説明

セラミック鋳物中子をバリ取りする方法

本発明は、金型の中に所定のガラス転移温度を有するバインダーを含むセラミックペーストを射出し、除去されるべきバリ(B)を形成する余剰材料のある少なくとも1つの表面部分を有することによって得られるセラミック鋳物中子(10)をバリ取りする方法に関する。この方法は、a)取り付け台(300)の上に、成形された未焼成の鋳物中子(10)を配置し、取り付ける段階と、b)工具ホルダの上に、ねじれ切刃を持っている細長形状を有するフライス工具(100)を配置する段階と、c)工具をその軸の周りに回転させ、フライス工具をバリ取りされるべき前記表面部分に接触させる段階と、d)バリ取り作業中に前記ガラス転移温度よりも低い温度に鋳物中子が保たれるように、バリ取りされるべき表面部分を冷却する(400)段階とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティングラインに沿って少なくとも2つの部品を組み立てることによって形成される金型の中に、セラミックスラリーを射出成形することによって製造される部品の仕上げに関する。より詳細には、本発明は、2つの部品のパーティングラインの部位からバリを除去することに関する。本発明は、インベストメント鋳造法によってタービンエンジン用の中空ブレードの製造する際に使用されるセラミック中子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「セラミック」鋳物中子の使用は、高温耐性、反応性欠如、寸法安定性、および良好な機械的特性などの厳しい品質特性および品質基準の範囲が要求される一定の用途において、特によく知られている。知られているように、この種の要求がある用途には、航空学用途、および例えば、ジェットエンジン用のタービンブレードの鋳造による製造がある。いわゆる等軸鋳造から方向性凝固鋳造や単結晶鋳造までの鋳造法の進歩により、例えば内部冷却中空ブレードの場合のように、得られるべき部品の高性能を得るための調査によって、使用および複雑性が必要とされる中子に関するこれらの要求がさらに増えている。
【0003】
ブレードの所望の複合結晶構造は、中子にバリを有することと両立しない。バリは、鋳造中に離脱する可能性があり、介在物および/または幾何学的欠陥を生じることによって部品を汚染し得る。定位置に残っている一個のバリが、部品に亀裂、したがってクラック開始部位を生じる。したがって、中子は、バリ取りされなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この作業は、伝統的に、焼成に続いて手で行われる。しかしながら、高圧(HP)段の動翼や固定のHPタービンノズル組立体の中子などの薄肉で複雑な中子の人手によるバリ取りは、生産ラインでこれらの高精度の作業を行うことができなければならないため、正確にかつ再現性よく行うことがますます困難である。その上、中子についてのこれらの反復作業は、筋骨格系疾患(MSD)を起こすことによってオペレータの健康に有害な場合がある。
【0005】
人手によるバリ取りは、以下の、初期段階のクラック、取り扱い中の中子の破損、再現性の欠如、および金属部品の介在物をもたらす中子の層間剥離のような欠陥を有する高レベルの不良品を作り出すことがある。
【0006】
焼成後の部品のバリ取りの工程を自動化する努力が行われている。しかしながら、焼成後の収縮による部品の変形がよく理解されていないので、その結果は不満足なものである。この収縮は、機械加工によるバリ取りを非常に困難にし、自動化を難しくしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、本発明による方法、すなわち金型の中に所定のガラス転移温度を有するバインダーを含むセラミックスラリーを射出成形し、除去されるべきバリ(B)を形成する余剰材料のある少なくとも1つの表面部分を有することによって得られるセラミック鋳物中子をバリ取りする方法によって解決され、この方法は、次のステップ、すなわち
a.支持体の上に、焼成の前に鋳造鋳物中子を配置し、取り付けるステップと、
b.工具ホルダにねじれ切刃を有する細長形状のフライス工具を配置するステップと、
c.工具をその軸の周りに回転させ、フライス工具をバリ取りされるべき前記表面部分に接触させるステップと、
d.バリ取り作業中に前記ガラス転移温度よりも低い温度に鋳物中子を保つように、バリ取りされるべき表面部分を冷却するステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によって、鋳物中子を焼成する前にバリ取りすることによって、中子の寸法変化の問題が回避され、ロボットによってこの作業を実施する方法が利用され得るようになっている。このことは、1つの中子から次の中子までのバリ取りのより良好な再現性を確実なものとし、その結果、より良い品質のバリ取り、および部品の破損率の低減がもたらされる。また、より良い品質の中子は、初期段階のクラックの数が減少されること、その結果、製造サイクルの減少およびしたがって、コストの低減をもたらすことを意味する。
【0009】
20°と70°との間のねじれ角および半球状の先端を有するフライス工具を使用することが有利である。このように、被削材が、切削領域から十分に離れて担持され、そのため、閉塞の恐れが低減される。
【0010】
より具体的には、切削パラメータは:
5m/minと30m/minとの間の切削速度、
300mm/minと2000mm/minとの間の工具送り速度、および
2000rev./minと15000rev./minとの間の工具回転速度である。
【0011】
他の構成によれば、冷却は、バリ取りされるべき表面部分に向かって流体を拡散させることによって行われる。例えば、流体は、空気であってもよい。
【0012】
本方法は、タービンエンジンブレード用のセラミック中子をバリ取りするのに特に適している。これにより、特に、鋳造品の初期段階のクラックを低減できるようになる。
【0013】
この方法を実施するために、前記中子用の支持体、その軸の周りに回転可能である工具保持用チャック、および少なくとも1つの冷却流体噴射ノズルを備える、金型部品であるセラミック中子を仕上げするための装置を使用することが好ましい。
【0014】
次いで、本方法は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】タービンエンジンブレード用の中子の図である。
【図2】除去されなければならないバリを有するままの射出成形物である、図1と同じ中子を示す図である。
【図3】中子からバリを除去するフライスカッタを示す図である。
【図4】セラミック部品をバリ取りするための位置にあるフライスカッタの図である。
【図5】本発明による装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、タービンエンジン用の中空ブレードのための中子要素から成る部品の例を示している。この要素10の外囲部は、いったん後者が溶解してしまうと中空ブレードの内部空洞の形状を有する。要素10は、ブレードの谷部を形成する上部10Aを備える。この部分は、中空ブレードを横切る上壁を形成する空間によって中央本体10Bから分離される。この中央部分10Bは、根元10Dによって下方に連続し、この根元10Dは、溶融金属が注がれるシェルモールド内で中子を把持し、固定する働きをする。中央部分は、長手方向の開口10B’によってくりぬかれており、この長手方向開口10B’は、ブレード空洞を通して冷却流体用の溝を画定する内部仕切りを形成する。部分10Bは、後縁10Cの薄肉部によって1つの側面に横方向に連続し、開口10C’を備え、この開口10C’は、冷却流体を排出するためのブレード後縁に沿って出て行く溝を画定する仕切りを形成する。金属が流し込まれ、冷却された後に、中子は、それを通じてブレード冷却空気が流れる空洞を露出させるように除去されることが意図される。
【0017】
この多少複雑な部品は、プレスを採用してセラミックスラリーを射出成形することによって製造される。スラリーは、バインダー、有機ポリマー、およびセラミック材料の粒子を混合することによって得られる。混合物は、スクリュー式射出プレスなどの射出プレスによって、金属の射出成形金型の中に注入される。この金型は、インプレッションを有する少なくとも2つの要素の組立体であり、これは、通常はパーティングラインと呼ばれる合わせ面に沿って互いに接触される。射出中に、スラリーは、入口オリフィスからインプレッションによって画定される容積の至るところに徐々に広がる。しかしながら、材料の中には、パーティングラインの表面の間でクリープを起こすものがある。離型時に、この余剰材料がバリを形成する。図2は、中子が射出成形金型から出てくる際の、図1の中子の外観を示している。金型部品のパーティングラインに対応する部分は、バリが延在している。例えば、バリB1は、中子の輪郭線の周りに見られ得る。他のバリB2は、後縁10Cの領域において、穴10C’の内縁の周りに認識できる。また、バリB3は、領域10Bにおいて、穴10B’の縁の周りに見られ得る。
【0018】
射出成形の後、残りの中子製造方法は、中子を離型すること、高温の炉中で中子を焼成すること、中子を仕上げすること、および寸法チェックを行うことから成る。
【0019】
仕上げの目的は、バリB1、B2、およびB3を除去することである。バリは、混合物の注入の直後に、すなわち焼成前にバリ取りすることによって、あるいは焼成後に、換言すれば焼成された状態で中子をバリ取りすることによって除去され得る。
【0020】
通常の人手によるバリ取りは、上で報告されたように、非常に多くの欠陥を導き得る。
【0021】
フライスカッタなどの切削工具を用いた自動バリ取りの試みが、焼成後の中子について行われている。これらは、一部分、焼成された状態の中子が異なる焼成収縮を有するということのために、決定的な成果をもたらしていない。したがって、工具の位置は、焼成された中子の摩耗および硬度によるフライスカッタの摩滅のために、正確にかつ再現性よく規定され得ない。領域10A、10B、10B’、10Cおよび10C’は、バリ取り前に微細に点検される必要がある。
【0022】
本発明によれば、焼成中および焼成後の部品の変形に関連する上記問題を取り除くために、余剰材料は、ポリマー/セラミック混合物の射出成形後の部品について焼成前に除去される。
【0023】
本発明の方法は、中子の材料の固有の特性を考慮に入れた中子切削パラメータを規定している。
【0024】
具体的には、セラミックで混合されたポリマーバインダーのタイプ、例えばポリエチレングリコールは、室温の近傍で変化し得る特性、特に、軟化する傾向を有する。このことは、バリを形成する材料が従来のフライスカッタで取り除かれるときに材料の閉塞をもたらす。この閉塞は、結局、バリの除去をさらに妨げることになる。
【0025】
本発明の1つの構成によれば、螺旋状のフライスカッタ、すなわち螺旋の形の長手方向の切刃を有するカッタが使用される。
【0026】
図3には、バリを含む部品10の縁に沿って案内されるフライスカッタ100を適用する態様が示されている。長手方向の螺旋の形の切刃100Bが、バリBを形成する材料に切り込む。この螺旋の形状を使用すると、カッタ100に沿って閉塞されてくる材料が回避される。この材料は連続的に除去され、切り屑が運び去られる。
【0027】
螺旋の傾斜は、20°と70°との間、好ましくは35°と65°との間のねじれ角αによって規定される。
【0028】
穴によって形成される狭い空間に留意すれば、この作業に適するフライスカッタの直径は、0.5mmと1mmとの間である。フライスカッタの先端は、半球状であることが好ましい。
【0029】
本発明の他の構成によれば、バリ材料は、ガラス転移温度よりも低い温度で維持される。1つの方法は、フライスカッタの移動端部で冷風を吹き付けるノズルを設けることである。例えば、PEGの場合、温度は、16℃と26℃との間に維持される。
【0030】
工具がそれ自体の周りで回転しながら、工具は、除去されることになるバリに沿って横断される。切削速度および送り速度は、輪郭に適応される。例えば、これらは、中子の輪郭線と窪みとの間で、または後縁の逃げ溝の間で異なる。
【0031】
例示として、切削速度は、毎分5mと25mとの間であり、送り速度は、毎分400mmと1800mmとの間である。
【0032】
図4は、部品に対する工具の相対位置を示している。部品10は、その輪郭線がフライスカッタ100に近づくことができ、またこのフライスカッタ100が工具ホルダを形成するチャック200に取り付けられるように、支持体300に固定される。空気、または任意の他の適切な冷却流体を注入するためのノズル400が、バリ取りされるべき部品の一部の表面に向けられる。
【0033】
図5は、バリ取り装置を示している。チャック200は、例えば3軸を有するフライス盤(図示せず)に取り付けられ得る回転支持体210に固定される。固定盤220は、その位置が調整可能であるブラケット410を介してノズル400のための支持体として働く。固定盤220は、要求により多数のノズルを有する場合もある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の中に所定のガラス転移温度を有するバインダーを含むセラミックスラリーを射出成形し、除去されるべきバリ(B)を形成する余剰材料のある少なくとも1つの表面部分を有することによって得られるセラミック鋳物中子(10)をバリ取りする方法であって、
a.支持体(300)の上に未焼成の流し込み鋳物中子を配置し、取り付けるステップと、
b.工具ホルダにねじれ切刃を有する細長形状のフライス工具(100)を配置するステップと、
c.工具をその軸の周りに回転させ、フライス工具をバリ取りされるべき前記表面部分に接触させるステップと、
d.バリ取り作業中に前記ガラス転移温度よりも低い温度に鋳物中子を保つように、バリ取りされるべき表面部分を冷却するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
20°と70°との間のねじれ角および半球状の先端を有するフライス工具(100)が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
切削パラメータが、5m/minと30m/minとの間の切削速度、300mm/minと2000mm/minとの間の工具送り速度、および2000rev/minと15000rev/minとの間の工具回転速度である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
冷却が、バリ取りされるべき表面部分に向かって流体を拡散させること(400)によって行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
冷却流体が空気である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の、タービンエンジンブレード用のセラミック中子をバリ取りする方法。
【請求項7】
未焼成の鋳物中子用の支持体、その軸の周りに回転可能である工具保持用チャック、および冷却流体噴射ノズルを備える、請求項1に記載の方法を実施するための、金型部品であるセラミック中子を仕上げするための装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516318(P2011−516318A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504476(P2011−504476)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054591
【国際公開番号】WO2009/127721
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】