説明

セラミックフィルタエレメント及びその製造方法

【課題】 取り扱い時に欠け端が発生しにくいセラミックフィルタエレメント及びその製造方法、金属枠不要で製造や再生が容易なセラミックフィルタエレメント及びその製造方法を提供しようとする。
【解決手段】 被ろ過流体が通過する経路の開口縁に嵌めて用いるフィルタエレメントであって、焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板の側端部の少なくとも一部に、該側端部の長手方向に沿って帯状に延び、前記セラミック多孔質板を構成するセラミックと連接されて該セラミック多孔質板の孔を封止する封止部材を備える封止部が設けられたセラミックフィルタエレメントである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被ろ過流体が通過する経路の開口縁に嵌めて用いられ、焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板から構成されるセラミックフィルタエレメント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板から構成されるセラミックフィルタエレメントは、主として油を含んだ空気をろ過するフィルタ装置のエレメントとしてその空気が通過する経路の開口縁に嵌めて好適に用いられている。
【0003】
このセラミックフィルタエレメントは油の捕捉性に優れるのみならず、使用後にその開口縁から取り外して焼成することにより更生が可能であり、このリサイクルにより、廃棄物の減少を実現することが出来るので、厨房や、オイルミストの発生する機械装置が稼動する現場に広く用いられている。
【0004】
図5に示すように、このセラミックフィルタエレメントは立体網状構造のセラミック多孔質板100から成る。セラミック多孔質板100は側端部の辺や角において、立体網状構造のセラミック組織を構成するセラミックの線状体が突出する構造を有する。この突出した線状体はもろく折れやすいので、このセラミックフィルタエレメントは金属製の枠102に収められて使用される。枠102は、手で持って操作するための把手104が備えられている。
【0005】
しかし、リサイクルに際してはセラミック多孔質板の金属製の枠からの取り外しや、セラミック多孔質板への枠再装着を要するので、着脱操作時にこの突出した線状体が外力により欠けてセラミック多孔質板が損傷するおそれがあるばかりでなく、欠け端が異物として現場の被取り扱い物、特に、厨房においては食品に、場合によってはその後の追跡不可能に混入するおそれがある。
【0006】
従って、取り扱い時にこのような欠け端が発生しにくいセラミックフィルタエレメントが求められている。又、金属枠不要なセラミックフィルタエレメントが求められている。リサイクルが求められない一般の布製の可燃のフィルタにおいては、インジェクション成形により樹脂枠を周縁の布と一体になるように成形して布の周縁に枠を設けることがなされる(例えば、特許文献1参照。)が、上述のようなリサイクル可能なセラミック多孔質板は厚み方向や幅方向に変形することが出来ないので、このようなインジェクション成形により樹脂製の枠を形成することは極めて難しい。更に、リサイクル時の焼成で樹脂製の枠が焼失するので枠のリサイクルの度に枠の再成形が必要となる。
【特許文献1】特開平8−243334号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、取り扱い時にこのような欠け端が発生しにくいセラミックフィルタエレメント及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の目的は、金属枠不要で製造が容易なセラミックフィルタエレメント及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、金属枠不要で焼成による再生が容易なセラミックフィルタエレメント及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨とするところは、被ろ過流体が通過する経路の開口縁に嵌めて用いるフィルタエレメントであって、焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板の側端部の少なくとも一部に、該側端部の長手方向に沿って帯状に延び封止部材を備える封止部が設けられ、該封止部において、該封止部材が前記セラミック多孔質板を構成するセラミックと連接されて該セラミック多孔質板の孔を封止するセラミックフィルタエレメントであることにある。
【0011】
前記封止部材は、前記セラミック多孔質板を構成するセラミックと焼結されて一体に連結されて該セラミック多孔質板の孔を封止し得る。
【0012】
前記セラミックフィルタエレメントは、前記封止部における前記セラミック多孔質板の側端部の面が面取りされた形状をなし得る。
【0013】
前記封止部は、前記セラミック多孔質板の周縁を一巡して設けられ得る。
【0014】
前記封止部材は、前記フィルタエレメントに着脱自在に取り付けられる取っ手を係合させる係合部を備え得、前記フィルタエレメントに取り付けられた該取っ手を移動させることにより該フィルタエレメントが移動可能となり得る。
【0015】
又、本発明の要旨とするところは、
焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板を準備する工程、
粘性生地を準備する工程、
前記セラミック多孔質板の側端面の少なくとも一部に前記粘性生地を押し当て、該側端面に該粘性生地を連接させる工程、
連接させられた該粘性生地を乾燥後前記セラミック多孔質板とともに焼成する工程
を含むセラミックフィルタエレメントの製造方法であることにある。
【0016】
更に、本発明の要旨とするところは、
焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板を準備する工程、
固化工程により固化することとなる固化前駆体から成る流動性物を準備する工程、
前記セラミック多孔質板の側端面の少なくとも一部に前記流動性物を塗り込んで前記セラミック多孔質板の孔に該流動性物を充填する工程、及び/又は前記セラミック多孔質板の側端面の少なくとも一部に前記流動性物を塗付して前記セラミック多孔質板の孔を塞ぐ皮膜を形成する工程、
前記流動性物を前記固化工程により固化する工程
を含むセラミックフィルタエレメントの製造方法であることにある。
【0017】
前記セラミックフィルタエレメントの製造方法においては、前記流動性物が焼成用生地のスラリーであり得、
前記固化工程が該スラリーを乾燥後前記セラミック多孔質板とともに焼成する工程であり得る。
【0018】
前記セラミックフィルタエレメントの製造方法においては、前記流動性物がセメントのスラリーであり得、
前記固化工程が該セメントのスラリーを固化する工程であり得る。
【0019】
前記セラミックフィルタエレメントの製造方法においては、前記流動性物が樹脂の溶液又はエマルジョンであり得、
前記固化工程が該流動性物を乾燥する工程であり得る。
【0020】
前記セラミックフィルタエレメントの製造方法においては、前記流動性物が硬化性樹脂又は該樹脂の溶液であり得、前記固化工程が該樹脂を硬化させる工程であり得る。
【0021】
前記セラミックフィルタエレメントの製造方法においては、前記焼失性の多孔質板の端面が面取りされ得る。
【0022】
前記セラミックフィルタエレメントの製造方法においては、前記焼失性の多孔質板の端部を加熱溶融することにより前記端面が面とりされ得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、取り扱い時に欠け端が発生しにくいセラミックフィルタエレメント及びその製造方法が提供される。
【0024】
本発明によると、金属枠不要で製造が容易なセラミックフィルタエレメント及びその製造方法が提供される。
【0025】
本発明によると、金属枠不要であるにもかかわらず被ろ過流体が通過する経路の開口縁に着脱が容易なセラミックフィルタエレメント及びその製造方法が提供される。
【0026】
本発明によると、金属枠不要で焼成による再生が容易なセラミックフィルタエレメント及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のセラミックフィルタエレメントの実施形態について、図面を使用して説明する。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。本発明のセラミックフィルタエレメント2は、被ろ過流体が通過する経路の開口縁(以下流路開口縁と称する)に嵌めて用いるフィルタエレメントであって、図1に示すように、焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板4の側端部6に、側端部6の長手方向に沿って帯状に延び封止部材8を備える封止部10が設けられ、封止部10において、封止部材8がセラミック多孔質板4を構成するセラミックと連接されてセラミック多孔質板4の孔12が封止されてなる。
【0028】
セラミック多孔質板4は、ウレタンフォームのような焼失性の多孔質板に坏土のスラリーを含浸させ、乾燥後焼成し、焼失性の多孔質板を焼失させて成る。
【0029】
封止部10のこのような構造は、側端部6の孔の空隙に硬化前の坏土を充填したのちにその坏土をセラミック多孔質板4ごと焼成することによって得られる。
【0030】
封止部10においては、セラミック多孔質板4の孔の空隙に封止部材8が充填されて、セラミック多孔質板4の骨構造を構成する骨部セラミック14と封止部材8とが連接されて、セラミック多孔質板4を囲繞する封止部10が強固な枠の機能をはたす。
【0031】
又、立体網状構造のセラミック組織を構成するセラミックの線状体が突出する突出部18も封止部材8に埋め込まれているので、突出部18が欠けたり欠け端が異物として飛散するおそれがない。
【0032】
更に、このような一体構造の封止部10は切削、研磨、穿孔等の成形加工が可能であり、セラミックフィルタエレメント2は流路開口縁に合わせた面とりや寸法調整や取り付けのためのボルト穴の形成等各種の成形加工が可能である。
【0033】
又、封止部10は従来のこの種のセラミックフィルタ板の使用における金属枠の機能も備えているので、セラミックフィルタエレメント2は金属枠に収めずにそのまま流路開口縁に嵌め込んで取り付けることが出来る。金属枠は取り付けや取り外しの操作のための把手104(図5)を備えているが、セラミックフィルタエレメント2においても取り付けや取り外しの操作のための取っ手が封止部10に着脱自在に設けられることが好ましい。
【0034】
図2は、取っ手20を取り付ける取っ手取り付け部22を備えたセラミックフィルタエレメント2aの構造を示す。取っ手取り付け部22は封止部10aに設けられ、取っ手20のベース棒35の両の端部21それぞれを係合させる係合部24、24から構成される。封止部10aの上面28(セラミックフィルタエレメント2aを構成するセラミック多孔質板4aの表がわの面に面一に連なる面)に形成された長尺の窪み26の両端が係合部24を構成する。窪み26の両端それぞれは上面28から斜めに掘り下げられた掘り下げ面30を有する。掘り下げ面30は窪み26の開口縁を始点として窪み26の中央から離れる方向に延びる面であり、窪み26の底面32と鋭角をなして交わる。
【0035】
係合部24は掘り下げ面30と底面32とで形成される部分であり、掘り下げ面30と底面32と間の楔形のなかぐり空間34にベース棒35の端部21、21がそれぞれ挿入されて、両端部21が係合部24に係合される。
【0036】
取っ手20は握り部36と、握り部36に連結棒37を介して固定されたベース棒35から成る。ベース棒35は自身の長手方向に伸縮自在とされ、かつ、伸びる方向に不図示の付勢手段(ばね)によって付勢される構造となっている。ベース棒35の長さを縮めて窪み26に挿入し次いでベース棒35をもとの長さに戻すことにより、ベース棒35の端部21、21がそれぞれ係合部24、24に係合させられる。
【0037】
このようにして取っ手20を係合部24、24を介してセラミックフィルタエレメント2aに係合させた状態で握り部36を掴んでセラミックフィルタエレメント2aを持ち上げて移動させることが出来る。
【0038】
なかぐり空間34の形状は端部21、21の係合が可能であれば楔形に限らない。又、握り部36が略C字形に湾曲した棒状であり、自身の長手方向に伸縮自在とされ、握り部36の両端部それぞれが係合部24、24に係合させられる態様であってもよい。
【0039】
図3は、棒状取っ手20bを取り付ける取っ手取り付け部22bを備えたセラミックフィルタエレメント2bの構造を示す図1のB−B方向に相当する断面に関する要部断面模式図である。取っ手取り付け部22bは封止部10bに設けられ、棒状取っ手20bの一の端部を挿入するために封止部10bに形成された挿入孔40から成る。挿入孔40は、セラミックフィルタエレメント2bを構成するセラミック多孔質板4bの面が直立したときを基準として上方斜めに向けて封止部10bに穿孔されてなり、終端で閉じていることが好ましい。
【0040】
棒状取っ手20bの長手方向中間部から他の端部44にかけた部分が握り部46であり、握り部36bを掴んで一の端部を係合部24bである挿入孔40に挿入して棒状取っ手20bが係合される。
【0041】
このようにして棒状取っ手20bを係合部24bを介してセラミックフィルタエレメント2bに係合させた状態で握り部36bを掴んでセラミックフィルタエレメント2bを持ち上げて移動させることが出来る。
【0042】
挿入孔40が貫通孔であり、棒状取っ手20bの長手方向中間部の一の端部寄りにフランジを設けて棒状取っ手20bを挿入孔40に挿入したときの当り止めとしてもよい。
【0043】
係合部24(図2)や係合部24b(図3)は、セラミックフィルタエレメント2(2b)の対向する一対の縁部にそれぞれ設けられ、対応する一対の取っ手20(20b)を片手ずつで握って操作することが好ましい。
【0044】
図1に示す一体構造の封止部10は、セラミック多孔質板の端面に粘土状の粘性坏土から成る帯状体を沿わせて、その帯状体をその端面に押圧して帯状体を構成する坏土をセラミック多孔質板の孔に押し込んで、帯状体の面がその端面とほぼ面一になる状態までめりこませ、次いでめりこませた帯状体を乾燥後セラミック多孔質板ごと焼成して得ることが出来る。
【0045】
あるいは、坏土のスラリー(流動性物)を、セラミック多孔質板の端面部のセラミック多孔質板の孔に押し込んで、スラリー塊の外面がセラミック多孔質板の端部の面とほぼ面一になるように塗り込んで、乾燥後セラミック多孔質板ごと焼成して得ることが出来る。
【0046】
これら態様における坏土は、セラミック多孔質板の作成に用いられる坏土と組成が同一又は類似であることが好ましい。類似とは、主成分が同様の素材であることを意味する。この同一性又は類似性により、セラミック多孔質板を構成するセラミックと、封止部10を構成する、セラミック多孔質板を構成するセラミック以外のセラミックとがほぼ同一の熱挙動(昇温や降温による収縮や膨張)を示し、封止部10形成時の焼成や、リサイクル再生時の焼成でのひびわれが殆んどない。又、セラミック多孔質板を構成するセラミックと、封止部10を構成する、セラミック多孔質板を構成するセラミック以外のセラミックとがほぼ完全に一体化して強固に連接されるので封止部10の強度が大きく、取り扱い時の外力に対して安定で、欠けたりひび割れたりすることが極めて少ないので、本発明のセラミックフィルタエレメントは繰り返しの使用にきわめて適したものとなる。
【0047】
封止部材8がセラミックであると、本発明のセラミックフィルタエレメントは所定期間の使用後に流路開口縁から取り外して焼成して再生することが出来る。従来のセラミックフィルタエレメントも焼成による再生が可能であるが、焼成は金属枠102(図5)から取り外して行わなければならない。又、金属枠102も別途洗浄の必要がある。本発明のセラミックフィルタエレメントにおいては、このような金属枠102からの取り外しや金属枠102の別途洗浄は当然不要であり、リサイクルの手間が大幅に削減される。
【0048】
封止部10はセラミック多孔質板の孔に樹脂を充填させて得ることもできる。この場合は、セラミック多孔質板の焼成により樹脂が焼失するので、リサイクルごとに樹脂を充填する。
【0049】
封止部10が樹脂を用いて形成される場合、エチレン酢酸ビニル樹脂のような樹脂を有機溶剤に溶かした溶液や、あるいはアクリル系樹脂等の樹脂のエマルジョンのような流動性物をセラミック多孔質板の孔に押し込んで、溶液塊の外面がセラミック多孔質板の端部の面とほぼ面一になるように塗り込んで、乾燥して封止部を形成することが出来る。
【0050】
又、エポキシ系樹脂や2液硬化型等のウレタン系樹脂のような硬化性の樹脂やその溶液あるいはエマルジョン(流動性物)を、セラミック多孔質板の端面部のセラミック多孔質板の孔に押し込んで、溶液塊の外面がセラミック多孔質板の端部の面とほぼ面一になるように塗り込んで、必要に応じて乾燥後、必要に応じて加熱して重合反応や架橋反応等の化学反応により硬化させ封止部を形成することが出来る。硬化性シリコーン樹脂を用いても枠の形成は可能であるが、硬化時間が長いことや、リサイクルのためのセラミック多孔質板の焼成により完全には樹脂が焼失せず再加工が難しいことや、半面、この焼成により損傷するのでそのまま再使用も出来ない等の問題がある。
【0051】
樹脂のような封止部材によりセラミック多孔質板の端部の孔を封止する態様においては、その孔に封止部材が充填されていることが好ましいが。その孔の開口部に封止部材による皮膜が形成されてその孔が封止されていてもよい。このような状態は、セラミック多孔質板の端面に、樹脂のような封止部材の前駆体やその溶液やエマルジョン(流動性物)を塗付することにより得ることが出来る。
【0052】
又、セメントのスラリーをセラミック多孔質板の端面部のセラミック多孔質板の孔に押し込んで、スラリー塊の外面がセラミック多孔質板の端部の面とほぼ面一になるように塗り込んで、養生して封止部10を得ることが出来る。セメントには微粒の骨材が混合されていてもよい。
【0053】
封止部10はセラミック多孔質板4を周縁に沿って一巡してセラミック多孔質板4を囲繞するように設けられることが好ましいが、取っ手20や棒状取っ手20bのような取っ手を着脱自在に係合させる目的で、対向する一対の縁部にそれぞれ設けられてもよい。
【0054】
本発明においては、図4に示すように、封止部10を面とりされた形状とすることが出来る。面取り部11における面とりされた形状とは、セラミック多孔質板4の表面あるいは裏面と端面との交わる辺や、一対のその辺同士が交わる角が面とりされて断面が弧状あるいは多角形状になだらかにされた形状である。封止部10を面とりされた形状とすることにより、セラミックフィルタエレメントの縁の角ばった形状をなだらかにすることができ、これにより縁部が物に当って損傷することが少なくなる。又、流路開口縁への装着の操作が円滑になる。
【0055】
セラミック多孔質板は欠けやすいので研削が困難であるが、本発明においては、封止部10が研削可能であり、このような面とりされた形状は、封止部10を研削して得ることが出来る。あるいは、セラミック多孔質板4の製作に用いるウレタンフォームのような焼失性の多孔質板の端面部をあらかじめ切削し、又は、加熱溶融あるいは加熱による部分燃焼により面とりした後、坏土のスラリーを含浸させ、乾燥後焼成して得ることが出来る。焼失性の多孔質板を母材から切り取るときに切断面が面取りされた形状になるように切断してもよい。加熱溶融あるいは加熱による部分燃焼による、焼失性の多孔質板の端面部面とりは、操作が簡単で好ましい。
【実施例1】
【0056】
アルミナ80重量部、長石17重量部、ドロマイト3重量部、有機バインダー1.0重量部に水38重量部を加えて泥漿を得た。500mm×500mm×25mmのウレタンスポンジにこの泥漿を含浸させ、自然乾燥後1260℃で1時間維持する焼成を行なってセラミック多孔質板を得た。このセラミック多孔質板の周縁部に、アルミナ80重量部、長石17重量部、ドロマイト3重量部、有機バインダー1.0重量部に水20重量部を加えて得た粘土状坏土を塗り込んで図1に示す封止部10の状態の封止部前駆体とした。この封止部前駆体が塗り込まれたセラミック多孔質板を自然乾燥後1260℃で1時間維持する焼成を行なってセラミックフィルタエレメント(2)を得た。得られたセラミックフィルタエレメントは、取り扱い時に欠け端が発生しにくかった。又、金属枠不要でそのまま流路の開口縁に装着して使用出来、着脱が容易であった。又、厨房排気口で1週間使用後取り外して1000℃で30分焼成して再生出来た。
【実施例2】
【0057】
実施例1で得られたセラミック多孔質板の周縁部に、硬化剤が調合されたエポキシ樹脂(商品名:エピコート828)を塗付し周縁部の開口を封止し、ついで90℃2時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ、セラミックフィルタエレメント(2)を得た。得られたセラミックフィルタエレメントは、取り扱い時に欠け端が発生しにくかった。又、金属枠不要でそのまま流路の開口縁に装着して使用出来、着脱が容易であった。又、厨房排気口で1週間使用後取り外して1000℃で30分焼成し、再びエポキシ樹脂(商品名:エピコート828)を塗付し周縁部の開口を封止し、ついで90℃2時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ再生出来た。
【0058】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のセラミックフィルタエレメントは、厨房や工業生産現場におけるオイルミストのろ過に好適に用いられるのみならず、ゴミや廃材の焼却炉、産業用の加熱炉、焼成炉から排出される排ガスのろ過、あるいは排水のろ過に、リサイクル可能なろ材として適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1(a)は本発明のセラミックフィルタエレメントの構成を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA−A方向の部分拡大断面模式図である。
【図2】取っ手を取り付ける取っ手取り付け部を備えたセラミックフィルタエレメントの構成を示し、図2(a)は斜視模式図、図2(b)は図2(a)のB−B方向の要部断面模式図である。
【図3】棒状取っ手を取り付ける取っ手取り付け部を備えたセラミックフィルタエレメントの構成を示し、図2(a)のB−B方向に相当する断面に関する要部断面模式図である。
【図4】本発明のセラミックフィルタエレメントの封止部を面とりした形状を示す要部断面模式図である。
【図5】従来のセラミックフィルタエレメントを説明する斜視模式図であり、図5(a)は、従来のセラミックフィルタエレメントに用いられるセラミック多孔質板、図5(b)は金属枠、図5(c)はセラミック多孔質板が金属枠に収められた状態を示す。
【符号の説明】
【0061】
2、2a、2b:セラミックフィルタエレメント
4、4a、4b、100:セラミック多孔質板
6:側端部
8:封止部材
10、10a、10b:封止部
12:孔
14:骨部セラミック
18:突出部
20:取っ手
20b:棒状取っ手
22、22b:取っ手取り付け部
24、24b:係合部
35:ベース棒
26:窪み
30:掘り下げ面
32:底面
34:なかぐり空間
36、36b:握り部
40:挿入孔
102:枠
104:把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ろ過流体が通過する経路の開口縁に嵌めて用いるフィルタエレメントであって、焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板の側端部の少なくとも一部に、該側端部の長手方向に沿って帯状に延び前記セラミック多孔質板を構成するセラミックと連接されて該セラミック多孔質板の孔を封止する封止部材を備える封止部が設けられたセラミックフィルタエレメント。
【請求項2】
前記封止部材が前記セラミック多孔質板を構成するセラミックと焼結されて一体に連結された請求項1に記載のセラミックフィルタエレメント。
【請求項3】
前記封止部における前記セラミック多孔質板の側端部の面が面取りされた形状をなす請求項1又は2に記載のセラミックフィルタエレメント。
【請求項4】
前記封止部が前記セラミック多孔質板の周縁を一巡して設けられた請求項1乃至3のいずれかに記載のセラミックフィルタエレメント。
【請求項5】
前記封止部材が、前記フィルタエレメントに着脱自在に取り付けられる取っ手を係合させる係合部を備え、前記フィルタエレメントに取り付けられた該取っ手を移動させることにより該フィルタエレメントが移動可能となる請求項1乃至4のいずれかに記載のセラミックフィルタエレメント。
【請求項6】
焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板を準備する工程、
粘性生地を準備する工程、
前記セラミック多孔質板の側端面の少なくとも一部に前記粘性生地を押し当て、該側端面に該粘性生地を連接させる工程、
連接させられた該粘性生地を乾燥後前記セラミック多孔質板とともに焼成する工程
を含むセラミックフィルタエレメントの製造方法。
【請求項7】
焼失性の多孔質板を混在させた坏土から成る板を焼成してなるセラミック多孔質板を準備する工程、
固化工程により固化することとなる固化前駆体から成る流動性物を準備する工程、
前記セラミック多孔質板の側端面の少なくとも一部に前記流動性物を塗り込んで前記セラミック多孔質板の孔に該流動性物を充填する工程、及び/又は前記セラミック多孔質板の側端面の少なくとも一部に前記流動性物を塗付して前記セラミック多孔質板の孔を塞ぐ皮膜を形成する工程、
前記流動性物を前記固化工程により固化する工程
を含むセラミックフィルタエレメントの製造方法。
【請求項8】
前記流動性物が焼成用生地のスラリーであり、
前記固化工程が該スラリーを乾燥後前記セラミック多孔質板とともに焼成する工程である請求項7に記載のセラミックフィルタエレメントの製造方法。
【請求項9】
前記流動性物がセメントのスラリーであり、
前記固化工程が該セメントのスラリーを固化する工程である請求項7に記載のセラミックフィルタエレメントの製造方法。
【請求項10】
前記流動性物が樹脂の溶液又はエマルジョンであり、
前記固化工程が該流動性物を乾燥する工程である請求項7に記載のセラミックフィルタエレメントの製造方法。
【請求項11】
前記流動性物が硬化性樹脂又は該樹脂の溶液であり、前記固化工程が該樹脂を硬化させる工程である請求項7に記載のセラミックフィルタエレメントの製造方法。
【請求項12】
前記焼失性の多孔質板の端面が面取りされた請求項6乃至11のいずれかに記載のセラミックフィルタエレメントの製造方法。
【請求項13】
前記焼失性の多孔質板の端部を加熱溶融することにより前記端面が面とりされた請求項12に記載のセラミックフィルタエレメントの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−122829(P2006−122829A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315655(P2004−315655)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(591241707)三喜ゴム株式会社 (5)
【Fターム(参考)】