説明

セラミック押出成形用バインダー及び組成物

【解決手段】離水率が25質量%以上で、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートのいずれかで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルからなることを特徴とするセラミック押出成形用バインダー。
【効果】本発明により、押出成形速度を早めても成形後の引き取り、切断、乾燥において成形体の保形性が十分保たれる押出成形が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保形性に優れるセラミック押出成形用のバインダー及びこれを含む、特にハニカム成形に好適に用いられるセラミック押出成形用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック押出成形用組成物において、使用される成形用バインダーとして、澱粉やポリアクリル酸水溶液、ポリエチレンオキサイド、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が使われている。とりわけ、その水溶液が加熱された時にゲル状となり、接着された形状を保つ能力に優れたアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、その他の水溶性バインダーのように、水溶液を加熱することで、みかけの粘性が下がってしまい、乾燥中に接着したものの形状がずれたり、変化したりすることがなく、そのゲルにより固定された状態で乾燥されるため、接着によって成形された形状を良好に維持する。このため、例えば、セラミックの成形等では、乾燥中の保形性に優れたバインダーとして好適に使われている。
【0003】
しかしながら、加熱によりゲルが形成されると、保形性は優れるもののゲル中の水分がゲルに捕捉されてしまい、水が蒸発しにくくなり乾燥速度が遅くなるという欠点を有していた。そのため、乾燥中の保形性が良好でかつ乾燥速度が早い水溶性バインダーが望まれていた。
更に乾燥工程で必要な熱ゲルの強度を発現せしめるのに必要な添加量とした時には、バインダーが発揮する粘度が強く、押出成形時にダイス部スクリュー間での粘着が高く、押出圧力が上がり、セラミックの押出成形物を押出成形ダイスから、早く押出せないという欠点があった。
【0004】
これらの欠点を克服すべく、セルロースエーテルの重合度並びに置換度を様々に変化させて過剰な粘性を調整する試みや様々な有機添加剤を用いる検討が行われてきたが、十分満足するものにならなかった。
なお、本発明に関連する先行技術文献として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−348256号公報
【特許文献2】特開2001−355618号公報
【特許文献3】特開2004−203705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記要望に応えたもので、押出成形性を損なうことなく、成形速度が速く、かつ乾燥亀裂もないセラミック押出成形用バインダー及びこれを含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルであって、その離水率が25質量%以上であるセルロースエーテルをバインダーとして用いることにより、その水溶液が熱ゲル化性を示し、押出成形される時の高速の剪断速度下での粘度が、押出成形直後に剪断がかからない状態になった時の粘度よりケタ違いに低くなるバインダーを含むセラミック組成物により、押出成形速度を早くしても成形後の乾燥に至るまでの保形性も良好となり、乾燥性に優れたセラミック押出成形が行えることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明は、下記のセラミック押出成形用組成物を提供する。
[1]離水率が25質量%以上で、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートのいずれかで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルからなることを特徴とするセラミック押出成形用バインダー。
[2]離水率が25質量%以上で、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートのいずれかで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルを含有することを特徴とするセラミック押出成形用組成物。
[3]前記セラミック押出成形用組成物が、ハニカム成形に用いることを特徴とする[2]記載のセラミック押出成形用組成物。
[4]前記非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルが、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するモノエポキシドで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルであることを特徴とする[2]又は[3]記載のセラミック押出成形用組成物。
[5]前記非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルが、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するモノエポキシドで置換したヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする[4]記載のセラミック押出成形用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、押出成形速度を早めても成形後の引き取り、切断、乾燥において成形体の保形性が十分保たれる押出成形が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルは、分子中の水酸基を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルで、離水率が25質量%以上であることが必要である。
【0011】
本発明の分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルにおける、原料としての非イオン性水溶性セルロースエーテルは、メトキシ基25〜35質量%のメチルセルロース、ヒドロキシエトキシ基25〜65質量%のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロポキシ基30〜65質量%のヒドロキシプロピルセルロース、メトキシ基20〜35質量%,ヒドロキシエトキシ基1〜20質量%のヒドロキシエチルメチルセルロース、メトキシ基20〜35質量%,ヒドロキシプロポキシ基1〜20質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシ基10〜50質量%,ヒドロキシエトキシ基1〜50質量%のヒドロキシエチルエチルセルロール等のアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロース類から任意に選択することができる。これらの分子量は特に限定されないが、取扱上その20℃における2質量%水溶液の粘度で表した場合に5〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜300,000mPa・sとなるような分子量のものが望ましい。この粘度が5mPa・s未満のときは、通常の使用量において押出成形用組成物に十分な粘度が再現されず、また1,000,000mPa・sを超えると、組成物の粘弾性が高すぎて押出成形が困難となる。なお、粘度はブルックフィールド型粘度計により5〜95,000mPa・sまではBL型ローターにて60rpmによる値であり、これを超えて1,000,000mPa・sまではBH型ローターにて30rpmによる値である。
【0012】
この非イオン性水溶性セルロースエーテルは、次に炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートからなる変性剤と反応させることにより、その水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基又はこれを含む基で置換される。
【0013】
このアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートの具体例としては、例えばステアリルクロライド、パルミチルクロライド、ステアリルイソシアナート、ラウリルイソシアナート、ステアリルエポキシド、パルミチルエポキシド、リグノセリルエポキシド、セロチルエポキシド、ステアリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0014】
この反応は特公平1−28041号公報、特開平11−228601号公報等に記載の公知の方法で行われる。具体的には、非イオン性セルロースエーテルを不活性有機溶剤で希釈、スラリー化した後、アルカリ金属水酸化物の溶液を加え、エーテルがアルカリにより、湿潤、膨潤された時、ハライド又はエポキシドを加え、撹拌しながら反応が完結するまで続ける。次いで、残留アルカリを中和、反応生成物の回収を行った後、不活性希釈剤で洗浄し、乾燥することにより、目的の生成物を得ることができる。
【0015】
上記変性剤により導入される置換基の置換度は、生成した変性セルロースエーテルが水に溶けて増粘する範囲のものであればよく、0.01〜0.9質量%、更に好ましくは0.2〜0.6質量%、特に好ましくは0.3〜0.5質量%程度である。
【0016】
上記置換度はJ.G.Gobler,E.P.Samsel,and G.H.Beaber,Talanta,9,474(1962)に記載されているZeisel−GCによる手法に準じて測定できる。
【0017】
上記非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルは、上述したように、離水率が25質量%以上のものである。
ここで、離水率は、上述したように、20℃に保たれた分子中の水酸基を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルの2.5質量%の水溶液の30gを30mLのビーカーに入れ、家庭用の電子レンジ(600W)のレンジ弱(180W相当)において3分間の加熱によりゲルを形成させた後、形成したゲルをシャーレに移し、更に該電子レンジのレンジ弱で4分間加熱した時点でゲルより分離した水と水蒸気を合わせた質量を測定し、形成されたゲルに対してゲルよりしみ出した水と水蒸気を合わせた質量%を離水率として測定した値であり、この離水率が25質量%以上であることが必要である。この離水率が低いと水がゲル中に捕捉され、加熱乾燥速度が低くなってしまう。なお、離水率は好ましくは25〜50質量%、特に30〜40質量%である。
【0018】
この場合、離水率を25質量%以上にする方法としては、原料の水溶性セルロースエーテル中の水酸基を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートのいずれかで置換することによる。
【0019】
なお、これらのセルロースエーテルとして大同化成工業(株)より販売されている疎水化セルロースエーテルの商品名サンジェロースも離水率が25質量%以上となるものであれば使用できる。
【0020】
本発明で使用されるセラミック材料の種類としては、焼成により主成分がガラスセラミックやセラミックとなる材料も含めて、米国特許第3885977号明細書に記載されているようなコージライトやムライト、ベントナイト等の粘土、タルク、ジルコン、ジルコニア、スピネル、アルミナ及びそれらの前駆体、炭化物(例えば炭化ケイ素)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、ケイ酸塩、アルミン酸塩、リチウムアルミノケイ酸塩、アルミナシリカ、チタニア、溶融シリカ、ホウ化物、ソーダ石灰、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ソーダバリウムケイ酸塩、チタン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0021】
本発明では、所望の特性になる成形材料を用いればよいが、セラミック材料100質量部に対して非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルを3〜20質量部、水を15〜40質量部配合することが好ましい。本発明のバインダーを用いて成形する場合、加熱温度は60〜105℃が好ましい。
【0022】
これらセラミック押出成形用組成物には、本目的を達成するための前述のセルロースエーテルの性能を損なわない範囲で、従来使用されてきたメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを添加混合使用してもよく、成形後の乾燥物の可塑性を向上させるためにグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル等のグリセリン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール等の界面活性剤を添加してもよい。
【0023】
セラミック押出成形用組成物の調製方法としては特に限定されないが、水を含む組成材料を混合装置にて極力均一に混合した後、二軸ニーダー、ロールミル等で混練し、スクリュー式の真空押出成形装置で成形することが好ましい。成形形状はシート、パイプ、ハニカムの他、いずれの形状も選択できるが、成形後に乾燥に至るまでに形状がつぶれたりして変化しやすいハニカムやパイプの成形において、本発明は効果が発揮される。
【実施例】
【0024】
以下、合成例、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0025】
[合成例1]
〔分子中の水酸基の水素原子を炭素数18のアルキル基を有するモノエポキシドで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造〕
20℃における2質量%水溶液の粘度が4,100mPa・sであるメチルセルロース(メトローズSM−4000、信越化学工業(株)製)40gを第三ブチルアルコール400gに分散させ、これに6質量%水酸化ナトリウム水溶液35gを添加して窒素封入下2時間撹拌した。これにステアリルグリシジルエーテル(エピオールSK、日油(株)製)75gを添加して50℃で4時間撹拌を続けた。酢酸により中和した後、反応液を冷却して固形物を濾別した。これをそれぞれ10倍量のヘキサンとアセトンで2回、更に100倍量の熱水で洗浄して変性セルロースエーテルを得た。
この生成物の2質量%水溶液の粘度(20℃)を前例と同様にして測定したところ、110,000mPa・sであった。
【0026】
[合成例2]
〔分子中の水酸基の水素原子を炭素数10のアルキル基を有するモノエポキシドで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造〕
20℃における2質量%水溶液の粘度が30,100mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ90SH−30000、信越化学工業(株)製)40gを第三ブチルアルコール400gに分散させ、これに6質量%水酸化ナトリウム水溶液35gを添加して窒素封入下2時間撹拌した。これにデシルグリシジルエーテル(エピオールL−41、日油(株)製)75gを添加して50℃で4時間撹拌を続けた。酢酸により中和した後、反応液を冷却し、更にヘキサン800gを添加して固形物を濾別した。これをそれぞれ10倍量のヘキサン及びアセトンで2回、更に100倍量の熱水で洗浄して所望のセルロースエーテルを得た。
この生成物の2質量%水溶液の粘度(20℃)を前例と同様にして測定したところ、400,000mPa・sであった。
【0027】
[合成例3]
〔分子中の水酸基の水素原子を炭素数16のアルキル基を有するモノエポキシドで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造〕
20℃における2質量%水溶液の粘度が3,900mPa・sであるヒドロキシエチルメチルセルロース(SEB−04T、信越化学工業(株)製)40gを第三ブチルアルコール400gに分散させ、これに6質量%水酸化ナトリウム水溶液35gを添加して窒素封入下2時間撹拌した。これにパルミチルエポキシド75gを添加して50℃で4時間撹拌を続けた。酢酸により中和した後、反応液を冷却し、更にヘキサン800gを添加して固形物を濾別した。これをそれぞれ10倍量のヘキサン及びアセトンで2回、更に100倍量の熱水で洗浄して所望のセルロースエーテルを得た。
この生成物の2質量%水溶液の粘度(20℃)を前例と同様にして測定したところ、110,000mPa・sであった。
【0028】
[合成例4]
〔分子中の水酸基の水素原子を炭素数6のアルキル基を有するモノイソシアナートで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造〕
25mLのキシレン(異性体の工業的混合物)を250mLの3つ口丸底フラスコ(撹拌器及び還流凝縮器を備える)にて15.0gのエチルヒドロキシエチルセルロース(アクゾノーベル社製バーモコールE481)に添加した。この混合物を撹拌により懸濁させた。キシレンにおけるデスモジュールW(4,4’−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアナート)(バイエルAG社))の10質量%溶液1.5g及びオクタ・ソリゲン(商標登録)錫(Zinn)28(ボルヒャースGmbH社の製品)0.15gを前記混合物に室温にて添加した。次いで、この反応バッチを、50℃にて1時間撹拌した。このように改変されたセルロースを次いで濾別すると共に、室温にて24時間に亘り乾燥させた。
この生成物の2質量%水溶液の粘度(20℃)を前例と同様にして測定したところ、300,000mPa・sであった。
【0029】
[合成例5]
〔分子中の水酸基の水素原子を炭素数18のアルキル基を有するモノエポキシドで置換した、非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造〕
20℃における2質量%水溶液の粘度が4,100mPa・sであるメチルセルロース(メトローズSM−4000、信越化学工業(株)製)40gを第三ブチルアルコール400gに分散させ、これに6質量%水酸化ナトリウム水溶液13gを添加して窒素封入下2時間撹拌した。これにステアリルグリシジルエーテル(エピオールSK、日油(株)製)28gを添加して50℃で4時間撹拌を続けた。酢酸により中和した後、反応液を冷却して固形物を濾別した。これをそれぞれ10倍量のヘキサンとアセトンで2回、更に100倍量の熱水で洗浄して変性セルロースエーテルを得た。
この生成物の2質量%水溶液の粘度(20℃)を前例と同様にして測定したところ、100,000mPa・sであった。
【0030】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロピル基、ステアリルオキシプロポキシ基等が表1に示す値で、JIS K2283−1993に規定されるウベローデ粘度計においてその2質量%水溶液の20℃における測定粘度が表1に示される各種セルロースエーテルを用いて、離水率、熱ゲルの固さ、乾燥速度を以下のように評価した。
【0031】
(離水率及び熱ゲルの固さ)
20℃に保たれた表1記載のセルロースエーテルの2.5質量%水溶液30gを30mLのビーカーに入れ、家庭用の電子レンジ(600W)のレンジ弱(180W相当)において3分間の加熱により、ゲルを形成させた後、形成したゲルをシャーレに移し、更に該電子レンジのレンジ弱で4分間加熱した時点でゲルより分離した水と水蒸気を合わせた質量を測定し、形成されたゲルに対してゲルよりしみ出した水と水蒸気を合わせた質量%を離水率として測定し、表1に示した。シャーレに移す前のゲルの状態を観察し、自立可能な形状のものを水溶液の熱ゲル固さ○とし、形状が全く観察されず液状となって流れてしまうものを水溶液の熱ゲル固さ×として、表1に示した。
【0032】
(乾燥速度)
表1に示すセルロースエーテルの2質量%水溶液10gを直径85mmのシャーレに入れ、80℃のオーブン中で4時間乾燥した時に水分が十分なくなって乾燥しているものを乾燥速度○とし、水分が残留しているものを乾燥速度×として評価した。結果を表1に示す。
【0033】
(粘度の剪断速度依存性)
表1に示す2質量%水溶液を低速0.1(1/s)にて300秒間一定回転後、そのまま0.1(1/s)にて180秒間測定し、次に、高速1,000(1/s)にて構造を破壊しながら60秒間測定した。
更に直後、再度0.1(1/s)にて720秒間測定し、構造回復、すなわち粘度回復度合いを測定した。
測定粘度が300倍以上に回復する場合を○、300倍未満の場合を×として評価した結果を表1に示した。
【0034】
表1の実施例及び比較例に示されるように、本発明に規定したセルロースエーテルを使用するとゲル強度も高く、乾燥速度も速く、粘度の剪断速度依存性が高いことがわかる。
【0035】
(セラミック押出成形体の成形性評価)
表1に示すセルロースエーテルを6質量部、アルミナ100質量部、水21質量部を混合して3本ロールミルにて混練したセラミック押出成形用組成物を宮崎鉄工(株)製のスクリュー径25mmの真空押出成形装置にて壁厚み0.2mmでセル数25の2cm角のハニカムの押出成形を2cm/分の速度で行った。成形品を4cm長さに金属ワイヤーで切断して90℃で乾燥し、成形体の形状が歪んで変化してないことを観察した。
スクリュー回転数を4倍にしてハニカム成形を6cm/分として同様に成形体を乾燥して観察した時に成形体の形状が歪んでない場合を○、歪んだ場合を×とし、評価し、表1のセラミック押出成形用組成物の評価欄に記載した。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
離水率が25質量%以上で、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートのいずれかで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルからなることを特徴とするセラミック押出成形用バインダー。
【請求項2】
離水率が25質量%以上で、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するハライド、モノエポキシド又はモノイソシアナートのいずれかで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルを含有することを特徴とするセラミック押出成形用組成物。
【請求項3】
前記セラミック押出成形用組成物が、ハニカム成形に用いることを特徴とする請求項2記載のセラミック押出成形用組成物。
【請求項4】
前記非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルが、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するモノエポキシドで置換した非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルであることを特徴とする請求項2又は3記載のセラミック押出成形用組成物。
【請求項5】
前記非架橋の非イオン性水溶性セルロースエーテルが、分子中の水酸基の水素原子を炭素数6〜26のアルキル基を有するモノエポキシドで置換したヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項4記載のセラミック押出成形用組成物。

【公開番号】特開2012−148962(P2012−148962A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277207(P2011−277207)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】