説明

セメント混和剤

【課題】セメントに対する水の重量比を改善する。
【解決手段】(1)炭酸カルシウム、または高炉スラグ100に対して、(2)石灰100、アルミニウムの酸性塩10〜50、アルカリ金属の炭酸塩5〜30とよりなるセメントに対する急結剤を炭酸カルシウムに対して、0.1〜10添加することによって、セメント混和剤を得る。この混和剤をセメントに対して10以上混入することで、固化原料(セメント+混和剤)対水の重量比を100対100にまですることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤に関し、特に、水和性に優れるとともに、急結性を備えたセメント混和剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメントに砂と水を混入して充分な強度のコンクリートとするためには、水対セメントの重量比が、50対100〜60対100となる必要がある。水の量が増えると圧縮強度が小さくなり、例えば、水55対セメント100の重量比で7日養生の圧縮強度が270Kg/cm2であるが、70対100では150Kg/cm2程度の強度しか得られない。また、100対100では水過剰の状態となって、反応しきれない水がコンクリート上に浮いた状態となり、当然強度は150Kg/cm2以下となる。
【0003】
また、水とセメントを所定の重量比で練った生コンクリートは型枠に流し込んで、通常1日程度養生させるとによってはじめて脱枠可能な状態にまでの強度を確保する。ところが、この養生期間に比重の重い砂が下に沈む傾向があり、脱枠可能な状態になったときには、下の方が砂の密度が高く、上の方が密度の低いコンクリートが形成されていることになる。
【0004】
この状態のコンクリートに更に上の層のコンクリートを形成すると、上記と同様に下の方の密度が高く、上の方の密度が低いコンクリートが形成されることになり、下の層と上の層の繋ぎ部分の砂の密度に差ができるいわゆるブージング現象を発生することになる。
【0005】
この現象が、コンクリート構造物の経年劣化を早め、例えば近年問題となっているトンネル内でのコンクリート剥離等の原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001‐48616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セメントに水を混入すると、水がセメントに取り込まれて固化し(水和反応)てコンクリートになる。この反応における、セメントに対する水比は上記のように上限があり、水がセメントに対し70を越すと、反応仕切れない水ができ、また、水比が多いと充分な強度が得られないことになる。
【0008】
さらに、現状のセメントでは、養生時間が長く、これが、ブリージング現象を生む原因となっている。
【0009】
この問題を解決するためには、生の状態のコンクリートをできるだけ早く硬化させる必要があり、このための種々の技術が提案されている。例えば、セメントに石灰と硫酸アルミニウムと炭酸ソーダを混入することが特開2001‐48616等に開示されている。
【0010】
しかしながら、この発明では、急結性を得ることと、ブリージングを防止することは出来ても、水対セメントの重量比は、水70に対してセメント100が上限であり、水がそれ以上多くなると水和しきれなくなり、結果としてコンクリートの強度を弱めることになり、逆に、所定の強度のコンクリートを得るためには、大量のセメントを必要としていたのである。
【0011】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、水比が大きくても充分な水和反応を示す上に、充分な強度と早強性を得ることができるセメント混和剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために、以下の手段を採用している。以下前記と同様、各成分を重量比で表す。まず(1)炭酸カルシウム、または高炉スラグ100に対して、(2)石灰100、アルミニウムの酸性塩10〜50、アルカリ金属の炭酸塩5〜30とよりなるセメントに対する急結剤を得る。この急結剤を炭酸カルシウムに対して、0.1〜10添加することによって、本発明のセメント混和剤を得る。
【0013】
この混和剤を。セメントに対して10以上混入することで、固化原料(セメント+混和剤)対水の重量比を100対100にまですることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
上記したように、水の重要比を固化原料(セメント+固化助剤)100に対して100にまで高めることができ、経済的に極めて有効であり、しかも、急結性と強度を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、石灰に対して、アルミニウムの酸性塩と、アルカリ金属の炭酸塩を混入して急結剤を得る。上記石灰は、消石灰、生石灰の何れでも用いることができる。上記アルミニウムの酸性塩は、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等を使用できる。また、アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ等を使用することができる。
【0016】
上記石灰として消石灰、アルミニウムの酸性塩として硫酸アルミニウム、アルカリ金属の炭酸塩として炭酸ソーダを用いたときのそれぞれの重量比は、消石灰100に対して、硫酸アルミニウム30〜60、炭酸ソーダ10〜30となる。
【0017】
次いで、炭酸カルシウムに対して上記急結剤を添加してセメント混和剤を得る。急結剤の炭酸カルシウムに対する重量割合は、炭酸カルシウム100に対して、0.1〜20の重量比である。
【0018】
上記急結剤の混入割合が0.1を下回ると、以下に説明する急結性と、水和性を得ることはできない。上限は特に限定されないが、経済的な観点から20%以下に止めるのが好ましい。
【実施例】
【0019】
まず、消石灰100に対して、硫酸アルミニウム50、炭酸ソーダ25の重量比で添加して急結剤を用意する。
【0020】
この急結剤を、表1に示すように炭酸カルシウムに対し0.6、1.0、1.5、2.0の重量割合で添加した混和剤を用意する。
【0021】
この混和剤をセメントに対して所定量添加して表1のA〜Lの試料を作成する。但し、試料A、Bは混和剤を添加しない比較試料、D、F,G、Kは炭酸カルシウムに急結剤を添加しない比較試料である。
【0022】
各試料に対して、表1所定の水を添加して攪拌し固化速度と強度を観察した。
【0023】
更に、炭酸カルシウムに代えて、スラグを使用した試料M〜Pを表2に示した。
【0024】
表1の試料BとGを比較すると、セメントに炭酸カルシウムを混入することによって、水和性が幾分改善されることが伺われるが、急結性と強度は改善されない。この点、試料C、E、H,I,J、Lと試料Gを比較すると、炭酸カルシウムに急結剤を入れることによって、水和性が改善されることはもとより、急結性と強度の3点がいずれも改善されていることが理解できる。しかも、このときの水の重量比は固化原料100に対して100の重量比まで可能である。
【0025】
表2に示すように、炭酸カルシウムに代えて、スラグを使用した場合、当該スラグに急結剤を混入することによって、水和性、急結性、及び強度を確保することができることになる。
【0026】
尚、表1、2において水和性◎とは、原料を混合して30分後に水が固化物の上に浮いていない状態をいう。水和性△は下記の×の状態までには至らないが固化物の上に水が僅かに浮く状態、水和性×は、固化物の上に水が多量に浮く状態。急結性◎は、原料を混合して1時間後に脱枠可能な状態、急結性○は、2〜3時間後に脱枠可能な状態、急結性×は、脱枠可能となる時間が1日必要な状態。更に、強度◎は、一日養生で、手で押しても充分な強度が感じられる状態。強度○は、一日養生で、手で押すと、押し型が薄くつく状態、×は一日養生で強く押すと崩れる状態を言う。
【0027】
以上説明したように、本発明は、セメントに対する水比を多くすることができ、しかも急結性と強度を確保することができ、極めて有益である。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように本発明はセメントに対する水の重量比を多くしても、急結性を維持するとともに、従来と同等のコンクリートとしての強度を確保することができるので、産業上極めて有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)炭酸カルシウム、または高炉スラグを重量比で100に対して、(2)石灰100、アルミニウムの酸性塩10〜50、アルカリ金属の炭酸塩5〜30とよりなるセメントに対する急結剤を得、当該急結剤を炭酸カルシウムに対して、0.1〜10添加したことを特徴とするセメント混和剤。
【請求項2】
上記石灰として生石灰または消石灰、アルミニウムの酸性塩として硫酸アルミニウム、アルカリ金属の炭酸塩として炭酸ソーダを使用する請求項1に記載のセメント混和物。

【公開番号】特開2011−148660(P2011−148660A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11845(P2010−11845)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(595160514)
【Fターム(参考)】