説明

セラミックメタルハライドランプ

メタルハライドランプ(10)は、セラミック材料から形成されていてもよい放電容器(12)を含んでいる。この容器は内部空間(16)を画成している。イオン化性封入物(17)を内部空間内に配置する。このイオン化性封入物は不活性ガス、水銀及びハロゲン化物成分を含んでいる。ハロゲン化物成分はアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物成分、並びに適宜1種以上の希土類ハロゲン化物及び第IIIA族ハロゲン化物を含んでいる。このアルカリ土類ハロゲン化物成分は1種以上のハロゲン化バリウム及びハロゲン化ストロンチウムを含んでいる。1以上の電極(18、20)が放電容器内に設けられ、電流印加時に封入物を活性化する。このランプは、付勢時に活性タングステンハロゲンサイクルを維持するのに充分な管壁負荷を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率、良好な演色性及び高いランプ光束維持を有する電球に関する。本発明は、特に、封入物にバリウム又はストロンチウムのハロゲン化物を配合したセラミックメタルハライドランプに関する用途を有し、特にこれに関して説明する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプは、希ガス、金属ハロゲン化物及び水銀の混合物のような気相封入物を、2つの電極を通る電気アークによってイオン化することによって発光させる。これらの電極と封入物は、励起された封入物の圧力を維持するとともに放出された光を通過させる半透明又は透明放電容器内に封入される。「ドーズ」とも呼ばれる封入物は、電気アークによる励起に応答して所望のスペクトルエネルギー分布を放出する。例えば、ハロゲン化物では、光特性、例えば色温度、演色、及び発光効率の広い選択の自由を与えるスペクトルエネルギー分布が得られる。
【0003】
約90〜100ルーメン/ワット(LPW)の範囲の効率、85〜95以上の演色評価数R、及び80%以上の光束維持値、並びに約20〜50W/cmの管壁負荷で約2600〜4000Kの色温度を有するセラミックメタルハライドランプが開発されている。しかし、放電容器壁の黒化のためにランプの早期故障が起こることがある。この黒化は、フィラメントから壁へ移行したタングステンによるものである。ランプ雰囲気中に酸素及び/又は水蒸気が存在すると、壁の黒化の一因となることが判明している。水蒸気は、極微量であっても周知の「水サイクル」によってタングステンフィラメントコイルの気化を増大させるので特に有害である。この水サイクルでは、タングステンコイルの温度は水蒸気を水素と酸素に分解するのに熱的に充分である。生じた酸素はコイルからのタングステンと反応して揮発性の酸化物を形成し、これがランプの冷たい部分に移行して凝縮する。これらの酸化物の付着物は気体状の水素により還元されて黒い金属状タングステンを生成するとともに再度水を形成する。この水がこのサイクルを繰り返させる。
【0004】
タングステンフィラメントを内包し、かつハロゲン化物又はハロゲンガスを含む封入物を収容する気密に密封された光透過性の放電容器を含むタングステンハロゲンランプが様々な用途で広く使用されている。これらのランプのあるものはタングステンハロゲンサイクルで作動するが、このサイクルは再生性の連続プロセスであって、ハロゲン化物が白熱のタングステンフィラメントから気化したタングステンの粒子と化学結合したときにハロゲン含有タングステン化合物が生成する。こうして形成されたハロゲン含有タングステン化合物がその後フィラメントで熱分解されるとタングステン粒子がフィラメントに戻る。封入物中に使用するハロゲン化合物としては、臭素並びに臭化水素、臭化メチル、ジブロモメタン、及びブロモホルムのような臭化物がある。低い管壁負荷(WL)、例えば約30W/cm未満、従って低い温度、すなわち約200℃未満の内壁温度で作動するランプは一般に、タングステンハロゲンサイクルを支持しない。さらに、WLがあまりに低過ぎると、ハロゲン化物温度が低くなり過ぎ易く、その結果ハロゲン化物の蒸気圧が低くなり、また性能が低くなる。
【0005】
例えばKoninklijke Philips Electronics N.V.の国際公開第99/53522号及び同第99/53523号に開示されているように、酸化カルシウム又は酸化タングステンディスペンサーを放電容器内に組み込むことが提案されている。Aldermanらの米国特許第6844676号には、金属状水銀、希ガスの混合物及び適宜放射活性な85Kr、並びにヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化タリウム、及び幾つかの希土類ヨウ化物からなる混合物のような塩混合物を含むアーク管封入物が開示されている。
【特許文献1】国際公開第99/53522号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/53523号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6844676号明細書
【特許文献4】米国特許第3786297号明細書
【特許文献5】米国特許第3798487号明細書
【特許文献6】米国特許第6555962号明細書
【特許文献7】米国特許第6583563号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0222595号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0222596号明細書
【特許文献10】米国特許第6731068号明細書
【特許文献11】米国特許第6819050号明細書
【特許文献12】国際公開第99/53523号パンフレット
【特許文献13】米国特許第6373193号明細書
【特許文献14】米国特許第6469446号明細書
【特許文献15】国際公開第02/91428号パンフレット
【特許文献16】米国特許第5473226号明細書
【特許文献17】米国特許第6956328号明細書
【非特許文献1】Journal of Applied Physics; 02/1971;Volume 42, Number 2; Westinghouse Research Laboratories; Pittsburgh, PA;15235
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
代表的な実施形態では、高い又は低い電力で作動させることができ、高効率及び良好な演色を有する新規で改良されたメタルハライドランプが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
代表的な実施形態のある態様では、セラミックメタルハライドランプは、セラミック材料から形成され、内部空間を画成する放電容器を含んでいる。イオン化性封入物が内部空間内に配置されている。このイオン化性封入物は不活性ガス、水銀及びハロゲン化物成分を含んでいる。ハロゲン化物成分は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物成分、並びに適宜希土類ハロゲン化物及び第IIIA族ハロゲン化物の1種以上を含む。アルカリ土類ハロゲン化物成分は、ハロゲン化バリウム及びハロゲン化ストロンチウムの1種以上を含む。1つ以上の電極が放電容器内に設けられ、電流印加時に封入物を活性化する(封入物を励起する)。このランプは、付勢時にタングステンハロゲンサイクルを維持するのに充分な管壁負荷を有する。
【0008】
別の態様では、セラミックメタルハライドランプは、セラミック材料から形成され、内部空間を画成する放電容器を含んでいる。イオン化性封入物が内部空間内に配置されている。このイオン化性封入物は不活性ガス、水銀及びハロゲン化物成分を含んでいる。ハロゲン化物成分は、封入物の全ハロゲン化物成分のモル%として表して、約5モル%以上のハロゲン化ナトリウム、適宜約1〜約10%の第IIIA族金属ハロゲン化物、約10〜約95%のアルカリ土類金属ハロゲン化物(このアルカリ土類金属ハロゲン化物はハロゲン化バリウム及びハロゲン化ストロンチウムの1種以上を含む)、及び適宜約1〜約15%の希土類金属ハロゲン化物を含む。このランプは30W/cm以上の管壁負荷を有する。
【0009】
別の態様では、ランプを作動させる方法は、不活性ガス、水銀及びハロゲン化物成分を含むイオン化性封入物を放電容器に入れることを含んでおり、このハロゲン化物成分は、封入物の全ハロゲン化物成分のモル%として表して、約5モル%以上のハロゲン化ナトリウム、適宜約1〜約10%の第IIIA族金属ハロゲン化物、約10〜約95%のアルカリ土類金属ハロゲン化物(このアルカリ土類金属ハロゲン化物はハロゲン化バリウム及びハロゲン化ストロンチウムの1種以上を含む)、及び適宜約1〜約15%の希土類金属ハロゲン化物を含む。このランプを付勢して、放電を生じさせるとともに放電容器に30W/cm以上の管壁負荷を与える。
【発明の効果】
【0010】
1以上の実施形態の1つの利点は、改良された性能と光束維持を有するセラミックアーク管封入物の提供である。
【0011】
1以上の実施形態の別の利点は、タングステン−ハロゲンサイクルの改良された維持である。
【0012】
1以上の実施形態のもう1つ別の利点は、ランプの演色特性を選択することができることである。
【0013】
さらに別の利点は、好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読み理解することにより当業者には明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
様々な用途に適した放電ランプは高効率、良好な演色性及び良好なランプ光束維持を有する。ランプには、改良された演色を可能にしつつタングステン−ハロゲンサイクルを維持するように配合された封入物が備えられている。この封入物は、水銀と、アルカリ土類金属ハロゲン化物の1種以上、幾つかの態様ではその組合せを含むアルカリ土類ハロゲン化物成分とを含んでいる。アルカリ土類金属ハロゲン化物は、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)及びストロンチウム(Sr)のハロゲン化物から選択され得る。適切なハロゲン化物としては、塩化物、ヨウ化物、臭化物、及びこれらの組合せがある。
【0015】
様々な態様では、ランプは約30W/cm以上の管壁負荷を有する。管壁負荷は約50W/cm以上、幾つかの実施形態では約70W/cm以上であり得る。約25〜30W/cm未満では、アーク管壁は活性タングステンハロゲンサイクルの効率的な維持のためには冷た過ぎる傾向がある。作用機序は充分には理解されていないが、アルカリ土類ハロゲン化物成分が管壁負荷と共同して、熱い電極先端から気化したタングステンがアーク管壁の内面上に付着する代わりに主として電極のより冷たい部分に付着するという活性なタングステンハロゲン壁クリーニングサイクルを維持すると考えられる。
【0016】
図1を参照して、照明アセンブリは金属ハロゲン化物放電ランプ10を含んでいる。このランプは、セラミック又はその他適切な材料で形成され、放電空間16を包囲する壁14を有する放電容器又はアーク管12を含んでいる。この放電空間はイオン化性封入物17を収容している。電極18、20がアーク管の対向する端部22、24を通って延びていて、導体26、28から電流を受け取る。これらの導体は、アーク管を横切って電位差を供給し、またアーク管12を支持している。アーク管12は外側バルブ30により取り囲まれており、このバルブは一端にランプキャップ32を備えており、このキャップを通してランプが主電源のような電源34に接続される。照明アセンブリはまたバラスト36も含んでおり、これはランプのスイッチを入れたときにスターターとして働く。バラストはランプと電源を含む回路内に位置する。アーク管と外側バルブとの間の空間は排気することができる。適宜、石英又はその他適切な材料からなるシュラウド(図示せず)が、アーク管の破裂の場合に起こり得るアーク管破片を収容するようにアーク管を取り囲んでいるか又は部分的に取り囲んでいる。
【0017】
作動中、電極18、20は電極の先端38、40(図2)間にアークを生成し、このアークは封入物をイオン化して放電空間内にプラズマを生成する。この生成した光の放出特性は、主として、封入物の構成成分、電極を横切る電圧、チャンバーの温度分布、チャンバー内の圧力、及びチャンバーの幾何学的形状に依存する。電極先端38、40は、アークギャップを画成する間隔dだけ離れている。バラスト36は、ランプに充分な電力を供給するとともに約30W/cm以上の管壁負荷を与えるように選択される。
【0018】
本明細書中で定義されているように、アーク管管壁負荷(WL)=W/Aであり、ここでWは全アーク管電力(ワット)であり、Aは電極先端38、40間に位置するアーク管壁の面積(cm)である。アーク管壁がランプの軸X−Xから均一な間隔rである図2に示したランプの場合、A=2πrdである。例えば図3に示すように、壁が電極先端間で曲がっているより複雑な設計の場合、面積はrの変動を考慮するモデル化技術によって決定することができる。アーク管電力は電極電力を含む全アーク管電力である。
【0019】
セラミックメタルハライドランプの場合、封入物は、水銀、アルゴン、クリプトン又はキセノンのような不活性ガス、及びアルカリ土類ハロゲン化物成分を含むハロゲン化物成分の混合物を含み得、このハロゲン化物成分はさらに、ナトリウム及びセシウムのような1種以上のアルカリ金属のハロゲン化物、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から選択される1種以上の希土類金属(RE)のハロゲン化物、及び/又はインジウム(In)及びタリウム(Tl)のような元素の周期律表の第IIIA族から選択される1種以上の金属のハロゲン化物を含んでいてもよい。
【0020】
水銀ドーズはアーク管容積当たり約3〜35mg/cm、例えばアーク管容積当たり5mg/cm以上、一実施形態では10mg/cm以上からなり得る。一実施形態では、水銀ドーズはアーク管容積当たり約20mg/cm未満である。水銀重量は、選択されたバラストから電力を引き出すための所望のアーク管作動電圧(Vop)が提供されるように調節される。代案において、ランプ封入物は水銀を含まない。ハロゲン化物ドーズはアーク管容積当たり約10〜約50mg/cmからなり得、すなわち、ハロゲン化物ドーズ対水銀の比は重量で表して約1:3〜約15:1である。
【0021】
通例、ハロゲン化物成分は塩化物、臭化物、及びヨウ化物から選択される。ヨウ化物は、アーク管の腐食が匹敵する臭化物又は塩化物の場合より低いので、より高い光束維持が得られる傾向がある。ハロゲン化物化合物は通常化学両論的関係を示す。封入物のアルカリ土類金属ハロゲン化物は一般式MXを有することができ、ここでMはCa、Ba、Sr、及びMgから選択され、XはCl、Br、及びIから選択される。様々な態様では、アルカリ土類ハロゲン化物成分は少なくともハロゲン化バリウム(BaX)を含む。アルカリ土類金属ハロゲン化物又はその組合せの選択により、ランプの所望の用途に適当な色温度を生成することができる。例えば、白色光を放出するランプは、2種以上のアルカリ土類金属ハロゲン化物を封入物の他の成分と組み合わせることによって容易に策定することができる。例えば、ハロゲン化バリウムは赤のスペクトル出力を与える傾向があり、マグネシウム、カルシウム、及びストロンチウムはそれぞれ主として緑、赤及び青、及び青のスペクトル出力を有する。幾つかの実施形態では、アルカリ土類ハロゲン化物成分はBaXと、SrX及びCaXの1種以上を含む。ある特定の実施形態では、アルカリ土類ハロゲン化物成分はBaXとSrXを含む。
【0022】
代表的なハロゲン化物として、BaI、SrI、CaI、MgI、NaI、TlI、DyI、HoI、TmI、InI、CeI、CeBr、CaI、及びCsI、並びにこれらの組合せがある。モル分率として表して、全ハロゲン化物成分は、約5〜約90%のNaX(ここで、Xはハロゲン化物又はその組合せであることができる)のようなアルカリ金属ハロゲン化物、約10〜約95%のアルカリ土類ハロゲン化物成分MX、0〜約10%のTlハロゲン化物又はInハロゲン化物のような第IIIA族ハロゲン化物、並びに0〜約15%の希土類金属ハロゲン化物を含み得る。様々な態様ではMXは約15%以上であり、一実施形態ではMXは約18%以上である。幾つかの態様ではMXは約35%未満であり、幾つかの実施形態では約30%未満である。様々な態様では、第IIIA族ハロゲン化物はTlハロゲン化物である。第IIIA族ハロゲン化物は全ハロゲン化物成分の1%以上であることができ、幾つかの態様では2%以上であることができる。幾つかの態様では、第IIIA族ハロゲン化物は約4%未満である。希土類金属ハロゲン化物は全ハロゲン化物成分の2%以上であることができ、幾つかの態様では6%未満である。アルカリ金属ハロゲン化物はモル濃度が全ハロゲン化物成分の25%以上であることができ、幾つかの態様では約80%未満である。
【0023】
様々な態様では、全ハロゲン化物成分は2%以上のBaXを含む。特定の実施形態では、ハロゲン化物成分は4%以上のBaXを含む。幾つかの態様では、封入物中のBaXとその他のMX化合物の比は約1:10〜約10:1の範囲であることができる。
【0024】
一実施形態では、ハロゲン化物成分はハロゲン化セリウム、例えば臭化セリウムを含んでおり、これは封入物中のハロゲン化物の4%以上のモル濃度で存在し得る。ハロゲン化ナトリウムは、ハロゲン化セリウムのモル%の2倍以上のモル%、例えば封入物中のハロゲン化物の約8モル%以上で存在し得る。
【0025】
例えば、封入物のハロゲン化物成分は20〜75%のMI、2〜15%のCeI、1〜10%のTlI、及び残部(約25〜77%)のNaIを、単独で又は少量の他のハロゲン化物と共に含み、これは良好な演色評価数(Ra)、効率、及び電子バラスト上での色補正温度(CCT)を達成するのに適切である。かかるランプは100〜1000時間の範囲で殆ど早期故障がないように設計される。
【0026】
一実施形態では、Na、Ce、Tl、及びM以外の他のハロゲン化物も、全ハロゲン化物成分の合計10重量%以下で存在する。これらその他のハロゲン化物としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムから選択される希土類金属(RE)の1種以上のハロゲン化物を挙げることができる。
【0027】
CeIとTlIは、不快な外見を作り出すことなく光のやや緑色の外見に寄与する。これらはプラズマ内で多少不安定性を示すことがあり、これはCsIの存在によって克服することができる。ランプは約2500〜約4500K、例えば約3500〜4500Kの補正された色温度(CCT)を与えることができる。ランプはRa>70、例えばRa>70、幾つかの実施形態ではRa>80の演色評価数を有し得る。演色評価数は人間の目がランプの光によって色を識別する能力の目安である。ランプは、約0.010〜0.030、例えば約0.022のDccyを有することができる。Dccyは、Y軸(CCY)上での、色点の色度における標準的な黒体曲線からの差である。
【0028】
金属ハロゲン化物アーク管は、始動を容易にするために、1種以上のアルゴン、キセノン、及びクリプトンのような不活性ガスで再封入(back fill)される。不活性ガスのうち、キセノンは点火ガスとしてアルゴンより有利である。すなわち、原子がより大きく、タングステン電極の気化を抑制するので、ランプがより長く存続するからである。CMHランプに適した一実施形態では、Kr85を小量加えたXeでランプを再封入する(backfill)。放射活性なKr85は始動を補助するイオン化を与える。冷間封入圧力は約60〜300Torrであることができる。一実施形態では、約120Torr以上の冷間封入圧力を使用する。別の実施形態では、冷間封入圧力は約240Torr以下である。高過ぎる圧力では始動が危うくなる可能性がある。低過ぎる圧力では、寿命中に光束低下が増大する可能性がある。ある代表的な実施形態では、封入物ガスは少なくともAr又はXe、Hg、極微量のKr85、及びハロゲン化物成分を含む。
【0029】
一実施形態では、作動100時間におけるランプのルーメン/ワット(LPW)は100で以上あり、ある特定の実施形態では110以上である。8000hrにおける光束として測定した光束維持率は、約80%以上であることができ、100hrの実施形態での1つの光束においては85%以上である。
【0030】
セラミックメタルハライドランプは、米国特許出願第11/040990号に記載されているように、3つの部品の構成とすることができる。これらの部品はグリーンセラミックとして形成し、焼結又はその他適切な方法で接合する。
【0031】
特に図2を参照して、図示されているアーク管12は、端部部分52、54の間に延びる本体部分50を含み得る。図2の本体部分は中心軸X−Xの回りで円筒形又は実質的に円筒形である。「実質的に円筒形」とは、本体部分の内部半径rが、電極先端間の領域内で10%を超えて変化することがないことを意味する。或いは、この本体は図3に示されているようにより楕円形状を有していてもよい。図示されている実施形態で端部部分は、各々一体的に形成されており、一般にディスク形の壁部分56、58と軸方向に延びる中空の脚部分60、62とからなり、この脚部を通ってそれぞれの電極18、20が嵌められている。脚部分は図示のように円筒形でもよいし、又はテーパーが付いていて本体部分50から離れるにつれて外径が減少してもよい。
【0032】
円筒形の壁50は内径D(電極先端38、40間の領域64で測定した最大直径)と長さLをもっている。ランプのアスペクト比(L/D)は、内部のアーク管長さを内部のアーク管直径で割った値として定義される。比L/Dは約0.8〜3.5の範囲であることができる。一実施形態では、L/Dは約2.0〜約3.0、例えば2.2〜2.8であり、これは高いワット数のランプ、例えば約150〜200W超に特に適している。より低いワット数のランプ、例えば約100W未満のものの場合、約0.8〜1.8のL/D比を使用できる。L/D比は、特に色温度が特別な重要性をもつと考えられない場合には上記範囲から外れていることもできる。
【0033】
端部部分52、54は焼結継手によって円筒形の壁50に気密に固定されている。端部壁部分は各々がそれぞれの脚部分60、62中の軸方向の穴70、72の内部の端部に画成されている開口66、6をもっている。穴70、72はシール90、92を介してリード線80、82を受け取る。リード線、従って導体と電気的に接続されている電極18、20は、通例主としてタングステンからなり、長さが約8〜10mmである。リード線80、82は通例、アルミナ脚部分上に熱的に誘発される応力を低減するためにアルミナに近い熱膨張係数を有するニオブ及びモリブデンからなり、例えばMo−Alから形成されたハロゲン化物耐性スリーブを有していてもよい。
【0034】
セラミック壁厚(ttb)はアーク管本体の中央部分の壁材料の厚さ(mm)として定義される。円筒形部分50で測定したttbは、幾つかの実施形態では、特に高いワット数で作動させるランプの場合、1mm以上であることができる。ttbが低過ぎると、壁の熱伝導による熱拡散が不適切になる傾向がある。このため、アークの対流プルームの上方に高温の局部的な熱い地点が生じる可能性があり、そのためにクラックが発生するとともに管壁負荷(WL)の限界が低下する。より厚い壁は熱を拡散し、クラックの発生を低減し、より高いWLを可能にする。一般に、最適なttbはアーク管の大きさと共に増大し、より高いワット数にはより大きいアーク管でより厚い壁が有益である。アーク管電力が250〜400Wの範囲である一実施形態では、1.1mm<ttb<1.5mmである。より低いワット数、例えば約200W未満の場合、壁厚ttbはより低くすることができる。WLが高過ぎると、アーク管材料は熱くなり過ぎる傾向があり、その結果石英の場合は軟化したり、またセラミックの場合は気化したりする可能性がある。
【0035】
アークギャップdは電極18、20の先端38、40間の間隔である。間隔ttsは電極先端からアーク管本体の内部端部を画成するそれぞれの壁56、58までの間隔として定義される。ttsの最適化により、端部構造は所望のハロゲン化物圧力を与えるのに十分な程に熱くなるが、セラミック材料の腐食を開始する程には熱くならない。一実施形態では、ttsは約2.9〜3.3mmである。別の実施形態では、ttsはおよそ3.1mmである。
【0036】
アーク管の脚60、62は、アーク管の性能にとって望ましいより高いセラミック本体−端部温度と、脚の端部のシール90、92を維持するのに望ましいより低い温度との間の熱的遷移部を与える。脚の最小の内径は電極−導体直径に依存し、後者は始動及び連続的作動の間支持されるべきアーク電流に依存する。
【0037】
端部壁部分は、熱を拡散するには十分に大きいが、遮光を防ぐか又は最小にするのには十分に小さい厚さtteをもっている。離散した内部の角100はハロゲン化物の凝縮のために好ましい位置を与える。
【0038】
図示されているアーク管12は焼結中に互いに密封される3つの部分から形成されている。アーク管は、1又は5個の部品のようにより少ないか又はより多い数の部品から構築することができることが分かる。5個の部品構造の場合、プラグ部材を、組み立て中に互いに接合される別個の脚及び端部壁部材と交換する。
【0039】
本体部材とプラグ部材は、セラミック粉末と結合材の混合物をダイプレスして中実のシリンダーにすることによって構築することができる。通例、この混合物は95〜98重量%のセラミック粉末と2〜5重量%の有機結合材からなる。セラミック粉末は%以上の純度と約2〜10m/gの表面積を有するアルミナ(Al)からなり得る。アルミナ粉末は、粒成長を抑制するために、例えばアルミナの重量に対して0.03〜0.2%、一実施形態では0.05%に等しい量でマグネシアをドープしてもよい。使用できるその他のセラミック材料として、酸化イットリウム、酸化ルテチウム、及び酸化ハフニウム並びにこれらとアルミナの固溶体及び化合物、例えばイットリウム−アルミニウム−ガーネット及びオキシ窒化アルミニウムのような非反応性の耐火性酸化物及びオキシ窒化物がある。個別に又は組み合わせて使用できる結合材としては、ポリオール、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリレート、セルロース誘導体及びポリエステルのような有機ポリマーがある。
【0040】
中実のシリンダーをダイプレスするのに使用することができる代表的な組成物は、Baikowski International、Charlotte、N.C.から製品番号CR7として入手可能な7m/gの表面積を有するアルミナ粉末を97重量%含む。このアルミナ粉末に、アルミナの重量の0.1%の量でマグネシアをドープした。代表的な結合材は、2.5重量%のポリビニルアルコール及びInterstate Chemicalから入手可能なCarbowax 600を1/2重量%含む。
【0041】
ダイプレスの後、通例熱分解により、結合材をグリーン部品から除去して、ビスク焼成部品を形成する。熱分解を実施するには、例えば、グリーン部品を空気中で室温から約900〜1100℃の最高温度まで4〜8時間かけて加熱した後、その最高温度に1〜5時間保持し、次いで部品を冷却するとよい。熱分解後、ビスク焼成部品の気孔率は通例約40〜50%である。
【0042】
次に、ビスク焼成部品を機械加工する。機械加工した部品を通例焼結前に組み立て、焼結工程で部品を互いに接合させる。これらの部品は異なる密度を有しているので、異なる収縮特性をもっており、従って焼結の際にシールを形成し得る。
【0043】
焼結工程は、約10〜15℃の露点を有する水素中でビスク焼成部品を加熱することによって実施することができる。通例、温度を室温から約1850〜1880℃まで段階的に上昇させた後、1850〜1880℃に約3〜5時間保持する。最後に、温度を冷却期間内に室温まで低下させる。セラミック粉末にマグネシアを含めることによって、通例、粒子の大きさが75ミクロンより大きく成長するのが抑制される。得られるセラミック材料は密に焼結した多結晶質アルミナからなる。シール90、92は通例、ディスプロシア−アルミナ−シリカガラスからなり、リード線80、82の一方の回りにガラスフリットをリングの形状で配置し、アーク管12を垂直に整列させ、フリットを溶融させることによって形成することができる。次に、溶融したガラスを脚60、62中に流下させ、導体と脚の間にシール90、92を形成する。次いで、アーク管をひっくり返して、封入物を封入した後他の脚を密封する。
【0044】
別の代表的な構築方法によると、放電チャンバーの構成部品を、約45〜60容積%のセラミック材料と約55〜40容積%の結合材からなる混合物の射出成形によって形成する。セラミック材料は約1.5〜約10m/g、通例3〜5m/gの表面積を有するアルミナ粉末からなることができる。一実施形態によると、アルミナ粉末は%以上の純度である。このアルミナ粉末には、粒成長を抑制するために、例えばアルミナの重量の0.03〜0.2%、例えば0.05%に等しい量のマグネシアをドープしてもよい。結合材はワックス混合物又はポリマー混合物からなり得る。
【0045】
射出成形プロセスでは、セラミック材料と結合材の混合物を加熱して高粘度混合物を形成する。次に、この混合物を適切な形状の金型内に射出し、次いで冷却して成型品を形成する。
【0046】
射出成形の後、通例熱処理によって成型品から結合材を除去して、結合材を除去した部品を形成する。熱処理は、成型品を空気中又は制御された雰囲気、例えば真空、窒素、希ガス中で、最高温度まで加熱した後、その最高温度を保持することによって行うことができる。例えば、温度は室温から160℃の温度まで約2〜3℃/時間でゆっくり上昇させてもよい。次に、温度を約100℃/時間で900〜1100℃の最高温度まで上昇させる。最後に、温度を900〜1100℃に約1〜5時間保持する。次いで部品を冷却する。熱処理工程後、気孔率は約40〜50%である。
【0047】
ビスク焼成部品は通例、焼結前に組み立てて、上記と同様にして焼結工程で部品を互いに接合させる。
【実施例】
【0048】
本発明の範囲を限定する意図はないが、以下の実施例でセラミック容器を用いた改良された性能を有するランプの形成を立証する。
【0049】
実施例
図2に示した形状に従って3つの構成部品からアーク管を形成する。内径Dは約5.8mmであり、内部の長さLは約7.6mmである。ランプを形成するために、表1に掲げた重量比で約5mgのハロゲン化物を含む封入物を使用する。このメタルハライドアーク管に、Ar又はXeを含み、小量のKr85を加えた希ガスを再封入する。冷間封入圧力は120〜300Torrである。アーク管組み立てて外側の真空ジャケットを有するランプとし、70Wの電子バラストでテストする。アーク管の脚部の幾何学的形状、リード線の設計、シールパラメーター、及び外側のジャケットは試験した全てのランプで同じである。
【0050】
上記のように形成したランプを垂直配向(すなわち、図3に図示されているような)で、ランプのキャップを上に配置して、70Wでテストする。表1に、100時間後に得られた結果を示す。CCX及びCCYはそれぞれ標準的なCIEチャートでの色度X及びYである。結果は10〜11個のランプの平均である。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

これらの結果は、ヨウ化バリウム含有ランプがドーズ中でより低いモル%でもヨウ化カルシウムランプに匹敵する特性を有することを示している。
【0053】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明して来た。明らかに、上記の詳細な説明を読み理解すると、修正及び変更が可能である。本発明は、かかる修正及び変更を全て包含するものと考えられたい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、代表的な実施形態によるランプの透視図である。
【図2】図2は、図1のランプ用のアーク管の第1の実施形態の側面断面図である。
【図3】図3は、図1のランプ用のアーク管の第2の実施形態の側面断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 メタルハライド放電ランプ
12 放電容器又はアーク管
14 壁
16 放電空間
17 イオン化性封入物
18、20 電極
22、24 アーク管の対向する端部
26、28 導体
32 ランプキャップ
34 電源
36 バラスト
38、40 電極の先端
50 本体部分
52、54 端部部分
56、58 ディスク形の壁部分
60、62 中空の脚部分
64 電極先端38、40間の領域
L 長さ
66、68 開口
70、72 軸方向の穴
80、82 リード線
90、92 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(16)を画成するセラミック材料からなる放電容器(12)と、
上記内部空間に設けられたイオン化性封入物(17)であって、不活性ガス、水銀及びハロゲン化物成分を含んでいて、該ハロゲン化物成分が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物成分、及び適宜希土類ハロゲン化物と第IIIA族ハロゲン化物の1種以上を含み、上記アルカリ土類ハロゲン化物成分がハロゲン化バリウム及びハロゲン化ストロンチウムの1種以上を含むイオン化性封入物(17)と、
放電容器内に設けられ、電流印加時に封入物を活性化するための1以上の電極(18、20)と
を備えるセラミックメタルハライドランプ(10)であって、付勢時にタングステンハロゲンサイクルを維持するのに充分な管壁負荷を有するランプ。
【請求項2】
前記アルカリ土類ハロゲン化物成分がハロゲン化バリウムを含む、請求項1記載のランプ。
【請求項3】
前記ハロゲン化バリウムが封入物の全ハロゲン化物成分の2モル%以上である、請求項2記載のランプ。
【請求項4】
前記ハロゲン化バリウムが封入物の全ハロゲン化物成分の4モル%以上である、請求項2記載のランプ。
【請求項5】
前記アルカリ土類ハロゲン化物成分がさらにハロゲン化ストロンチウムを含む、請求項2記載のランプ。
【請求項6】
前記アルカリ土類ハロゲン化物成分が封入物の全ハロゲン化物成分の10モル%以上である、請求項2記載のランプ。
【請求項7】
ハロゲン化ナトリウムが封入物中のハロゲン化物の5モル%以上である、請求項1記載のランプ。
【請求項8】
前記封入物が、タリウムハロゲン化物を含む第IIIA族ハロゲン化物を含む、請求項1記載のランプ。
【請求項9】
前記封入物が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのハロゲン化物並びにこれらの組合せから選択される希土類ハロゲン化物を含む、請求項1記載のランプ。
【請求項10】
前記希土類ハロゲン化物がハロゲン化セリウムを含む、請求項9記載のランプ。
【請求項11】
前記希土類ハロゲン化物が封入物の全ハロゲン化物成分の約1%以上をなす、請求項1記載のランプ。
【請求項12】
前記アルカリ土類金属ハロゲン化物がさらにハロゲン化マグネシウムを含む、請求項1記載のランプ。
【請求項13】
管壁負荷が30W/cm以上である、請求項1記載のランプ。
【請求項14】
管壁負荷が50W/cm以上である、請求項11記載のランプ。
【請求項15】
前記放電容器が実質的に円筒形である本体を含む、請求項1記載のランプ。
【請求項16】
内部空間を画成するセラミック材料からなる放電容器と、
上記内部空間に設けられたイオン化性封入物であって、不活性ガス、水銀及びハロゲン化物成分を含んでいて、該ハロゲン化物成分が封入物の全ハロゲン化物成分のモル%として表して約5モル%以上のハロゲン化ナトリウム、適宜約1〜約10%の第IIIA族金属ハロゲン化物、約10〜約95%のハロゲン化バリウム及びハロゲン化ストロンチウムの1種以上を含むアルカリ土類金属ハロゲン化物、並びに適宜約1〜約15%の希土類金属ハロゲン化物を含む、イオン化性封入物と
を備えるセラミックメタルハライドランプであって、30W/cm以上の管壁負荷を有するランプ。
【請求項17】
管壁負荷が50W/cm以上である、請求項16記載のランプ。
【請求項18】
前記第IIIA族金属ハロゲン化物が封入物の全ハロゲン化物成分の1%以上である、請求項17記載のランプ。
【請求項19】
前記ハロゲン化バリウムが封入物の全ハロゲン化物成分の2%以上である、請求項16記載のランプ。
【請求項20】
ランプ(10)の作動方法であって、
不活性ガス、水銀及び及びハロゲン化物成分を含むイオン化性封入物(17)であって、封入物の全ハロゲン化物成分のモル%として表して約5モル%以上のハロゲン化ナトリウム、適宜約1〜約10%の第IIIA族金属ハロゲン化物、約10〜約95%の、ハロゲン化バリウム及びハロゲン化ストロンチウムの1種以上を含むアルカリ土類金属ハロゲン化物及び0〜約15%の希土類金属ハロゲン化物を含むハロゲン化物成分を含むイオン化性封入物(17)を放電容器(12)に封入し、
ランプを付勢して放電を生じさせるとともに放電容器に30W/cm以上の管壁負荷を付与する
ことを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520323(P2009−520323A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545776(P2008−545776)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/047597
【国際公開番号】WO2007/078786
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】