面図である。
【0091】
実施形態3に係るセパレーター102は、図5に示すように、基本的には実施形態1に係るセパレーター100と同様の構成を有するが、セルロース繊維層の構成が実施形態1に係るセパレーター100の場合と異なる。すなわち、実施形態3に係るセパレーター102においては、図5に示すように、後述するセルロース繊維層製造装置40によって製造されたセルロース繊維層112を備える。
【0092】
セパレーター102は、後述する実施形態3に係るセパレーター製造装置3を用いて、実施形態3に係るセパレーター方法により得られたものである。
【0093】
2.実施形態3に係るセパレーター製造装置3の構成
図6は、実施形態3に係るセパレーター製造装置3の断面図である。図7は、実施形態3に係るセパレーターの製造方法によりセパレーター102が製造されていく様子を示す図である。
【0094】
実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、基本的には実施形態1に係るセパレーター製造装置1と同様の構成を有するが、搬送装置の構成及びセルロース繊維層製造装置をさらに備える点で実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と異なる。すなわち、実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、図6に示すように、長尺シートWを搬送する搬送装置60と、電界紡糸装置20a,20bと、セルロース繊維層112を形成するセルロース繊維層製造装置40とを備える。
【0095】
実施形態3に係るセパレーター製造装置3においては、図6に示すように、電界紡糸装置20aと、後述する長尺シート反転機構65aと、セルロース繊維層製造装置40と、後述する長尺シート反転機構65bと、電界紡糸装置20bとがこの順序で長尺シートWの搬送方向に沿って配置されている。
【0096】
搬送装置として、長尺シート搬送装置60を備える。
長尺シート搬送装置60は、長尺シートWを繰り出す繰り出しローラー61と、長尺シートWを巻き取る巻き取りローラー62と、長尺シートWの張りを調整するテンションローラー63,68と、長尺シートWを搬送する複数の駆動ローラー64と、第1反転ローラー66a,66cと、第2反転ローラー66b,66dとを備える。
【0097】
このうち、繰り出しローラー61、巻き取りローラー62、テンションローラー63,68及び複数の駆動ローラー64は、長尺シートWを搬送する搬送機構60を構成する。複数の駆動ローラー64は、長尺シートWを搬送する駆動装置である。
【0098】
第1反転ローラー66a及び第2反転ローラー66bは、長尺シートWが搬送されていく途中で長尺シートWの一方面の向きと他方面の向きとが反対になるように長尺シートWを反転させる長尺シート反転機構65aを構成する。また、第1反転ローラー66c及び第2反転ローラー66dは、長尺シートWが搬送されていく途中で長尺シートWの一方面の向きと他方面の向きとが反対になるように長尺シートWを反転させる長尺シート反転機構65bを構成する。
【0099】
電界紡糸装置20a,20bは、実施形態1で用いた電界紡糸装置20a,20bと同様の構成を有する。
【0100】
セルロース繊維層製造装置40は、図6に示すように、長尺シート搬送装置60により搬送されていく長尺シートWにセルロース繊維層112を形成する。
セルロース繊維層製造装置40は、図示しないセルロース溶液供給部から供給されるセルロース溶液を長尺シートWに向けて吐出する複数の下向きノズル43を有するノズルユニット42と、セルロース溶液に向けて高温気流を噴射する高温気流供給部44と、高温気流吸引装置47とを備える。
【0101】
ノズルユニット42は、筐体21に取り付けられ、複数のノズルとして、セルロース溶液を吐出口から下向きに吐出する複数の下向きノズル43と、セルロース溶液吐出方向に沿った方向に向けて後述する高温気流供給部44から供給された高温気流を流す高温気流経路(図示せず。)とを有する。複数の下向きノズル43は例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。ノズルユニット42は、様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルユニットを用いることができる。
【0102】
高温気流供給部44は、吸入ポンプ45と、ヒーター46とを有する。
高温気流供給部44は、吸入ポンプ84により外部から取り入れた空気をヒーター46によって加熱することにより、高温気流を形成する。当該高温気流は、ノズルユニット42における高温気流経路(図示せず。)に導かれる。ヒーター46は、高温気流を120℃〜500℃の範囲内にある所定の温度になるように出力を調節することができる。
【0103】
高温気流吸引装置47は、ノズルユニット42から見て長尺シートWの裏面側に配置され、網状部材48と、高温気流吸引部50と、排出ポンプ51とを有する。
高温気流経路(図示せず。)から流された高温気流は、気流通過用の多数の孔が形成されている網状部材44を通って高温気流吸引部50により吸引され、排出ポンプ51により外部に排出される。
【0104】
3.実施形態3に係るセパレーターの製造方法
以下、上記のように構成された実施形態3に係るセパレーター製造装置3を用いてセパレーターを製造する方法(実施形態3に係るセパレーター製造方法)について説明する。
【0105】
図7は、実施形態3に係るセパレーターの製造方法によりセパレーター102が製造されていく様子を示す図である。図7(a)〜図7(e)は各工程図である。
【0106】
(a)紡糸準備
1台のセルロース繊維層製造装置40にセルロース溶液を準備し、当該セルロース溶液をノズルユニット42へ供給する。また、2台の電界紡糸装置20a,20bのそれぞれにおいてポリマー溶液を準備し、当該ポリマー溶液をそれぞれのノズルユニット22へ供給する。また、長尺シートWを長尺シート搬送装置60にセットし、その後、長尺シートWを繰り出しローラー61から巻き取りローラー62に向けて所定の搬送速度で搬送する(図7(a)参照。)。セルロース溶液は、セルロース繊維層112の材料となるセルロースを溶融したもの、あるいは溶媒で溶解したものである。
【0107】
(b)電界紡糸(1)
次に、長尺シート110を搬送しながら、電界紡糸装置20aによって長尺シートWの一方面にナノ繊維層120を形成する(図7(b)参照。)。
【0108】
(c)長尺シート反転(1)
次に、長尺シート反転機構65a(反転ローラー66a,66b)により、一方面が上側になるように長尺シートWの一方面の向きと他方面の向きとを反転させる。
【0109】
(d)セルロース繊維層製造
次に、ナノ繊維層120が形成された長尺シートWを搬送しながら、セルロース繊維製造装置40によって長尺シートWの一方の面にセルロース繊維層112を形成する(図7(c)参照。)。これにより、長尺シートWの一方面にナノ繊維層120及びナノ繊維層130がこの順で積層される。
【0110】
(c)長尺シート反転(2)
次に、長尺シート反転機構65b(反転ローラー66c,66d)により、一方面が下側になるように長尺シートWの一方面の向きと他方面の向きとを反転させる。
【0111】
(e)電界紡糸(2)
次に、ナノ繊維層120及びセルロース繊維層112が積層された長尺シートWを搬送しながら、電界紡糸装置20bによって長尺シートWの一方面にナノ繊維層130を形成する(図7(d)参照。)。これにより、長尺シートWの一方面にナノ繊維層120,セルロース繊維層112及びナノ繊維層130がこの順で積層された積層シートが製造される。その後、巻き取りローラー12より積層シートが巻き取られる。
【0112】
(f)セパレーターと長尺シートとの分離
その後、積層シートを繰り出しながらセパレーターと長尺シートとを分離してセパレーター102を製造する(図5(e)参照。)。
以上の方法により、セパレーター102を製造することができる。
【0113】
長尺シートとしては、各種材料からなる不織布、織物、編物、フィルム、紙などを用いることができる。長尺シートの厚さは、例えば5μm〜500μmのものを用いることができる。長尺シートの長さは、例えば10m〜10kmのものを用いることができる。
【0114】
4.実施形態3に係るセパレーター製造装置3の効果
実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、搬送装置の構成及びセルロース繊維層製造装置を更に備える点が実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と異なるが、実施形態1に係るセパレーター製造装置1と同様に、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0115】
また、実施形態3に係るセパレーター製造装置3によれば、セルロース繊維層の厚さ、セルロース繊維の繊維長、セルロース繊維層の空孔率や空孔サイズを調整することが可能となり、所望の特性を有するセルロース繊維層を形成することが可能となる。平均繊維径の比較的大きなセルロース繊維からなるセルロース繊維層を形成する場合に適している。
【0116】
なお、実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、搬送装置の構成及びセルロース繊維層製造装置を更に備える点以外は実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と同様の構成を有するため、実施形態1に係るセパレーター製造装置1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0117】
本発明においては、電界紡糸装置及びセルロース繊維層製造装置を配置する順序を実施形態3に係るセパレーター製造装置3のものから適宜変更することにより、セルロース繊維層の一方の面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター及びナノ繊維層の両面にセルロース繊維層が配設された構造のセパレーターのいずれのセパレーターも製造することが可能となる。
【0118】
[実施形態4]
図8は実施形態4に係るセパレーター製造装置4の断面図である。
【0119】
実施形態4に係るセパレーター製造装置4は、基本的には実施形態3に係るセパレーター製造装置3と同様の構成を有するが、電界紡糸装置の構成が実施形態3に係るセパレーター製造装置3の場合と異なる。すなわち、実施形態4に係るセパレーター製造装置4においては、図8に示すように、搬送されていく長尺シートWにナノ繊維層120を形成する下向き式電界紡糸装置20dと、搬送されていく長尺シートWにナノ繊維層130を形成する下向き式電界紡糸装置20cとを備える。
【0120】
実施形態4に係るセパレーター製造装置4においては、図8に示すように、電界紡糸装置20dと、セルロース繊維層製造装置40と、電界紡糸装置20cとがこの順序で長尺シートWの搬送方向に沿って同一直線上になるよう配置されている。
【0121】
このように、実施形態4に係るセパレーター製造装置4は、電界紡糸装置の構成が実施形態3に係るセパレーター製造装置3の場合と異なるが、実施形態3に係るセパレーター製造装置3と同様に、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0122】
また、実施形態4に係るセパレーター製造装置4によれば、電界紡糸装置及びセルロース繊維層製造装置を配置する順序を適宜調整することにより、セルロース繊維層の一方の面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター及びナノ繊維層の両面にセルロース繊維層が配設された構造のセパレーターのいずれのセパレーターも製造することが可能となる。
【0123】
また、実施形態4に係るセパレーター製造装置4によれば、セパレーター製造装置の設置高さをそれほど高くすることなく、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0124】
なお、実施形態4に係るセパレーター製造装置4は、電界紡糸装置の構成以外は実施形態3に係るセパレーター製造装置3の場合と同様の構成を有するため、実施形態3に係るセパレーター製造装置3が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0125】
[実施形態5]
図9は実施形態5に係るセパレーター製造装置5の断面図である。
【0126】
実施形態5に係るセパレーター製造装置5は、基本的には実施形態4に係るセパレーター製造装置4と同様の構成を有するが、セルロース繊維層製造装置の構成が実施形態4に係るセパレーター製造装置4の場合と異なる。すなわち、実施形態5に係るセパレーター製造装置5においては、図9に示すように、セルロース繊維層製造装置として、電界紡糸装置20eを備える。電界紡糸装置20eは上向き式のノズルを有する上向き式電界紡糸装置である。
【0127】
このように、実施形態5に係るセパレーター製造装置5は、セルロース繊維製造装置の構成が実施形態4に係るセパレーター製造装置4の場合と異なるが、実施形態4に係るセパレーター製造装置4と同様に、高い機械的強度、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有する本発明のセパレーターを連続して高い生産性で製造することが可能となる。
【0128】
また、実施形態5に係るセパレーター製造装置5によれば、電界紡糸装置及びセルロース繊維層製造装置を配置する順序を適宜調整することにより、セルロース繊維層の一方の面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造のセパレーター及びナノ繊維層の両面にセルロース繊維層が配設された構造のセパレーターのいずれのセパレーターも製造することが可能となる。
【0129】
また、実施形態5に係るセパレーター製造装置5によれば、セルロース繊維層の厚さ、セルロース繊維の繊維長、セルロース繊維層の空孔率や空孔サイズを調整することが可能となり、所望の特性を有するセルロース繊維層を形成することが可能となる。平均繊維径の比較的小さなセルロース繊維からなるセルロース繊維層を形成する場合に適している。
【0130】
また、実施形態5に係るセパレーター製造装置5によれば、セパレーター製造装置の設置高さをそれほど高くすることなく、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層が配設された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0131】
なお、実施形態5に係るセパレーター製造装置5は、セルロース繊維層製造装置の構成以外は実施形態4に係るセパレーター製造装置4の場合と同様の構成を有するため、実施形態4に係るセパレーター製造装置4が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0132】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0133】
(1)上記各実施形態においては、ナノ繊維層形成装置として2台の電界紡糸装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。ナノ繊維層形成装置として例えば1台又は3台以上の電界紡糸装置を用いてもよい。
【0134】
(2)実施形態3〜5においては、セルロース繊維層製造装置として1台のセルロース繊維層製造装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2台以上のセルロース繊維層製造装置を用いてもよい。また、セルロース繊維層製造装置としてメルトブロー紡糸装置又は電界紡糸装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スパンボンド紡糸装置、ニードルパンチ紡糸装置その他の紡糸装置を用いてもよい
【0135】
(3)上記各実施形態においては、セルロース繊維層の両面にナノ繊維層を配設した構造のセパレーターを製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、セルロース繊維層の片面にナノ繊維層を配設したセパレーターを製造してもよいし、ナノ繊維層の両面にセルロース繊維層を配設したセパレーターを製造してもよい。また、セルロース繊維層とナノ繊維層とがそれぞれ2層以上交互に積層された構造のセパレーターを製造してもよい。
【0136】
(4)上記各実施形態においては、電源装置29の正極がコレクター24に接続され、電源装置29の負極がノズルユニット22に接続されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電源装置の正極がノズルに接続され、電源装置の負極がコレクターに接続されていてもよい。
【0137】
1,2,3,4,5…セパレーター製造装置、10…搬送装置、11,61…繰り出しローラー、12,62…巻き取りローラー、13,18,63,68…テンションローラー、14,64…駆動ローラー、15…セルロース繊維層反転機構、16a,66a,66c…第1反転ローラー、16b,66b,66d…第2反転ローラー、20a,20b,20e…(上向き式)電界紡糸装置、20c、20d…(下向き式)電界紡糸装置、21,31…筐体、22,32…ノズルユニット、23,33…ノズル、24,34…コレクター、25…絶縁部材、26,36…補助ベルト装置、27,37…補助ベルト、28,38…補助ベルト用ローラー、29…電源装置、35…支持台、40…セルロース繊維層製造装置、41…筐体、42…(セルロース繊維層製造装置の)ノズルユニット、43…(セルロース繊維層製造装置の)ノズル、44…高温気流供給部、45…吸入ポンプ、46…ヒーター、47…高温気流吸引装置、48…網状部材、50…高温気流吸引部、51…排出ポンプ、60…長尺シート搬送装置、65a,65b…長尺シート反転機構、100,102…セパレーター、110,112…セルロース繊維層、120,130…ナノ繊維層、W…長尺シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセルロース繊維層と、
少なくとも1つのナノ繊維層とを備えることを特徴とするセパレーター。
【請求項2】
請求項1に記載のセパレーターにおいて、
前記セルロース繊維層は、厚さが1μm〜40μmであり、かつ、平均繊維径0.1μm〜10μmのセルロース繊維からなることを特徴とするセパレーター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセパレーターにおいて、
前記セルロース繊維層は、平均繊維長2.0mm以上のセルロース繊維からなることを特徴とするセパレーター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記ナノ繊維層は、空孔率が20%〜80%の範囲内にあり、かつ、平均空孔サイズが0.02μm〜2μmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記セパレーターは、前記セルロース繊維層の両面に前記ナノ繊維層が配設された構造を有することを特徴とするセパレーター。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記セパレーターは、前記ナノ繊維層の両面に前記セルロース繊維層が配設された構造を有することを特徴とするセパレーター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のセパレーターを製造するためのセパレーターの製造方法であって、
前記セルロース繊維層からなる長尺シートを準備する工程と、
搬送されていく前記長尺シートにおける一方の面に前記ナノ繊維層を形成する工程とを含むことを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のセパレーターの製造方法において、
搬送されていく前記長尺シートにおける他方の面に前記ナノ繊維層を形成する工程をさらに含むことを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のセパレーターを製造するためのセパレーターの製造方法であって、
搬送されていく長尺シートにおける一方の面に、前記ナノ繊維層と、前記セルロース繊維層を順次形成することによりセパレーターを製造することを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のセパレーターを製造するためのセパレーター製造装置であって、
前記セルロース繊維層からなる長尺シートを搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送されていく前記長尺シートにナノ繊維層を形成する電界紡糸装置とを備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載のセパレーターを製造するためのセパレーター製造装置であって、
長尺シートを搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送されていく前記長尺シートにナノ繊維層を形成する電界紡糸装置と、
前記搬送装置により搬送されていく前記長尺シートにセルロース繊維層を形成するセルロース繊維層製造装置とを備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載のセパレーター製造装置において、
前記セルロース繊維層製造装置は、メルトブロー紡糸装置であることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項13】
請求項11に記載のセパレーター製造装置において、
前記セルロース繊維層製造装置は、電界紡糸装置であることを特徴とするセパレーター製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−199034(P2012−199034A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61736(P2011−61736)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】