説明

セメントクリンカの製造方法

【課題】セメント製造の中間生成物であるクリンカを焼成するにあたり、可燃物を補助燃料として使用する比率が増大しても、クリンカの焼成に必要な所望温度の確保が可能な技術を提供すること。
【解決手段】セメントの製造設備Aに含まれるロータリーキルン7により原料を焼成してセメントクリンカを製造する方法において、ロータリーキルン7には、原料の流れ方向下流側の部位であって原料を焼くバーナ13が設置される。このバーナ13が設置された窯前部7aから、発熱量2000〜5000kcal/kgで粒径が5mm以下の可燃物を投入するとともに、前記バーナに供給される燃焼用空気を一次空気とし、バーナで焼成されたセメントクリンカを冷却した後の冷却後空気を二次空気とし、当該二次空気の温度を700〜1000℃の範囲に調整してロータリーキルンに導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントクリンカの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント工場で製造されるセメントは、石灰石,粘土,けい石,酸化鉄等を適切な比率で混ぜ合わせ、所定の化学成分となるように調合し、調合された原料を焼成して製造される。そして、最終的な商品である粉末状のセメントにするときに「せっこう」、その他混合材が加えられる。粉砕前であって、せっこうが加えられる前の状態を「セメントクリンカ」あるいは「クリンカ」と呼称する。
【0003】
セメントクリンカの生成には高温での焼成を必要とするため、セメント製造用の燃焼用燃料のほとんどは、セメントクリンカを焼成することで消費される。そして、通常、当該燃料の大半は、石炭を中心とする化石燃料であり、一部は、タイヤや廃プラスチックなどの可燃性のある産業廃棄物等が代替燃料として使用されている。
【0004】
ところで、地球環境保全の観点から、燃焼可能な廃棄物を利用した燃料の利用比率を高めることに対する期待は一層高まっている。
しかし、燃焼可能な廃棄物であっても、これを構成する素材は様々であり、発熱量が異なるため、廃棄物の使用比率を単に増大しても、前記原料を反応(焼結)させるために必要なカロリーを得られず、セメントの製造設備に含まれる回転窯としてのロータリーキルンに投入される原料の最高温度が低下してしまう虞がある。このため、廃棄物を利用した燃料の量や種類が制限される。
【0005】
なお、セメント焼成用の技術として廃棄物を利用したものとして次の文献を例示できる。
【特許文献1】特開昭58−92718号公報
【特許文献2】特開平3−98700号公報
【特許文献3】特開2000−130742号公報
【特許文献4】特開2001−334296号公報
【特許文献5】特開2002−348154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みて為されたものであり、その解決しようとする課題は、セメントクリンカの製造時に使用される燃焼用燃料の一つである廃棄物の使用比率を増大しても、セメントクリンカを焼成するために必要な所望温度の確保が可能な技術を提供することにある。
【0007】
前記した課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明セメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカの生成で、燃料として使用する廃棄物の燃焼速度を高めることを主要な特徴とする。
以下詳しく述べる。
【0009】
セメントの製造は、セメント工場に原料や燃料を受け入れてから、「原料粉砕工程」→「焼成工程」→「仕上げ工程」と三段階の工程を経て行われる。
「原料粉砕工程」は、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料などを適切な比率で混ぜ合わせ、できあがったセメントが所定の化学成分となるよう調合する。調合した原料は「原料粉砕機」で細かく粉砕する。
【0010】
「焼成工程」は、原料粉砕工程で得られた粉体原料を所定の温度で焼成してセメントクリンカにする工程をいう。この工程では単なる混合物であった粉体原料が高温になることで化学変化を生じさせ、セメントとして必要な水硬性をもった化合物に変化させる。焼成工程は、セメント製造の中心的な工程であり、この工程で既述したロータリーキルンを用いる。一般に焼成効率を向上させるため、原料を直接ロータリーキルンに送り込むのではなく、予熱装置であるプレヒータを通過させてから送り込む。プレヒータは、ロータリーキルンのうち、原料の流れ方向上流側の部位である窯尻部に設置される。
【0011】
また、プレヒータの熱源は、ロータリーキルンで発生した排気を使用することが可能である。プレヒータのエアフローとしての上流部には排気風車が設置されており、当該風車の回転によってロータリーキルンの排気がプレヒータ側に流れるように構成されている。
【0012】
「仕上げ工程」は、できあがったセメントクリンカを粉砕して最終的な商品である粉末状のセメントにする工程である。
本発明は、セメントの製造設備に含まれる回転窯としてのロータリーキルンにより原料を焼成してセメントクリンカを製造する方法において、前記ロータリーキルンは、前記原料の流れ方向下流側の部位であってバーナが設置される窯前部を有し、この窯前部から、発熱量2000〜5000kcal/kgで粒径が5mm以下の可燃物を、セメント燃焼用の主たる燃料に対する補助燃料として投入することを特徴とする。
【0013】
「補助燃料」には広範囲のものを使用できるが、汚泥・木材・稲わら・もみがら・草木から選ばれる一つ以上を含むバイオマス起源の可燃物が利用可能である。補助燃料として各種廃棄物を用いることができるが、廃棄物以外の他のものを混合してもよい。
【0014】
乾燥状態にすることにより、その発熱量は2000〜5000kcal/kgの範囲とすることができる。発熱量が当該範囲にあれば、セメントクリンカの製造時に使用される燃焼用燃料の一つである廃棄物の使用比率が増大しても、原料を焼くために必要とされる温度(1450℃以上)に到達し易くなる。
【0015】
なお、一般に汚泥のうち特に下水汚泥は含水率が高い。このため、下水汚泥を燃焼するには大量の熱量を必要とする。けれども下水汚泥であっても乾燥していれば、その発熱量は2000〜5000kcal/kgの範囲となる。乾燥は、例えば水分を5〜20パーセント程度含む状態とする。
【0016】
なお、このような可燃物は、粒径を5mm以下に粉砕する。粒径が小さければ、細分化によって表面積が増加し、燃焼時に酸素と反応し易くなり、燃焼速度を高められるからである。この粒径はなるべく小さいことが好ましく、0.5μm〜500μmの範囲がより好ましく、さらに好ましくは0.5μm〜100μmの範囲である。
【0017】
また、本発明は、前記バーナに供給される燃焼用空気を一次空気とし、焼成されたセメントクリンカを冷却した後の冷却後空気を二次空気とし、当該二次空気の温度を700〜1000℃の範囲に調整してロータリーキルンに導入するようにしてもよい。クリンカの冷却は、クリンカを焼成するロータリーキルンに接して設けられ、かつ二次空気が導入されたクリンカクーラと呼称される冷却装置によって行う。この場合、二次空気の温度が700〜1000℃の範囲にあれば、廃棄物の使用比率が増大しても、原料を焼くために必要とされる温度に到達し易くなる。
【0018】
さらに、本発明では、ロータリーキルンの窯前部から酸素濃度が大気よりも高い燃焼用ガスをロータリーキルンに導入してもよい。
ここで、「燃焼用ガス」とは、バーナに供給される前記一次空気と、クリンカクーラからロータリーキルンに導入される前記二次空気を総称したものである。酸素濃度の高いガスは、一次空気としても、または二次空気としても導入してよい。より好ましくは、一次空気中の酸素濃度を大気よりも0.5〜10%高めるのがよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発熱量2000〜5000kcal/kgでかつ粒径が5mm以下の可燃物を、セメント燃焼用の主たる燃料(以下、主燃料)に対する補助燃料として投入することで、ロータリーキルン内の温度が低下しないようにすることができる。
【0020】
このように、可燃物を代替燃料として用いることができるので、セメント製造における廃棄物の使用比率を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明、セメントクリンカの製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るセメント製造設備1の概要を示す図であり、図2はその要部拡大図である。
【0022】
図1において、セメント製造設備1は、石灰石、粘土、珪石、鉄原料よりなる原料を貯蔵する原料貯蔵庫1、原料を粉砕混合する原料ミル2、電気集塵機3、粘土ドライヤ4、原料混合貯蔵サイロ5(これら1〜5は原料粉砕工程に属する)、プレヒータ6、ロータリーキルン7、クリンカクーラ8(これら6〜8は焼成工程に属する)、クリンカサイロ9、仕上ミル10、セメントサイロ11等(これら9〜11等は仕上げ工程に属する)を備えて構成されている。
【0023】
図1で示す3つの矢印は、それぞれ実線矢印が原料からセメントの流れを示し、一点鎖線矢印が燃料の流れを示し、波線矢印は排ガスの流れを示す。
原料(石灰石、粘土、珪石、鉄原料)は、必要に応じて粘土ドライヤ4を経て、原料ミル2に導入される。これらの原料は、原料ミル2にて粉砕されて原料混合貯蔵サイロ5に導入され、その後、プレヒータ6にて予熱された後、セメント焼成用のロータリーキルン7に投入される。そして、ロータリーキルン7で原料は燃焼されて、セメントクリンカとなり、クリンカクーラ8で冷却された後、クリンカサイロ9に導入される。
【0024】
プレヒータ6は、複数のサイクロンを多段に接続した多段サイクロン式の熱交換器であり、窯尻部に設置される。窯尻部とは、周知のごとくロータリーキルンのうち、原料の流れ方向上流側の部位である。プレヒータ6では、粉砕された原料を、ロータリーキルン7の排気を利用して、所定温度(800〜900℃)まで予熱する。当該排気の循環には排気風車14が利用される。ロータリーキルン7は、若干下流側へ下方傾斜した横向き円筒状のキルンシェル(図示せず)を有し、このキルンシェルをその中心軸線回りに回転させながら、微粉石炭,石油コークスその他の燃料をバーナ13で燃焼させ原料を更に加熱する。このようにすることで、プレヒータ6からの原料を1450℃以上に昇温して焼成反応させ、これによりセメントクリンカを生成する。その後、ロータリーキルン7の窯前部7aに連結されたクリンカクーラ8によりセメントクリンカは冷却される。なお、周知のごとく窯前部とは、ロータリーキルン7のうち、原料の流れ方向下流側の部位であって、原料を焼くバーナ13が設置される部位をいう。
【0025】
前記セメントクリンカは、クリンカサイロ9に蓄えられた後、仕上ミル10へと送られる。仕上ミル10は、焼成工程で生産されたセメントクリンカに石膏を混ぜながらセメントクリンカを微粉砕してセメントを排出する。そして、仕上ミル10から排出されたセメントは、セメントサイロ11に導入された後、バラ積みトラックやバラ積み貨車又は袋詰めにされて供給先へと送られる。
【0026】
ところでバーナ13の燃料として、石炭や石油コークスを先に挙げたが、周知のごとく可燃性の廃棄物(可燃物)も利用される。ここでは、石炭や石油コークスを主燃料というのに対し、当該廃棄物を補助燃料ということにする。本実施形態では、可燃性の廃棄物として、主に汚泥(下水汚泥)を使用するが、その他、木材・稲わら・もみがら・草木を混合し、またはそれらの一つを使用することができる。次にその適用方法を説明する。
【0027】
この方法は、前記選ばれた汚泥・木材・稲わら・もみがら・草木のうちの一つ以上を含むバイオマス起源の廃棄物をロータリーキルン7の窯前部7aに、セメント燃焼用の補助燃料として投入することで、セメントクリンカを焼成するものである。汚泥・木材・稲わら・もみがらは、それらの発熱量が2000〜5000kcal/kgとなるように乾燥されている。発熱量が2000〜5000kcal/kgの範囲にあれば、これら廃棄物の使用比率が増大しても、原料を焼くために必要とされる所望温度に到達し易くなる。
【0028】
また投入時の粒径が5mm以下、好適には0.5μm〜500μmとなるように加工されている。粒径が5mm以下の場合、同じ体積であるならば、細分化した方が廃棄物の表面積が増加し、燃焼時に酸素と反応し易くなり、可燃性廃棄物の燃焼速度を高められるからである。
【0029】
また、酸素濃度が大気よりも高い燃焼用ガスを外部から窯前部7aに導入することで、廃棄物の燃焼速度を高められるようにしている。当該酸素濃度の高い燃焼用ガスは排気風車14の回転力によって上流側に向かう。なお、専用の風車によってロータリーキルン内に高濃度酸素を含む前記燃焼用ガスを導入してもよい。
【0030】
さらに図2に示すように、バーナ13に導入される燃焼用空気を一次空気Aとし(図2白矢印参照)、バーナ13で焼成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ8で冷却した後の冷却後空気を二次空気Bとする。クリンカーは1450℃以上の温度で焼成されるので、クリンカクーラ8内の空気(二次空気B)を所定時間にわたり冷却に用い、この二次空気Bの温度を700〜1000℃の範囲に調整する。その後、この二次空気Bをロータリーキルン7に導入する。この二次空気の導入は、クリンカクーラ8に設置された風車からクリンカクーラ8内の空気をロータリーキルン7の窯前部に送り込むことにより、また、プレヒータ6に設置されている排気風車14によって後方(原料の流れ方向下流側)から吸引することによって行う。この場合、これらの風車の両方を利用することも可能である。
【0031】
二次空気温度を高める方策としては、例えばクリンカクーラ内のクリンカ層厚を制御する方法、クリンカクーラ内のクリンカの移動速度を制御する方法、バーナのポジションをロータリーキルン内に入れ、二次空気の熱交換を良くする方法などがある。またさらにはクリンカクーラに可燃物を投入して温度を上げ、二次空気の酸素濃度の低下を純酸素を加えるなどして調整する方法がある。
【0032】
二次空気の温度が700〜1000℃の範囲にあれば、廃棄物の使用比率が増大しても、原料を焼くために必要とされる所望温度に到達し易くなる。また、一次空気をバーナに供給する前に予熱しておくことも当該所望温度に到達し易くする上で有効である。一次空気の予熱方法として、例えばバーナ13に一次空気の供給を行う前にクリンカクーラ8内に設置した図示しないパイプを介して熱交換するなどの方法がある。
【0033】
なお、一般に汚泥(下水汚泥)は含水率が高い。このため、汚泥を燃焼させるには大量の熱量を必要とする。しかし、汚泥であっても乾燥した状態にしてあれば、その発熱量は2000〜5000kcal/kgの範囲となる。
【0034】
また本実施形態によれば、下水汚泥等を補助燃料として使用する場合、原料を焼くために用いる燃料のうち、補助燃料を0.5〜80%の範囲とすることが可能である。0.5%未満では現実的に汚泥供給量の制御が難しく、80%を超えると、キルン焼成のために十分な温度が得られない。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、下水汚泥等を補助燃料として使用しても、原料を焼くために必要とされる高温な所望温度に容易に到達し易くなる。この場合、発熱量2000〜5000kcal/kgでかつ粒径が5mm以下の可燃物を、セメント燃焼用の主燃料に対する補助燃料として投入するので、当該廃棄物を主燃料に対する補助燃料として用いてもロータリーキルン内の温度が低下しない。よって廃棄物の使用比率をより増大することができる。
【0036】
また、酸素濃度が大気よりも高い燃焼用ガスを導入することで燃焼速度を高めることができるばかりか、二次空気の温度を700〜1000℃にしてロータリーキルンに導入することで、さらに燃焼速度を高められる。よって、廃棄物の使用比率を大きくすることが可能である。
【0037】
さらに廃棄物を乾燥させておきその粒径が5mm以下であって、かつ窯前からロータリーキルンに投入すると、補助燃料がロータリーキルン内で完全燃焼し易い(燃え残りにくい)ことが発明者の実験によってわかっている。燃え滓がなければ、ロータリーキルン内で原料にそれが混在しないようになるため、良質なセメントクリンカを製造できる。
【実施例1】
【0038】
以下、本発明を実施例を挙げて説明する。
下水処理場で発生した下水汚泥をセメント工場の余熱により乾燥し、さらにボールミルにより10分間粉砕して補助燃料を得た。この補助燃料の発熱量を事前に確認したところ、3800kcal/kgであった。また、篩い分けにより粒径を測定したところ、30μmであった。
【0039】
次に、前記の補助燃料を、セメント製造用のロータリーキルンの、窯前に設置したバーナに主燃料(微粉炭)とともに空気輸送により供給した。供給量は、主燃料のカロリー比10%(内割)とした。ロータリーキルン窯前の焼点温度を測定したところ、微粉炭のみを用いた場合で1420℃、補助燃料を10%用いた場合で1410℃であり、セメントクリンカの焼成には特に支障のない温度であった。
【実施例2】
【0040】
実施例1で用いた補助燃料を用い、その供給量を主燃料のカロリー比10%(内割)から徐々に増加して実施例1と同様の試験を行った。その結果、カロリー比20%の近傍でロータリーキルンの焼点温度の低下傾向が認められた。そこで、通常の燃焼空気とは別に酸素を供給した。酸素の供給量は二次空気の5体積%とした。その結果、焼点温度は1425℃となり、実施例1と同様にセメントクリンカの焼成に支障ない温度に保つことができた。
【実施例3】
【0041】
実施例1で用いたものと同じ補助燃料を用い、供給量を主燃料のカロリー比(内割)の10%として窯の焼点温度が1410℃近傍で安定していることを確認した後、実施例2と同様に補助燃料のカロリー比を徐々に増加する試験を行った。実施例2と同様に、カロリー比20%の近傍でロータリーキルンの焼点温度の低下が確認された。また二次空気温度も低下した。そこで、クリンカクーラのクリンカ層圧を高めることにより、二次空気温度を30℃高くし、725℃とするよう、クリンカクーラの運転を制御した。その結果、ロータリーキルン窯前の焼点温度は1423℃となり、セメントクリンカの焼成に支障ない温度に保つことができた。
【0042】
(比較例)
実施例1で用いた下水汚泥を同様の方法により乾燥し、粉砕して補助燃料を得た。ただし、この場合、乾燥を十分に行わなかったため、この補助燃料の発熱量は1630kcal/kgで、粒径は8mmであった。
前記の発熱量1630kcal/kgの補助燃料を、ロータリーキルン窯前に設置されたバーナに供給した。供給量は主燃料のカロリー比で20%(内割)とした。ロータリーキルン窯前の焼点温度を測定したところ、1200℃となった。これはセメントクリンカ焼成には不十分な温度であった。
そこで、実施例2と同様に酸素を二次空気に対して5体積%供給したが、焼点温度は1250℃まで回復したにとどまった。さらに、二次空気温度を実施例3と同様の方法により700℃としたが、焼点温度への影響はなかった。いずれの場合も、焼点温度はセメントクリンカの焼成には不十分な温度であった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】セメントの製造設備の説明図である。
【図2】図1の要部拡大図であって、ロータリーキルンを示す。
【符号の説明】
【0044】
I セメントの製造設備
1 原料貯蔵庫
2 原料ミル
3 電気集塵機
4 粘土ドライヤ
5 原料混合貯蔵サイロ
6 プレヒータ
7 ロータリーキルン
7a 窯前部
8 クリンカクーラ
9 クリンカサイロ
10 仕上ミル
11 セメントサイロ11
13 バーナ
14 排気風車
A 一次空気
B 二次空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントの製造設備に含まれる回転窯としてのロータリーキルンにより原料を焼成してセメントクリンカを製造する方法において、
ロータリーキルンは、原料の流れ方向下流側の部位であってバーナが設置される窯前部を有し、この窯前部から、発熱量2000〜5000kcal/kgで粒径が5mm以下の可燃物を、セメント燃焼用の主たる燃料に対する補助燃料として投入するとともに、前記バーナに供給される燃焼用空気を一次空気とし、バーナで焼成されたセメントクリンカを冷却した後の冷却後空気を二次空気とし、当該二次空気の温度を700〜1000℃の範囲に調整してロータリーキルンに導入することを特徴とするセメントクリンカの製造方法。
【請求項2】
前記一次空気をバーナヘ供給する前に予熱することを特徴とする請求項1に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項3】
前記ロータリーキルンは、前記原料の流れ方向下流側の部位であってバーナが設置される窯前部を有し、この窯前部から、酸素濃度が大気よりも高い燃焼用ガスをさらに導入することを特徴とする請求項1に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項4】
前記補助燃料は、汚泥・木材・稲わら・もみがら・草木から選ばれる一つ以上を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のセメントクリンカの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−179539(P2008−179539A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110994(P2008−110994)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【分割の表示】特願2005−54306(P2005−54306)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】