説明

セラミックスの製造方法

【課題】本発明は、セラミックス形成金属化合物溶液を加熱することにより適度な粒径のセラミックス粒子を得ることを目的とする。
【解決手段】セラミックス形成金属化合物を溶解したセラミックス形成金属化合物溶液を加熱してセラミックスを製造する方法において、セラミックス形成金属化合物の加熱分解開始温度における加熱重量減少率が100重量%未満である高分子物質を含有するセラミックス形成金属化合物溶液を、セラミックス形成金属化合物の分解開始温度以上の温度に加熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物等のセラミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池、太陽電池、燃料電池等は、高エネルギー密度、高電圧を有しており繰り返し充放電によるメモリー効果がないことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の小型携帯電子機器の電極として広く利用されて来ている。非水電解液二次電池の電極材料として金属酸化物や複合金属酸化物等のセラミックスが利用されている。
【0003】
例えば、セラミックス粒子を製造する方法として塩、酸化物、水酸化物、有機金属化合物の出発材料の溶液または懸濁液を空気/天然ガス混合物もしくは水素/空気混合物の雰囲気下で、例えば600℃から1000℃の高温に噴霧、加熱して熱分解することにより平均粒径が均一な微細粒子の粉体を製造する方法が知られている(特許文献1)。また金属塩や金属錯体等の金属酸化物形成溶液を基材上に噴霧して、大気中で、該金属化合物の金属熱分解温度以上の温度に加熱することにより金属酸化物膜を生成させる方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−529758号公報
【特許文献2】特開2007−238393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、微粒子状の金属酸化物等のセラミックス粒子を製造する手段として、例えば上記特許文献1に記載の方法に記載されているような方法によりセラミックス形成金属化合物含有溶液を用いてセラミックス粒子を製造するには高温に加熱するための装置を必要とする等の難点がある。また特許文献2に記載の方法を適用してセラミックス形成金属化合物含有溶液を金属化合物の熱分解温度以上の温度に加熱した場合には、金属化合物の分解反応が一気に起こり微細粒子が生成する。この微細粒子はその粒子が極めて小さい故に取り扱い性に難点があるという問題があった。そこで取り扱い性を良くするために微細粒子を、さらに高温に加熱し所望の粒子径のものを得ようとしても適度の大きさの粒径を有する微粒子のものを得ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の高分子物質を存在させたセラミックス形成金属化合物溶液を加熱すると、適度な粒径のセラミックス粒子得ることを見出し本発明を為すに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)セラミックス形成金属化合物を溶解したセラミックス形成金属化合物溶液を加熱してセラミックスを製造する方法において、セラミックス形成金属化合物の加熱分解開始温度における加熱重量減少率が100重量%未満である高分子物質を含有するセラミックス形成金属化合物溶液を、セラミックス形成金属化合物の分解開始温度以上の温度に加熱することを特徴とするセラミックスの製造方法、

(2)前記高分子物質が、セラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度における加熱重量減少率が100重量%未満であるセルロース系高分子、ポリアルキレングリコール、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルから選ばれる少なくとも1種である上記(1)記載のセラミックスの製造方法、
(3)セラミックス形成金属化合物が、遷移金属の金属塩、金属錯体化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である上記(1)記載のセラミックスの製造方法、
(4)前記金属塩が、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、チタンから選ばれる金属を含有する金属化合物であり塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、臭素酸塩である上記(1)記載のセラミックスの製造方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によると、金属化合物の急激な熱分解反応の進行を抑制し熱分解初期の微細結晶を維持した微粒子のセラミックスが得られ、得られた微粒子をさらに高温に加熱することにより、生成した微粒子の結晶が成長した粒径の大きな粒子を得ることができるので、結晶粒子の大きさを所望の大きさに制御することができる。また一般的なセラミックス合成温度よりも低温において良好な結晶粒子で構造が安定した微粒子のセラミックスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られたCoO2粒子のSEM写真である。
【図2】実施例2で得られたCoO2粒子のSEM写真である。
【図3】実施例3で得られたCoO2粒子のSEM写真である。
【図4】比較例1で得られたCoO2粒子のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、セラミックス形成金属化合物を含有するセラミックス形成金属化合物溶液中に、該セラミックス形成金属化合物の熱分解温度で、分解消失することない高分子物質を存在させてセラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度以上の温度で加熱し、さらに適宜の高温に加熱することにより所望の大きさの粒径を有するセラミックス粒子を製造する方法である。
【0011】
本発明の方法においては、セラミックス形成金属化合物の溶液中に、前記の特定の高分子物質を存在させてセラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度以上に加熱すると、セラミックス形成金属化合物の急激な熱分解反応の進行が抑制される。すなわち、先ず熱分解開始温度で微粒子が生成され、さらに高温に加熱することにより、上記の微粒子が
成長した粒径の大きな粒子を得ることができる。
したがって、本発明の方法は加熱温度により、所望する適宜の粒径を有するセラミックス粒子を得ることができる。
これはセラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度で生成した微粒子が、その系に存在する高分子物質により熱分解反応の進行が抑制され微粒子状態が維持され、さらに高温に加熱することにより、高分子物質が消失し粒径の大きな粒子が得られる。
【0012】
本発明の方法における、セラミックス形成金属化合物は、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、バナジウム、クロム、イットリア、セリウム、タングステン、ランタン等の遷移金属等の金属塩又は金属錯体化合物が用いられる。このような金属塩としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、燐酸塩、臭素酸塩が挙げられる。これらのうち入手が容易な塩化物、硝酸塩、酢酸塩が好ましく使用される。
【0013】
上記遷移金属化合物の金属塩として、具体的なものとしては、例えば、塩化コバルト(II)六水和物、蟻酸コバルト(II)水和物、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート二水和物、酢酸コバルト(II)四塩、蓚酸コバルト(II)二水和物、硝酸コバルト(II)六水和物、塩化コバルト(II)アンモニウム六水和物、亜硝酸コバルト(III)ナトリウム、硫酸コバルト(II)七水和物等のコバルト化合物、塩化ニッケル(II)六金水和物、酢酸ニッケル(II)四水和物、過塩素酸ニッケル(II)六水和物、臭化ニッケル(II)三水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、次亜燐酸ニッケル(II)六水和物、硫酸ニッケル(II)六水和物等のニッケル化合物、酢酸マンガ(III)二水和物、酢酸マンガン(II)四水和物、硝酸マンガン(II)二水和物、マンガン(III)アセチルアセトナート等のマンガン化合物、塩化鉄(II)四水和物、クエン酸鉄(III)、酢酸鉄(II),蓚酸鉄(II)二水和物、硝酸鉄(III)九水和物、乳酸鉄(II)三水和物、燐酸鉄、硫酸鉄(II)七水和物等の鉄化合物、四塩化チタン、チタンアセチルアセトナート等のチタン化合物、硝酸イットリア等のイットリア化合物、硝酸セリウム等のセリウム化合物、タングステン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0014】
また金属属錯体化合物としては、上記遷移金属錯体が挙げられる。具体的には、例えば、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛等を挙げることができる。
【0015】
セラミックス形成金属化合物を溶解し得る溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の炭素数5以下の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類、メチルエチルケトン等のケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、トルエン等が挙げられ、これらの中からセラミック成形金属化合物である遷移金属化合物の塩または金属錯体を溶解させ、高分子物質と親和性のある溶媒を適宜選択して用いられる。遷移金属化合物の塩または金属錯体、及び高分子物質に対して溶解性を高めるために必要に応じ2種以上の溶媒を混合して使用することができる。そのような混合溶媒としては、例えば、水−メタノール混合溶媒、水−エタノール混合溶媒、水−イソプロパノール混合溶媒等の水と低級アルコールとの混合溶媒が好適に用いられる。
【0016】
本発明に使用される高分子物質は、セラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度における加熱重量減少率が100重量%未満であるものが使用される。このような高分子物質としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系高分子、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテル等が挙げられるが、これらのうちで、使用する金属化合物の熱分解開始温度における加熱重量減少率が100重量%未満のものを適宜選択して用いることが必要である。
これらのうち特にセルロース系高分子、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が好ましい。
【0017】
本発明において、セラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度における高分子物質の加熱重量減少率が100重量%未満であるとは、セラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度において高分子物質に由来する炭素成分が残存していることをいう。前記高分子物質に由来する炭素成分とは、高分子物質またはその分解物である。
【0018】
本発明において、セラミックス形成金属化合物の加熱分解開始温度とは、使用される金属化合物により異なるが、セラミックス形成金属化合物を昇温速度10℃/分で加熱したとき、重量減少率が5%に達した時点の温度を熱分解開始温度とする。上記熱分解開始温度は、例えば、熱天秤により測定することができる。
【0019】
本発明において、上記高分子物質は、セラミックス生成金属化合物に対して、通常1〜50重量%の範囲で用いられ、好ましくは3〜30重量%、更に好ましくは3〜20重量%である。
【0020】
本発明の方法により生成されるセラミックス粒子は、セラミックス形成金属化合物を加熱分解する環境雰囲気によりその形態が異なり、酸化物、窒化物、硫化物あるいは遷移金属複合リン酸化合物等を得ることができる。例えば、セラミックス形成金属化合物を大気中又は酸素雰囲気で加熱分解を行った場合には酸化物が生成され、窒素ガス及び/又はアンモニアガス雰囲気下で加熱分解を行った場合には窒化物が生成される。またセラミックス形成金属化合物中にリン酸化合物を共存させて還元性ガスあるいは不活性ガスの存在下で熱分解した場合に金属リン酸化合物(リン酸複合物)を得ることができる。
【0021】
なお、遷移金属複合リン酸化合物を得る場合には、セラミックス形成金属化合物として遷移金属を選択すると共に、リン酸化合物を加えることにより得ることができる。リン酸化合物としては、例えば、メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸やこれらの塩等のリン酸類、亜リン酸や亜リン酸塩等、次亜リン酸や次亜リン酸塩等が挙げられる。
【0022】
本発明の方法により例えば金属酸化物のセラミックス粒子を得る場合、セラミックス形成金属化合物と高分子物質を含有する溶液を、坩堝に入れ、大気雰囲気の炉内において室温からセラミックス形成金属化合物の分解開始温度に昇温、加熱する。加熱条件は任意であるが、例えば分解開始温度その温度で所要時間、通常20分〜1時間程度保持し、次いで所望する焼成温度で、例えば、300℃〜600℃で所要時間、例えば、30分〜2時間程度加熱することにより目的とする大きさの粒径のセラミックス粒子を生成することができる。またセラミックス形成金属化合物と高分子物質を含有する溶液を、セラミックス形成金属化合物の分解開始温度に調整された大気雰囲気下の炉内に噴霧し、次いで所定の高い温度に調整した炉内において加熱することにより所望の粒径を有する微細なセラミックス粒子を得ることができる。なお、噴霧の場合も加熱条件は坩堝による場合と同様である。
【0023】
なお、セラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度は、使用される金属化合物の種類によって異なるが、金属塩の場合概ね200℃前後である。
【0024】
本発明の方法により得られたセラミックス粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア(株式会社マウンテック社製、MAC VIEW)により平均粒度を求めることができる。
【0025】
このように、本願発明によれば、高分子物質を含有するセラミックス形成金属化合物溶液を使用される遷移金属化合物の分解開始温度以上の適宜の温度に加熱することにより所望の粒径を有するセラミックス粒子を得ることができる。
【実施例】
【0026】
実施例1
硝酸コバルト(II)六水和物[Co(NO・6HO(分子量:291.03)](熱分解開始温度200℃)29gを、水70gとメタノール50gとの混合溶媒に溶解し、これにエチルセルロース(日進化成株式会社製、STD200)(硝酸コバルトの熱分解開始温度200℃における加熱重量減少率5重量%)の10wt%エタノール溶液50gを混合した。この混合溶液をバイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmで5時間攪拌したのち、2時間室温で保持して高分子物質含有セラミックス形成金属化合物溶液を調整した。
この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して200℃に昇温し、200℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。
炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放してコバルト金属酸化物(CoO)の微粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)により粒子5点の平均粒径を求めた。得られた微粒子は平均粒子径282nmであった。(以下の実施例、比較例において同様にして微粒子の平均粒径を求めた。)得られた微粒子のSEM写真を図1に示す。
【0027】
比較例1
実施例1に使用したと同様の硝酸コバルト(II)六水和物を、実施例1と同様の溶媒に溶解し、実施例1と同様にバイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmで5時間攪拌したのち、2時間室温で保持してエチルセルロースを含有しないセラミックス形成金属化合物溶液を調整した。
この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して200℃に昇温し、200℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を550℃に昇温し分解反応を終了した。
炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放してコバルト金属酸化物(CoO)の微粒子を得た。得られた微粒子の平均粒径を実施例1と同様に求め、平均粒子径は39nmであった。得られた微粒子のSEM写真を図4に示す。
【0028】
実施例2
実施例1に使用したと同様溶液を使用し、この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して200℃に昇温し、200℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を500℃に昇温し分解反応を終了して、コバルト金属酸化物(CoO)の微粒子を得た。得られた微粒子の平均粒径を実施例1と同様に求め、平均粒子径は175nmであった。得られた微粒子のSEM写真を図2に示す。
【0029】
実施例3
実施例1に使用したと同様溶液を使用し、この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して200℃に昇温し、200℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を300℃に昇温し分解反応を終了して、コバルト金属酸化物(CoO)の微粒子を得た。得られた微粒子の平均粒径を実施例1と同様に求め、平均粒子径は93nmであった。得られた微粒子のSEM写真を図3に示す。
【0030】
実施例4硝酸コバルト(II)六水和物[Co(NO・6HO(分子量:291.03)](熱分解開始温度200℃)29gを、水:イソプロパノール(3:1)混合溶媒に溶解し、高分子物質としてウレタン樹脂(荒川化学工業社製、ユリアーノW321)を使用した。実施例1と同様にして、高分子物質含有セラミックス形成金属化合物溶液を調整した。この溶液を大気雰囲気下に300℃に加熱された炉内にスプレー装置(ノードソン社製)により噴霧し粉体状の微粒子を得た。得られた微粒子を、さらに大気雰囲気下600℃に1時間を要して昇温しその温度で20分間保持したのち、60℃に冷却し、平均粒径127nmの金属酸化物(CoO)の微粒子を得た。
【0031】
比較例2
実施例4においてウレタン樹脂を使用しなかった以外は、実施例4と同様にして金属酸化物(MnO)の微粒子を得た。得られた微粒子は平均粒子径14nmであった。
【0032】
実施例5実施例1に使用した硝酸コバルト(II)六水和物の代わりに、酢酸コバルト(II)四塩を使用した以外は、実施例1と同様に行って、コバルト金属酸化物(CoO)の微粒子を得た。得られたコバルト金属酸化物(CoO)の微粒子は平均粒子径231nmであった。
【0033】
実施例6実施例1の硝酸コバルトの代わりに、酢酸マンガン(II)六水和物[Mn(CH3OO)・6HO](分子量173.03)(熱分解開始温度190℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高分子物質含有セラミックス形成金属化合物溶液を調整した。この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して200℃に昇温し、200℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を500℃に昇温し分解反応を終了した。炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放して金属酸化物(MnO)の微粒子を得た。得られた微粒子は平均粒子径132nmであった。
【0034】
実施例7
実施例1の硝酸コバルトの代わりに、硝酸鉄(II)九水和物(熱分解開始温度180℃)を使用し、高分子物質としてポリエチレングリコール1000(関東化学社性、硝酸鉄の熱分解温開始温度における加熱重量減少率11重量%)24gを、水30g、メタノール30gの混合溶媒に添加した以外は、実施例1と同様にして、高分子物質含有セラミックス形成金属化合物溶液を調整した。この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して180℃に昇温し、この温度で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放して金属酸化物(Fe)の微粒子を得た。得られた微粒子は平均粒子径169nmであった。
【0035】
実施例8
実施例1における硝酸コバルトの代わりに塩化ニッケル(II)六水和物(熱分解開始温度200℃)20g、ポリエチレングリコール20000(関東化学社製、塩化ニッケルの熱分解温開始温度における加熱重量減少率2重量%)10gを、水エタノール混合溶媒(混合比、水:エタノール=2:1)の溶媒50gを用いた以外は、実施例1と同様にして高分子物質含有セラミックス形成金属化合物溶液を調整した。この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して200℃に昇温し、この温度で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放してニッケル金属酸化物の微粒子を得た。得られた微粒子は平均粒子径474nmであった。
【0036】
実施例9
亜鉛アセチルアセトナート[Zn(CH3COCHCOCH3)2(分子量:263.6)](熱分解開始温度200℃)10gを、トルエン70gとメタノール50gとの混合溶媒に溶解し、これにアクリル樹脂(オリコックス 日進化成株式会社製、STD200)(亜鉛アセチルアセトナートの熱分解開始温度200℃における加熱重量減少率5重量%)の3wt%メタノール溶液50gを混合した。この混合溶液をバイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmで5時間攪拌したのち、2時間室温で保持して高分子物質含有セラミックス形成金属化合物溶液を調整した。
この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して200℃に昇温し、200℃で0.5時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。
炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放して亜鉛酸化物(ZnO)の微粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)により粒子5点の平均粒径を求めた。得られた微粒子は平均粒子径254nmであった。
【0037】
実施例10
チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)(熱分解開始温度300℃)10gを、溶媒としてイソプロピルアルコール50gに溶解し、これにウレタン樹脂(KL593、荒川化学工業社製)(チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)の熱分解開始温度300℃における加熱重量減少率12重量%)2gを混合した。この混合溶液をバイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmで1時間攪拌したのち、2時間室温で保持して高分子物質含有セラミックス形成金属溶液を調整した。
この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から0.5時間を要して200℃に昇温し、200℃で0.5時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。
炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放してチタン酸化物(TiO)の微粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)により粒子5点の平均粒径を求めた。得られた微粒子は平均粒子径71nmであった。
【0038】
実施例11
硝酸イットリウム(熱分解開始温度250℃)5gを、溶媒としてエタノール30gに溶解し、これにエチルセルロース樹脂(STD10、日進化成株式会社製)(硝酸イットリウムの熱分解開始温度250℃における加熱重量減少率20重量%)2gを混合した。この混合溶液をバイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmで4時間攪拌したのち、2時間室温で保持して高分子物質含有セラミックス形成金属溶液を調整した。
この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して250℃に昇温し、250℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。
炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放してイットリウム酸化物の微粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)により粒子5点の平均粒径を求めた。得られた微粒子は平均粒子径57nmであった。
【0039】
実施例12
硝酸セリウム(熱分解開始温度230℃)5gを、溶媒としてエタノール30gに溶解し、これにエチルセルロース樹脂(STD10、日進化成株式会社製)(硝酸セリウムの熱分解開始温度230℃における加熱重量減少率15重量%)2gを混合した。この混合溶液をバイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmで3時間攪拌したのち、2時間室温で保持して高分子物質含有セラミックス形成金属化合物溶液を調整した。
この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して230℃に昇温し、230℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。
炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放してセリウム酸化物の微粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)により粒子5点の平均粒径を求めた。得られた微粒子は平均粒子径49nmであった。
【0040】
実施例13
タングステン酸アンモニウム五水和物(熱分解開始温度260℃)5gを、溶媒として水30gに溶解し、これにポリエチレンオキサイド(住友精化株式会社製)(タングステン酸アンモニウム五水和物260℃における加熱重量減少率35重量%)1gを混合した。この混合溶液をバイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmで3時間攪拌したのち、2時間室温で保持して高分子物質含有セラミックス形成金属溶液を調整した。
この溶液を所要量坩堝に採り、乾燥して溶媒を除去したのち、大気雰囲気の焼成炉に入れ、室温から1時間を要して260℃に昇温し、260℃で1時間保持したのち、次いで1時間を要して炉の温度を600℃に昇温し分解反応を終了した。
炉内の温度を60℃に冷却した後、大気に開放してタングステン酸化物の微粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)により粒子5点の平均粒径を求めた。得られた微粒子は平均粒子径83nmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス形成金属化合物を溶解したセラミックス形成金属化合物溶液を加熱してセラミックスを製造する方法において、セラミックス形成金属化合物の加熱分解開始温度における加熱重量減少率が100重量%未満である高分子物質を含有するセラミックス形成金属化合物溶液を、セラミックス形成金属化合物の分解開始温度以上の温度に加熱することを特徴とするセラミックス粒子の製造方法。
【請求項2】
前記高分子物質が、セラミックス形成金属化合物の熱分解開始温度における加熱重量減少率が100重量%未満であるセルロース系高分子、ポリアルキレングリコール、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のセラミックス粒子の製造方法。
【請求項3】
セラミックス形成金属化合物が、遷移金属の金属塩、遷移金属錯体化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載のセラミックス粒子の製造方法。
【請求項4】
前記金属塩が、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、チタンから選ばれる遷移金属を含有する金属化合物の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、臭素酸塩である請求項1記載のセラミックス粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−207674(P2011−207674A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77112(P2010−77112)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】