説明

セラミックハニカムフィルタの製造方法

【課題】 隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体の、前記流路に管状部材から目封止材を注入して目封止部を形成するセラミックハニカムフィルタの製造方法において、目封止部を形成するのに要する時間を短縮することができる方法を提供する。
【解決手段】 流路に管状部材から目封止材を注入した後、前記管状部材を、前記流路の対角線方向に移動させ、前記流路の対角線方向に隣接する流路に目封止材を注入して目封止部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジンの排気ガス浄化装置、特にディーゼルエンジンからの排気ガス中の微粒子を除去するための浄化装置に使用するに適したセラミックハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地域環境保全のため、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭素を主成分とする微粒子を除去するため、セラミックハニカム構造体の流入部および流出部の両端面を交互に目封止したセラミックハニカムフィルタが使用されてきている。
図2はそのセラミックハニカムフィルタの断面図である。このような構成のセラミックハニカムフィルタ10において、微粒子を含有する排気ガスは、セラミックハニカムフィルタ10の流入側端面7で開口している流路2から流入し、多孔質セラミックスからなる隔壁3を通過した後、隣接した流路を経て、流出側端面8から排出される。この際、排気ガス中に含まれる微粒子は、隔壁3に形成された細孔(図示せず)に捕集される。セラミックハニカムフィルタ10に微粒子が捕集され続けると、隔壁3の細孔に目詰まりを生じて捕集機能を大幅に低下させるとともに、圧力損失が大きくなるため、エンジン出力を低下させるという問題が発生する。そこで、セラミックハニカムフィルタ10に堆積した微粒子を、電気ヒータ、バーナー、マイクロ波などで燃焼させたり、セラミックハニカムフィルタ10に担持した触媒物質により燃焼させたりして、セラミックハニカムフィルタ10を再生する技術が検討されている。
【0003】
図2に示すセラミックハニカムフィルタの目封止部4、5は、例えば、特許文献1に示すように、目封止材封入ヘッド先端のノズルから目封止材を流路に封入させ、市松模様となるように流路に目封止材を交互に封入して形成する。そして、所望により目封止部の焼成を行うことで端面7、8が交互に目封止されたハニカムフィルタ10としている。
【0004】
一方、上記構造のセラミックハニカムフィルタの再生を容易にする、或いは浄化性能を向上する目的で、図3に示すような、流入側端面7から離れた位置に目封止部を設けるセラミックハニカムフィルタ20が特許文献2に開示されている。このセラミックハニカムフィルタにおいて、流入側端面から離れた位置に目封止部を設ける方法として、特許文献2には、コーディエライト組成の粉末に所定量の有機バインダと水を混合し、安定した保形性のあるクリーム状の目封止材を調整した後、この目封止材を用い、所定の長さのノズルをもつペースト注入器(ディスペンサ)を用いて、ハニカム構造体の上流側端面から10mm入った位置に、一舛ずつ交互に目封止して目封止部を形成する方法が開示されている。
また、特許文献3には、複数のノズルを用い、封止すべき流路内に複数のノズルを挿入して目封止材を注入する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−337427
【特許文献2】特開2004−19498
【特許文献3】特開平6−39219
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている目封止方法では、流路に交互に選択的に目封止材を注入するとしているが、目封止材を封入すべき流路にノズルを挿入して目封止材を注入した後、ノズルを流路から流路外へ取出し、次に封入すべき流路へノズルを移動させる方向に関しては明記されていない。
また、特許文献2に開示されている目封止方法では、一舛ずつ交互に目封止すると記載されていることから、目封止材を封入すべき流路にノズルを挿入して目封止材を注入した後、ノズルを流路から流路外へ取出し、次いで、ノズルを隔壁方向に沿って移動させて、隣接する流路には目封止材を注入せず、更に隣接する流路に目封止材を注入して目封止部を市松模様となるように形成させることになる。このような目封止方法では、外径が150mm以上のような大型ハニカムフィルタの場合、目封止部を形成すべき流路の数が、数千個以上となり、目封止部を形成する工程に要する時間が多くかかっていた。
また、特許文献3のように複数のノズルを用いる場合、セラミックハニカムフィルタに用いられるようなハニカム構造体は気孔率を大きくするために、グラファイトや有機発泡剤などの造孔剤を多量に添加するので押出成形時に隔壁が変形しやすく、流路が歪んでいることがあり、流路間隔が必ずしも一定では形成されないので、複数のノズルを流路に挿入する際、ノズルが隔壁に接触しやすくなって隔壁が損傷し易かった。さらに、隔壁の変形が大きく、流路が大きく歪んでいる場合、複数のノズルのうちの一つでもノズルが隔壁の端面に当接してしまうと、ノズルが流路に全く挿入できず、目封止することができないという問題を生じていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体の、前記流路に管状部材から目封止材を注入して目封止部を形成するセラミックハニカムフィルタの製造方法において、目封止部を形成するのに要する時間を短縮することができる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセラミックハニカムフィルタの製造方法は、隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体の、前記流路に管状部材から目封止材を注入して目封止部を形成するセラミックハニカムフィルタの製造方法において、前記流路に前記管状部材から目封止材を注入した後、前記管状部材を、前記流路の対角線方向に移動させ、前記流路の対角線方向に位置する流路に目封止材を注入して目封止部を形成することを特徴とする。
本発明において、前記管状部材を複数用いることが好ましく、前記複数の管状部材が可撓性を有しかつ先端位置が不揃いであることが好ましい。
そして、本発明において、前記セラミックハニカム構造体が流路方向に対して傾斜した端面を有し、前記端面に開口する流路に、複数の管状部材を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成することが好ましい。この時、セラミックハニカム構造体の流路方向に対して傾斜した端面の傾斜方向が、四角形流路の対角線方向と略一致することが好ましい。
【0009】
次に本発明の作用効果について説明する。
本発明のセラミックハニカムフィルタの製造方法は、隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体の、前記流路に管状部材から目封止材を注入して目封止部を形成するセラミックハニカムフィルタの製造方法において、前記流路に前記管状部材から目封止材を注入した後、前記管状部材を、図1(b)の矢印で示すように、流路の対角線方向に移動させ、前記流路の対角線方向に位置する流路に目封止材を注入して目封止部を形成するものである。目封止材を注入した後、管状部材を流路の対角線方向に移動させることで、一舛ずつ交互に目封止する場合、すなわち管状部材を隔壁方向に沿って移動させる場合と比べて、管状部材の移動に必要な距離が短縮されて、管状部材の移動に要する時間が短縮され、結果として目封止部の形成に要する時間を短縮することができる。
例えば、図8に示すように、流路断面が四角形で、隔壁ピッチP1が1.5mm、壁厚tが0.3mmの隔壁構造を有するセラミックハニカムフィルタでは、管状部材を流路の対角線方向Cに移動させる場合、管状部材の移動距離は、対角線方向に隣接する流路の間隔すなわち流路の対角線方向ピッチP2であり、P2=P1×21/2=1.5mm×1.414=2.12mm。一舛ずつ交互に目封止する場合、すなわち隔壁方向Bに移動させる場合、管状部材の移動距離は、隔壁方向に隣接する流路間隔すなわち隔壁ピッチP1の2倍であり、P1×2=1.5mm×2=3.0mmとなる。このため、管状部材を流路の対角線方向に移動させることで、目封止部を形成する工程の管状部材の移動に要する時間を低減できるのである。特に、外径が150mm以上のような大型セラミックハニカムフィルタの場合、目封止部を形成すべき流路の数は一方の端面で約3900個以上となるため、管状部材を流路の対角線方向に移動させる場合と、隔壁方向に移動させる場合とで、管状部材の移動距離の差は膨大となり、管状部材を流路の対角線方向に移動させることで目封止部を形成する工程に要する時間を大幅に低減できるのである。
【0010】
本発明のセラミックハニカムフィルタの製造方法において、管状部材を複数用いることが好ましいのは、同時に複数の流路に目封止部を形成することができるので、目封止部を形成する時間をさらに短縮することができるからである。この時、複数の管状部材のピッチは、流路の対角線方向ピッチP2である(隔壁ピッチP1×21/2)又はその整数倍、もしくは(隔壁ピッチP1×偶数)とすることができる。
【0011】
本発明のセラミックハニカムフィルタの製造方法において、複数の管状部材が可撓性を有しかつ先端位置が不揃いであることが好ましいのは次の理由による。管状部材が可撓性を有しかつ先端位置が不揃いであると、特に、端面から離れた位置に目封止部を形成するために管状部材を流路に挿入する際、図4(a)に示すように、最も突出した管状部材301の先端が最初に流路に挿入され、続いて他の管状部材303、302が流路に挿入される。この時、図4(d)に示すようにハニカム構造体の流路2が歪んでいる場合、複数の管状部材のうちの一つの管状部材301が隔壁に当接しても、管状部材が可撓性を有するので、図4(e)に示すように、最初に流路に挿入された管状部材301が撓んで流路内に挿入され、次いで管状部材302、303も、同様に撓んで流路内へ挿入できるようになるのである。この場合、複数の管状部材の先端位置が揃っていると、複数の管状部材の先端が、歪んだ流路の隔壁に同時に複数の隔壁で接触するため、隔壁を破損させやすくなるが、複数の管状部材の先端位置が不揃いであると、歪んだ流路の隔壁に複数の管状部材が同時に接触することがないので、隔壁の破損が生じ難くなるのである。
これにより、複数の管状部材を容易に流路に挿入することができるようになるのである。ここで、管状部材の先端位置が不揃いであるとは、図4(b)に示すように、最も突出した管状部材301の先端と他の管状部材303の先端との間に距離Lを有していることであり、Lは、目封止部長さの1%〜200%であることが好ましい。Lが目封止部長さの1%未満の場合、複数の管状部材の先端が、歪んだ流路の隔壁に同時に接触しやすくなるため、隔壁の破損が生じ易くなるからである。一方、Lが目封止部長さの200%を超える場合、最初に流路に挿入された管状部材が、歪んだ流路の隔壁に接触する面積が大きくなり、隔壁が破損し易くなることがあるからである。さらに、Lが目封止部長さの10%〜100%であるとより好ましい。
上記のように、複数の管状部材が可撓性を有しかつ先端位置が不揃いであることにより、複数の管状部材を流路に挿入する際に、隔壁の破損を防ぐことができるのと共に、目封止部の形成位置をハニカム構造体の端面から不揃いの位置に形成することが可能となるため、目封止部がハニカム構造体の端面から離れた位置に形成されたセラミックハニカムフィルタでは、熱衝撃による応力集中の発生しやすい目封止部と隔壁の境界が不揃いとなって、耐熱衝撃性が向上するという効果も有している。
【0012】
本発明のセラミックハニカムフィルタの製造方法において、セラミックハニカム構造体が流路方向に対して傾斜した端面を有し、前記端面に開口する流路に、複数の管状部材を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成することが好ましいのは次の理由による。
図5(c)に示すように、セラミックハニカム構造体11が流路方向に対して傾斜した端面9を有していると、図5(d)に示す隔壁の一部3aが突出するので、流路2に管状部材30を挿入する場合、この隔壁3aがガイドとなって、複数の管状部材の挿入が容易になるからである。
この場合、セラミックハニカム構造体の流路方向に対して傾斜した端面9の傾斜方向が、図6に示すように、四角形流路の対角線方向と略一致すると、図6(d)に示す隔壁3b、3cとその交差部3dの一部が突出する。そのため、流路2に管状部材30を挿入する場合、ガイドとなる隔壁が、隔壁3b、3cとその交差部3dと多くなり、管状部材が隔壁に接触しても破損し難くなるので好ましい。尚、本発明においてセラミックハニカム構造体の流路方向に対して傾斜した端面の傾斜方向が、四角形流路の対角線方向と略一致するとは、図6に示すような形態を言う。
ここで、セラミックハニカム構造体の流路が歪んでいる場合、流路方向に対して傾斜した端面に開口する流路に挿入する複数の管状部材の先端位置が揃っていても、複数の管状部材の先端が、歪んだ流路の隔壁に同時に複数の隔壁で接触することがなく、隔壁の破損が生じ難くなるので好ましいが、複数の管状部材が可撓性を有しかつ先端位置が不揃いであると、隔壁の破損がより生じ難くなるのでさらに好ましい。
次に、目封止部が形成されたセラミックハニカム構造体は、図5(f)もしくは図6(f)に示すように、傾斜した端面9側の端面を、流路方向に対して直角に切断してセラミックハニカムフィルタとすることができる。このとき、切断位置を適宜決めることで、図2に示す、端面で目封止部が形成されたセラミックハニカムフィルタや、図3に示す、端面から離れた位置に目封止部が形成されたセラミックハニカムフィルタとすることができる。
尚、図7(a)に示すように、管状部材30に対してセラミックハニカム構造体11の流路方向を斜めに傾けた状態で、管状部材30を流路2に挿入し、目封止部を形成する位置に応じて、セラミックハニカム構造体の流路方向と管状部材とを一致させて管状部材を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成することもできる。逆に、図7(b)に示すように、セラミックハニカム構造体11の流路方向に対して管状部材30を斜めに傾けた状態で、管状部材30を流路2に挿入し、目封止部を形成する位置に応じて、セラミックハニカム構造体の流路方向と管状部材とを一致させて管状部材を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成することもできる。
【0013】
また、本発明において、管状部材の材質は、樹脂、ステンレス鋼、超硬合金、サーメット、若しくはセラミックスからなることが好ましい。、これは、管状部材は、隔壁に当接した場合でも破損し難いからである。中でも、可撓性を有することから樹脂、ステンレス鋼が好ましい。尚、セラミックスは、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン等を使用することができる。
【0014】
本発明において、セラミックハニカム構造体が、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ケイ素、サイアロン、窒化チタン、窒化アルミニウム、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミのうちの1種若しくは2種以上の成分を有するセラミックからなることが好ましい。これは、次の理由による。ハニカムフィルタでは、捕集された微粒子が一定量以上になると、これを燃焼させて、再生が行われるため、これらの耐熱性を有するセラミックスであれば、再生の際に、溶融などの損傷を受けないからである。特に、耐熱衝撃性が要求される、外径150mm、全長150mm以上の大型ハニカムフィルタの場合は、コージェライト、チタン酸アルミ、LASなどの低熱膨張特性を有するセラミックスが好ましく。また、微粒子を多量に補足、堆積させた状態で燃焼させたい場合には、炭化珪素、窒化珪素などの超耐熱セラミックスが好ましい。また、これらのセラミックスを適宜組み合わせても良いし、焼成助剤などを含有しても良い。
また、セラミックからなるハニカム構造体は、ハニカムに成形後、乾燥、焼成したものを用いて目封止材を流路に注入することができるが、焼成する前、つまり、ハニカムに成形した後、乾燥後のものを用いて目封止材を流路に注入しても良い。
【0015】
尚、本発明は、その作用効果から、図3に示すようなハニカム構造体の端面から離れた位置に目封止部を形成する場合だけでなく、図2に示すようなハニカム構造体の端面に目封止部を形成する場合においても適用できるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体の、前記流路に管状部材から目封止材を注入して目封止部を形成するセラミックハニカムフィルタの製造方法において、目封止部を形成するのに要する時間を短縮することができる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1に係るセラミックハニカムフィルタの製造方法を示した断面模式図である。図2のセラミックハニカムフィルタ10は、外周壁1の内側に隔壁3で仕切られた多数の四角形の流路2を有し、この流路2は封止部4、5で封止されており、封止部4は流入側端面7から離れた流路内に配置されている。本実施例1におけるセラミックハニカムフィルタは、以下の製造工程で製造した。カオリン、タルク、シリカ、アルミナの粉末を調整して、質量比で、SiO:48〜52%、Al:33〜37%、MgO:12〜15%を含むコーディエライト生成原料粉末とする。本実施例1ではSiO:50%、Al:35%、MgO:15%に調整した。これにメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のバインダー、潤滑材、造孔剤としてグラファイトを添加し、乾式で十分混練した後、規定量の水を添加、十分な混練を行って可塑化したセラミック坏土を作成した。次に、押出し成形用金型を用いて坏土を押出し成形し、所定長さに切断して、ハニカム構造を有する成形体とした。次にこの成形体を乾燥、焼成し、隔壁の厚さ0.3mm、気孔率65%、平均細孔径20μm、隔壁ピッチ1.5mm、外径が280mm、全長が310mmの図1(a)に示すコーディエライト質セラミックハニカム構造体11とした。
【0019】
次に、図1(a)に示すように、目封止材保管タンク41と、タンク41から目封止材を管状部材30に供給するチューブ44、バルブ43から構成される目封止材供給装置40に、ハニカム構造体11を流路方向が略重力方向に一致するように載置した。目封止材の供給に使用する管状部材30は、ステンレス鋼製で全長が100mmで、外径φ0.5mm、内径φ0.3mmの断面円形のものを1本用いた。また、目封止材は、セラミックス原料として平均粒径16μm、最大粒径270μmを有するコーディエライト粉末100質量部、液体成分として水をコーディエライト粉末100質量部に対し30質量部を用いて混練して目封止材保管タンク41に充填した。
【0020】
次に、管状部材30を目封止する流路内へ、ハニカム構造体11の端面7から1mmの位置に挿入し、目封止材保管タンク41のエアー供給バルブ42からエアーを流入させて加圧して、所定量の目封止材を管状部材から注入して、管状部材30を流路から抜き取り、流路2の端面7部に目封止部を形成した。そして、図1(b)の矢印で示すように、管状部材30を流路の対角線方向に移動させて、流路の対角線方向に位置する流路に管状部材30を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成した。他に目封止する流路においても同様にして、目封止を行い、目封止部を乾燥後、焼成を行って、図2に示すセラミックハニカムフィルタ10を作成した。
【0021】
(実施例2)
実施例1と同様に、コーディエライト質セラミックハニカム構造体11を準備した。
次に、実施例1と同様に、図1(a)に示すように、目封止材保管タンク41と、タンク41から目封止材を管状部材30に供給するチューブ44、バルブ43から構成される目封止材供給装置40に、ハニカム構造体11を流路方向が略重力方向に一致するように載置した。ただし、本実施例2では、目封止材の供給に使用する管状部材30は、図4(b)に示すように、ステンレス鋼製で外径φ0.5mm、内径φ0.3mmの断面円形で、全長が100mm、92mm、97mmの3本の管状部材301〜303が、隔壁ピッチの2倍である3.0mmのピッチで配置構成されたものを用いた。この時、3本の管状部材301〜303のうち、最も突出した管状部材301の先端と他の管状部材302、303との距離Lは、それぞれ8mm、3mmとした。また、目封止材は、セラミックス原料として平均粒径16μm、最大粒径270μmを有するコーディエライト粉末100質量部、液体成分として水をコーディエライト粉末100質量部に対し30質量部を用いて混練して目封止材保管タンク41に充填した。
【0022】
次に、管状部材30を目封止する流路内へ挿入し、管状部材302の先端が、ハニカム構造体11の端面7から5mmとなる位置に挿入し、目封止材保管タンク41のエアー供給バルブ42からエアーを流入させて加圧して、所定量の目封止材を管状部材から注入して、管状部材30を流路から抜き取り、流路2の端面7部に目封止部を形成した。そして、図4(c)の矢印で示すように、管状部材30を流路の対角線方向に移動させて、流路の対角線方向に位置する流路に管状部材30を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成した。他に目封止する流路においても同様にして、目封止を行い、目封止部を乾燥後、焼成を行って、図3に示すセラミックハニカムフィルタ20を作成した。
【0023】
(実施例3)
実施例1と同様に、コーディエライト質セラミックハニカム構造体11を準備した。このハニカム構造体11を図5(a)(b)に示すように、隔壁が外周部に向かう方向であるB軸に対して10°の角度となる位置(X1)で切断し、流路方向に対して傾斜した端面9を有するセラミックハニカム構造体とした。
次に、実施例1と同様に、目封止材供給装置40に、ハニカム構造体11を流路方向を水平に載置した。本実施例3では、目封止材の供給に使用する管状部材30は、3本の管状部材が、流路の対角線方向ピッチである2.1mmのピッチで配置構成され、ステンレス鋼製で全長が100mmで、外径φ0.5mm、内径φ0.3mmの断面円形のものを用いた。また、目封止材は、セラミックス原料として平均粒径16μm、最大粒径270μmを有するコーディエライト粉末100質量部、液体成分として水をコーディエライト粉末100質量部に対し30質量部を用いて混練して目封止材保管タンク41に充填した。
次に、図5(c)(d)に示すように、管状部材30を目封止する流路内へ、ハニカム構造体11の傾斜した端面9からの位置が最小で10mmとなる流路内に挿入し、目封止材保管タンク41のエアー供給バルブ42からエアーを流入させて加圧して、所定量の目封止材を管状部材から注入して、管状部材30を流路から抜き取り目封止部4を形成した。そして、図5(e)の矢印で示すように、管状部材30を流路の対角線方向に移動させて、流路の対角線方向に隣接する流路に管状部材30を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成した。他に目封止する流路においても同様にして、目封止を行った。そして、目封止部を乾燥後、焼成を行い、傾斜した端面9側の端面を、流路方向に対して直角となる切断線Yで切断し、図3に示す、全長260mmのセラミックハニカムフィルタ20を作成した。
【0024】
(実施例4)
実施例1と同様に、コーディエライト質セラミックハニカム構造体11を準備した。このハニカム構造体11を図6(a)(b)に示すように、四角形流路の対角線方向であるC軸方向に対して10°の角度となる位置(X2)で切断し、流路方向に対して傾斜した端面9の傾斜方向が、四角形流路の対角線方向と略一致するセラミックハニカム構造体とした。
次に、目封止材供給装置40に、ハニカム構造体11を流路方向を水平に載置した。本実施例3では、目封止材の供給に使用する管状部材30は、ステンレス鋼製で外径φ0.5mm、内径φ0.3mmの断面円形で、全長が100mm、92mm、97mmの3本の管状部材301〜303が、流路の対角線方向ピッチである2.1mmのピッチで配置構成されたものを用いた。この時、3本の管状部材301〜303のうち、最も突出した管状部材301の先端と他の管状部材302、303との距離Lは、それぞれ8mm、3mmとした。また、目封止材は、セラミックス原料として平均粒径16μm、最大粒径270μmを有するコーディエライト粉末100質量部、液体成分として水をコーディエライト粉末100質量部に対し30質量部を用いて混練して目封止材保管タンク41に充填した。
次に、図6(c)(d)に示すように、管状部材30を目封止する流路内へ挿入し、管状部材302の先端が、、ハニカム構造体11の傾斜した端面9からの位置が最小で10mmとなる流路内に挿入し、目封止材保管タンク41のエアー供給バルブ42からエアーを流入させて加圧して、所定量の目封止材を管状部材から注入して、管状部材30を流路から抜き取り目封止部4を形成した。そして、図6(e)の矢印で示すように、管状部材30を流路の対角線方向に移動させて、流路の対角線方向に位置する流路に管状部材30を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成した。他に目封止する流路においても同様にして、目封止を行った。そして、目封止部を乾燥後、焼成を行い、傾斜した端面9側の端面を、流路方向に対して直角となる切断線Yで切断し、図3に示す、全長260mmのセラミックハニカムフィルタ20を作成した。
【0025】
(比較例1)
一方、比較例1として、実施例1と同様に、コーディエライト質セラミックハニカム構造体11を準備し、図1(a)に示す、目封止材供給装置40に、ハニカム構造体11を載置し、実施例1と同じ管状部材30を用い、目封止する管状部材30の移動方向のみ変更して目封止を行った。すなわち、管状部材30を目封止する流路内へ、ハニカム構造体11の端面7から1mmの位置に挿入し、所定量の目封止材を管状部材から注入して、管状部材30を流路から抜き取り、流路2の端面7部に目封止部を形成し、続いて、管状部材30を隔壁方向に沿って2つ隣りの流路に移動させて、管状部材30を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成した。他に目封止する流路においても同様にして、目封止を行い、目封止部を乾燥後、焼成を行って、セラミックハニカムフィルタ10を作成した。
【0026】
以上、実施例1〜4及び比較例1において、目封止部の形成に要した時間を、比較例1の場合の目封止部の形成に要した時間を基準として相対比較を行った。また、目封止部を形成するする際に隔壁に生じた破損の状況について、破損が見られなかった場合を◎、ほとんど破損が見られなかった場合を○、少々破損がみられたが実使用上問題のないものを△として評価を行った。これらの評価の結果を表1にまとめて示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、本発明である実施例1〜4での、目封止に要する時間は、比較例の方法に比べて短縮することができた。特に、実施例3、4では、複数の管状部材を用いても隔壁の破損のない良好なセラミックハニカムフィルタを製造することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るセラミックハニカムフィルタの製造方法を示した模式断面図。
【図2】本発明に係るセラミックハニカムフィルタを示した図。
【図3】本発明に係るセラミックハニカムフィルタを示した図。
【図4】本発明に係る管状部材を示した図。
【図5】本発明の実施例を示した図で、(a)はセラミックハニカム構造体の正面図、(b)は側面図、(c)は(a)でのA−A断面図、(d)は(c)での端面9の拡大図、(e)は管状部材の移動方向を示した図、(f)は目封止部が形成されたセラミックハニカムフィルタを示した図。
【図6】本発明の別の実施例を示した図で、(a)はセラミックハニカム構造体の正面図、(b)は側面図、(c)は(a)でのA−A断面図、(d)は(c)での端面9の拡大図、(e)は管状部材の移動方向を示した図、(f)は目封止部が形成されたセラミックハニカムフィルタを示した図。
【図7】本発明の別の実施態様を示した図。
【図8】隔壁ピッチと流路の対角線方向ピッチを示した図。
【符号の説明】
【0030】
1:外周壁
2:流路
3:隔壁
3a、3b、3c:突出した隔壁
3d:隔壁交差部
4、5:封止部
7:流入側端面
8:流出側端面
9:傾斜した端面
10、20:ハニカムフィルタ
11:ハニカム構造体
30、301、302、303:管状部材
40:目封止材供給装置
41:目封止材保管タンク
42:エアー供給バルブ
43:バルブ
44:チューブ
L:複数の管状部材先端の距離
1:隔壁ピッチ
2:流路の対角線方向ピッチ
t:壁厚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体の、前記流路に管状部材から目封止材を注入して目封止部を形成するセラミックハニカムフィルタの製造方法において、前記流路に前記管状部材から目封止材を注入した後、前記管状部材を、前記流路の対角線方向に移動させ、前記流路の対角線方向に位置する流路に目封止材を注入して目封止部を形成するセラミックハニカムフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記管状部材を複数用いることを特徴とする請求項1に記載のセラミックハニカムフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記複数の管状部材が可撓性を有し、かつ、先端位置が不揃いであることを特徴とする請求項2に記載のセラミックハニカムフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記セラミックハニカム構造体が流路方向に対して傾斜した端面を有し、前記端面に開口する流路に、複数の管状部材を挿入し、目封止材を注入して目封止部を形成することを特徴とする請求項2または3に記載のセラミックハニカムフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−221027(P2008−221027A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191856(P2005−191856)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】