説明

セメント組成物、セメント用分散剤及びプラスチックの再利用法

【課題】、プラスチック廃棄物の再資源化の可能性を高めたセメント組成物、セメント用分散剤及びプラスチックの再利用法を提供する。
【解決手段】不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたスチレンフマル酸共重合体とセメントとを含有することとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物、セメント用分散剤及びプラスチックの再利用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック廃棄物はその殆どが埋立処分あるいは焼却処理されており、資源として有効活用されていなかったが、ここ数年各種リサイクル法の施行に伴い、プラスチックを含む製品の回収リサイクルの流れが加速する傾向にある。この状況に合わせて、近年、プラスチック廃棄物を再資源化することが試みられている。
【0003】
その一つとして、超臨界水を反応媒体とする反応により、プラスチック廃棄物を分解油化して、有用な油状物を回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、各種構造材料等に使用される繊維強化プラスチックについて超臨界水又は亜臨界水を用いてプラスチック成分を分解しガラス繊維、炭素繊維等の繊維を回収し、再利用する方法なども提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの方法において、プラスチックは分解により低分子化した油状成分となり主に液体燃料として再利用するものである。また、高温水蒸気による加水分解反応を利用した分解方法も提案されており、この方法で熱可塑性プラスチック及び熱硬化性プラスチックの有機高分子成分を一応分解することができる。また、硬化不飽和ポリエステル樹脂廃棄物を、ジカルボン酸、ジアミン等の分解用成分を用いて分解し樹脂原料を得て、不飽和ポリエステル樹脂を再合成するケミカルリサイクル方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、特許文献1,2に記載の超臨界法ではプラスチック成分をランダムに分解するため、分解生成物が多種多成分からなる油状物質となり一定品質を保つことが困難であった。このためゼオライトに代表される触媒を用いて油質の改質を行うなどの後処理が必要となりコスト高になること、また、改質した生成油においても灯油や軽油などの石油製品そのものにすることは困難であることから実用化には至っていない。また、特許文献3に記載の方法では、分解後の樹脂を再度不飽和ポリエステル樹脂として再利用してはいるものの、分解温度が高いために熱分解を起こしており再硬化させた際の物性が本来の不飽和ポリエステル樹脂とは異なる(熱硬化性樹脂としては低下する)ことや再硬化品にしめる分解樹脂の利用率が低いことが問題となる。
【0004】
そこで、本発明者らは、不飽和ポリエステルとその架橋部からなるプラスチックを亜臨界水を用いて該プラスチックの熱分解温度以下で分解して、再利用できる形で分解・分離する方法を提案している(例えば、特許文献4参照)。この方法では、不飽和ポリエステル樹脂の原料として再利用できるモノマー以外に、架橋部と有機酸の共重合体である架橋部酸共重合体(スチレンフマル酸共重合体等)を生成し、これを回収して再利用することができる。
【0005】
このように熱硬化性樹脂を材料とするプラスチック廃棄物の分解・回収方法が提案されているものの、この分解物をリサイクル材として利用するための具体的な検討はいまだ始まったばかりである。したがって、より具体的で有用な製品として提供できれば、プラスチック廃棄物の再資源化の可能性がますます高まると共に、プラスチック廃棄物の再利用も促進されると考えられる。
【特許文献1】特開平5−31000号公報
【特許文献2】特開平10−87872号公報
【特許文献3】特開平9−221565号公報
【特許文献4】特開2006−8984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、プラスチック廃棄物の再資源化の可能性を高めたセメント組成物、セメント用分散剤及びプラスチックの再利用法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するために、以下のことを特徴とする。
【0008】
セメント組成物に係る発明として、第1には、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたスチレンフマル酸共重合体とセメントとを含有することを特徴とする。
【0009】
第2には、第1の発明において、亜臨界水分解は、アルカリを含有する液でおこなわれたものであり、スチレンフマル酸共重合体は、亜臨界水分解後の分解液に酸を供給して析出させた固形分を回収して得られたものであることを特徴とする。
【0010】
セメント用分散剤に係る発明として、第3には、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたスチレンフマル酸共重合体を含有することを特徴とする。
【0011】
プラスチックの再利用法に係る発明として、第4には、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解し、セメント用分散剤としてスチレンフマル酸共重合体を回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたスチレンフマル酸共重合体とセメントとを含有することにより、セメント組成物としてプラスチック廃棄物の再資源化の可能性を高めることができる。また、このセメント組成物を原料とするセメントペーストやモルタル等は所定の流動性が確保される。例えば、前記セメントペーストは、市販の分散剤を用いたセメントペーストと同程度の流動性が確保され、一定時間経過後でも押し出し成形ができる。
【0013】
第2の発明によれば、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックから、セメント組成物の原料として再利用可能なスチレンフマル酸共重合体をより確実に得ることができる。さらに、セメントの水和反応促進剤である水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ分の混在が極小化するため、このスチレンフマル酸共重合体をセメント用分散剤として使用する際には配合比率の向上が図れる。
【0014】
第3の発明によれば、セメント組成物の流動性向上に有用なセメント用分散剤を得ることができる。
【0015】
第4の発明によれば、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックの分解物はセメント用分散剤として再利用可能になる。これによりプラスチック廃棄物の再資源化がますます図られ、資源を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたスチレンフマル酸共重合体とセメントとを含有することを特徴とするセメント組成物を提供する。このセメント組成物はセメントペースト、モルタル及びコンクリートの原料になるものであり、例えば、このセメント組成物に水を練り混ぜることでセメントペーストが得られ、さらに細骨材や粗骨材を加えることでコンクリート、モルタルが得られる。
【0017】
本発明のセメント組成物は上記スチレンフマル酸共重合体を含むことにより、所定の流動性を有するセメントペーストやモルタル等を得ることができる。すなわち、スチレンフマル酸共重合体はセメントの分散剤として作用するため、市販の分散剤を用いて混練したセメントペーストやモルタル等と比較して、同程度の流動性が確保される。したがって、本発明のセメント組成物を原料としたセメントペーストやモルタル等は、混練してから所定時間経た場合でも、市販の分散剤を用いて混練したセメントペーストやモルタル等と同様に押し出し成形ができる。
【0018】
このように不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックの分解物がセメントの分散剤として作用することはこれまで全く知られておらず、本発明者によって初めて見出されたものであり、この知見に基づいて本発明はなされたのである。
【0019】
本発明のセメント組成物におけるセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントをはじめ、フライアッシュセメントやシリカセメント等の混合セメント、エコセメント、特殊セメント等を例示することができ、特に制限されるものではない。
【0020】
本発明のセメント組成物におけるスチレンフマル酸共重合体及びセメントの配合率は特に限定されるものではない。例えば、スチレンフマル酸共重合体はセメントの分散剤としてセメントの重量に応じて設定され、セメントペースト、モルタルやコンクリートとした場合に市販の分散剤が一般的に設定される範囲になるように配合される。具体的には、後述する実施例において、セメントペーストの製造に際しセメント重量100重量部に対してスチレンフマル酸共重合体は0.1〜0.2%の範囲で添加される。
【0021】
次に、本発明のセメント組成物におけるスチレンフマル酸共重合体について詳細に説明する。
【0022】
このスチレンフマル酸共重合体は、上記のとおり、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水で分解して得られるものであり、不飽和ポリエステル樹脂の架橋部と不飽和ポリエステル部を構成する有機酸の化合物である。。具体的には、このプラスチックに水を加え、温度および圧力を上昇させて水を臨界点(臨界温度374.4℃、臨界圧力22.1MPa)以下の温度の亜臨界状態にして加水分解反応させて得るものである。ここで、温度は、上記プラスチックの熱分解温度を考慮し、かつ、分解処理を効率よく行うために、例えば180〜280℃、好ましくは200〜270℃とする。分解反応時の温度が180℃未満であると、分解処理に多大な時間を要するため処理コストが高くなる場合があり、さらにスチレンフマル酸共重合体の収率が低くなる傾向がある。分解反応時の温度が280℃を超えると、スチレンフマル酸共重合体の熱分解が著しくなり、スチレンフマル酸共重合体が低分子化され、固体としてのスチレンフマル酸共重合体を回収することが困難になる傾向がある。
【0023】
亜臨界水による処理時間は、反応温度等の条件によって異なるが、通常は1〜4時間である。分解反応時における圧力は、反応温度等の条件によって異なるが、好ましくは2〜15MPaである。
【0024】
上記の加水分解反応はアルカリの存在下で行うことが好ましい。これによって、加水分解反応性を向上させることができる。アルカリとしては、例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ塩を例示することができ、これらアルカリ塩を亜臨界水に含有させている。亜臨界水中のアルカリ塩の含有量は、反応効率やコスト面を考慮すると、一般的には、上記プラスチックを分解して得られるスチレンフマル酸共重合体に含まれる酸残基の理論モル数に対して、2モル当量以上10モル当量以下とすることが好ましい。
【0025】
上記の不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックは、多価アルコールと不飽和多塩基酸からなる不飽和アルキド樹脂が架橋剤により架橋された網状熱硬化性樹脂である。多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。不飽和多塩基酸成分としては、無水フマル酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸が挙げられる。また、架橋部は、架橋剤に由来する部分であり、スチレンを必須とし、メタクリル酸メチル等の重合性ビニルモノマーを必要に応じて併用することができる。
【0026】
上記のように、不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックをアルカリの存在下、亜臨界水で分解すると、スチレンフマル酸共重合体塩を含有する水溶液を得る。スチレンフマル酸共重合体塩はスチレン骨格とフマル酸骨格とを有し、カルボキシル基にカリウムやナトリウム等のアルカリ金属が結合した状態(COOやCOONa)のカリウム塩やナトリウム塩等のアルカリ金属塩であり、水溶性を示すものである。そして、このスチレンフマル酸共重合体塩を含有する水溶液に塩酸や硫酸等の酸を供給してスチレンフマル酸共重合体の固形分を析出させ、これをろ過等で水分を除去して回収し、乾燥することで酸の化合物である、目的のスチレンフマル酸共重合体を得る。酸の供給は、スチレンフマル酸共重合体の固形分を完全に析出させるためにも前記水溶液のpHを4以下とすることが好ましいが、pHが小さいほどスチレンフマル酸共重合体の固形分が析出しやすいので、好ましくは2以下となるように供給することが考慮される。pHの下限は特に設定されず、0である。
【0027】
スチレンフマル酸共重合体を得るために、上記のスチレンフマル酸共重合体塩を含有する水溶液に酸と共に疎水性の溶媒を供給してもよい。これによって、スチレンフマル酸共重合体の固形分と液相(水相と溶媒相)とに分離する。
【0028】
疎水性の溶媒としては、酢酸エステル類、ケトン類、アルコール類、エーテル類から選ばれた一種を単独で用いたり複数を併用したりすることができる。酢酸エステル類としては、酢酸イソブチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ペンチル等から選ばれる少なくとも一種を用いることができるが、これらの中でも、特に、酢酸イソブチルは脱水性能が高く工業的にも広く用いられており好ましい。また、ケトン類としては、メチルイソブチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、エチルn−ブチルケトン、ジn−プロピルケトン等から選ばれる少なくとも一種を用いることができるが、これらの中でも、特に、メチルイソブチルケトンは脱水性能が高く工業的にも広く用いられており好ましい。また、アルコール類としては、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、3,5,5−トリメチルヘキサノール等から選ばれる少なくとも一種を用いることができるが、これらの中でも、特に、炭素数5〜10(C5〜C10)のアルコール類であるn−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノールは脱水性能が高く価格も安価で好ましい。エーテル類としては、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等から選ばれる少なくとも一種を用いることができるが、これらの中でも、特に、ジイソプロピルエーテルは脱水性能が高く工業的にも広く用いられており好ましい。
【0029】
さらに、本発明で用いる疎水性の溶媒は、常温常圧で水に対する溶解度が0.1〜5wt%であることが好ましい。溶解度が0.1wt%未満の溶媒を使用するとスチレンフマル酸共重合体の脱水が起こりにくくなり、溶媒を加えない場合と同様に分離操作が不能となる。また、5wt%を超える溶媒を使用すると、溶解度程度の使用量では脱水能がほとんど無くスチレンフマル酸共重合体を分離することは困難となる場合がある。
【0030】
また、本発明で使用する疎水性の溶媒について、その脱水能は水相中に溶解しているスチレンフマル酸共重合体の量に依存する。このスチレンフマル酸共重合体の量は、分解時の固形分濃度と分解率によって決定されるが、分解率がほぼ100wt%の場合は固形分濃度に依存し、通常、水相に溶解しているスチレンフマル酸共重合体の量は1〜10wt%程度となる。この領域では、疎水性の溶媒による脱水能は、その溶媒の溶解度付近で最も効果を発揮する。したがって、疎水性の溶媒の添加量が少ない場合は脱水能が低下する恐れがあり、逆に、疎水性の溶媒の添加量が多い場合はスチレンフマル酸共重合体が粘着性の高いガム状の物質となり回収する際に操作が困難になるおそれがある。このため、疎水性の溶媒の供給量は、各溶媒の溶解度の0.5倍量以上であることが考慮される。
【0031】
そして、上記のように、疎水性の溶媒と酸を供給すると、使用する疎水性の溶媒の種類等に応じて、スチレンフマル酸共重合体の固形分が沈殿したり、溶媒相と水相との間に固相として浮いたりして、スチレンフマル酸共重合体の固形分と液相とを分離することができる。
【0032】
ここで、本発明ではスチレンフマル酸共重合体の固形分と液相との分離は沈殿分離法により行うのが好ましく、例えば濾過膜を用いて濾過して分離する方法に比べて、スチレンフマル酸共重合体が濾材を目詰まりさせて濾過不能になったり、濾材との分離ができなくなるようなおそれがなく、簡易に回収することができる。回収した固形分を脱水、乾燥することによって、酸の化合物である、目的のスチレンフマル酸共重合体を得ることができる。
【0033】
このように得られたスチレンフマル酸共重合体は、セメントの水和反応促進剤になる水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ分が混在している場合があるが、上記の通りスチレンフマル酸共重合体塩を含有する水溶液に酸を供給して析出した固形分を回収して得たものであることからアルカリ分は極小化している。このため、このスチレンフマル酸共重合体をセメント用分散剤として使用する際には配合比率の向上が図れる。また、粉砕することで粉体として使用できるため、運搬コストが低減し、取り扱い性も向上する。したがって、プラスチック廃棄物の再資源化の可能性がますます高まり、プラスチック廃棄物の再利用が促進される。
【実施例】
【0034】
<実施例1>
グリコール類(プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコールの混合物)と無水マレイン酸を当量配合したワニスに、架橋剤としてスチレンをワニスと当量配合した不飽和ポリエステル樹脂と、炭酸カルシウム及びガラス繊維を含有する樹脂組成物を加熱硬化して製造された繊維強化プラスチック(FRP)の硬化物を粉砕し、2mmの篩で処理した粉砕物:400g、濃度0.8mol/LのNaOH:1600gを反応釜に仕込み、230℃、2Hrの条件で亜臨界水により処理し、冷却後、固形物と水溶液に分離する。その水溶液に疎水性溶媒である、酢酸イソブチルを水溶液100g当たり2mlの割合で添加し、十分攪拌した後に、1Nに調整した塩酸を加え、pHを3以下まで落とす。これにより、酸の化合物であるスチレンフマル酸共重合体(以下、「SFC(H)」とも表記する)が生成する。これを濾過し、さらに脱水・乾燥・粉砕を行い、SFC(H)の粉体を得る。
【0035】
上記のように回収したSFC(H)を市販の分散剤:マイティ150(花王(株)製)及びスーパー200(グレースケミカルズ(株)製)と併用して使用した。その混合割合としては、合計0.4%の添加量のうちマイティ150を0.20%、スーパー200を0.10%、SFC(H)を0.10%(いずれも、セメント重量に対して固形分換算で)秤量し、さらに水も30部秤量した。
【0036】
まず、秤量した水にマイティ150とスーパー200を入れ、十分に攪拌し、分散剤の水溶液を作製した。一方、セメントとSFC(H)をミキサーに入れて十分に混練した。その後、マイティ150とスーパー200を溶解させた水溶液をミキサーに入れ、十分に混練した。混練したセメント組成物のフロー値を簡易フロー値測定器により測定した。
<実施例2>
実施例1と同様にして得られたSFC(H)をマイティ150、スーパー200と併用して使用した。その混合割合としては、合計0.4%の添加量のうちマイティ150を0.15%、スーパー200を0.10%、SFC(H)を0.15%(いずれも、セメント重量に対して固形分換算で)の割合とした。以下、実施例1と同様である。
<実施例3>
実施例1と同様にして得られたSFC(H)をマイティ150、スーパー200と併用して使用した。その混合割合としては、合計0.4%の添加量のうちマイティ150を0.10%、スーパー200を0.10%、SFC(H)を0.20%(いずれも、セメント重量に対して固形分換算で)の割合とした。以下、実施例1と同様である。
<実施例4>
実施例1と同様に亜臨界水分解し、冷却後、固形物と水溶液に分離する。その水溶液に疎水性溶媒である、メチルイソブチルケトンを水溶液100g当たり1.5mlの割合で添加し、十分攪拌した後に、濃硫酸を加え、pHを3以下まで落とす。これにより、SFC(H)が生成する。これを濾過し、さらに脱水・乾燥・粉砕を行い、SFC(H)の粉体を得る。
【0037】
上記のように回収したSFC(H)を市販の分散剤:マイティ150(花王(株)製)及びスーパー200(グレースケミカルズ(株)製)と併用して使用した。その混合割合としては、合計0.4%の添加量のうちマイティ150を0.20%、スーパー200を0.10%、SFC(H)を0.10%(いずれも、セメント重量に対して固形分換算で)秤量し、さらに水も30部秤量した。
【0038】
まず、秤量した水にマイティ150とスーパー200を入れ、十分に攪拌し、分散剤の水溶液を作製した。一方、セメントとSFC(H)をミキサーに入れて十分に混練した。その後、マイティ150とスーパー200を溶解させた水溶液をミキサーに入れ、十分に混練した。混練したセメント組成物のフロー値を簡易フロー値測定器により測定した。
<実施例5>
実施例4と同様にして得られたSFC(H)をマイティ150、スーパー200と併用して使用した。その混合割合としては、合計0.4%の添加量のうちマイティ150を0.15%、スーパー200を0.10%、SFC(H)を0.15%(いずれも、セメント重量に対して固形分換算で)の割合とした。以下、実施例4と同様である。
<実施例6>
実施例4と同様にして得られたSFC(H)をマイティ150、スーパー200と併用して使用した。その混合割合としては、合計0.4%の添加量のうちマイティ150を0.10%、スーパー200を0.10%、SFC(H)を0.20%(いずれも、セメント重量に対して固形分換算で)の割合とした。以下、実施例1と同様である。
<比較例>
マイティ150、スーパー200をセメントに対して各々0.3%、0.10%(いずれも、セメント重量に対して固形分換算で)秤量し、水を30部添加して、十分にミキサーにより混練し、簡易フロー測定器により評価した。
【0039】
表1に、各実施例及び比較例に使用したセメント組成物のセメント、水、分散剤の配合量を示す。
【0040】
【表1】

<セメント組成物のフロー値測定方法>
図1(a)に示すように、下部の直径が90mm、上部の直径が65mm、高さ100mmの半円錐形の容器1に、ミキサーで混練したセメント組成物を入れ、さらに治具にて押し詰める。次いで、図1(b)に示すように、容器をゆっくり上方に引き抜き、1hr放置後のセメント組成物2の変形度合い(セメント組成物の上端位置の変位A)をフロー値として測定した。セメント組成物に流動性があれば、フロー値は大きくなり、流動性が悪いとフロー値は小さくなる。比較例のセメント組成物は、1時間後でも押出し成形機による押出しが可能である。すなわち、比較例のセメント組成物よりもフロー値が大きければ1時間後でも押出し成形が可能といえる。このため、比較例のセメント組成物のフロー値を基準とし、このフロー値より大きい場合は「○」、小さい場合は「×」として評価した。
【0041】
表2に、各セメント組成物のフロー値の測定結果を示す。
【0042】
【表2】

以上より、飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたSFC(H)をセメント用分散剤として用いると、比較例のセメント組成物と同等以上の流動性を有するセメント組成物が得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】セメント組成物のフロー値測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 セメント組成物
A 変位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたスチレンフマル酸共重合体とセメントとを含有することを特徴とするセメント組成物。
【請求項2】
亜臨界水分解は、アルカリを含有する液でおこなわれたものであり、スチレンフマル酸共重合体は、亜臨界水分解後の分解液に酸を供給して析出させた固形分を回収して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解して得られたスチレンフマル酸共重合体を含有することを特徴とするセメント用分散剤。
【請求項4】
不飽和ポリエステル部とその架橋部からなる不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを亜臨界水分解し、セメント用分散剤としてスチレンフマル酸共重合体を回収することを特徴とするプラスチックの再利用法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−107861(P2009−107861A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279532(P2007−279532)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】