説明

セルロースナノファイバーを主成分とする高強度材料及びその製造方法

【課題】 廃棄時に燃焼残渣が生じない高強度でしかも軽量な材料を提供する。
【解決手段】 平均繊維径が10〜100nmであり、かつ平均アスペクト比が1000以上であるセルロースナノファイバーを、高温下に高圧でプレス処理することにより、密度が1.2g/cm3以上1.4g/cm3以下であり、曲げ強度が200MPa以上であり、更に曲げ弾性率が14GPa以上の高強度で軽量な材料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来の高強度材料に関する。より詳しくは、セルロースナノファイバーを主成分とする高強度でしかも軽量な材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂系の高強度材料としては、樹脂にガラス繊維やカーボン繊維を添加する繊維強化プラスチック、いわゆるFRPが知られていた。しかしFRPには重いことやガラス繊維を添加した場合、廃棄時に燃焼残渣が生じるという問題があった。そこで近年バイオマス由来の繊維を利用した高強度材料が注目されている。例えば特開2005−60680号公報(特許文献1)には、バクテリアセルロースを用いた高強度材料が開示され、又、特開2003−201695号公報(特許文献2)には、セルロースミクロフィブリルを用いた高強度材料が開示されている。
【0003】
特開2005−60680号公報(特許文献1)には、平均繊維径が4〜200nmの繊維とマトリックス材料とを含有し、50μm厚換算における波長400〜700nmの光線透過率が60%以上である繊維強化複合材料が提案されている。この文献には、平均繊維径が4〜200nmの繊維として、バクテリアセルロース、特に、離解処理されていない三次元交差構造を有するバクテリアセルロース構造体が好ましいと記載されている。また、この文献には、繊維強化複合材料中の繊維の含有率は10重量%以上、特に30重量%以上、とりわけ50重量%以上が好ましいと記載され、実施例における含有率は70重量%である。さらに、この文献には、マトリックス材料としては、非晶質でガラス転移温度の高い合成高分子が好ましいと記載され、実施例では、フェノール樹脂、アクリル樹脂が使用されている。
【0004】
また、特開2003−201695号公報(特許文献2)には、セルロースミクロフィブリルと添加剤からなる高強度材料が提案されている。この文献には、セルロースミクロフィブリルを得る方法として、パルプを微細繊維化することが開示されており、パルプを微細繊維化する方法としては、媒体攪拌ミル処理、振動ミル処理、高圧均質化装置での処理、石臼式粉砕処理が挙げられている。
【0005】
しかし、特許文献1のバクテリアセルロースを用いた材料は、強度的には申し分ないが、バクテリアセルロースは、培養に長時間を要し、生産性が低いという問題がある。一方、特許文献2に開示されたパルプを媒体攪拌ミル処理、振動ミル処理、高圧均質化装置での処理、石臼式粉砕処理によってナノファイバー化した場合、得られたナノファイバーは繊維の切断が多く繊維径に対する繊維長が短いため強化材料として適当でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−60680号公報
【特許文献2】特開2003−201695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、バイオマス由来で、工業生産性に優れた高強度材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、最大繊維径が100nm以下のナノメータサイズであり、かつ比較的長い繊維長を有する植物由来のセルロース微少繊維を脱水・乾燥・加圧することにより、優れた高強度材料が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の高強度材料は、密度が1.2g/cm3以上1.4g/cm3以下、曲げ強度が200MPa以上、曲げ弾性率が14GPa以上である高強度材料である。前記高強度材料はセルロースナノファイバーを主成分としてもよい。前記セルロースナノファイバーの最大繊維径が100nm以下であり、平均アスペクト比が1000以上であってもよい。前期セルロースナノファイバーが木材繊維及び/又は種子毛繊維で構成されたパルプ由来であってもよい。前記セルロースナノファイバーが、原料繊維を溶媒に分散させて分散液を調製する分散液調製工程、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前記分散液をホモジナイズ処理するホモジナイズ工程で製造されたものであってもよい。前記破砕型ホモバルブシートが、中空円盤状本体部と、この円盤状本体部の内壁から下流方向に延出する中空円筒状凸部とで構成され、かつ前記中空円筒状凸部の内壁には、下流側において、下流方向に対して内径が拡大するテーパー部が形成されていてもよい。前記破砕型ホモバルブシートにおける中空円筒状凸部の下流端の内径とリング状端面の厚みとの比が、前者/後者=100/1〜5/1であってもよい。本発明の高強度材料は、前記のセルロースナノファイバーを高温下、高圧でプレスすることにより製造されてもよい。
【0010】
本発明の高強度材料は、軽量(低密度)で特に曲げ強度に優れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、最大繊維径が100nm以下であり、かつ平均繊維径に対する平均繊維長の比が1000以上である植物由来のセルロースナノファイバー(セルロース微少繊維)を使用することにより、軽量で特に曲げ強度に優れる高強度材料を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の高強度材料は、植物由来のセルロース微小繊維で構成されている。
【0013】
[微小繊維の製造方法]
本発明の微小繊維の製造方法は、原料繊維を溶媒に分散させて分散液を調製する分散液調製工程、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前記分散液をホモジナイズ処理するホモジナイズ工程を含む。
【0014】
(分散液調製工程)
原料繊維としては、通常、天然繊維(例えば、セルロース、シルク、羊毛繊維など)、再生繊維(例えば、タンパク質又はポリペプチド繊維、アルギン酸繊維など)、瀝青炭質繊維(ピッチ系繊維など)、合成繊維(熱硬化性樹脂繊維、熱可塑性樹脂繊維など)などの有機繊維が使用される。これらの有機繊維のうち、ホモジナイザーによるミクロフィブリル化が進行し易い点から、天然繊維、熱硬化性樹脂繊維(エポキシ系繊維、フェノール系繊維、不飽和ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリアミドイミド系繊維、ポリベンゾイミダゾール系繊維、ポリウレタン系繊維など)、熱可塑性樹脂繊維(ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリフェニレンオキシド系繊維、ポリフェニレンスルフィド系繊維、オレフィン系繊維、アクリル系繊維、脂肪酸ビニルエステル系繊維など)などが好ましく、セルロース系繊維が特に好ましい。
【0015】
セルロース系繊維としては、β−1,4−グルカン構造を有する多糖類である限り、特に制限されず、高等植物由来のセルロース繊維[例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然セルロース繊維(パルプ繊維)など]、動物由来のセルロース繊維(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース繊維、化学的に合成されたセルロース繊維[セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル;硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロースなど);カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロースなど);アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロースなど);再生セルロース(レーヨン、セロファンなど)などのセルロース誘導体など]などが挙げられる。なお、前記セルロース繊維は、用途に応じて、α−セルロース含有量の高い高純度セルロース、例えば、α−セルロース含有量70〜100重量%(例えば、95〜100重量%)、好ましくは98〜100重量%程度であってもよい。さらに、本発明では、リグニンやヘミセルロース含量の少ない高純度セルロースを使用することにより、木材繊維や種子毛繊維を使用しても、ナノメータサイズで、かつ均一な繊維径を有するセルロース繊維を調製できる。リグニンやヘミセルロース含量の少ないセルロース繊維としては、特に、カッパー価(κ価)が30以下(例えば、0〜30)、好ましくは0〜20、さらに好ましくは0〜10(特に0〜5)程度であってもよい。なお、カッパー価は、JIS P8211の「パルプ−カッパー価試験方法」に準拠した方法で測定できる。これらのセルロース系繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらのセルロース系繊維のうち、生産性などの点から、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)や種子毛繊維(コットンリンターパルプなど)などのパルプが汎用され、パルプを用いる場合、パルプは、機械的方法で得られたパルプ(砕木パルプ、リファイナ・グランド・パルプ、サーモメカニカルパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプなど)、または化学的方法で得られたパルプ(クラフトパルプ、亜硫酸パルプなど)などであってもよく、必要に応じて叩解(予備叩解)処理された叩解繊維(叩解パルプなど)であってもよい。なお、セルロース系繊維は、慣用の精製処理、例えば、脱脂処理などが施された繊維(例えば、脱脂綿など)であってもよい。本発明では、原料繊維同士の絡まりを抑制し、ホモジナイズ処理による効率的なミクロフィブリル化を実現し、均一なナノメータサイズの微小繊維を得る観点から、ネバードライパルプ、すなわち乾燥履歴のないパルプ(乾燥することなく、湿潤状態を保持したパルプ)が特に好ましい。ネバードライパルプは、木材繊維及び/又は種子毛繊維で構成されたパルプであり、かつカッパー価が30以下(特に0〜10程度)のパルプであってもよい。このようなパルプは、木材繊維及び/又は種子毛繊維を塩素で漂白処理することにより調製してもよい。
【0017】
原料繊維の平均繊維長は、例えば、0.01〜5mm、好ましくは0.03〜4mm、さらに好ましくは0.06〜3mm(特に、0.1〜2mm)程度であり、通常0.1〜5mm程度である。また、原料繊維の平均繊維径は、0.01〜500μm、好ましくは0.05〜400μm、さらに好ましくは0.1〜300μm(特に0.2〜250μm)程度である。
【0018】
溶媒としては、原料繊維に化学的又は物理的損傷を与えない限り特に制限されず、例えば、水、有機溶媒[アルコール類(メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソプロパノールなどC1-4アルカノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジC1-4アルキルエーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル(環状C4-6エーテルなど))、エステル類(酢酸エチルなどアルカン酸エステル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなどのジC1-5アルキルケトン、シクロヘキサノンなどのC4-10シクロアルカノンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン系炭化水素類(塩化メチル、フッ化メチルなど)など]などが挙げられる。
【0019】
これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。また、これらの溶媒のうち、生産性、コストの点から、水が好適であり、必要により、水と水性有機溶媒(C1-4アルカノール、アセトンなど)との混合溶媒を用いてもよい。
【0020】
ホモジナイズ処理に供する原料繊維は、溶媒中に少なくとも共存した状態であればよく、ホモジナイズ処理に先だって、原料繊維を溶媒中に分散(又は懸濁)させてもよい。分散は、例えば、慣用の分散機(超音波分散機、ホモディスパー、スリーワンモーターなど)などを用いて行ってもよい。なお、前記分散機は、機械的撹拌手段(撹拌棒、撹拌子など)を備えていてもよい。
【0021】
原料繊維の溶媒中における濃度は、例えば、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%(特に0.5〜3重量%)程度であってもよい。
【0022】
(ホモジナイズ工程)
ホモジナイザーについては、特開2011−146132号公報に記載のものを使用した。又、ホモジナイズ工程についても、特開2011−146132号公報に記載の工程に従った。
【0023】
(リファイナー工程)
本発明では、前記ホモジナイズ工程の前工程(予備工程)として、分散液をリファイナー処理してもよい。
【0024】
リファイナー処理では、ディスクリファイナー(シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナーなど)を使用することができる。前記ディスクリファイナーのディスククリアランスは、0.1〜0.3mm、好ましくは0.12〜0.28mm、さらに好ましくは0.13〜0.25mm(例えば、0.14〜0.23mm)程度であってもよい。
【0025】
ディスクの回転数は、特に制限されず、1,000〜10,000rpmの広い範囲から選択でき、例えば、1,000〜8,000rpm、好ましくは1,300〜6,000rpm、さらに好ましくは1,600〜4,000rpm程度であってもよい。
【0026】
前記リファイナー処理では、処理回数(パス回数)は、1〜20回、好ましくは、2〜15回、さらに好ましくは3〜10回(例えば、4〜9回)程度であってもよい。
【0027】
原料繊維の叩解処理の度合いは、ディスククリアランス及びリファイナー処理回数で調節することができる。ディスククリアランスが狭すぎたり、処理回数が多すぎると、原料繊維が大きな剪断力を受け、フィブリル化が進行し、ねじれや表面の荒れが生じ、繊維同士が絡まりやすくなり、リファイナー処理して得られたフィブリル化繊維の分散性が低下する。また、ディスククリアランスが広すぎると、原料繊維に加わる剪断力が小さくなり、未分割部分が残存する。
【0028】
このような原料繊維をミクロフィブリル化して得られるセルロースナノファイバーは、均一なナノメータサイズであり、ミクロンオーダーサイズの繊維を実質的に含有しない。すなわち、セルロースナノファイバーの最大繊維径は100nm以下であり、例えば、20〜100nm、好ましくは30〜90nm、さらに好ましくは40〜80nm(特に50〜70nm)程度である。
【0029】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、10〜90nm、好ましくは15〜80nm、さらに好ましくは20〜60nm(特に25〜50nm)程度である。さらに、繊維径分布の標準偏差は、例えば、80nm以下(例えば、1〜80nm)、好ましくは3〜50nm、さらに好ましくは5〜40nm(特に10〜30nm)程度である。
【0030】
なお、本発明において、前記平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、最大繊維径は、電子顕微鏡写真に基づいて測定した繊維径(n=20程度)から算出した値である。
【0031】
セルロースナノファイバーの平均繊維長は10〜1000μm程度の範囲から選択できるが、繊維強化樹脂組成物の機械的特性を向上できる点から、例えば、100〜500μm、好ましくは110〜400μm、さらに好ましくは120〜300μm(特に130〜200μm)程度であってもよい。さらに、平均繊維径に対する平均繊維長の比(平均繊維長/平均繊維径)(平均アスペクト比)は1000以上であり、例えば、1000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは3000〜8000(特に4000〜7000)程度である。本発明では、このように、ナノサイズの平均径を有するにも拘わらず、比較的長い繊維長及びアスペクト比を有するセルロースナノファイバーを用いることにより、繊維同士が適度に絡み合うためか、寸法安定性や強度などの機械的特性に優れた樹脂組成物及びシートが得られる。
【0032】
セルロースナノファイバーの横断面形状(繊維の長手方向に垂直な断面形状)は、バクテリアセルロースのような異方形状(扁平形状)であってもよいが、透明性や低ヘイズなどの光学特性の点から、略等方形状が好ましい。略等方形状としては、例えば、真円形状、正多角形状などであり、略円形状の場合、短径に対する長径の比(平均アスペクト比)は、例えば、1〜2、好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.3(特に1〜1.2)程度である。
【0033】
セルロースナノファイバーの脱水時間は、API規格の脱水量に関する試験方法に準拠して、0.5重量%濃度の繊維スラリーを用いて測定したとき、例えば、1000秒以上であり、好ましくは1200〜10000秒、さらに好ましくは1500〜8000秒(特に1800〜7000秒)程度である。脱水時間が大きいほど、平均繊維長/平均繊維径比の高い繊維形状となり、保水力が高く、少量で機械的特性を向上できる。
【0034】
セルロースナノファイバーは、水に対する分散性が高く、安定な分散液(又は懸濁液)を形成することができる。例えば、セルロースナノファイバーを水に懸濁させて、2重量%濃度にした懸濁液の粘度は、3000mPa・s以上であり、好ましくは4000〜15000mPa・s、さらに好ましくは5000〜10000mPa・s程度である。粘度は、B型粘度計を用いて、ロータNo.4を使用し、60rpmの回転数で、25℃における見かけ粘度として測定される値である。なお、フィブリル化の程度が小さかったり、繊維径が大きいと、水への分散性が低下し、均一な懸濁液が得られず、粘度を測定することができない。
【0035】
[高強度材料の製造方法]
本発明の高強度材料は前記セルロースナノファイバーを高温下、高圧でプレスして製造される。例えば、前記セルロースナノファイバーのスラリー液に対し、固形分が30%になるように脱液を行い、ハードケーキを作成する。続いてこのハードケーキを乾燥機で乾燥させ、次いで高温下でプレスを行い、高強度材料を得る。スラリー液の脱液には例えば加圧脱水機が使用できる。また、プレス条件であるが、80℃から200℃の温度条件において、2MPaから30MPaの圧力でプレスするのが好ましい。
【0036】
こうして得られた高強度材料の密度は1.2g/cm3以上1.4g/cm3以下が好ましく、同様に曲げ強度は200MPa以上300MPa以下で、好ましくは220MPa以上260MPa以下である。又、曲げ弾性率は10GPa以上20GPa以下で好ましくは13GPa以上18GPa以下である。
【0037】
実施例
【0038】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた試験片の評価は以下の方法で行った。
【0039】
[密度]
実施例及び比較例で得られた試験片の体積と重量から密度を算出した。
【0040】
[曲げ強度]
ISO178に準じて、実施例及び比較例で得られた試験片を3点曲げ測定法により曲げ曲げ強度を測定した。
【0041】
[曲げ弾性率]
ISO178に準じて、実施例及び比較例で得られた試験片を3点曲げ測定法により曲げ弾性率を測定した。
【0042】
実施例1
NBKPパルプ(丸住製紙(株)製、固形分約50重量%、カッパー価約0.3)を用いて、パルプを1重量%の割合で含有するスラリー液を100リットル調製した。次いで、ディスクリファイナー(長谷川鉄工(株)製、SUPERFIBRATER 400−TFS)を用いて、クリアランス0.15mm、ディスク回転数1750rpmとして10回叩解処理し、リファイナー処理品を得た。このリファイナー処理品を、通常の非破砕型ホモバルブシート(中空円筒状凸部の下流端の内径/リング状端面の厚み=1.9/1)を備えた第1ホモジナイザー(ゴーリン社製、15M8AT)を用いて、処理圧50MPaで20回処理した。さらに、破砕型ホモバルブシート(中空円筒状凸部の下流端の内径/リング状端面の厚み=16.8/1)を備えた第2ホモジナイザー(ニロソアビ社製、PANDA2K)を用いて、処理圧120MPaで20回処理した。さらに、得られた微小繊維の平均繊維径、平均繊維長、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)を表1に示す。
【0043】
こうして得られたセルロースナノファイバーの1%スラリー液を加圧脱水機を用いて、固形分が30%になるように脱液を行い、ハードケーキを作成した。このハードケーキを乾燥機で120℃で2時間乾燥させ、次いで120℃、30MPaで30分プレスを行い、厚さ2mmの成型片を得た。この成型片を幅10mmの短冊状に切り出し、3点曲げ測定法により曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
乾燥後のハードケーキを120℃、100MPaで30分プレスを行った以外は実施例1と同様にした。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
【0045】
比較例1
セリッシュKY-100G(ダイセル化学工業株式会社製)をグラインダー(増幸産業株式会社製、スーパーマスコロイダー)、80番砥石を用いて10パス処理を行った。その1%スラリー液を加圧脱水機を用いて、固形分が30%になるように脱液を行い、ハードケーキを作成した。このハードケーキを乾燥機で120℃で2時間乾燥させ、次いで120℃、30MPaで30分プレスを行い、厚さ2mmの成型片を得た。この成型片を幅10mmの短冊状に切り出し、3点曲げ測定法により曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
【0046】
比較例2
バクテリアセルロース(フジッコ株式会社製)をジューサーミキサーで10分間粉砕し、酢酸と酢酸菌を除去するために、水洗を3回行った。続いて、このように処理したバクテリアセルロース1%スラリー液を加圧脱水機を用いて、固形分が30%になるように脱液を行い、ハードケーキを作成した。このハードケーキを乾燥機で120℃で2時間乾燥させ、次いで120℃、30MPaで30分プレスを行い、厚さ2mmの成型片を得た。この成型片を幅10mmの短冊状に切り出し、3点曲げ測定法により曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
【0047】
比較例3
粉末セルロース(KCフロックW-300G、日本製紙株式会社製)の1%スラリー液を対抗衝突型ホモジナイザ(スターバースト、株式会社スギノマシン製)で20回処理行った。続いてこの1%スラリー液を加圧脱水機を用いて、固形分が30%になるように脱液を行い、ハードケーキを作成した。更にこのハードケーキを乾燥機で120℃で2時間乾燥させ、次いで120℃、30MPaで30分プレスを行い、厚さ2mmの成型片を得た。この成型片を幅10mmの短冊状に切り出し、3点曲げ測定法により曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
【0048】
比較例4
セリッシュKY-100G(ダイセル化学工業株式会社製)の1%スラリー液を加圧脱水機を用いて、固形分が30%になるように脱液を行い、ハードケーキを作成した。このハードケーキを乾燥機で120℃で2時間乾燥させ、次いで120℃、30MPaで30分プレスを行い、厚さ2mmの成型片を得た。この成型片を幅10mmの短冊状に切り出し、3点曲げ測定法により曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から明らかなように、実施例で得られた高強度材料は、曲げ強度及び曲げ弾性率に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の高強度材料は、曲げ強度及び曲げ弾性率に優れ、軽量であり、焼却したときに、有毒ガスや燃焼残渣が生じないことから、高強度材料として幅広く利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が1.2g/cm3以上1.4g/cm3以下、曲げ強度が200MPa以上、曲げ弾性率が14GPa以上である高強度材料。
【請求項2】
セルロースナノファイバーを主成分とすることを特徴とする請求項1記載の高強度材料。
【請求項3】
セルロースナノファイバーの最大繊維径が100nm以下であり、平均アスペクト比が1000以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の高強度材料。
【請求項4】
セルロースナノファイバーが木材繊維及び/又は種子毛繊維で構成されたパルプ由来であることを特徴とする請求項1〜3記載の高強度材料。
【請求項5】
セルロースナノファイバーが、原料繊維を溶媒に分散させて分散液を調製する分散液調製工程、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前記分散液をホモジナイズ処理するホモジナイズ工程で製造されたものであることを特徴とする請求項1〜4記載の高強度材料。
【請求項6】
破砕型ホモバルブシートが、中空円盤状本体部と、この円盤状本体部の内壁から下流方向に延出する中空円筒状凸部とで構成され、かつ前記中空円筒状凸部の内壁には、下流側において、下流方向に対して内径が拡大するテーパー部が形成されている請求項5記載の高強度材料。
【請求項7】
破砕型ホモバルブシートにおける中空円筒状凸部の下流端の内径とリング状端面の厚みとの比が、前者/後者=100/1〜5/1である請求項6記載の高強度材料。
【請求項8】
セルロースナノファイバーを高温下、高圧でプレスすることを特徴とする請求項1〜7記載の高強度材料の製造方法。