説明

セラミックマトリックス複合材を非セラミックマトリックス構成要素に固定する固定装置

【課題】従来技術の有害な影響を克服し、かつ緩和、軽減できる固定装置を提供する。
【解決手段】異なる材料からなる構成要素、特に、セラミックマトリックス複合材(CMC)18と金属製エンジン構成要素を取り付けるために利用される簡単なCMC固定システム10が提供される。このシステムは、金属から製作される取り外し可能なサブアッセンブリブラケットで構成される。ブラケット14は、一方の端部に取り付けられた金属製エンジン構成要素と、他方の端部に取り付けられたCMC構成要素とを備える。ブラケット14は、CMC18と金属製エンジン構成要素とをリベット26またはピンを用いて一体に取り外し可能に固定し、これらのリベット26またはピンは、CMC18を介して開口部に挿入され、隣接する部品をしっかりと固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックマトリックス複合材(CMC)を金属構成要素に固定するのに用いられる固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガスタービンエンジンは、高温、高圧、強度の機械振動および強度の音響振動を特徴とする厳しい環境で作動する。エンジンの製造者は、現在の技術のニッケル基超合金に代わる改良された耐性、より優れた推力、より長い寿命、より優れた全体の性能を提供できる新しい進歩した材料を研究している。エンジンを製造している当業者は、セラミックマトリックス複合材をニッケル基超合金の性能特性をはるかにしのぐ質を有するものとして認識してきた。CMCは、より高い温度条件に耐えられ、重量削減特性が高く、他の金属より耐性が改良されている。CMCは、特に優れた振動減衰特性および低い熱膨張係数を備える。
【0003】
CMCは、多くの利点を備えているが、特にエンジン構成要素の高温部の用途における設計課題も与えている。これらのエンジン設計の制限によって、CMCを金属構成要素に取り付けるように設計することが困難になる。多くの従来のCMC固定システムは、大きな荷重に耐え、分散させることができず、これらの設計は残りのエンジンシステムとの空間の制約をもたらす。このような固定システムの1つは、ねじおよびリベット技術の組み合わせを使用している。この固定方法では、機械加工による複数の開口部がCMCに必要となる。これらの開口部は、応力集中を生じ、CMCの破断の可能性を増加させ得る。
【0004】
CMCを金属エンジン構成要素に固定する他の方法は、エンジンに流入する酸素がCMCの微小な亀裂内で消費されるようなCMCセルフシーリング手法(CMC self−sealing approach)である。この方法によって、シールコートを形成しているカーボンマトリックス界面への接近を防止するが、シールコートは衰退してしまう。この固定システムは高度の損傷公差を備えているが、この損傷公差はエンジン組立中の大きな荷重と高温に耐えるのに十分ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、従来技術の前述の影響および他の有害な影響を克服し、かつ緩和、軽減できる固定装置が必要である。空間的な制約を減少させ、機械振動および音響振動を減衰させ、CMCと金属との熱膨張の相違を補償し、従来の固定装置を用いて耐えることが不可能な極端な音響負荷、熱負荷および重量荷重に耐え、分散させることが可能な新しい固定装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、CMCを非CMC構成要素に連結させる簡単なCMC固定システムを提供する。このシステムは、複数の開口部を備えたスロット形状を有する取り外し可能なサブアッセンブリブラケットを備えている。複数の留め具が複数の開口部を通って受けられており、ブラケットを所定の位置に支持する。ブラケットの一方は、留め具によってCMCに固定され、もう一方は、非CMC構成要素に固定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照すると、全体が参照番号10で表される、本発明のCMC固定システムの第1の実施例が示されている。固定システム10は、CMC18に密にまたがる強固なスロット付きブラケット14を備える。ブラケットの反対側の端部30は、ブリッジクランプ12に取り付けられる。ブリッジクランプ12は、ブラケット14の最上部のねじ切りされた柱に取り付けられたナット28を用いて、ブラケット14に固定される。ブラケット14は、金属から製作されるのが望ましい。ブラケット14は、一点取付か多点取付のどちらかを用いてCMC18に固定されてもよい。
【0008】
ブラケット14およびCMC18は、それぞれ複数の開口部32,20を備えており、複数のリベット26がこれらの開口部を通って挿入され、留め具として機能する。開口部32,20は、システム全体が軸方向に膨張できるように細長い形状になっている。
【0009】
リベット26は、ブラケット開口部32およびCMC開口部20を通って挿入される。リベット26は、ブラケット14とCMC18を所定の位置にしっかりと連結させる留め具として機能する。リベット26は、仮に標準のリベットが使用された場合に発生し得る、ブラケット開口部およびCMC開口部に生じる応力を最小化するようなフレア状端部のリベットであることが好ましい。標準のリベットは取付後に膨張し、開口部を満たし、CMCを損傷する。フレア状端部のリベットは、よりピンのように機能し、従来のリベットが付加し得る余分な応力を付加することなく金属部品を固定する。代替として、リベット26は、ブラケット14とCMC18をしっかりと連結し、ブラケット14を所定の位置に保持するように機能するピンで代用してもよい。
【0010】
リベット26は、ブラケット開口部32およびCMC開口部20に挿入される以前に、オプションの複数のスリーブ22の内部に取り付けられてもよい。スリーブ22の機能は、CMC開口部20の縁部に生じる応力または損傷を防止することである。
【0011】
板ばね16が、ブラケット14とCMC部分18が集中する点に挿入される。板ばね16の目的は、機械振動を減衰させるとともに、係合部間のクリアランスにより生じるたるみを補償することである。
【0012】
図2は、全体が参照番号46で表される、本発明の第2の実施例を示している。第1の実施例の要素は、特に示す箇所を除いて第2の実施例と実質的に同一である。CMC固定システムの第2の実施例は、代替の設計のブラケット36を備えている。ブラケット36は、ブラケット36を伸縮可能にする垂直間隙42を備えた可撓性のブラケットである。この可撓性によって、複数のCMC開口部38と、複数のブラケット開口部48とが、これらの2つの部品が高温のときに整列できる。可撓性のブラケット36は、CMCと金属ブラケットの熱膨張係数の相違による損傷を低減させる。金属ブラケットとCMCが同温の場合、ブラケット開口部間の距離は、CMC開口部間の距離より大きくなり、CMCに応力が発生する可能性がある。
【0013】
ブラケットが非常に可撓性である場合は、CMC開口部38およびブラケット開口部48は、円形状にできる。ブラケットが、中程度の可撓性である場合は、CMC開口部38およびブラケット開口部48は、第1の実施例のように細長くなり、細長さの程度は、ブラケット36が可撓性の設計であるために、第1の実施例より短くなる。
【0014】
図3は、全体が参照番号70で表される、本発明のCMC固定システムの断面図を示している。固定システム70は、単一のフレア状端部リベット78を取り込む第1のスリーブ80および第2のスリーブ72を備えている。代替として、リベット78は、標準のリベットまたは二皿リベットであってもよい。皿ばね(べルヴィルワッシャ)74およびワッシャ/シム76が、エンジン作動中に堅固な結合を維持するためにCMCリブ82の一方または両方に使用されてもよい。
【0015】
CMCと金属製エンジン構成要素の取付における熱膨張係数の実質的な相違がある場合は、CMC固定システムの第1の実施例および第2の実施例の両方に、付加的な部品が必要となる。固定システムは、必要であれば、ばねを用いて熱膨張を克服できる。CMCがリベットの長さに沿って膨張しない場合、金属の膨張との相違は、1つまたは複数の皿ばねまたは波形ばねのような付加的なばねを用いて補償される。皿ばねは、部品が熱膨張したときに維持するようにナットと特徴部との間に配置される。このワッシャは、ファスナアッセンブリの剛性を減少させる付加的な目的を与えることができ、熱に起因するアッセンブリの締めつけによって蓄積するCMCの応力を最小化する。
【0016】
CMC固定システムの実施例および本発明の実施例の両方は、一点取付か多点取付のどちらかを用いてよいが、一点取付では、可撓性のブラケットを用いない。一点取付は、材料の耐荷重特性が、適用される荷重を超える場合に好ましい。多点取付の場合は、要求通りに屈曲可能な設計の特徴部が加えられる。一点取付が利用され、かつ回転の自由度が必要であれば、仕様の要求に応じてばねの大きさを調整するか、完全に除去してもよい。
【0017】
本開示は、1つまたは複数の実施例を参照して記載されているが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が加えられてもよく、均等物がその要素の代わりに使用されてもよいことが、当業者には理解されるであろう。さらに、特定の状況または材料を、本発明の範囲から逸脱することなく、発明の教示に適合させるために、多くの変更が加えられ得る。したがって、本開示は、本発明を実行するために企図された最適な様態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の簡単なCMC固定システム設計の第1の実施例を示した斜視図である。
【図2】可撓性のブラケットを用いた本発明の簡単なCMC固定システム設計の第2の実施例を示した斜視図である。
【図3】本発明の簡単なCMC固定システムの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックマトリックス複合材を非セラミックマトリックス構成要素に固定する固定装置であって、
複数の開口部を備えた形状を有する取り外し可能なサブアッセンブリブラケットと、
前記複数の開口部を貫通して受けることが可能な複数の留め具と、
を備え、
前記ブラケットは、前記複数の留め具によって前記セラミックマトリックス複合材に固定された第1の端部と、前記非セラミックマトリックス構成要素に固定された第2の端部とを有することを特徴とする固定装置。
【請求項2】
前記ブラケットと前記セラミックマトリックス複合材との間のスロットに挿入され、振動を減衰させることが可能な板ばねをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項3】
前記セラミックマトリックス複合材を貫通し、前記ブラケットの複数の開口部と位置合わせされる複数の開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項4】
前記セラミックマトリックス複合材の複数の開口部および前記ブラケットの複数の開口部は、前記複数の留め具を挿入できるように整列することを特徴とする請求項3記載の固定装置。
【請求項5】
前記複数の留め具は、前記セラミックマトリックス複合材の複数の開口部と前記ブラケットの複数の開口部とに挿入されるリベットまたはピンであり、前記セラミックマトリックス複合材を前記ブラケットに取り外し可能に固定することを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項6】
前記リベットは、前記セラミックマトリックス複合材の複数の開口部を通って挿入される以前に、スリーブの内側に取り付けられることを特徴とする請求項5記載の固定装置。
【請求項7】
前記リベットは、単一のフレア状端部のリベットであることを特徴とする請求項5記載の固定装置。
【請求項8】
前記リベットまたは前記ピンと、前記ブラケットとの間に配置された皿ばねをさらに備えることを特徴とする請求項5記載の固定装置。
【請求項9】
前記非セラミックマトリックス構成要素は、金属であることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項10】
前記ブラケットは、該ブラケットが可撓性となるように中央に垂直間隙を備えることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項11】
前記ブラケットは、該ブラケットに連結されたブリッジクランプメカニズムを備えることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項12】
前記ブラケットを貫通する前記複数の開口部および前記セラミックマトリックス複合材の複数の開口部は、長細い形状または円形状であることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項13】
前記ブラケットは、一点取付または多点取付を用いて前記セラミックマトリックス複合材に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項14】
セラミックマトリックス複合材を金属エンジン構成要素に固定する固定装置であって、
複数の開口部と1つのスロットを備えた形状を有する取り外し可能なサブアッセンブリブラケットと、
前記スロットを貫通し、前記複数の開口部内で受けることが可能な複数の留め具と、
を備え、
前記ブラケットは、一方の端部の前記スロットにおいて、前記複数の留め具によって前記ブラケットに固定される前記セラミックマトリックス複合材を受けており、該ブラケットは、反対側の端部において前記金属エンジン構成要素に固定されることを特徴とする固定装置。
【請求項15】
前記ブラケットと前記セラミックマトリックス複合材との間に配置された板ばねをさらに備えることを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項16】
前記セラミックマトリックス複合材を貫通する複数の開口部をさらに備え、該複数の開口部は、前記複数の留め具を挿入することを可能にする前記ブラケットの複数の開口部と整列することを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項17】
前記複数の留め具は、前記ブラケットを貫通する複数の開口部および前記セラミックマトリックス複合材の複数の開口部で受けることができる複数の単一のフレア状端部のリベットまたはピンであり、前記ブラケットを前記セラミックマトリックス複合材に取り外し可能に固定することを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項18】
前記リベットは、前記セラミックマトリックス複合材の複数の開口部を通って挿入される以前に、スリーブの内側に取り付けられることを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項19】
前記セラミックマトリックス複合材の一方または両方の側に皿ばねをさらに備えることを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項20】
前記ブラケットは、該ブラケットが可撓性となるように垂直の凹部をさらに備えることを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項21】
前記ブラケットは、該ブラケットに連結されるブリッジクランプメカニズムを備えることを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項22】
前記ブラケットを貫通する複数の開口部および前記セラミックマトリックス複合材を貫通する複数の開口部は、細長い形状または円形状であることを特徴とする請求項14記載の固定装置。
【請求項23】
前記ブラケットは、一点取付または多点取付を用いて前記セラミックマトリックス複合材に取り付けられることを特徴とする請求項14記載の固定装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−128236(P2008−128236A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293803(P2007−293803)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION