説明

センサネットワークのセンサ設置位置決定方法

【課題】 センサの設置位置に関する注意箇所の重要度毎に要求されるセンサのカバー率を満たしつつ、設置費用を最小にするようにセンサの設置位置を決定するセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法を提供する。
【解決手段】 センサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、センサネットワークによるモニタリングの対象領域と、センサ設置候補箇所○と、このセンサ設置候補箇所○毎のセンサ設置コストと、センサによるモリタリングを行いたい注意箇所△と、この注意箇所△の重要度と、この注意箇所△の重要度毎に求められるカバー率を入力情報とし、この注意箇所△の重要度毎に求められるカバー率を満たし、かつセンサ設置にかかる総費用の低減を図るようにセンサ設置位置の決定を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークのセンサ設置位置決定方法に係り、特に、鉄道土木構造物に配置されるセンサネットワークのセンサの設置位置に関する、注意箇所を考慮した効率的なセンサ設置位置決定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサネットワークにおけるセンサの効率的な設置位置決定方法に関しては、これまでにも種々研究が行われてきた。
しかし、それらは対象領域内に設置されるセンサのカバー率を考慮しながら、最小のセンサ数で対象領域のカバーを達成しようとするものがほとんどである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Peter J.Bennett,Kenichi Soga,Ian Wassell,Paul Fidler,Keita Abe,Yusuke Kobayashi,Martin Vanicek,“Wireless Sensor Networks for Underground Railway Applications:Case Studies in Prague and London”,Smart Structures and Systems,Vol.6,No.5−6,pp.619−639,2010.
【非特許文献2】F.Stajano,N.Hoult,I.J.Wassel,P.J.Bennett,C,Middleton,K.Soga,Smart bridge,smart tunnels;transforming wireless sensor networks from research prototypes into robust engineering infrastructure,Ad Hoc Networks 8(8)(2010),pp.872−888
【非特許文献3】E.W.Dijkstra,A note on two problems in connexion with graphs, Numerische Mathematik 1(1)(1959)269−306.
【非特許文献4】R.E.Bellman,On a routing problem,Quarterly of Applied mathematics 16(1)(1958)87−90.
【非特許文献5】S.Martello,P.Toth,Exact and approximation algorithms for makespan minimization on unrelated parallel machines,Discrete Applied Mathematics 75(2)(1997)169−188.
【非特許文献6】R.Liu,I.J.Wasell,K.Soga,Relay node placement for wireless sensor networks deployed in tunnels,in:Proceedings of the IEEE International Conference on Wireless and Mobile Computing,Networking and Communications,2010,pp.144−150.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、鉄道構造物などのモニタリングを行う場合、モニタリング目的に応じてより情報を収集したい箇所、つまり重点的に監視を行いたい注意箇所が存在し、その重要度も箇所によってばらつきある。
図8は、鉄道構造物における注意箇所とその重要度の関係を例示する模式図である。例えば、図8に示す鉄道のトンネルの場合、トンネル101内の実際に発生している異常箇所102は重点的に監視を行うべき注意箇所であり、ひび割れの広がり具合の監視などが必要であるため、重要度は高い。これに対して、今後異常発生が懸念される箇所103は、経過観察として監視などを行う箇所であり、緊急性は低いので重要性は低い。このように対象領域には各種の注意箇所が存在し、その重要度も箇所によって異なるがセンサのカバー率から最小センサ数で対象領域をカバーしようとする従来技術では、このような注意箇所と重要度に関する考慮がなされていないため、重要度の高い箇所について情報が少ないモニタリング効率の悪いセンサネットワークが構築されることがあった。
【0005】
さらに、センサの設置費用は設置箇所によって異なる。
図9は、鉄道構造物におけるセンサ設置位置と、その設置費用との関係を例示する模式図である。例えば、図9に示す鉄道のトンネルの場合、トンネル111内の高い部分に設置するセンサ112は、トンネル111内の低い部分に設置するセンサ113に比べて、高所作業のための梯子の設置や作業人数の増加など、設置作業を行うための準備費用が発生するため設置費用は高くなる。
【0006】
したがって、低コスト化のニーズを考えると、このような設置箇所毎の費用の違いをも考慮して、センサネットワークの設計を行うことが必要である。
しかしながら、注意箇所の重要度を考慮しつつ、設置箇所による費用の違いも考慮してセンサの設置費用を最小にするようにセンサの設置位置を決定する方法は現在まで確立されていない。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、センサの設置位置に関する注意箇所の重要度毎に要求されるセンサのカバー率を満たしつつ、設置費用を最小にするようにセンサの設置位置を決定するセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕センサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、センサネットワークによりモニタリングの対象領域と、センサ設置候補箇所と、このセンサ設置候補箇所毎のセンサ設置コストと、センサによるモニタリングを行いたい注意箇所と、この注意箇所の重要度と、この注意箇所の重要度毎に求められるカバー率を入力情報とし、注意箇所の重要度毎に求められるカバー率を満たし、かつセンサ設置にかかる総費用の低減を図るようにセンサ設置位置の決定を行うようにしたことを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、前記センサネットワークが軍事モニタリング、フィールドモニタリング、構造物モニタリングのセンサモニタリングに用いることを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、前記構造物モニタリングが鉄道土木構造物モニタリングであることを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔3〕記載のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、前記鉄道土木構造物モニタリングが地下鉄の鉄道土木構造物モニタリングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)軍事モニタリング、フィールドモニタリング、構造物モニタリングなど活用範囲の広いセンサネットワークの構築・運用において、対象領域内の注意箇所の重要度を考慮したセンサのカバー率を達成することで、より効率的な情報収集を行うセンサネットワークを設計でき、事業者にとっても経費削減を図ることができる。
【0012】
(2)設置箇所毎の費用の違いを考慮してセンサネットワークの設計を行うので、事業者にとって実情に即したコストプランを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のセンサネットワークのセンサ設置位置決定の概念図である。
【図2】比較例としての注意箇所の重要度を考慮しない場合のセンサ設置位置の例を示す模式図である。
【図3】本発明による対象領域内の注意箇所の重要度を考慮したセンサネットワークのセンサ設置位置決定例の模式図である。
【図4】本発明の実施例を示す軍事モニタリングのセンサネットワークとその注意箇所の重要度を考慮したセンサ配置例を示す概要図である。
【図5】本発明の実施例を示すフィールドモニタリングのセンサネットワークとその注意箇所の重要度を考慮したセンサ配置例を示す概要図である。
【図6】本発明の実施例を示す構造物モニタリングのセンサネットワークとその注意箇所の重要度を考慮したセンサ配置例を示す概要図である。
【図7】本発明のセンサネットワークのセンサ設置位置決定が適用可能な例としてのロンドン地下鉄のジュビリー線の現場写真である。
【図8】鉄道構造物における注意箇所とその重要度の関係を例示する模式図である。
【図9】鉄道構造物におけるセンサ設置位置と、その設置費用との関係を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法は、センサネットワークによりモニタリングの対象領域と、センサ設置候補箇所と、このセンサ設置候補箇所毎のセンサ設置コストと、センサによるモニタリングを行いたい注意箇所と、この注意箇所の重要度と、この注意箇所の重要度毎に求められるカバー率を入力情報とし、注意箇所の重要度毎に求められるカバー率を満たし、かつセンサ設置にかかる総費用の低減を図るようにセンサ設置位置の決定を行うようにした。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明のセンサネットワークのセンサ設置位置決定の概念図である。
上記したように、本発明は、対象領域の注意箇所の重要度を考慮しつつ、設置箇所による費用の違いも考慮して、センサの設置総費用を最小にするセンサ設置位置決定方法を提案するものである。
【0016】
そこで、入力情報として、注意箇所とその箇所毎の重要度を予め入力情報として与えるようにする。また、効率のよいモニタリングを行うためには、重要度の高い注意箇所をより多くカバーするようなセンサネットワークが望ましい。そこで、重要度毎に求められるカバー率を設定し、この求められるカバー率を入力情報として与える。さらに、センサの設置候補箇所とその設置候補箇所毎の設置費用も入力情報として与えるものとする。
【0017】
このような入力情報から、重要度毎に求められるカバー率を満たし、かつセンサの設置総費用が最小となるようなセンサネットワークのセンサ位置を探索する。具体的には、後述する数理計画問題として定式化し、センサ位置の決定を行い、センサの設置位置とセンサ設置にかかる総費用を出力する。すなわち、本発明では、入力情報として、(1)注意箇所とその重要度、(2)センサ設置候補箇所、(3)設置候補箇所毎のセンサ設置費用、(4)重要度毎に求められるカバー率を与えるものとする。
【0018】
これらの入力情報を元に、センサネットワークのセンサ設置位置の決定を行い、出力情報として、(1)センサの設置場所、(2)センサ設置総費用を出力する。
図2は比較例としての注意箇所の重要度を考慮しない場合のセンサ設置位置の例を示す模式図、図3は本発明による対象領域内の注意箇所の重要度を考慮したセンサネットワークのセンサ設置位置決定例の模式図である。
【0019】
これらの図において、△は監視を行いたい注意箇所(ここでは13箇所)、○はセンサ設置候補箇所(ここでは、○1 〜○6 の6箇所)、点線で示された円はセンサのセンシング範囲Dを示している。また、注意箇所△の数字は、予防保全、経過観測など、モニタリング目的に合わせて各々の注意箇所に与えられる当該箇所の重要度であり、その重要度は段階的に異なっており、重要度の高さは△1 >△2 >△3 であるものとする。なお、ここでは説明のために少ないセンサ数・センサ設置候補箇所数・注意箇所数で簡略化して示している。
【0020】
例えば、図2の例では、センサ設置候補箇所○2 と○5 にセンサが設置されている場合を示している。この場合、○2 のセンサのセンシング範囲Dにある、つまり○2 に設置されたセンサでカバーできる注意箇所は、重要度△2 の箇所が1つ、重要度△3 の箇所が1つの計2つ、同様に○5 のセンサでカバーできる注意箇所は、重要度△1 の箇所が1つ、重要度△2 の箇所が3つ、重要度△3 の箇所が1つの計5つである。なお、重要度△2 の注意箇所の1つが両センサで重複してカバーされている。
【0021】
この時の注意箇所全体のカバー率を重要度別に見てみると、最も重要な注意箇所△1 は2つの内の1つしかカバーされておらず、カバー率は1/2=50%である。また、注意箇所△2 は6つの内の3つがカバーされており、3/6=50%、注意箇所△3 は5つの内の2つがカバーされており、2/5=40%となっている。このように、注意箇所の重要度を考慮せずにセンサ位置を決定すると、重要度が高い箇所も低い箇所も同程度のカバー率となってしまうことがある。
【0022】
これに対して、本発明により注意箇所の重要度を考慮してセンサ位置を決定すると、例えば、図3に示すようになる。なお、ここでは、重要度△1 の求められるカバー率を80%、重要度△2 の求められるカバー率を50%、重要度△3 の求められるカバー率を20%とした場合のセンサ配置の一例を示している。
この図では、センサ配置候補箇所○3 と○5 にセンサが設置されている場合を示している。この場合、○3 のセンサのセンシング範囲Dにある、つまり○3 に設置されたセンサでカバーできる注意箇所は、重要度△1 の箇所が1つ、重要度△2 の箇所が1つの計2つ、同様に○5 のセンサでカバーできる注意箇所は、重要度△1 の箇所が1つ、重要度△2 の箇所が3つ、重要度△3 の箇所が1つの計5つである。
【0023】
このように、注意箇所の重要度を考慮したセンサ設置位置決定を行うと、最も重要度の高い注意箇所△1 は2つともカバーされ、カバー率は100%となり、注意箇所△2 は6つのうちの4つがカバーされ、カバー率は約66%であり、注意箇所△3 は5つのうちの1つがカバーされ、カバー率は20%となる。これは重要度毎に求められるカバー率をいずれも満たすものであり、図2と比べ、重要度の高い注意箇所をより多くカバーした、効率のよいセンシングを行えるセンサ配置であると言える。なお、上記した求められるカバー率およびセンサ位置はいずれも説明を分かりやすくするための一例であり、後述する本願の数理モデルの具体的な計算結果を示すものではない。
【0024】
本発明は、上記したように、重要度が高い箇所をなるべく多くカバーしつつ、設置にかかる総費用を低くするようなセンサ設置位置決定方法を提案するものである。
より、具体的には、以下のような条件が予め与えられているものとする。
(a)センサ設置候補箇所
(b)センサ設置候補箇所毎の設置コスト
(c)注意箇所
(d)注意箇所毎の重要度
(e)重要度毎に求められるカバー率
他にも、1つのセンサ設置候補箇所に設置できるセンサ台数を1台のみとし、注意箇所をカバーするセンサの台数(1台のセンサで監視するか、複数台で監視するか)も与えられるものとする。
【0025】
また、重要度ごとに求められるカバー率は、重要度が高い程、高いカバー率を求めるように設定する。
このような条件の下、本発明では上記(a)〜(e)と対象領域を入力とし、重要度毎に求められるカバー率を満たすセンサ設置位置をより少ないコストとなるように探索し、センサ設置箇所とセンサ設置総費用を出力するようにする。
【0026】
これは、この重要度毎のカバー率を満たすセンサ設置位置の探索と総費用の最小化という問題として数理モデルに定式化でき、以下のように示すことができる。
以下、本発明の定式化について説明する。
(1)定義
(i)集合としては、Nはセンサ設置候補箇所集合、Mは注意箇所集合、Rは重要度ランク集合、Mk (∀k∈R)⊂Mは重要度ランク別注意箇所集合であり、M1 ∪M2 ∪…Mr =M、なお、Mk ∩Ml =0(∀k,l∈R,k≠l)、R+ は非負実数集合である。
【0027】
(ii)決定変数としては、

【0028】
(iii)パラメータとしては、
ij∈{0,1}(∀i ∈N,∀j ∈M) なお、センサ設置候補箇所iにあるセンサが注意箇所jをカバーできるならば1、その他は0
i ∈R+ (∀i ∈N) センサ設置候補箇所iにセンサを設置するコスト
k ∈R+ (∀k ∈R) 重要度ランクkの注意箇所の要求カバー率
このような定義の下と、上記した問題を数理モデルに定式化する。
(2)定式化

【0029】
i ={0,1}(∀i ∈N) …(5)
j ={0,1}(∀j ∈M) …(6)
すなわち、目的関数(1)で、センサ設置コストの最小化問題として定式化している。
制約式(2),(3)によって、注意箇所jがセンサでカバーされているかどうかを表すvj を決定することができる。重要度毎に要求されるカバー率が異なるため、制約式(4)は重要度ランクごとに定義を行う。これらの制約式を満たすように目的関数(1)を解くことで、重要度毎に求められるカバー率を満たしつつ、設置費用を最小にするようにセンサネットワークのセンサ設置位置を決定することができる。
【0030】
このように、本発明によれば、センサネットワーク構築のためのセンサ設置の対象領域と、センサ設置候補箇所と、このセンサ設置候補箇所毎のセンサ設置コストと、注意箇所と、注意箇所の重要度と、注意箇所の重要度毎のカバー率を提示し、重要度の高いより注意箇所のカバー率を高めて、かつセンサ設置コストの低減を図るようにセンサ設置位置の設定を行うようにした。
【0031】
図4は本発明の実施例を示す軍事モニタリングのセンサネットワークとその注意箇所の重要度を考慮したセンサ配置例を示す概要図である。
この図において、1は自軍の領域、2は対戦軍からの侵入の可能性のある大道、3は対戦軍からの侵入の可能性のある小道であり、○はセンサ設置候補場所、△は注意箇所(重要度大)、□は注意箇所(重要度小)である。なお、塗りつぶしのある部分がセンサ設置位置とカバーされる注意箇所を示している。
【0032】
この図に示すように、例えば、自軍の領域1付近は監視の重要度は低いが、対戦軍から侵入される恐れのある場所付近は、監視の重要度が高い。したがって、本発明によれば、効率よく軍事領域をモニタリングできるよう、センサ設置位置を決定することができる。
図5は本発明の実施例を示すフィールドモニタリングのセンサネットワークとその注意箇所の重要度を考慮したセンサ配置例を示す概要図である。
【0033】
この図において、11は鉄道の軌道、12はのり面、13は鉄橋、14は橋梁、15は駅舎であり、○はセンサ設置候補場所、△は注意箇所(重要度大)、□は注意箇所(重要度小)である。なお、塗りつぶしのある部分がセンサ設置位置とカバーされる注意箇所を示している。
この図に示すように、例えば、自然災害の影響を受けやすい場所、例えば、のり面12、鉄橋13、橋梁14には監視の重要度は高く設定される。したがって、本発明によれば、効率よく鉄道運行領域をモニタリングできるよう、センサ設置位置を決定することができる。
【0034】
図6は本発明の実施例を示す構造物モニタリングのセンサネットワークとその注意箇所の重要度を考慮したセンサ配置例を示す概要図である。
この図において、21は構造物としてのトンネル、22はひび割れなど実際に発生している異常箇所であり、○はセンサ設置候補場所、△は注意箇所(重要度大)、□は注意箇所(重要度小)である。なお、塗りつぶしのある部分がセンサ設置位置とカバーされる注意箇所を示している。
【0035】
この図に示すように、例えば、ひび割れ箇所などの異常が生じている箇所22では、監視の重要度は高く設定される。また、重要度が低い注意箇所間では、設置コストの低いセンサ設置箇所の方にセンサを設置する。したがって、本発明によれば、効率よく低コストに構造物モニタリングを行えるよう、センサ設置位置を決定することができる。
図7は本発明のセンサネットワークのセンサ設置位置決定が適用可能な例としてのロンドン地下鉄のジュビリー線の現場写真である。
【0036】
この図において、31〜34は傾角(伏角)センサ、35は環境センサ、36はクラックセンサである。ここで、傾斜センサとは、そのセンサが設置されているトンネル内壁の傾きを測定するセンサである。図7の例では、トンネル内の傾斜をまんべんなく測定する目的で均等に4箇所設置している。しかし、左側面の測定重要度が高まった場合には、その重要度に応じて例えば左3箇所、右1箇所などの設置を考える必要がある。しかし、設置には費用が発生するので、現場では測定目的を満たしつつ設置費用をできる限り少なくすることが求められる。
【0037】
本発明によれば、このようなケースにおいて適切なセンサ設置箇所を定めることができるようになる。
図6に示したように、ひび割れなど実際に発生している異常箇所22は重点的に監視を行うべき注意箇所であり、重要度が高く、一方今後異常発生が懸念される箇所は緊急度が低いため、重要度が低い。また、図9に示したように、トンネル内の高い部分にセンサを設置するための費用は、低い部分にセンサを設置するための費用よりも高くなる。
【0038】
本発明によれば、このような注意箇所の重要度と設置箇所の費用を考慮してセンサネットワークのセンサ位置の決定を行うので、より効率的なセンシングを低コストで行えるセンサネットワークを構築できる可能性がある。具体的には、例えば、仮に図7で各センサが現状配置されている箇所の重要度が低いような場合には、トンネル天井部分に2つ設置されている傾斜センサ33,34をどちらか1つにしたり、各センサの設置位置をより重要度の高い位置へ変更することで、センサネットワークのセンサ設置総費用を下げつつ、効率的なモニタリングを行えるセンサの設置位置を決定することができる。
【0039】
本発明によれば、このような、地下鉄のセンサネットワークのセンサ設置位置の決定に適用することができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法は、軍事モニタリング、フィールドモニタリング、構造物モニタリングなどの広範なセンサモニタリングに利用することができる。特に、鉄道土木構造物に配置されるセンサの設置位置に関する注意箇所を考慮した効率的なセンサ設置位置決定方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 自軍の領域
2 対戦軍からの侵入の可能性のある大道
3 対戦軍からの侵入の可能性のある小道
11 鉄道の軌道
12 のり面
13 鉄橋
14 橋梁
15 駅舎
21 トンネル
22 ひび割れ箇所などの異常が生じている箇所
31〜34 傾角(伏角)センサ
35 環境センサ
36 クラックセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサネットワークによりモニタリングの対象領域と、センサ設置候補箇所と、このセンサ設置候補箇所毎のセンサ設置コストと、センサによるモニタリングを行いたい注意箇所と、この注意箇所の重要度と、この注意箇所の重要度毎に求められるカバー率を入力情報とし、注意箇所の重要度毎に求められるカバー率を満たし、かつセンサ設置にかかる総費用の低減を図るようにセンサ設置位置の決定を行うようにしたことを特徴とするセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法。
【請求項2】
請求項1記載のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、前記センサネットワークが軍事モニタリング、フィールドモニタリング、構造物モニタリングのセンサモニタリングに用いることを特徴とするセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法。
【請求項3】
請求項2記載のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、前記構造物モニタリングが鉄道土木構造物モニタリングであることを特徴とするセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法。
【請求項4】
請求項3記載のセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法において、前記鉄道土木構造物モニタリングが地下鉄の鉄道土木構造物モニタリングであることを特徴とするセンサネットワークのセンサ設置位置決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101466(P2013−101466A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244354(P2011−244354)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】