説明

センサアダプタを有する容器

本発明は、容器の内部空間に含まれる媒体の少なくとも一つのパラメーターを測定するためのセンサ配列を取り付けるためのセンサアダプタを具備する容器に関し、前記センサアダプタは、前記容器の内部空間に対する壁に配置され、受け入れチャネルの外側からアクセス可能な受け入れ開口を含み、その境界はセンサ配列を適用するために容器の内部空間に面している。本発明によれば、センサアダプタの受け入れチャネルは、容器の内部空間の方向に、膜により形成される少なくとも一つの境界面を含み、測定される媒体または媒質は、それを介してセンサ配列に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器室に含まれる媒体の少なくとも一つのパラメーターを測定するためのセンサ配列を受け入れるためのセンサアダプタを有する容器に関し、前記センサアダプタは、前記容器室の壁上に配置され、前記センサ配列を適用するための前記容器室へと延伸する受け入れチャネル内に外部アクセス可能な受け入れ開口を有する。
【背景技術】
【0002】
DE102006001610B4は、特に使い捨ての混合バッグとして形成されるバイオリアクターまたは容器を開示しており、前記容器は、光学センサの形のセンサ配列を受け入れるためのセンサアダプタを有し、前記光学センサは、その一端に光導体を形成し、リバーシブルに適合される。容器室の壁上に配置されるセンサアダプタは、容器室へと延伸する透明素材の受け入れチャネル内に、外部アクセス可能な受け入れ開口を有する。
【0003】
既知のセンサアダプタの短所は、それが光学測定操作にのみ適していることである。前記センサアダプタは、pH、二酸化炭素または酸素含有量を測定、または伝導性を測定するための、従来のリバーシブル電極またはセンサ配列の挿入には適していない。前記既知のアダプタはまた、溶存酸素または溶存二酸化炭素用として知られるガスセンサの利用には適していない。
【0004】
さらにまた、センサアダプタは、DE102006022307A1およびWO2006/017951A1に開示されており、前記センサアダプタは同様に上述の欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特にガスセンサを利用しようとする場合、既知のアダプタは、リバーシブルでなく、殺菌の必要性の影響も受けやすい、恒久的に挿入されたセンサを利用しなければならないか、または容器室に向けて開放されていないといけない。アダプタが容器室に向けて開放されている場合、交換可能なガスセンサを利用することができるが、これらもまた、殺菌されなければならず、問題を伴う。
【0006】
本発明における容器は、特に混合、格納および輸送のための容器であり、またバイオリアクターおよび発酵槽である。容器は、特にプラスチック素材で作成される。
【0007】
本発明において、媒質は、特に液体、ガス、懸濁液、散液、緩衝液およびセル培養ブロスであると考えられる。
【0008】
パラメーターは、特に物質濃度、ガス(酸素、二酸化炭素)の圧力または分圧、湿度、粒子の数、濁度、温度、pH、電磁波、蛍光性、電気伝導性、およびまた、容量性および電気性抵抗として理解される。
【0009】
したがって、本発明の目的は、センサを有する既知の容器を、例えばガスセンサのような、測定される媒質との接触を必要とするセンサ配列の利用が可能となるように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、容器内に含まれる媒体の少なくとも一つのパラメーターを測定するためのセンサ配列を受け入れるためのセンサアダプタを有する容器に関する。センサアダプタは、容器の壁上に配置され、受け入れチャネル内に外部アクセス可能な受け入れ開口を有する。センサアダプタ内の受け入れチャネルは、膜により形成される少なくとも一つの境界面を有し、測定される媒体または媒質は前記膜を介して前記センサ配列に供給される。
【0011】
容器室に対する境界面の少なくとも一部を膜として構成するため、測定される媒質は、センサ配列のセンサに直接接触することができる。同時に、膜により、センサ配列による容器室のまたはそのセンサの汚染が避けられる。精度の高いセンサを有するセンサ配列は、殺菌される必要がなく、むしろセンサアダプタだけがバイオリアクターに固定される。
【0012】
本発明の好ましい態様において、膜は、0.1〜0.4μm、好ましくは0.2μm以下の孔寸法を有する。したがって、膜は、容器室とリバーシブルに取り付け可能なセンサ配列の間に無菌バリアを形成する。
【0013】
本発明のさらに好ましい態様において、膜は、接触する媒質に応じて、親水性、疎水性または撥油性の性質を有する。センサアダプタの構成に応じて、例えば、第一膜を容器室に位置する液体媒質の中へ浸すことができ、一方、例えば、第二膜を容器室の上部空間に配置して、ガス気相と接触させることができる。膜を、接触する媒質に応じて、親水性、疎水性または撥油性の形で構成することは目的にかなったことである。どんな場合でも、センサアダプタは細菌が比較的ないことが好ましい。
【0014】
本発明のさらに好ましい態様において、膜は、親水性の性質を有する1つ以上の領域、および、疎水性の性質を有する1つ以上の領域を有する。例えば、膜は、複数の疎水性のスポットを有する親水性の膜として、または、複数の親水性のスポットを有する疎水性の膜として構成される。したがって、センサ配列が、膜の疎水性領域に進行した場合、ガスを容器室の中へ無菌状態で圧すことができる。容器室からの液体媒質は、膜の親水性領域を通って、センサ配列のセンサの周りを流れることができる。
【0015】
本発明のさらに好ましい態様において、膜は、例えば酢酸セルロースまたは再生セルロースなどの、天然高分子から作られる。
【0016】
本発明のさらに好ましい態様において、膜は、例えばポリスルホンのような、合成高分子から作られる。
【0017】
本発明のさらに好ましい態様において、受け入れチャネルは、容器室の中へ突出するアダプタシャフトを形成し、前記アダプタシャフトは、異なる性質を有する連続的に配置された2つの膜を有し、閉じられた端面を有する。
【0018】
本発明のさらなる態様において、受け入れチャネルは、容器室の中へ突出するアダプタシャフトを形成し、前記アダプタシャフトは、アダプタシャフトの端面を閉じる第一膜と、アダプタシャフトの周に配置され、第一膜と異なる性質を有する第二膜とを有する。しかしまた、受け入れチャネルは、容器室の中へ突出するアダプタシャフトを形成し、前記アダプタシャフトは、その周辺に配置された第一膜を有し、閉じられた端面を有し、外部へつながるサイドチャネルを有し、容器室の外側に位置する前記サイドチャネルのアクセス開口は、同様に膜または膜を有するフィルタ要素で覆われている。この場合、第二膜は、同様に親水性、疎水性または撥油性の性質を有する。外部へつながるサイドチャネルは、特に解析器に供給することができる無細菌の液体を獲得することに適している。
【0019】
本発明のさらに好ましい態様において、センサ配列は、圧力を生成するために長軸方向へ動くことができるように、受け入れチャネル内にプランジャーの形で配置される。この場合、長軸方向へ動くための機能は、例えば蛇腹により実現することができ、受け入れチャネル内に配置されるセンサ配列はそれを介してセンサアダプタに接続される。
【0020】
本発明のさらに好ましい態様において、センサアダプタは、ベータ線および/またはガンマ線および/またはエチレンオキシド(ETO)に耐性がある素材で作られる。したがって、センサアダプタは、使い捨てバイオリアクターと共に滅菌するのに好適である。
【0021】
センサアダプタは、例えば、容器の側面または上部領域に配置してもよい。したがって、それを容器室内の液体のレベルに挿入すること、またはそれを上部空間に挿入することが可能である。膜は、液体媒質を接触してもよいが、また、上部空間においてガス気相と接触してもよい。
【0022】
言うまでもなく、センサアダプタは、提供されるどのようなセンサ配列にも適用されなければならない。
【0023】
本発明のさらに好ましい態様において、容器は、使い捨てバイオリアクターの形である。
【0024】
本発明の詳細は、後述の詳細な説明および添付の図面から理解でき、図面には本発明の好ましい態様が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、センサアダプタ断面およびセンサ配置と共に容器の概要を示した、概略側面図である。
【0026】
【図2】図2は、センサアダプタを有する容器の概要を示した、側断面図である。
【0027】
【図3】図3は、センサアダプタおよび外部へつながるサイドチャネルを有する容器の概要を示した、側断面図である。
【0028】
【図4】図4は、センサアダプタおよびセンサ配列を有する容器の概略を示した、側断面図である。
【0029】
【図5】図5は、センサアダプタ、外部へつながるサイドチャネルおよび異なる領域を有する膜を有する容器の概略を示した、側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
典型的には使い捨てバイオリアクター(1)として構成される容器(2)は、容器(2)およびセンサアダプタ(3)を実質的に含む。
【0031】
図1の典型的な態様において、容器(2)は、折り畳み式、柔軟性のあるバッグの形であり、その壁(4)にはセンサアダプタ(3)が配置される。センサアダプタ(3)は、壁(4)に溶接されるフランジ(5)を有する。センサアダプタ(3)は、容器(2)の外側から、壁(4)を通ってリアクター内(7)に突出する、アダプタシャフト(6)を有する。中央において、センサアダプタ(3)、またはそのアダプタシャフト(6)は、外部アクセス可能な受け入れ開口(9)を有する受け入れチャネル(8)を有する。リアクター内(7)に含まれる媒質のパラメーターを測定するためのセンサ配列は、受け入れ開口(9)を介して受け入れチャネル(8)の中へ挿入され、センサアダプタ(3)にリバーシブルに接続することができる。
【0032】
図1〜3の態様によれば、アダプタシャフト(3)の容器側端(11)は、リアクター内(7)へ突出する。
【0033】
図1の典型的な態様によれば、アダプタシャフト(6)の容器側端(11)の端側は、透明性のある方法で形成してもよいカバー(12)により閉じられる。アダプタシャフト(6)または受け入れチャネル(8)は、カバー(12)方向に第一膜(13)を有する。第一膜(13)のフランジ(5)の方向に隣接して、受け入れチャネル(8)またはアダプタシャフト(6)の容器側端(11)は、第二膜(14)を有する。高分子で作られる膜(13,14)は、容器室(7)および受け入れチャネル(8)の間に無菌バリアを形成するために、0.2μm以下の孔を有する。受け入れチャネル(8)に挿入されるセンサ配列(10)は、膜(13,14)に割当てられるセンサ(15,16)を有する。その端部(17)には、受け入れ開口(9)を有し、受け入れチャネル(8)またはアダプタシャフト(6)は、センサ配列(10)を固定するためのねじ(18)を有する。受け入れチャネル(8)の壁は、センサ配列(10)を密封およびガイドするためのシーリングリング(18)を有する。
【0034】
図2の典型的な態様によれば、センサアダプタ(3’)のアダプタシャフト(6’)は、その端側に容器室(7)に面する第一膜(13’)を有し、それに隣接する受け入れチャネル(8)の周辺に第二膜(14’)を有する。
【0035】
図3の典型的な態様によれば、センサアダプタ(3’’)のアダプタシャフト(6’’)は、その容器側端(11’’)に第一膜(13’’)を有する。その端側端において、受け入れチャネル(8’’)は、カバー(12)により閉じられている。アダプタシャフト(6’’)は、受け入れチャネル(8’’)から外側につながるサイドチャネル(19)を有し、容器室の外側に位置するそのアクセス開口(20)は、第二膜(14’’)により覆われている。
【0036】
図4の態様によれば、センサアダプタ(3’’’)の受け入れチャネル(8’’’)は、フランジ(5’’’)内のリアクター内(7)に向けて終端しており、その容器側開口は、第一膜(13’’’)により覆われている。受け入れチャネル(3’’’)において、センサ配列(10’’’)は、プランジャーの形でガイドされ、長軸方向に動くことができるように配置される。
【0037】
図5の典型的な態様によれば、センサアダプタ(3’’’’)のアダプタシャフト(6’’’’)は、その容器側端(11’’’’)に膜(13’’’’)を有する。膜(13’’’’)は、スポットが組み込まれた親水性の性質を有する領域(22)、または小さな島を形成し疎水性の性質を有する領域(23)を有する。
【0038】
膜(13’’’’)から離れたその端部において、受け入れチャネル(8’’’’)は、センサ配列(10’’’’)を連結するためのアダプタ留め具(25)を有する。アダプタ留め具(25)は、蛇腹(24)を介してアダプタシャフト(6’’’’)に接続され、それにより、センサ配列(10’’’’)は、アダプタシャフト(6’’’’)の受け入れチャネル(8’’’’)内を長軸方向に動くことができる。アダプタシャフト(6’’’’)は、受け入れチャネル(8’’’’)から外側につながるサイドチャネル(19’’’’)を有し、容器室(7’’’’)の外側に位置するそのアクセス開口(20’’’’)は、第二膜(14’’’’)により覆われている。
【0039】
センサ配列(10’’’’)が、膜(13’’’’)の方向に進む場合、サイドチャネル(19’’’’)を介して受け入れられたガスは、容器室(7’’’’)の中へ、疎水性領域(23)を介して滅菌状態で圧される。容器室(7’’’’)からの親水性媒質は、受け入れチャネル(8’’’’)の中へ浸透することができ、センサ配列(10’’’’)のセンサ(15’’’’)の周りを流れることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器室(7)に含まれる媒体の少なくとも一つのパラメーターを測定するためのセンサ配列(10,10’’’,10’’’’)を受け入れるためのセンサアダプタ(3)を有する容器(2)であって、前記センサアダプタ(3,3’,3’’,3’’’)は、前記容器室(7)の壁上に配置され、前記センサ配列(10,10’’’,10’’’’)を適用するための前記容器室(7)へと延伸する受け入れチャネル(8,8’’,8’’’)内に外部アクセス可能な受け入れ開口(9)を有し、センサアダプタ(3)内の受け入れチャネル(8,8’’,8’’’)は、容器室(7)に向かう方向に、膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)により形成される少なくとも一つの境界面を有し、測定される媒体または媒質は前記膜を介して前記センサ配列(10,10’’’,10’’’’)に供給されることを特徴とする、前記容器(2)。
【請求項2】
膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)が、0.1〜0.4μmの孔寸法を有することを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)が、0.2μm以下の孔寸法を有し、無菌バリアを形成することを特徴とする、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)が、親水性、疎水性または撥油性の性質を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
膜(13’’’’)が、親水性の性質を有する一つ以上の領域(22)および疎水性の性質を有する一つ以上の領域(23)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)が、天然高分子から作られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)が、酢酸セルロースまたは再生セルロースから作られることを特徴とする、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)が、合成高分子化合物から作られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項9】
膜(13,13’,13’’,13’’’,13’’’’,14,14’,14’’)が、ポリスルホンから作られることを特徴とする、請求項8に記載の容器。
【請求項10】
受け入れチャネル(8)が、容器室(7)の中へ突出するアダプタシャフト(6)を形成し、前記アダプタシャフト(6)は、異なる性質を有する連続的に配置された2つの膜(13,14)を有し、閉じられた端面を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項11】
受け入れチャネル(8’)が、容器室(7)の中へ突出するアダプタシャフト(6’)を形成し、前記アダプタシャフト(6’)は、アダプタシャフトの端面を閉じた第一膜(13’)と、アダプタシャフトの周に配置され、第一膜(13’)と異なる性質を有する第二膜(14’)とを有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項12】
受け入れチャネル(8’’)が、容器室(7)の中へ突出するアダプタシャフト(6’’)を形成し、前記アダプタシャフト(6’’)は、その周に配置された第一膜(13’’)を有し、閉じられた端面を有し、外部へつながるサイドチャネル(19)を有し、容器室(7)の外側に位置する前記サイドチャネル(19)のアクセス開口(20)は、第二膜(14’’)に覆われていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項13】
センサ配列(10’’’)が、圧力を生成するために長軸方向へ動くことができるように、受け入れチャネル(8’’’)内のプランジャーの形で配置されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の容器。
【請求項14】
センサ配列(10’’’’)が、蛇腹(24)により受け入れチャネル(8’’’’)内を長軸方向に動くことができるように配置されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の容器。
【請求項15】
センサアダプタ(3,3’,3’’,3’’’,3’’’’)が、ベータ線および/またはガンマ線および/またはETOに耐性がある素材を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の容器。
【請求項16】
容器(2)が、使い捨てバイオリアクター(1)の形であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−530249(P2012−530249A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515367(P2012−515367)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002808
【国際公開番号】WO2010/145735
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507266912)ザトーリウス ステディム ビオテーク ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】