説明

セルロ−スエステル薄膜の製造方法及びその製造方法により得たフォトマスク保護用光学薄膜

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、光学的特性及び厚みの均一性に優れたセルロースエステル薄膜の製造方法に関するもので、ニトロセルロースのようなセルロースエステルの溶液から回転製膜法により薄膜を製造する方法に関する。本発明はまた、この方法により得られるフォトマスク保護用光学薄膜にも関する。
〔従来の技術〕
ニトロセルロース等のセルロースエステル薄膜はLSIなどのフォトマスクやレチクル塵埃から保護する光学薄膜として用いられるため、色むらや筋等の不良箇所の無い光学特性の良いセルロースエステル薄膜を製造できる方法が望まれている。
このようなセルロースエステル薄膜の製法としては、有機溶媒にセルロースエステルを溶解して回転体の水平面上に供給し、回転体の回転による遠心力で薄膜状に広げて成形するいわゆる回転製膜法が従来より行なわれており、その従来例として、■特開昭58−196501号公報において、ニトロセルロースをアルコールやケトン、1,2ダイメソキシエタンのようなポリグリコール等に溶解して回転製膜法により製膜する例が知られ、また、■特開昭58−219023号公報において、セルロースエステルを低級脂肪酸エステルやケトンに溶解し回転製膜法で製膜する例、具体的にはニトロセルロース(硝化綿RS−7・ダイセル化学工業株式会社製)を酢酸ブチル、酢酸イソブチル、シクロヘキサノン等に溶解して回転製膜法により製膜する例が知られており、さらに、■特開昭59−182730号公報において、ニトロセルロースにジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の可塑剤を添加した系にアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、あるいは、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の溶解剤とキシレン、トルエン等の希釈溶剤との混合溶剤により溶解希釈したものを用いて回転製膜法により製膜する例が知られている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし、このような原料を使用して回転製膜法によりセルロースエステルを成形したところ、必ずしも良好な光学特性を持った薄膜を得ることはできなかった。
また、回転製膜法にあたっては、異物が膜中に混入した場合、異物が流動してその動きによって膜厚の均一性を阻害したり、光線透過率を低下したりしないように、製膜前にセルロースエステルの溶解液を濾過したほうがより良質な薄膜を得る上で好ましいが、先に述べた従来の原料では濾過性に難があるという問題もある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者等は、セルロースエステルの有機溶媒溶液から回転製膜法により薄膜を製造するに際し、回転製膜操作に先立って、セルロースエステル溶液から分別沈澱法により高分子量のものを予め除去しておくときには、生成する薄膜の膜厚の分布が均一となり、且つ光学的特性も顕著に向上することを見出した。
本発明者等は更に、セルロースエステルとしてニトロセルロースを使用し、且つ有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを使用するときには、他の組み合わせに比して濾過性及び製膜性の良好な溶液が得られ、この溶液から優れたフォトマスク保護用光学薄膜、即ちペリクルが得られることを見出した。
即ち、本発明によれば、セルロースエステルを有機溶媒に溶解し、この溶液を基板上に回転下に塗布し、基板上に形成される薄膜を基板から剥離することから成るセルロースエステル薄膜の製法において、該有機溶媒に対して混和性を有するがセルロースエステルに対しては貧溶媒である第二の有機溶媒を前記セルロースエステルの有機溶媒溶液に添加して、セルロースエステル中の高分子量セルロースエステル、さらに好ましくは高分子量成分と共にゲル状物、低溶解度不純物等を析出させ、前記溶液から高分子量セルロースエステルを分離し、分離後のセルロースエステル溶液を回転製膜法によりセルロースエステル薄膜に成形することを特徴とするセルロースエステル薄膜の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、溶媒としてメチルイソブチルケトン又はメチルイソブチルケトンとメチルアルコールとの組み合わせを含み、且つ、ニトロセルロースと溶媒としてのメチルイソブチルケトンとを30:1乃至10:1の重量比で含有する溶液を作成し、この溶液に、貧溶媒としてのヘキサンを、ヘキサン/溶媒の体積比が0.8〜1.5となるように添加して、高分子量のニトロセルロース、さらに好ましくは高分子量成分と共にゲル状物、低溶解度不純物等を析出させ、該溶液から析出した高分子量のニトロセルロース、さらに好ましくは高分子量成分と共にゲル状物、低溶解度不純物等を分離し、得られる溶液を貧溶媒の沸点以上に加熱して貧溶媒を分離し、分離後の溶液を濾過し、濾過後の溶液を基板上に回転下に塗布して、ニトロセルロースの薄膜を基板上に形成し、形成されるニトロセルロースの薄膜を基板から剥離することからなるニトロセルロース薄膜の製造方法が提供される。
本発明によれば更に、ニトロセルロース溶液から回転製膜法により形成された薄膜からなり、該ニトロセルロースは11乃至12.5%の硝化度と15万乃至35万の重量平均分子量(■w)とを有し、且つ該薄膜は式

で定義される膜厚不均一率が1%以下で、しかもフィルム全面にわたって透明でもむらを有しないことを特徴とするフォトマスク保護用光学薄膜が提供される。
〔作用〕
本発明の製造方法はセルロースエステルに適用できる。セルロースエステルとしては、例えばニトロセルロース、酢酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、あるいはピロピオン酸セルロースのような脂肪酸セルロース等があるが、好ましく使用されるのはニトロセルロースまたはプロピオン酸セルロースであり、とくにニトロセルロースが好ましく使用される。従って、以下にはニトロセルロースを用いた場合について主として説明するが、本発明はこの態様に限定されないことが理解されるべきである。
ニトロセルロースとしては、硝化度(N%)が11乃至12.5%、特に11.5乃至12.2%で、平均分子量(重量平均(■w)が15万乃至35万、特に17万乃至32万のものが使用される。即ち、ニトロセルロースは、セルロース原料を、硝酸、硫酸、及び水の混酸を用いて硝化することにより得られるが、この場合、セルロース原料中にヘミ繊維素、樹脂等の不純物が含有されていると、最初ニトロセルロース薄膜が黄味を帯びて、光学特性に劣ったものとなり、また安定性の低いものとなるので、α−繊維素含有量が98%以上と純度の高いもの、特にコットン、コットンリンター、落綿、コットン薄葉紙がセルロース原料として使用される。これらのセルロース原料はかなり高分子量であり、従ってこの原料から得られるニトロセルロースも分子量の高いものである。
本発明においては、ニトロセルロースの有機溶媒溶液から回転製膜法によりその薄膜を製造するに際して、ニトロセルロースの内、高分子量のものを分別沈澱させて、これを除去することにより、製膜用原料溶液の安定性や濾過性、更には成膜性能を高め、また、これにより得られるニトロセルロース薄膜の厚みの分布を均一化し、且つ光学的特性を顕著に向上させることが可能となったものである。
ニトロセルロースに対する有機溶媒としては、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒が特に適しており、就中メチルイソブチルケトンは、形成される薄膜の膜厚が均一で、色むらや筋のないものを与えるという点で、本発明の目的に特に適している。むろん、有機溶媒は上述したものに限定されず、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエタノール類、酢酸エチル、乳酸エチル、ギ酸n−ブチル、酢酸ブチル等のエステル類も単独又は2種以上の組み合わせで使用し得ることが了解されるべきである。
本発明に用いるセルロースエステル溶液において、メチルイソブチルケトン等の溶媒に対するセルロースエステルの重量比が30:1〜10:1、好適には20:1〜10:1の範囲内にあるのがよい。
本発明の好適態様に従い、貧溶媒添加前のセルロースエステル溶液にメチルアルコールを配合すると、貧溶媒を添加した時の高分子量セルロースエステルの析出速度が速くなる。メチルアルコールの添加量はメチルイソブチルケトンと等容量以下に設定するのが好ましい。この場合、貧溶媒の添加量はメチルイソブチルケトンとメチルアルコールの合計容量以上とするのが好適である。
セルロースエステルに対する貧溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、オクタン、ソルベントナフタ、シクロナフタ、キシレン等が挙げられるが、この貧溶媒は後に加熱して脱溶媒する必要上、メチルイソブチルケトンの溶媒の沸点よりその沸点が低いもの、特にヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素又は脂環族炭化水素で、炭素数が5乃至10のものが有利である。入手に容易さやコストの面でヘキサンが有利である。
貧溶媒の添加量は、容積比で貧溶媒/溶媒=0.8〜1.5であるのが好ましく、実使用上は10〜1.20が好適である。メチルイソブチルケトン等の溶媒の量より貧溶媒の量が少ないと、高分子量セルロースエステル等の析出作用が思うように行なわれない。貧溶媒(ヘキサン)とメチルイソブチルケトンの容積比を変化させることにより、たとえばニトロセルロースの平均分子量がどのように変化するかを第1図のグラフ図で示すと、貧溶媒の添加量が増えるほどニトロセルロースの平均分子量が減ること、すなわち、高分子量が析出されることが理解できる。但し、貧溶媒の添加量が多すぎると、得るべきニトロセルロースの精製溶液の収量が少なくなり、生産性が劣ることとなる。
貧溶媒を添加した後、デカンテーションや遠心分離等の手段で高分子量セルロースエステルのみを除去したセルロースエステル溶液を得、さらに、残留している貧溶媒を脱溶媒し、セルロースエステルの精製溶液を得る。脱溶媒の手段はメチルイソブチルケトンの沸点以下で貧溶媒の沸点以上に加熱して、貧溶媒を蒸発させてしまうことにより行う。その際セルロースエステル溶液を減圧下に置いてもよい、このセルロースエステルの精製溶液をそのまま使用して回転製膜法により製膜してもよいが、異物の除去のため、濾過した後に薄膜に成形した方が良い、濾過は例えば0.2μmのフィルタを用いた加圧濾過方法による。
ここで、回転製膜法に使用する装置の一例について説明する。この装置は第2図に示すように、回転駆動されるターンテーブル1上に基板2を載置したもので、この基板2を回転体として、基板2の上面を水平に保って水平面3としたものである。そして、この水平面3にセルロースエステル溶液をノズル4から供給してターンテーブルを回すと、基板2も回転し、その遠心力でセルロースエステル溶液が水平面3に沿って薄く広がり、セルロースエステル薄膜が成形される。
基板2の回転速度は通常400〜4000rpm、好ましくは500〜3000rpmがよいが、定速で回転させるだけでなく、立ち上がりは低速(200〜1000rpm)とし、途中から高速(400〜4000rpm)としても良い。
また、基板2の水平面3に離型剤を予め塗布しておくと、セルロースエステル薄膜を水平面から剥がしやすい。
本発明により形成されるニトロセルロース薄膜は、原料ニトロセルロースに対応する硝化度を有するが、重量平均分子量(■w)が、原料よりも低い範囲、即ち一般に15万乃至35万、特に17万乃至32万の範囲に抑制されていることが顕著な特徴である。また、このニトロセルロースは、ヘミセルロースや樹脂類、リグニン等の不純物を実質上含有していず、組成的に均質である。しかも、この薄膜は前記式(1)で定義される膜厚不均一率が1%以下、特に0.7%以下であり、フィルム全面にわたって透明で色むらを有していない。薄膜の厚みは種々変化させ得るが、一般に0.5乃至6ミクロン、特に0.8乃至3ミクロンの範囲内にあるのがよい。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について比較例と比較しつつ説明する。
<実施例1>ニトロセルロース〔HIG−20…旭化成工業株式会社製アルコール膨潤性ニトロセルロース(イソプロピルアルコールを30%含有)(平均分子量37万)硝化度11.5〜12.2%〕を142g、メチルイソブチルケトンを1240g、メチルアルコール1240g使用してニトロセルロース溶液を形成し、このニトロセルロース溶液にヘキサンを2320g滴下により添加し(この時、メチルイソブチルケトン+メチルアルコールの量は3130ml、ヘキサンの量が3520mlで、両者の関係を容積比で表すと1:1.12である)、一晩放置してデカンテーションを行って上澄み液のみを取り、沈澱した高分子量ニトロセルロースを除去し、上澄み液を40℃で15〜20mm Hgの減圧下に置いてヘキサンとメチルアルコールとを脱溶媒しニトロセルロース精製溶液を得た。得られたニトロセルロース精製溶液中のニトロセルロースの平均分子量は18.86万であった。
このニトロセルロース精製溶液を孔径0.1μmで、直径142mmのフィルタを用いて0.5kg/cm2・Gの加圧下で濾過し、回転製膜法によりニトロセルロース薄膜を製造したところ、濾過は良好にでき、また、色むらや筋の無い、光学的特性の良いニトロセルロース薄膜を得ることができた。回転製膜は、直径200mmのガラス板を用い、その回転速度を2000〜2500rpmに設定して行った。結果は第1表に示す。
<実施例2>実施例1と同一のニトロセルロース142gをメチルイソブチルケトン1240gに溶解してニトロセルロース溶液を形成し、このニトロセルロース溶液にヘキサンを1200g滴下により添加し(この時、メチルイソブチルケトンの量は1560ml、ヘキサンの量が1820mlで、両者の関係を容積比で表すと1:1.17である)、遠心分離(回転速度500rpm・時間2分間)で高分子量ニトロセルロースを分離して除去し、残液2087gを45℃で12〜20mm Hgの減圧下に置いてヘキサンを脱溶媒しニトロセルロース精製溶液を得た。得られたニトロセルロース精製溶液中のニトロセルロースの平均分子量は22.61万であった。
このニトロセルロース精製溶液を実施例1と同一条件で濾過し、回転製膜法によりニトロセルロース薄膜を製造したところ、濾過は容易にでき、また、色むらや筋の無い、光学的特性の良いニトロセルロース薄膜を得ることができた。なお、回転製膜の条件は実施例1と同一である。結果は第1表に示す。
<実施例3>実施例1と同一のニトロセルロース100gをメチルイソブチルケトン640gに溶解してニトロセルロース溶液を形成し、このニトロセルロース溶液にヘキサンを577g滴下により添加し(この時、メチルイソブチルケトンの量は800ml、ヘキサンの量が880mlで、両者の関係を容積比で表すと1:1.1である)、一晩放置してデカンテーションを行って上澄み液のみを取り、沈澱した高分子量ニトロセルロースを除去し、上澄み液を45℃で15〜20mm Hgの減圧下に置いてヘキサンを脱溶媒しニトロセルロース精製溶液を得た。得られたニトロセルロース精製溶液中のニトロセルロースの平均分子量は28万であった。
このニトロセルロース精製溶液を実施例1と同一条件で濾過し、回転製膜法によりニトロセルロース薄膜を製造したところ、濾過は容易にでき、また、色むらや筋の無い、光学的特性の良いニトロセルロース薄膜を得ることができた。なお、回転製膜の条件は実施例1と同一である。結果は第1表に示す。
<比較例1>実施例1と同一のニトロセルロース100gをメチルイソブチルケトン1540mlに溶解してニトロセルロース溶液を得て濾過し、回転製膜法でニトロセルロース薄膜を製膜した。
濾過は実施例1と同一のフィルタを用い、1.5〜2.5kg/cm2・Gの加圧下で行ったが、時間とともに流出量が減少し、500〜1000ml濾過した後目づまりした。得られたニトロセルロース薄膜は色むらや筋の無いものであったが、第1表で示すように、膜厚のばらつきが実施例1〜3のものより大きかった。
第1表からニトロセルロースを溶解させる溶媒としてメチルイソブチルケトンを使用し、さらに、その中から高分子量ニトロセルロースを除去すると、濾過性の良いニトロセルロース精製溶液を得ることができる。その際、メチルアルコールを添加した方が高分子量ニトロセルロースの分離速度が速い。
また、このニトロセルロース精製溶液を使用して回転製膜法により製膜した場合、高分子量ニトロセルロースを含有している比較例の場合に比べて厚さが均一なニトロセルロース薄膜を製造できる。




次にプロピオン酸セルロースに本発明の製造方法を適用した例を示す。
<実施例4>プロピオン酸セルロース〔アルドリッチ社製、ハイモレキュラーウェートグレード〕を70g、メチルイソブチルケトン930gを使用してプロピオン酸セルロース溶液を形成し、このプロピオン酸セルロース溶液にヘキサンを605g滴下により添加し(この時、メチルイソブチルケトンの量が1170ml、ヘキサンの量が920mlで、両者の関係を容積比で表すと1.27:1である)、5時間放置してデカンテーションを行って上澄み液のみを沈澱した高分子量プロピオン酸セルロースを除去し、上澄み液を40℃で15〜20mm Hgの減圧下に置いてヘキサンを脱溶媒してプロピオン酸セルロース精製溶液を得た。
このプロピオン酸セルロース精製溶液を孔径0.2μmで、直径142mmのフィルタを用いて0.5kg/cm2・Gの加圧下で循環濾過を行ったところ、40時間後もフィルタの詰まりはなく濾過できた。また、濾過後のプロピオン酸セルロース溶液で回転製膜法により薄膜を製造したところ、色むらや筋の無い光学的特性の良いプロピオン酸セルロース薄膜を得ることができた。
<比較例2>実施例4と同一のプロピオン酸セルロース70gをメチルイソブチルケトン1400g中に溶解してプロピオン酸セルロース溶液を得て循環濾過したところ4時間で濾過ができなくなった。また、回転製膜法で製造したプロピオン酸セルロース薄膜は膜厚のばらつきが実施例4のものより大きかった。
<比較例3>実施例4と同一のプロピオン酸セルロース70gをシクロヘキサノン1400g中に溶解してプロピオン酸セルロース溶液を得て循環濾過したところ4時間で濾過が出来なくなった。また、回転製膜法で製造したプロピオン酸セルロース薄膜は膜厚のばらつきが実施例4のものより大きかった。
〔発明の効果〕
本発明の製造方法によれば、製造過程での濾過性がよく、また、製膜した場合、厚さが均一で、色むらや筋が無く光学的特性の良いセルロースエステル薄膜を得ることができる。
従って、本発明方法で得たセルロースエステル薄膜は、フォトマスク保護用光学薄膜として有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図はニトロセルロースの平均分子量に対する貧溶媒/メチルイソブチルケトンの容積比の関係を示すグラフ図、第2図は本発明のセルロースエステル薄膜の製造方法に使用する装置の斜視図である。
1……ターンテーブル、2……基板、3……水平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】セルロースエステルを有機溶媒に溶解し、この溶液を基板上に回転下に塗布し、基板上に形成される薄膜を基板から剥離することから成るセルロースエステル薄膜の製法において、前記有機溶媒に対して混和性を有するが、セルロースエステルに対しては貧溶媒である第二の有機溶媒を前記セルロースエステルの有機溶媒溶液に添加して、セルロースエステルの中の高分子量セルロースエステルのみを析出させ、前記溶液から高分子量セルロースエステルを分離し、分離後のセルロースエステル溶液を回転製膜法によりセルロースエステル薄膜に成形することを特徴とするセルロースエステル薄膜の製法。
【請求項2】セルロースエステルがニトロセルロースであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項3】セルロースエステルがプロピオン酸セルロースであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項4】ニトロセルロースが11乃至12.5%の硝化度のニトロセルロースであることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載の製造方法。
【請求項5】有機溶媒がケトン系溶媒であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項6】有機溶媒がメチルイソブチルケトン又はメチルイソブチルケトンとメチルアルコールとの混合溶媒であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項7】第二の有機溶媒が第一の有機溶媒の沸点よりも低い沸点を有する有機溶媒であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項8】第二の有機溶媒が脂肪族炭化水素溶媒又は脂環族炭化水素溶媒であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項9】第二の有機溶媒がヘキサンであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項10】第二の有機溶媒を第一の有機溶媒当たり0.8乃至1.5容積倍となる量でセルロースエステル溶液に添加することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項11】分離後のセルロースエステル溶液が15万〜35万の重量平均分子量のセルロースエステルを含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項12】溶媒としてメチルイソブチルケトン又はメチルイソブチルケトンとメチルアルコールとの組み合わせを含み、ニトロセルロースとメチルイソブチルケトンとを30:1乃至10:1の重量比で含有する溶液を作成し、この溶液に、貧溶媒としてのヘキサンをヘキサン/溶媒の体積比が0.8〜1.5となるように添加して、高分子量のニトロセルロースを析出させ、該溶液から析出した高分子量のニトロセルロースを分離し、得られる溶液を貧溶媒の沸点以上に加熱して貧溶媒を分離し、分離後の溶液を濾過し、濾過後の溶液を基板上に回転下に塗布して、ニトロセルロースの薄膜を基板上に形成し、形成されるニトロセルロースの薄膜を基板から剥離することからなるニトロセルロース薄膜の製造方法。
【請求項13】ニトロセルロース溶液から回転製膜法により形成された薄膜からなり、該ニトロセルロースは11乃至12.5%の硝化度と15万乃至35万の重量平均分子量(■w)とを有し、且つ該薄膜は式

で定義される膜厚不均一率が1%以下で、しかもフィルム全面にわたって透明で色むらを有しないことを特徴とするフォトマスク保護用光学薄膜。

【第1図】
image rotate


【第2図】
image rotate


【公告番号】特公平7−25901
【公告日】平成7年(1995)3月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−145027
【出願日】昭和62年(1987)6月12日
【公開番号】特開昭63−108036
【公開日】昭和63年(1988)5月12日
【出願人】(999999999)三井石油化学工業株式会社