説明

セメント組成物

【課題】 高強度且つ高ワーカビリティを有するモルタルやコンクリートを簡便に製造することができるセメント組成物を提供する。
【解決手段】 2CaO・SiO2含有量が30〜60質量%であるポルトランドセメントと、BET比表面積が5〜15m2/gのシリカフュームとからなることを特徴とするセメント組成物。
ポルトランドセメントは、3CaO・Al2O3含有量が6質量%以下であることが好ましく、シリカフュームは、Al2O3含有量が0.5〜5.5質量%、SO3含有量が0.01〜0.025質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度且つ高ワーカビリティを有するモルタルやコンクリートの製造に使用されるセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、80N/mm2以上の超高強度のモルタルやコンクリートを製造するための一手段として、水結合材比を小さくし、シリカフュームを混和材として使用することで、ポゾラン反応による強度を増進させる手法がある(例えば、特許文献)。ここでシリカフュームは、非晶質の二酸化ケイ素を主成分とし、BET比表面積が18m2/g以上の微粒子である。
【特許文献1】特開平5−58701号公報
【0003】
しかしながら、従来のシリカフュームを混和材として使用した場合、シリカフュームは超微粒子であるため、二次凝集を起こし易く、モルタルやコンクリート中での分散性が悪いという問題があった。また、モルタルやコンクリートの水結合材比を15%より小さくすると、流動性が低下してしまい、汎用ミキサでの練り混ぜは困難であるという問題があった。さらに、流動性を向上させるため、減水剤の添加率を上げると、コストアップや凝結遅延を招くという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、高強度且つ高ワーカビリティを有するモルタルやコンクリートを簡便に製造することができるセメント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、種々検討した結果、特定のポルトランドセメントと、特定のBET比表面積を有するシリカフュームを組み合わせることにより、モルタルやコンクリート中でのシリカフュームの分散性が向上し、水結合材比を極端に小さくしても良好な流動性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、2CaO・SiO2含有量が30〜60質量%であるポルトランドセメントと、BET比表面積が5〜15m2/gのシリカフュームとからなることを特徴とするセメント組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセメント組成物を用いれば、製造作業中の取扱いが簡便で、少ない減水剤の使用で高強度且つ高ワーカビリティを有するモルタルやコンクリートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のセメント組成物は、2CaO・SiO2(以降、C2Sと称す)含有量が30〜60質量%であるポルトランドセメントと、BET比表面積が5〜15m2/gのシリカフュームとからなるものである。
ポルトランドセメントのC2S含有量が30質量%未満では、モルタルやコンクリートの水結合材比が極端に小さく(25%以下)なると、流動性が低下してしまい、汎用ミキサでの練り混ぜは困難になる。また、流動性を向上させるため、減水剤の添加率を上げる必要があり、コストアップや凝結遅延を招く虞がある。C2S含有量が60質量%を超えると、モルタルやコンクリートの初期の強度発現性が低下する。ポルトランドセメントのC2S含有量は、モルタルやコンクリートの強度発現性や流動性等から、32〜55質量%が好ましく、34〜50質量%がより好ましい。
【0009】
本発明においては、ポルトランドセメントの3CaO・Al2O3(以降、C3Aと称す)含有量は、モルタルやコンクリートの流動性や減水剤の添加率等から、6質量%以下(より好ましくは4.5質量%以下 、特に好ましくは3質量%以下 )であることが好ましい。
このようなポルトランドセメントとしては、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントが挙げられる。
【0010】
本発明で使用するシリカフュームのBET比表面積は5〜15m2/gである。シリカフュームのBET比表面積が5m2/g未満では、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下する。シリカフュームのBET比表面積が15m2/gを越えると、モルタルやコンクリートの水結合材比が極端に小さく(25%以下)なると、流動性が低下してしまい、汎用ミキサでの練り混ぜは困難になる。また、流動性を向上させるため、減水剤の添加率を上げる必要があり、コストアップや凝結遅延を招く虞がある。シリカフュームのBET比表面積は、モルタルやコンクリートの強度発現性や流動性等から、7〜12m2/gが好ましく、8〜11.5m2/gがより好ましい。
【0011】
本発明においては、シリカフュームのAl2O3含有量は、モルタルやコンクリートの流動性の経時変化の低減や減水剤の添加率等から、0.5〜5.5質量%(より好ましくは0.55〜1.2質量% 、特に好ましくは0.6〜1.0質量% )であることが好ましい。
また、モルタルやコンクリートの流動性の経時変化の低減や減水剤の添加率等から、シリカフュームのSO3含有量は0.01〜0.025質量%(より好ましくは0.011〜0.023質量% 、特に好ましくは0.012〜0.02質量% )であることが好ましい。
【0012】
本発明において、ポルトランドセメントとシリカフュームの割合は、ポルトランドセメント100質量部に対して、シリカフューム5〜50質量部(より好ましくは7〜45質量部 、特に好ましくは10〜40質量部)であることが好ましい。シリカフュームが5質量部未満では、モルタルやコンクリートの水結合材比が極端に小さく(25%以下)なると、流動性が低下してしまい、汎用ミキサでの練り混ぜは困難になる。また、流動性を向上させるため、減水剤の添加率を上げる必要があり、コストアップや凝結遅延を招く虞がある。シリカフュームが50質量部を超えると、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下する。
【0013】
このような本発明のセメント組成物は、それぞれの構成材料を秤量した上で混合して製造することができる。この場合、すべての構成材料を一度に混合しても良く、一部の構成材料のみを予め混合した後、残部の構成材料を混合するようにすることもできる。また、モルタル又はコンクリートの混練時にそれぞれの構成材料の所定量を秤量し、これを水等と同時に混合することによって調製することもできる。更には、一部の構成材料を先に混合し、残りを上記混練時に追加添加することも可能である。即ち、本発明のセメント組成物は必ずしも予め混合された混合粉体として提供される必要はなく、モルタル又はコンクリートとして混練されたときに所定の混合割合で各構成材料が含まれていれば良い。
【0014】
なお、セメント組成物を使用して、モルタル又はコンクリートを製造する際は、モルタルやコンクリートの流動性やその経時変化の低減、さらには強度発現性等から、減水剤として、ポリカルボン酸系の高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用するのが好ましい。
【実施例】
【0015】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0016】
1.使用材料
以下の材料を使用した。
(1)ポルトランドセメント
A:中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製、C2S含有量36質量%、
C3A含有量4質量%、ブレーン比表面積3300cm2/g)
B:低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製、C2S含有量55質量%、
C3A含有量3質量%、ブレーン比表面積3200cm2/g)
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製、C2S含有量19質量%、
C3A含有量9質量%、ブレーン比表面積3200cm2/g)
(2)シリカフューム
A:BET比表面積10.6m2/g、Al2O3含有量0.7質量%、SO3含有量0.015質量%
B:BET比表面積19m2/g
(3)細骨材:河東産山砂(密度2.61g/cm3、吸水率1.66%)
(4)粗骨材:岩瀬産砕石(最大寸法20mm、密度2.64g/cm3、吸水率0.67%)
(5)減水剤
A:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤((株)エヌエムビー製)
B:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(花王(株)製)
(6)混練水:水道水
【0017】
2.セメント組成物の製造
上記各ポルトランドセメントとシリカフュームを表1に示す割合で、混合機(太平洋機工製流動混合機(公称容量0.05m3))にて混合し、セメント組成物を製造した。
【0018】
【表1】

【0019】
3.コンクリートの製造
上記各セメント組成物及び各材料を使用して、表2のコンクリートを製造した。
【0020】
【表2】

【0021】
得られたコンクリートについて、以下の測定を行った。
(1)スランプフロー及び50cmフロー到達時間
「JIS A 1150」に従って測定した。
(2)圧縮強度
「JIS A 1108」に従って測定した。なお、供試体の作製は、JASS 5T-703「高強度コンクリート用の圧縮強度試験用供試体の作り方(案)」に従って作製した。
養生は、20℃水中養生(28日)と、簡易断熱養生(91日)を行った。なお、簡易断熱養生は、JASS 5T-705「簡易断熱養生供試体による構造体コンクリート強度の推定方法(案)」に従い、雰囲気温度は20℃とした。
結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
表3より、本発明のセメント組成物では、水セメント組成物比が15%と極端に小さい場合でも、高強度且つ高ワーカビリティを有するコンクリートを製造できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2CaO・SiO2含有量が30〜60質量%であるポルトランドセメントと、BET比表面積が5〜15m2/gのシリカフュームとからなることを特徴とするセメント組成物。
【請求項2】
ポルトランドセメントの3CaO・Al2O3含有量が6質量%以下である請求項1記載のセメント組成物。
【請求項3】
シリカフュームのAl2O3含有量が0.5〜5.5質量%である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
シリカフュームのSO3含有量が0.01〜0.025質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント組成物。