説明

セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体

【課題】セメント組成物に対して高い分散性能を発現することができるセメント混和剤であり、また、特定の末端構造のポリアルキレン鎖を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を調製して当該単量体に由来する構造をもつポリカルボン酸系共重合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするポリカルボン酸系共重合体であって、該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、下記一般式(1):


(式中、ROは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、100〜300の数である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される単量体由来のものであるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボン酸系共重合体に関する。より詳しくは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に好適に用いることのできるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカルボン酸系共重合体は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に対して減水性能を発揮し、セメント混和剤又はコンクリート混和剤等として広く用いられており、セメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このようなセメント混和剤は、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。このような減水剤の中でもポリカルボン酸系重合体を含むポリカルボン酸系セメント混和剤又はコンクリート混和剤は、従来のナフタレン系等の減水剤に比べて高い減水性能を発揮するため、高性能AE減水剤として多くの実績がある。
【0003】
このようなセメント混和剤に好適なポリカルボン酸系重合体としては、アルケニルエーテルアルキレンオキサイド付加物と、不飽和カルボン酸との共重合体が検討されてきた。具体的には、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコールアルケニルエーテルと不飽和カルボン酸を必須構成単位とする2元共重合体(例えば、特許文献1、2参照。)、(1)ポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(2)ポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(3)(メタ)アクリル酸と、(4)スルホン酸基含有モノマーとの4元共重合体(例えば、特許文献3参照。)、(1)ポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(2)ポリプロピレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(3)不飽和カルボン酸との3元共重合体(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。
【0004】
また炭素数2〜4のアルケニルエーテルのアルキレンオキシド(AO)付加物とメタクリル酸との共重合体(例えば、特許文献5参照。)、メタリルエーテルAO付加物とアクリル酸との共重合体(例えば、特許文献6参照。)、(1)炭素数2〜4のアルケニルエーテルAO付加物(付加モル数n=1〜100)と、(2)炭素数2〜4のアルケニルエーテルAO付加物(付加モル数n=11〜300)と、(3)不飽和モノカルボン酸との3元共重合体、(1)と(3)の共重合体と(2)と(3)の共重合体のブレンド(例えば、特許文献7参照。)、炭素数2〜4アルケニルエーテルAO付加物とマレイン酸との共重合体(A)と、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体と、アルケニル基を有しない非重合性のポリアルキレングリコールと、共重合体(A)とは異なる重合体との4成分を含むセメント混和剤(例えば、特許文献8参照。)が開示されている。
しかしながら、セメント組成物等に用いる場合、種々の性能に優れるとともに、低コストで汎用性のあるものとすることが求められていた。また、分散性能や減水性を向上し、製造現場においてコンクリート等の流動性の保持性を向上させ、コンクリート等の状態がより作業しやすい状態となるようにすることにより、土木・建築構造物等の構築現場における作業効率等をさらに改善したり、コンクリート等の特性を向上したりするための工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−194808号公報
【特許文献2】特開平11−106247号公報
【特許文献3】特開2000−034151号公報
【特許文献4】特開2001−220194号公報
【特許文献5】特開2002−34816号公報
【特許文献6】特開2002−121055号公報
【特許文献7】特開2003−221266号公報
【特許文献8】特表2006−522734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、種々の用途に好適に用いることができ、セメント組成物に対して高い分散性能を発現することができ、コンクリート等の早期強度を高め、コンクリートの粘性を低減することができるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を提供することを目的とし、また、このポリカルボン酸系共重合体に関連して、特定の末端構造のポリアルキレン鎖を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を調製して当該単量体に由来する構造をもつポリカルボン酸系共重合体を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セメント混和剤について種々検討したところ、セメント混和剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体に着目し、この共重合体の構成成分である不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位が、特定の末端構造のポリアルキレン鎖を有する場合に、セメント組成物に対して高い分散性能を発現することができ、コンクリートの早期強度を高め、コンクリートの粘性を低減することができることを見いだし、分散性能と流動性保持性能が共に優れる等の種々の特性を発揮できることを見いだした。特に、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数が大きなもの、すなわち100〜300に特定されたものに対して、セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体として際立って優れた効果を奏することになり、上記課題をみごとに解決することができることに想到したものである。
また、特定の単量体由来の構成単位を有することにより、用途に応じて好適なポリアルキレン鎖長とすることができるという有利な効果を奏することも見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするポリカルボン酸系共重合体であって、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、下記一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、ROは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、100〜300の数である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される単量体由来のものであるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするポリカルボン酸系共重合体を含有するものである。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、このような構成単位を含むことにより、コンクリートの早期強度(具体的には、24時間強度)を向上することができるだけでなく、分散性能、スランプ保持性能等の優れた効果を奏することができる。また、上記セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、セメント及び水を必須成分として含んでなるセメント組成物は、粘性(作業性、例えば、モルタルを練る際の練りやすさやコンクリートの現場でのスコップワーク)と、流動性(流し込んだときの流れやすさ)との両方を発揮することができる。なお、セメント組成物の物性を示す「フロー値」(流動性)と「コンクリートの状態」(粘性)との間の技術的な相関関係は、現時点では少なくとも明らかではないが、例えば、これらの現象を例えて言うと、水あめとヨーグルトとを比較すると、水あめは粘りけがあるためスプーンでかき混ぜようとした場合、相当の力が必要となるが(粘性が高く作業性がわるい)、平らな面に置いた場合は流動して薄く広がる。一方、ヨーグルトをスプーンでかき混ぜようとした場合、容易にかき混ぜることはできるが(粘性が低く作業性がよい)、平らな面に置いても流動して広がっていくことはない。
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、上記一般式(1)由来のものである。このように、メタリル基を有する単量体は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテルのアルキレングリコール鎖長を従来より容易に長くすることができ、後述する種々の用途に用いることができる。
【0012】
上記ROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基であり、炭素数2〜8のオキシアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であることがより好ましい。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の1種又は2種以上が好適であり、中でも、オキシエチレン基が好ましい。2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合は、オキシエチレン基が80モル%以上であることが好ましい。これにより、親水性と疎水性とのバランスを保ち、優れた分散性能を発揮する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位となる。80モル%未満であると、得られるポリカルボン酸系共重合体をセメント混和剤として用いる場合、充分な分散性を発揮しないおそれがある。より好ましくは、85モル%以上であり、更に好ましくは、90モル%以上であり、特に好ましくは、95モル%以上であり、最も好ましくは、100モル%ある。
上記2種以上のオキシアルキレン基を有する場合の組み合わせとしては、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基、オキシブチレン基)、(オキシエチレン基、オキシスチレン基)が好ましい。中でも、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)がより好ましい。
上記2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合は、ブロック状、ランダム状、交互状等のいずれの存在形態でもよい。
【0013】
上記nは、100〜300の数であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。平均付加モル数が上記範囲であると、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、セメント組成物の分散性能を高めることができ、早期強度を充分に高めることができる。上記平均付加モル数nとしては、ある程度大きい方が好ましく、次の順で特定値以上であることが好ましい(数値が大きい方が好ましい)。すなわち、110以上、120以上、135以上、150以上が好ましい。また平均付加モル数としては大きすぎないことも好ましく、次の順で特定値以下であることが好ましい(数値が小さい方が好ましい)。すなわち、280以下、250以下、225以下、200以下が好ましい。この平均付加モル数が小さいほど親水性が低下し、セメント粒子を反発させる効果が低下するので得られる共重合体の分散性能が低下するおそれがあり、−方、300を超えると、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を共重合に用いた場合に、共重合反応性が低下し、種々の用途に好適に用いることができないおそれがある。上記nとして特に好ましくは、100以上300以下の範囲である。特にアルキレンオキシド(RO)がオキシエチレン基である場合、100以上300以下の範囲であることが好ましい。nが2以上である場合、ROは、同一又は異なっていてもよい。
【0014】
上記Rとしては、炭素数1〜20の炭化水素基である。このように、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体のオキシアルキレン基の末端が炭化水素基であることにより、セメント組成物の早期強度とセメント組成物の状態、特にセメント組成物の分離抵抗性を損なうことなく、セメント組成物の粘性を低減できる等の利点がある。上記Rとして具体的には、炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、炭素敷2〜20のアルケニル基又はアルキニル基、炭素数6〜20のフェニル基、アルキル置換フェニル基等の一種又は二種以上が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又はアルキニル基、炭素数6〜10のフェニル基、アルキル置換フェニル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基又はアルキニル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基であり、特に好ましくは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基である。
【0015】
上記Rが、炭素数2〜6のアルケニル基である形態も好ましい。この場合、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系ジエーテル単量体となる。
上記アルケニル基としてより好ましくは、炭素数3〜5のアルケニル基であり、更に好ましくは、炭素数3〜4のアルケニル基であり、特に好ましくは、炭素数4のアルケニル基である。アルケニル基の具体例としては、3−メチル−3−ブテニル基、4−ペンテニル基、3−ペンテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基等の炭素数5のアルケニル基;メタリル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基等の炭素数4のアルケニル基:アリル基等の炭素数3のアルケニル基が好適である。これらの中でもメタリル基、アリル基が特に好ましい。
上記Rとしては、上述の一種又は二種以上が好適であるが、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基を必須とする形態が好ましい。このように、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、上記一般式(1)において、Rが、炭素数1〜6のアルキル基である単量体を必須とする形態もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0016】
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(単量体(i)ともいう。)の具体的としては、(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル類のアルキレングリコール末端を炭化水素基で置換した化合物等が好適である。例えば、メタリルアルコールにアルキレンオキシドを100〜300モル付加し、アルキレンオキシド末端を炭素数1〜20の炭化水素基で置換した化合物を挙げることができ、具体的には、メタリルアルコールポリエチレンオキシド付加物の炭素数1〜20の炭化水素基置換体が好ましい。炭化水素基の好ましい形態は、上述したのと同様である。
【0017】
上記不飽和カルボン酸系単量体(単量体(ii)とも言う。)由来の構成単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、及び、これらの一価金属塩、二価金属塩、第4級アンモニウム塩、有機アミン塩等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;これらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩類等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上に由来するものであることが好ましい。より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸であり、更に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。すなわち、不飽和カルボン酸としては、少なくともアクリル酸、メタクリル酸又はその塩を含むことが好ましい。アクリル酸、メタクリル酸又はその塩由来の構造を含むことにより、得られるポリカルボン酸系共重合体(単に、共重合体とも言う。)は、少量で優れた分散性を発揮することができる。このように、上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位は、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造を必須とするセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0018】
本発明のポリカルボン酸系共重合体は、上記単量体(i)及び(ii)由来の構成単位の他に、その他の単量体(単量体(iii)とも言う。)由来の構成単位が含まれていてもよく、具体的には、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(単量体(i))及び/又は不飽和カルボン酸(単量体(ii))と共重合可能な単量体(共重合性単量体)を含むものでもよい。上記共重合性単量体としては、例えば、上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類及びこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニルエーテル)、ポリエチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル等のビニルエーテル、アリルエーテル類、或いは、3−メチル−3−ブテニルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。特に、共重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500のモル付加物類等が好適である。これらの中でも、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニルエーテル)、ポリエチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル等の(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニルエーテル)等が好適である。
【0019】
上記共重合性単量体(単量体(iii))としては、また、上記一般式(1)において、Rが水素原子である形態であることが好適である。このような化合物としては、(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル類等が好適である。例えば、メタリルアルコールにアルキレンオキシドを1〜300モル付加した化合物を挙げることができ、具体的には、メタリルアルコールポリエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0020】
上記単量体(i)〜(iii)由来の構成単位の含有割合としては、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(単量体(i))由来の構成単位、不飽和カルボン酸(単量体(ii))由来の構成単位及び必要に応じて添加されるその他の単量体(単量体(iii))由来の構成単位の合計100質量%に対して、以下の範囲であることが好ましい。
上記単量体(i)由来の構成単位の含有割合としては、1質量%以上であることが好ましい。含有割合が1質量%未満であると、得られるポリカルボン酸系共重合体をセメント混和剤として用いた場合に、セメントに対する分散性能が低下する傾向がある。より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは45質量%以上である。
【0021】
上記単量体(ii)由来の構成単位の含有割合の上限としては、ナトリウム塩換算で60質量%以下であることが適当である。60質量%を超えると、得られるポリカルボン酸系共重合体をセメント混和剤として用いる場合に分散性能の経時的な低下(スランプロス)が著しくなり、充分な分散性能が発揮できないおそれがある。好ましくは、50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、最も好ましくは25質量%以下である。また、次の順で特定値以下であることが好ましい(数値が小さい方が好ましい)。20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることがこの順により好ましい。また、単量体(ii)の含有割合の下限としては、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。
【0022】
上記単量体(iii)由来の構成単位の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されないが、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。また、次の順で特定値以下であることが好ましい(数値が小さい方が好ましい)、20質量%以下、10質量%以下であることがこの順により好ましい。
【0023】
上記ポリカルボン酸系共重合体(共重合体)における各成分由来の構成単位の含有比率は、例えば、単量体(i)/単量体(ii)/単量体(iii)=1〜99/1〜60/0〜70(質量%)の範囲が好ましい。より好ましくは、単量体(i)/単量体(ii)/単量体(iii)=5〜99/1〜50/0〜60(質量%)であり、更に好ましくは、10〜99/1〜40/0〜50(質量%)であり、特に好ましくは、25〜98/2〜35/0〜40(質量%)でり、最も好ましくは、40〜97/3〜30/0〜30(質量%)であり、最も好ましくは、45〜97/3〜25/0〜30ある。(但し、単量体(i)、単量体(ii)及び単量体(iii)の合計は100質量%である。)。
上記共重合体における各成分由来の構成単位は、特に限定されないが、セメント混和剤に用いられる重合体の製造方法における通常の条件で得られる分布であればよい。具体的には、ブロック状、ランダム状、交互状等のいずれの形態で分布していてもよい。中でも、ラジカル重合により合成する際にはランダム状が好ましく、リビング重合により合成する際にはブロック状が好ましく、特にコスト面からはランダム状、性能面からはブロック状が好ましい。
【0024】
本発明のセメント混和剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体(共重合体)は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするものであれば特に限定されず、任意の製造方法を用いることができるが、例えば、メタリル基を有するハロゲン化物と片末端を炭化水素基で置換した(ポリ)アルキレングリコール(片末端置換(ポリ)アルキレングリコール、又は、片末端が炭化水素基で封鎖された(ポリ)アルキレングリコールともいう。)とを反応させて不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程(工程Aともいう。)を含むものであることが好ましい。このような方法により、所望の単量体(i)を一段階の反応により製造することができるという利点がある。
このように、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であって、該製造方法は、メタリル基を有するハロゲン化物と片末端を炭化水素基で置換した(ポリ)アルキレングリコールとを反応させて不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程を含むものであるポリカルボン酸系共重合体の製造方法もまた、本発明の一つである。
なお、本発明のポリカルボン酸系共重合体においては、上述のようにオキシアルキレン基の平均付加モル数が100〜300に特定されることになるが、上記メタリル基を有するハロゲン化物と片末端を炭化水素基で置換した(ポリ)アルキレングリコールとを反応させる工程において得られる不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体のオキシアルキレン基の平均付加モル数については、特に限定されるものではない。当該製造方法におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数としては、好ましくは1〜300であり、より好ましくは、上述した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と同様に100〜300であり、更に段階的に好ましい範囲も上述したのと同様である。このように、上記ポリカルボン酸系共重合体の製造方法については、用途に応じて好適なポリアルキレン鎖長とすることができるものであって、特定の末端構造のポリアルキレン鎖を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を調製して当該単量体に由来する構造をもつポリカルボン酸系共重合体を製造することができるという点で有利な効果を奏するものである。また上述した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と同様にオキシアルキレン基の平均付加モル数が特定されれば、所望の単量体(i)を一段階の反応により製造することができるという格別の効果を奏することになる。
【0025】
本発明のポリカルボン酸系共重合体の製造方法としては、上記工程Aを含むものであれば特に限定されないが、上記工程Aと、不飽和カルボン酸系単量体と共重合する工程(工程Bともいう。)を含むものであることが好ましい。
上記工程Aとしては、メタリル基を有するハロゲン化物と片末端置換(ポリ)アルキレングリコールとを反応させて不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を生成する工程である。上記工程Aにおける反応温度は、反応に用いる不飽和基含有ハロゲン化物(以下、メタリル基を有するハロゲン化物を不飽和基含有ハロゲン化物ともいう。)及び片末端置換(ポリ)アルキレングリコールによって若干異なり、特にこれを限定するものではないが、40℃〜150℃が好ましい。より好ましくは50℃〜120℃であり、さらに好ましくは55℃〜100℃である。反応時の圧力は、減圧下、常圧、加圧下のいずれでも構わないが、常圧での反応で充分である。
上記工程Aにおいて、反応には触媒としてアルカリ化合物を用いることが好ましい。用いるアルカリ化合物の量は、片末端置換(ポリ)アルキレングリコールに対して0.5当量〜5.0当量が好ましく、より好ましくは0.5当量〜3.0当量であり、さらに好ましくは0.9当量〜2.0当量であり、特に好ましくは、1.0当量〜1.5当量である。また、反応に用いる片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの量は、比較的沸点の低いオキシアルキレン基の付加モル数が少ない片末端置換(ポリ)アルキレングリコール、特にオキシアルキレン基のくり返し(付加モル数)が1〜50、より好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜3である場合、不飽和基含有ハロゲン化物に対して1.2当量〜10当量が好ましく、より好ましくは1.5当量〜7当量であり、さらに好ましくは1.5当量〜5当量である。片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの量が多過ぎると生産性を低下させることとなる。反応器への原料の供給方法としては、初期に一括して仕込んでもよく、逐次投入してもよい。片末端置換アルキレングリコールとアルカリ化合物をまず反応させて中間体を生成させ、その後不飽和基含有ハロゲン化物をフィードし、反応させる方法はその一例である。
また、反応に用いる片末端置換(ポリ)アルキレングリコールのアルキレングリコール付加モル数が比較的多い場合、特に平均付加モル数が5モルを超える場合、片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの沸点が非常に高くなり、蒸留等で除去することが困難となる。したがって、沸点の低い不飽和基含有ハロゲン化物(メタリルハライド等のメタリル基を有するハロゲン化物、以下、メタリルハライドともいう。)を過剰に用いて、反応後に過剰のメタリルハライドを留去することが好ましい。反応に用いるメタリルハライドは片末端置換(ポリ)アルキレングリコールに対して、1.1〜20当量であり、さらに好ましくは1.2〜15当量であり、さらに好ましくは1.5〜10当量であり、特に好ましくは2〜5当量である。
工程Aについて、ハロゲン捕捉剤としてアルカリ化合物を用いることが必要であり、例示として当該反応ではハロゲン捕捉剤として塩基を必要とし、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。
【0026】
上記工程Aにおいて、メタリル基に結合するハロゲン原子としては、特に限定されないが、塩素原子、臭素原子が好ましい。中でも、生成物の着色防止重合工程での重合性の低下抑制のため、塩素原子がより好ましい。
上記不飽和結合を有するハロゲン化物の具体例としては、メタリルクロライド、メタリルブロマイド、メタリルヨーダイド等のメタリルハライドである。
【0027】
上記片末端置換(ポリ)アルキレングリコールとしては、下記一般式(2);
HO−(RO)−R (2)
で表すことができる。式中、ROは炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nが2以上の場合はROはそれぞれ同一もしくは異なってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜300である。Rは炭素数1〜20の炭化水素基である。
片末端置換ポリアルキレングリコールの具体例は、炭素数1から20の炭化水素基を末端に有するポリアルキレングリコールである。末端基Rの好ましい例としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基またはアルキニル基、炭素数6〜20のフェニル基またはアルキル置換フェニル基である。その中でも特に、セメント分散性能、早期強度発現性能の面からは炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基が特に好ましい。
ポリアルキレングリコール部分ROとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。これらの中でもセメント分散性能、セメント組成物の粘度低減効果の面からはオキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合は、オキシエチレン基が80モル%以上であることが好ましい。上記2種以上のオキシアルキレン基の組み合わせとしては、(オキシエチレン基/オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基/オキシブチレン基)、(オキシエチレン基/オキシプロピレン基)が好ましい。なお、2種以上のオキシアルキレン基が組み合わされる場合、それらは、ランダム重合であってもブロック重合であってもその他の形態であってもよい。
【0028】
上記工程Aにおいては、メタリル基を有するハロゲン化物と片末端置換(ポリ)アルキレングリコールとを反応させればよく、上述のいずれの化合物も好適に用いることができるが、好ましい組合わせを(不飽和結合を有するハロゲン化物、片末端置換(ポリ)アルキレングリコール)として表すと、(メタリルクロライド、片末端置換のアルコキシポリエチレングリコール)、(メタリルクロライド、片末端置換のメトキシポリエチレングリコール)、(メタリルクロライド、片末端置換のエトキシポリエチレングリコール)、(メタリルクロライド、片末端置換のメトキシポリエチレン(ポリ)プロピレングリコール)、(メタリルクロライド、片末端置換のエトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール)が好ましい。
このように、メタリル基を有するハロゲン化物と片末端置換(ポリ)アルキレングリコールとを反応させて不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を生成する工程を含む製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0029】
上記工程Aで得られる不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体としては、上述したメタリル基を有するハロゲン化物と片末端置換(ポリ)アルキレングリコールとを反応させて得られるもの、メタリルアルコール(ポリ)アルキレンオキシド付加物の末端−OHにアルキルハライドを反応させて得られるものである限り特に限定されない。
上記メタリルアルコールの片末端置換(ポリ)アルキレンオキシド付加物としては、メタリルオキシアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール、好ましくは、メタリルオキシメトキシ(ポリ)アルキレングリコール、メタリルオキシメトキシ(ポリ)エチレングリコール等のアルキレンオキシド付加物が好ましい。
上記化学反応式は以下のとおりである。
【0030】
【化2】

【0031】
上記式において、R及びnは、上述したのと同様であり、Xは、塩素原子等のハロゲン原子である。
【0032】
上記工程Aとしては、上述のいずれも好ましく採用できるが、中でも、メタリルクロライドと片末端が炭化水素基で置換されたエチレングリコール(片末端が炭化水素基で封鎖されたエチレングリコール)を反応させて末端が炭化水素基で封鎖されたエチレングリコール−n−メタリルエーテル(末端封鎖メタリルアルコールnEO)を得ることが特に好ましい。このような形態の化学反応式は以下のとおりである。
【0033】
【化3】

【0034】
上記式において、R及びnは、上述したのと同様である。
上記工程Aにより得られた不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、ポリカルボン酸系共重合体の製造に好適に用いることができるものである。
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、すなわち、末端が炭化水素基で封鎖されたポリアルキレングリコールメタリルエーテルを単量体(i)として製造する方法の好ましい例を示すと次のようになる。
1)一般式(2)で示されるHO−(RO)n−Rとメタリルクロライド等のメタリルハライド(メタリル基を有するハロゲン化物)とを反応させて、単量体(i)を得る方法、2)メタリルアルコールあるいはメタリルアルコールアルキレンオキシド付加物にアルキレンオキシドを付加したメタリルアルコールアルキレンオキシド付加物のアルキレンオキシド末端水酸基にメチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド等のアルキルハライド(炭素数1〜20の炭化水素基を有するハロゲン化物)を反応させて単量体(i)を得る方法等を挙げることができる。
これらの場合において、単量体(i)を製造するのであれば、オキシアルキレン基の平均付加モル数nが100〜300となるようにすることとなる。
【0035】
上記工程Bとしては、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和カルボン酸とを共重合する工程であり、目的とする重合体に応じて重合させる単量体や単量体の割合を選択し、その単量体に応じた反応条件等を適宜設定して重合を行うことが好適である。例えば、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和カルボン酸とを重合させてポリカルボン酸系共重合体を得る工程について、以下に説明する。
【0036】
上記工程Bは、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和カルボン酸とを共重合するものである。
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体としては、上記工程Aを含む製造方法で得られるものであることが好ましく、1種又は2種以上を用いてもよい。2種以上用いる場合としては、
オキシアルキレン基の平均付加モル数nが1〜300の範囲において異なる2種以上の組み合わせであってもよい。このとき、オキシアルキレン基の平均付加モル数nの差は10以上であるのが好ましく、20以上であるのがより好ましい。例えば、平均付加モル数nが50〜300であるものと、平均付加モル数nが1〜50であるものとの組み合わせ等が好適である。この場合、nの差としては、10以上が好ましく、より好ましくは20以上である。また、これらの割合としては、平均付加モル数nが1〜50であるものよりも平均付加モル数nが50〜300であるものの割合(重量比)の方が多いことが好ましい。異なる3種以上の単量体(i)を用いる場合も、平均付加モル数nの差は、10以上であるのが好ましく、20以上であるのがより好ましい。
【0037】
上記工程Bは、溶液重合や塊状重合等の公知の方法で行なうことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際に使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられるが、原料単量体及び得られる共重合体の溶解性から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶剤工程を省略できる点でさらに好ましい。
【0038】
水溶液重合を行なう場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2, 2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2, 2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。
【0039】
また低級アルコール、芳香族又は脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする溶液重合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤又はラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0040】
塊状重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が用いられる。
【0041】
共重合の際の反応温度は、特に制限はないが、例えば、過硫酸塩を開始剤とした場合、反応温度は30〜100℃の範囲が適当であり、40〜95℃の範囲が好ましく、45〜90℃の範囲がさらに好ましい。また、過酸化水素と促進剤としてL−アスコルビン酸(塩)とを組み合わせて開始剤とした場合、反応温度は30〜100℃の範囲が適当であり、40〜95℃の範囲が好ましく、40〜90℃の範囲がさらに好ましい。
共重合の際の重合時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜10時間の範囲が適当であり、好ましくは0.5〜8時間、更に好ましくは1〜6時間の範囲がよい。重合時間が、この範囲より、長すぎたり短すぎたりすると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
共重合の際の全単量体成分の使用量は、他の原料及び重合溶媒を含む全原料に対して10〜99質量%の範囲が適当であるが、20〜98質量%の範囲が好ましく、25〜95質量%の範囲がより好ましく、30〜90質量%の範囲がさらに好ましく、30〜80質量%の範囲がとりわけ好ましく、40〜70質量%の範囲が最も好ましい。特に、全単量体成分の使用量がこの範囲より低すぎると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
【0042】
各単量体の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割もしくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割もしくは連続投入する方法のいずれでもよい。具体的には、単量体(i)の全量と単量体(ii)の全量を反応容器に連続投入する方法、単量体(i)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(i)の残りと単量体(ii)の全量を反応容器に連続投入する方法、又は、単量体(i)の一部と単量体(ii)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(i)の残りと単量体(ii)の残りをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法、単量体(i)の全量を反応容器に初期に投入し、単量体(ii)の全量を反応容器に連続又は分割投入する方法、単量体(i)の全量と単量体(ii)の一部を反応容器に初期に投入し、残りの単量体(ii)を反応容器に連続又は分割投入する方法等が挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入重量比を連続的又は段階的に変化させることにより、単量体(i)由来の構成単位(I)と単量体(ii)由来の構成単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0043】
共重合の際には、得られる共重合体の分子量調整のため、連鎖移動剤を用いることができる。特に、全単量体成分の使用量が、重合時に使用する原料の全量に対して30質量%以上となる高濃度で重合反応を行う場合には、連鎖移動剤を用いるのが好ましい。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤を用いることができ、2種類以上の連鎖移動剤の併用も可能である。さらに、共重合体の分子量調整のためには、単量体(iii)として、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0044】
所定の分子量の共重合体を再現性よく得るには、共重合反応を安定に進行させることが重要であることから、溶液重合を行なう場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01〜4ppm、更に好ましくは0.01〜2ppm、最も好ましくは0.01〜1ppmの範囲がよい。なお、溶媒に単量体を添加後、窒素置換等を行なう場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲とすればよい。
なお、溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行なってもよく、あらかじめ溶存酸素量を調整した溶媒を用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
【0045】
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げることにより、溶媒中の酸素分圧を低くする。窒素気流下で密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま、液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に、窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
【0046】
上記共重合反応において、溶媒を用いる場合、重合をpH5以上で行なってもよいが、その場合、重合率の低下が起こると同時に、共重合性が悪くなりセメント混和剤として性能が低下するので、pH5未満で共重合反応を行うことが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質、又は、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類を用いて行なうことができる。
【0047】
上記ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量は、3000〜300000の範囲が適当であるが、5000〜200000の範囲が好ましく、10000〜150000の範囲がより好ましく、10000〜100000の範囲がさらに好ましく、20000〜80000が最も好ましい。このような重量平均分子量の範囲を選ぶことで、より高い分散性能を発揮するセメント混和剤が得られる。
なお、重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量であり、後述するGPC測定条件により測定することが好ましい。
上記ポリカルボン酸系共重合体の分子量分布としては、セメント混和剤に用いられる重合体の製造方法における通常の条件で得られる重合体の分布であればよい。すなわち、セメント混和剤に用いられる重合体における通常の分子量分布の範囲であればよい。
【0048】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、共重合体が有するカルボキシル基を全て未中和型に換算したときのカルボキシル基ミリ当量数が、共重合体1g当たり5.50meq以下であることが好ましく、より好ましくは0.10〜5.50meq/g、更に好ましくは0.15〜4.00meq/g、特に好ましくは0.20〜3.50meq/g、最も好ましくは0.30〜3.30meq/gの範囲がよい。
なお、上記ポリカルボン酸系共重合体におけるカルボキシル基を全て未中和型に換算したときのカルボキシル基ミリ当量数は、以下のようにして計算することができる。例えば、不飽和カルボン酸としてアクリル酸を用い、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(単量体(i))/不飽和カルボン酸(単量体(ii))=90/10(質量%)の組成比で共重合した場合、アクリル酸の分子量は72であるので、共重合体1g当たりのカルボキシル基ミリ当量数は、(0.1/72)×1000=1.39(meq/g)となる(計算例1)。また、例えば、単量体(ii)としてアクリル酸ナトリウムを用い、単量体(i)/単量体(ii)=90/10(質量%)の組成比で共重合した場合、アクリル酸ナトリウムの分子量は94であり、アクリル酸の分子量は72であるので、共重合体1g当たりのカルボキシル基ミリ当量数は、(0.1/94)/(0.9+0.1×72/94)×1000=1.09(meq/g)となる(計算例2)。なお、重合時にはアクリル酸を用い、重合後に アクリル酸に由来するカルボキシル基を水酸化ナトリウムで中和した場合にも、計算例2と同様に計算できる。また、例えば、単量体(ii)としてメタクリル酸ナトリウム及びアクリル酸ナトリウムを用い、単量体(i)/メタクリル酸ナトリウム/アクリル酸ナトリウム=90/5/5(質量%)の組成比で共重合した場合、メタクリル酸の分子量は86、メタクリル酸ナトリウムの分子量は108、アクリル酸の分子量は72、アクリル酸ナトリウムの分子量は94であるので、共重合体1g当たりのカルボキシル基ミリ当量数は、(0.05/108+0.05/94)/(0.9+0.05×86/108+0.05×72/94)×1000=1.02(meq/g)となる(計算例3)。
本発明のポリカルボン酸系共重合体は、上述の構成のものが好適であり、該重合体の分子量、分子量分布、重合体の構成単位、その割合、構成単位の分布は、上述のとおりであることが好ましいが、これらは、通常セメント混和剤として用いる条件で重合して得られるものであればよい。
【0049】
以下では、本発明のポリカルボン酸系共重合体の好ましい製造方法を説明する。なお、下記に示された好ましい形態以外にも、上述した好ましい形態を適用することができる。
本発明のポリカルボン酸系共重合体の製造方法としては、方法1)工程1として、メタリル基を有するハロゲン化物と、片末端置換(ポリ)アルキレングリコール(片末端を炭化水素基で置換した(ポリ)アルキレングリコール)とを反応させて、片末端置換(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル(不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体)を得る工程、工程2として、工程1で得られた不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(片末端置換(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル単量体)と不飽和カルボン酸とを重合して共重合体を得る工程を有する製造方法が挙げられる。
また、方法2)工程1として、メタリルアルコールあるいはメタリルアルコールアルキレンオキシド付加物にアルキレンオキシドを付加したメタリルアルコールアルキレンオキシド付加物とアルキルハライド(炭素数1〜20の炭化水素基を有するハロゲン化物)を反応させて片末端置換(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル(不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体)を得る工程、工程2として、工程1で得られた片末端置換ポリアルキレングリコールメタリルエーテルと不飽和カルボン酸を重合して共重合体を得る工程を有する製造方法が挙げられる。
【0050】
上記方法1の工程1におけるメタリル基を有するハロゲン化物としては、メタリルクロライド、メタリルブロマイド、メタリルヨーダイドを挙げることができる。コスト削減、生成物の着色を抑える観点からメタリルクロライドが好ましい。
片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの構造はHO−(RO)n−Rで表すことができ、式中ROは炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nが2以上の場合はROはそれぞれ同一もしくは異なってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり100〜300である。上記nとしては、100以上300以下の範囲がセメント組成物の早期強度を向上させる観点から好ましい。片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの具体例は炭素数1〜20の炭化水素基を末端に有する(ポリ)アルキレングリコールである。末端基Rの好ましい例としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基またはアルキニル基、炭素数6〜20のフェニル基またはアルキル置換フェニル基である。その中でも特に、セメント分散性能、早期強度発現性能の面から炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。ポリアルキレングリコール部分ROとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。これらの中でもセメント分散性能、セメント組成物の粘度低減効果の面からはオキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合は、オキシエチレン基が80モル%以上であることが好ましい。上記2種以上のオキシアルキレン基の組み合わせとしては、(オキシエチレン基/オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基/オキシブチレン基)、(オキシエチレン基/オキシプロピレン基)が好ましい。
【0051】
次に、メタリルハライドと片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの反応工程の形態について説明する。
反応形態は(1)片末端置換(ポリ)アルキレングリコールにアルカリを反応させて、片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの末端水酸基をアルコキシド化する工程、(2)アルコキシド化した片末端置換(ポリ)アルキレングリコールにメタリルハライドをSN2置換反応させる工程、(3)残存片末端置換(ポリ)アルキレングリコールを除去する工程、(4)残存メタリルハライドを除去する工程、(5)反応に使用した溶媒を除去する工程、(6)SN2置換反応により副生した塩を除去する工程からなる。但し、工程(3)〜(6)は必要に応じて行えばよい。
【0052】
上記工程(1)はアルコキシドを発生させる工程であり、用いるアルカリの量は片末端置換(ポリ)アルキレングリコールに対して、0.5〜5.0当量(水酸基当たり)が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0当量であり、さらに好ましくは0.9〜2.5当量であり、さらに好ましくは1.0〜1.5当量である。アルコキシドを発生させるにあたり、水酸化ナトリウム等の水酸化物を用いた場合、水が副生するので、副生した水を反応系外に除去することにより効率的にアルコキシド化を行うことができる。水を除去するためにシクロへキサン、トルエン等の水共沸溶媒を用いて副生した水を除去することができる。また、アルコキシド化の反応温度は片末端置換ポリアルキレングリコールの融点以上であれば良いが、好ましくは40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0053】
上記工程(2)は工程(1)で発生させた片末端置換(ポリ)アルキレングリコールアルコキシドとメタリルハライドをSN2反応させて、片末端置換(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル単量体を得る工程である。片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの沸点が高く、後の工程で除去が困難である場合、沸点の低いアルキルハライドを過剰に用いることが好ましい。反応に用いるメタリルハライドは片末端置換(ポリ)アルキレングリコールに対して、1.1〜20当量であり、さらに好ましくは1.2〜15当量であり、さらに好ましくは1.5〜10当量であり、特に好ましくは2〜5当量である。反応温度は片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの融点以上であれば良いが、好ましくは40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0054】
上記工程(3)は反応後の残存片末端置換(ポリ)アルキレングリコールを除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。片末端置換(ポリ)アルキレングリコールの沸点が低い場合、減圧、常圧蒸留等の蒸留で除去することができる。
上記工程(4)は反応後の残存メタリルハライドを除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。減圧、常圧蒸留にて容易に除去することができる。
上記工程(5)は反応に使用した溶媒を除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。アルコキシド化に脱水溶媒を用いた場合、工程(1)の後に脱水溶媒を留去してもよい。また、蒸留で溶媒を留去する場合、工程(4)のメタリルハライドを除去する蒸留工程と同時に行っても良い。
上記工程(6)は副生した塩を除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。
【0055】
上記方法2の工程1は、メタリルアルコールまたはメタリルアルコールアルキレンオキシド付加物にアルキレンオキシドを付加したメタリルアルコールアルキレンオキシド付加物と、アルキルハライドとを反応させて片末端置換(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテルを得る工程であり、メタリルアルコールアルキレンオキシド付加物はメタリルアルコールまたはメタリルアルコールアルキレンオキシド付加物にさらにアルキレンオキシドを付加することによって得ることができる。アルキレンオキシドの種類、平均付加モル数等は上記と同じである。アルキルハライドはC1〜C20の炭化水素基を有するハロゲン化物であり、好ましくは炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基またはアルキニル基、炭素数6〜20のフェニル基またはアルキル置換フェニル基を有するハロゲン化物である。その中でも特に、セメント分散性能、早期強度発現性能の面からは炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基を有するハロゲン化物が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基を有するハロゲン化物が特に好ましい。
【0056】
以下に、アルキルハライドとメタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物の反応工程の形態について説明する。反応形態は(1)メタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物にアルカリを反応させて、メタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物の末端水酸基をアルコキシド化する工程、(2)アルコキシド化したメタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物にアルキルハライドをSN2置換反応させる工程、(3)残存メタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物を除去する工程、(4)残存アルキルハライドを除去する工程、(5)反応に使用した溶蝶を除去する工程、(6)SN2置換反応により副生した塩を除去する工程からなる。但し、工程(3)〜(6)は必要に応じて行えばよい。
【0057】
上記工程(1)はアルコキシドを発生させる工程であり、用いるアルカリの量はメタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物に対して、0.5〜5.0当量(水酸基当たり)が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0当量であり、さらに好ましくは0.9〜2.5当量であり、さらに好ましくは1.0〜1.5当量である。アルコキシドを発生させるにあたり、水酸化ナトリウム等の水酸化物を用いた場合、水が副生するので、副生した水を反応系外に除去することにより効率的にアルコキシド化を行うことができる。水を除去するためにシクロヘキサン、トルエン等の水共沸溶媒を用いて副生した水を除去することができる。また、アルコキシド化の反応温度はメタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物の融点以上であれば良いが、好ましくは40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0058】
上記工程(2)は工程(1)で発生させたメタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物のアルコキシドとアルキルハライドをSN2反応させて、片末端置換(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル単量体を得る工程である。メタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物の沸点が高く、後の工程で除去が困難である場合、沸点の低いアルキルハライドを過剰に用いることが好ましい。反応に用いるアルキルハライドはメタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物に対して、1.1〜20当量であり、さらに好ましくは1.2〜15当量であり、さらに好ましくは1.5〜10当量であり、特に好ましくは2〜5当量である。反応温度は片末端置換ポリアルキレングリコールの融点以上であれば良いが、好ましくは40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0059】
上記工程(3)は反応後の残存メタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物を除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。メタリルアルコールポリアルキレングリコール付加物の沸点が低い場合、減圧、常圧蒸留等の蒸留で除去することができる。
上記工程(4)は反応後の残存アルキルハライドを除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。上記残存アルキルハライドは、減圧、常圧蒸留にて容易に除去することができる。
上記工程(5)は反応に使用した溶媒を除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。アルコキシド化に脱水溶媒を用いた場合、工程(1)の後に脱水溶媒を留去してもよい。また、蒸留で溶媒を留去する場合、工程(4)のアルキルハライドを除去する蒸留工程と同時に行っても良い。
上記工程(6)は副生した塩を除去する工程であり、必要に応じて行えばよい。
【0060】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、そのままでもセメント混和剤の主成分として用いることもできるが、取り扱い性の観点からは、pHを5以上に調整しておくことが好ましい。上述したように、pH5未満で共重合反応を行うことが好ましく、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行なうことができる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。また、上記ポリカルボン酸系共重合体は、水溶液の形態でそのままセメント混和剤の主成分として使用してもよいし、又は、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用してもよい。
【0061】
本発明はまた、上記ポリカルボン酸系共重合体を含んでなるセメント混和剤でもある。
上記セメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体を必須とするものである。上記セメント混和剤における上記ポリカルボン酸系共重合体の含有量は、特に制限されないが、セメント混和剤中の固形分、すなわち不揮発分の20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
本発明において、セメント混和剤の固形分測定方法としては、以下の方法が好適である。
(固形分測定方法)
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固定分の質量を除することで固形分を測定する。
上記セメント混和剤は、2種以上の共重合体が組み合わせされたものであってもよい。例えば、単量体(i)由来の構成単位(I)と単量体(ii)由来の構成単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体の組み合わせや、上記単量体(i)により導入された構成単位(I)のオキシアルキレン基の平均付加モル数が異なる2種以上の共重合体の組み合わせ等が可能である。
【0062】
上記セメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体以外に、ポリアルキレングリコールを該共重合体に対して1〜50質量%含有するのが好ましい。より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは2〜40質量%、特に好ましくは3〜30質量%含有するのがよい。ポリアルキレングリコールをも含有することにより、モルタルやコンクリートのワーカビリティをより向上させることができる分散剤となる。ポリアルキレングリコールの含有割合が1質量%未満であると、モルタルやコンクリートのワーカビリティの向上効果が不十分となり、一方、50質量%を超えると、セメントに対する分散性が低下することとなり好ましくない。
【0063】
上記ポリアルキレングリコールとしては、オキシアルキレン基の炭素数が2〜18の範囲であるものが適当であり、好ましくはオキシアルキレン基の炭素数が2〜8の範囲、より好ましくは2〜4の範囲がよい。さらに、上記ポリアルキレングリコールは水溶性であることが必要であることから、親水性が高い炭素数2のオキシアルキレン基、すなわちオキシエチレン基を少なくとも必須とすることが好ましく、90モル%以上のオキシエチレン基を含むことがより好ましい。また、オキシアルキレン基の繰り返し単位は同一であってもよく又は異なっていてもよく、オキシアルキレン基が2種以上の混合物の形態である場合には、ブロック状付加、ランダム状付加、交互状付加等のいずれの付加形態でもよい。また、ポリアルキレングリコールの末端基は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は(アルキル)フェニル基が適当であるが、水素原子が好ましい。また、ポリアルキレングリコールの平均分子量としては、500〜200000の範囲が好ましいが、1000〜100000の範囲がより好ましく、2000〜50000の範囲がさらに好ましい。
【0064】
上記ポリアルキレングリコールとして、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリブチレングリコール等が挙げられるが、該ポリアルキレングリコールは水溶性であることが必要であることから、親水性の高いオキシエチレン基を必須成分として含むポリエチレングリコール又はポリエチレンポリプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールが最も好ましい。
【0065】
上記ポリアルキレングリコールを含有するセメント混和剤は、例えば、不純物であるポリアルキレングリコールを除去せず、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(単量体(i))とともに工程2に用いることにより得ることが好ましい。このように、不純物としてポリアルキレングリコールを含む不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル(単量体(i))を単量体成分として用いることによって、上記ポリアルキレングリコールを含有するセメント混和剤を容易に得ることができる。この副生したポリアルキレングリコールを除去することなく、付加反応で得られた生成物をそのまま原料として用いることによって、精製工程等の簡略化が図れると同時に、得られるセメント混和剤は、共重合体とポリアルキレングリコールとを含有することとなり、硬化前のモルタルやコンクリートのワーカビリティをより向上させることができる。
【0066】
不純物として含有するポリアルキレングリコールの含有量は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体に対して0.5〜50質量%が適当であるが、1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、3〜20質量%がさらに好ましい。ポリアルキレングリコールの割合が50質量%を超えると、ポリアルキレングリコール自身のセメント粒子分散性能が低いことから、セメント混和剤としての使用量が増えることとなり好ましくない。
【0067】
上記セメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体以外に、上記ポリアルキレンオキシド鎖を有する不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル(単量体(i))を該共重合体に対して1〜100質量%含有するのが好ましい。より好ましくは2〜100質量%、更に好ましくは3〜90質量%、特に好ましくは5〜80質量%含有するのがよい。単量体(i)をも含有することにより、モルタルやコンクリートのワーカビリティをより向上させることができる分散剤となる。単量体(i)の含有割合が1質量%未満であると、モルタルやコンクリートのワーカビリティの向上効果が不十分となり、一方、100質量%を超えると、セメントに対する分散性が低下することとなり好ましくない。
【0068】
このような上記単量体(i)をも含有するセメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体を得る際の共重合時に、未反応の単量体(i)が生成した重合体に対して1〜100質量%となる時点で重合反応を停止することによって、容易に得ることができる。これにより、得られた生成物は共重合体以外に、単量体(i)を含有することとなり、優れた分散性能を発揮することができる。重合反応を停止する時点は、好ましくは、単量体(i)が重合体に対して2〜80質量%残留している時点、より好ましくは3〜70質量%残留している時点、更に好ましくは5〜60質量%残留している時点とするのがよい。未反応の単量体(i)が生成した重合体に対して1質量%未満となる時点で重合反応を停止すると、得られるセメント混和剤が、モルタルやコンクリートのワーカビリティの向上効果が不十分なものとなり、一方、100質量%を超える時点で重合反応を停止すると、セメントに対する分散性が低下することとなる。
【0069】
上記セメント混和剤の最も好ましい形態は、上記ポリアルキレングリコールと上記単量体(i)とをともに上記割合で含有するものである。これら両成分を含むことにより、モルタルやコンクリートのワーカビリティに極めて優れた分散剤となる。
【0070】
上記セメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と上記セメント混和剤とを含有し、さらに必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。
【0071】
上記例示の水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、上記セメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなるセメント組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0072】
上記セメント組成物において使用されるセメントとしては、特に限定はない。たとえば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。又、骨材として、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0073】
上記セメント組成物においては、その1m3 あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比にはとりたてて制限はなく、単位水量100〜185kg/m3 、使用セメント量250〜800kg/m3 、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m3 、使用セメント量270〜800kg/m3 、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.65が推奨される。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3 以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0074】
本発明のセメント組成物における上記セメント混和剤の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント重量の0.01〜10質量%、好ましくは0.02〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%となる比率の量を添加すればよい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01質量%未満では性能的に不十分であり、逆に10質量%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0075】
上記セメント組成物は、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0076】
上記セメント組成物は、公知のセメント混和剤を含有していてもよい。使用可能な公知のセメント混和剤としては、特に限定はなく、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤が挙げられる。スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系等が挙げられる。又、ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(又はビニルスルホン酸(塩)又はp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で2〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体にさらに(メタ)アクリルアミド及び/又は2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合した共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で5〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体とエチレンオキシドを平均付加モル数で1〜30付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(又はp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の4種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸のポリアルキレングリコールエステル系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;等が挙げられる。尚、上記公知のセメント混和剤は、複数の併用も可能である。
【0077】
なお、上記公知のセメント分散剤を用いる場合、上記セメント混和剤と公知のセメント混和剤との配合重量比は、使用する公知のセメント混和剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10の範囲内である。
さらに、上記セメント組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
【0078】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1. 3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0079】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ( メチレンホスホン酸) 、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ( メチレンホスホン酸) 、ジエチレントリアミンペンタ( メチレンホスホン酸) 及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0080】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0081】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0082】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0083】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0084】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS (アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS (直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0085】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2 個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0086】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0087】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、たとえば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。なお、上記公知のセメント添加剤(材)は、複数の併用も可能である。
【0088】
上記セメント組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の1)〜7)が挙げられる。
【0089】
1)(i)上記セメント混和剤、(ii)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(ii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(i)のセメント混和剤に対して0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
【0090】
2)(i)上記セメント混和剤、(ii)炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報、特開平9−241056号公報等参照)、(iii)オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)の共重合体との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。(iii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(i)のセメント混和剤と(ii)の共重合体との合計量に対して0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
【0091】
3)(i)上記セメント混和剤、(ii)分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)のスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
【0092】
4)(i)上記セメント混和剤、(ii)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
【0093】
5)(i)上記セメント混和剤、(ii)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルローズエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)の材料分離低減剤との配合重量比としては、10:90〜99.99:0.01の範囲が好ましく、50:50〜99.9:0.1の範囲がより好ましい。この組み合わせからなるセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0094】
6)(i)上記セメント混和剤、(ii)遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ( メチレンホスホン酸) 等のホスホン酸類等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)の遅延剤との配合重量比としては、50:50〜99.9:0.1の範囲が好ましく、70:30〜99:1の範囲がより好ましい。
【0095】
7)(i)上記セメント混和剤、(ii)促進剤の2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等(ii)の促進剤との配合重量比としては、10:90〜99.9:0.1の範囲が好ましく、20:80〜99:1の範囲がより好ましい。
【発明の効果】
【0096】
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、上述の構成よりなり、種々の用途に好適に用いることができ、セメント組成物に対して高い分散性能を発現することができ、コンクリート等の早期強度を高め、コンクリートの粘性を低減するという効果を奏することができる。また、本発明のポリカルボン酸系共重合体の製造方法は、用途に応じて好適なポリアルキレン鎖長とすることができるものであって、特定の末端構造のポリアルキレン鎖を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を調製して当該単量体に由来する構造をもつポリカルボン酸系共重合体を製造することができるという点で有利な効果を奏するものである。更に、オキシアルキレン基の平均付加モル数が特定された不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を一段階の反応により調製し、ポリカルボン酸系共重合体を製造することができるという格別の効果を奏することになる。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0098】
製造例1(MLA120Mの製造)
温度計、攪拌機、バブリング用窒素導入管、水分離器、還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内にメトキシポリエチレングリコール(平均EO付加モル数120)200g(0.038mol)、30%水酸化ナトリウム水溶液7.5g(0.056mol)、シクロヘキサン60gを仕込み、攪拌下に液中に窒素バブリングを行いながら90℃まで加熱した。反応容器内を90℃に維持して24時間加熱を続け、水分離器に水5.9gを分離した。反応容器内の温度を80℃まで下げ、水分離器を装置から外し、窒素バブリングを停止してメタリルクロライド17.0g(0.188mol)を反応容器内に投入し、80℃で24時間反応させた。その後、反応容器内を100℃まで加熱し、窒素バブリングを再開して反応系内のシクロヘキサン及び過剰のメタリルクロライドを除去して、末端メチル基置換ポリエチレングリコールメタリルエーテル(平均EO付加モル数120)を得た。
【0099】
比較製造例1(比較セメント分散剤1の製造)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102g、メタリルアルコールに平均120モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル198g、アクリル酸0.14gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液16.98gを添加した。反応容器内を58℃に保った状態で、アクリル酸11.58gとイオン交換水16.32gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.47gにL−アスコルビン酸0.88g及び3−メルカプトプロピオン酸0.49gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に濃度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量42000の重合体水溶破からなる比較セメント分散剤1を得た。
これは、ポリアルキレン鎖の末端構造が−OH(水酸基)であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が120モルのポリカルボン酸系共重合体によって構成されるものであり、本発明のポリカルボン酸系共重合体に対する比較例であるとともに本発明の製造方法に対する比較例でもある(比較例1)。
【0100】
製造例2(本発明のセメント分散剤1)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102g、製造例1で得た末端メチル基置換ポリエチレングリコールメタリルエーテル198.0g、アクリル酸0.14gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶漆16.94gを添加した。反応容器内を58℃に保った状態で、アクリル酸11.55gとイオン交挽水16.32gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.47gにL−アスコルビン酸0.88g及び3−メルカプトプロピオン酸0.49gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量43000の重合体水溶液からなる本発明のセメント分散剤1を得た。
これは、ポリアルキレン鎖の末端構造が炭化水素基であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が120モルのポリカルボン酸系共重合体によって構成されるものであり、本発明のポリカルボン酸系共重合体及び本発明の製造方法に係る実施例である(実施例1)。
【0101】
製造例3(MLA25Mの製造)
温度計、攪拌機、バブリング用窒素導入管、水分離器、還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内にメトキシポリエチレングリコール(平均EO付加モル数25)200g(0.177mol)、30%水酸化ナトリウム水溶液35.3g(0.265mol)、シクロヘキサン60gを仕込み、攪拌下に液中に窒素バブリングを行いながら80℃まで加熱した。反応容器内を80℃に維持して24時間加熱を続け、水分離器に水28.0gを分離した。その後、反応容器内の温度を70℃まで下げ、水分離器を装置から外し、窒素バブリングを停止してメタリルクロライド79.9g(0.882mol)を反応容器内に投入し、70℃で24時間反応させた。その後、反応容器内を100℃まで加熱し、窒素バブリングを再開して反応系内のシクロヘキサン及び過剰のメタリルクロライドを除去して、メタリルオキシメトキシポリエチレングリコール(平均EO付加モル数25)を得た。
【0102】
製造例4(本発明の製造方法に係るセメント分散剤の製造)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102g、製造例3で合成したメタリルオキシメトキシポリエチレングリコール198g、アクリル酸0.14gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液76.63gを添加した。反応容器内を58℃に保った状態で、アクリル酸52.75gとイオン交換水16.32gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.47gにL−アスコルビン酸3.97g及び3−メルカプトプロピオン酸2.96gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量31000の重合体水溶液からなる参考セメント分散剤1を得た。
これは、ポリアルキレン鎖の末端構造が炭化水素基であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25モルのポリカルボン酸系共重合体によって構成されるものであり、本発明の製造方法に係る実施例である(実施例2)。
【0103】
製造例5(比較セメント分散剤2の製造)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102g、メタリルアルコールに平均25モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル198g、アクリル酸0.14gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液77.54gを添加した。反応容器内を58℃に保った状態で、アクリル酸53.38gとイオン交換水16.32gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.47gにL−アスコルビン酸4.02g及び3−メルカプトプロピオン酸2.96gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量33000の重合体水溶液からなる比較セメント分散剤2を得た。
これは、ポリアルキレン鎖の末端構造が−OH(水酸基)であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25モルのポリカルボン酸系共重合体によって構成されるものであり、本発明のポリカルボン酸系共重合体に対する比較例であるとともに本発明の製造方法に対する比較例でもある(比較例2)。
【0104】
<コンクリート試験>
以上のようにして得られた本発明のセメント分散剤1、比較セメント分散剤1及び2、参考セメント分散剤1を用いて調製されたセメント混和剤を用いてコンクリート組成物を調製し、下記の方法でスランプフロー値、空気量、圧縮強度を測定した。なお、コンクリート組成物の温度が20℃の試験温度になるように、試験に使用する材料、ミキサー、測定器具類を試験温度雰囲気下で調温し、混練および各測定もこの試験雰囲気下で行った。結果を表1に示す。
<コンクリート試験配合>
コンクリート試験に用いるコンクリート組成物の配合は、以下のとおりである。
単位セメント量:573.3kg/m
単位水量:172.0kg/m(ポリマー、消泡剤等の混和剤を含む)
単位細骨材量:737.2kg/m
単位粗骨軒量:866.0kg/m
水/セメント比:30%
セメント:太平洋セメント社普通ポルトランドセメント
細骨材:君津産山砂と掛川産陸砂を3/7で混合したもの
粗骨材:青梅産砕石
<コンクリート組成物の調製>
上記コンクリート原料、配合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型強制練りミキサーを使用して下記に記載の方法によって材料の混練を実施した。
まず、細骨材を10秒間混練した後、セメントを加えて10秒間さらに混練した。その後、セメント混和剤を含む所定量の水道水を加えて30−90秒間混練した。その後、さらに粗骨材を加えて90秒間混練して、コンクリート組成物を得た。また、評価試験においては、セメント混和剤を含む水道水を加えた後の混練開始時間をゼロ分とした。
<セメント混和剤の調製>
使用したセメント混和剤はセメント分散剤と消泡剤を用いて調製した。セメント分散剤は本発明のセメント分散剤1、比較セメント分散剤1及び2、参考セメント分散剤1を用いた。消泡剤には市販のオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が1.5±0.5vol.(容量)%となるように調製した。得られたセメント混和剤を、それぞれ、本発明のセメント混和剤1、比較セメント混和剤1及び2、参考セメント混和剤1とした。
<評価試験項目と測定方法>
スランプフロー値:JIS−A1101
圧縮強度:JIS−A1008(供試体作成:JIS−A1132)
空気量:JIS−A1128
評価試験の結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1より、ポリエチレングリコール鎖の末端がメチル基で封鎖された本発明のセメント分散剤は、ポリエチレングリコール鎖の末端が水酸基のままの比較セメント分散剤に比べて所定のスランプフロー値を得るための添加量が少なく、24時間における圧縮強度が大きいことがわかった。
上記実施例及び比較例によって、上記性能が、オキシアルキレン基の平均付加モル数が大きな場合に不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体構成単位における末端構造に関連していることが立証されている。すなわち、上記実施例においては、エチレンオキシドの平均付加モル数が120であるセメント分散剤において、ポリエチレングリコール鎖の末端がメチル基となっていて、これによって、所定のスランプフロー値を得るための添加量を少なくすることができ、24時間における圧縮強度を高めることができることが示されている。なお、オキシアルキレン基の平均付加モル数が大きくなれば、セメント分散剤の使用量が少なくなるとともに圧縮強度が高くなり、それに加えて末端構造が炭化水素基であれば、更にこれらの性能が向上することが示されている。
したがって、オキシアルキレン基の平均付加モル数が大きな場合に、末端構造を水酸基の形態にするのではなく、炭化水素基が結合した形態とすれば、オキシアルキレン基の平均付加モル数が大きいことと相まって、セメントの分散性能を高め、コンクリート組成物等のセメント組成物の早期強度とセメント組成物の状態、特にセメント組成物の分離抵抗性を損なうことなく、セメント組成物の粘性を低減できる等の利点を発揮することが示されているといえる。オキシアルキレン基の平均付加モル数が100以上と大きな場合であれば、これによって発揮されるセメント組成物に対する作用効果は同様であり、また、末端構造を炭化水素基が結合した形態とすれば、これによって発揮される作用機構も同様であることから、本明細書において開示した種々の形態において本発明の有利な作用効果を発揮することができるといえる。更に、上記実施例において開示された製造方法によれば、用途に応じて好適なポリアルキレン鎖長とすることができ、特にオキシアルキレン基の平均付加モル数を大きくすることができ、特定の末端構造のポリアルキレン鎖を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を調製して当該単量体に由来する構造をもつポリカルボン酸系共重合体を製造することができるという有利な効果を奏することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするポリカルボン酸系共重合体であって、
該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、下記一般式(1):
【化1】

(式中、ROは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、100〜300の数である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される単量体由来のものであることを特徴とするセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体。
【請求項2】
前記不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位は、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造を必須とすることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体。
【請求項3】
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、メタリル基を有するハロゲン化物と片末端を炭化水素基で置換した(ポリ)アルキレングリコールとを反応させて不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程を含むものであることを特徴とするポリカルボン酸系共重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のポリカルボン酸系共重合体を含んでなることを特徴とするセメント混和剤。

【公開番号】特開2010−189200(P2010−189200A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32329(P2009−32329)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】